JP2024031888A - 硬化剤、及び水性被覆材 - Google Patents

硬化剤、及び水性被覆材 Download PDF

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岳志 五味
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朋幸 村辻
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Abstract

【課題】乾燥性に優れ、種々の基材及び塗膜に対して、優れた密着性を示す水性エポキシ樹脂用の硬化剤を提供する。【解決手段】水性エポキシ樹脂用の硬化剤であって、アミノ基含有樹脂(A)、加水分解性基を有するシラン化合物(B)、および、加水分解反応促進剤(C)を混合してなり、硬化剤全量中にアルコール成分(D)を5~80質量%含むことを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、新規な硬化剤、及び水性被覆材に関するものである。
建築物の内外装壁面・床面等への塗装においては、基材との密着性を考慮し、種々の下塗材が選定して用いられている。このような下塗材は、従来、溶剤系のものが主であったが、最近では、環境、安全等を考慮し、水系の下塗材が採用されつつある。例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂エマルションを含む主剤とアミン樹脂を含む硬化剤からなる下塗り塗料用二液反応硬化型水性塗料組成物が記載されている。
ところが、水系の下塗材は、溶剤系の下塗材と比べ、乾燥性、密着性に劣る場合がある。特に、近年、外装壁面に用いられる外装用建材においては、高耐候性や耐汚染性等の機能性を有する種々の塗膜が設けられている。このような塗膜の改修においては、水系の下塗材では十分な密着性が得られにくい場合がある。さらに、エポキシ樹脂系下塗材においては、乾燥性やアミンブラッシング等による密着性の低下や、塗膜の耐水性が不十分となる場合があり、このような問題は溶剤系と比べて水系において顕著な傾向にある。
特開2018-53028号公報
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、乾燥性に優れ、種々の基材、及び塗膜に対して、十分な密着性を確保し、かつ塗膜の耐水性を高めることができる水性被覆材に好適な硬化剤、及び水性被覆材を得ることを目的とする。
本発明者らは、このような問題に対し鋭意検討した結果、水性エポキシ樹脂用の硬化剤であって、アミノ基含有樹脂(A)、加水分解性基を有するシラン化合物(B)、および、加水分解反応促進剤(C)を混合してなり、さらにアルコール成分(D)を特定比率で含む硬化剤を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記の特徴を有するものである。
1.水性エポキシ樹脂用の硬化剤であって、
アミノ基含有樹脂(A)、加水分解性基を有するシラン化合物(B)、および、加水分解反応促進剤(C)を混合してなり、
硬化剤全量中にアルコール成分(D)を5~80質量%含むことを特徴とする硬化剤。
2.上記アミノ基含有樹脂(A)と上記加水分解性基を有するシラン化合物(B)を質量比(A):(B)=5:95~50:50で含むことを特徴とする1.に記載の硬化剤。
3.上記加水分解性基を有するシラン化合物(B)は、アミノ基含有シランカップリング剤を含むことを特徴とする1.に記載の硬化剤。
4.1.~3.のいずれかに記載の硬化剤と、水性エポキシ樹脂を含む主剤とからなる2液型の水性被覆材。
本発明の硬化剤は、水性エポキシ樹脂を含む樹脂組成物(主剤)に混合することにより、乾燥性に優れ、種々の基材、及び塗膜に対して、十分な密着性を確保し、かつ塗膜の耐水性を高めることができる。
(硬化剤)
本発明の硬化剤は、水性エポキシ樹脂を含む樹脂組成物(以下、単に「主剤」ともいう)に混合するものであり、アミノ基含有樹脂(A)、加水分解性基を有するシラン化合物(B)、および、加水分解反応促進剤(C)を混合してなり、硬化剤全量中にアルコール成分(D)を5~80質量%含むことを特徴とするものである。
本発明のアミノ基含有樹脂(A)(以下、単に「(A)成分」ともいう)は、水性エポキシ樹脂と反応し被膜を形成するものである。このような(A)成分としては、例えば、1分子中にアミノ基を2個以上含有するポリアミン樹脂が使用でき、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環状アミン及びこれらポリアミン樹脂のアミノ基を変性してなる変性ポリアミン樹脂等が挙げられる。なお、上記ポリアミン樹脂の変性には、公知の方法が利用でき、例えば、アミノ基のアミド化、アミノ基とカルボニル化合物のマンニッヒ反応、アミノ基とエポキシ基の付加反応、アミノ基とスチレンとの付加反応等が挙げられる。また、(B)成分としては、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドアミン、脂環式ポリアミドアミン、芳香族ポリアミドアミン等も使用できる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明では、(A)成分として、例えば、脂肪族ポリアミン、変性脂肪族ポリアミンから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これにより、水性エポキシ樹脂を含む主剤と混合した場合、基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン;N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スピロアセタールジアミン)、ノルボルナンジアミン、トリシクロデカンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の環状脂肪族ポリアミン;メタキシレンジアミン等の脂肪芳香族アミン等が挙げられる。本発明では、特にメタキシレンジアミン、メタキシレンジアミンのスチレン付加反応生成物から選ばれる1種以上を含むことが好適である。
(A)成分の態様としては、特に限定されないが、水溶性樹脂、水分散型樹脂、または非水溶性樹脂から選ばれる1種以上を使用することができる。本発明では、非水溶性樹脂を含むことが好ましい。この場合、基材、塗膜への付着発現性、密着性がよりいっそう向上するとともに、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。なお、本発明における非水溶性樹脂とは、水に溶解しないか、又は水への溶解性が極めて低い樹脂のことであり、例えば、23℃の水100gに対する溶解度が好ましくは1g/100gHO未満(より好ましくは0.8g/100gHO以下、さらに好ましくは0.5g/100gHO以下)の樹脂のことをいう。
また、上記(A)成分は、(A)成分の活性水素当量yが、好ましくは10~1000(より好ましくは50~800、さらに好ましくは80~600)である。なお、ここでいう「活性水素当量y」は、1グラム当量の活性水素基を含む樹脂固形分のグラム数[g/eq]であり、アミノ基含有樹脂の質量平均分子量を1分子当たりのアミノ基の水素原子数で除した値である。また、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
本発明の加水分解性基を有するシラン化合物(B)(以下、単に「(B)成分」ともいう)とは、ケイ素原子に直接結合した少なくとも1つの加水分解性基(Si-X、Xは加水分解性基)を有するシラン化合物である。加水分解性基(X)としては、例えば、アルコキシ基、アセトキシ基、ハロゲン基、イソシアネート基等が挙げられる。本発明では、アルコキシ基が好ましく、さらにはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基が好ましい。このような(B)成分としては、アルコキシシリル基(Si-OR、Rは炭化水素基)を有するシラン化合物が挙げられ、例えば、アルコキシシラン化合物、シランカップリング剤及びその加水分解性オリゴマー等が挙げられる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
