JP7430103B2 - 杭引き抜き孔の地盤改良方法 - Google Patents

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Description

本発明は、既存杭を引き抜いた後に残る杭引き抜き孔の地盤改良方法に関する。
建築物や構造物の建て替えに際しては、建築物や構造物を撤去した後、地中に埋設された既存の埋設杭を引き抜き、引き抜いたあとに残る引き抜き孔(以下「杭引き抜き孔」という)を埋め戻す必要がある。
地盤に埋設された既存杭の引抜き作業は、「縁切・引抜工法」により実施するのが一般的である。
図4は、縁切・引抜工法を模式的に示す説明図である。
まず、図示しない掘削装置のケーシング82が埋設杭80の上方に位置し、かつ、ケーシング82の軸心が埋設杭80の軸心と一致するように位置決めする。
次いで、掘削装置の駆動部によりケーシング82を回転させつつ下方に移動させることにより、ケーシング82で埋設杭80の周囲の地盤Gを掘削する。この際、図示しない給水装置から水が供給されることでケーシング82の水噴射孔から水Wが噴射される。
これにより、水噴射孔から噴射された水により地盤Gが解かされて泥水状となり、ケーシング82はその自重と回転力により地盤Gに進入し、埋設杭80の半径方向外側の地盤Gを円筒状に掘削していく。
やがて、図4Aに示すように、ケーシング82の先端が埋設杭80の下端とほぼ同じ位置に到達したならば、ケーシング82を回転させつつ地盤Gから抜き取る。
これにより、埋設杭80の全長にわたって埋設杭80の外周面と地盤Gとが縁切りされた状態となる。この時、埋設杭80の外周面と掘削孔84の内周面との間には、噴射された水と掘削された土砂とが混じった泥土86が存在している。
次いで、埋設杭80に不図示のワイヤを巻回し、このワイヤの地上部側の一端を他の重機によって引き上げることで埋設杭80が地盤Gから引き抜かれ撤去される(図4B左図および図4C左図参照)。掘削孔から埋設杭80が引き抜かれた地盤Gには、杭引き抜き孔88が形成され、この杭引き抜き孔88には泥土86が溜まることとなる。
このため、杭引き抜き孔88内に流動化処理土90を投入して、杭引き抜き孔88内の地盤を周囲の地盤Gと同様に改良することが行なわれる。例えば図4Bのように埋設杭80が比較的短く自立性の高い地盤Gの場合は、埋設杭80を引抜いた後に流動化処理土90を投入することが多い。また、例えば図4Cのように、埋設杭80が比較的長く自立性の低い地盤Gの場合は、上部に釜場を設け、そこに流動化処理土90を投入しながら埋設杭80を引き抜くことが多い。
特開2015-183501号公報 特開昭56-153013号公報
しかしながら、地盤Gの自立性が高い場合および地盤Gの自立性が低い場合のいずれであっても、流動化処理土90は埋設杭80の体積分は充填されるものの、杭引き抜き孔88の下部は、図4Aおよび図4Bの右図のように引抜きの際に発生する泥土86が堆積したままになってしまう。このように2層化した杭引抜き孔をエアブローやスパイラルオーガを用いて撹拌を試みた例があるが、良好な結果は得られていない。
杭引き抜き孔88の下部に堆積した泥土86は、極度に強度が小さいため、新設杭(既製コンクリート杭、場所打ち杭のうちアースドリル工法)を打設する際、孔壁崩壊や孔曲がりなどのトラブルを引き起こす主要因となるという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、縁切・引抜工法等を用いて既存杭を引き抜いた後の杭引き抜き孔について、その全長に渡り地盤を改良することを目的とする。
上述の目的を達成するため、請求項1の発明にかかる杭引き抜き孔の地盤改良方法は、既存杭を引き抜いた後に残る杭引き抜き孔の地盤改良方法であって、孔底に孔底堆積土が堆積する前記杭引き抜き孔に体積調整砂を投入する砂投入工程と、撹拌装置からスラリー状の固化材を吐出させながら前記杭引き抜き孔内の土砂を撹拌し、前記杭引き抜き孔を充填する改良体を形成する撹拌工程と、を含んだことを特徴とする。
