JP6831211B2 - 埋戻し材の強度管理方法及び地盤の埋戻し方法 - Google Patents

埋戻し材の強度管理方法及び地盤の埋戻し方法 Download PDF

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Description

本発明は、水と土粒子とベントナイトとセメントとが混合された埋戻し材の強度管理方法、及びそれを使用した地盤の埋戻し方法に関するものである。
地盤に埋設されていた既存杭を撤去したり、地盤を掘削して地中構造物を構築したりした際に、地盤に形成された空洞をセメントなどの固化材が添加された埋戻し材で埋め戻すことが行われている。
特許文献1,2には、掘削によって発生した建設発生土とセメントと混和剤などを水と混合することで製造される流動化処理土を、埋戻し材として使用する技術が開示されている。
流動化処理土のようにセメントが添加された埋戻し材は、セメント量が多くなると周囲の地盤と比べて硬くなりすぎる場合がある。そこで、特許文献1では、流動化処理土の硬化速度、強度特性、弾性などを制御するために、様々な混和剤によって調整することが記載されている。
特開2008−75342号公報 特開2002−371588号公報
例えば既存杭を地盤から撤去して埋め戻す場合に、埋戻し材の強度が周辺地盤と比べて強くなりすぎると、新たに杭を打設する際に、孔曲がりや掘削不能などの問題を引き起こすおそれがある。他方、砂などを埋戻し材に使用した場合、強度が弱すぎて孔壁崩壊が起きやすくなり、掘削に支障をきたすことがある。
そこで、本発明は、埋戻し材の強度を簡単かつ正確に管理できるようにする埋戻し材の強度管理方法、及びそれを使用した地盤の埋戻し方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の埋戻し材の強度管理方法は、水と土粒子とベントナイトとセメントとが混合された埋戻し材の強度管理方法であって、前記ベントナイトの種類によって特定される定数aを設定するステップと、前記定数aが組み込まれた強度算定式を使用して、目標強度とするために配合される水量、ベントナイト量及びセメント量を決定するステップとを備えたことを特徴とする。
例えば、前記強度算定式は、目標強度をqu、配合するセメントの種類によって設定される定数をT1,T2、単位セメント量をC、単位水量をW、単位ベントナイト量をBとしたときに、qu=T1(C/(W-a×B))-T2で示される。
また、地盤の埋戻し方法の発明は、上記の埋戻し材の強度管理方法を使用した地盤の埋戻し方法であって、地盤を縦方向に掘削して縦孔を形成する工程と、前記縦孔に溜まった土粒子と水とが混合された泥水の密度及び泥水位を計測する工程と、前記埋戻し材の強度管理方法によって、前記縦孔に投入する水量、ベントナイト量及びセメント量を決定する工程と、投入された水、ベントナイト及びセメントと前記泥水とを前記縦孔内で混合する工程とを備えたことを特徴とする。
さらに、別の地盤の埋戻し方法の発明は、上記の埋戻し材の強度管理方法を使用した地盤の埋戻し方法であって、地盤を縦方向に掘削して縦孔を形成しながらベントナイト液を注入する工程と、前記縦孔に溜まった土粒子と水とベントナイトとが混合された混合泥水の密度を計測する工程と、前記埋戻し材の強度管理方法によって、前記縦孔に投入する水量及びセメント量を決定する工程と、投入された水及びセメントと前記混合泥水とを前記縦孔内で混合する工程とを備えたことを特徴とする。
このように構成された本発明の埋戻し材の強度管理方法は、水と土粒子とベントナイトとセメントとが混合された埋戻し材の強度を管理するにあたって、ベントナイトの種類によって特定される定数aを設定し、その定数aが組み込まれた強度算定式を使用して、埋戻し材の配合となる水量、ベントナイト量及びセメント量を決定する。
ベントナイトは吸水性が高いため、ベントナイト量を考慮せずに配合を決めると、実質的な水セメント比がばらついて強度の管理がしにくくなるが、ベントナイトの種類によって特定される定数aが組み込まれた強度算定式により目標強度を設定することで、埋戻し材の強度を簡単かつ正確に管理できるようになる。
また、地盤の埋戻し方法の発明では、縦孔に溜まった泥水の密度及び泥水位、又は混合泥水の密度を計測することで、上記強度算定式を使用して、簡単に埋戻し材の配合を決めることができる。
