JP7431678B2 - セパレータ一体型ガスケットの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池に利用されるセパレータ一体型ガスケットを製造する技術に関する。
燃料電池を構成する複数の膜-電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)は、第1部材と第2部材とを積層した構造のセパレータにより仕切られる。例えば特許文献1には、燃料電池の各セルに形成される流路を封止するためのガスケットがセパレータに一体的に形成された構造が開示されている。
国際公開第2018/034085号
ガスケットの形成後に第1部材と第2部材とを例えば溶接により接合する場合、ガスケットの材料が第1部材または第2部材に付着することで両者間の接合不良が発生する可能性がある。以上の問題を解決する観点からは、第1部材と第2部材との接合後にガスケットを形成する手順が好適である。しかし、第1部材と第2部材とが接合された状態で、例えば第2部材を治具に固定した状態では、第1部材に反りまたはうねり等の変形が発生する可能性がある。したがって、第1部材の表面にガスケットの材料を安定的および高精度に塗布できないという課題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、セパレータを構成する第1部材と第2部材との接合不良の抑制と、ガスケットの安定的かつ高精度な形成とを両立することを目的とする。
以上の課題を解決するために、本発明の第1形態に掛るセパレータ一体型ガスケットの製造方法は、第1部材と、前記第1部材に積層される第2部材と、前記第1部材のうち前記第2部材とは反対側の第1面に形成されるガスケットとを具備し、前記第1部材と前記第2部材との間の流路と、前記第1部材と前記第2部材とにわたる貫通孔とが形成されるセパレータ一体型ガスケットの製造方法であって、前記第1部材と前記第2部材とを接合する第1工程と、前記第1工程の実施後の第2工程であって、前記第2部材のうち前記第1部材とは反対側の第2面を治具に吸着し、前記貫通孔に挿入される吸引治具により前記第1部材と前記第2部材との間の空気を吸引する第2工程と、前記第2工程により前記第2部材が前記治具に固定された状態で、前記第1面に前記ガスケットを形成する第3工程とを含む。以上の形態によれば、第1部材と第2部材との接合後にガスケットが形成されるから、ガスケットの材料の付着に起因した第1部材と第2部材との接合不良を抑制できる。また、第2工程においては、貫通孔に挿入された吸引治具により第1部材と第2部材との間の空気が吸引されることで、第1部材の変形(例えば反りまたはうねり)が矯正される。したがって、ガスケットを安定的かつ高精度に形成できる。
第1形態の具体例である第2形態において、前記吸引治具は、前記貫通孔に挿入される柱状部を含み、前記第3工程においては、前記柱状部の側面に形成された吸引口から前記第1部材と前記第2部材との間の空気を吸引する。以上の形態によれば、柱状部の側面に形成された吸引口から第1部材と第2部材との間の空気が吸引されるから、第1部材と第2部材との間の空気を吸引するための構造および工程が簡素化される。
第2形態の具体例である第3形態において、前記柱状部は、開口が形成された第1端部を含み、前記柱状部は、前記開口と前記吸引口とを連通させる連通流路を具備し、前記第2工程および前記第3工程において、前記第1端部は前記治具の取付孔に挿入され、前記第2工程においては、前記第1端部の前記開口を介して前記第1部材と前記第2部材との間の空気を吸引する。以上の形態によれば、吸引治具のうち治具の取付孔に挿入される第1端部の開口を介して前記第1部材と第2部材との間の空気が吸引される。すなわち、第1部材と第2部材との間の空気を吸引するための構造を、第1部材側に設置する必要がない。したがって、第1部材と第2部材との間の空気を第1部材側から吸引する構成と比較して、第3工程において第1面にガスケットを形成し易い。
第3形態の具体例である第4形態において、前記第2工程および前記第3工程においては、前記柱状部を包囲する環状の第1保持具を、前記治具と前記第2面との間に介在させる。以上の形態においては、第2工程および第3工程において治具と第2面との間に第1保持具が介在する。したがって、第2工程および第3工程における第2部材の変形を抑制できる。