上記アルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec-ブトキシシラン、テトラt-ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、等の4官能アルコキシシラン化合物;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等の3官能アルキルアルコキシシラン化合物;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の2官能アルキルアルコキシシラン化合物;
等が挙げられる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
上記シランカップリング剤としては、上記加水分解性基の1種又は2種以上と反応性官能基の1種又は2種以上を、それぞれ1分子中に1個又は2個以上含むものである。反応性官能基としては、例えば、ビニル基、グリシジル基(エポキシ基)、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基、及びイソシアヌレート基等が挙げられる。本発明では、アミノ基含有シランカップリング剤(アミノ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、グリシジル基含有シランカップリング剤(グリシジル基と加水分解性基を有するシラン化合物)等が好適である。
アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、γ-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロビルアミン等が挙げられる。上記アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解オリゴマーとしては、アルコキシシリル基とアミノ基を有するものが使用でき、アルコキシシリル基の一部ないし全部がシラノール基の状態となったものも使用することができる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
グリシジル基含有シランカップリング剤としては、例えば、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル(エチル)ジメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。上記グリシジル基含有シランカップリング剤の加水分解オリゴマーとしては、アルコキシシリル基とグリシジル基を有するものが使用でき、アルコキシシリル基の一部ないし全部がシラノール基の状態となったものも使用することができる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
特に、本発明では(B)成分として、アミノ基含有シランカップリング剤が好適であり、例えば、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシランから選ばれる1種以上が好適である。これらを用いた場合、基材、塗膜への付着発現性等が向上する。
本発明の硬化剤は、上記(A)成分と上記(B)成分を、固形分質量比で、(A)成分:(B)成分=5:95~50:50(より好ましくは10:90~45:55、さらに好ましくは15:85~40:60)で含むことが好ましい。このような範囲を満たす場合、貯蔵安定性に優れるとともに、主剤と混合した場合、基材、塗膜への付着発現性、密着性を十分に発揮することができる。
本発明の加水分解反応促進剤(C)(以下、単に「(C)成分」ともいう)は、上記加水分解性基を有するシラン化合物(B)の部分加水分解反応を促進するものであり、例えば、有機酸、無機酸、金属キレート化合物、水等を使用することができる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
この(C)成分の作用機構は限定されるものではないが、硬化剤中で予め上記(B)成分を部分加水分解することにより、主剤と硬化剤を混合した場合の反応性が高まるため、乾燥性に優れ、基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上するとともに、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができると考えられる。
有機酸としては、例えば、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p-アミノ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、フタル酸、スルホン酸、酒石酸、トリフルオロメタンスルフォン酸等が挙げられる。
無機酸の具体例としては、例えば、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等が挙げられる。
金属キレート化合物としては、例えば、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
上記(C)成分の混合量は、上記(B)成分(固形分)100質量部に対して、好ましくは0.01~15質量部(好ましくは0.02~10質量部)である。このような範囲の場合、上記効果を高めることができる。
本発明では(C)成分として、有機酸及び/または水を含むことが好ましく、さらには有機酸及び水を併用し含むことが好適である。この場合、基材、塗膜への付着発現性等が向上する。
有機酸の混合量は、上記(B)成分(固形分)100質量部に対して、好ましくは0.05~15質量部(より好ましくは0.1~10質量部)である。一方、水の混合量は、上記(B)成分(固形分)100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部(より好ましくは0.05~3質量部)である。このような場合、上記効果を十分に発揮することができる。
本発明の硬化剤は、アルコール成分(D)(以下、単に「(D)成分」ともいう)を含み、その含有量が硬化剤全量中に5~80質量%(好ましくは10~75質量%、より好ましくは15~70質量%)であることを特徴とする。これにより、主剤と硬化剤の混合時における相溶性が高まるとともに、水性被覆材の乾燥性が高まり、基材、塗膜への付着発現性、密着性をよりいっそう高めることができる。
本発明の(D)成分としては、例えば、低級アルコール、多価アルコール等が挙げられる。具体的に、低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらは1種または2種以上で用いることができる。
本発明では、(D)成分として、低級アルコールと多価アルコールを併用して含む態様が好適である。これにより、上記(B)成分の加水分解速度が適度に制御され硬化剤の安定性が高まり、本発明の効果を十分に発揮することができる。
本発明における(D)成分は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分に加えて混合されるアルコール成分(d1)(以下「(d1)成分」ともいう)と、上記(B)成分の加水分解反応により生成するアルコール成分(d2)(以下「(d2)成分」ともいう)を含むものであり、硬化剤全量中の(D)成分の含有量は、(d1)成分と(d2)成分の合計量を示すものである。
なお、(d2)成分の量は、硬化剤製造から24時間後(23℃)に、熱分解ガスクロマトグラフイーを用いて測定した未反応の(B)成分の定量値に基づき、(B)成分の加水分解反応により生成したアルコール成分の量(理論値)を算出して得られるものである。
<水性被覆材>