本発明の実施の形態の埋戻し材の強度管理方法で使用するベントナイトの種類によって特定される定数aを説明するための図である。 強度算定式の求め方を説明するための図である。 既存杭を撤去する工程を説明する模式図である。 実施例1の地盤の埋戻し方法の工程を模式的に示した説明図である。 実施例2の地盤の埋戻し方法の工程を模式的に示した説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態の埋戻し材の強度管理方法は、水と土粒子とベントナイトとセメントとを混合して製造される埋戻し材に適用される。
ここで、水は、地盤を削孔する際に使用された水や地下水、配合として追加される水が該当する。また、土粒子は、主に地盤を掘削した際に削孔水などと混じる掘削土砂などの建設発生土である。
一方、ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする粘土の一種で、水との親和力が強く、水に浸すと吸収膨張する吸水性の高い特性を有している。ベントナイト自体の質量の300-500%程度の水低減効果を発揮できるといわれている。このようなベントナイトの特性は、産地などによって異なる。
また、セメントにも、高炉セメント、ポルトランドセメント、フライアッシュセメントなどの様々な種類があり、いずれの種類であっても埋戻し材に添加することができる。
本実施の形態の埋戻し材の強度管理方法は、強度算定式を使用して実施される。以下に、強度算定式の一般式を示す。
ここで、quは埋戻し材の強度(目標強度)、T1及びT2はセメントの種類によって設定される定数、Cは単位セメント量、Wは埋戻し材の単位水量、aはベントナイトの種類によって特定される定数、Bは埋戻し材の単位ベントナイト量を示す。
続いて、セメントとして、高炉セメントB種(3.04g/cm3)を使用したときの強度算定式の求め方について説明する。まず、複数の泥水を使用した強度試験が行われる。
泥水の種類の違いは、泥水密度に現れる。ここでは図2に示すように、泥水密度が1.0g/cm3、1.25g/cm3、1.50g/cm3となる3種類の泥水を使用した。泥水密度が大きいということは、単位体積当たりの土粒子の含有量が多いということである。
そして、各泥水に対して同じ種類のベントナイトを使用して実験を行う。すなわち各泥水に対して、水セメント比(W/C)及び単位ベントナイト量Bを変化させた試験体を複数作製し、それぞれの試験体に対して一軸圧縮強度試験を実施する。それらの強度試験結果をプロットした図が、図2になる。
図2は、縦軸を強度(N/mm2)とし、横軸をC/(W-a×B)にしたグラフである。ここで、例えば関東ローム層であれば、一軸圧縮強度は0.2 - 0.5(N/mm2)程度であり、埋戻し材7の強度も0.2 - 1.0(N/mm2)の範囲で管理できれば良いことになる。そこで、0.2 - 1.0(N/mm2)の範囲で精度よく強度を推定することができる強度算定式を求める。
そのためには、図2の一点鎖線で挟まれた範囲にプロットされた実験結果を使用して、強度算定式を求める。強度算定式は、最小二乗法により求められ、その際には、使用したベントナイトの種類による定数aの値(4.9)も同時に算定される。以下、求められた強度算定式を示す。

すなわち、(数1)式のT1が2.36となり、T2が0.232となる。
続いて、求められた強度算定式を使用して行われるベントナイトの種類によって特定される定数aの設定方法について説明する。要するに埋戻し材に高炉セメントB種(3.04g/cm3)を使用する場合は上記(数2)式が使用できるので、この式を使用してベントナイトの種類を変更した場合の定数aの求め方について説明する。図1は、上記した(数2)式によって表される直線を、縦軸を強度(N/mm2)とし、横軸をC/(W-a×B)としたグラフに示している。
定数aを求めるには、泥水密度と水セメント比(W/C)を一定にして、単位ベントナイト量Bを変化させた試験体を複数作製し、それぞれの試験体に対して一軸圧縮強度試験を実施する。そして、その試験結果と(数2)式によって引かれた直線との誤差の二乗和が最少となる値に定数aを設定する。
