JP7426214B2 - 水電解用セルモジュール - Google Patents

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Description

本発明は、水電解用セルモジュールに関するものであり、更に詳しくは、水電解用単セルを積層してなる水電解用スタックセルを、2次元又は3次元に配列してなる水電解用セルモジュールに関するものであり、また、該水電解用セルモジュールの運転方法に関するものである。
水素は、燃料電池の燃料として用いられる等、種々の用途が存在し、酸素も種々の用途が存在する。そしてそれらは、多くは水の電気分解から得られている。
高分子電解質膜(PEM)の両側を電極で挟んだ構造を有し、水の電気分解(水電解)用に用いられるセルが知られている。該セルには水が供給され、電圧を印加して電流を流すことによって、該セルからは水素と酸素が取り出せる。
このような水電解用セル、及び、それを複数組み合わせた又は複数集合させた装置も知られている。
特許文献1には、水供給装置と、水電解セルに供給される電流値のセンサーと、該センサーの出力信号に基づいて水の供給量を制御する制御部とを備える水電解装置が記載されている。
また、特許文献2には、水電解槽と、陰極側ガスの水素濃度若しくは酸素濃度、又は、該水電解槽への電力供給量を監視する監視装置と、水素供給路と、水素ガスの流量を調節する流量調節バルブとを備える水電解システムが記載されている。
特許文献3には、水電解セルを備えた水電解装置と、直流電源と、該水電解セルに急激な電位変動等が生じた時に、それを緩和する緩和装置とを備えた電解システムが記載されている。
特許文献4には、複数の水電解セルが互いに積層された水電解スタックと、気液分離器に貯留された水が水供給路を介して該水電解スタック内に供給され、未反応の水が水排出路を介して該気液分離器に排出されるように水を循環させる循環ポンプと、を備えた水電解システムが記載されている。
しかしながら、これらの技術は、何れも水電解用セルの使用方法によって該水電解用セル自体の寿命を延ばすと言ったものではなかった。
また、水電解用セルを用いた装置の改良ではあるが、該セルの使用方法(運転方法)や、メンテナンスのし易さ等に着目したものでもなかった。
すなわち、水電解用セルの交換やメンテナンスを、該水電解用セルのモジュール化に着目し、該水電解用セルの運転方法や使用方法を改良したものではなかった。
近年、水素の需要が拡大してきていることに伴い、優れた水の電気分解の技術が要求されているが、水電解用セル自体の構成や使用する化学材料の改良以外に、該水電解用セルの運転(使用)方法、メンテナンス(交換)方法の改良を盛り込んだ水電解用モジュールの改良等については従来技術では十分ではなく、性能、耐久性、運転方法等に関して優れた技術が望まれていた。
特開2018-028134号公報 特開2018-135580号公報 特開2019-099905号公報 特開2019-123899号公報
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その課題は、水電解用単セルの集合や配列の改良等から、好適にモジュール化を達成し、該水電解用セルの交換やメンテナンスをやり易くした水電解用セルモジュールを提供することである。
また、該水電解用(単)セルの使用(運転)方法や構成等の改良から、該水電解用(単)セルの寿命を延ばした水電解用セルモジュールを提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水電解用単セルを積層して水電解用スタックセルを形成させ、更に、該水電解用スタックセルを2次元又は3次元に配列して水電解用セルモジュールを構成させた上で、該水電解用セルモジュールを構成する(部分)単位毎にセルの交換やセルのメンテナンス等を行えば、該水電解用セルモジュールの連続運転を確保しつつ、セル交換やメンテナンス等が効率的にできることを見出した。
また、ある一定時間毎に(定期的に)印加電圧をオフにすることで、著しくセル寿命が延びることを見出した。