請求項2の発明にかかる杭引き抜き孔の地盤改良方法は、前記杭引き抜き孔の直径をDk、前記既存杭とその周囲に配置されたソイルセメントを含む直径をDs、前記既存杭の長さをL、前記改良体の長さをH、前記固化材の添加による体積増加率をα%とした場合、前記体積調整砂の投入体積Vaを下記式(A)とする、ことを特徴とする。
Va = Ds×L×π/4-Dk×H×π/4×α/(α+100) ・・・(A)
請求項3の発明にかかる杭引き抜き孔の地盤改良方法は、前記改良体を、養生日数28日後以降の一軸圧縮強さが150kN/m以上2000kN/m以下となるよう形成する、ことを特徴とする。
請求項4の発明にかかる杭引き抜き孔の地盤改良方法は、前記撹拌工程では、前記撹拌装置を前記杭引き抜き孔の深さ方向に沿って複数回往復させ、前記杭引き抜き孔の深さが所定値以上の場合、前記杭引き抜き孔を深さ方向に複数の区間に分割し、前記撹拌装置を各区間ごとに複数回往復させる、ことを特徴とする。
請求項5の発明にかかる杭引き抜き孔の地盤改良方法は、前記撹拌工程における羽根切回数を下記式(B)で算出されるN回/m以上とする、ことを特徴とする。
羽根切回数N=撹拌翼枚数×オーガ回転数×(1/掘進速度+(1/反復速度)×(反復回数×2-1)) ・・・(B)
請求項6の発明にかかる杭引き抜き孔の地盤改良方法は、前記撹拌工程における前記スラリー状の固化材の水/固化材比を100%とする、ことを特徴とする。
請求項7の発明にかかる杭引き抜き孔の地盤改良方法は、前記スラリー状の固化材に外割で1.5%以上3.0%以下のベントナイトを添加する、ことを特徴とする。
請求項8の発明にかかる杭引き抜き孔の地盤改良方法は、前記撹拌工程では、前記撹拌装置の撹拌翼を押し下げ時に正転方向、引き上げ時に反転方向に回転させる、ことを特徴とする。
請求項9の発明にかかる杭引き抜き孔の地盤改良方法は、前記撹拌工程後に、前記杭引き抜き孔内の前記改良体の天端が周辺地盤表面より低い位置にある場合、前記改良体の天面と前記周辺地盤表面との間を改良土または掘削発生土により埋め戻す埋め戻し工程を更に含む、ことを特徴とする。
本発明によれば、縁切・引抜工法等を用いて既存杭を引き抜いた後の杭引き抜き孔について、その全長に渡り地盤を改良することができる。
請求項1の発明によれば、孔底堆積土が堆積する杭引き抜き孔に体積調整砂を投入し、固化材を吐出させながら杭引き抜き孔内の土砂を撹拌して、更に余剰の泥水が排出されて杭引き抜き孔全長に渡る改良体を形成する。これにより、杭引き抜き孔を含む地盤の強度が向上し、例えば新設杭の打設作業を安定して行う上で有利となる。
請求項2の発明によれば、体積調整砂の投入量を容易に算定し、杭引き抜き作業の作業効率を向上させる上で有利となる。
請求項3の発明によれば、一軸圧縮強さqu=150~2000kN/m
の改良体で杭引抜き孔を埋め戻すことができ、新設杭打設時おいて孔曲がりが生じづらく、新設杭の打設を効率よく作業する上で有利である。
請求項4の発明によれば、杭引き抜き孔の深さが所定値以上の場合に、深さ方向に分割した複数の区間ごとに撹拌作業を行うので、杭引き抜き孔内の土砂成分をより均一にして地盤強度を向上させる上で有利となる。
請求項5の発明によれば、撹拌工程における羽根切回数を上記式(B)で算出される回数以上とするので、杭引き抜き孔内の土砂を十分に撹拌し、良好な改良体を築造する上で有利となる。
請求項6の発明によれば、固化材の水セメント比の標準値を100%として配合計画を行う。これにより、孔内の泥水よりも固化材の密度が大きくなり、孔口からの逸水による固化材の流失を避け、体積調整砂の計算を容易にする上で有利となる。
請求項6の発明によれば、固化材に対して外割で1.5%以上3.0%以下のベントナイトを添加するので、強度に影響を及ぼすことなく改良体のブリーフィングを抑える上で有利となる。
請求項7の発明によれば、撹拌装置の撹拌翼を押し下げ時に正転方向、引き上げ時に反転方向に回転させるので、撹拌装置内で効率的に土塊を細断する上で有利となる。
請求項8の発明によれば、杭引き抜き孔内の改良体の天端が周辺地盤表面より低い位置にある場合に埋め戻し作業を行うので、作業員や作業機器の転落を防止する上で有利となる。
実施の形態にかかる地盤改良方法の工程を模式的に示す説明図である。 体積調整砂の投入量を算出するための参考図である。 撹拌装置の構成を示す図である。 縁切・引抜工法を模式的に示す説明図である。