上記硬化剤は、水性エポキシ樹脂を含む樹脂組成物(主剤)の硬化剤として使用するものである。本発明では、上記硬化剤と、主剤とからなる2液型の水性被覆材として使用することが好ましい。
(主剤)
本発明の主剤は、水性エポキシ樹脂を含むことを特徴とするものである。本発明において、水性エポキシ樹脂とは、エポキシ基を含有する水性の樹脂成分であり、例えば、エポキシ樹脂を水性媒体に溶解又は分散させたものが使用できる。本発明では、エポキシ樹脂を水性媒体に分散させたエポキシ樹脂エマルション(E)(以下、単に「(E)成分」ともいう。)が好適である。なお、エポキシ樹脂を水性媒体に分散させる場合には、必要に応じて乳化剤等を用いることができる。なお、水性媒体とは、主に水を含む媒体であり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤が混合されていてもよい。
上記(E)成分のエポキシ樹脂としては、水性媒体に分散しうるものであればよく、固形型エポキシ樹脂及び/または液状型エポキシ樹脂のいずれであってもよい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、分子中にエポキシ基を1個以上、好ましくは2個以上含有する樹脂が使用でき、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。本発明では、芳香族エポキシ樹脂が好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、この中でも、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上が好適である。さらに、上記エポキシ樹脂は、必要に応じて分子量を増大させたものや、脂肪酸を反応させることにより得られる脂肪酸変性エポキシ樹脂、あるいはアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂(アミン変性エポキシ樹脂)を水性化することより得られるもの等であっても良い。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、固形型エポキシ樹脂とは、常温(23℃)で固形のもの、液状型エポキシ樹脂とは、常温(23℃)で液状のものをいう。
本発明では、上記(E)成分として、固形型エポキシ樹脂(e1)を必須成分として含む態様が好ましい。このような態様としては、固形型エポキシ樹脂(e1)のみの態様、固形型エポキシ樹脂(e1)及び液状型エポキシ樹脂(e2)を含む態様が挙げられる。これにより、本発明の効果を十分に得ることができる。特に、固形型エポキシ樹脂(e1)及び液状型エポキシ樹脂(e2)を併用した場合は、種々の基材、及び塗膜に対する密着性をよりいっそう高めることができる。さらに、主剤に顔料を含む場合は、顔料の分散性、安定性を高めることができる。固形型エポキシ樹脂(e1)と液状型エポキシ樹脂(e2)の混合比(固形分質量比)は、各エポキシ樹脂のエポキシ当量にもよるが、好ましくは100:0~10:90(より好ましくは99.5:0.5~40:60、さらに好ましくは99:1~60:40)である。
(E)成分の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、固形型エポキシ樹脂及び/または液状型エポキシ樹脂と、必要に応じて乳化剤を混合し樹脂溶液を調製した後、水性媒体(必要に応じて乳化剤を含む)と混合することにより乳化する方法等が挙げられる。なお、上記の調製時には、必要に応じて加熱することもできる。本発明において、固形型エポキシ樹脂と液状型エポキシ樹脂を併用する場合、固形型エポキシ樹脂と液状型エポキシ樹脂のそれぞれの水分散体を調整した後、混合して使用することが好ましい。エポキシ樹脂水分散体の樹脂固形分は、特に限定されないが、好ましくは10~80質量%(より好ましくは20~70質量%)である。
上記乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ステアリルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸アルカリ金属塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
乳化剤の配合量としては、樹脂固形分に対して好ましくは0.1~15質量%(より好ましくは0.1~10質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%)の範囲内である。
本発明の(E)成分の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは100~1000nm(より好ましくは150~900nm、さらに好ましくは200~800nm、特に好ましくは300~750nm)である。平均粒子径がこのような範囲内であれば、シール性、耐白華性、耐白化、耐水性等において有利な効果を得ることができる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
また、本発明の(E)成分は、エポキシ当量xが、好ましくは100~3000(より好ましくは110~2000、さらに好ましくは120~1500)である。なお、ここでいう「エポキシ当量x」は、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂固形分のグラム数[g/eq]であり、エポキシ樹脂の質量平均分子量を1分子当たりのエポキシ基の数で除した値である。
なお、上記(E)成分として、エポキシ当量xや平均粒子径等が異なるものを混合して使用することもできる。
本発明の主剤には、さらにアクリル樹脂エマルション(以下、単に「(F)成分」ともいう)を含むことが好ましい。これにより、種々の基材及び塗膜に対して優れた密着性を発揮し、特に、既存塗膜及び上塗塗膜との密着性も高めることができる。さらには、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができるとともに、アミンブラッシング等が抑制された美観性に優れた塗膜を形成することができる。
上記(F)成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが樹脂骨格の主成分となるものであり、必要に応じその他のモノマーその他の重合性モノマーを共重合したものである。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。また、モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物の総称である。
本発明では、(F)成分を構成するモノマー群中に疎水性モノマーを含むことが好ましい。疎水性モノマーとしては、例えば、長鎖アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが使用でき、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で用いることができる。
芳香族基含有モノマーとしては、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン、等のスチレン系モノマー、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明では、特に、上記疎水性モノマーとして、炭素数6以上(好ましくは8以上)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含む態様が好ましい。
モノマー群中における上記疎水性モノマーの含有量は、質量比率で、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは99.5質量%以下である。このような場合、後述の有機溶剤(C)との相溶性が高まり、本発明の効果を高めることができる。
