JP7428572B2 - 化粧方法 - Google Patents

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Description

本発明は、建築物等に適用可能な化粧方法に関するものである。
従来、建築物等の壁面には、コンクリート、モルタル、各種の板状壁材等が用いられている。このうち、例えば板状壁材としては、その表面に凹凸模様を設けて立体感を付与するとともに、保護と美装のためにコーティングを施したもの等が多く使用されている。
このような板状壁材で構成された壁面は、長期間屋外に曝されることから、板状壁材の表面では、太陽光、降雨、粉塵等の影響によって劣化が進行し、板状壁材の当初の美観性は経年により低下してしまう。
特開平6-306305号公報には、劣化した被膜に対し、シーラーを塗装し、次いで上塗材として水性厚膜型弾性塗料を塗装する方法が記載されている。
特開平6-306305号公報
しかし、凹凸模様を有する板状壁材等の劣化面に対し、上記特許文献の方法を用いて化粧を施しても、上塗材を塗付した後の仕上り状態において、凹凸模様が損われたり、密着性に欠く領域が生じたりする等、実用上満足な結果は得られ難い。
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、凹凸模様を有し、既存被膜を備えた既存壁面に対し、その凹凸模様を活かしつつ、仕上り性、密着性等に優れた新設被膜が形成できる化粧方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、上述のような既存壁面に対し、特定の下塗材及び上塗材を順に塗付する方法に想到し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.経年劣化した既存壁面に対し、下塗材及び上塗材を順に塗付する化粧方法であって、
上記既存壁面は、表面に凹凸模様を有し、既存被膜を備えたものであり、
上記下塗材は、非水系溶剤(A)、樹脂成分(B)、顔料(C)、及び増粘剤(D)を含み、
上記非水系溶剤(A)は、アニリン点12~70℃の非水系溶剤を含み、
上記樹脂成分(B)は、エポキシ樹脂、及びアミン硬化剤を含み、
上記エポキシ樹脂は、ダイマー酸変性エポキシ樹脂を含み、上記エポキシ樹脂中に占める上記ダイマー酸変性エポキシ樹脂の比率は、50重量%以上であり、
上記下塗材は、顔料体積濃度が1~30%であり、不揮発分が30~90重量%であることを特徴とする化粧方法。
2.上記下塗材はシラン化合物を含むものであることを特徴とする1.記載の化粧方法。
3.上記エポキシ樹脂と上記アミン硬化剤との配合比が、[(アミン硬化剤の配合量/アミン硬化剤の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)]で、1.0以下であることを特徴とする1.または2.に記載の化粧方法。
4.上記既存壁面は、表面に凹凸模様を有し、既存被膜を備えた複数の板状壁材によって構成されたものである1.~3.のいずれかに記載の化粧方法。
5.上記アミン硬化剤は、脂肪族アミン硬化剤を含むことを特徴とする1.記載の化粧方法。
6.上記アミン硬化剤の活性水素当量が、40~200g/eqであることを特徴とする1.記載の化粧方法。
7.上記下塗材の顔料体積濃度が1~20%であることを特徴とする1.記載の化粧方法。
本発明によれば、凹凸模様を有し、既存被膜を備えた既存壁面に対し、その凹凸模様を活かしつつ、仕上り性、密着性等に優れた新設被膜を形成することができる。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、建築物、土木構造物等の既存壁面に適用することができる。このような既存壁面は、少なくとも基材と既存被膜で構成される。基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、金属、木材、ガラス等、あるいは各種板状壁材等が挙げられる。このうち板状壁材としては、例えばセメント、珪酸カルシウム、石灰、石膏等のいずれかを主成分する無機質硬化体が挙げられる。このような板状壁材の具体例としては、例えば、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、サイディングボード、セラミック板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、硬質木片セメント板等が挙げられる。
本発明では、既存壁面として、その表面に凹凸模様を有するものを対象とする。既存壁面における凹凸模様としては、種々のものが挙げられ、例えばタイル調模様、レンガ調模様、幾何学的模様、縞模様、格子模様、水玉模様、砂壁模様、ゆず肌模様、さざ波模様等の他、動植物等をデザイン化した図形模様等が挙げられる。具体的に、凹凸模様を正面から見たときの凸部の形状としては、例えば正方形、長方形、円形、楕円形、三角形、菱形、多角形、不定形等の形状が挙げられる。また、凹凸模様における凸部の断面形状としては、例えば台形、正方形、長方形、半円形、波形、階段形、三角形、山形等が挙げられる。凹凸模様における凹部としては、例えば、平坦で目地を形成するもの等が挙げられる。凹部と凸部との高低差は、各々の部位で一定であっても相違していてもよいが、好ましくは20mm以下、より好ましくは1~15mm程度である。このような凹凸模様は、基材、既存被膜のいずれか一方または両方に付されたものであればよい。