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる杭引き抜き孔の地盤改良方法(以下「地盤改良方法」という)の好適な実施の形態を詳細に説明する。
実施工における改良体の目標強度は、本実施の形態の標準配合による固化材添加量ΔMc=150kg/m、水セメント比W/C=100%の改良で、平均一軸圧縮強さquは150~2000kN/m程度とする。すなわち、杭引き抜き孔を埋め戻す改良体を、養生日数28日後以降の一軸圧縮強さが150kN/m以上2000kN/m以下となるよう形成する。
図1は、実施の形態にかかる地盤改良方法の工程を模式的に示す説明図である。
図1Aに示すように、地盤改良方法の実施に先立って、縁切・引抜工法により既存杭引抜き作業を完了させる(縁切・引抜工法については図4参照)。既存杭が埋まっていた後に残る杭引き抜き孔12の孔底付近には、既存杭を引き抜く際の加水により発生する泥土化された孔底堆積土14が堆積する。孔底堆積土14は、高含水で非常に軟弱である。また、杭引き抜き孔12の地表付近には泥水15が溜まる。引き抜かれた既存杭本体および既存杭の周面に付着したソイルセメントが地上に排出されるため、杭引き抜き孔12内の固形成分は周囲の地盤Gと比較して非常に少ない状態となっている。
なお、本地盤改良方法の適用に当たり、杭引き抜き孔12内には大きな障害物(例えば部分的に地中に残った既存杭)などが残置していないものとする。
つぎに、図1Bに示すように、改良体30(図1F参照)を築造するための体積調整砂16を投入する。すなわち、孔底に孔底堆積土14が堆積する杭引き抜き孔12に体積調整用の砂(体積調整砂16)を投入する砂投入工程を行う。体積調整砂16は、陸砂、砕砂、浚渫砂などが使用できるが、杭引き抜き孔12への投入が容易な細粒分の少ない砂が望ましい。
図2は、体積調整砂の投入量を算出するための参考図である。
杭引き抜き孔12の径、すなわち引き抜き作業に用いたケーシング20(図1C参照)の突起含む直径(ケーシング径)をDk、既存杭Pの直径(杭径)をDp、既存杭Pとその周囲に配置されたソイルセメントSを含む直径(杭周ソイル径)をDs、既存杭Pの長さをL、改良体30の長さ(改良体長)をHとする。
孔底堆積土14の体積をVs、体積調整砂16の体積をVa、撹拌対象土の体積をVとすると、体積Vaは下記式(1)~(3)のように求めることができる。なお、本実施の形態では、後述する固化材(スラリー)の添加による体積増加をα%と仮定する。
V×(1+α/100) = Dk×H×π/4 ・・・(1)
V = Vs+Va・・・(2)
より
Va = Ds×L×π/4-Dk×H×π/4×α/(α+100) ・・・(3)
また、それぞれの土質の高さは、杭引き抜き孔12の断面積で割れば求められるので、孔底堆積土14の天端深度Hsおよび体積調整砂16の天端深度Haは、それぞれ下記式(4)、(5)のようになる。
Hs = H-4Vs/(Dk×π) ・・・(4)
Ha = H-4V/(Dk×π) ・・・(5)
より具体的な例について検討する。
一般的な杭体およびケーシング20の例として、図2に示すように、杭径Dp=500mm、杭周ソイル径Ds=650mm、杭長L=28mの既設杭を、内径800mmのケーシング20(突起を含む外径Dk=1000mm)で縁切りをして引抜き、体積増加率α=20%として改良体長H=29mの改良体を築造する場合について考える。
この場合、孔底堆積土14の体積:Vs、体積調整砂16の体積:Va、撹拌対象土の体積:V、孔底堆積土14の天端深度:Hsおよび体積調整砂16の天端深度:Haは、以下のように計算できる。
Vs=Dk×H×π/4-Ds×L×π/4
=1.0×29×π/4-0.65×28×π/4
=13.5m
Va=Ds×L×π/4-Dk×H×π/24
=0.65×28×π/4-1.0×29×π/4×20/(20+100)
=5.5m
V=Vs+Va=Dk×H×π×1/4×100/(20+100)
=19.0m
Hs=H-4Vs/(Dk×π)
=29-4×13.5/(1.0×π)
=11.8m
Ha=H-4V/(Dk×π)
=29-4×19.0/(1.0×π)
=4.8m