第3形態または第4形態の具体例である第5形態において、前記柱状部は、前記第1端部とは反対側の第2端部を含み、前記吸引治具は、前記第2端部に設置された鍔状部を含み、前記第2工程および前記第3工程においては、前記柱状部を包囲する環状の第2保持具を、前記鍔状部と前記第1面との間に介在させる。以上の形態においては、第2工程および第3工程において鍔状部と第1面との間に第2保持具が介在する。したがって、第2工程および第3工程における第2部材の変形を抑制できる。
本発明によれば、セパレータを構成する第1部材と第2部材との接合不良の抑制と、ガスケットの安定的かつ高精度な形成とを両立できる。
セパレータ一体型ガスケットの構成を例示する平面図である。 セパレータ一体型ガスケットの構成を例示する断面図である。 燃料電池の構成を例示する断面図である。 セパレータ一体型ガスケットの製造工程を例示するフローチャートである。 第2工程の説明図である。 対比例1の説明図である。 対比例2の説明図である。 第1ガスケットの高さの誤差を測定した結果である。 第1ガスケットの膜厚を測定した結果である。
本発明の好適な形態について図面を参照しながら以下に説明する。なお、各図面における各要素の寸法および縮尺は実際の製品とは適宜に相違する。
A:セパレータ一体型ガスケットの構成
図1は、本発明の好適な形態に係るセパレータ一体型ガスケット100の構成を例示する平面図である。セパレータ一体型ガスケット100は、燃料電池を構成する複数の膜-電極接合体(MEA)を仕切る構造体である。図1に例示される通り、本実施形態のセパレータ一体型ガスケット100は、流路領域R1と複数のマニホールド領域R2(R21~R23)と外周領域R3とを平面視で含む。外周領域R3は、セパレータ一体型ガスケット100の外周縁に沿う矩形枠状の領域であり、流路領域R1を包囲する。複数のマニホールド領域R2は、流路領域R1と外周領域R3との間に形成される。
図2は、本実施形態に係るセパレータ一体型ガスケット100の構成を例示する断面図である。図1におけるa-a線の断面が図2に図示されている。図1および図2に例示される通り、本実施形態のセパレータ一体型ガスケット100は、セパレータ10と第1ガスケット13と第2ガスケット14と外周ガスケット15aと外周ガスケット15bとを具備する。第1ガスケット13および第2ガスケット14は、複数のマニホールド領域R2の各々に形成される。
セパレータ10は、相互に隣合う2個の膜-電極接合体の間に介在するとともに、複数種のガスが流通する流路を形成する構造体である。図2に例示される通り、セパレータ10は第1部材11と第2部材12とを具備する。第1部材11および第2部材12は、例えばステンレス鋼等の各種の金属材料で形成される。
第1部材11は、第1外面X1と第1内面Y1とを含む板状部材である。第1外面X1と第1内面Y1とは相互に反対側の表面である。同様に、第2部材12は、第2外面X2と第2内面Y2とを含む板状部材である。第2外面X2と第2内面Y2とは相互に反対側の表面である。第1部材11と第2部材12とは、第1内面Y1と第2内面Y2とが相互に対向する状態で接合される。第1外面X1は「第1面」の一例であり、第2外面X2は「第2面」の一例である。
第1部材11は、外周部21aと外周ビード部22aと個別ビード部3aとマニホールド部4aと流路部5aとを含む。外周部21aおよび外周ビード部22aは外周領域R3に形成される。個別ビード部3aおよびマニホールド部4aは、複数のマニホールド領域R2の各々に形成される。流路部5aは流路領域R1に形成される。
外周部21aは、セパレータ10の外周縁に沿う矩形枠状の平坦部分である。外周ビード部22aは、第2部材12とは反対側に突出する台形ビードであり、セパレータ10の外周縁に沿う矩形枠状に形成される。外周ガスケット15aは、第1外面X1のうち外周ビード部22aの頂上面に矩形枠状に形成される。
マニホールド部4aは、第1内面Y1に対して窪んだ矩形状の部分である。マニホールド部4aには矩形状の貫通孔(マニホールド)Haが形成される。個別ビード部3aは、第2部材12とは反対側に突出する台形ビードであり、マニホールド部4aを包囲する矩形枠状に形成される。
流路部5aには、複数の流路溝51aと複数の流路溝52aとが形成される。各流路溝51aは、第1内面Y1に対して窪んだ溝状の空間である。各流路溝52aは、第1外面X1に形成された溝状の空間である。各流路溝51aと各流路溝52aとが平面視で交互に配列する。
