JP2005139064A - 圧電単結晶、圧電単結晶素子およびその製造方法ならびに1−3コンポジット圧電素子 - Google Patents

圧電単結晶、圧電単結晶素子およびその製造方法ならびに1−3コンポジット圧電素子 Download PDF

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Abstract

【課題】マグネシウムニオブ酸−チタン酸鉛(PMN−PT)単結晶、または、亜鉛ニオブ酸−チタン酸鉛(PZN−PTまたはPZNT)単結晶に、特定の添加物を加えることによって、圧電特性に優れた安価な圧電単結晶素子等を提供することにある。
【解決手段】複合ペロブスカイト構造を有し、マグネシウムニオブ酸鉛[Pb(Mgl/3Nb2/3)O3]または亜鉛ニオブ酸鉛[Pb(Znl/3Nb2/3)O3]:35〜98mol%、およびチタン酸鉛[PbTiO3]:0.1〜64.9mol%、インジウムニオブ酸鉛[Pb(Inl/2Nb1/2)O3]:0.05〜30mol%を含有する組成物であって、該組成物中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換されていることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、圧電単結晶、圧電単結晶素子およびその製造方法ならびに図1に示すような1−3コンポジット圧電素子に関するものであって、特に電気機械結合係数(k31、k33)および圧電歪定数(d31、d33)等の圧電特性が、従来の焼結圧電素子(例えばジルコン酸チタン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3(PZT))よりも格段に優れた圧電単結晶素子(例えば、マグネシウムニオブ酸Pb(Mgl/3Nb2/3)O3−チタン酸鉛PbTiO3(PMN−PT)単結晶や、亜鉛ニオブ酸Pb(Znl/3Nb2/3)O3−チタン酸鉛PbTiO3(PZN−PTまたはPZNT)単結晶から作製したもの)の歩留まりの向上にある。
圧電単結晶素子は、例えば、図2に示すような直方体について、その長手方向を分極方向3(またはPD)とし、分極方向3(またはPD)に電圧をかけた時の分極方向3(またはPD)の振動(縦方向振動)の大きさに関する電気的エネルギーと機械的エネルギーの変換効率の平方根に比例する縦方向振動モードの電気機械結合係数k33で表わしており、この数値が大きいほど効率が良いことを意味する。また、図3に示すような、板状体の圧電単結晶素子について、その分極方向3(以降、分極方向をPDと称す)に直交する方向1(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31に関しても、この数値が大きいほど効率が良いことを意味する。なお、圧電単結晶素子は、前述の直方体や板状体のほか、棒状体、方形板や円板等の形状でもよく、それぞれの形状についても同様に、電気機械結合係数を求めることができる。
圧電単結晶素子については、例えば、特許文献1には、亜鉛ニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PZN−PT)の固溶体単結晶からなる圧電体を用いた超音波プローブが開示されている。この技術は、このような圧電体が分極方向の電気機械結合係数(k33)が80〜85%と大きく、この単結晶を使用することにより、感度の良いプローブが得られることを示している。
一方、亜鉛ニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PZN−PT)からなる圧電単結晶のインゴット及びウエーハ(基板)は、従来の圧電素子材料であるジルコン酸チタン酸鉛Pb(Zn,Ti)O3(PZT)に比較して高価であることが知られている。この状況は、亜鉛ニオブ酸鉛(PZN)の代わりにマグネシウムニオブ酸鉛(PMN)を用いたマグネシウムニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PMN−PT)からなる圧電単結晶や、その他の類似組成をもつ圧電単結晶の場合においても同様であった。
かかる圧電単結晶のインゴット及びウエーハが高価になる要因としては、以下の3点が挙げられる。
第1の要因は、単結晶育成時における酸化鉛(PbO)の蒸発に起因して生じるものと考えられる。圧電単結晶の成分原料の粉末、仮焼成体または焼結体を用いて、これらを融解し、一方向に凝固させる、いわゆる融液ブリッジマン法、あるいは、フラックスを用いた溶液中で溶解させた後、一方向に凝固させる、いわゆる溶液ブリッジマン法などにより単結晶を育成した場合、成分またはフラックスとして存在する酸化鉛(PbO)の蒸気圧が、単結晶育成温度においては高いため、酸化鉛が激しく蒸発する結果、その後の凝固した固体中において、所望の組成比からずれることにより、異相であって、圧電特性の低いパイロクロア相が析出することになり、該パイロクロア相の存在により歩留まりが低下すると共に、該パイロクロア相が結晶下部に析出することにより、該部位より上部に析出する部分において、結晶方位の揃わない多数の小結晶の析出が見られる。この部位は単結晶でなく多結晶であり、圧電単結晶素子としては使用できない。従って、圧電単結晶素子の歩留まり(具体的には、結晶収率やウエーハ収率)が著しく低下する。なお、ここでいう「結晶収率」とは、投入した原料質量に対するパイロクロア相や熱クラックの無い健全な単結晶部分の質量の百分率(%)を意味する。また、「ウエーハ収率」とは、得られた単結晶部分を、ワイヤーソーなどの切断用具で所望の方位に、所望の厚さで切断して得られたウエーハの枚数に対する、パイロクロア相や熱クラックの無い健全なウエーハの枚数の百分率(%)を意味する。
第2の要因は、単結晶育成時のクラック発生に起因して生じるものと考えられる。単結晶育成中及び育成後の常温までの冷却過程において、前記単結晶を融液ブリッジマン法又は溶液ブリッジマン法などにより育成した場合、るつぼ中の結晶の成長方向に発生する温度差、及びるつぼ内壁に接触する単結晶外表面と単結晶の中心部との間に発生する温度差に起因する熱歪により、該育成工程及び該冷却工程中に単結晶の割れ(熱クラック)が発生しやすい。このクラックが発生すると、圧電単結晶素子としては使用できない。従って、圧電単結晶素子の歩留まり(具体的には、結晶収率やウエーハ収率)が著しく低下する。なお、このクラックは、結晶性の良い、良質な単結晶ほど多く発生する傾向がある。
第3の要因は、圧電単結晶素子加工時のチッピングの発生に起因して生じるものと考えられる。前記単結晶を融液ブリッジマン法又は溶液ブリッジマン法などにより育成した場合、得られた圧電単結晶のインゴットからウエーハを切り出し、所望の圧電素子形状の単結晶板を切り出す際に、単結晶板の切断面の端面周辺の部位に細かな割れ(チッピング)が発生する。単結晶板にこのようなチッピングが発生すると、このチッピングが発生した単結晶板を分極して圧電素子を作製したとしても、所期した圧電特性を得ることはできず、不良品となる。従って、圧電単結晶素子の歩留まり(単結晶板収率)が著しく低下する。なお、ここでいう「単結晶板収率」とは、得られたウエーハを、ダイシングソーなどの切断用具で所望の寸法に、切断して得られた単結晶の枚数に対する、チッピングの無い健全な単結晶板の枚数の百分率(%)を意味する。
このように、該圧電単結晶の成分原料の粉末、仮焼成体又は焼結体を用いて該圧電単結晶を育成し、圧電単結晶板及び圧電単結晶素子を作製した場合、圧電単結晶素子の歩留まり(具体的には、結晶収率、ウエーハ収率および単結晶板収率)の低下は避けられず、製品コストが高騰する結果、応用分野が制限されるなどの弊害があった。
特開平6−38963号公報
本発明の目的は、マグネシウムニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PMN−PT)単結晶、または、亜鉛ニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PZN−PTまたはPZNT)単結晶に、特定の添加物を加えることによって、電気機械結合係数(k31、k33)および圧電歪定数(d31、d33)等の圧電特性に優れた安価な圧電単結晶素子を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記圧電単結晶素子の製造に用いるのに適した圧電単結晶、および圧電単結晶素子の製造方法ならびに前記圧電単結晶素子の複数個で形成した1−3コンポジット圧電素子を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)圧電単結晶は、複合ペロブスカイト構造を有する圧電単結晶において、マグネシウムニオブ酸鉛[Pb(Mgl/3Nb2/3)O3]または亜鉛ニオブ酸鉛[Pb(Znl/3Nb2/3)O3]:35〜98mol%、およびチタン酸鉛[PbTiO3]:0.1〜64.9mol%、インジウムニオブ酸鉛[Pb(Inl/2Nb1/2)O3]:0.05〜30mol%を含有する組成物であって、該組成物中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換されている圧電単結晶。
(2)複合ペロブスカイト構造を有する圧電単結晶において、マグネシウムニオブ酸鉛[Pb(Mgl/3Nb2/3)O3]または亜鉛ニオブ酸鉛[Pb(Znl/3Nb2/3)O3]:35〜98mol%、およびチタン酸鉛[PbTiO3]:0.1〜64.9mol%、インジウムニオブ酸鉛[Pb(Inl/2Nb1/2)O3]:0.05〜30mol%を含有する組成物であって、該組成物中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換され、さらにMn、Cr、Sb、W、Al、La、LiおよびTaの内から選ばれる1又は2以上の元素が合計で5mol%以下含まれている圧電単結晶。