そして、「上記セル交換やメンテナンス等」と「上記定期的な遮断(オフ)」の「時期的タイミング」と、「該交換と該オフの対象となる水電解用スタックセルの単位」を統一させることで、更に効率的な運転ができることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane(PEM))の両側を水電解用電極で挟んだ構造を水電解用単セルとしたときに、該水電解用単セルを2個以上積層してなる水電解用スタックセルを、2次元に配列してなる水電解用セルモジュールであって、
該水電解用スタックセルごとに、又は、該水電解用セルモジュール全体ごとに、水電解用の印加電圧を遮断して電解電流を流さない休止時間を設ける構成になっていることを特徴とする水電解用セルモジュールを提供するものである。
これは、水電解用スタックセルが2次元に配列された水電解用セルモジュールの発明である。
また、本発明は、高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane(PEM))の両側を水電解用電極で挟んだ構造を水電解用単セルとしたときに、該水電解用単セルを2個以上積層してなる水電解用スタックセルを、3次元に配列してなる水電解用セルモジュールであって、
該水電解用スタックセルごとに、又は、該水電解用スタックセルの2次元的な配列部分よりなる2次元水電解用スタックセル群ごとに、又は、該水電解用セルモジュール全体ごとに、水電解用の印加電圧を遮断して電解電流を流さない休止時間を設ける構成になっていることを特徴とする水電解用セルモジュールを提供するものである。
これは、水電解用スタックセルが3次元に配列された水電解用セルモジュールの発明である。
また、本発明は、上記2次元水電解用スタックセル群を構成する水電解用スタックセルの全体が、1個の載置ボードに載置されていて、該載置ボートの単位で移動できるようになっていて、該2次元水電解用スタックセル群ごとに水電解用セルモジュールから引き出せるようになっている上記の水電解用セルモジュールを提供するものである。
これは、3次元の水電解用セルモジュールにおいて、その一部である「2次元水電解用スタックセル群」ごとに載置ボートで移動できるようになっている発明である。
また、本発明は、上記休止時間に同期させて、気体及び/又は水のバルブの開閉制御ができるようになっている上記の水電解用セルモジュールを提供するものである。
また、本発明は、上記水電解用単セルが、高分子電解質膜(PEM)の両側を水電解用電極で挟んだ構造をしており、
該水電解用電極は、触媒が多孔質基体自体の表面から内部にかけて担持されている多孔質基体で構成されているものであり、かつ、アイオノマーが該多孔質基体の表面から内部に向かって充填されているものである上記の水電解用セルモジュールを提供するものである。
また、本発明は、上記の水電解用セルモジュールの運転方法であって、
上記水電解用スタックセルごとに、若しくは、該水電解用スタックセルの2次元的な配列部分よりなる2次元水電解用スタックセル群ごとに、上記休止時間を設ける、又は、水電解用スタックセルを点検若しくは交換をして、連続運転を途切れさせないようにすることを特徴とする水電解用セルモジュールの運転方法を提供するものである。
セル電圧(印加電圧)が十分に低い水電解用単セルを使用すれば、それを複数個積層して直列に結合して水電解用スタックセルとしたとしても、該スタックセルは十分に低い印加電圧で駆動が可能である。従って、水電解用スタックセル単位で、印加電圧・電流、供給水、及び、発生する気体(水素と酸素)の制御が可能となる。
すなわち、「気体や水の配管と電気配線が結合している単位を、上記水電解用スタックセルとすることによって、好適に交換等のメンテナンスができるようになる。
以下、「水電解用」を省略して、「水電解用単セル」を「単セル」と、「水電解用スタックセル」を「スタックセル」と、「水電解用セルモジュール」を「セルモジュール」と略記することがある。
また、「単セル」と「スタックセル」とを総称して、単に「セル」と略記することがある。
本発明によれば、前記問題点と上記課題を解決し、スタックセルを2次元又は3次元に配列してなるセルモジュールを用い、「該スタックセル」ごとに交換やメンテナンス(特に交換)を行うことによって、セル交換等の作業が効率的にでき、しかもその間、連続運転を維持できる。
以下、「スタックセルを2次元に配列してなるセルモジュール」を、単に「2次元セルモジュール」と略記する場合がある。