第2部材12は、第1部材11と同様に、外周部21bと外周ビード部22bと個別ビード部3bとマニホールド部4bと流路部5bとを含む。外周部21bおよび外周ビード部22bは外周領域R3に形成される。個別ビード部3bおよびマニホールド部4bは、複数のマニホールド領域R2の各々に形成される。流路部5bは流路領域R1に形成される。
外周部21bは、セパレータ10の外周縁に沿う矩形枠状の平坦部分である。外周ビード部22bは、第1部材11とは反対側に突出する台形ビードであり、セパレータ10の外周縁に沿う矩形枠状に形成される。外周ガスケット15bは、第2外面X2のうち外周ビード部22bの頂上面に矩形枠状に形成される。
マニホールド部4bは、第2内面Y2に対して窪んだ矩形状の部分である。マニホールド部4bには矩形状の貫通孔(マニホールド)Hbが形成される。個別ビード部3bは、第1部材11とは反対側に突出する台形ビードであり、マニホールド部4bを包囲する矩形枠状に形成される。
流路部5bには、複数の流路溝51bと複数の流路溝52bとが形成される。各流路溝51bは、第2内面Y2に対して窪んだ溝状の空間である。各流路溝52bは、第2外面X2に形成された溝状の空間である。各流路溝51bと各流路溝52bとが平面視で交互に配列する。
第1部材11における外周部21aの第1内面Y1と第2部材12における外周部21bの第2内面Y2とが例えば溶接により接合される。図2の溶接部Wは、第1内面Y1と第2内面Y2とが溶接により接合される部分である。溶接部Wは、セパレータ10の外周縁に沿って矩形状に形成される。第1部材11の貫通孔Haと第2部材12の貫通孔Hbとは平面視で相互に重複する。すなわち、第1部材11と第2部材12とにわたる貫通孔(マニホールド)Hがセパレータ10に形成される。
図1のマニホールド領域R21内の貫通孔Hには酸化剤ガス(空気)が流通する。マニホールド領域R22内の貫通孔Hには、例えば燃料電池の発電により発生する熱を除去するための冷媒が流通する。マニホールド領域R23内の貫通孔Hには燃料ガス(水素)が流通する。また、第1部材11の流路溝51aと第2部材12の流路溝51bとの間には流路C0が形成される。流路C0には、マニホールド領域R22内の貫通孔Hから供給される冷媒が流通する。
第1ガスケット13は、第1外面X1に形成されるシール材である。第2ガスケット14は、第2外面X2に形成されるシール材である。第1ガスケット13および第2ガスケット14は、例えばVMQ(ビニルメチルシリコーンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、FKM(フッ素ゴム)等の各種の弾性材料で形成される。外周ガスケット15aおよび外周ガスケット15bの形成には、第1ガスケット13および第2ガスケット14と同様の弾性材料が使用される。
図2に例示される通り、第1ガスケット13は、第1外面X1のうち個別ビード部3aの頂上面に形成される。具体的には、第1ガスケット13は、マニホールド部4aを平面視で包囲する矩形枠状に形成される。ただし、第1ガスケット13の平面形状は任意である。同様に、第2ガスケット14は、第2外面X2のうち個別ビード部3bの頂上面に形成される。具体的には、第2ガスケット14は、マニホールド部4bを平面視で包囲する矩形枠状に形成される。ただし、第2ガスケット14の平面形状は任意である。
B:燃料電池の構成
図3は、以上に例示したセパレータ一体型ガスケット100を利用した燃料電池1の断面図である。図3に例示される通り、複数のセパレータ一体型ガスケット100と複数の膜-電極接合体(MEA)200とが交互に積層されることで燃料電池1が構成される。膜-電極接合体200は、一対の触媒電極層の間に電解質膜を介在させた積層体である。
膜-電極接合体200には貫通孔Hcが形成される。セパレータ10の貫通孔H(Ha,Hb)と膜-電極接合体200の貫通孔Hcとは平面視で相互に重なる。複数の貫通孔Hと複数の貫通孔Hcとが相互に連通することで、燃料電池1の各ガス(燃料ガス,冷媒,酸化剤ガス)を流通させるための流路が形成される。