本発明における既存壁面では、基材の表面に、既存被膜が設けられている。既存被膜は、上記基材上に、現場塗装、あるいは工場塗装(ライン塗装)等により既に塗装されている種々の被膜であり、例えば、有機質被膜、無機質被膜、有機無機複合被膜等から選ばれる少なくとも1種の被膜が挙げられる。また、既存被膜としては、着色被膜(エナメル系被膜、印刷被膜等)、クリヤー被膜、あるいはこれらの積層被膜等が挙げられ、各種コーティング材を基材に塗布・硬化させ、形成された被膜である。このようなコーティング材は、例えば、常温乾燥型、常温硬化型、焼付け硬化型、紫外線(UV)硬化型、電子線硬化型等のいずれのものであってもよい。
このようなコーティング材の結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等の有機質結合材、あるいはシリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材等が挙げられる。
本発明は、特に、最表面の既存被膜が、無機質被膜(上記無機質結合材を含む被膜)、有機無機複合被膜(上記有機無機複合結合材を含む被膜)、フッ素樹脂被膜(上記フッ素樹脂を含む被膜)等から選ばれる1種以上である場合に好適であり、さらには、これらのクリヤー被膜に好適に適用できる。このような既存被膜は、光触媒酸化チタン等を含むものであってもよい。
本発明は、上述のような既存壁面が経年劣化した際の改装方法として適用できる。経年劣化の程度は、特に限定されるものではないが、壁面として概ね5年以上(さらには8年以上)使用されたものは、本発明の対象とすることができる。
本発明の既存壁面としては、表面に凹凸模様を有すると共に既存被膜を備えた板状壁材が、複数併設されることによって構成されたものが好適である。本発明は、このような複数の板状壁材で構成された既存壁面を対象とした場合に、有利な効果を得ることができる。凹凸模様は、少なくとも板状壁材自体に付されていることが望ましい。
板状壁材どうしの連結部にはシーリング材または乾式目地材が充填されていてもよい。この場合、複数の板状壁材は、連結部を介して併設され、板状壁材どうしの間には、連結部が設けられる。連結部の幅は、好ましくは3~20mm(より好ましくは5~15mm)程度である。この連結部に、シーリング材または乾式目地材が充填される。
本発明では、既存壁面が、板状壁材どうしの連結部にシーリング材が充填されたものである場合に、有利な効果を得ることができる。シーリング材は、板状壁材と同様に経年劣化したものでもよいし、下塗材の塗装前に、新たに打設されたものであってもよい。
シーリング材としては一般的なものが使用可能であり、例えば、シリコーン系シーリング材、変性シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、変性ポリサルファイド系シーリング材、アクリルウレタン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、SBR系シーリング材、ブチルゴム系シーリング材等が挙げられる。
シーリング材の充填方法としては、特に限定されず、例えば、ガンやへら等による公知の方法を採用することができる。
シーリング材の充填前には、予めバックアップ材充填やプライマー塗付等の処理を行っておいてもよい。バックアップ材としては、例えば、発泡ポリエチレン系バックアップ材等を使用することができる。プライマーとしては、例えば、合成ゴム系プライマー、アクリル系プライマー、ウレタン系プライマー、エポキシ系プライマー、シリコーンレジン系プライマー、シラン系プライマー等を使用することができる。
本発明の化粧方法は、上述のような経年劣化した既存壁面に対し、下塗材及び上塗材を順に塗付(塗装)するものである。
本発明における下塗材は、非水系溶剤(A)、樹脂成分(B)、顔料(C)、及び増粘剤(D)を含み、このうち非水系溶剤(A)、樹脂成分(B)がそれぞれ特定の化合物を含み、顔料体積濃度と不揮発分の値が特定範囲内であることを特徴とするものである。
本発明では、このような下塗材を用いることにより、凹凸模様を有し、既存被膜を備えた既存壁面に対し、仕上り性、密着性等に優れた新設被膜を形成することができる。このような効果が奏される作用機構については以下に限定されるものではないが、本発明における下塗材は増粘剤を含むと共に、顔料体積濃度、不揮発分が特定条件を満たすこと等により、既存壁面の凹凸に沿って満遍なく塗着できること、そして既存壁面に塗着した下塗材は、特定の非水系溶剤及び樹脂成分等の作用により、既存被膜に対し優れた密着性を発現すること、等が寄与しているものと推察される。
下塗材における非水系溶剤(A)としては、例えば、n-へプタン、n-ヘキサン、n-ペンタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン等の脂肪族炭化水素溶剤、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶剤、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素含有混合溶剤、石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ、ケロシン等の石油系溶剤等の他、イソパラフィン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテルアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、エーテルエステル系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