図1には、3種類のベントナイトM1,M2,M3による強度試験結果を使用したプロットが示されている。このプロットは、ベントナイトM1の定数aを5.5、ベントナイトM2の定数aを3.2、ベントナイトM3の定数aを3.5とした場合のプロットで、いずれも(数2)式の線形式の近辺に分布している。
このように3種類のベントナイトM1,M2,M3は、定数aを調整することによって、同じ強度算定式によって強度を算定することができる。換言すれば、埋戻し材に配合するベントナイトの種類による定数aがこのようにして設定できれば、上記(数2)(又は(数1))の強度算定式を使用して埋戻し材の配合を決めることができる。
さらに、図2の結果を見ると、土粒子が含まれる量に関わらず、いずれのデータも上記(数2)式の直線の近辺にプロットがされていることがわかる。そして、(数2)式には、土粒子の配合量に関する因子が存在しない。要するに、土粒子の配合量が考慮されていない強度算定式によって、埋戻し材の強度quを推定することができる。
次に、本実施の形態の埋戻し材の強度管理方法の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の埋戻し材の強度管理方法は、水と土粒子とベントナイトとセメントとが混合された埋戻し材の強度を管理するにあたって、ベントナイトの種類によって特定される定数aを設定し、その定数aが組み込まれた強度算定式(上記(数1),(数2))を使用して、埋戻し材の配合となる水量、ベントナイト量及びセメント量を決定する。
ベントナイトは吸水性が高いため、ベントナイト量を考慮せずに配合を決めると、セメントの水和反応に使用される水量が正確に把握できず、実質的な水セメント比がばらついて強度の管理がしにくくなる。
また、ベントナイトは、種類(産地)によって特性が異なり、添加量が同じであっても吸水量が異なることがある。そこで、ベントナイトの種類によって特定される定数aとベントナイト量Bとが組み込まれた強度算定式により目標強度を設定することで、埋戻し材の強度が簡単かつ正確に管理できるようになる。
要するに、埋戻し材の目標とする強度を0.2 - 1.0(N/mm2)の範囲で設定し、設定された強度を上記(数2)式のquに代入する。上記(数2)式では、定数aはベントナイトの種類によって設定できるので、単位セメント量C、単位水量W又はベントナイト量Bに関する調合要因のいずれか1つを設定することで、(数2)式が成り立つ配合を決めることができる。なお、配合の決定方法の詳細については、実施例において後述する。
このような本実施の形態の埋戻し材の強度管理方法であれば、土粒子の含有量や特性を考慮することなく埋戻し材7の強度を管理できるので、管理が容易で、後述する地盤の埋戻し方法に適用した場合には、工事を中断させることなく効率よく施工することができる。
以下、前記実施の形態で説明した埋戻し材の強度管理方法を使用した地盤の埋戻し方法について、図3及び図4を参照しながら説明する。
本実施例1では、図3に示すようにして地盤1に埋設された既存杭2を撤去し、その空洞に図4に示すようにして埋戻し材7を充填する場合を例に説明を行う。
例えば、既存の建物を解体した敷地に新たにビルやマンションなどを構築する場合に、既存の建物の基礎であった既存杭2では、支持力が不足していたり劣化していたりして、新たに杭基礎を構築し直さなければならないことがある。
そのような場合に、まず既存杭2を地盤1から撤去して、撤去後の空洞を埋め戻すことになるが、埋戻し材の強度が周辺の地盤1の強度と比べて強くなりすぎると、新たな杭を構築するための掘削時に、孔曲がりや掘削不能などの問題が起きるおそれがある。他方、埋戻し材の強度が弱すぎると、孔壁崩壊が起きやすくなって、構築したい杭の形状に沿った掘削が行えないおそれがある。
そこで、新たな杭を構築するための掘削や杭の打ち込みなどが、正確かつ効率的に行えるように、埋戻し材7の強度が0.2 - 1.0(N/mm2)の範囲に収まるように、強度管理を行う。
現状として、図3の左図の<S1>工程に示すように、地盤1に鉄筋コンクリート製の既存杭2が埋設されている状況がある。まず、この既存杭2の頭部付近を、凹状に掘削して釜場11を設ける。
続いて、<S2>工程に示すように、既存杭2の外径よりも内径が大きなケーシング3を使用し、ケーシング3の先端から高圧水31を噴射させながら、既存杭2の外周付近の地盤1を切削して縁切りを行う。ケーシング3は、正反両方向に回転されながら、既存杭2を内部に収容させるように地盤1に押し込まれる。