また、「スタックセルを3次元に配列してなるセルモジュール」を、単に「3次元セルモジュール」と略記する場合がある。
更に、「該スタックセルを3次元に配列してなるセルモジュール」の場合には、特に、その中の一部である「スタックセルの2次元的な配列部分よりなる2次元スタックセル群」ごとに交換やメンテナンス(特に交換)を行えば、連続運転を維持しつつ、更に効率的に、その作業が可能となる。
該3次元セルモジュールの一部である上記「スタックセルの2次元的な配列部分よりなる2次元スタックセル群」を、単に「2次元スタックセル群」と略記する場合がある。
また、本発明において、セル自体の態様(層構成、各層の態様、セルの(部分)形状、そこで使用する材料の種類等)の改良以外にも、印加電圧を遮断して電解電流を流さない休止時間を設ける構成とすることで、セル寿命を延長させられることを見出した。
以下、「水電解用の印加電圧を遮断して電解電流を流さない休止時間」を、単に「休止時間」と略記することがある。
従って、特定の単位ごとに休止時間を設ける構成になっている本発明のセルモジュールは、更に効率的な運転が可能である。
具体的には、本発明のセルモジュールでは、特に3次元セルモジュールの場合に、そこに含まれる2次元スタックセル群ごとに休止時間を設ける構成になっているので、休止時間によるセルの延命とセルの交換の効率化とが相乗的に達成される。
すなわち、上記した「セルの交換やメンテナンス」と上記した「寿命延長のための休止時間」の、「時期的タイミング(時刻)」と「該交換と該休止時間の対象となるスタックセルの単位」を統一させることで、作業量と時間の節約、大電流のON-OFF動作の頻度減少、セル寿命到達時期を統一して次の交換時に「寿命の来ていないスタックセル」まで交換してしまうリスク回避等、極めて効率的な運転ができる。
水電解用単セルの概略展開斜視図である。 (a)触媒担持多孔質基体(水電解用電極、気体拡散層)を使用した概略展開斜視図 (b)膜電極接合体(MEA)と気体拡散層を使用した水電解用セルの概略展開斜視図 水電解用単セルを2個積層してなる水電解用スタックセルの概略展開斜視図である。 水電解用スタックセルの概略図である。 (a)配線と配管が接続されているスタックセルの斜視図 (b)陰極側の「水素出口」と、陽極側の「水入口」と「水出口兼酸素排出口」を示す概略断面図 (c)配線と配管を省略したスタックセルの斜視図 水電解用スタックセルを2次元に配列させてなる本発明の水電解用セルモジュールの概略斜視図である。 水電解用スタックセルを3次元に配列させてなる本発明の水電解用セルモジュールの概略斜視図である。 スタックセル又は2次元スタックセル群ごとに、水素、酸素及び水の流量と、印加電圧(電解電圧)の制御がされている本発明のセルモジュールのシステムの概略図である。 休止時間を設けた「スタックセルの動作電流制御」の一例を示すグラフである。 触媒担持多孔質基体(水電解用電極でもあり気体拡散層でもある)が、高分子電解質膜(PEM)を挟んでなる水電解用単セルの概略部分拡大断面図である(図1(a)の単セルの態様)。 水素検出器、緊急停止機構(印加電圧と水素バルブの遮断)、パージライン等を示す相略図である。 パージラインで外部に排出される配管の流れ (a)本発明の場合 (b)従来の場合
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
<2次元に配列された水電解用セルモジュール>
本発明は、高分子電解質膜(PEM)の両側を水電解用電極で挟んだ構造を水電解用単セルとしたときに、該水電解用単セルを2個以上積層してなる水電解用スタックセルを、2次元に配列してなる水電解用セルモジュールであって(例えば、図4参照)、
該水電解用スタックセルごとに、又は、該水電解用セルモジュール全体ごとに、水電解用の印加電圧を遮断して電解電流を流さない休止時間を設ける構成になっていることを特徴とする水電解用セルモジュールである。
すなわち、言い換えれば、本発明の2次元セルモジュールは、スタックセルごとに、又は、セルモジュール全体ごとに、休止時間を設ける構成になっていることを特徴とする。
<3次元に配列された水電解用セルモジュール>