その他のモノマーの具体例としては、例えば、アミド基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、ハロゲン化ビニリデン系モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルエーテル、ビニルケトン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
本発明では、エポキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。エポキシ基含有モノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジルフマレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、ε-カプロラクトン変性グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
本発明では、(F)成分を構成するモノマー中に、エポキシ基含有モノマーを、好ましくは0.5~50質量%(より好ましくは1~30質量%)である。これにより、アミンブラッシングによる密着性の低下を抑制し、耐水性等において十分な塗膜物性を発揮することができる。
その他のモノマーの具体例として、
ニトリル基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン、α-シアノエチル(メタ)アクリレート等、
アミド基含有モノマーとしては、例えばマレイン酸アミド、(メタ)アクリルアミド、N-モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N、N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタクリレート)、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド等、
カルボニル基含有モノマーとしては、例えばアクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等、
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸等、
アミノ基含有モノマーとしては、例えばアミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ-n-ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p-アミノスチレン、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等、
水酸基含有モノマーとしては、例えばヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等、
ハロゲン化ビニリデン系モノマーとしては、例えばフッ化ビニリデン等、
アルコキシシリル基含有モノマーとしては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
上記(F)成分は、上記モノマーを適宜混合したモノマー群を乳化重合することにより製造することができる。重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合、多段階乳化重合等を採用することもできる。重合時には、例えば、乳化剤、開始剤、分散剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤、pH調整剤等を使用することができる。
乳化剤としては、乳化重合に使用可能な各種界面活性剤が使用でき、これらは重合性不飽和二重結合を有する反応性タイプ(反応性界面活性剤)であってもよい。乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば上記(E)成分に記載したものの中から適宜選択できる。
上記(F)成分のガラス転移温度(以下、単に「Tg」という。)は、上記モノマーの種類、混合比率等を選定することで調整できる。このTgは、最終的な要求性能等を考慮して適宜設定すればよいが、好ましくは-8℃超80℃以下(より好ましくは-7℃以上60℃以下)のTgを有することが好ましい。また、(F)成分としてTgの異なる2種以上を使用することもできる。この場合、トータルTgが上記範囲を満たすことが好ましい。なお、ガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。
上記(F)成分の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは300nm以下(より好ましくは20~250nm、さらに好ましくは30~200nm)である。平均粒子径がこのような範囲内であれば、含浸補強性、シール性、耐白華性、耐白化性等において有利な効果を得ることができる。また、(F)成分は平均粒子径の異なる2種以上を使用することもできる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
本発明では、上記(E)成分と、上記(F)成分の平均粒子径の比が(E)/(F)>1(より好ましくは>1.2)であることが好ましい。これにより、形成塗膜の表面付近においてよりいっそう(F)成分の濃度が高くなる傾向となり、その結果、塗装条件による影響を抑制し、よりいっそう優れた塗膜物性を発揮することができる。なお、上記(E)成分と上記(F)成分が平均粒子径の異なる2種以上を含む場合には、(E)成分における平均粒子径の平均値と(F)成分における平均粒子径の平均値が上記条件を満たすことが好ましい。
さらに、上記(F)成分の形成被膜のゲル分率が10%以上(好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上)であることが好ましい。その上限値は、特に限定されないが、実用的に好ましくは95%以下(より好ましくは90%以下)である。上記(F)成分より形成される被膜がこのような範囲を満たす場合、種々の基材及び塗膜に対して優れた密着性を発揮し、特に、既存塗膜及び上塗塗膜との密着性も高めることができる。
なお、本発明において、ゲル分率は、ポリエステルフィルム上に(F)成分を塗付厚みが0.5mmとなるように塗付し、50℃で3日間乾燥して被膜を形成させたものを試験片とし、アセトンに24時間浸漬した後、次式にて算出されるものである。
ゲル分率(%)=(浸漬後の被膜質量/浸漬前の被膜質量)×100
ゲル分率を調整する方法は、特に限定されないが、例えば、連鎖移動剤の配合や、多官能モノマーや自己架橋性官能基を有するモノマー(加水分解性シリル基含有単量体やメチロール基含有単量体等)を共重合する方法や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、カルボニル基、アセトアセチル基等の官能基を有するモノマーを共重合し、その重合中及び/又は重合後に該官能基と反応しうる架橋剤を添加する方法等が挙げられる。
本発明では、上記(E)成分と上記(F)成分の混合質量比(固形分)が(E)/(F)<1(好ましくは<0.9、より好ましくは<0.8)であることが好ましい。なお、その下限は、(E)成分が含まれていれば特に限定されないが、好ましくは0.1<(E)/(F)(より好ましくは0.2<)である。このような混合比率で(F)成分を含むことにより、形成塗膜の表面付近では(F)成分のよりいっそう濃度が高くなる傾向となりやすく、その結果、塗装条件による影響を抑制し、種々の基材及び塗膜に対して優れた密着性を発揮し、特に、既存塗膜及び上塗塗膜との密着性も高めることができる。さらには、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。
本発明の主剤には、本発明の効果を阻害しない限り、上記(E)成分、上記(F)成分以外の水溶性樹脂及び/または樹脂エマルションを混合することもできる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂(ただし、上記(F)成分を除く)、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。