(3)上記(1)または(2)に記載した圧電単結晶のインゴットの[001]方向を分極方向とし、それにほぼ直交する[100]方向、[010]方向または[110]方向を単結晶素子の端面の法線方向とする横方向振動モードの電気機械結合係数(k31)を利用する圧電単結晶素子であって、
その端面の法線方向は、[100]軸±15°、[010]軸±15°又は[110]軸±5°の立体角の範囲内にある圧電単結晶素子。
(4)上記(1)または(2)に記載した圧電単結晶のインゴットの[001]方向を分極方向とし、それに平行な方向の振動モード、即ち、(001)面を端面とする縦方向振動モードの電気機械結合係数(k33)を利用する圧電単結晶素子であって、
分極方向に直交する素子端面の最小辺の長さ又は直径をaとし、分極方向に平行な方向の素子長さをbとするとき、aとbがb/a≧2.5の関係式を満足する圧電単結晶素子。
(5)上記(1)または(2)に記載した圧電単結晶のインゴットの[110]方向を分極方向とし、それに平行な方向の振動モード、即ち、(110)面を端面とする縦方向振動モードの電気機械結合係数(k33)を利用する圧電単結晶素子であって、
分極方向に直交する素子端面の最小辺の長さ又は直径をaとし、分極方向に平行な方向の素子長さをbとするとき、aとbがb/a≧2.5の関係式を満足する圧電単結晶素子。
(6)上記(4)または(5)に記載した圧電単結晶素子の複数個を、分極方向に直交する素子端面が同一平面内に位置するように配列することによって形成してなる1−3コンポジット圧電素子。
(7)上記(1)または(2)に記載した圧電単結晶のインゴットから所定形状の単結晶素子材料を所定方向に切り出す前後に、単結晶のインゴットあるいは切り出した単結晶素子材料の分極すべき方向に、20〜200℃の温度範囲で350〜1500V/mmの直流電界を印加するか、または該単結晶素子材料のキュリー温度(Tc)より高い温度で350〜1500V/mmの直流電界を印加したまま室温まで冷却することによって単結晶のインゴットあるいは単結晶素子材料を分極する工程と、
を有する上記(3)〜(5)のいずれか1項に記載した圧電単結晶素子の製造方法。
(8)マグネシウムニオブ酸鉛[Pb(Mgl/3Nb2/3)O3]または亜鉛ニオブ酸鉛[Pb(Znl/3Nb2/3)O3]:35〜98mol%、およびチタン酸鉛[PbTiO3]:0.1〜64.9mol%、インジウムニオブ酸鉛[Pb(Inl/2Nb1/2)O3]:0.05〜30mol%を含有する組成物であって、該組成物中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換されている圧電単結晶のインゴットから所定形状の単結晶素子材料を所定方向に切り出す前後に、単結晶のインゴットあるいは切り出した単結晶素子材料の分極すべき方向に、20〜200℃の温度範囲で350〜1500V/mmの直流電界を印加するか、または該単結晶素子材料のキュリー温度(Tc)より高い温度で350〜1500V/mmの直流電界を印加したまま室温まで冷却することによって単結晶のインゴットあるいは単結晶素子材料を分極する工程と、
を有する圧電単結晶素子の製造方法。
(9)上記(8)において、前記圧電単結晶のインゴットに、さらにMn、Cr、Sb、W、Al、La、LiおよびTaの内から選ばれる1又は2以上の元素が合計で5mol%以下含まれている圧電単結晶素子の製造方法。
本発明によって、インジウムニオブ酸鉛やCa等の添加物のない鉛系ペロブスカイト構造単結晶に比較して、遜色のない圧電単結晶素子を製造できた。さらに、インジウムニオブ酸鉛やCa等の添加物のない鉛系ペロブスカイト構造単結晶育成時の異相であるパイロクロア相の発現や、該単結晶の育成後の冷却時の熱クラック発生による結晶収率やウエーハ収率の低下が改善された。且つ、得られたウエーハから単結晶板を切出すチッピングの発生による単結晶板収率の低下も同様に改善された。この事により、インジウムニオブ酸鉛やCa等の添加物のない鉛系ペロブスカイト構造単結晶から製造される圧電単結晶素子に比較して十分安価に製造できるようになったため、従来適応できなかった広い応用分野に適応できる圧電単結晶素子を供給できるようになった。
該圧電単結晶及びそれから作製された圧電単結晶素子が、圧電単結晶素子の分極方向(縦方向振動モード)の電気機械結合係数k33が80%以上の値を持つ事により、多種の用途に有望な素材である。しかし、圧電単結晶素子の歩留まりが低いが故に高価になるため、実際に使用されている分野は限られている。本発明者らは、特に付加価値の高い製品、即ち、製品価格中に高価な材料価格を吸収可能である製品にしか使用されていないということに着目した。
そして、該圧電単結晶の育成時に異相であるパイロクロア相が発生すること、パイロクロア相発生の原因は、育成時に酸化鉛(PbO)の蒸発により、所望である複合ペロブスカイト相の単結晶の生成を阻害していることが、歩留まりを低くしている要因であることを見出した。
また、該単結晶の育成時及び育成後の冷却工程において、該単結晶の成長方向間及び単結晶の中心部と外表面間に発生する温度差に起因する熱歪により、多数の熱クラックが発生しやすく、かかる熱クラックの発生が歩留まりを低くしている要因であることを見出した。
さらに、パイロクロア相や熱クラックの少ない単結晶インゴットからワイヤーソー等でウエーハを切出し、さらに圧電単結晶素子形状の単結晶板にダイシングソー等を用いて切り出す際に、単結晶板の切断面の端面に細かい割れであるチッピングが発生しやすく、チッピングの発生した単結晶板は、分極しても、圧電単結晶素子として使用できないため、かかるチッピングの発生が歩留まりを低くしている要因であることを見出した。
本発明者らは、上記の要因により、該圧電単結晶から作製された圧電単結晶素子が、圧電単結晶素子の分極方向PD(縦方向振動モード)の電気機械結合係数k33が80%以上の値を持つ事により、多種の用途に有望な素材であるにも拘わらず、その歩留まりが低いが故に高価になるため、限られた分野でしか使用されていないことを見出した。
本発明者らは、該高価格の圧電単結晶素子を妥当な価格にして多方面に亘る応用に供するために、該要因による歩留まり低下を抑制しつつ、圧電単結晶素子の優れた圧電特性を維持する方法を鋭意研究した。その結果、該圧電単結晶に、特定の添加物、より具体的にはインジウムニオブ酸鉛とカルシウムの双方を添加物として加えて組成の適正化を図った圧電単結晶を用いることによって達成できることを見出した。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の複合ペロブスカイト構造を有する圧電単結晶は、例えば、マグネシウムニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PMN−PT)または亜鉛ニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PZN−PTまたはPZNTという)の固溶体単結晶は、その単位格子が、図5に模式的に示したような複合ペロブスカイト構造(単位格子の角の位置にPbイオンがあり、単位格子の体心位置にMn,Zn,Nb,Tiのいずれかの元素イオンがある構造)をなしている。
しかし、育成後の単結晶インゴットから切り出された単結晶板のままでは、分極方向PD及びこれと直交する方向において、同一方向の電気双極子の集合からなるドメイン内の電気双極子の向きが、ドメイン毎に種々の方向を向いているため、圧電性を示さず、未分極の状態にある。
通常用いられる一般的な分極条件である分極処理温度と印加電界を選択し、分極方向PDに電界を印加して分極することにより、初めてドメイン毎に種々の方向を向く多くのドメイン内の電気双極子の向きを分極方向PD(一方向)に揃えることができる。このことにより、分極方向PDの電気機械結合係数k33は、例えば、亜鉛ニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PZN−PT)または、マグネシウムニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PMN−PT)の場合に、80%以上の大きな値を示すようになる。
しかし、横方向振動モードの電気機械結合係数k31を利用する圧電単結晶素子の場合に問題となる分極方向PDと直交する方向におけるドメインの配列は、上記の分極処理では、適切に制御できない。本来、切り出された素子材料の分極方向PDと直交する面内の素子の切出し方向の適切な選択と、分極方向PDでの分極条件、即ち、分極処理温度と印加電界の適切な範囲内でのみ制御することが可能である。
以下、本発明の圧電単結晶素子の限定理由について、説明する。
(1)圧電単結晶素子の結晶構造(複合ペロブスカイト構造):
本発明が対象とする結晶構造は、固溶体単結晶の単位格子が図5に模式的に示したように、Pbイオンが、単位格子の角に位置し、酸素イオンが、単位格子の面心に位置し、Mイオンが単位格子の体心に位置するようなペロブスカイト構造(RMO)であり、さらに、図5の体心位置にあるMイオンが、一種類の元素イオンでなく、2つ以上の複数の元素イオン(具体的には、Mg,Nb,Zn,In)のいずれかからなる複合ペロブスカイト構造であることが必要である。
さらに、単位格子の体心位置または格子間位置に、Mn,Cr,Sb,W,Al,La,Li,Taのいずれか1種以上を配置した構造も本発明の範囲である。