このようにしてケーシング3を地盤1に押し込むと、既存杭2の周囲に縦孔12が形成されることになり、その内部には高圧水31と切削された地盤1の土粒子とが混合した泥水4が貯留されることになる。
そこで、ケーシング3及び既存杭2を縦孔12から引き抜くと、図4の左端図に示すように、それらの体積分だけ液面が下がった状態で泥水4が残ることになる。そこで、この泥水4の泥水位を計測する。
ここで、引き抜かれた既存杭2の杭長又はケーシング3の貫入長さと縦孔12の内径(ケーシング3の外径)とから、縦孔12の容積Vは容易に算出することができる。また、泥水4の泥水位を測定することで、泥水4の体積Vmも容易に算出することができる。一方、縦孔12の泥水4上方の空洞の容積Vvは、Vv=V-Vmとなる。
さらに、泥水4の密度を計測する。泥水4の密度を計測するに際しては、図4の<S11>工程に示すように、泥水4の中に挿し込まれたトレミー管5の先端51から圧縮空気を吐出させるなどして、撹拌を行う。すなわち、泥水4の水と土粒子とが分離していると、泥水4の正確な密度が計測できなくなるため撹拌が行われる。この撹拌は、圧縮空気によるエアブロー撹拌、スパイラルオーガなどを回転させることによる機械式撹拌など、泥水4が均一に混合される方法であればいずれの撹拌方法であってもよい。
そして、撹拌直後の泥水4を採取して、泥水比重計(マッドバランス)により泥水密度を計測する。上記(数2)の強度算定式を使用する場合は、泥水密度が1.0 - 1.50(g/cm3)の範囲に収まっているのが望ましい(以下の計算例では1.2(g/cm3))。また、沖積砂質土又は粘性土であれば、土粒子密度は2.5 - 2.8(g/cm3)程度(以下の計算例では、2.65(g/cm3))となる。そして、泥水密度の計測結果と泥水4の体積Vmとから、土粒子の体積sと泥水4中の水量w1を算出する。
続いて、所望の強度(目標強度)となる埋戻し材7の配合を決定する。例えば、前記実施の形態で説明した(数2)式を使用して埋戻し材7の配合を決める場合に、調合要因としてベントナイト濃度の設定を行う。例えば、ベントナイト濃度を単位水量の3%とすると、ベントナイト量Bと埋戻し材7の水量Wとの関係は、B=0.03Wとなり、(数2)式は、以下の式で表される。

ここで、目標強度quを0.4(N/mm2)、ベントナイトの種類による定数aを4.9とする。
この結果、W,C,Bの単位質量比は、W:C:B=438:100:13.1となり、W,C,Bの各容積をw,c,bとすると、以下の関係となる。

ここで、ρwは水密度で1.00(g/cm3)、ρcはセメント密度で3.04(g/cm3)、ρbはベントナイト密度で2.60(g/cm3)とする。また、所望する配合の埋戻し材7とするために泥水4に追加する水量をw2とすると、w=w1+w2となる。
この容積比w:c:bを、埋戻し材7の全容量となる縦孔12の容積Vから土粒子の体積sを減じた容積(V-s)に適用する。ここで、縦孔12の容積Vを1.42(m3)(内径0.55m、長さ6m)、土粒子の体積sを0.12(m3)とすると、V-s=1.30(m3)となる。そして、この値を上記(数4)式に適用すると、w=1.20(m3)、c=0.0902(m3)、b=0.0139(m3)となる。
これらの結果から埋戻し材7の単位量(1m3)当たりの配合量は、以下の式で示される。
一方、縦孔12には、既に泥水4が貯留されているので、追加して縦孔12に投入される投入液61の単位量(1m3)当たりの配合量は、以下の式で示される。
このようにして配合が決定された投入液61を、図4の<S12>工程に示すようにトレミー管5により縦孔12が満たされるまで投入し、<S13>工程に示すように圧縮空気を使ったエアブロー撹拌などの撹拌を行う。撹拌によって縦孔12内で泥水4と投入液61とが均一に混ざり合うことで、埋戻し材7全体の強度を均質に目標強度に近付けることができる。
以上は、調合要因としてベントナイト濃度を3%に設定した場合の埋戻し材7の配合についての説明となるが、配合の決定方法はこれに限定されるものではない。以下では、水量Wとセメント量C及びベントナイト量Bとの比(W/(C+B))を390%に設定した場合の配合の決定方法について説明する。なお、上記説明と同じ数値や展開式を使用する箇所については、重複する説明を省略する。