さらに、主剤には、沸点が200℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100gHO以下の有機溶剤(G)(以下、単に「(G)成分」ともいう)を含むことが好ましい。上記(F)成分に加えて、さらに(G)成分を併用して含むことにより、上記(E)成分と上記(F)成分と上記硬化剤中のアミノ基含有樹脂(A)の相溶性、反応性等が高まり、優れた成膜性を得ることができる。その結果、緻密な塗膜を形成することができ、塗装条件による影響を効率的に抑制することができ、アミンブラッシング等がよりいっそう生じ難くなる。
(G)成分としては、沸点が200℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100gHO以下の有機溶剤であれば、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等のエチレングリコールエーテル化合物;ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル化合物;プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル化合物;2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。なお、(G)成分は、沸点が200℃以上であり、その上限は好ましくは350℃以下(より好ましくは300℃以下)である。また、(G)成分の20℃における水への溶解度は10g/100gHO以下であるが、好ましくは8g/100gHO以下であり、その下限は好ましくは0g/100gHO以上(より好ましくは0.01g/100gHO以上、さらに好ましくは0.03g/100gHO以上、特に好ましくは0.04g/100gHO以上)である。
本発明では特に、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル化合物、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
(G)成分の混合量は、上記(E)成分(固形分)100質量部に対して、好ましくは1~80質量部(より好ましくは2~60質量部)である。このような範囲の場合、上記効果を十分に発揮することができる。
本発明の主剤には、さらに、加水分解性基を有するシラン化合物(B’)(以下、単に「(B’)成分ともいう」を含むこともできる。(B’)成分としては、具体的には、例えば上記(B)成分に記載したものの中から適宜選択できる。中でも、アルコキシシラン化合物、グリシジル基含有シランカップリング剤が好適である。
本発明では、特に、アルコキシシラン化合物を含むことが好ましく、さらには3官能アルキルアルコキシシラン化合物、及び/または2官能アルキルアルコキシシラン化合物を含むことが好ましい。さらには、フェニル基を含有するフェニル基含有アルコキシシラン化合物を含むことが好ましい。具体的には、例えば、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン等が挙げられる。これらを用いた場合、形成被膜の硬化性が高まり、よりいっそう基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。特に、既存塗膜を有する基材への付着発現性、密着性向上において優れた効果を発揮することができる。
本発明の主剤において、上記成分に加えて上記(B’)成分を含む場合の混合比は、上記(E)成分の固形分100質量部に対し、上記(B’)成分を好ましくは0.3~20質量部(より好ましくは0.5~18質量部、さらに好ましくは2~15質量部)である。このような場合、上記効果を十分に発揮することができる。
本発明の水性被覆材は、上記主剤と上記硬化剤を、主剤中の(E)成分のエポキシ当量([X]:固形分換算値)と、硬化剤中の(A)成分の活性水素当量([Y];固形分換算値)の比[X/Y]が、好ましくは0.1~3(より好ましくは0.5~2、さらに好ましくは0.7~1.5)となるように混合することが好ましい。このような場合、水性被覆材の基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。さらには、水性被覆材の安定性、可使時間を高めることができる。
なお、上記X、上記Yは混合時の配合部数から求められるものであり、具体的に、上記[X]は、主剤に含まれる(E)成分の配合量(固形分質量部)を、(E)成分のエポキシ当量xで除した値である。また、上記[Y]は、硬化剤に含まれる(A)成分の配合量(固形分質量部)を、(A)成分の活性水素当量yで除した値である。
本発明の水性被覆材には、上述の成分の他、主剤及び/または硬化剤に必要に応じ着色顔料、体質顔料、防錆顔料、pH調整剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、増粘剤(チクソトロピック調整剤)、造膜助剤、艶消し剤、架橋剤、触媒、硬化促進剤、密着性付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を、本発明の効果が阻害されない範囲内で混合することができる。本発明の水性被覆材のpHは、好ましくは3~12(より好ましくは4~11)である。なお、本発明では主剤のpHが上記を満たすことが好ましい。
本発明の水性被覆材では、主剤に触媒(P)(以下、単に「(P)成分」ともいう)を混合することが好ましい。(P)成分は、例えば、水性被覆材中のグリシジル基(エポキシ基)とアミノ基との反応、あるいはアルコキシシリル基の加水分解・縮合等を促進させるものであり、基材への密着性、特に既存塗膜を有する基材への密着性をよりいっそう高めることができる。
上記(P)成分としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート等の有機錫化合物が好適に用いられる。
上記(P)成分の混合量は、(E)成分(固形分)100質量部に対して、(P)成分の有効成分量が好ましくは0.01~10質量部(より好ましくは0.02~8質量部)である。このような範囲の場合、本発明の効果を高めることができる。
本発明の水性被覆材は、例えば、クリヤー型水性被覆材として使用できる。従来、エポキシ樹脂系下塗材においては、上述のアミンブラッシングにより、クリヤー(透明)型とした場合には塗膜の白化、白華等の変色が問題となる場合がある。これに対して、本発明の水性被覆材では、クリヤー塗膜における白化、白華等の問題も十分に抑制することができる。
また、本発明の水性被覆材は、例えば、着色顔料を配合して着色型水性被覆材として使用することもできる。このような着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(べんがら)、モリブデートオレンジ、黄色酸化鉄、群青、コバルトグリーン、鉄クロム複合酸化物、マンガンビスマス複合酸化物、マンガンイットリウム複合酸化物、マンガン鉄コバルト複合酸化物等の無機系着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンツイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機系着色顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、メタリック顔料等の光輝性顔料等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。なお、着色顔料の平均粒子径は、好ましくは5μm以下(より好ましくは2μm以下)である。なお、本発明において、着色顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される平均値である。
