JP7428961B2 - 電子デバイス用素子 - Google Patents

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Description

本発明は、圧電デバイスや磁気電気デバイスなどの電子デバイスに利用される電子デバイス用素子に関する。
近年、特許文献1に示すように、高い結晶配向性を有する圧電体薄膜の開発が進められている。このような圧電体薄膜は、圧電効果もしくは逆圧電効果を奏し、電子デバイスに組み込まれて、各種圧電アクチュエータ、磁気電気センサ、磁気センサ、電気センサ、光電子デバイス、マイクロ波電子デバイス、エネルギー変換デバイスなどとして利用される。
ただし、上記のような電子デバイスにおいて、圧電体薄膜の厚みは数μm程度と薄く、素子に何らかの外力が加わると、圧電体薄膜にクラックや割れが発生することがある。圧電体薄膜にクラックや割れが存在すると、変位量の低下や出力の低下を引き起こすため、圧電体薄膜の耐久性の向上が求められている。
特開2006-295142号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、耐久性が高く、高性能な電子デバイス用素子を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明に係る電子デバイス用素子は、
第1軸(X軸)および第2軸(Y軸)を含む平面に沿って形成してあり、前記第1軸または前記第2軸に沿う縁辺を持つ膜積層部を有し、
前記膜積層部は、エピタキシャル成長膜から成る圧電体薄膜を有し、
前記膜積層部の前記縁辺の方向が、前記圧電体薄膜の所定の結晶方位に対して、略平行であり、前記所定の結晶方位が、<110>方向である。
なお、上記において三角括弧は、所定の結晶方位と等価な方位を包括的に表す記号であり、<110>方向とは、[110]方向、[101]方向、または、これら([110]および[101])と等価な方向のいずれかであることを意味する。
本発明の電子デバイス用素子では、圧電体薄膜がエピタキシャル成長膜から成ることから、高い結晶配向性を有し、圧電特性に優れている。そのうえで、上記のように、素子の一部を構成する膜積層部の延面方向(X軸方向もしくはY軸方向に沿う縁辺)が、圧電体薄膜の所定の結晶方位に対して、略平行となるように素子本体が構成してある。その結果、本発明の電子デバイス用素子では、素子本体に外力が加わった際に、素子が破断し難くなり、素子の耐久性が向上する。また、素子の耐久性が向上した結果、変位特性や感度特性などの性能が向上する。
また、前記膜積層部を形成するための基板は、単結晶であり、前記膜積層部の前記縁辺の方向が、前記基板の<110>方向に対して、略平行であることが好ましい。このように構成することで、素子の耐久性がより向上し、電子デバイス用素子としての性能が向上する。なお、基板は、本発明の電子デバイス用素子が、電子デバイスに組み込まれる際に、除去されていても良く、電子デバイスの一部を構成していても良い。
また、前記圧電体薄膜は、ペロブスカイト構造を有する圧電体で構成してあることが好ましい。ペロブスカイト構造の圧電材料を使用することで、より高い圧電特性が得られる。
また、好ましくは、前記膜積層部が、強磁性体薄膜をさらに有する。そして、前記強磁性体薄膜は、外部磁場によって面内方向で伸縮するように構成してあることが好ましい。上記のような強磁性体薄膜を有することで、外部磁場を電気出力に変換する磁気電気変換素子として有用に利用することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子デバイス用素子を示す平面図である。 図2は、図1に示すII-II線に沿う断面図である。 図3は、図1に示すIII-III線に沿う断面図である。 図4Aは、圧電体薄膜のX線回折結果を示すグラフである。 図4Bは、圧電体薄膜のX線回折結果を示すグラフである。 図4Cは、圧電体薄膜のX線回折結果を示すグラフである。 図5は、強磁性体薄膜のX線回折結果を示すグラフである。 図6は、本発明の一実施例に係る電子デバイスを示す斜視図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電子デバイス用の素子30は、全体として略矩形の平面視形状を有する。素子30の寸法は、特に限定されず、電子デバイスの用途に応じて適宜決定すればよい。そして、素子30は、機能膜が積層された膜積層部32と、膜積層部32の外側を取り囲む外周部34と、を有する。
膜積層部32は、X軸とY軸とを含む平面に沿って形成してあり、略矩形の平面視形状を有する。そして、膜積層部32は、X軸と平行な縁辺と、Y軸と平行な縁辺とを有し、膜積層部32の長手方向が、X軸と一致する。なお、図1~3において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に略垂直であり、Z軸が膜の積層方向に一致する。
図2に示すように、Z軸方向の最下層には、基板40が存在する。この基板40は、X-Y平面の略中央部、すなわち膜積層部32の部分において、開口部42を有している。つまり、基板40は、実質的に素子30の外周部34にのみ存在している。開口部42のZ軸上方に位置する膜積層部32には、下部電極膜50と、圧電体薄膜10と、上部電極膜52とが、この順で積層してある。
下部電極膜50は、端部50aと中央部分50bとを一体的に有する。図1に示す平面視において、下部電極膜50の中央部分50bは、開口部42の開口面よりも小さい略矩形の形状を有する。また、下部電極膜50の端部50aは、中央部分50bのX軸方向の両端に位置し、図1に示す平面視において、中央部分50bよりもY軸方向の幅が小さい略矩形の形状を有する。下部電極膜50は、上記のような形状を有するため、図2に示す断面において、開口部42のZ軸方向の上部開口面を、X軸方向に掛け渡すように存在している。そして、下部電極膜50の端部50aのみが、素子30の外周部34に位置する基板40の表面に存在している。
一方で、図3に示す断面(図1のIII-III線に沿う断面)においては、下部電極膜50の中央部分50bの断面のみが現れ、端部50aが存在しない。そのため、図3に示す断面においては、下部電極膜50を含む膜積層部32が、開口部42のZ軸上方において、浮遊しているように見える。開口部42の上方で浮遊している膜積層部32は、積層されている各膜の応力の不均衡によって、反りが発生し易いが、膜積層部32の下部電極膜50の下面と、基板40に接触している下部電極膜50の端部50aの下面とで、Z軸方向の高さがおおよそ一致していることが好ましい。
そして、圧電体薄膜10は、下部電極膜50のZ軸方向の上方に位置し、下部電極膜50と同等の平面視形状を有する。図1では、圧電体薄膜10の積層面積(X-Y平面上の面積)が、下部電極膜50の積層面積よりも小さくなっているが、下部電極膜50と同程度の大きさであっても良い。また、圧電体薄膜10のZ軸方向の上方には、上部電極膜52が存在し、上部電極膜52は、略矩形の平面視形状を有する。