つづいて、図1Cに示すように、既存杭の引き抜きに用いた掘削装置(図示なし)のケーシング20の先端に撹拌装置22を取り付け、撹拌装置22の中心を杭引き抜き孔12の中心と一致させる。そして、撹拌装置22の掘削翼24を回転させ、掘削翼24が所定の孔底深度に達するまで空堀りを行う。孔内の掘削抵抗が高い場合また撹拌装置22の中空部が詰まってしまう恐れがある場合は、注水または圧縮空気を併用使用しながら掘削を行う。
図3は、撹拌装置の構成を示す図であり、図3Aはドラム26を装着した状態の外観図、図3Bはドラム26を除去した状態の図(ドラム内観図)である。
撹拌装置22は、撹拌対象土を撹拌混合するための治具であり、固定翼260を持つドラム26と撹拌翼28と掘削翼24とで構成される。撹拌装置22の先端部には、図示しない固化材スラリー吐出口が設けられている。ドラム26の外周に設けられているドラム回転防止板262によってドラム26(固定翼260)が固定されており、回転する撹拌翼28と固定翼260とを交互に配置することで粘土塊の共回りを抑制し撹拌混合する。
撹拌装置22は、図示しないアダプターを介してケーシング20(図1参照)とジョイントされており、アダプターによりケーシング20の動力(回転)が撹拌装置22に伝達される。
ケーシング20は、縁切・引抜工法において,既存杭と地盤Gとの摩擦抵抗を小さくし、縁を切るための機材であり、図示しない杭打機に設置されているオーガ駆動装置より動力(回転)を得る。
図1の説明に戻り、撹拌装置22の掘削翼24が孔底深度に達すると、一旦撹拌対象範囲の上端位置まで反復させ、掘削翼24を回転させつつスラリー状の固化材(図示なし)を吐出させながら孔底深度まで掘進する。その後、スラリーの吐出を停止し撹拌装置22を上下2往復以上反復させて撹拌混合する。すなわち、撹拌装置22から固化材を吐出させながら杭引き抜き孔12内の土砂を撹拌する撹拌工程を行う。
この時、杭引き抜き孔12の深さが大きい場合には、杭引き抜き孔12を深さ方向に複数に分割して各区間ごとに撹拌を行うようにしてもよい。すなわち、撹拌工程では、撹拌装置22を杭引き抜き孔12の深さ方向に沿って複数回往復させるが、杭引き抜き孔12の深さが所定値以上の場合、杭引き抜き孔12を深さ方向に複数の区間に分割し、撹拌装置22を各区間ごとに複数回往復させるようにしてもよい。
例えば、杭引き抜き孔12の深さが15m以上の場合には、複数区間に分割して撹拌作業を行ってもよい。
これにより、長尺な杭引き抜き孔12の撹拌であっても比較的小規模の機動性の高い重機での施工が可能になる。
例えば図1において杭引き抜き孔12の深さを約30mとすると、孔底から深さ約15mまでを第1区間F1、深さ約15mから地表までを第2区間F2とする。そして、図1Dに示すように、最初に撹拌装置22を第1区間F1内で複数回往復させ、その後、撹拌装置22が深さ15m付近となるまでケーシング20引き上げ、上部ケーシングを取り外した後、第2区間F2内で複数回往復させる。
なお、撹拌時には、固化材を注入した体積分と同じ量の孔内泥水が杭孔天端より溢れ出すので、予め釜場を設置して泥水処理ができるようにしておくのが好ましい。
固化材としては、地盤改良に適している六価クロム溶出量低減型を使用することを標準とする。六価クロム溶出量低減型固化材が使用できない場合は、普通ポルトランドセメント、高炉セメントの使用を検討する。ただし、高炉セメントは他の固化材と比べ強度が発現しにくいので、添加量等について必要に応じて検討する。
また、添加材としてベントナイトを必要に応じ添加する。ベントナイトは、改良体30のブリーディングを抑えるために添加する。特に引抜く既存杭が長く、改良体長が長くなるような場合は添加することが望ましい。添加率は、強度に影響を及ぼさない範囲として固化材スラリー量の外割でおおよそ1.5%以上3%以下を標準とする。また、膨潤度の低いものが望ましい。
本実施の形態では、撹拌対象土1m当たりの固化材添加150kg/m以上を固化材スラリーに添加することを標準とする。既存杭引抜き段階では、地盤調査(ボーリング調査)がなされていない場合もあり、また新規の建築物の施工会社が決まっていない場合もある。そのため、既存杭が埋設されている地盤Gの各深度毎の配合試験を実施することは現実的に難しい。そこで、強度が発現しにくい粘性土においても平均一軸圧縮強さ150kN/mが確保できる添加量を標準とする。