さらに、本発明の水性被覆材には、必要に応じて、体質顔料等を配合することにより艶を調整することができる。このような体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、焼成クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。なお、体質顔料の平均粒子径は、好ましくは50μm未満(好ましくは0.5μm以上30μm以下)である。なお、本発明において、体質顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される平均値である。
本発明の水性被覆材は、固形分が好ましくは5~60質量%(より好ましくは6~50質量%、さらに好ましくは7~45質量%)である。なお、固形分は、上記水性媒体の混合により調整することができる。このような範囲の場合、塗装作業性に優れるとともに、種々の基材、及び塗膜に対して、密着性をよりいっそう向上させることができる。
さらに、本発明の水性被覆材により形成される形成被膜のゲル分率は、25%以上(より好ましくは30%以上、さらに好ましくは35%以上)であることが好ましい。その上限値は、特に限定されないが、実用的に好ましくは95%以下(より好ましくは90%以下)である。形成被膜がこのような範囲を満たす場合、本発明の効果を十分に発揮することができるとともに、耐水性、耐溶剤性等の塗膜物性をよりいっそう高めることができる。これにより、既存塗膜、及び種々の上塗材(水性、弱溶剤系)との密着性も十分に確保することができる。特に、弱溶剤系上塗材を使用した場合であっても、十分な密着性を発揮し、耐リフティング性を高めることができる。
なお、本発明において、ゲル分率は、ポリエステルフィルム上に水性被覆材を塗付厚みが0.5mmとなるように塗付し、23℃で24時間乾燥して被膜を形成させたものを試験片とし、アセトンに24時間浸漬した後、次式にて算出されるものである。
ゲル分率(%)=(浸漬後の被膜質量/浸漬前の被膜質量)×100
<被膜形成方法>
本発明の水性被覆材は、内外装壁面・床面等への塗装における下塗材として好適に用いられる。例えば、モルタル、コンクリート、窯業系サイディングボード、セラミック系サイディングボード、金属系サイディングボード、押出成形板、スレート板、ケイ酸カルシウム板、ALC板、金属、木材、ガラス、陶磁器、合成樹脂等の基材、あるいはこのような基材上(基材の表面)に形成された多種多様な既存塗膜等の下地に適用する下塗材として好適に用いられる。また、このような下地(基材や既存塗膜)の形状としては、平滑(フラット)なもの、各種凹凸模様(例えば石材調、レンガ・タイル調、木目調、ボーダー調、塗り壁調、吹付け調等)を有するもの等が挙げられる。さらには、シーリング目地部を含む下地に対して、適用することもできる。
特に、本発明の水性被覆材は、下地の改修用下塗材として好適であり、例えば、既存塗膜が設けられたサイディングボード等の下地改修時の下塗材として好適に適用することができる。
既存塗膜は、上記基材上に、現場塗装、あるいは工場塗装(ライン塗装)等により既に塗装されている種々の塗膜であり、例えば、有機質塗膜、無機質塗膜、有機無機複合塗膜等から選ばれる少なくとも1種の塗膜が挙げられる。また、既存塗膜としては、着色塗膜(エナメル系塗膜、印刷塗膜等)、クリヤー塗膜、あるいはこれらの積層塗膜等が挙げられ、各種コーティング材を基材に塗布・硬化させ、形成された塗膜である。このようなコーティング材は、常温乾燥型、常温硬化型、焼付け硬化型、紫外線(UV)硬化型、電子線硬化型等のいずれのものであってもよい。
このようなコーティング材の結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等の有機質結合材、あるいはシリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材等が挙げられる。
本発明は、特に、既存塗膜が、無機質塗膜(上記無機質結合材を含む塗膜)、有機無機複合塗膜(上記有機無機複合結合材を含む塗膜)、フッ素樹脂塗膜(上記フッ素樹脂を含む塗膜)等から選ばれる1種以上である場合に好適であり、さらには、これらのクリヤー塗膜に好適に適用できる。このような既存塗膜は、光触媒酸化チタン等を含むものであってもよい。
具体的なコーティング材としては、例えば、建築用耐候性上塗り塗料(JIS K5658:2010)、鋼構造物用耐候性塗料(JIS K5659:2008)、つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K5660:2008)、建築用防火塗料(JIS K5661:1970)、合成樹脂エマルションペイント(JIS K5663:2008)、路面標示用塗料(JIS K5665:2011)、多彩模様塗料(JIS K5667:2003)、合成樹脂エマルション模様塗料(JIS K5668:2010)、アクリル樹脂系非水分散形塗料(JIS K5670:2008)、鉛・クロムフリーさび止めペイント(JIS K5674:2008)、屋根用高日射反射率塗料(JIS K5675:2011)、建物用床塗料(JIS K5970:2008)、建築用塗膜防水材(JIS A6021:2011)、建築用仕上塗材(JIS A6909:2014)、等が挙げられる。
本発明の水性被覆材を下塗材とする被膜形成方法としては、例えば、基材に対し、下塗材を塗付した後、上塗材を塗付する被膜形成方法であって、該下塗材として、本発明の水性被覆材を使用する方法が挙げられる。これにより、種々の基材、及び上塗材との密着性に優れた被膜を形成することができる。
本発明の水性被覆材の塗装においては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を採用することができる。また、工場内で塗装する場合は、上記以外にもロールコーター、フローコーター等を用いて塗装することもできる。
水性被覆材の塗付け量については、好ましくは0.05~0.5kg/m(より好ましくは0.07~0.3kg/m)程度である。水性被覆材の塗回数は、下地の状態によって適宜設定すればよいが、好ましくは1~2回である。水性被覆材の乾燥時間は、好ましくは1時間以上1週間以内とすればよい。また乾燥温度は、好ましくは-10℃以上50℃以下、より好ましくは-5℃以上40℃以下であればよい。本発明の水性被覆材は、常温硬化型として好ましいものである。
上塗材としては、一般的に建築物の塗装に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、その結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等の有機質結合材、あるいはシリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材等が挙げられる。特に、本発明では、上記有機質結合材、上記有機無機複合結合材から選ばれる1種以上を含む上塗材との密着性を十分に発揮することができる。また、上塗材の態様としては、水性上塗材、溶剤系(弱溶剤系)上塗材等のいずれであってよい。
具体的な上塗材としては、例えば、建築用耐候性上塗り塗料(JIS K5658:2010)、鋼構造物用耐候性塗料(JIS K5659:2008)、つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K5660:2008)、建築用防火塗料(JIS K5661:1970)、合成樹脂エマルションペイント(JIS K5663:2008)、路面標示用塗料(JIS K5665:2011)、多彩模様塗料(JIS K5667:2003)、合成樹脂エマルション模様塗料(JIS K5668:2010)、アクリル樹脂系非水分散形塗料(JIS K5670:2008)、鉛・クロムフリーさび止めペイント(JIS K5674:2008)、屋根用高日射反射率塗料(JIS K5675:2011)、建物用床塗料(JIS K5970:2008)、建築用塗膜防水材(JIS A6021:2011)、建築用仕上塗材(JIS A6909:2014)、等が挙げられる。