本発明における下塗材は、非水系溶剤(A)として、アニリン点12~70℃の非水系溶剤を含む。このような非水系溶剤は、既存被膜を若干膨潤ないし溶解することにより、密着性向上に寄与しているものと考えられる。アニリン点12~70℃の非水系溶剤としては、例えば、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素含有混合溶剤、石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ、ケロシン等の石油系溶剤等から選ばれる1種以上が好適である。なお、アニリン点は、JIS K2256の方法で測定される値である。本発明において、「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
下塗材における樹脂成分(B)は、エポキシ樹脂、及びアミン硬化剤を含むものである。
このうち、エポキシ樹脂としては、例えば、可とう性エポキシ樹脂、硬質エポキシ樹脂等が挙げられ、特にエポキシ樹脂として、少なくとも可とう性エポキシ樹脂を含む態様が望ましい。このような態様であれば、既存壁面が、板状壁材どうしの連結部にシーリング材が充填されたものである場合に、有利な効果を得ることができる。
可とう性エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族変性エポキシ樹脂、ブタジエン系エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、チオール系エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリオール変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。この中でも、脂肪酸変性エポキシ樹脂が好適である。
下塗材のエポキシ樹脂中に占める可とう性エポキシ樹脂の比率(固形分換算)は、既存壁面への追従性、密着性等の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70~100重量%である。
脂肪酸変性エポキシ樹脂は、脂肪族多塩基酸化合物をエポキシ樹脂に付加反応させて得られるものである。付加反応には、例えば、エステル化反応等が使用できる。ここで用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、その他後述の硬質エポキシ樹脂等で例示するような各種エポキシ樹脂が使用できる。脂肪族多塩基酸化合物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドカン2酸、ダイマー酸等が挙げられる。この中でも、ダイマー酸が好適である。
ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の二量体である。ダイマー酸を構成する不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸等が挙げられる。
ダイマー酸をエポキシ樹脂に付加反応させて得られるダイマー酸変性エポキシ樹脂は、下塗材のエポキシ樹脂として好適なものである。下塗材のエポキシ樹脂中に占めるダイマー酸変性エポキシ樹脂の比率(固形分換算)は、既存壁面への追従性、密着性等の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70~100重量%である。
硬質エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型ビスフェノールAエポキシ樹脂、フェノールノボラック型ビスフェノールFエポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グシシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
下塗材で使用するエポキシ樹脂は、エポキシ当量(固形分当たり)が好ましくは300~3000g/eq、より好ましくは400~2000g/eq、さらに好ましくは450~1500g/eq、特に好ましくは500~1100g/eqである。エポキシ当量が上記下限以上であることにより、既存壁面への追従性、密着性等の点で好適である。エポキシ当量が上記上限以下であることにより、耐膨れ性、密着性、上塗材適性等の点で好適である。なお、エポキシ当量とは、エポキシ樹脂の分子量をエポキシ基の数で除した値である。
アミン硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環状ポリアミン、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドアミン、脂環式ポリアミドアミン、芳香族ポリアミドアミン等のポリアミン化合物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。本発明では、この中でも、脂肪族ポリアミン、脂肪族ポリアミド、脂肪族ポリアミドアミンから選ばれる1種以上の脂肪族アミン硬化剤を好適に使用することができる。
このようなアミン硬化剤は、活性水素当量(固形分当たり)が好ましくは40~200g/eq、より好ましくは50~120g/eq、さらに好ましくは60~95g/eqである。活性水素当量が上記範囲内であることにより、密着性等において十分な効果を得ることができる。なお、活性水素当量とは、アミン硬化剤の分子量をアミノ基の水素原子数で除した値である。