固化材スラリーの水セメント比は100%を標準として配合計画を行う。これは孔内泥水よりも密度を大きくすることで、孔口からの逸水による固化材の流失を避け、体積調整砂の計算を容易にするためである。ただし、孔内堆積土12の発生量や、体積調整砂16の量、改良体長など、施工条件に合わせて総合的に判断して配合を検討する。また、セメントの種別、添加量、及び水セメント比を選定し、現場配合(バッチ配合)を作成する。
標準的な配合として、撹拌対象土1m当たりの固化材添加量は150kg/m3、スラリー添加量(W/C)は100%であればスラリー添加量は約200l/m3となるので、体積膨張率は20%となる。
また、本実施の形態では、撹拌工程における羽根切回数Nを528回/m以上を標準とする。
なお、羽根切回数Nは下記式(6)によって算出する。
羽根切回数N = 撹拌翼枚数×オーガ回転数×(1/掘進速度+(1/反復速度)×(反復回数×2-1)) ・・・(6)
上記式(6)を構成する各因子について説明する。
a.撹拌翼枚数(枚)
撹拌翼枚数は、撹拌翼28及び掘削翼24の枚数を数え、8枚を標準とする。
b.オーガ回転数(rpm)
杭抜きで使用するオーガ駆動装置の回転数を使用する。
c.掘進・反復速度(m/min)
本実施の形態では、掘進時に固化材スラリーを注入する方式とし、掘進速度は撹拌対象土の密度や含水量、オーガ駆動装置の能力に左右されるが、最終的には反復速度を含め必要な羽根切回数以上が確保できる速度で設定される。撹拌混合時のオーガ回転方向は、掘進時正転(時計回り)、引上げ時逆転(反時計回り)とする。すなわち、撹拌工程では、撹拌装置22の撹拌翼28を押し下げ時に正転方向、引き上げ時に反転方向に回転させる。これにより、撹拌装置22内で効率的に土塊を細断することができる。
d.反復回数
反復回数は2回以上を標準として撹拌改良仕様を設定する。
撹拌工程が終了すると、図1Fに示すようにケーシング20を引上げて杭引き抜き孔12から撹拌装置22を撤去する。撹拌工程により、杭引き抜き孔12内の土砂は改良体30となっている。
なお、撹拌装置22の引き抜き時に、ケーシング20および撹拌装置22の体積分だけ改良体天端が低下する。このため、作業終了時には杭引き抜き孔12の開口部に対し転落防止措置として掘削発生土または改良土31等による埋め戻しを行う。
すなわち、撹拌工程後に、杭引き抜き孔12内の改良体30の天面が周辺土壌表面より低い位置にある場合、改良体30の天面と周辺地盤表面との間を改良土31または掘削発生土により埋め戻す埋め戻し工程を行う。
以上説明したように、実施の形態にかかる地盤改良方法によれば、縁切・引抜工法等を用いて既存杭を引き抜いた後の杭引き抜き孔12について、その全長に渡り地盤を改良することができる。
より詳細には、本地盤改良方法は、孔底堆積土14が堆積する杭引き抜き孔12に体積調整砂16を投入し、固化材を吐出させながら杭引き抜き孔12内の土砂を撹拌して、杭引き抜き孔12全長に渡る改良体30を形成する。これにより、杭引き抜き孔12を含む地盤の強度が向上し、例えば新設杭の打設作業を安定して行う上で有利となる。
また、本地盤改良方法は、体積調整砂16の投入量を容易に算定することができ、杭引き抜き作業の作業効率を向上させる上で有利となる。
また、本地盤改良方法において、改良体を一軸圧縮強さqu=150kN/m以上2000kN/m以下で形成すれば、上記強度の改良体で杭引抜き孔を埋め戻すことができ、新設杭打設時おいて孔曲がりが生じづらく、新設杭の打設を効率よく作業する上で有利である。
また、本地盤改良方法において、杭引き抜き孔12の深さが所定値以上の場合に、深さ方向に分割した複数の区間ごとに撹拌作業を行うようにすれば、長尺な杭引き抜き孔12の撹拌であっても比較的小規模の重機での施工が可能になる。
また、本地盤改良方法において、撹拌工程における羽根切回数を上記式(6)で算出される回数以上、すなわち528回/m以上とすれば、杭引き抜き孔12内の土砂を十分に撹拌し、良好な改良体30を築造する上で有利となる。