また、本発明は、高分子電解質膜(PEM)の両側を水電解用電極で挟んだ構造を水電解用単セルとしたときに、該水電解用単セルを2個以上積層してなる水電解用スタックセルを、3次元に配列してなる水電解用セルモジュールであって(例えば、図5参照)、
該水電解用スタックセルごとに、又は、「該水電解用スタックセルの2次元的な配列部分よりなる2次元水電解用スタックセル群」ごとに、又は、該水電解用セルモジュール全体ごとに、水電解用の印加電圧を遮断して電解電流を流さない休止時間を設ける構成になっていることを特徴とする水電解用セルモジュールである。
すなわち、言い換えれば、本発明の3次元セルモジュールは、スタックセルごとに、又は、2次元スタックセル群ごとに、又は、該セルモジュール全体ごとに、休止時間を設ける構成になっていることを特徴とする。
<<水電解用単セル>>
「本発明のセルモジュール10を構成するスタックセル9」は、単セルが2個以上積層してなるものである。そして、本発明における単セル1は、水の電解用のものであり、例えば、図1(a)又は図1(b)に示したように、高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane(PEM))の両側を水電解用電極2で挟んだ構造を有しているものであれば、特に限定はない。
以下、「高分子電解質膜(PEM)」を、単に「PEM」と略記することがある。
すなわち、具体的には、本発明における単セル1は、図1(a)に示したように、電極2と気体拡散層の機能を有する触媒担持多孔質基体3で、1個のPEM5を挟んだ構造を有するものであってもよいし、また、図1(b)に示したように、触媒を有する膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly(MEA))を気体拡散層で挟んだ構造を有するものであってもよい。
図1(a)又は図1(b)に示したように、単セル1は、「PEMの両側を電極2で挟んだ構造体」の両側の外側に、陰極側も陽極側も、それぞれ、ガスケット、給電体6、樹脂槽体7等を有している。
本発明における単セル1は、上記した通り特に限定はなく、例えば、図1(a)(b)に示したもの等が挙げられるが、図1(a)に示した構造を有するものが、単セルへの印加電圧の低さ、触媒の脱落抑制、構成素材同士の接触性、後述する休止時間を設けることの効果の大きさ、耐久性等の点から好ましい。
単セル1の基本構造としては、図1(a)に示した構造の中で、例えば、図8に概略断面拡大図を示したような構造を有するものが、上記効果を特に好適に奏するために特に好ましい。
本発明は、特に限定されるものではないが、図8に示したように、単セル1は、高分子電解質膜(PEM)5の両側を水電解用電極2で挟んだ構造をしており、該水電解用電極2は、触媒が多孔質基体自体の表面から内部にかけて担持されている多孔質基体で構成されているものであり、かつ、アイオノマー4が該多孔質基体の表面から内部に向かって充填されているものであることが好ましい。本発明は、そのような水電解用電極2を有する上記の水電解用セルモジュール10であることが好ましい。
すなわち、PEM5を挟んで触媒が担持された多孔質基体が存在しており、該多孔質基体は、PEM5に接触して陰極又は陽極を構成し、気体拡散層としても機能する構造を有している。そして、該触媒は、「該多孔質基体が有している孔の側面又は該多孔質基体を形成している繊維の側面」に担持されて、該多孔質基体自体の表面から内部にかけて存在している。該触媒は、膜状でもよいし、図8に示したように粒子状でもよい。
そして、アイオノマー4が、該触媒に接触しつつ、該多孔質基体の表面から内部に向かって、該多孔質基体の厚み方向に濃度勾配を有しながら充填されていることがより好ましい(図8参照)。
また、該アイオノマー4の濃度勾配については、少なくともPEM5に近い側が濃くなっていて、内部に向かって薄くなっていることが特に好ましい(図8参照)。
更に、PEM5に近い側が濃くなっていると共に、給電体6側も濃くなっていることも好ましい(図示せず)。すなわち、該アイオノマー4は、PEM5側と給電体6側が濃くなっており、多孔質基体の厚み方向の真ん中近傍は薄くなっている形態も好ましい。
すなわち、言い換えれば、多孔質基体の両側からアイオノマー4が濃度勾配を有しながら充填されている態様も好ましい。