本発明では、このようなエポキシ樹脂とアミン硬化剤について、アミン硬化剤の活性水素当量とエポキシ樹脂のエポキシ当量が、[アミン硬化剤の活性水素当量/エポキシ樹脂のエポキシ当量]で、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.01~0.3、さらに好ましくは0.03~0.25、特に好ましくは0.05~0.2の組み合わせになるように各材料を設定して使用することができる。エポキシ樹脂、アミン硬化剤として、このような条件を満たす材料を組み合わせて使用することにより、密着性等の点でより好ましい効果を得ることができる。
エポキシ樹脂とアミン硬化剤の配合比は、[(アミン硬化剤の配合量/アミン硬化剤の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)]で1.0以下となるように設定することが好ましく、より好ましくは0.3~1.0、さらに好ましくは0.5~0.98、特に好ましくは0.6~0.95、最も好ましくは0.7~0.9である。なお、アミン硬化剤の配合量及び活性水素当量、並びにエポキシ樹脂の配合量及びエポキシ当量は、いずれも固形分を基準とするものである。エポキシ樹脂とアミン硬化剤の配合比が上記上限以下であることにより、密着性、下地追従性、上塗材適性等の点で好適であり、上記下限以上であることにより、硬化性、密着性等の点で好適である。
本発明の下塗材において、顔料(C)は、密着性等に寄与する成分である。顔料(C)としては、例えば、着色顔料、体質顔料、防錆顔料等が使用できる。
具体的に、着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、鉄-クロム複合酸化物、マンガン-ビスマス複合酸化物、マンガン-イットリウム複合酸化物、鉄-マンガン複合酸化物、鉄-銅-マンガン複合酸化物、鉄-クロム-コバルト複合酸化物、銅-クロム複合酸化物、銅-マンガン-クロム複合酸化物、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
防錆顔料としては、例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等のリン酸化合物;亜リン酸亜鉛、亜リン酸鉄、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム等の亜リン酸化合物;ポリリン酸亜鉛、ポリリン酸鉄、ポリリン酸アルミニウム等のポリリン酸化合物;モリブデン酸亜鉛、モリンブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、リンモリブデン酸アルミニウム等のモリブデン酸化合物;酸化バナジウム等のバナジウム化合物;ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム等のホウ酸化合物;シアナミド亜鉛、シアナミド亜鉛カルシウム等のシアナミド化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
下塗材は、顔料体積濃度が1~30%であり、好ましくは3~25%、より好ましくは5~23%、特に好ましくは8~20%である。下塗材の顔料体積濃度がこのような比率であることにより、既存壁面の凹凸に沿って、下塗材を満遍なく塗着することができ、凹凸模様を活かしつつ、仕上り性、密着性等に優れた新設被膜を形成することが可能となる。顔料体積濃度が上記値を超える場合は、既存壁面の凹凸模様を活かした仕上りが得られ難くなる。顔料体積濃度が上記値に満たない場合は、既存壁面の凹凸に沿って満遍なく下塗材を塗着させることが難しくなる。なお、顔料体積濃度は、乾燥被膜中に含まれる顔料の体積百分率であり、下塗材を構成する樹脂成分及び顔料の比重と混合量から計算により求められる値である。なお、樹脂成分の比重は1とする。
下塗材における増粘剤(D)としては、例えば、有機ベントナイト、微粉シリカ、表面処理炭酸カルシウム、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、ベンジリデンソルビトール、金属石鹸、酸化ポリエチレン、重合植物油、ポリカルボン酸アミン塩等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
増粘剤(D)の混合量は、樹脂成分(B)の固形分100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.2~5重量部である。増粘剤(D)の混合量がこのような範囲内であれば、下塗材が既存壁面の凹凸に沿って満遍なく塗着しやすくなり、十分な密着性を確保することもでき、本発明の効果を安定的に得ることができる。
下塗材は、上記成分に加え、シラン化合物(E)を含むことができる。このようなシラン化合物(E)を含むことにより、密着性等をいっそう高めることができる。
シラン化合物(E)としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシラン化合物;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等の3官能アルコキシシラン化合物;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の2官能アルコキシシラン化合物;
テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン等のクロロシラン化合物;
テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン等のアセトキシシラン化合物;
γ-グリシドキシプロピルトリメキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリイソプロペニルオキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリイミノオキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリイソプロペニルオキシシランとグリシドールとの付加物等のエポキシ基を含有するシラン化合物;
N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を含有するシラン化合物;
γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基を含有するシラン化合物;等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
下塗材におけるシラン化合物(E)としては、特に、エポキシ基を含有するシラン化合物、アミノ基を含有するシラン化合物から選ばれる1種以上を好適に使用することができる。
シラン化合物(E)の混合量は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは3重量%以下、より好ましくは0.1~2.8重量部、さらに好ましくは0.2~2.5重量部である。シラン化合物(E)の混合量がこのような範囲内であることにより、密着性をいっそう高めることができるとともに、エポキシ樹脂、アミン硬化剤の混合直後に塗装する場合だけでなく、混合して時間経過した後に塗装する場合でも、優れた密着性を示すことができる。
下塗材においては、上述の成分の他、必要に応じ、例えば、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、界面活性剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、触媒、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を、本発明の効果が著しく阻害されない範囲内で混合することができる。
下塗材は、以上のような各成分を常法により均一に撹拌・混合して製造することができる。下塗材の形態は、流通時には、エポキシ樹脂を含む主剤とアミン硬化剤を含む硬化剤とからなる2液型の形態としておき、これらを塗装時に混合して使用することが望ましい。
下塗材の不揮発分は、30~90重量%であり、好ましくは40~80重量%、より好ましくは45~75重量%である。下塗材の不揮発分がこのような範囲内であることにより、既存壁面の凹凸模様に沿って、下塗材を満遍なく一様に塗着することができ、凹凸模様を活かしつつ、仕上り性、密着性等に優れた被膜を形成することが可能となる。なお、不揮発分は、JIS K5601-1-2の方法にて測定される値であり、加熱温度は105℃、加熱時間は60分である。
下塗材の不揮発分中に占める樹脂固形分(エポキシ樹脂とアミン硬化剤との合計固形分)の比率は、好ましくは20~85重量%、より好ましくは30~80重量%、さらに好ましくは40~75重量%である。下塗材の不揮発分中に占める顔料の比率は、好ましくは15~80重量%、より好ましくは20~70重量%、さらに好ましくは25~60重量%である。不揮発分中の樹脂固形分や顔料の比率が上記範囲内であることにより、既存壁面の形状を活かしつつ、密着性に優れた被膜を形成する効果を高めることができる。
下塗材は、円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験においてマンドレル直径5mm以下(より好ましくは4mm以下、さらに好ましくは3mm以下)の耐屈曲性を示すことが好ましい。このような特性によって、広範な既存壁面に対する密着性、追従性等が高まり、例えば、シーリング目地部を含む既存壁面に対しても十分な性能を示すことができる。
円筒形マンドレル法は、JIS K5600-5-1:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第1節:耐屈曲性(円筒形マンドレル法)」に規定される方法で測定される。試験板としては、厚さ0.3mmの磨き鋼板(SPCC-SB)に、乾燥膜厚が35μmとなるように被覆材を刷毛塗りし、標準状態(気温23℃・相対湿度50%)で7日間乾燥したものを使用する。試験は、標準状態において、タイプ1の試験装置を用いて行い、被膜の割れ及び素地からの被膜はがれを目視にて検分する。「マンドレル直径amm以下の耐屈曲性を示す」とは、直径amm以上のマンドレルを用いて試験を行った場合に、被膜の割れ及び素地からの被膜はがれが認められないことを言う。
耐屈曲性は、例えば、使用するエポキシ樹脂の種類やエポキシ当量、アミン硬化剤の種類や活性水素当量、エポキシ樹脂とアミン硬化剤との配合比、顔料体積濃度等により設定することができる。
下塗材は、既存壁面に対し直接塗装することができるが、必要に応じ各種前処理を行っておくこともできる。前処理としては、例えば、劣化の著しい既存被膜の除去、高圧水洗等による汚染物質等の除去、パテ、フィラー等による補修、表面形状の復元等が挙げられる。既存壁面において、新たにシーリング材を打設した場合は、シーリング材の打設後、概ね2~10日後に下塗材を塗付することが望ましい。
下塗材の塗装においては、公知の塗装器具を用いることができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛、コテ等を使用することができる。