また、本地盤改良方法において、固化材の水セメント比の標準値を100%として配合計画を行うようにすれば、孔内の泥水よりも固化材の密度が大きくなり、孔口からの逸水による固化材の流失を避け、体積調整砂16の計算を容易にする上で有利となる。
また、本地盤改良方法において、固化材に対して外割で1.5%以上3.0%以下のベントナイトを添加するようにすれば、強度に影響を及ぼすことなく改良体30のブリーフィングを抑える上で有利となる。
また、本地盤改良方法において、撹拌装置22の撹拌翼28を押し下げ時に正転方向、引き上げ時に反転方向に回転させるので、撹拌装置22内で効率的に土塊を細断する上で有利となる。
また、本地盤改良方法において、杭引き抜き孔12内の改良体30の天端が周辺地盤表面より低い位置にある場合に埋め戻し作業を行うようにすれば、作業員や作業機器の転落を防止する上で有利となる。
12 杭引き抜き孔
14 孔底堆積土
15 泥水
16 体積調整砂
22 撹拌装置
24 掘削翼
30 改良体

Claims (9)

  1. 既存杭を引き抜いた後に残る杭引き抜き孔の地盤改良方法であって、
    孔底に孔底堆積土が堆積する前記杭引き抜き孔に体積調整砂を投入する砂投入工程と、
    撹拌装置からスラリー状の固化材を吐出させながら前記杭引き抜き孔内の土砂を撹拌し、前記杭引き抜き孔を充填する改良体を形成する撹拌工程と、
    を含んだことを特徴とする杭引き抜き孔の地盤改良方法。
  2. 前記杭引き抜き孔の直径をDk、前記既存杭とその周囲に配置されたソイルセメントを含む直径をDs、前記既存杭の長さをL、前記改良体の長さをH、前記固化材の添加による体積増加率をα%とした場合、前記体積調整砂の投入体積Vaを下記式(A)とする、
    ことを特徴とする請求項1記載の杭引き抜き孔の地盤改良方法。
    Va = Ds×L×π/4-Dk×H×π/4×α/(α+100) ・・・(A)
  3. 前記改良体を、養生日数28日後以降の一軸圧縮強さが150kN/m以上2000kN/m以下となるよう形成する、
    ことを特徴とする請求項1または2記載の杭引き抜き孔の地盤改良方法。
  4. 前記撹拌工程では、前記撹拌装置を前記杭引き抜き孔の深さ方向に沿って複数回往復させ、
    前記杭引き抜き孔の深さが所定値以上の場合、前記杭引き抜き孔を深さ方向に複数の区間に分割し、前記撹拌装置を各区間ごとに複数回往復させる、
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の杭引き抜き孔の地盤改良方法。
  5. 前記撹拌工程における羽根切回数を下記式(B)で算出されるN回/m以上とする、
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の杭引き抜き孔の地盤改良方法。
    羽根切回数N = 撹拌翼枚数×オーガ回転数×(1/掘進速度+(1/反復速度)×(反復回数×2-1)) ・・・(B)
  6. 前記撹拌工程における前記スラリー状の固化材の水/固化材比を100%とする、
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の杭引き抜き孔の地盤改良方法。
  7. 前記スラリー状の固化材に外割で1.5%以上3.0%以下のベントナイトを添加する、
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の杭引き抜き孔の地盤改良方法。
  8. 前記撹拌工程では、前記撹拌装置の撹拌翼を押し下げ時に正転方向、引き上げ時に反転方向に回転させる、
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の杭引き抜き孔の地盤改良方法。
  9. 前記撹拌工程後に、前記杭引き抜き孔内の前記改良体の天端が周辺地盤表面より低い位置にある場合、前記改良体の天面と前記周辺地盤表面との間を改良土または掘削発生土により埋め戻す埋め戻し工程を更に含む、
    ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の杭引き抜き孔の地盤改良方法。
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