図2に示すように、下部電極膜50の一方の端部50aには、第1取出電極51の先端が接続してある。この第1取出電極膜51の後端には、第1電極パッド51aが基板40の表面に形成してあり、第1電極パッド51aを介して、図示しない外部回路が接続可能になっている。
さらに、下部電極膜50の他方の端部50aは、圧電体薄膜10の表面の一部と共に、絶縁層54で覆われている。そして、絶縁膜54の上をX軸方向に掛け渡すように、第2取出電極53が形成してあり、第2取出電極53の先端は、上部電極膜52に接続してある。この第2取出電極膜53の後端には、第2電極パッド53aが基板40の表面に形成してあり、第2電極パッド部53aを介して、図示しない外部回路が接続可能になっている。なお、絶縁膜54があるため、第2取出電極53は、第1電極膜50に対して絶縁されている。
上記のように、本実施形態の素子30では、膜積層部32において、圧電体薄膜10が下部電極膜50と上部電極膜52とで挟まれた状態で積層してある。そのため、圧電体薄膜10には、下部電極膜50と上部電極膜52とを介して、電圧の印加が可能である、もしくは、圧電体薄膜10で発生した電荷を、下部電極膜50と上部電極膜52とを介して、取り出しが可能となっている。
次に、素子30を構成する各層(薄膜)の特徴について説明する。
(基板40)
本実施形態において、基板40の材質は、Si、MgO、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)などの各種単結晶から選択することができる。特に、表面がSi(100)面の単結晶となっているシリコン基板を使用することが好ましい。換言すると、立方晶の(100)面が、厚み方向に対して略平行となるように配向している単結晶シリコン基板を用いることが好ましい。単結晶の基板を用いることで、基板40の上に、各電極膜や圧電体薄膜10をエピタキシャル成長させることができる。
(圧電体薄膜10)
圧電体薄膜10は、圧電材料で構成してあり、圧電効果または逆圧電効果を奏する。圧電効果とは、外力(応力)が加わることで電荷を発生する効果を意味し、逆圧電効果とは、電圧を加えることで歪が発生する効果を意味する。このような効果を奏する圧電材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O)、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN:(K,Na)NbO)、ジルコン酸チタン酸バリウムカルシウム(BCZT:(Ba,Ca)(Zr,Ti)O)、などが例示される。
本実施形態では、上記の圧電材料のうち、特に、PZT、KNN、およびBCZTなどのペロブスカイト構造を有する圧電材料を用いることが好ましい。圧電体薄膜10として、ペロブスカイト構造の圧電材料を使用することで、優れた圧電特性と、高い信頼性と、を両立して得ることができる。なお、圧電体薄膜10を構成する上記の圧電材料には、特性を改善するために、適宜他の元素が添加してあっても良い。
圧電体薄膜10の厚みt1は、好ましくは0.5~10μmの範囲内である。厚みt1は、たとえば、走査型電子顕微鏡(SEM)や走査型透過電子顕微鏡(STEM)などによりX-Z断面もしくはY-Z断面を観察し、その際に得られる断面写真を画像解析することで求められる。この場合、厚みt1は、面内方向で3点以上の箇所で計測を行い、その平均値として算出することが好ましい。なお、厚みt1のばらつきは、±5%以下と少ない。
本実施形態において、圧電体薄膜10は、エピタキシャル成長膜であり、エピタキシャル成長膜とは、エピタキシャル成長した膜を意味する。ここで、エピタキシャル成長とは、成膜の際に、膜の結晶が、下地材料の結晶格子に整合する形で、膜厚方向(Z軸方向)および面内方向(X軸およびY軸方向)に揃いながら成長することをいう。そのため、本実施形態に係る圧電体薄膜10は、成膜中の高温状態においては、結晶が、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の3軸すべての方向において揃って配向(3軸配向)した状態の結晶構造をとり(エピタキシャル膜)、成膜後の室温状態においては、結晶粒界がほとんど形成されず、単結晶に近い(完全な単結晶ではない)結晶構造を有する(エピタキシャル成長(した)膜)。
エピタキシャル成長しているか否かは、薄膜形成過程において反射高速電子線回折評価(RHEED評価)を行うことで確認できる。成膜中の膜表面において、結晶配向に乱れがある場合には、RHEED像は、リング状に伸びたパターンを示す。一方で、上記のようにエピタキシャル成長している場合には、RHEED像は、スポット状またはストリーク状のシャープなパターンを示す。上記のようなRHEED像は、あくまでも成膜中の高温状態で観測される。成膜後の室温状態(すなわちエピタキシャル成長膜)において、圧電体薄膜10は、単結晶に近い高い配向性を有するが、特に、以下に示すような結晶構造を有することが好ましい。
成膜後の室温状態において、本実施形態の圧電体薄膜10は、3軸配向したうえで、複数の結晶相を有することが好ましく、また、少なくとも3種のドメイン(域)を含むドメイン構造を有することが好ましい。圧電体薄膜10がドメイン構造を有することで、圧電特性がより向上し、外部応力に対する圧電応答性が高まる。
ドメイン構造の具体的な構成は、使用する圧電材料によって異なる。たとえば、圧電体薄膜10がPZTのエピタキシャル成長膜である場合には、正方晶と菱面体晶の少なくとも2種の結晶構造を有することが好ましい。そして、この場合、正方晶は、c軸(直方体(結晶格子)の長手方向の軸)が膜厚方向を向いたドメインと、c軸が面内方向を向いたドメインと、を有することが好ましい。また、菱面体晶の結晶相は、膜厚方向に対して(100)面が平行となるように配向している。すなわち、圧電体薄膜10がPZTのエピタキシャル成長膜である場合には、正方晶の2種のドメインと、菱面体晶のドメインとの計3種のドメインを含むことが好ましい。
なお、上記において、c軸が膜厚方向を向いたドメインとは、膜厚方向に対して正方晶の(001)面が垂直(または直交)となるように配向したドメインを意味し、以下、cドメインと呼ぶ。一方、c軸が面内方向を向いたドメインとは、膜厚方向に対して正方晶の(001)面が平行となるように配向したドメインを意味し、以下、aドメインと呼ぶ。
一方、圧電体薄膜10がKNNのエピタキシャル成長膜である場合には、斜方晶の2種のドメインと、単斜晶の1種のドメインと(計3種のドメイン)を有することが好ましい。また、圧電体薄膜10がBCZTのエピタキシャル成長膜である場合には、正方晶の2種のドメインと、斜方晶の2種のドメインと(計4つのドメイン)を有することが好ましい。
上記の場合、斜方晶の2つのドメインとは、斜方晶の(001)面が膜厚方向に対して平行となるように配向したドメインと、斜方晶の(010)面が膜厚方向に対して平行となるように配向したドメインとが存在し得る。また、なお、ペロブスカイト構造の圧電材料の場合、結晶相としては、上述したような、正方晶、菱面体晶、斜方晶、単斜晶などの結晶構造が含まれ得る。