各セパレータ一体型ガスケット100における第1部材11は、第1ガスケット13および外周ガスケット15aが膜-電極接合体200の表面に接触した状態で当該膜-電極接合体200に対向する。第1部材11の各流路溝52aと膜-電極接合体200の表面との間には流路C1が形成される。流路C1は、前述のマニホールド領域R21内の貫通孔Hから供給される酸化剤ガス(空気)を膜-電極接合体200の触媒電極層(カソード)に供給するための流路である。
他方、各セパレータ一体型ガスケット100における第2部材12は、第2ガスケット14および外周ガスケット15bが膜-電極接合体200の表面に接触した状態で当該膜-電極接合体200に対向する。第2部材12の各流路溝52bと膜-電極接合体200の表面との間には流路C2が形成される。流路C2は、前述のマニホールド領域R23内の貫通孔Hから供給される燃料ガス(水素)を膜-電極接合体200の触媒電極層(アノード)に供給するための流路である。
C:セパレータ一体型ガスケット100の製造方法
図4は、以上に例示したセパレータ一体型ガスケット100を製造するための具体的な手順を例示するフローチャートである。セパレータ10に第1ガスケット13を形成する手順が図4には例示されている。図4に例示される通り、準備工程P0において第1部材11と第2部材12とが用意される。準備工程P0の段階では、第1ガスケット13および第2ガスケット14は形成されていない。
準備工程P0の実施後の第1工程P1において、第1部材11と第2部材12とが相互に接合される。第1工程P1によりセパレータ10が構成される。前述の通り、第1内面Y1と第2内面Y2とが相互に対向する状態で第1部材11と第2部材12とが接合される。具体的には、前述の通り、セパレータ10の外周縁に沿って溶接部Wを矩形枠状に形成する溶接により第1部材11と第2部材12とが接合される。
第1工程P1の実行後の第2工程P2において、セパレータ10が治具70に固定される。図5は、第2工程P2によりセパレータ10が治具70に固定された状態(以下「固定状態」という)の説明図である。図5に例示される通り、治具70は、セパレータ10が載置される上面(以下「載置面」という)Qを含む構造体である。第2工程P2においては、第2部材12が載置面Qに対向する状態でセパレータ10が治具70に固定される。すなわち、第2部材12を挟んで載置面Qとは反対側に第1部材11が位置する。
図5に例示される通り、載置面Qは、第1面Q1と第2面Q2と第3面Q3と第4面Q4とを含む。第1面Q1は、第2部材12の外周部21bに対向する平坦面である。第2面Q2は、第1面Q1よりも低い平坦面であり、第2部材12の個別ビード部3bおよびマニホールド部4bに対向する。第3面Q3は、第1面Q1と同一面内に位置する平坦面である。第3面Q3は、第2部材12のうち個別ビード部3bと流路部5bとの間の平板状の部分6bに対向する。第4面Q4は、第2部材12の流路部5bに対向する平坦面である。図5に例示される通り、外周部21bが第1面Q1に接触し、部分6bが第3面Q3に接触し、流路部5bが第4面Q4に接触した状態で、セパレータ10は載置面Qに載置される。
図5に例示される通り、載置面Qには複数の吸引流路71が形成される。具体的には、第1面Q1と第3面Q3と第4面Q4との各々に吸引流路71が形成される。第2工程P2においては、複数の吸引流路71の各々を介した吸引により第2部材12の第2外面X2が載置面Qに吸着される。第2部材12の吸引には、例えばポンプ等の吸引機構(図示略)が利用される。
以上に説明した第2部材12の吸着に加えて、第2工程P2においては、第1部材11と第2部材12との間の空気が吸引される。第1部材11と第2部材12との間の空気の吸引には、図5の吸引治具80が利用される。なお、実際にはセパレータ10の複数の貫通孔Hの各々について吸引治具80が設置されるが、以下の説明においては便宜的に1個の貫通孔Hに着目する。
吸引治具80は、柱状部81と鍔状部82とを含む構造体である。柱状部81は、第1端部E1と第2端部E2とを含む柱状の部分である。第1端部E1と第2端部E2とは相互に反対側に位置する。鍔状部82は第2端部E2に設置される。鍔状部82は、柱状部81の側面から全周にわたり径方向に張出す鍔状の部分である。
柱状部81は、第1部材11側から貫通孔Hに挿入される。第2工程P2においては、第2部材12の第2外面X2と治具70の第2面Q2との間に第1保持具91が設置される。第1保持具91は、柱状部81を包囲する環状の構造体である。第2部材12の第2外面X2に第1保持具91の上面が接触し、第1保持具91の下面が第2面Q2に接触する。