(2)単結晶素子の形状:
本発明が対象とする「圧電単結晶素子」の形状は、その用途に応じて、下記の2種類に分けられる。
(a)分極方向PDの方向(縦方向振動モード)の電気機械結合係数k33を利用する場合:
圧電単結晶のインゴットの[001]方向を分極方向PDとし、それに平行な方向の振動モード、即ち、(001)面を端面とする縦方向振動モードの電気機械結合係数k33を利用する圧電単結晶素子を作製する場合には、図6の圧電単結晶素子Bや図2に示すような直方体や棒状体あるいは、板状体が、その効果を最も大きく発揮するので望ましい。特に、望ましい素子の形状は、分極方向に直交する素子端面Tの最小辺の長さ又は直径をaとし、分極方向PDに平行な方向の素子長さをbとするとき、aとbがb/a≧2.5、より好適にはb/a≧3.0の関係式を満足することが好ましい。b/a<2.5の場合には、素子長さbが他の長さ(aまたはc)と近くなり、固有振動数が接近するため、縦方向の振動だけを有効に取り出すことができなくなるおそれがあるからである。
また、上記の圧電単結晶を用いて、そのインゴットの[110]方向を分極方向PDとし、それに平行な方向の振動モード、即ち、(110)面を端面Tとする縦方向振動モードの電気機械結合係数k33を利用する圧電単結晶素子を作製する場合も、同様な理由から、aとbがb/a≧2.5の関係式を満足することが好ましい。
(b)分極方向PDに直交する方向1(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31を利用する場合:
図6の圧電単結晶素子Aに示すように、[001]方向を分極方向PDとし、それにほぼ垂直な[100]方向の振動モード、即ち、(100)面を端面Tとする横方向振動モードの電気機械結合係数k31を利用する圧電単結晶素子を作製する場合には、圧電単結晶素子Aや図3に示すような板状体が、その効果を最も大きく発揮するので望ましい。特に、望ましい素子の形状は、細長比(アスペクト比:a/c)が2.5以上の板状体(a/c≧2.5,a>>L,c>>L)、さらに望ましくは、細長比(アスペクト比:a/c)が3以上の板状体である。
なお、本発明の板状体の両端部(短辺c)の形状は、用途に応じて、図4に示すように凸状に湾曲c´(点線)あるいは、凹状に湾曲c´´(一点鎖線)していても良い。また、a=cの方形板であっても良い。なお、本発明でいう素子端面は、図4の長辺aに直角な短辺cをいう。従って、素子端面cの法線方向1は、素子の長辺aに平行である。
(3)分極方向PDに直交する方向1(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31を利用する圧電素子端面Tの法線方向1が、[100]方向、[010]方向または[110]方向を0°としたとき、それぞれ[100]軸±15°、[010]軸±15°又は[110]軸±5°の立体角の範囲内:
図6の圧電単結晶素子Aに示すように、[001]方向を分極方向PDとし、それにほぼ直交する[100]方向または[010]方向を含む面である(001)面を垂直に裁断する面を素子端面Tの法線方向1とする横方向振動モードの電気機械結合係数k31を利用する圧電単結晶素子を作製する場合には、圧電単結晶素子の端面Tの法線方向1が、[100]方向を0°としたとき、図7(a)に示すように、0°±15°([100]軸±15°)の円錐状の立体角の範囲内にあり、また、圧電単結晶素子の端面Tの法線方向1が、[010]方向を0°としたとき、図7(b)に示すように、0°±15°([010]軸±15°)の円錐状の立体角の範囲内にあり、そして、圧電単結晶素子の端面Tの法線方向1が、[110]方向を0°としたとき、図7(c)に示すように、0°±5°([110]軸±5°)の立体角の範囲内にあることが好ましい。
ここで、これらの圧電単結晶素子の最も広い面の法線方向nは、図7(a)〜(c)に示すように、分極方向の[001]方向を0°としたときに、いずれも[001]軸±15°(0°±15°)以内の円錐状の立体角内となる。
このような角度範囲に横方向振動を利用する素子の端面Tの法線方向1が限られることの理由は、以下のように考えられる。即ち、圧電素子端面Tの法線方向1が、[100]軸±15°、[010]軸±15°又は[110]軸±5°の立体角の範囲外の角度θの範囲である15°<θ<40°及び50°<θ<75°の範囲では、分極方向〈100〉軸に直交する平面内にある〈100〉方向と〈110〉方向の間に〈310〉,〈210〉,〈320〉等の低指数の結晶軸方位が存在し、それらの方向で、横振動モードが分散して生ずるため、横振動モードのインピーダンスカーブにスプリアス(曲線の乱れ)が発生したり、横振動モードの周波数範囲(より具体的には、共振周波数fRと反共振周波数fAの差)が狭まったりする。その結果、横振動モードの電気機械結合係数k31が低下するものと考えられる。
本発明の圧電単結晶の組成は、マグネシウムニオブ酸鉛または亜鉛ニオブ酸鉛:35〜98mol%およびチタン酸鉛:0.1〜64.9mol%、インジウムニオブ酸鉛[Pb(In1/2Nb1/2)03]:0.1〜30mol%を含有する組成物であって、この組成物中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換されていることを特徴とする。
この組成物でマグネシウムニオブ酸鉛または亜鉛ニオブ酸鉛およびチタン酸鉛、インジウムニオブ酸鉛と組成物中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換されている限定理由は下記のとおりである。
(4)マグネシウムニオブ酸鉛Pb(Mg1/3Nb2/3)03(PMN)または、亜鉛ニオブ酸鉛Pb(Zn1/3Nb2/3)03(PZN):35〜98mol%:
マグネシウムニオブ酸鉛または、亜鉛ニオブ酸鉛は、本発明の主要組成である。その含有量が、35mol%未満では、育成された単結晶素子が所望の圧電特性(例えば、k値、d値)を示さない。その含有量が、98mol%を超えると、実用に適した大きさの単結晶を育成できない。
なお、マグネシウムニオブ酸鉛の好適範囲は、50〜98mol%であり、また、亜鉛ニオブ酸鉛の好適範囲は、80〜98mol%である。
また、マグネシウムニオブ酸鉛Pb(Mg1/3Nb2/3)03中のMgとNbの比率Mg/Nbのモル比は、0.5となっているが、これに限るものではなく、Mg/Nbのモル比は、0.45〜0.54の範囲であれば、本発明の範囲である。このため、マグネシウムニオブ酸鉛をPb(Mg,Nb)03という表現にしても良い。同様に、亜鉛ニオブ酸鉛Pb(Zn1/3Nb2/3)03中のZnとNbの比率Zn/Nbのモル比は、0.5となっているが、これに限るものではなく、Zn/Nbのモル比は、0.45〜0.54の範囲であれば、本発明の範囲である。このため、亜鉛ニオブ酸鉛をPb(Zn,Nb)O3という表現にしても良い。
なお、マグネシウムニオブ酸鉛または亜鉛ニオブ酸鉛:35〜98mol%およびチタン酸鉛:0.1〜64.9mol%を含有する組成物としては、公知の組成物、例えば、マグネシウムニオブ酸鉛・チタン酸鉛(代表例:[Pb(Mg1/3Nb2/3)030.68[PbTiO30.32(PMN68−PT32))や、亜鉛ニオブ酸鉛・チタン酸鉛(代表例:[Pb(Zn1/3Nb2/330.91[PbTiO30.09(PMN91−PT9)]がよく知られている。
(5)インジウムニオブ酸鉛[Pb(In1/2Nb1/2)03]:0.05〜30mol%:
インジウムニオブ酸鉛中のインジウム(In)のイオン半径は、マグネシウム(Mg)や亜鉛(Zn)よりは大きいが、ニオブ(Nb)よりは小さいイオン半径を有するため、ペロブスカイト構造の単位格子の体心位置に配置されるニオブ(Nb)とマグネシウム(Mg)または亜鉛(Zn)とのイオン半径の差に起因する格子歪が緩和され、単結晶育成時のクラック発生や圧電素子加工時のチッピング発生が生じにくくする作用を有する。このため本発明では、上記作用を発揮させるため、インジウムニオブ酸鉛は0.05mol%以上添加することが必要であるが、30mol%を超える添加は、単結晶を育成時の原料の融点が上昇し、製造に当たり工程管理が難しくなるため好ましくない。
なお、インジウムニオブ酸鉛[Pb(In1/2Nb1/2)03]中のInとNbの比率In/Nbのモル比は、1となっているが、これに限るものではなく、In/Nbのモル比は、0.95〜1.04の範囲であれば、本発明の範囲である。このため、インジウムニオブ酸鉛をPb(In,Nb)03という表現にしても良い。
(6)チタン酸鉛PbTiO3(PT):0.1〜64.9mol%:
上述で規定したマグネシウムニオブ酸鉛または、亜鉛ニオブ酸鉛:35〜98mol%およびインジウムニオブ酸鉛:0.05〜30mol%の残部がチタン酸鉛となるので、そのチタン酸鉛の上限値は、64.9mol%である。なお、チタン酸鉛が、0.1mol%未満では、育成された単結晶素子が所望の圧電特性(k値、d値)を示さないので、0.1mol%以上を含有させる。
(7)結晶格子中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換:
単結晶インゴットの組成物中(結晶格子中)の鉛の0.05〜10mol%をカルシウムと置換させるためには、単結晶を育成中のカルシウムの蒸発量を考慮して、カルシウムを添加する必要がある。カルシウムを添加する方法は、特に規定されない。例えば、カルシウム置換マグネシウムニオブ酸鉛やカルシウム置換亜鉛ニオブ酸鉛あるいは、カルシウム置換チタン酸鉛を使用しても良い。あるいは、酸化カルシウムや炭酸カルシウムを原料に添加する方法でも良い。原料中に酸化カルシウムを添加した場合は、単結晶を育成中に、酸化カルシウム中のカルシウム(Ca)は、3種の鉛系ペロブスカイト構造化合物(マグネシウムニオブ酸鉛または亜鉛ニオブ酸鉛およびチタン酸鉛、インジウムニオブ酸鉛)の固溶体からなる結晶格子の鉛(Pb)サイト(図5のRイオン)の一部に置換型原子として配置され、高温での酸化鉛の蒸発を抑止する作用がある。このCaの作用によって、パイロクロア相の生成が抑制できる結果、所望の複合ペロブスカイト相の単結晶の生成を容易にする。本発明では、上記Caの作用を発揮させるため、カルシウムは0.05mol%以上置換することが必要であるが、10mol%を超える置換は、単結晶の育成が困難となる。このため、結晶格子中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換されているのが好ましい。さらに、0.05〜5mol%がカルシウムと置換されているのが好ましい。
(8)Mn、Cr、Sb、W、Al、La、LiおよびTaの内から選ばれる1又は2以上の元素を合計で5mol%以下:
比誘電率εrや機械的品質係数Qを大きくする等の必要がある場合には、さらにMn、Cr、Sb、W、Al、La、LiおよびTaの内から選ばれる1又は2以上の元素を合計で5mol%以下添加してもよい。合計で5mol%を超える添加は、単結晶を得るのが難しく、多結晶となるおそれがあるからである。
これらの元素を添加する効果は、たとえばMn、Crを添加することで機械的品質係数Qの向上や経時劣化の抑制を図ることができる。この効果を得るためには、MnおよびCrの内から選ばれる1または2の元素を合計で、0.05mol%以上添加するのが好ましい。また、Sb、La、W、Taの添加により比誘電率が向上する。この効果を得るためには、Sb、La、WおよびTaの内から選ばれる1または2以上の元素を合計で、0.05mol%以上添加するのが好ましい。またAl、Liは、単結晶の成長時の安定化に寄与する。その効果を得るためには、AlおよびLiの内から選ばれる1または2の元素を合計で、0.05mol%以上添加するのが好ましい。
(9)その他不純物
また、Fe、Pt、Au、Pd、Rhなどの不純物は、圧電単結晶の製造過程で、原料やルツボ等から混入する可能性があるが、これらの不純物は単結晶の生成を妨げるので、合計で0.5mol%以下に抑えておくことが望ましい。
(10)1−3コンポジット圧電素子
本発明の1−3コンポジット圧電素子は、図1に示すように第1相を圧電単結晶とし、その周囲を第2相としてポリマー等で囲まれた並列形複合体の形状をしているものを言う(文献:セラミックス工学ハンドブック、社団法人日本セラミックス協会編、1917〜1925ページ参照)。本発明では、縦方向振動モードのk33を利用する圧電単結晶素子の複数個を用いて1−3コンポジット圧電素子を形成する場合には、分極方向に直交する素子端面Tが同一平面内に位置するように配列することが好ましい。なお、1つの1−3コンポジット圧電素子を形成する場合に使用される圧電単結晶素子の数やその圧電単結晶素子の配列パターンは、用途に応じて定められる。
次に、本発明の圧電単結晶素子の好適な製造方法について、説明する。
本発明の圧電単結晶素子の製造方法は、単結晶のインゴットを製造する工程と、その単結晶のインゴットから所定形状の単結晶素子材料を所定方向に切り出す工程と、この単結晶素子材料の分極方向に、所定の条件で電界を印加して単結晶素子材料を分極する主分極工程、あるいは、この主分極工程の前後で補助分極工程を有することを特徴とするものである。なお、単結晶素子の製造方法は、上記の処理に限るものではなく、例えば、結晶学的方位を決定した後、単結晶インゴットに分極処理を施し、その単結晶のインゴットから所定形状の単結晶素子材料を所定方向に切り出す処理を行っても良い。
以下、各工程における本発明の製造方法の限定理由を説明する。
(1)単結晶インゴットの製造:
マグネシウムニオブ酸鉛[Pb(Mg1/3Nb1/3)03]または亜鉛ニオブ酸鉛[Pb(Zn1/3Nb2/3)03]]:35〜98mol%、およびチタン酸鉛[PbTiO3]:0.1〜64.9mol%、インジウムニオブ酸鉛[Pb(In1/2Nb1/2)03]:0.05〜30mol%を含有する組成物であって、該組成物中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換されている組成に、さらに、必要に応じて、Mn、Cr、Sb、W、Al、La、LiおよびTaの内から選ばれる1又は2以上の元素を合計で5mol%以下を添加した単結晶のインゴットの製造方法は、上記の組成に調整された粉状、仮焼結体あるいは焼結体をフラックス中に溶解させた後、降温させて凝固させる方法か、融点以上に加熱して融解させた後、一方向に凝固させることにより単結晶を得る方法がある。前者の方法としては、溶液ブリッジマン法、または、TSSG法(Top Seeded Solution Growth)などがあり、後者としては、融解ブリッジマン法、CZ法(チョコラルスキー法)などがあるが、本発明では、特に規定しない。特に、亜鉛ニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PZN-PT)の場合は、溶液ブリッジマン法またはTSSG法が好ましい。
(2)単結晶インゴットの結晶学的方位の決定:
本発明では、特に単結晶インゴットの結晶学的方位の決定方法を規定しない。例えば、単結晶インゴットの[001]方向を分極方向PDとする場合は、単結晶インゴットの[001]軸方位をラウエ法によって概ね決定し、同時に[001]軸方位とほぼ直交する[010]軸方位及び[100]軸方位又は、必要に応じて[110]、[101]、[011]軸方位などの結晶学的方位を概ね決定する。
さらに、[001]軸、[010]軸及び[100]軸等のいずれかの結晶軸に直交する結晶学的面{100}面を研磨し、エックス線方位測定機などを用いて正確な方位を決定し、上記の研磨面のズレを修正する。
(3)粗切断(適当な厚さのウェーハへの切断):
本発明では、特に粗切断方法を規定しないが、例えば、単結晶インゴットの[001]方向を分極方向PDとする場合は、上記の単結晶インゴットの研磨面{100}面に平行又は直交して単結晶インゴットをワイヤーソー又は内周刃切断機などの切断機を用いて切断し、適切な厚さの板材(ウェーハ)を得る。尚、切断後に、必要に応じてエッチング液を用いて化学エッチングする工程を含むこともできる。
(4)研磨(所定の厚さのウェーハへの研磨):
上記のウエーハをラッピング機、ポリッシング機などの研削機又は研磨機によって研削又は研磨し、所望の厚さのウェーハを得る。尚、研削、研磨後に、必要に応じてエッチング液を用いて化学エッチングする工程を含むこともできる。
(5)単結晶板(単結晶素子)の製作:
本発明では、特に単結晶板の製作方法を規定しない。
分極方向や縦方向振動モードあるいは、横方向振動モードに応じて、単結晶板の切出し方向は異なる。以下、本発明の3つの単結晶素子について、それぞれの切出し方法の一例を示す。
(a)横方向振動モードの電気機械結合係数(k31)を利用する場合:
図7(a)、図7(b)および図7(c)に示すように、[001]方向を分極方向PDとし、それにほぼ直交する[100]方向と[010]方向を含む面である(001)面を垂直に裁断する面を端面Tとする圧電単結晶素子の場合、その端面Tの法線方向1が、[100]方向、[010]方向または[110]方向を0°としたとき、それぞれ0°±15°([100]軸±15°)、0°±15°([010]軸±15°)又は0°±5°([110]軸±5°)の立体角の範囲内になるように、このウェーハから所定形状の単結晶板を、ダイシングソーやカッティングソーなどの精密切断機を用いて切り出して作製する。
(b)[001]方向を分極方向PDとし、それに平行な方向の振動モード、即ち、(001)面を端面とする縦方向振動モードの電気機械結合係数k33を利用する圧電単結晶素子の場合:
図6の圧電単結晶素子Bに示すように、(001)面が端面となるように、[001]が、素子の長手方向になるように上述の精密切断機を用いて切り出して作製する。
(c)[110]方向を分極方向とし、それに平行な方向の振動モード、即ち、(110)面を端面とする縦方向振動モードの電気機械結合係数k33を利用する圧電単結晶素子の場合:
図6の圧電単結晶素子Cに示すように、(110)面が端面となるように、[110]方向が、素子の長手方向になるように上述の精密切断機を用いて切り出して作製する。
(6)面取り:
図2や図6の圧電単結晶素子BまたはCに示すように、縦方向振動モードの電気機械結合係数k33を利用する圧電単結晶素子が直方体の場合は、分極中に直方体の長手方向の4つの稜bにチッピングが発生するのを防止するために、これらの稜bを面取りしても良い。
(7)電極の作製:
主分極処理あるいは、さらに、補助分極処理で、印加電界を掛けるために必要な電極を事前に作製する必要がある。
主分極処理前に、作製した単結晶素子材料の主分極方向に垂直な対向する端面に、スパッタ法でCr−Au被膜(1層目にCr層:厚み約50Å、2層目にAu層:厚み約100〜200Å)を形成するか、プラズマ蒸着で、金被膜を形成するか、あるいは、スクリーン印刷で銀被膜を形成した後、焼成して電極を作製する。
また、補助分極処理前では、補助分極方向に垂直な対向する2つの面に、上記と同じ方法で、電極を形成する。
なお、補助分極処理後に主分極処理する場合、あるいは、主分極処理後に補助分極処理する場合には、最初の分極処理に使用した電極が残っていると、後の分極処理を不安定にするので、適当な化学エッチング液および酸で完全に電極を除去しておく必要がある。