下塗材の塗付け量は、既存壁面の表面形状、使用する塗装器具等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは0.03~0.5kg/m、より好ましくは0.05~0.3kg/mである。樹脂成分(B)の固形分が上述の条件を満たす限り、塗装時には非水系溶剤を用いて下塗材を適宜希釈することもできる。
塗装時の下塗材の粘度は、好ましくは0.1~10Pa・s、より好ましくは0.2~5Pa・sである。下塗材の粘度がこのような範囲内であることにより、本発明の効果を安定して得ることができる。なお、ここに言う粘度は、BH型粘度計による20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)を測定することにより求められる値であり、測定温度は23℃である。
下塗材の乾燥時間は、常温(0~40℃)で好ましくは1時間以上、より好ましくは2~200時間程度である。
本発明では、上述の下塗材の塗付・乾燥後に、上塗材を塗付する。本発明における上塗材としては、既存壁面の凹凸模様を活かすことができる材料が好適である。具体的に使用可能な上塗材としては、樹脂成分、及び着色顔料を含むものが挙げられる。
上塗材における樹脂成分としては、各種樹脂が使用できる。樹脂の種類としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合樹脂等が挙げられる。この中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等から選ばれる1種または2種以上が好適である。また、このような樹脂成分の形態としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等が挙げられ、この中でも、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、非水分散形樹脂から選ばれる1種以上が好適である。また、これら樹脂成分は架橋反応性を有するものであってもよい。架橋反応性を有する樹脂成分を使用した場合は、被膜の耐久性、耐水性、耐候性、耐薬品性、密着性等を向上させることができる。
着色顔料としては、例えば公知の無機着色顔料、有機着色顔料等が使用できる。これら着色顔料の1種または2種以上を適宜使用することにより、上塗材を所望の色調に設定することができる。着色顔料の混合比率は、上記樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは1~500重量部、より好ましくは5~200重量部、さらに好ましくは10~150重量部である。
このような上塗材は、本発明の効果が著しく損われない範囲内であれば、上記成分以外の各種成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、体質顔料、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、低汚染化剤、親水化剤、撥水剤、触媒、溶剤、水等が挙げられる。本発明の上塗材は、上記樹脂成分、着色顔料、及び必要に応じ上述の各種成分を常法によって均一に混合することで製造できる。上塗材の形態は、例えば、1液型、2液型、またはそれ以上の多液型とすることができる。また、上塗材の光沢の程度としては、例えば、艶有り、7分艶、5分艶、3分艶、艶消し等が挙げられる。
上塗材の塗装においては、公知の塗装器具を用いることができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等を使用することができる。
上塗材の塗付け量は、既存壁面の表面形状、上塗材の種類や塗装器具の種類等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは0.05~0.5kg/m、より好ましくは0.1~0.4kg/mである。塗装時には、必要に応じ上塗材を適宜希釈することもできる。
本発明において、上塗材は1種または2種以上使用できる。2種以上の上塗材を使用する場合、色調の異なる上塗材を用いて、塗り分け等を行うことにより、2色以上の多色の外観に仕上げることも可能である。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
下塗材用の主剤及び硬化剤として、以下のものを用意した。
(主剤1)
エポキシ樹脂a{ダイマー酸変性エポキシ樹脂溶液、固形分:60重量%、エポキシ当量(固形分当たり):780g/eq、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)及びソルベントナフサ(アニリン点13℃)}75重量部、酸化チタン(比重:4.2)15重量部、タルク(比重2.7)2重量部、ソルベントナフサ(同上)4重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)4重量部を常法にて均一に混合し、主剤1を製造した。
(主剤2)
エポキシ樹脂a(同上)67重量部、酸化チタン(同上)15重量部、重質炭酸カルシウム(比重2.7)5重量部、タルク(同上)5重量部、ソルベントナフサ(同上)4重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)4重量部を常法にて均一に混合し、主剤2を製造した。
(主剤3)
エポキシ樹脂a(同上)61重量部、酸化チタン(同上)15重量部、重質炭酸カルシウム(同上)8重量部、タルク(同上)8重量部、ソルベントナフサ(同上)4重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)4重量部を常法にて均一に混合し、主剤3を製造した。