また、柱状部81が貫通孔Hに挿入された状態では、鍔状部82が第1部材11の第1外面X1に対向する。第2工程P2においては、第1部材11の第1外面X1と鍔状部82の下面との間に第2保持具92が設置される。第2保持具92は、柱状部81を包囲する環状の構造体である。第1部材11のうち平坦部34aの第1外面X1に第2保持具92の下面が接触し、第2保持具92の上面が鍔状部82の下面に接触する。
貫通孔Hに挿入された柱状部81の側面は、貫通孔Haの内周面に密着するとともに貫通孔Hbの内周面に密着する。すなわち、貫通孔Hが柱状部81により閉塞される。したがって、第1部材11のマニホールド部4aと第2部材12のマニホールド部4bとの間の空間Sは柱状部81により密閉される。空間Sは、第1部材11と第2部材12との間の空間である。
図5に例示される通り、柱状部81の第1端部E1(具体的には柱状部81の先端)には開口83が形成される。柱状部81の側面には吸引口84が形成される。また、柱状部81の内部には連通流路85が形成される。連通流路85は、開口83と吸引口84とを連通させる流路である。連通流路85の一端が開口83であり、連通流路85の他端が吸引口84であると換言してもよい。
図5に例示される通り、柱状部81が貫通孔Hを貫通する状態では、第1端部E1は第2部材12のマニホールド部4bから治具70側に突出する。第2部材12から突出した第1端部E1は、治具70の第2面Q2に形成された取付孔73に挿入される。取付孔73の底面には吸引流路72が形成される。
柱状部81が貫通孔Hに挿入された状態では、第1部材11のマニホールド部4aと第2部材12のマニホールド部4bとの間の空間S内に吸引口84が位置する。すなわち、取付孔73の吸引流路72は、開口83と連通流路85と吸引口84とを介して空間Sに連通する。なお、連通流路85に連通する複数の吸引口84を柱状部81の側面に形成してもよい。
第2工程P2においては、吸引流路72と連通流路85とを介して第1部材11と第2部材12との間の空気が吸引される。第1部材11と第2部材12との間の空気が吸引されることで、第1部材11が第2部材12側に接触した状態に保持される。すなわち、吸引治具80を利用した吸引により第1部材11の変形が矯正される。以上の説明から理解される通り、第2工程P2により成立する固定状態は、第2部材12の第2外面X2が治具70に吸着され、かつ、貫通孔Hに挿入される吸引治具80により第1部材11と前記第2部材12との間の空気が吸引された状態である。
第2工程P2の実施後の第3工程P3は、第2部材12の吸引と吸引治具80による吸引とが第2工程P2と同様に維持された状態で実施される。すなわち、第2工程P2により第2部材12が治具70に固定された図5の固定状態において第3工程P3が実施される。第3工程P3においては、図2に例示した通り、第1ガスケット13と外周ガスケット15aとが形成される。第1ガスケット13は、第1部材11の第1外面X1のうち個別ビード部3aの頂上面に形成される。第1ガスケット13は、複数のマニホールド領域R2(R21~R23)の各々について形成される。外周ガスケット15aは、第1外面X1のうち外周ビード部22aの頂上面に形成される。第1ガスケット13および外周ガスケット15aの形成には、例えばスクリーン印刷またはジェットディスペンサ等の公知の塗布技術が任意に採用される。
以上の工程による第1ガスケット13および外周ガスケット15aの形成後に、第2工程P2および第3工程P3と同様の手順により、セパレータ10の第2外面X2に第2ガスケット14および外周ガスケット15bが形成される。
以上の説明から理解される通り、第1部材11と第2部材12とを接合する第1工程P1の実施後に第1ガスケット13および外周ガスケット15aが形成されるから、第1ガスケット13または外周ガスケット15aの材料の付着に起因した第1部材11と第2部材12との接合不良が抑制される。また、第2工程P2においては、貫通孔Hに挿入された吸引治具80により第1部材11と第2部材12との間の空気が吸引されることで、第1部材11の変形が矯正される。したがって、第3工程P3において、第1ガスケット13を安定的かつ高精度に形成できる。以上の説明の通り、本実施形態によれば、第1部材11と第2部材12との接合不良の抑制と、第1ガスケット13および第2ガスケット14の安定的かつ高精度な形成とを両立できる。