ここで、「アイオノマー」とは、陽イオン交換ポリマー、側鎖に強酸基を有するポリマー、プロトン伝導性ポリマー、イオン伝導性ポリマー等とも言われているものを言う。
限定はされないが、上記特に好ましい触媒担持多孔質基体3は、焼成前の多孔質基体が有している孔の側面、又は、焼成前の多孔質基体を形成している繊維の側面に、金属触媒又は金属触媒前駆体を付着させて焼成する工程を有して得られるものであることが、上記効果を特に好適に奏するために好ましい(図8参照)。
触媒担持多孔質基体3においては、上記触媒が、多孔質基体自体の表面のみに触媒層として堆積されているものではなく、上記多孔質基体が有している孔の側面、又は、上記多孔質基体を形成している繊維の側面に担持されて、上記多孔質基体自体の表面から内部にかけて存在していることが、上記効果を特に好適に奏するために好ましい(図8参照)。
上記触媒は、限定はないが、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、及び、ニッケル(Ni)よりなる群から選ばれる、1種以上の金属又は金属含有化合物であることが好ましい。
上記多孔質基体の材質は、電子伝導性があれば特に限定はないが、チタン族の金属、チタン族の金属の合金、若しくは、チタン族の金属の化合物、又は、炭素(C)であることが好ましい。
ここで、「チタン族の金属」とは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムのことを言う。すなわち、チタン族の基体としては、チタン基体、ジルコニウム基体、ハフニウム基体、チタン合金基体、ジルコニウム合金基体、又は、ハフニウム合金基体が挙げられる。
また、「チタン族の金属の化合物」としては、例えば、窒化チタン(チタンナイトライド(TiN))、炭化チタン(チタンカーバイド(TiC))、ホウ化チタン(チタンジボライド(TiB))等が挙げられる。
セル電圧が低く、触媒粒子が電極基材から脱離することが好適に防止されることから、チタン族の金属又は合金としては、チタン又はチタン合金がより好ましく、チタンが特に好ましい。
また、炭素(C)としては、グラファイト構造(グラフェンの構造)を有するものが好ましい。
上記多孔質基体は、チタン繊維若しくはチタン合金繊維の集合体、又は、炭素繊維の集合体であることが、上記効果を特に好適に奏するために好ましい。
<<水電解用スタックセル>>
本発明における「水電解用スタックセル9」は、上記単セル1を2個以上積層してなる(図3、(a)(c)参照)。
図2は、単セル1を2個連結したスタックセル9を示すものであり、双極板8を挟んで、右側と左側に1個ずつの単セル1が存在している。図2では、たまたま単セル1を2個積層しているが、本発明におけるスタックセル9は、「単セルが2個積層されたもの」には限定されない。
なお、本発明で使用されるスタックセル9においては、図2に示したものの他に、他の層や他の部材・構造体等の併用(存在)を排除するものではない。
本発明において、スタックセル9は、単セル1を2個以上積層してなるが、好ましくは3個以上10個以下積層してなり、特に好ましくは4個以上6個以下積層してなる。
積層個数が少な過ぎると、水電解効率(水素発生効率)が悪くなる場合があり、一方、積層個数が多過ぎると、水電解に要する電圧が大きくなる場合がある。
特に、単セル1の電解電圧(セル電圧)が、低い場合には(低くても駆動するような単セルの場合には)、単セル1を複数個直列に連結しても、スタックセル9の陰極と陽極の間に印加する電解電圧を小さくできる。従って、前記したような特に好ましい単セル1の態様は、単セル1の電解電圧(セル電圧)が低いので、スタックセル9に対する電解電圧(セル電圧)も低くでき、本発明の「スタックセル9を2次元又は3次元に配列してなるセルモジュール10」に特に好適である。
本発明の水電解用スタックセル9には、更に、図3(a)(b)に示したように、陰極配線、陽極配線と言った電気配線;水素排出配管等が設置されていることが好ましい。言い換えれば、本発明のセルモジュール10においては、スタックセル9ごとに、電気配線(陰極配線と陽極配線)と気体配管(水素配管及び/又は酸素配管)が設置されていることが好ましい。