前記実施の形態で説明した(数2)式と(W/(C+B))=390%との関係から、以下の式が導ける。
この容積比w:c:bを、埋戻し材7の全容量となる縦孔12の容積Vから土粒子の体積sを減じた容積(V-s)に適用すると、w=1.20(m3)、c=0.0869(m3)、b=0.0168(m3)となる。
そして、これらの結果から埋戻し材7の単位量(1m3)当たりの配合量は、以下の式で示される。
一方、縦孔12には、既に泥水4が貯留されているので、追加して縦孔12に投入される投入液61の単位量(1m3)当たりの配合量は、以下の式で示される。
また、調合要因として単位セメント量を設定することによっても、埋戻し材7の配合を決定することができる。単位セメント量を設定した場合の埋戻し材7の単位量(1m3)当たりの配合量は、以下の式で示される。
そして、縦孔12に追加して投入される投入液61の単位量(1m3)当たりの配合量は、以下の式で示される。
このようにして配合が決定された投入液61を、トレミー管5により縦孔12に投入し、エアブロー撹拌などによって縦孔12内で撹拌させることで、泥水4と投入液61とが均一に混ざり合った均質な強度の埋戻し材7を形成することができる。
このように構成された実施例1の地盤の埋戻し方法では、縦孔12に溜まった泥水4の密度及び泥水位を計測し、強度算定式を使用することで、簡単に埋戻し材7の配合を決めることができる。
なお、実施例1のこの他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
以下、前記実施の形態で説明した埋戻し材の強度管理方法を使用した地盤の埋戻し方法について、図5を参照しながら説明する。
前記実施例1では、既存杭2を完全に撤去した後に投入液61の配合を決めて縦孔12に投入する埋戻し方法について説明したが、本実施例2では、既存杭2を引き抜きながらベントナイト液62を注入する場合を例に説明を行う。なお、前記実施例1で説明した用語や数値と重複する説明は、省略する。
ここで、既存杭2をケーシング3及び高圧水31を使って撤去可能な状態にする工程までは、上記実施例1の図3で説明した<S1>工程と<S2>工程と同じである。既存杭2を引き抜きながらベントナイト液62を注入する撤去方法は、比較的に杭径が大きく、杭長が長い場合に適用されるため、以下の計算例では、縦孔12の内径を1.7m、長さ(深さ)を12mとして説明を行う。
本実施例2では、図5の左端図の<S21>工程に示すように、既存杭2を引き抜きながら、それによってできた縦孔12の隙間にベントナイト液62の注入を行う。この注入するベントナイト液62の濃度は、例えば10%に設定しておく。
そして、図5の<S22>工程に示すように、泥水4とベントナイト液62とで満たされた縦孔12の内部を、トレミー管5の先端51から圧縮空気を吐出させるなどして撹拌する。このようにして泥水4とベントナイト液62とが混合されたものを、混合泥水41と呼ぶこととする。
そして、撹拌直後の混合泥水41を採取して、泥水比重計により混合泥水密度を計測する(以下の計算例では、1.16(g/cm3))。この段階では縦孔12は、混合泥水41によって満たされているため、混合泥水41の体積と縦孔12の容積Vとは等しくなる。
さらには、既存杭2を引き抜く際に注入されたベントナイト液62の濃度(10%)及び注入量(以下の計算例では、8.17(m3))も既知であるため、混合泥水密度の計測結果から、泥水4に含有されていた土粒子の体積sと泥水4中の水量w1とを算出することができる。ここで、前記実施例1で説明した材料及び条件と同じであれば、土粒子の体積sは2.35(m3)となり、w1は16.7(m3)となる。
この混合泥水41を目標強度の埋戻し材7の配合にするためには、セメントと水とを混合したセメントミルク63を追加で縦孔12に注入する必要がある。この追加注入するセメントミルク63の濃度を、W/C=55%とする。
さらに、前記実施の形態で説明した(数2)式に基づく埋戻し材7の配合とするには、追加投入するセメントミルク63の体積を算出する必要がある。ここで、混合泥水41に含まれるベントナイト液62の水量をw3、追加投入するセメントミルク63の水量をw4とすると、(数2)式は以下の式で表される。