対比例1および対比例2と比較した本実施形態の効果を以下に説明する。対比例1は、第1部材11と第2部材12との接合前に第1部材11の第1外面X1に第1ガスケット13および外周ガスケット15aを形成する形態である。対比例1においては、図6に例示される通り、第1部材11が単独で治具70に直接的に吸着される。したがって、第1ガスケット13および外周ガスケット15aを安定的かつ高精度に形成し易い。ただし、第1ガスケット13の形成後に第1部材11と第2部材12とが接合されるから、第1ガスケット13または外周ガスケット15aの材料の付着に起因した接合不良が発生する場合がある。
対比例2は、第1部材11と第2部材12との接合後に第1ガスケット13および外周ガスケット15aを形成するが、第1部材11と第2部材12との間の空気を吸引しない形態である。対比例2においては、第1部材11と第2部材12との接合の段階で第1ガスケット13および外周ガスケット15aは形成されていないから、第1ガスケット13または外周ガスケット15aの材料の付着に起因した接合不良が対比例1と比較して抑制される。ただし、第1部材11が治具70に直接的に吸着されないから、図7に例示される通り、対比例1と比較して、第1部材11に反りまたはうねり等の変形が発生するという問題がある。以上の状態では、第1ガスケット13の下地となる第1外面X1が水平面に対して傾斜するから、第1ガスケット13の材料の液滴を第1外面X1に安定的かつ高精度に塗布できない。したがって、対比例2においては、第1ガスケット13を安定的かつ高精度に形成することは困難である。
図8は、第1部材11のうち第1ガスケット13が形成される個別ビード部3aの高さの誤差(エラーバー)を、第1部材11の単品の状態と、対比例2(図7)により製造されたセパレータ10と、本実施形態により製造されたセパレータ10とについて測定した結果である。個別ビード部3aの高さを相異なる30点で測定した結果が図8には図示されている。具体的には、第1外面X1の平均高さを基準値(=0)とした場合の誤差が図8には図示されている。図8から理解される通り、対比例2においては個別ビード部3aの高さの誤差が大きい。対比例2と比較して、本実施形態によれば、個別ビード部3aの高さの誤差が、第1部材11の単品の状態と同等の水準まで低減される。
図9は、第1ガスケット13の膜厚(個別ビード部3aの中心部における膜厚)を、第1部材11の単品の状態で第1ガスケット13を形成した場合と、と、対比例2(図7)により製造されたセパレータ10と、本実施形態により製造されたセパレータ10とについて測定した結果である。対比例2においては、個別ビード部3aの高さの誤差に加えてうねりによる位置ズレが発生する。したがって、図9から理解される通り、対比例2においては、第1ガスケット13の膜厚が部分的に低下する箇所が発生する。本実施形態によれば、対比例2と比較して第1ガスケット13の膜厚の誤差が低減される。具体的には、第1部材11の単品の状態で第1ガスケット13を形成した場合と同等の水準まで第1ガスケット13の膜厚の誤差が低減される。図8および図9から、本実施形態により第1ガスケット13を安定的かつ高精度に形成できることが確認できる。
また、本実施形態においては、柱状部81の側面に形成された吸引口84から第1部材11と第2部材12との間の空気が吸引されるから、第1部材11と第2部材12との間の空気を吸引するための構造および工程が簡素化されるという利点がある。また、吸引治具80のうち治具70の取付孔73に挿入される第1端部E1の開口83を介して第1部材11と第2部材12との間の空気が吸引される。すなわち、第1部材11と第2部材12との間の空気を吸引するための機構を、第1部材11側に設置する必要がない。したがって、第1部材11と第2部材12との間の空気を第1部材11側から吸引する構成と比較して、第3工程P3において第1外面X1に第1ガスケット13を形成し易いという利点もある。
また、第2工程P2および第3工程P3において、治具70と第2外面X2との間に第1保持具91が介在する。したがって、第2工程P2および第3工程P3における第2部材12の変形を抑制できる。また、第2工程P2および第3工程P3において鍔状部82と第1外面X1との間に第2保持具92が介在する。したがって、第2工程P2および第3工程P3における第2部材12の変形を抑制できる。