上塗材の塗装方法としては、特に限定されず公知の方法で塗装することができるが、例えば、刷毛塗り、コテ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、ロールコーター、フローコーター等種々の方法により塗装することができる。即ち、それぞれの上塗材に最適な塗装仕様(塗装回数、乾燥温度等)で、通常の工程に基づいて、各上塗材を塗装すればよい。なお、乾燥温度は、好ましくは-10℃以上50℃以下、より好ましくは-5℃以上40℃以下であればよい。本発明の被膜形成方法は、常温硬化型として好ましいものである。
以下に実施例及び比較例を示して、本発明の特徴をより明確にする。
<硬化剤の製造>
・硬化剤1
アミノ基含有樹脂(A)[ポリアミン樹脂、非水溶性樹脂(水への溶解度(23℃)0.2g/100gHO)、メタキシレンジアミンのスチレン付加反応生成物、固形分100質量%、活性水素当量y:103]25質量部、シラン化合物(B)[N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン]50質量部、サリチル酸(C1)2.5質量部、水(C3)0.5質量部、メタノール(D1)22質量部を混合したものを硬化剤1とした。
なお、硬化剤製造から24時間後(23℃)に、熱分解ガスクロマトグラフイーを用いて測定した未反応の(B)成分の定量値に基づき、(B)成分の加水分解反応により生成したメタノールの理論値を算出した結果、メタノールの生成量は8質量部であり、硬化剤1のアルコール成分含有量は30質量%であった。
・硬化剤2
アミノ基含有樹脂(A)[同上]25質量部、シラン化合物(B)[同上]50質量部、マレイン酸(C2)2.5質量部、水(C3)0.5質量部、メタノール(D1)22質量部を混合したものを硬化剤2とした。
なお、硬化剤製造から24時間後(23℃)に、硬化剤1と同様にして(B)成分の加水分解反応により生成したメタノールの理論値を算出した結果、メタノールの生成量は8質量部であり、硬化剤2のアルコール成分含有量は30質量%であった。
・硬化剤3
アミノ基含有樹脂(A)[同上]25質量部、シラン化合物(B)[同上]50質量部、マレイン酸(C2)2.5質量部、水(C3)0.5質量部、メタノール(D1)15質量部、エチレングリコール(D2)7質量部を混合したものを硬化剤3とした。
なお、硬化剤製造から24時間後(23℃)に、硬化剤1と同様にして(B)成分の加水分解反応により生成したメタノールの理論値を算出した結果、メタノールの生成量は8質量部であり、硬化剤3のアルコール成分含有量は30質量%であった。
・硬化剤4
アミノ基含有樹脂(A)[同上]25質量部、シラン化合物(B)[同上]50質量部、(C1)サリチル酸3質量部、(C3)水0.5質量部を混合したものを硬化剤4とした。
なお、硬化剤製造から24時間後(23℃)に、硬化剤1と同様にして(B)成分の加水分解反応により生成したメタノールの理論値を算出した結果、メタノールの生成量は8質量部であり、硬化剤4のアルコール成分含有量は8質量%であった。
・硬化剤5
アミノ基含有樹脂(A)[同上]25質量部、シラン化合物(B)[同上]50質量部を混合したものを硬化剤5とした。
なお、硬化剤製造から24時間後(23℃)に、硬化剤1と同様にして(B)成分の加水分解反応により生成したメタノールの理論値を算出した結果、メタノールの生成量は0質量部であり、硬化剤5のアルコール成分含有量は0質量%であった。
・硬化剤6
アミノ基含有樹脂(A)[同上]25質量部、シラン化合物(B)[同上]50質量部、メタノール25質量部を混合したものを硬化剤6とした。
なお、硬化剤製造から24時間後(23℃)に、硬化剤1と同様にして(B)成分の加水分解反応により生成したメタノールの理論値を算出した結果、メタノールの生成量は0質量部であり、硬化剤6のアルコール成分含有量は25質量%であった。
<主剤の製造>
・主剤1
水性エポキシ樹脂(E1)[ビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形型)水分散体、固形分46質量%、エポキシ当量x508、平均粒子径:390nm]20質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、固形分:33質量%、グリシジルメタクリレート含有量:9質量%、平均粒子径:150nm]60質量部、有機溶剤(G)[2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、沸点253℃、水への溶解度(20℃)0.09g/100gHO]2質量部、添加剤[消泡剤、増粘剤]5質量部、触媒(P)[有機スズ化合物分散液、固形分(有効成分)10質量%]3質量部、水10質量部を混合したものを主剤1とした。
・主剤2
水性エポキシ樹脂(E1)同上]20質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]60質量部、アルコキシシラン化合物(B’)[フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン混合物]1質量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上] 3質量部、水9質量部を混合したものを主剤2とした。
・主剤3
水性エポキシ樹脂(E1)[同上]20質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]34質量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上] 3質量部、水36質量部を混合したものを主剤3とした。
・主剤4
水性エポキシ樹脂(E1)[同上]20質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]20質量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上] 3質量部、水50質量部を混合したものを主剤4とした。
・主剤5
水性エポキシ樹脂(E1)[同上]20質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]60質量部、アルコキシシラン化合物(B’)[同上]1質量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上] 1質量部、水11質量部を混合したものを主剤5とした。
・主剤6
水性エポキシ樹脂(E1)[同上]18質量部、水性エポキシ樹脂(E2)[ビスフェノールA型エポキシ樹脂(液状型)水分散体、固形分65質量%、エポキシ当量x205、平均粒子径:670nm]0.6質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]60質量部、アルコキシシラン化合物(B’)[同上]1質量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上]1質量部、水12.4質量部を混合したものを主剤6とした。
・主剤7
水性エポキシ樹脂(E1)[同上]17質量部、水性エポキシ樹脂(E2)[同上]1質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]60質量部、アルコキシシラン化合物(B’)[同上]1質量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上]1質量部、水13質量部を混合したものを主剤7とした。
・主剤8
水性エポキシ樹脂(E1)[同上]16質量部、水性エポキシ樹脂(E2)[同上]1.2質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]60質量部、アルコキシシラン化合物(B’)[同上]1質量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上]1質量部、水13.8質量部を混合したものを主剤7とした。