電圧(電流)、気体(水素及び/又は酸素)、及び、電解される水は、当然、単セル1に供給され単セル1から得られるものであるが、本発明においては、図3(a)に示したように、スタックセル9ごとに集約して、それらの供給及び取り出しを行うことが好ましい。
本発明のセルは、図3(a)(b)に示したように、電解に用いる水は、陽極の水入口から入って、陽極の水出口(兼、酸素排出口)から出ていくようになっている。また、電解で得られた水素は、陰極の水素出口から出ていき、電解で得られた酸素は、陰極の酸素排出口(兼、水出口)から出ていくようになっている。
複数のスタックセル9を配列させてセルモジュール10とする場合には、水タンク(図6では「純水供給源」)から供給配管を通して、各スタックセル9に水を分岐して供給し、各スタックセル9から排出される水は合流させた後に、該水タンクに還流させることが好ましい。
また、各スタックセル9に水を供給するための配管の取り外しは、ワンタッチで取り外しができ、取り外した後には、供給配管が自動的に閉鎖されるような構造になっていることが好ましい。
ここで供給される水(使用する水)は、イオン交換水等の純水であることが好ましい。通常の塩素系の消毒剤等の不純物は、フィルターや吸着カラム等で、ろ過又は除去する。特に、塩素を含んだ水を電気分解すると、分解によって発生した塩素が電極材料を腐食させる原因になるため、除去することが好ましい。
<<複数のスタックセルの運転方法>>
本発明の水電解用セルモジュール10は、複数のスタックセル9が配列されてなるものである。このように、「複数のスタックセル9」の単位で、又は、後記する3次元セルモジュール10の場合の「2次元スタックセル群11」単位で、セルの交換・メンテナンスを行ったり、後記する寿命延長のための休止時間を設けたりして運転を行えば、システム全体の停止期間をなくすことができる。
図6に、本発明のセルモジュール10の運転方法を示す。本発明のセルモジュール10は、一定単位ごとにシステムが区切られていることが特徴である。
また、図6では、該単位ごとのバルブと電源の遮断に合わせて、セル交換やメンテナンスができるようになっている。
スタックセル9又は2次元スタックセル群11ごとに、水素、酸素又は水の流量と、印加電圧の制御がなされていて、セルの交換やメンテナンス(点検)のときに、連続運転が維持できるようになっている。
<<水電解用セルモジュール>>
本発明のセルモジュール10は、図4に示したような、スタックセル9を2次元に配列してなる2次元セルモジュール10、又は、図5に示したような、スタックセル9を3次元に配列してなる3次元セルモジュール10である。
2次元セルモジュール10では、前記したスタックセル9ごとに、又は、該水電解用セルモジュール10全体ごとに、水電解用の印加電圧を遮断して電解電流を流さない休止時間を設ける構成になっている。
また、3次元セルモジュール10では、「前記したスタックセル9」ごとに、又は、「該スタックセル9の2次元的な配列部分よりなる2次元スタックセル群11」(2次元スタックセル群11)ごとに、又は、「該セルモジュール全体」ごとに、水電解用の印加電圧を遮断して電解電流を流さない休止時間を設ける構成になっている。このような構成にすることで、セル寿命を延ばすことができる。
<休止時間>
例えば、図7に示したように、水電解用の印加電圧を遮断して電解電流を流さない休止時間を設けることによって、セルの寿命を延ばすことができる。該効果を見出したこと等により本発明はなされた。
そして、セル寿命を延ばすための該休止時間の設定単位(単セル単位、スタックセル単位、2次元スタックセル群単位、セルモジュール単位)を、好適な単位にすることによって、後述する優れたセルモジュール10の構成に至った。
図7は、単セル1個当たりの好ましい電流値の時間変化をグラフ化したものである。
例えば、約1.25L/分の水素を発生させる「単セル5個を積層したスタックセル」の場合、連続運転を行うと使用している単セルの電解質膜が徐々に劣化して、電極と電極の間の電界が強い部分で電解集中が起こり、セルの動作が不良になり易い。
本発明において、制御回路等を用いて、ある一定時間ごとに電流を切ることによって、すなわち休止時間を設けることによって、電解質膜の劣化が抑制できることが判明した。