さらに、上述したような複数のドメインは、共通のドメイン境界を挟んで接しているため、各ドメインの結晶軸の向きは、膜厚方向や面内方向から最大数度程度ずれていても良い。また、上述したような複数のドメインは、少なくとも成膜時の高温状態においては、同じ結晶系の同じ方位に配向した等価なドメインであり、成膜後に室温や使用温度に冷却される過程で、より安定な結晶相やドメインに転移することで形成される。
なお、上述したような複数のドメインが混在して存在する様子は、圧電体薄膜10を、透過型電子顕微鏡(TEM)の電子線回折またはX線回折(XRD)などで分析することにより確認できる。たとえば、XRDを用いてCu-Kα線によるθ-2θ測定をした場合、2θ=42°~46°の範囲には、圧電体薄膜10に由来する反射ピークが確認される。図4A~4Cは、圧電体薄膜10に由来する反射ピークを、模式的に示す概略図である。
圧電体薄膜10に単一のドメインしか存在しない場合は、図4Cに示すような反射ピークが現れる。図4Cでは、2θ=42°~46°の範囲(特に2θ=44°付近)において、シャープな単一の反射ピークのみが確認され、当該反射ピークの半値幅は、0.1°程度もしくは0.1°以下となる。これに対して、圧電体薄膜10に複数のドメインが混在する場合には、図4Aもしくは図4Bに示す反射ピークが現れる。
図4Aでは、2θ=42°~46°の範囲において、圧電体薄膜10に由来する複数の反射ピークが確認される。図4Aにおいて、反射ピークの数は、圧電体薄膜10に含まれるドメインの数に対応している。たとえば、PZTの圧電体薄膜10が3種のドメインを有する場合、2θ=43°~44°において、正方晶のcドメインを示す反射ピーク(P1)が現れ、2θ=44°付近において、菱面体晶のドメインを示す反射ピーク(P2)が現れ、2θ=44°~45°において、正方晶のaドメインを示す反射ピーク(P3)が現れる。
また、複数の反射ピークが確認されない場合であっても、図4Bに示すように、2θ=44°付近において、ブロードな反射ピークが確認される場合がある。図4Bの場合、複数の反射ピークが重なることでブロードな反射ピークとなっている。具体的に、2θ=44°付近に観測されるピークの半値幅が0.2°以上である場合には、少なくとも3つのドメインが存在すると判断する。
(下部電極膜50)
下部電極膜50は、導電性材料で構成されており、基板40上で3軸配向するようにエピタキシャル成長した膜とすることが好ましい。具体的に、下部電極膜50の材質は、たとえば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)などの面心立方構造の金属薄膜か、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO:以下SROと略す)やニッケル酸リチウム(LiNiO)などの酸化物導電体薄膜とすることができる。このような金属薄膜および酸化物導電体薄膜は、基板40の上にエピタキシャル成長させることができ、膜厚方向に対して(100)面が配向した膜となる。
なお、下部電極膜50は、上記の金属薄膜と上記の酸化物導電体薄膜とを積層して構成しても良い。その場合、下部電極膜50の上方側(すなわち圧電体薄膜10側)には、酸化物導電体薄膜が存在することが好ましい。また、下部電極膜50の厚みは、全体として、30nm~200nmとすることが好ましい。
(上部電極膜52)
上部電極層52は、導電性材料で構成されていれば良く、下部電極膜50と同様の構成とすることもできるが、必ずしもエピタキシャル成長膜である必要はない。特に、上部電極膜52については、磁歪特性を有する強磁性体薄膜を含むことが好ましい。強磁性体薄膜は、これ自体のみで上部電極膜52を構成していても良いし、上記の金属薄膜や上記の酸化物導電体薄膜と組み合わせて、上部電極膜52の一部を構成しても良い。
上部電極層52を、金属薄膜や酸化物導電体薄膜と強磁性体薄膜とを組み合わせて構成する場合には、最上層に強磁性体薄膜が位置するように積層することが好ましい。そして、上部電極層52が強磁性体薄膜を含む場合、強磁性体薄膜の厚みは、0.1~5μmとすることが好ましい。なお、この場合、上部電極層52における強磁性体薄膜以外の金属薄膜の厚み、もしくは酸化物導電体薄膜の厚みは、それぞれ、3nm~100nmとすることが好ましい。
強磁性体薄膜は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの純金属、または、上記金属元素のうち少なくとも1種を含む合金(たとえば、Fe-Co系、Fe-Ni系、Fe-Si系、Fe-Si-Al系の合金など)、もしくは、上記金属元素の酸化物を含む酸化物磁性体を含むことができる。また、強磁性体薄膜は、上記の強磁性体を含む単一膜であっても良いし、複数の層からなる多層膜や、強磁性体と反強磁性体との積層膜であっても良い。なお、素子30が強磁性体薄膜を含む場合については、第2実施形態で詳細を説明する。
(取出電極膜51,53)
第1取出電極膜51および第2取出電極膜53については、導電性を有していればよく、その材質や厚みは特に限定されない。たとえば、Ptの他、Ag、Cu、Au、Alなどの導電性金属を含むことができる。
(絶縁膜54)
絶縁膜54についても、電気絶縁性を有していればよく、その材質や厚みは特に限定されない。たとえば、絶縁膜54として、SiO、Al、ポリイミドなどが適用できる。
(その他の機能膜)
本実施形態の素子30には、上述した各電極膜50~53および圧電体薄膜10以外に、図1~3に図示していないその他の機能膜が含まれていても良い。
たとえば、下部電極膜50のZ軸方向の下方(すなわち、基板40と下部電極膜50との間)には、結晶性制御膜としてバッファ層が形成してあっても良い。バッファ層としては、酸化ジルコニウム(ZrO)、もしくは、希土類元素(ScおよびYを含む)により安定化された酸化ジルコニウム(安定化ジルコニア)を主成分とすることが好ましい。バッファ層が形成してあることで、バッファ層より上層に位置する膜のエピタキシャル成長が促進される(高品質となる)。また、バッファ層は、開口部42を形成する際に、エッチングストッパ層としても機能する。バッファ層を形成する場合、その厚みは、5nm~100nmとすることが好ましい。
また、上部電極膜52のZ軸方向の上方(強磁性体薄膜を含む場合には、その上方)には、保護層が形成してあっても良い。保護層としては、絶縁性を有することが好ましいが、たとえば、SiO、Al、ポリイミドなどの絶縁膜のほか、TiやTaなどの金属膜を使用することもできる。その厚みは、特に制限されず、10nm程度で良い。
続いて、図1~3に示す素子30の製造方法の一例について、以下に説明する。
素子30の製造では、まず、シリコンウェハなどの基板40の上に、下部電極膜50と、圧電体薄膜10と、上部電極膜52とを、各種の薄膜作製法により形成する。薄膜製作法としては、蒸着法、スパッタリング法、ゾルゲル法、CDV法、PLD法などが適用でき、特に好ましくは、スパッタリング法である。なお、前述したように、少なくとも圧電体薄膜10までの層は、エピタキシャル成長させて形成することが好ましい。下部電極膜50(および、バッファ層)をエピタキシャル成長させる方法については、公知の方法を採用すればよい。