(主剤4)
エポキシ樹脂a(同上)65重量部、ソルベントナフサ(同上)29重量部、添加剤(増粘剤、及び消泡剤)6重量部を常法にて均一に混合し、主剤4を製造した。
(主剤5)
エポキシ樹脂a(同上)40重量部、ソルベントナフサ(同上)50重量部、添加剤(増粘剤、及び消泡剤)10重量部を常法にて均一に混合し、主剤5を製造した。
(主剤6)
エポキシ樹脂a(同上)38重量部、酸化チタン(同上)15重量部、重質炭酸カルシウム(同上)15重量部、タルク(同上)15重量部、ソルベントナフサ(同上)12重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)5重量部を常法にて均一に混合し、主剤6を製造した。
(硬化剤1)
アミン硬化剤a{脂肪族ポリアミドアミン、固形分100重量%、活性水素当量(固形分)80g/eq}15重量部、シラン化合物{N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン}4重量部、アルコール系溶剤16重量部、ソルベントナフサ(同上)65重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤1を製造した。
(硬化剤2)
アミン硬化剤a(同上)15重量部、アルコール系溶剤16重量部、ソルベントナフサ(同上)69重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤2を製造した。
(硬化剤3)
アミン硬化剤b{脂肪族ポリアミドアミン、固形分100重量%、活性水素当量(固形分)180g/eq}25重量部、シラン化合物(同上)4重量部、アルコール系溶剤11重量部、ソルベントナフサ(同上)60重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤3を製造した。
(硬化剤4)
アミン硬化剤b(同上)38重量部、アルコール系溶剤6重量部、ソルベントナフサ(同上)56重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤4を製造した。
上記主剤と硬化剤を組み合わせて、以下の下塗材を用意した。
(下塗材1)
上記主剤1(100重量部)と上記硬化剤1(25重量部)とを均一に混合して、下塗材1を作製した。この下塗材の各特性値は表1に示す通りであり、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の配合比[(アミン硬化剤の配合量/アミン硬化剤の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)](表1では「配合比」と表記)が0.81、顔料体積濃度が8%、被覆材の不揮発分(表1では「不揮発分」と表記)が54重量%、被覆材の不揮発分中に占める樹脂固形分の比率(表1では「樹脂比率」と表記)が72重量%、被覆材の不揮発分中に占める顔料の比率(表1では「顔料比率」と表記)が25重量%であり、樹脂固形分100重量部に対する増粘剤の混合量(固形分換算、表1では「増粘剤量」と表記)は1.6重量部であり、円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験(表1では「耐屈曲性」と表記)においてマンドレル直径2mm以下の耐屈曲性を示すものである。
(下塗材2)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤1(20重量部)とを均一に混合して、下塗材2を作製した。この下塗材2の各特性値は、表1に示す通りである。
(下塗材3)
上記主剤3(100重量部)と上記硬化剤1(22重量部)とを均一に混合して、下塗材3を作製した。この下塗材3の各特性値は、表1に示す通りである。
(下塗材4)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤1(23重量部)とを均一に混合して、下塗材4を作製した。この下塗材4の各特性値は、表1に示す通りである。
(下塗材5)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤1(30重量部)とを均一に混合して、下塗材5を作製した。この下塗材5の各特性値は、表1に示す通りである。
(下塗材6)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤2(20重量部)とを均一に混合して、下塗材6を作製した。この下塗材6の各特性値は、表1に示す通りである。
(下塗材7)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤3(28重量部)とを均一に混合して、下塗材7を作製した。この下塗材7の各特性値は、表1に示す通りである。
(下塗材8)
上記主剤4(100重量部)と上記硬化剤3(28重量部)とを均一に混合して、下塗材8を作製した。この下塗材8の各特性値は、表1に示す通りである。
(下塗材9)
上記主剤5(100重量部)と上記硬化剤3(17重量部)とを均一に混合して、下塗材9を作製した。この下塗材9の各特性値は、表1に示す通りである。
(下塗材10)
上記主剤6(100重量部)と上記硬化剤4(12重量部)とを均一に混合して、被覆材10を作製した。この下塗材10の各特性値は、表1に示す通りである。
以上の方法で得られた各下塗材を用いて、次の試験を行った。
○試験1