この(数12)式から導かれる結果をまとめると、w1=16.7(m3)、w3=7.87(m3)、w4=3.58(m3)、c=2.14(m3)、b=0.303(m3)となる。
そして、埋戻し材7の単位量(1m3)当たりの配合量は、以下の式で示される。
そこで、濃度がW/C=55%のセメントミルク63を、図5の<S23>工程に示すように、トレミー管5により縦孔12に上記配合とするための体積(w4+c=3.58+2.14=5.72(m3))だけ投入する。
さらに、<S24>工程に示すように圧縮空気を使ったエアブロー撹拌などの撹拌を行う。撹拌によって縦孔12内で混合泥水41とセメントミルク63とが均一に混ざり合うことで、埋戻し材7全体の強度を均質に目標強度に近付けることができる。
このように構成された実施例2の地盤の埋戻し方法では、縦孔12に充満された混合泥水41の密度を計測し、強度算定式を使用することで、簡単に埋戻し材7の配合を決めることができる。
また、縦孔12にベントナイト液62を注入しながら既存杭2を引き抜く方法であれば、既存杭2に作用する浮力を利用できるので、杭径が大きい場合や杭長が長い場合でも効率的に撤去作業を実施することができる。さらには、ベントナイト液62を注入しただけでは縦孔12内で固化が起きないので、杭長が長い場合などでは、撤去作業を複数日にわたって実施することができる。
なお、実施例2のこの他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施例1,2では、ケーシング3と高圧水31を使用した既存杭2の引き抜き方法について説明したが、これに限定されるものではなく、既存杭2を地盤1から撤去する方法はどのような方法であってもよい。
また、前記実施例1,2では、既存杭2を撤去した空洞を埋戻し材7で埋め戻す方法について説明したが、これに限定されるものではなく、地中埋設物を撤去したり掘削によってできた空洞を埋めたりする際など、いずれの場合にも適用できる。さらに、埋戻し材7によって埋め戻された地盤1は、新設杭の構築だけでなく、シートパイルの打ち込みや構台杭を鉛直に打設する際にも適している。
1 地盤
12 縦孔
4 泥水
61 投入液
41 混合泥水
62 ベントナイト液
63 セメントミルク
7 埋戻し材

Claims (3)

  1. 水と土粒子とベントナイトとセメントとが混合された埋戻し材の強度管理方法であって、
    前記ベントナイトの種類によって特定される定数aを設定するステップと、
    前記定数aが組み込まれた強度算定式を使用して、目標強度とするために配合される水量、ベントナイト量及びセメント量を決定するステップとを備え
    前記強度算定式は、目標強度をq u 、配合するセメントの種類によって設定される定数をT1,T2、単位セメント量をC、単位水量をW、単位ベントナイト量をBとしたときに、q u =T1(C/(W-a×B))-T2で示されることを特徴とする埋戻し材の強度管理方法。
  2. 請求項1に記載の埋戻し材の強度管理方法を使用した地盤の埋戻し方法であって、
    地盤を縦方向に掘削して縦孔を形成する工程と、
    前記縦孔に溜まった土粒子と水とが混合された泥水の密度及び泥水位を計測する工程と、
    前記埋戻し材の強度管理方法によって、前記縦孔に投入する水量、ベントナイト量及びセメント量を決定する工程と、
    投入された水、ベントナイト及びセメントと前記泥水とを前記縦孔内で混合する工程とを備えたことを特徴とする地盤の埋戻し方法。
  3. 請求項1に記載の埋戻し材の強度管理方法を使用した地盤の埋戻し方法であって、
    地盤を縦方向に掘削して縦孔を形成しながらベントナイト液を注入する工程と、
    前記縦孔に溜まった土粒子と水とベントナイトとが混合された混合泥水の密度を計測する工程と、
    前記埋戻し材の強度管理方法によって、前記縦孔に投入する水量及びセメント量を決定する工程と、
    投入された水及びセメントと前記混合泥水とを前記縦孔内で混合する工程とを備えたことを特徴とする地盤の埋戻し方法。
JP2016217019A 2016-11-07 2016-11-07 埋戻し材の強度管理方法及び地盤の埋戻し方法 Active JP6831211B2 (ja)

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