スパッタリング法により圧電体薄膜10を形成する場合、安定的にエピタキシャル成長をさせるためには、スパッタリングターゲットの組成、基板温度、成膜速度、ガス組成、真空度、基板ターゲット間距離などを適正に制御する。
また、圧電体薄膜10がドメイン構造(少なくとも3つのドメインを含む)有するためには、特に、スパッタリングターゲットの組成、基板温度、もしくは、上部電極膜52が強磁性体薄膜を有する場合には積層する強磁性体薄膜の応力、などを制御すればよい。
たとえば、スパッタリングターゲットの組成は、材料に応じて、複数のドメインや結晶相が形成されやすい組成を選択すると共に、蒸気圧の高い元素を、化学量論的組成の20~120%増しとすることが好ましい。PZTを例にとると、Pb/(Zr+Ti)で表される原子比が、1.2~2.2、Zr/(Zr+Ti)で表される原子比が、1~1.5となるように制御することが好ましい。また、基板温度については、550~650℃となるように制御することが好ましい。さらに、上部電極膜52が強磁性体薄膜を有する場合において、強磁性体薄膜の応力は、圧縮応力とすることが好ましい。加えて、圧電体薄膜10をエピタキシャル成長させた後で、酸化雰囲気下において、300℃~500℃の温度でアニール処理することも、上述したドメイン構造を得るために効果的である。
上記のように積層膜を形成した基板については、図1に示すようなパターンとなるように、パターニング加工を施す。パターニング加工は、公知の方法を採用できる。ただし、この際、膜積層部32の面内(X-Y平面)において、素子30の長手方向(X軸方向)または短手方向(Y軸方向)が、圧電体薄膜10の<110>方向、および基板40の<110>方向に対して、略平行となるように、パターニングする。つまりは、図1に示すX-Y平面において、圧電体薄膜10の<110>方向が、X軸方向またはY軸方向と略平行となる。また、基板40の<110>方向も、X軸方向またはY軸方向と略平行となる。なお、上記において、略平行とは、完全に平行な方向に対して、±3度の範囲内であることを意味する。
ここで、<110>方向とは、[110]、[101]などの等価な方位を包括的に示した方向を意味する。上記と等価な方位とは、たとえば立方晶の場合、

などが例示される。前述したように、圧電体薄膜10がPZTである場合には、正方晶と菱面体晶など、複数の相が含まれるが、この場合、正方晶の[110]方向,[101]方向と、菱面体晶の[110]方向と、および、これらと等価な方向とが、それぞれ素子30の長手方向または短手方向とほぼ平行となるようにする。詳細については、後述するが、素子の延面方向(パターニング形状)を、圧電体薄膜10の所定の結晶方位に合わせて制御することで、素子30の耐久性が向上する。
パターニング加工を施した後には、第1取出電極膜51および第2取出電極膜53と、絶縁膜54とを、図1に示すような所定のパターンで形成する。また、基板40の開口部42を、Deep-RIZ法などのドライエッチングや、異方性ウェットエッチングなどにより形成する。これにより、図1~3に示す素子30が得られる。
(第1実施形態のまとめ)
本実施形態の素子30では、膜積層部32の面内において、素子30の長手方向または短手方向、すなわち、膜積層部32のX軸と平行な縁辺またはY軸と平行な縁辺の方向が、圧電体薄膜10の所定の結晶方位に対して、略平行となっている。所定の結晶方位とは、<110>方向、すなわち、[101]方向、[110]方向、または、これら([101]および[110])と等価な方向のいずれかである。このように構成することで、本実施形態の素子30では、耐久性が向上すると共に、高い圧電特性を示す。
膜積層部32の面内において、素子の長手方向または短手方向と、圧電体薄膜10の<110>方向とが成す角が、45度程度となっていると、膜積層部32が撓む方向と、圧電体薄膜10の(001)面の法線方向(すなわち[001]方向)とが、略平行または略直交することとなる。この場合、圧電体薄膜10の90度ドメインの境界面が、応力の方向に対して45度を成す方向とおおよそ一致するため、圧電体薄膜10にクラックや割れが発生し易くなる。なお、上記において、丸括弧は、ミラー指数(面)を表しており、三角括弧および角括弧は、結晶方位(方向)を表している。
また、圧電体薄膜10が膜厚方向において単一面で配向している場合であっても、面内で結晶方位がランダムとなっている場合(この場合は、エピタキシャル成長膜とは呼ばない)には、エピタキシャル成長膜の場合よりも圧電特性が低下すると共に、耐久性も低下する。
本実施形態の素子30では、前述したように、圧電体薄膜10がエピタキシャル成長膜であると共に、素子30の延面方向(パターニング形状)が、圧電体薄膜10の所定の結晶方位に合わせて制御してある。その結果、本実施形態の素子30では、素子本体に外力が加わった際に、素子30が破断し難くなり、素子の耐久性が向上する。さらに、本実施形態の素子30では、圧電体の分極方向が膜厚方向に向きやすく、高い圧電特性を示す。
また、本実施形態の素子30では、素子の長手方向または短手方向、すなわち膜積層部32のX軸と平行な縁辺またはY軸と平行な縁辺の方向が、基板40の<110>方向に対しても、略平行である。このように構成することで、素子30の耐久性がより向上する。
なお、圧電体薄膜10および基板40の面内における結晶方位は、透過型電子顕微鏡(TEM)の電子線回折またはX線回折(XRD)などで分析することにより確認できる。特に、面内方向の結晶方位は、φスキャンによる面内X線回折によって確認できる。すなわち、X線の入射源と検出器を、測定する膜面に対してほぼ平行となるように設置し、基板40を回転させながらスキャンする。このとき、X線入射源と検出器のなす角(2θ)は、測定する材料の(110)面など、膜面に対して垂直になっていることが予想される面の面間隔に相当する角度に固定する。そして、基板40を膜面に直交する軸の周りに回転させながらスキャン測定することで、面内の配向方位が確認できる。本実施形態の素子30では、膜積層部32の縁辺の向きを特定したうえで、その方向を基準にφスキャン測定を行うと、縁辺が、X線入射源と検出器のほぼ中間に向いたときに(110)面の反射が観察される。
本実施形態の素子30は、電源や電気/電子回路と接続され、回路基板に搭載するかパッケージされることにより電子デバイスを構成する。たとえば、インクジェットプリンタヘッド、マイクロアクチュエータ、ジャイロスコープ、モーションセンサなど、様々な圧電デバイスとして利用可能である。特に、各種のアクチュエータとして利用する場合、本実施形態の素子30では、耐久性が向上した結果、大きな電圧を印加できるため、アクチュエータとしての変位特性が向上する。
また、本実施形態の素子30は、膜積層部32が強磁性体薄膜をさらに有することで、磁気電気変換素子として優れた性能を示す。この際、強磁性体薄膜は、外部磁場によって面内方向で伸縮するように構成することが好ましい。このような磁気電気変換素子は、たとえば、増幅器と整流回路を接続しパッケージすれば、磁気センサなどの各種センサとなる。同じく磁気電気変換素子に蓄電素子と整流電力管理回路を接続すれば、外部からの磁場や振動から電力を発電するエネルギー変換デバイス(エネルギーハーベスタ)となる。上記のように各種センサとして利用する場合、本実施形態の素子30では、圧電体の分極方向が膜厚方向に向きやすくなっているため、センサとしての感度特性が向上する。