(8)主分極処理工程:
育成後の単結晶インゴットから切り出された単結晶のままでは、分極方向PD及びこれと直交する方向において、同一方向の電気双極子の集合からなるドメイン内の電気双極子の向きがドメイン毎に種々の方向を向いているため、圧電性を示さず、未分極の状態にある。
通常用いられる一般的な分極条件である分極処理温度と印加電界を選択し、分極方向PDに電界を印加して分極することにより、初めてドメイン毎に種々の方向を向く多くのドメイン内の電気双極子の向きを分極方向PD(一方向)に揃えることができる。このことにより、分極方向PDの電気機械結合係数k33は、例えば、亜鉛ニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PZN−PT)または、マグネシウムニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PMN−PT)の場合に、80%以上の大きな値を示すようになる。
しかし、横方向振動モードの電気機械結合係数k31を利用する圧電単結晶素子の場合に問題となる分極方向PDと直交する方向におけるドメインの配列は、上記の分極処理では、適切に制御できない。本来、切り出された素子材料の分極方向PDと直交する面内の素子の切出し方向の適切な選択と、分極方向PDでの分極条件、即ち、分極処理温度と印加電界の適切な範囲内でのみ制御することが可能である。
本発明の主分極工程は、切り出した単結晶素子材料の分極方向PDに、20〜200℃の温度範囲で350〜1500V/mmの直流電界を印加するのが好適である。すなわち、上記の好適な温度範囲の下限値の20℃未満の場合や印加電界範囲の下限値350V/mm未満の場合には、分極が不十分である。上記の好適な温度範囲の上限値200℃を超える場合や印加電界範囲の上限値1500V/mmを超えた場合には、過分極(オーバーポール)が起こり、圧電単結晶素子の圧電特性を劣化させる。また、過度の電界により、結晶中の歪が増大し、破断を生じさせる可能性があり、庄電単結晶素子にクラックが発生する。
なお、分極時間は、上記の好適範囲内で選ばれた分極処理温度と印加電界に応じて、調整することが好ましい。分極時間は、最大でも180分である。
あるいは、主分極工程は、切り出した単結晶素子材料の分極方向3に、該単結晶素子材料のキュリー温度Tcより高い温度、好適には、180〜300℃の温度範囲で350〜1500V/mmの直流電界を印加したまま室温まで冷却する(電界冷却)のがより好適である。キュリー温度Tcより高い温度にすることで、電気双極子の存在を一旦無くし、その後、キュリー温度以下に冷却することで、電気双極子の向きが、よりきれいに揃うためである。キュリー温度より低い温度の場合には、一部に、電気双極子が残るために、分極が不十分になるためである。また、上記の好適な印加電界範囲の下限値350V/mm未満の場合には、分極が不十分である。上記の好適な印加電界範囲の上限値500V/mmを超えた場合には、過分極(オーバーポール)が起こり、圧電単結晶素子の圧電特性を劣化させる。また、過度の電界により、結晶中の歪が増大し、破断を生じさせる可能性があり、圧電単結晶素子にクラックが発生する。なお、冷却速度は、冷却中に素子にクラックが生じない冷却速度が望ましい。
なお、キュリー温度は、例えば、図8と図9中のTc線を示すが、それ以上の温度になると電気双極子がそれぞれ無秩序な方向を向いて整列しなくなり、圧電性または強誘電性を示さなくなる転移温度である。これは、組成や物質の構造により決まっている。
また、上述したように、単結晶素子の分極処理方法は、上記の処理に限るものではなく、例えば、結晶学的方位を決定した後、単結晶インゴットに分極処理を施し、その単結晶のインゴットから所定形状の単結晶素子材料を所定方向に切り出す処理を行っても良い。
(9)補助分極処理工程:
上述した主分極工程は、圧電単結晶素子の主たる分極を行う工程であるが、該主分極工程の実施前あるいは実施後に、上記の分極方向PDと直交する方向の強誘電体ドメインの整列状態を制御する製造方法も有効である。
上記の分極方向PDと直交する方向に印加する電界の種類としては、直流電界、パルス電界、交流電界、またこれらの定常電界のほか、減衰電界などがあり、電界の強さや印加時間、温度条件等は、個々の圧電単結晶素子の特性及び分極方向に直交する方向の電気機械結合係数k31の所望の値に応じて適正条件がある。これらは、実験等によって定めることができる。補助分極の効果を得るためには、補助分極処理温度は、25℃〜相転移温度(例えば、図8に示すTrt線や図9に示すTrt線)以下、印加電界範囲は、350〜1500V/mmが好ましい。なお、分極時間は、上記の好適範囲内で選ばれた分極処理温度と印加電界に応じて調整することが好ましいが、特に、10分〜2時間が望ましい。
また、前記のパルス電界としては、直角波のほか、図10に示すような交流三角波などユニポーラ及びバイポーラバルスを用いることができる。
本発明によって、インジウムニオブ酸鉛やCa等の添加物のない鉛系ペロブスカイト構造単結晶に比較して、遜色のない圧電単結晶素子を製造できた。さらに、インジウムニオブ酸鉛やCa等の添加物のない鉛系ペロブスカイト構造単結晶育成時の異相であるパイロクロア相の発現や、該単結晶の育成後の冷却時の熱クラック発生を抑制することにより、結晶収率やウエーハ収率の低下が改善された。且つ、得られたウエーハから単結晶板を切り出す時のチッピングの発生による単結晶板収率の低下も同様に改善された。この事により、インジウムニオブ酸鉛やCa等の添加物のない鉛系ペロブスカイト構造単結晶から製造される圧電単結晶素子に比較して十分安価に単結晶素子が製造できるようになったため、従来適応できなかった広い応用分野に適応できる圧電単結晶素子を供給できるようになった。
マグネシウムニオブ酸鉛[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]の鉛(Pb)65mol%の一部を、Caで1mol%置換したカルシウム置換マグネシウムニオブ酸[Pb(Ca)(Mg1/3Nb2/3)O3]:65mol%、チタン酸鉛[PbTiO3]:32mol%およびインジウムニオブ酸鉛[Pb(Inl/2Nbl/2)O3]:3mol%の粉末を混合し、仮焼した後、成型して50mmφの白金るつぼ中に収納し、縦型電気炉中で1350℃に加熱して融液とし、20℃/1cmの温度勾配中でるつぼを0.5mm/hで降下させることによって一方向凝固(融液ブリッジマン法)させることで、発明例である[Pb(Ca)(Mg1/3Nb2/3)O30.65[Pb(Ca)(In1/2Nb1/2)O30.03[Pb(Ca)TiO30.32結晶(PMN65/PIN03−PT32(Ca1))を育成した。
比較のため、マグネシウムニオブ酸鉛[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]:68mol%とチタン酸鉛[PbTiO3]:32mol%とからなる固溶体の焼結体を50mmφの白金るつぼ中に収納し、縦型電気炉中で1330℃に加熱して融液とし、20℃/1cmの温度勾配中でるつぼを0.5mm/hの一定速度で降下させることによって一方向凝固(融液ブリッジマン法)させることで、比較例であるマグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]0.68[PbTiO30.32(PMN68−PT32)結晶についても育成した。これらの結晶育成を各5回行った。育成した結晶について、パイロクロア相および熱クラックの発生状況と、結晶収率およびウエーハ収率を調べた結果を表1に示す。
なお、ここでいう「結晶収率」とは、投入した原料質量に対するパイロクロア相や熱クラックの無い健全な単結晶部分の質量の百分率(%)を意味する。また、「ウエーハ収率」とは、得られた単結晶部分を、ワイヤーソーなどの切断用具で所望の方位に、厚さ0.36mmで切断して得られたウエーハの枚数に対する、パイロクロア相や熱クラックの無い健全なウエーハの枚数の百分率(%)を意味する。
また、パイロクロア相の有無は、目視で単結晶インゴットとウエーハの色と透明度を確認した。パイロクロイア相は、ペロブスカイト相よりも透明度が高いので、明瞭に判別できる。また、熱クラックの有無は、ウエーハに光を透過させる方法、さらに必要に応じて染色浸透探傷剤をスプレーで吹き付け、現像することで目視で観察した。クラックが2〜3本のものを少数とした。
Figure 2005139064
表1から、発明例であるPMN65/PIN03−PT32(Ca1)単結晶は、比較例であるPMN68−PT32単結晶に比較して、結晶収率及びウエーハ収率が格段に優れていることがわかる。
次に、実施例1で得た2種類のウエーハを、所望の方位を端面に持つ長方形板に加工した。ここでは、[001]方向をウエーハの最大面積をもつ面の法線方向とし、[100]方向及び[010]方向をそれぞれ端面の法線方向に持つ、長さ13mm×幅4mm×厚み0.36mmの単結晶板を、二種類の長方形板ごとに50枚ずつ、ダイシングソーにて切り出し加工を行なった。二種類のウエーハをダイシング加工した際の、チッピングの発生の有無と、全体(50枚)中に占めるチッピングが発生した枚数の割合および単結晶板収率(単結晶板収率=100%−チッピング発生比率)を表2に示す。なお、ダイシング加工は切削速度0.2mm/sで行った。
なお、チッピングの有無は、単結晶板の周辺を実体顕微鏡で観察し、30μm以上の欠けが1個以上あれば、有りと判定した。
Figure 2005139064