試験基材として、屋外曝露により劣化した窯業系サイディングボート(表面にタイル目地調の凸部と凹部(目地)、凸部にはさらに不定形の凹凸模様を有し、最表層被膜として無機質クリヤー被膜を有するもの)を用意した。この試験基材を鉛直方向に設置し、その全面に対し、上記下塗材を塗付け量0.1kg/mにてスプレー塗装し、3時間乾燥後、上塗材(淡褐色アクリルシリコン樹脂塗料)を塗付け量0.2kg/mにてスプレー塗装し、7日間乾燥養生することにより、試験体を作製した。なお、塗装ないし養生の工程は、すべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った。
上記方法で作製した試験体について、水中に7日間浸漬した後、凹凸模様の各部位の被膜にカッターナイフでクロスカットを入れ、このクロスカット部分にテープを貼り付けて剥ぐことにより密着性を評価した。評価は、どの部位でも剥れが認められなかったものを「A」、剥れが多く認められたものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)で行った。
○試験2
試験基材として、屋外曝露により劣化した窯業系サイディングボート(表面にタイル目地調の凸部と凹部(目地)、凸部にはさらに不定形の凹凸模様を有し、最表層被膜としてフッ素樹脂クリヤー被膜を有するもの)を用意した。この試験基材を用いて、試験1と同様の方法で試験体を作製し、密着性を評価した。
○試験3
試験基材として、屋外曝露により劣化した窯業系サイディングボート(表面にタイル目地調の凸部と凹部(目地)、凸部にはさらに不定形の凹凸模様を有し、最表層被膜としてアクリル樹脂被膜を有するもの)を用意した。この試験基材を用いて、試験1と同様の方法で試験体を作製し、密着性を評価した。
○試験4
上記試験3と同様の窯業系サイディングボードを2枚用意して併設し、ボード間の連結部(幅10mm)にポリウレタン系シーリング材を充填したものを試験基材とした。この試験基材の全面に対し、上記下塗材を塗付け量0.1kg/mにて刷毛塗り、3時間乾燥後、上塗材(淡褐色アクリルシリコン樹脂塗料)を塗付け量0.2kg/mにてスプレー塗装し、7日間乾燥養生することにより、試験体を作製した。なお、塗装ないし養生の工程は、すべて標準状態下で行った。
上記方法で作製した試験体の連結部上の被膜にカッターナイフでクロスカットを入れ、このクロスカット部分にテープを貼り付けて剥ぐことにより密着性を評価した。評価は、剥れが認められなかったものを「A」、剥れが多く認められたものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)で行った。
○試験5
上記試験4と同様の方法で作製した試験体について、その仕上り外観を目視にて確認した。評価は、既存壁面の凹凸模様が活かされているものを「A」、そうでないものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)で行った。
○試験6
上記試験4と同様の方法で作製した試験体について、水浸漬18時間・-20℃3時間放置・50℃3時間放置を1サイクルとする温冷繰返し試験を合計10サイクル行った後、被膜外観を確認し、不具合(膨れ、剥れ、割れ等)の発生の状態を評価した。評価は、不具合発生が認められなかったものを「A」、明らかに不具合発生が認められたものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)で行った。
試験結果を表2に示す。実施例1~7、とりわけ実施例1~4では、比較例1~3に比べ総じて良好な結果が得られた。
Figure 0007428572000001
Figure 0007428572000002

Claims (7)

  1. 経年劣化した既存壁面に対し、下塗材及び上塗材を順に塗付する化粧方法であって、
    上記既存壁面は、表面に凹凸模様を有し、既存被膜を備えたものであり、
    上記下塗材は、非水系溶剤(A)、樹脂成分(B)、顔料(C)、及び増粘剤(D)を含み、
    上記非水系溶剤(A)は、アニリン点12~70℃の非水系溶剤を含み、
    上記樹脂成分(B)は、エポキシ樹脂、及びアミン硬化剤を含み、
    上記エポキシ樹脂は、ダイマー酸変性エポキシ樹脂を含み、上記エポキシ樹脂中に占める上記ダイマー酸変性エポキシ樹脂の比率は、50重量%以上であり、
    上記下塗材は、顔料体積濃度が1~30%であり、不揮発分が30~90重量%であることを特徴とする化粧方法。
  2. 上記下塗材はシラン化合物を含むものであることを特徴とする請求項1記載の化粧方法。
  3. 上記エポキシ樹脂と上記アミン硬化剤との配合比が、[(アミン硬化剤の配合量/アミン硬化剤の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)]で、1.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧方法。
  4. 上記既存壁面は、表面に凹凸模様を有し、既存被膜を備えた複数の板状壁材によって構成されたものである請求項1~3のいずれかに記載の化粧方法。
  5. 上記アミン硬化剤は、脂肪族アミン硬化剤を含むことを特徴とする請求項1記載の化粧方法。
  6. 上記アミン硬化剤の活性水素当量が、40~200g/eqであることを特徴とする請求項1記載の化粧方法。
  7. 上記下塗材の顔料体積濃度が1~20%であることを特徴とする請求項1記載の化粧方法。
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