なお、上述したようなエネルギー変換デバイスは、電源システムやウェアラブル端末(イヤホン/ヒアラブルデバイス、スマートウォッチ、スマートグラス(眼鏡)、スマートコンタクトレンズ、人工内耳、心臓ペースメーカーなど)などに組み込まれ利用される。
第2実施形態
第2実施形態では、図1~3に示す素子30の膜積層部32において、特に強磁性体薄膜が含まれる場合について、説明する。強磁性体薄膜は、第1実施形態でも述べたとおり、上部電極膜52自体となるか、金属薄膜や酸化物導電体薄膜の上方に形成され上部電極膜52の一部を構成する。なお、第2実施形態における第1実施形態と共通の構成に関しては、説明を省略し、同じ符号を使用する。
第2実施形態の素子30は、膜積層部32が強磁性体薄膜を含むため、磁気電気変換素子30として機能する。磁気電気変換素子30は、離間したところから非接触で送信される磁場や、電磁波、超音波などのエネルギーを受けて、これらのエネルギー(入力信号)を電気出力に変換する。たとえば、外部から磁場が印加されると、強磁性体薄膜は、磁歪効果によって歪を発生させる。ここで発生した歪によって、強磁性体薄膜の下方に位置する圧電体薄膜10も撓むこととなり、圧電体薄膜10の表面では、圧電効果により電荷が発生する。発生した電荷は、第1電極膜50および第2電極膜52を介して電気出力として取り出される。
このような磁気電気変換素子30を、図1~3に示す形態で作製した場合、素子30の中央部分、すなわち膜積層部32は、特定の周波数の振動モードを有する振動子、特に、面内伸縮振動子として機能する。ここで、面内伸縮振動子とは、弾性体の面内方向にわたって発生する面内伸縮モードを利用する振動子を意味する。図1~3では、振動子として矩形型の形態を示しているが、その他、円板型、カンチレバー型などの形態を取り得る。好ましくは、図1~3に示すような矩形型である。
振動子としての機能に着目した場合、下部電極膜50と圧電体薄膜10、および上部電極膜52とが積層してある膜積層部32が振動部32となり、下部電極膜50の端部50aと圧電体薄膜10の端部が積層してある部分(特に、振動部32を開口部42の上方で支持している部分)が支持部(または支持腕)36となる。支持部36は、振動部32と素子30の外周部34とを接続している。
支持部36は、振動部32の動き(面内伸縮振動)を妨げないように、振動部32に対して剛性の低い形態であることが好ましい。たとえば、支持部36のY軸方向幅は、振動部32のY軸方向幅(支持部36の延びるX軸方向に直交する方向の長さ)に対して狭くする。あるいは、支持部36のZ軸方向厚みは、振動部32のZ軸方向厚みに対して小さくする。支持部36の厚みと幅の積は、振動部32のそれに対して90%よりも小さいことが好ましく、75%よりも小さいことがより好ましい。このように構成することによって、大きな振幅の面内伸縮振動を誘起でき、磁気電気変換素子30の出力が高まる。
また、支持部36の長さは、振動部32を伝わる振動の波長の1/4程度であることが好ましい。こうすることによって、効率的にエネルギーを振動部32に閉じ込めることができ、大きな出力が得られるとともに、アレー化した場合の素子間の干渉を抑制することができる。
また、振動部32の表面(すなわち、上部電極膜50および下部電極膜52の表面)は、平坦であることが好ましい。より具体的に、表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)または要素の平均長さ(Rms)で、1μmよりも小さいことが好ましく、振動部32を伝わる振動の波長の1/10以下となることがより好ましい。
素子30の振動方向(面内伸縮振動の場合はY軸方向)の幅は、振動部32が電磁波に比べて速度の遅い音波の波長で振動するため、同じ周波数の電磁波の波長に比べ極めて小さいサイズであることが好ましい。具体的に、素子30の振動方向の幅は、真空中の電磁波の波長の1/10よりも小さいことが好ましい。一方、振動方向に直交する方向(すなわちX軸方向)には、素子の大きさが制限されることはなく、振動部32は、直線状に長く伸びた形状や、ミアンダ状や渦巻き状に折りたたんだ形状も取り得る。
前述したように、第2実施形態では、強磁性体薄膜が、面内方向(すなわちX-Y面方向)に伸縮振動するように構成されている。この場合、振動子の振動モードが面内コントアモードとなり、振動の鋭さを表す特性であるQが大きくなる。素子30において、Qが大きい振動モードをとることで、より大きな出力を得ることができ、効率よくエネルギーを電力に変換できる。
なお、Qは以下の式で表すことができる。
Q=f0/(f1-f2)
上記式で、f0は振動子の固有周波数、f1は出力または振幅が固有周波数での値の半分になる点の周波数のうち高い方の周波数、f2は同じく低い方の周波数である。本実施形態の素子30は、Qが100より大きい。
素子30の固有周波数は、使用される振動モード、素子の形状、大きさ、材料等によって決まる。素子30の固有周波数に等しい周波数のエネルギーを素子に照射するか、エネルギー場の中に素子を置くことによって、素子30は固有振動を引き起こされ、それによって圧電体薄膜10が伸縮し電気出力を発生させる。
なお、素子30は、単一素子であっても、複数の単一素子30が共通の基板40上に一体的に形成されたアレー素子であってもよい。
第2実施形態において、膜積層部32(振動部32)に含まれる強磁性体薄膜は、特に、優れた磁歪効果を有することが好ましい。磁歪効果とは、外部磁場によって歪を発生する性質を意味する。強磁性体の多くは、磁歪効果を示すが、比較的大きな磁歪効果を有する材質としては、鉄にガリウム(Ga)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、または希土類元素(サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)など)を添加した合金が例示され、一般的には、Fe-Dy-Tb系合金や、Fe-Ga系合金が知られている。本実施形態においては、特に、強磁性体薄膜を構成する主成分として、Fe-Co系合金、Fe-Co-Si-B系合金、またはFe-Ga-B系合金などを用いることが好ましい。
また、強磁性体薄膜の厚みt2は、第1実施形態でも述べたように、0.1~5μmの範囲内とすることが好ましい。上記のような膜厚とすることで、圧電体薄膜10を十分に歪ませることが可能になり、圧電体薄膜10から大きな電気出力を得ることができる。また、強磁性体薄膜の厚みt2を厚すぎないようにすることで、成膜の生産性も向上する。
なお、強磁性体薄膜の厚みt2も、圧電体薄膜10の厚みt1と同様にして測定される。この厚みt2も、面内方向のばらつきが小さく、厚みt1と同程度のばらつきである。本実施形態では、厚みt1に対する厚みt2の比率(t2/t1)は、好ましくは、1/10~10の範囲内である。