表2から、発明例であるPMN65/PIN03−PT32(Ca1)単結晶は、比較例であるPMN68−PT32単結晶に比較して、ダイシング加工時のチッピングの発生が顕著に抑制されていることがわかる。
次に、実施例1で得た2種類のウエーハから、横方向振動モード利用の圧電単結晶素子を作製するために、図6の単結晶素子Aに示すように、[001]方向に0.36mm、[010]方向および[100]方向にそれぞれ4mmおよび13mmの寸法を持つ、13mm×4mm×0.36mmの単結晶素子材料をダイシングソーで切断して作製した。作製した単結晶素子材料の対向する(100)面である上下面10a及び10bに、スパッタ法でCr−Au被膜(1層目にCr層:厚み約50Å、2層目にAu層:厚み約100〜200Å)を形成して金電極を作製し、この単結晶素子材料を、40℃のシリコンオイル浴中において700V/mmの直流電界を1時間印加することによって分極し、圧電特性評価用の試料を作製した。発明例であるPMN65/PINO3−PT32(Ca1)から作製した圧電単結晶素子と、比較例であるPMN68−PT32単結晶から作製した圧電単結晶素子の圧電特性である、横方向振動モードに関する電気機械結合係数k31及び圧電歪定数d31の測定結果を表3に示す。なお、参考のため、現在の圧電素子材料の主流であり、従来例であるジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)焼結体(PZT)で作製した圧電素子の圧電特性についても表3に併記した。なお、k31とd31は、分極処理後の圧電単結晶素子について、インピーダンス・ゲイン・フェイズ・アナライザー(HP社製、装置番号:HP4194A)を用いて得られたk31モードのインピーダンスカーブと位相から既知の計算式(電子材料工業会標準規格:EMAS−6008,6100参照)によって算出した。
Figure 2005139064
表3から、発明例であるPMN65/PINO3−PT32(Ca1)単結晶から作製した圧電単結晶素子は、横方向振動モードに関する電気機械結合係数k31及び圧電歪定数d31が、比較例であるPMN68−PT32単結晶から作製した圧電単結晶素子とは、ほぼ同等の値を維持していて、従来例であるジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)焼結体(PZT)で作製した圧電素子に比べて格段に優れていることがわかる。
次に、横方向振動モード利用の圧電単結晶素子の端面Tの法線方向1と結晶学的方位との関係を把握するため、図6の単結晶素子Aに示すように、PMN65/PIN03−PT32(Ca1)単結晶板及びPMN68−PT32単結晶板の[001]方向を分極方向として、13mm×4mm×0.36mmの圧電単結晶素子の最大面積の面を[001]方向に直交する(001)面とし、横方向振動モードに利用する4mm×0.36mmの端面Tの法線方向1を、[100]方向を0°、[110]方向を45°および[010]方向を90°としたときの0°から90°の範囲で5°毎変化させて、ダイシングソーを用いて切り出した種々の単結晶素子材料を作製し、作製した単結晶素子材料の対向する(001)面である上下面に、実施例3と同様な方法で、金電極を作製し、この単結晶素子材料を、実施例3と同一の方法で分極した。
分極処理後の圧電単結晶素子について、実施例3と同様の方法で、横方向振動モードに関する電気機械結合係数k31を測定した。表4に測定結果を示す。ここで、前記端面Tの法線方向1を、[100]方向に対して0°から90°の範囲を選択したことは、立方晶の対称性から{100}面内のすべての方向に関する情報を得るに必要十分な角度範囲であるためである。なお、参考のため、従来例であるジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)焼結体(PZT)で作製した圧電素子についての横方向振動モードに関する電気機械結合係数k31を表4に併記した。なお、PZTは焼結体であり、ここに示した圧電単結晶のように結晶方位に伴う異方性を持たないので、横方向振動モードに関する電気機械結合係数k31は、端面Tの法線方向1とは無関係で全結晶方位にわたって同じ値である。
Figure 2005139064
表4から、横方向振動モードを利用する圧電単結晶素子の端面Tの法線方向1の好適な方位は、[100]方向を角度0°とした時、端面の法線方向が0°〜15°の範囲(前述の対称性から0°±15°の範囲と同等で、[100]軸±15°以内の角度を成す範囲)及び45±5°の範囲(前述の対称性から±45±5°の範囲と同等で、即ち[110]軸±5°以内の角度をなす範囲)であることがわかる。また、[010]方向を角度0°とした場合も、横方向振動モードを利用する圧電単結晶素子Tの端面の好適な法線方向1の方位は、端面の法線方向が0°〜15°(前述の対称性から0°±15°の範囲と同等で、[010]軸±15°以内の角度を成す範囲)及び45±5°(前述の対称性から±45±5°の範囲と同等で、即ち[110]軸±5°以内の角度をなす範囲)の範囲であることもまた併せて確認した。
また、上記実施例では、単結晶板の[001]方向を分極方向として、13mm×4mm×0.36mmの圧電単結晶素子の最大面積の面を[001]方向に直交する(001)面内について好適な方位を確認したが、図7(a)〜(c)に示す立体角内の端面Tの法線方向1が0°±15°及び45°±5°の範囲においても、良好なk31が得られることを確認した。
PMN65/PIN03−PT32(Ca1)単結晶及びPMN68−PT32単結晶は、いずれもペロブスカイト構造であり、その(001)面内で、[100]方向と[010]方向の間に、[310]、[210]、[320]等の低指数の結晶軸を含んでいる。
PMN65/PIN03−PT32(Ca1)単結晶及びPMN68−PT32単結晶を用いて作製した圧電単結晶素子はいずれも、前記好適角度範囲にすると、低指数の結晶軸の方向が圧電単結晶素子の横方向振動モードを利用する端面Tの法線方向1と十分に大きな角度差を持っているため、低指数結晶軸方向への分散が抑制される結果として、該端面Tの横方向振動モードの電気機械結合係数k31が大きくできるものと考えられる。
一方、横方向振動モードを利用する圧電単結晶素子の端面の好適な方位が前記角度範囲外の場合だと、[310]、[210]、[320]等の低指数結晶軸の影響が大きくなり、横方向振動が該端面Tの法線方向1とこれらの低指数結晶軸方向とに分散されるため、該端面の横方向振動モードの電気機械結合係数k31が小さくなって、横方向振動モード利用の圧電単結晶素子としては適さなくなるものと考えられる。
また、PMN65/PIN03−PT32(Ca1)単結晶より作製した圧電単結晶素子は、横方向振動モードに関する電気機械結合係数k31が、PMN68−PT32単結晶から作製した圧電単結晶素子とはほぼ同等で、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)焼結体(PZT)で作製した圧電素子に比べると格段に優れていることがわかった。
次に、PMN65/PINO3−PT32(Ca1)単結晶板を用いて縦方向振動モード利用の圧電単結晶素子を作製するために、図6の単結晶素子Bに示すように[001]方向に10mm、[010]方向及び[100]方向ともに4mmの長さを持つ、4mm×4mm×10mmの単結晶直方体をワイヤーソーで切断して作製した。この単結晶直方体の対向する(001)面である上下面に、実施例3と同様な方法で金電極を作製し、この単結晶素子材料を、40℃のシリコンオイル浴中で[001]方向に0.7kV/mmの直流電界を1時間印加することによって分極し、圧電特性評価用の試料を作製した。
比較のため、 PMN68−PT32単結晶からも同様の試料を切り出し、同じ条件で分極した。
発明例であるPMN65/PINO3−PT32(Ca1)から作製した圧電単結晶素子と、比較例であるPMN68−PT32単結晶から作製した圧電単結晶素子の圧電特性である、縦方向振動モードに関する電気機械結合係数k33及び圧電歪定数d33の測定結果を表5に示す。なお、参考のため、現在の圧電素子材料の主流であり、従来例であるジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)焼結体(PZT)で作製した圧電素子の圧電特性についても表5に併記した。
なお、分極処理後の圧電単結晶素子k33は、インピーダンス・ゲイン・フェイズ・アナライザー(HP社製、装置番号:HP4194A)を用いて既知の計算式(電子材料工業会標準規格:EMAS−6008,6100参照)によって算出した。また、圧電歪定数(d33)は、中国製のd33メーター(INSTITUTE of ACOUSTICS ACADEMIA SINICA製:PIEZO d33 METER Model ZJ−30)を用いて、直接測定した。
Figure 2005139064
表5から、発明例であるPMN65/PINO3−PT32(Ca1)単結晶から作製した圧電単結晶素子は、縦方向振動モードに関する電気機械結合係数(k33)及び圧電歪定数(d33)が、比較例であるPMN68−PT32単結晶から作製した圧電単結晶素子とは、ほぼ同等の値を維持していて、従来例であるジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)焼結体(PZT)で作製した圧電素子に比べて格段に優れていることがわかる。