この休止時間を設けることによって、セルの寿命が約2倍になることが、本発明によって確認されている。具体的には、例えば、セル寿命を、1000時間から2000時間に延命化できることが確認されている。
上記「延命のための休止時間」は、特に限定はないが、1時間以上100時間以下の運転時間ごとに、定期的に1回設けることが好ましく、2時間以上70時間以下の運転時間ごとに1回設けることがより好ましく、5時間以上50時間以下の運転時間ごとに1回設けることが更に好ましく、10時間以上30時間以下の運転時間ごとに1回設けることが特に好ましい。
例えば、図7では、24時間(1日)ごとに休止時間を設けている。
該休止時間を設ける頻度が短過ぎると、例えば、数百Aという極めて大電流を流すための印加電圧を遮断する負担が増えることになる、無駄な作業が増える、運転効率(水素取得効率等)が悪くなる、それ以上のセル寿命の延長が見込めない等の場合がある。
一方、該休止時間を設ける頻度が長過ぎると、セル寿命の延長が見込めない等の場合がある。
また、上記休止時間は、特に限定はないが、1秒以上120分以下の連続した時間であることが好ましい。すなわち、1回の休止時間は、1秒以上120分以下であることが好ましい。
1回の休止時間は、より好ましくは1分以上90分以下であり、特に好ましくは5分以上60分以下である。
1回の休止時間(1回の連続した時間)が短過ぎると、セル寿命の延長が見込めない等の場合がある。
一方、1回の休止時間(1回の連続した時間)が長過ぎると、無駄な作業時間が増える、運転効率(水素取得効率等)が悪くなる、それ以上のセル寿命の延長が見込めない等の場合がある。
通常は、延命のための休止時間の長さやその頻度は、スタックセルの交換やメンテナンスを行う時間の長さやその頻度より、短い又は多い。
従って、後述するように、該休止時間と同時に、又は、該休止時間を利用して、スタックセルの交換やメンテナンスを行う場合は、上記「休止時間の長さやその頻度」の好ましい範囲の限りではない。
すなわち、スタックセルの交換やメンテナンスを行うための時間は、上記より長くてもよく、そのための頻度は上記より少なくてもよい。
また、本発明によって、上記休止時間を設けると共に、更に、セルに流す電流値として、最大可能電流値の約80%程度とすることによって、3倍以上の長寿命化が可能になった。具体的には、休止時間も電流値の抑制もない場合に、セル寿命1000時間のものが、3000時間以上に長寿命化が可能になった。
上記「電流値の%」は、50%以上90%以下が好ましく、60%以上80%以下が特に好ましい。
「電流値の%」が小さ過ぎると(0%に近いと)、それ以上の更なる長寿命化が図れないにもかかわらず、得られる水素等が少なくなる場合、運転効率が落ちる場合等がある。
一方、「電流値の%」が大き過ぎると(100%に近いと)、セル寿命が延長しない(長寿命化が図れない)場合等がある。
なお、後述する、スタックセル9の交換、2次元スタックセル群11の交換、セルモジュール10の交換等、セルの交換やメンテナンス(点検)に伴う(同時に行う作業に伴う)、電圧(電流)の停止時間や、1回のバルブの開閉制御の期間は、上記した「セルの長寿命化」のための(より、特に)好ましい1回の休止時間より長くなっても構わない。
電流の制御方法は、制御回路を用いて、一定時間毎に休止時間を入れるようにしてもよいが、交換やメンテナンスでセルを使用しない場合には、(手動等で)電圧の印加を中止してもよい。
<<休止時間を設ける単位、セルモジュールの構成、及び、その運転方法>>
3次元セルモジュール10においては、好ましくは、「前記したスタックセル9」ごとに、又は、「2次元スタックセル群11」ごとに、休止時間を設ける構成になっていることであり、特に好ましくは、「2次元スタックセル群11」ごとに、休止時間を設ける構成になっていることである。
また、上記休止時間に同期させて、気体及び/又は水のバルブの開閉制御ができるようになっていることが好ましい。「休止時間」と「気体及び/又は水のバルブの開閉制御」の同期は、作業者(運転者)が(半)手動で行っても、自動的にできるようになっていてもよい。
数百Aという極めて大電流のON/OFFは、大規模な運転・操作なので、一旦、セル寿命アップのための休止時間を設けたならば(印加電圧をOFFにしたならば)、そのついでに、スタックセル9に寿命が来ている場合は、載置ボード12ごと(図5では、9個のスタックセルごと)、新品に交換すると効率的である。