第2実施形態において、強磁性体薄膜は、非晶質であっても良いし、多結晶であっても良いが、非晶質相と結晶相とを、混在して有することが好ましい。強磁性体薄膜が非晶質相と結晶相とを両方含む場合、非晶質相の特性に起因して、入力磁場に対する応答性を向上させることができる。つまり、磁歪を発生するために必要なしきい磁場HTHおよび保持力Hcを小さくすることができる。そのうえ、結晶相の特性に起因して、低磁場でのdλ/dH(単位磁場あたりの磁歪変化量)を大きくすることができる。
また、強磁性体薄膜が結晶相を有する場合には、含まれる結晶相のほとんどが、面心立方構造(fcc)を有することが好ましい。ただし、少なくとも一部の結晶相に、体心立方構造(bcc)の結晶相が混じっていてもよい。強磁性体薄膜の結晶相を、面心立方構造(fcc)とすることで、素子30における磁気から電気への変換効率がさらに高くなる。
強磁性体薄膜は、圧電体薄膜10の上に直接または間接的に形成されるが、下層の圧電体薄膜10が結晶配向性に優れたエピタキシャル成長膜である場合、通常、強磁性体薄膜も結晶化し易くなる。特に、強磁性体薄膜に鉄が含まれる場合には、体心立方構造で結晶化されることが通常である。強磁性体薄膜の形成において、成膜するための装置と、成膜条件と、を適切に選択することで、非晶質相と面心立方構造を有する結晶相とを混在させることができる。
たとえば、強磁性体薄膜と圧電体薄膜10との間には、導電性材料からなる多結晶電極膜、または、多結晶と非晶質相からなる電極膜を積層することが好ましい。すなわち、上部電極膜52において、強磁性体薄膜の下層には、上記の電極膜を積層する。特に、この電極膜は、面心立方構造の多結晶、もしくは、非晶質相と面心立方構造の結晶相とからなる膜であることがより好ましい。このような電極膜は、強磁性体膜の結晶性を制御するための結晶性制御層としても機能する。したがって、エピタキシャル成長膜である圧電体薄膜10の上に、結晶性制御層(電極膜)を介して、強磁性体薄膜を形成することで、非晶質相と面心立方構造の結晶相とからなる強磁性体薄膜が形成できる。
強磁性体薄膜の結晶構造は、TEMの電子線回折またはX線回折(XRD)などで分析することにより確認できる。たとえば、XRDを用いてCu-Kα線によるθ-2θ測定をした場合、図5に示すような、強磁性体薄膜に由来する反射ピークが確認される。図5では、強磁性体薄膜が非晶質相と結晶相とを両方含む場合の反射ピークを、実線ex1で示している。また、強磁性体薄膜が非晶質相のみで構成された場合の反射ピークを破線ce1で示し、強磁性体薄膜が結晶相のみで構成された場合の反射ピークを一点鎖線ce2で示している。
図5の破線ce1に示すように、強磁性体薄膜が非晶質相のみで構成された場合には、周期配列構造に起因するシャープなピークは検出されず、ブロードで幅が広いハローパターンのみが現れる。また、図5の一点鎖線ce2に示すように、強磁性体薄膜が結晶相のみで構成された場合には、半値幅が狭い極めてシャープな反射ピークのみが検出される。
これに対して、強磁性体薄膜が非晶質相と結晶相とを両方含む場合は、図5の実線ex1で示すように、非晶質相の存在を示すブロードな盛り上がり(ハロー)部分と、結晶相の存在を示すシャープなピーク部分とを共に有する反射ピークが検出される。なお、結晶相の結晶構造(面心立方構造であるか否か)は、上記の回折パターンを解析することで判別することができる。
また、強磁性体薄膜が非晶質相と結晶相とを両方含む場合、非晶質相と結晶相との割合は、図5に示す反射ピークに対して、プロファイルフィッティングを行い、結晶化度を算出することで確認できる。具体的には、図5に示す反射ピークにおいて、結晶相部分(ピーク部分)と非晶質相部分(ハロー部分)のフィッティングを行い、各部分の積分強度(面積)を測定する。そして、結晶化度(%)は、結晶相部分の積分強度(Ic)と非晶質相部分の積分強度(Ia)との和(すなわち全ピーク面積)に対する、結晶相部分の積分強度(Ic)の比(Ic/(Ic+Ia)×100)で表される。強磁性体薄膜が非晶質相と結晶相とを両方含む場合、強磁性体薄膜の結晶化度は、好ましくは、1%~50%、より好ましくは、5%~20%である。
第2実施形態における、磁気電気変換素子30も、第1実施形態と同様の方法で製造できる。第2実施形態では、特に強磁性体薄膜の形成方法について説明する。
強磁性体薄膜も、圧電体薄膜10と同様に、各種の薄膜作製法で形成し得るが、特に、スパッタリング法を採用することが好ましい。また、強磁性体薄膜については、圧電体薄膜10の直上、もしくは金属薄膜や酸化物導電体薄膜の上に薄膜法で形成される。ただし、前述したように、強磁性体薄膜を、非晶質相と結晶相の両方を含む層とする場合、圧電体薄膜10と強磁性体薄膜との間には、金属薄膜を形成することが好ましい。また、スパッタリング時に、真空度、基板温度、ガス組成、ガス圧力、パワー、基板距離などの成膜条件を適切に制御することによっても、非晶質相と結晶相とを混在させることができる。たとえば、真空度は、0.01~0.1Paとすることが好ましく、基板温度は、20~200℃とすることが好ましい。特に、結晶相を面心立方構造とするためには、基板加熱を行わずに、ターゲットと基板との距離を100mm以上に離し、成膜時の基板温度を200℃以下に保つことが好ましい。
以上のように、素子30の膜積層部32が強磁性体薄膜を含む場合、素子30は、高い変換効率と、優れた検出感度とを両立して満足する磁気電気変換素子として有効に利用することができる。第2実施形態の磁気電気変換素子30において、上記以外の構成は、第1実施形態の素子30と共通しており、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実験1
(実施例1)
実施例1では、以下に示す手順で、素子30を構成する電子デバイス用基板を作製した。まず、基板として、表面がSi(100)面の単結晶となっているシリコンウェハ(シリコン基板)を準備した。準備したシリコンウェハのサイズは、6インチであった。このシリコンウェハ上に、以下に示す積層膜を形成する。
まず、ZrOとYからなる下地酸化物薄膜(バッファ層として機能する)と、Pt下部電極膜と、SrRuO(以下、SROと記す)からなる導電性酸化物薄膜とを、シリコン基板上に、エピタキシャル成長させた。この際、薄膜製作法としては、スパッタリング法を採用した。また、下地酸化物薄膜を形成する際の基板温度は、700℃~900℃とし、成膜終了時の基板温度は、成膜開始時の基板温度よりも低温となるように調整した。さらに、Pt下部電極膜を形成する際の基板温度は、600℃~800℃とし、下地酸化物薄膜の成膜終了時よりも低い温度となるように調整した。
Pt下部電極膜を形成した後は、基板をいったん大気中に取り出し、Pt表面を空気中の酸素に暴露させた。その後、基板を再び成膜装置に投入し、SrRuOからなる導電性酸化物薄膜を成膜した。なお、各層の膜厚は、下地酸化物薄膜が50nm、Pt下部電極膜が100nm、導電性酸化物薄膜が30nmとなるように成膜条件を調整した。実施例1では、Pt下部電極膜と導電性酸化物薄膜(SRO)とで、下部電極膜50を構成している。