次に、PMN65/PINO3−PT32(Ca1)単結晶板を用いて作製した縦方向振動モード利用の圧電単結晶素子を作製するために、図6の圧電単結晶素子Bに示すように[001]方向に20mm、[010]方向及び[100]方向ともに1mmの長さを持つ1mm×1mm×20mmのPMN65/PIN03−PT32(Ca1)単結晶直方体をワイヤーソーにて切断して作製した。この単結晶直方体の対向する(001)面である上下面に、実施例3と同様な方法で金電極を作製し、この単結晶素子材料を、40℃の大気中において〔001〕方向に0.7kV/mmの直流電界を1時間印加することによって分極して圧電単結晶素子を得た。かかる圧電単結晶素子400個を用い、これらを治具中にて、図1に示すように各端面が同一平面内に位置するように平行に1mm間隔で配列し、エポキシ樹脂にて間隙を充填して20個×20個の1−3コンポジット圧電素子を作製した。
一方、PMN68−PT32単結晶を同様に加工したが、クラックやチッピングが多く発生し、必要な400個の圧電単結晶素子が得られず、1−3コンポジット圧電素子を作製することができなかった。
作製したPMN65/PINO3−PT32(Ca1)単結晶からなる1−3コンポジット圧電素子の圧電特性(k33、d33)を実施例5と同様な方法で測定し、従来のジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)焼結体(PZT)で作製した同等の1−3コンポジット圧電素子の圧電特性と比較した。
その結果を表6に示す。
Figure 2005139064
その結果、圧電単結晶素子単体同士での比較と同様、PMN65/PINO3−PT32(Ca1)単結晶から作製した1−3コンポジット圧電素子は、縦方向振動モードに関する比誘電率ε33 およびdhが、PZTから作製した1−3コンポジット圧電素子に比べて格段に優れていることが確かめられ、よって、PMN65/PIN03−PT32(Ca1)単結晶は、PMN68−PT32単結晶では、歩留まり低下のため妥当な価格では作製できない1−3コンポジット圧電素子を安価で作製でき、しかも、電気機械結合係数及び圧電歪定数等の圧電特性が、現在の圧電素子材料の主流であるジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)焼結体(PZT)で作製した圧電素子に比べて、格段に優れていることがわかった。
なお、比誘電率ε33 は、分極処理後の圧電単結晶素子について、インピーダンス・アナライザー(YHP社製、装置番号:YHP4192A LF IMPEDANCE ANALYZER)を用いて得た。また、圧電歪定数dhは、公知の所定の計算式(dh=d33+2d31)により求めた。
なお、上述した実施例1〜6ではいずれも、[Pb(Ca)(Mg1/3Nb2/3)O30.65[Pb(Ca)(In1/2Nb1/2)O30.03[Pb(Ca)TiO30.32結晶(PMN65/PIN03−PT32(Ca1))について説明してきたが、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN(Ca))、インジウムニオブ酸鉛(PIN(Ca))、チタン酸鉛(PT(Ca))、およびカルシウム(Ca)添加量を種々変更した結晶の場合、およびマグネシウムニオブ酸鉛(PMN(Ca))の代わりに亜鉛ニオブ酸鉛PZN(Ca)を用いた結晶の場合などについても、パイロクロア相の状況、結晶収率、熱クラックの有無、ウェーハ収率について実施例1と同様に確認した。その結果を表7に示す。
Figure 2005139064
その結果、いずれの場合も結晶収率、ウェーハ収率が高く、生産性が高いことがわかった。また、これらの結晶を用いた圧電素子についても、[PMN65/PIN03-PT32(Cal)]と同様な特性を有することを確認した。
次に、[Pb(Ca)(Mg1/3Nb2/3)030.65[Pb(Ca)(In1/2Nb1/203)]0.03[Pb(Ca)TiO30.32結晶(PMN65/PINO3−PT32(Cal))の固溶体に、Mn,Cr,Sb,W,Al,La,Li及びTaからなる群から選ばれた1又は複数の元素を0.5ppm〜5質量%をさらに添加した組成についても、実施例3と同様の製造方法で素子を作製し、PMN65/PINO3−PT32(Cal)と同様の試験条件で電気機械結合係数k31を調べたところ、表8に示すように、いずれも比較例のPMN68−PT32と同等の高い電気機械結合係数k31が得られた。特に、MnやCrを添加した場合には、機械的品質係数Qは、65.0から120.0〜150.0と格段に向上し、Sb、W、La,Taの添加により比誘電率εが、3500から4300〜4700と大幅に向上した。なお、機械的品質係数Qは、インピーダンス・ゲイン・フエイズ・アナライザー(HP社製、装置番号:HP4194A)を用いて既知の計算式(電子材料工業会標準規格:EMAS−6008,6100参照)によって算出した。また、比誘電率εは、電子材料工業会標準規格(EMAS−6008.6100参照)に準拠して、インピーダンス・アナライザー(HP社製、装置番号:HP4192A)を用いて求めた。
Figure 2005139064
次に、圧電単結晶素子を製造する好適な分極処理方法について実施例9を用いて説明する。種々の主分極処理条件で製造した実施例3で得られた横方向振動モードの電気機械結合係数k31の圧電単結晶素子を測定した結果を表9に示す。なお、主分極処理条件以外の圧電単結晶素子の製造方法や素子寸法および試験条件は、実施例3と同様に行った。
Figure 2005139064
実施例3と同様の方法で製造された発明例であるPMN65/PINO3−PT32(Cal)素子と比較例であるPMN68−PT32素子について、横方向モード利用に好適な圧電単結晶素子の分極処理温度を15〜250℃とし、印加電界を本発明範囲の700V/mm、分極時間は、分極処理温度に応じて調整した。その結果を表9のNo.1〜5に示す。表9のNo.1に示すように、分極処理温度が20℃未満では、分極方向に直交する方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31は、発明例のPMN65/PINO3−PT32(Cal)素子と比較例のPMN68-PT32素子は、それぞれ、25%と20%であり、横方向振動モード用の素子の特性としては不十分であった。加えて、分極処理温度が15℃で180分よりも短い印加時間においては、更に低い電気機械結合係数k31しか得られなかった。これは、分極処理温度が20℃未満では、分極が不十分なためであると考えられる。一方、表9のNo.5のように分極処理温度が200℃を超えると、分極方向に直交する方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31は、発明例のPMN65/PINO3−PT32(Cal)素子と比較例のPMN68−PT32素子は、それぞれ、32%と30%であった。加えて、この分極処理温度(210℃)で印加時間が30分を超える場合では、印加中または印加終了直後に圧電単結晶素子中にクラックを発生する例が多く見られた。
これは、該条件下では過分極(オーバーポール)が起こり、圧電単結晶素子の庄電特性を劣化させたものと考えられる。また、圧電単結晶素子にクラックが発生したことは、過度の電界により、結晶中の歪が増大し、破断を生じたものと考えられる。
実施例3と同様の方法で製造された横方向モード利用に好適な圧電単結晶素子の分極処理温度を本発明範囲の40℃とし、印加電界を300〜1600V/mm、分極時間は、印加電界に応じて調整した。その結果を表9のNo.6〜10に示す。表9のNo.6に示すように印加電界が350V/mm未満では、分極方向に直交する方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31は、発明例のPMN65/PINO3−PT32(Cal)素子と比較例のPMN68−PT32素子は、それぞれ30%、28%であり、横方向振動モード用の素子の特性としては不十分であった。加えて、印加電界が300V/mmで180分よりも短い印加時間においては、発明例のPMN65/PINO3−PT32(Cal)素子と比較例のPMN68−PT32素子共に、更に低い電気機械結合係数k31しか得られなかった。これは、印加電界が350V/mm未満では、分極が不十分なためであると考えられる。一方、表9のNo.10のように印加電界が1500V/mmを超えると、分極方向に直交する方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31は、発明例のPMN65/PINO3−PT32(Cal)素子と比較例のPMN68−PT32素子は、それぞれ32%、30%であった。加えて、この印加電界(1600V/mm)で印加時間が30分を超える場合では、印加中または印加終了直後に圧電単結晶素子中にクラックを発生する例が多く見られた。
これは、該条件下では過分極(オーバーポール)が起こり、圧電単結晶素子の圧電特性を劣化させたものと考えられる。また、圧電単結晶素子にクラックが発生したことは、過度の電界により、結晶中の歪が増大し、破断を生じたものと考えられる。
さらに、発明例のPMN65/PINO3−PT32(Cal)素子と比較例のPMN68−PT32素子の横方向振動モード利用に好適な結晶を、図8に示すキュリー温度Tc以上の200℃(本発明範囲)のシリコンオイル中で、300〜1600V/mmの直流電界を印加し、印加電界に応じて、分極時間を調整した結果を表9のNo.11〜15に示す。