・主剤9
水性エポキシ樹脂(E1)[同上]20質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]60質量部、アルコキシシラン化合物(B’)[同上]1質量部、酸化チタン[70質量%水分散液]5重量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上]1質量部、水6質量部を混合したものを主剤9とした。
・主剤10
水性エポキシ樹脂(E1)[同上]18質量部、水性エポキシ樹脂(E2)[同上]0.6質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]60質量部、アルコキシシラン化合物(B’)[同上]1質量部、酸化チタン[70質量%水分散液]5重量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上]1質量部、水7.4質量部を混合したものを主剤10とした。
・主剤11
水性エポキシ樹脂(E1)[同上]17質量部、水性エポキシ樹脂(E2)[同上]1質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]60質量部、アルコキシシラン化合物(B’)[同上]1質量部、酸化チタン[70質量%水分散液]5重量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上]1質量部、水8質量部を混合したものを主剤11とした。
・主剤12
水性エポキシ樹脂(E1)[同上]16質量部、水性エポキシ樹脂(E2)[同上]1.2質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]60質量部、アルコキシシラン化合物(B’)[同上]1質量部、酸化チタン[70質量%水分散液]5重量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上]1質量部、水8.8質量部を混合したものを主剤12とした。
・主剤13
水性エポキシ樹脂(E1)[同上]17質量部、水性エポキシ樹脂(E2)[同上]1質量部、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(F)[同上]20質量部、アルコキシシラン化合物(B’)[同上]1質量部、酸化チタン[70質量%水分散液]5重量部、有機溶剤(G)[同上]2質量部、添加剤[同上]5質量部、触媒(P)[同上]1質量部、水48質量部を混合したものを主剤13とした。
なお、主剤1~8は、顔料を含まないクリヤー型水性被覆材用の主剤であり、主剤9~13は顔料を含む着色型水性被覆材用の主剤である。主剤9~13においては、顔料分散性を十分に確保でき、特に、主剤10~13においては優れた分散性、安定性を得ることができた。
(実施例1~19、比較例1~4)
主剤と、硬化剤を、主剤中の(E)成分のエポキシ当量([X]:固形分換算値)と、硬化剤中の(A)成分の活性水素当量([Y];固形分換算値)の比[X/Y]=1.0となるように混合した水性被覆材を使用し、下記の評価を実施した。なお、主剤と硬化剤の組み合わせは表1、表2に示す(実施例1~11、比較例1、2は、クリヤー型水性被覆材、実施例12~19比較例4、5は、着色型水性被覆材)。
<乾燥性評価>
既存塗膜として黒色アクリル板(150mm×200mm×3mm)上に、主剤と硬化剤を混合して得られた水性被覆材を塗付厚み0.15mmとなるように混合直後に塗付し23℃で6時間乾燥後の乾燥状態を指触によって評価した。評価基準は、粘着性(タック)が認められなかったものを「A」、粘着性(タック)が認められたものを「C」とする3段階(優:A>B>C:劣)で行った。結果は、表1に示す。
<耐水性評価>
既存塗膜として黒色アクリル板(150mm×200mm×3mm)上に、主剤と硬化剤を混合して得られた水性被覆材を塗付厚み0.15mmとなるように混合直後に塗付し、23℃で1日間乾燥させた試験体を作製した。それぞれの試験体を20℃の水に24時間浸漬させた後、試験体を取り出し、乾燥(23℃、1時間)させ、塗膜状態を目視にて、膨れ、剥れ、変色(白化)等を観察し評価した。評価基準は、ほぼ異常がなかったものを「A」、異常があったものを「D」とする4段階評価(A>B>C>D)評価とした。結果は、表1に示す。
実施例1~19において、十分な乾燥性、耐水性を得ることができた。
実施例1~11のクリヤー型水性被覆材において、特に、実施例1~4、7~10においては乾燥性、耐水性において優れ、塗膜の変色(白化)の問題の十分な抑制効果を得ることができた。一方、比較例1、2では、乾燥性、耐水性に劣り、塗膜の変色(白化)を生じる結果であった。
実施例12~19の着色型水性被覆材において、特に、実施例12~16においては乾燥性、耐水性において優れた効果を得ることができた。一方、比較例3、4では、乾燥性、耐水性に劣る結果であった。
次いで、実施例1~19において、下記の密着性評価を実施した。
<密着性評価1>
(試験体の作製)
・試験体[I]
既存塗膜上に、主剤と硬化剤を混合して得られた水性被覆材を塗付け量0.1kg/mとなるように混合直後に塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で6時間乾燥させ、次いで、水性上塗材(アクリルシリコン樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.1kg/mとなるように塗付し、標準状態で、1日間乾燥させた試験体[I]を作製した。
なお、既存塗膜としては、以下のものを使用した。
・既存塗膜1:サイディングボード上に無機クリヤー塗料が塗装されたもの
・既存塗膜2:スレート板上にウレタン樹脂系塗料が塗装されたもの
・既存塗膜3:スレート板上にアクリルシリコン樹脂系塗料が塗装されたもの
作製した試験体[I]を、JIS K 5600-5-6に準じた碁盤目テープ法にて密着性を評価した。結果は表1に示す。
評価基準は、以下の通りである。
AA:欠損部面積が5%未満
A:欠損部面積が5%以上10%未満
AB:欠損部面積が10%以上25%未満
B:欠損部面積が25%以上40%未満
C:欠損部面積が40%以上55%未満
D:欠損部面積が55%以上
<密着性評価2>
(試験体の作製)
・試験体[II]
既存塗膜上に、主剤と硬化剤を混合して得られた水性被覆材を塗付け量0.1kg/mとなるように混合直後に塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で6時間乾燥させ、次いで、弱溶剤系上塗材(アクリルシリコン樹脂塗料)を塗付け量0.1kg/mとなるように塗付し、標準状態で、1日間乾燥させた試験体[II]を作製し、上記試験体[I]と同様に密着性を評価した。結果は表1に示す。
Figure 2024031888000001
Figure 2024031888000002

Claims (4)

  1. 水性エポキシ樹脂用の硬化剤であって、
    アミノ基含有樹脂(A)、加水分解性基を有するシラン化合物(B)、および、加水分解反応促進剤(C)を混合してなり、
    硬化剤全量中にアルコール成分(D)を5~80質量%含むことを特徴とする硬化剤。
  2. 上記アミノ基含有樹脂(A)と上記加水分解性基を有するシラン化合物(B)を質量比(A):(B)=5:95~50:50で含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化剤。
  3. 上記加水分解性基を有するシラン化合物(B)は、アミノ基含有シランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化剤。
  4. 請求項1~請求項3のいずれかに記載の硬化剤と、水性エポキシ樹脂を含む主剤とからなる2液型の水性被覆材。


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