実施例1では、導電性酸化物薄膜の上に、PZTの圧電体薄膜10をエピタキシャル成長させた。この際、使用したスパッタリングターゲットの組成は、原子数比で、Pb:Zr:Tiが、1.3:0.55:0.45であった。また、PZT膜を形成する際の基板温度は、600℃とし、成膜速度は、0.1nm/secとした。その他、スパッタリング時の導入ガスは、酸素10モル%-アルゴン(Ar)90モル%の混合ガスとし、導入ガスの圧力は0.3Paとし、基板とターゲットの間隔は、200mmとして、膜厚が1μmのPZT膜を形成した。
また、PZT膜の成膜後の基板については、アニール処理を施した。アニール処理の条件は、処理雰囲気を、1気圧の酸素雰囲気下とし、350℃で1時間保持することとした。
なお、下地酸化物薄膜からPZT膜までの成膜時には、RHEED評価を行い、各層がエピタキシャル成長しているか否かを確認した。その結果、下地酸化物薄膜からPZT膜までの各層は、すべて、成膜過程においてエピタキシャル成長していることが確認できた。
さらに、PZT膜の上方には、FeCoB合金からなる強磁性体薄膜を形成した。強磁性体薄膜の形成では、超高真空DCスパッタリング装置を使用し、1×10-4Pa(より好ましくは、5×10-5Pa)以下の真空度まで排気したのち、成膜を行った。成膜に使用したターゲットの組成は、モル比でFe20%-Co60%-B20%であった。また、成膜時には、基板加熱は行わずに、基板温度が上昇しないようにターゲットと基板間距離を十分に確保して成膜した。その他の条件は、導入ガスとしてArガスを使用し、導入ガスの圧力を0.05Paとし、出力を150W(DC)として、膜厚が500nmの強磁性体薄膜を形成した。
実施例1において、この強磁性体薄膜が、上部電極膜52を構成している。強磁性体薄膜の成膜後は、その上にさらに絶縁性の保護膜を10nmの厚みで形成した。このような手順で各層を成膜することで、実施例1に係る電子デバイス用基板を得た。
なお、成膜後の状態においても、作製した電子デバイス用基板の結晶構造を、XRDおよびTEMの電子線回折により確認した。その結果、地酸化物薄膜からPZT膜までの各層は、3軸方向に方位が揃ってエピタキシャル成長した膜であることが確認された。また、PZT膜については、正方晶の2つのドメイン(aドメインおよびcドメイン)と菱面体晶のドメインとを有することが確認できた。さらに、実施例1のFeCoB合金からなる強磁性体薄膜については、非晶質相と、面心立方構造の結晶相とを有することが確認できた。
続いて、実施例1では、作製した電子デバイス用基板に対して、所定のパターニング加工を施し、図1に示すような略矩形状の磁気センサ素子を作製した。この際、磁気センサ素子の長手方向が、PZT膜の[110]方向、または、[101]方向と±1.5度の範囲で一致する(ように、パターニング時のマスク形状を制御した。実際に得られた磁気センサ素子に対して、電子線回折による分析を行ったところ、上記のとおり、磁気センサ素子の長手方向が、PZT膜の所定の結晶方位に対して、略平行(±1.5度)であることが確認できた。
また、実施例1では、磁気センサ素子の長手方向が、基板(シリコンウェハ)の<110>方向に対しても一致(略平行)していることが確認できた。こうして得た磁気センサ素子について、下記の評価を行った。
(検出限界値の測定)
まず、実施例1の磁気センサ素子に対して、圧電体薄膜10で発生した電荷を検出する回路(増幅器と整流回路とを含む回路)を接続し、パッケージすることで、実施例1の磁気センサ(電子デバイスの一例)を作製した。そして、その磁気センサにバイアス磁場として1mTのDC磁場を印加しながら、素子30の固有周波数付近(約10kHz)の交流磁場を加え、その交流磁場の周波数を、固有周波数付近でスキャンしながら大きさを減衰させていくことで、検出限界値(単位nT)を求めた。ここで、検出限界値とは、磁気センサの感度を表す指標である。磁気センサでは、入力として交流磁場(外部磁場)を印加すると、その印加した磁場の大きさに応じた電圧を出力する。検出限界値は、磁気センサが応答する(すなわち電圧を出力する)最小の入力値を意味し、入力値は磁束密度で表される。すなわち、検出限界値は、値が小さいほど、磁気センサとしての特性が優れることを意味する。実施例1の磁気センサについて、検出限界値を測定した結果を、表1に示す。
(感度特性の変化率)
また、磁気センサの耐久性を評価するために、感度特性の経時的な変化率を測定した。具体的には、磁気センサの経時変化を加速させるために、固有周波数で0~5mTの交流磁場を100時間印加し続け、試験終了後の検出限界値を測定した。感度特性の変化率は、初期の検出限界値をαとし、耐久試験後の検出限界値をβとすると、(β-α)/α×100(%)で表される。すなわち、感度特性の変化率が小さいほど、耐久性が優れるといえる。実施例1の磁気センサについて、変化率を測定した結果を表1に示す。
(比較例1)
比較例1でも、実施例1と同じ方法で電子デバイス用基板を作製した。ただし、比較例1では、磁気センサ素子を製造する際に、面内方向において、素子の長手方向と圧電体薄膜10の<110>方向とが成す角が45±1.5度となるように、パターニング加工を施した。すなわち、比較例1では、素子の方位(沿面方向)が、実施例1の素子に対して45度ずれている。比較例1の磁気センサ素子についても、実施例1と同様に、電子線回折およびX線回折により、素子および圧電体薄膜10の方位を確認したところ、素子の長手方向が、狙い通り上記の方向(すなわち、圧電体薄膜10の<110>方向に対して45±1.5度)存在していることが確認できた。
なお、比較例1の磁気センサ素子において、上記以外の構成は、実施例1と共通しており、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
比較例2では、圧電体薄膜10をエピタキシャル成長膜ではなく、多結晶のPZT膜として形成した。具体的には、まず、熱酸化処理により、シリコンウェハ上にアモルファスのSiO膜を形成した。また、そのSiO膜の上に、10nmのTi膜を密着層として形成した。
その後、Ti膜の上方に、実施例1と同様に、Pt下部電極膜と、PZT膜と、FeCoB合金の強磁性体薄膜とを、この順に積層し、比較例2に係る電子デバイス用基板を作製した。なお、比較例2では、PZT膜の成膜後にアニール処理を実施していない。比較例2では、RHEED評価や成膜後のX線回折において、Pt下部電極膜およびPZT膜のいずれもが、エピタキシャル成長しておらず、面内方向においてランダムな方位をとっていることが確認できた。
比較例2においても、得られた電子デバイス用基板に対してパターニング加工を施し、図1に示す形態の磁気センサ素子を作製した。比較例2の磁気センサ素子についても電子線回折およびX線回折による分析を行ったが、前述したように、圧電体薄膜10が面内方向において特定の結晶方位を有していないため、素子の長手方向は、圧電体薄膜10の<110>方向に対して、相関がないことが確認できた。すなわち、比較例2では、素子の長手方向と圧電体薄膜10の<110>方向との方位関係はランダムであった。
比較例2の磁気センサ素子において、上記以外の構成は、実施例1と共通しており、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