表9のNo.11のように印加電界が350V/mm未満では、分極方向に直交する方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31は、発明例のPMN65/PINO3−PT32(Cal)素子と比較例のPMN68−PT32素子は、それぞれ35%、32%であり、横方向振動モード用の素子の特性としては不十分であった。加えて、印加電界が300V/mmで100分よりも短い印加時間においては、発明例のPMN65/PINO3−PT32(Cal)素子と比較例のPMN68−PT32素子共に、更に低い電気機械結合係数k31しか得られなかった。これは、印加電界が350V/mm未満では、分極が不十分なためであると考えられる。一方、表9のNo.15のように印加電界が1500V/mmを超えると、分極方向に直交する方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31は、発明例のPMN65/PINO3−PT32(Cal)素子と比較例のPMN68−PT32素子は、それぞれ40%、38%であった。加えて、印加電界が1600V/mmで印加時間が30分を超える場合では、印加中または印加終了直後に圧電単結晶素子中にクラックを発生する例が多く見られた。
上記のように、発明例であるPMN65/PINO3−PT32(Cal)素子と比較例であるPMN68−PT32素子共に適正な分極条件の範囲において、ほぼ同様の分極方向に直交する方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31値が得られた。
上述したところは、この発明の実施の形態の一部を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
本発明によって、インジウムニオブ酸鉛やCa等の添加物のない鉛系ペロブスカイト構造単結晶に比較して、遜色のない圧電単結晶素子を製造できた。さらに、インジウムニオブ酸鉛やCa等の添加物のない鉛系ペロブスカイト構造単結晶育成時の異相であるパイロクロア相の発現や、該単結晶の育成後の冷却時の熱クラック発生による結晶収率やウエーハ収率の低下が改善された。且つ、得られたウエーハから単結晶板を切出すチッピングの発生による単結晶板収率の低下も同様に改善された。この事により、インジウムニオブ酸鉛やCa等の添加物のない鉛系ペロブスカイト構造単結晶から製造される圧電単結晶素子に比較して十分安価に製造できるようになったため、従来適応できなかった広い応用分野に適応できる圧電単結晶素子を供給できるようになった。
1−3コンポジット圧電素子の一例を示す斜視図である。 縦方向振動モードの電気機械結合係数k33を利用する圧電単結晶素子の方位と形状の一例を示す図である。 分極方向3にほぼ直交する方向1(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31を利用する圧電単結晶素子の方位と形状の一例を示す図である。 分極方向3(またはPD)にほぼ直交する方向1(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31を利用する圧電単結晶素子の端面の形状を示す図である。 ペロブスカイト結晶構造(RMO)の模式的斜視図である。 本発明の圧電単結晶素子の形状と位置関係を示す図である。 (a)は、分極方向3(またはPD)を[001]方向とし、この[001]方向にほぼ直交する[100]方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31を利用する圧電単結晶素子の好適な端面Tの法線方向1を示す図であり、 (b)は、分極方向3(またはPD)を[001]方向とし、この[001]方向にほぼ直交する[010]方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31を利用する圧電単結晶素子の好適な端面Tの法線方向1を示す図であり、 (c)は、分極方向3(またはPD)を[001]方向とし、この[001]方向にほぼ直交する[110]方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数k31を利用する圧電単結晶素子の好適な端面Tの法線方向1を示す図である。 PMN−PT(PMNT)の相図である。 PZN−PT(PZNT)の相図である。 バイポーラ三角波パルスの波形図である。
符号の説明
1 横方向振動モードの電気機械結合係数k31を利用する素子端面Tの法線方向(横振動方向)
2 素子端面の奥行き方向
3(またはPD) 分極方向(縦振動方向)
A 横方向振動モードの電気機械結合係数k31を利用する板状体の圧電単結晶素子
B、C 分極方向(縦方向振動モード)の電気機械結合係数k33を利用する直方体の圧電単結晶素子
T 切り出した単結晶素子材料の端面
V 直流電圧
a 単結晶素子の横方向寸法
b 単結晶素子の縦方向(厚み方向)寸法
c 単結晶素子の端面の(奥行き(方向2))寸法
c´ 単結晶素子の凸状の端面
c´´ 単結晶素子の凹状の端面

Claims (9)

  1. 複合ペロブスカイト構造を有する圧電単結晶において、マグネシウムニオブ酸鉛[Pb(Mgl/3Nb2/3)O3]または亜鉛ニオブ酸鉛[Pb(Znl/3Nb2/3)O3]:35〜98mol%、およびチタン酸鉛[PbTiO3]:0.1〜64.9mol%、インジウムニオブ酸鉛[Pb(Inl/2Nb1/2)O3]:0.05〜30mol%を含有する組成物であって、該組成物中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換されている圧電単結晶。
  2. 複合ペロブスカイト構造を有する圧電単結晶において、マグネシウムニオブ酸鉛[Pb(Mgl/3Nb2/3)O3]または亜鉛ニオブ酸鉛[Pb(Znl/3Nb2/3)O3]:35〜98mol%、およびチタン酸鉛[PbTiO3]:0.1〜64.9mol%、インジウムニオブ酸鉛[Pb(Inl/2Nb1/2)O3]:0.05〜30mol%を含有する組成物であって、該組成物中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換され、さらにMn、Cr、Sb、W、Al、La、LiおよびTaの内から選ばれる1又は2以上の元素が合計で5mol%以下含まれている圧電単結晶。
  3. 請求項1または2に記載した圧電単結晶のインゴットの[001]方向を分極方向とし、それにほぼ直交する[100]方向、[010]方向または[110]方向を単結晶素子の端面の法線方向とする横方向振動モードの電気機械結合係数(k31)を利用する圧電単結晶素子であって、
    その端面の法線方向は、[100]軸±15°、[010]軸±15°又は[110]軸±5°の立体角の範囲内にある圧電単結晶素子。
  4. 請求項1または2に記載した圧電単結晶のインゴットの[001]方向を分極方向とし、それに平行な方向の振動モード、即ち、(001)面を端面とする縦方向振動モードの電気機械結合係数(k33)を利用する圧電単結晶素子であって、
    分極方向に直交する素子端面の最小辺の長さ又は直径をaとし、分極方向に平行な方向の素子長さをbとするとき、aとbがb/a≧2.5の関係式を満足する圧電単結晶素子。
  5. 請求項1または2に記載した圧電単結晶のインゴットの[110]方向を分極方向とし、それに平行な方向の振動モード、即ち、(110)面を端面とする縦方向振動モードの電気機械結合係数(k33)を利用する圧電単結晶素子であって、
    分極方向に直交する素子端面の最小辺の長さ又は直径をaとし、分極方向に平行な方向の素子長さをbとするとき、aとbがb/a≧2.5の関係式を満足する圧電単結晶素子。
  6. 請求項4または5に記載した圧電単結晶素子の複数個を、分極方向に直交する素子端面が同一平面内に位置するように配列することによって形成してなる1−3コンポジット圧電素子。
  7. 請求項1または2に記載した圧電単結晶のインゴットから所定形状の単結晶素子材料を所定方向に切り出す前後に、単結晶のインゴットあるいは切り出した単結晶素子材料の分極すべき方向に、20〜200℃の温度範囲で350〜1500V/mmの直流電界を印加するか、または該単結晶素子材料のキュリー温度(Tc)より高い温度で350〜1500V/mmの直流電界を印加したまま室温まで冷却することによって単結晶のインゴットあるいは単結晶素子材料を分極する工程を有する請求項3〜5のいずれか1項に記載した圧電単結晶素子の製造方法。
  8. マグネシウムニオブ酸鉛[Pb(Mgl/3Nb2/3)O3]または亜鉛ニオブ酸鉛[Pb(Znl/3Nb2/3)O3]:35〜98mol%、およびチタン酸鉛[PbTiO3]:0.1〜64.9mol%、インジウムニオブ酸鉛[Pb(Inl/2Nb1/2)O3]:0.05〜30mol%を含有する組成物であって、該組成物中の鉛の0.05〜10mol%がカルシウムと置換されている圧電単結晶のインゴットから所定形状の単結晶素子材料を所定方向に切り出す前後に、単結晶のインゴットあるいは切り出した単結晶素子材料の分極すべき方向に、20〜200℃の温度範囲で350〜1500V/mmの直流電界を印加するか、または該単結晶素子材料のキュリー温度(Tc)より高い温度で350〜1500V/mmの直流電界を印加したまま室温まで冷却することによって単結晶のインゴットあるいは単結晶素子材料を分極する工程を有する圧電単結晶素子の製造方法。
  9. 請求項8において、前記圧電単結晶のインゴットに、さらにMn、Cr、Sb、W、Al、La、LiおよびTaの内から選ばれる1又は2以上の元素が合計で5mol%以下含まれている圧電単結晶素子の製造方法。
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