D:変形例
以上に例示した形態に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
(1)前述の形態においては、第1部材11の第1外面X1のうち個別ビード部3aの頂上面に第1ガスケット13が形成される構成を例示したが、第1ガスケット13が形成される位置は以上の例示に限定されない。例えば、貫通孔Haを包囲する形状の第1ガスケット13が、第1外面X1のうちマニホールド部4aの頂上面に形成されてもよい。第2ガスケット14が形成される位置も同様に、第2外面X2のうち個別ビード部3bの頂上面には限定されない。例えば、貫通孔Hbを包囲する形状の第2ガスケット14が、第2外面X2のうちマニホールド部4bの頂上面に形成されてもよい。
(2)第2工程P2において、吸引流路71を介した吸引により第2部材12を治具70に固定する処理と、吸引流路72を介して第1部材11と第2部材12との間の空気を吸引する処理との先後は任意である。両方の処理を同時に開始してもよいし、一方の処理の実施前に他方の処理を開始してもよい。
(3)第2工程P2において第1保持具91または第2保持具92は省略されてもよい。第2保持具92が省略された構成では、吸引治具80のうち鍔状部82が省略されてもよい。
1…燃料電池、
100…セパレータ一体型ガスケット、
200…膜-電極接合体、
10…セパレータ、
11…第1部材、
12…第2部材、
13…第1ガスケット、
14…第2ガスケット、
21a,21b…外周部、
22a,22b…外周ビード部、
3a,3b…個別ビード部、
4a,4b…マニホールド部、
5a,5b…流路部、
70…治具、
71,72…吸引流路、
80…吸引治具、
81…柱状部、
82…鍔状部、
83…開口、
84…吸引口、
85…連通流路、
91…第1保持具、
92…第2保持具、
H,Ha,Hb…貫通孔、
P0…準備工程、
P1…第1工程、
P2…第2工程、
P3…第3工程、
Q…載置面、
W…溶接部、
X1…第1外面、
X2…第2外面、
Y1…第1内面、
Y2…第2内面。

Claims (5)

  1. 第1部材と、
    前記第1部材に積層される第2部材と、
    前記第1部材のうち前記第2部材とは反対側の第1面に形成されるガスケットと
    を具備し、
    前記第1部材と前記第2部材との間の流路と、
    前記第1部材と前記第2部材とにわたる貫通孔と
    が形成されるセパレータ一体型ガスケットの製造方法であって、
    前記第1部材と前記第2部材とを接合する第1工程と、
    前記第1工程の実施後の第2工程であって、前記第2部材のうち前記第1部材とは反対側の第2面を治具に吸着し、前記貫通孔に挿入される吸引治具により前記第1部材と前記第2部材との間の空気を吸引する第2工程と、
    前記第2工程により前記第2部材が前記治具に固定された状態で、前記第1面に前記ガスケットを形成する第3工程と
    を含むセパレータ一体型ガスケットの製造方法。
  2. 前記吸引治具は、前記貫通孔に挿入される柱状部を含み、
    前記第3工程においては、前記柱状部の側面に形成された吸引口から前記第1部材と前記第2部材との間の空気を吸引する
    請求項1の製造方法。
  3. 前記柱状部は、開口が形成された第1端部を含み、
    前記柱状部は、前記開口と前記吸引口とを連通させる連通流路を具備し、
    前記第2工程および前記第3工程において、前記第1端部は前記治具の取付孔に挿入され、
    前記第2工程においては、前記第1端部の前記開口を介して前記第1部材と前記第2部材との間の空気を吸引する
    請求項2の製造方法。
  4. 前記第2工程および前記第3工程においては、前記柱状部を包囲する環状の第1保持具を、前記治具と前記第2面との間に介在させる
    請求項3の製造方法。
  5. 前記柱状部は、前記第1端部とは反対側の第2端部を含み、
    前記吸引治具は、前記第2端部に設置された鍔状部を含み、
    前記第2工程および前記第3工程においては、前記柱状部を包囲する環状の第2保持具を、前記鍔状部と前記第1面との間に介在させる
    請求項3または請求項4の製造方法。
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