なお、表1では、素子の長手方向と圧電体薄膜10の<110>方向とが成す角をθと表記している。
評価1
表1に示すように、比較例1および2と比較して、実施例1の磁気センサでは、検出限界値が最も小さく、感度特性が優れることが確認できた。また、耐久性の評価においても、比較例1および2に対して、実施例1の感度特性の変化率が極めて小さく、本発明の電子デバイス用素子では耐久性が向上することが確認できた。
実験2
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様の方法で電子デバイス用基板を作製したうえで、図6に示す微小位置制御用のアクチュエータ素子300を作製した。
図6のアクチュエータ素子300は、平面視が略矩形状の膜積層部320と固定部400とを有し、膜積層部320の一端が固定部400の上に固定されている。積層部320では、下部電極膜50と、圧電体薄膜10と、上部電極膜52とが、この順で積層されている。また、積層部320には、外部回路接続用の第1取出電極510と第2取出電極530とが形成されている。第1取出電極510は、スルーホール電極部510aを有し、下部電極膜50と接続している。一方、第2取出電極530は、Z軸方向の上方で、圧電体薄膜10と上部電極膜52とをまたぐように形成してある。
実施例2において、図6の固定部400が、シリコン基板で構成されており、下部電極膜50がPt下部電極膜およびSROの酸化物導電体薄膜とで構成されており、圧電体薄膜10がPZT膜、上部電極膜52がFeCoB合金の強磁性体薄膜で構成されている。また、実施例2において、膜積層部320の長手方向(X軸方向)の長さは5mmとし、短手方向(Y軸方向)の長さは1mmとした。なお、固定部400は、実施例2のように成膜時のシリコン基板で構成しても良いが、他の部材に膜積層部320の部分を張り付けて構成しても良い。この図6に示す素子300に電圧印加用の外部回路を接続し、実施例2に係る微小位置制御用アクチュエータを作製した。
なお、実施例2の素子300においても、実施例1と同様、素子の長手方向が、PZT膜の<110>方向に対して、±1.5度の範囲で一致(略平行)していることが確認できた。
実施例2の微小位置制御用アクチュエータについて、素子の長手方向における印加電圧に対する変位量を測定したところ700nm/Vであった。
また、素子の耐久性を評価するために、耐久性試験(加速試験)を行った。耐久性試験では、膜積層部320のX軸方向の両端を固定した状態で、0~30Vの電圧と0~10mTの外部磁場とを(周波数1kHz)、同時に100時間印加し続け、試験後の特性値および不良率(クラックおよび絶縁破壊などの発生率)を評価した。その結果、実施例2では、不良発生率が1.3%と極めて低く、高い耐久性を有することが確認できた。
(比較例3)
比較例3では、比較例1と同様(すなわち実施例1および2と同様)の電子デバイス用基板を作製したうえで、図6に示す微小位置制御用のアクチュエータ素子300を作製した。ただし、比較例3では、実施例2とは異なり、素子の長手方向と圧電体薄膜10の<110>方向とが成す角が45±1.5度となるように、パターニング加工を施した。
比較例3についても、微小位置制御用アクチュエータを作製し、実施例2と同様の評価を行った。その結果、比較例3では、素子の長手方向における印加電圧に対する変位量は、実施例2と同等で700nm/Vであったが、耐久試験後の特性値の低下が著しく、不良発生率が2.5%であった。つまり、比較例3と実施例2とを対比すると、本発明の素子を有する実施例2のほうが、耐久性が優れ、アクチュエータとしての高い性能を有することが確認できた。
(比較例4)
比較例4では、比較例2と同様の電子デバイス用基板を作製したうえで、図6に示す微小位置制御用のアクチュエータ素子300を作製した。つまり、比較例4では、圧電体薄膜10がエピタキシャル成長膜ではなく、面内において結晶の方向がランダムとなっている。そのため、比較例4において、素子の長手方向と圧電体薄膜10の<110>方向との方位関係はランダムであった。
比較例4についても、微小位置制御用アクチュエータを作製し、実施例4と同様の評価を行った。その結果、比較例4では、素子の長手方向における印加電圧に対する変位量が500nmであり、耐久試験前の状態であっても、実施例2よりも変位特性が劣っていることが確認できた。また、比較例4では、耐久試験後の特性値の低下が著しく、不良発生率が12%であった。つまり、比較例4と実施例2とを対比すると、本発明の素子を有する実施例2のほうが、耐久性が優れ、アクチュエータとしての高い性能を有することが確認できた。
実験3
実験3では、圧電体薄膜10を、PZTの代わりに、KNN、BCZT、AlN、ZnOで構成した以外は、実施例1と同様にして、電子デバイス用基板を作製し、同様な評価を行った。その結果、圧電体薄膜10の材質を変えた場合であっても、上述した実験1と同様な結果が得られることが確認できた。
実験4
実験4では、素子の短手方向が、圧電体薄膜10の<110>方向と±3度の範囲内で一致(略平行)となるように、磁気センサ素子およびアクチュエータ素子を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、素子の短手方向と圧電体薄膜10の<110>方向とを一致させた場合であっても、上述した実験1と同様な結果が得られることが確認できた。
30 … 素子(磁気電気変換素子)
32 … 膜積層部(振動部)
34 … 外周部
36 … 支持部(支持腕)
40 … 基板
42… 開口部
10 … 圧電体薄膜
50 … 下部電極膜
50a … 端部
50b … 中央部分
51 … 第1取出電極膜
52 … 上部電極膜
53 … 第2取出電極膜
54 … 絶縁膜

Claims (5)

  1. 第1軸および第2軸を含む平面に沿って形成してあり、前記第1軸または前記第2軸に沿う長手縁辺を持つ膜積層部を有し、
    前記膜積層部は、エピタキシャル成長膜から成る圧電体薄膜と、強磁性体薄膜とを有し、
    前記圧電体薄膜が、ペロブスカイト構造を有する圧電体で構成してあり、
    前記膜積層部の前記長手縁辺の方向が、前記圧電体薄膜の所定の結晶方位に対して、略平行であり、前記所定の結晶方位が、<110>方向である電子デバイス用素子。
  2. 前記膜積層部を形成するための基板が、単結晶であり、
    前記膜積層部の前記縁辺の方向が、前記基板の<110>方向に対して、略平行である請求項1に記載の電子デバイス用素子。
  3. 前記圧電体薄膜は、3軸配向してあり、少なくとも3種のドメインを含むドメイン構造を有する請求項1または2に記載の電子デバイス用素子。
  4. 前記強磁性体薄膜は、非晶質相と、面心立方構造の結晶相とを有する請求項1または2に記載の電子デバイス用素子。
  5. 前記強磁性体薄膜は、外部磁場によって面内方向で伸縮するように構成してある請求項1~4のいずれかに記載の電子デバイス用素子。


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