3次元セルモジュール10において、最も好ましい態様は、2次元スタックセル群11ごとに、電解電流のON/OFF制御(すなわち休止時間の設定)と、バルブの開閉制御とを行うことである。
3次元セルモジュール10において、2次元スタックセル群11ごとに、セル寿命アップのための休止時間の設定と、それに同期させたバルブの開閉制御とを行うことによって、後述する「2次元スタックセル群11が載置されている載置ボード12」ごとに、電源制御とバルブの開閉制御ができることになり、同一の載置ボード12内に載置されたスタックセル9の寿命を(バラツキの範囲内でほぼ)同一にでき、寿命が来てスタックセル9を交換する場合、載置ボード12ごとに行えばよく、そのために該交換が極めて簡便になる。
すなわち、一度、載置ボード12内に載置されたスタックセル9全体を新品に交換した場合、それらのスタックセル9は全てほぼ同時期に寿命を迎えるので、二度目の交換も、載置ボード12ごと行えばよいので、交換作業が容易となると共に、寿命がまだあるスタックセル9を交換してしまうリスクを減らせることができる。
セル寿命アップのための休止時間の設定時刻は、システム全体の停止を避けるために載置ボード12ごとにずれているので(ずらすことが好ましいので)、上記のようにすれば、1個の載置ボード12上のスタックセル9の交換時に、別の載置ボード12上のスタックセル9まで、そのためにOFFにしなくてもすむ。
図5では、前面の9個のスタックセル9からなる2次元スタックセル群11の載置ボード12だけを図示したものであるが、奥のほうにある2次元スタックセル群11も、同様に、2次元スタックセル群11ごとに1個の載置ボード12に載置されていることが好ましい。
本発明は、2次元水電解用スタックセル群を構成する水電解用スタックセル9の全体が、1個の載置ボード12に載置されていて、該載置ボートの単位で移動できるようになっていて、該2次元水電解用スタックセル群ごとに水電解用セルモジュール10から引き出せるようになっている上記の水電解用セルモジュール10であることが好ましい。
また、本発明は、上記2次元水電解用スタックセル群の単位で、そこに配列された水電解用スタックセル9の全部を点検若しくは交換できるような構成になっている上記の水電解用セルモジュール10であることが好ましい。
本発明が3次元セルモジュール10の場合には、その運転方法は、「上記した水電解用スタックセル9」ごとに、若しくは、「該水電解用スタックセル9の2次元的な配列部分よりなる2次元水電解用スタックセル群」ごとに、「上記休止時間を設ける、又は、水電解用スタックセル9を点検若しくは交換をする」ことにして、連続運転を途切れさせないようにすることが好ましい。
前記は、本発明が3次元セルモジュール10の場合を想定しているが、本発明が2次元セルモジュール10の場合には、その運転方法は、上記水電解用スタックセル9ごとに、上記休止時間を設ける、又は、該水電解用スタックセル9ごとに、点検若しくは交換をして、連続運転を途切れさせないようにすることが好ましい。
すなわち、本発明においては、セルモジュール10が2次元であっても3次元であっても、2次元単位で配列されたスタックセル9の全部を点検若しくは交換できるような構成になっていることが好ましい。
このような高効率化の優位点を十分に生かすために、本発明のセルモジュール10は、3次元セルモジュール10であって、2次元水電解用スタックセル群ごとに(好ましくはそれらが載置ボード12に載置されていて)、スタックセル9の交換及び/メンテナンスができるような構成になっていることが好ましい。
特に、図5に示したように、載置ボード12全体が移動できるようなレール13を設けておけば、該レール13に沿って、載置ボード12に載置された2次元スタックセル群11を全て引き出せるので、「載置ボード12ごとのスタックセル9の交換」又は「スタックセル9が載置された載置ボード12自体の交換」が更に容易になる。
例えば、図5には、3次元セルモジュール10において、2次元スタックセル群11を構成するスタックセル9が載置された載置ボード12が、スライドできるレール13が設けられている。
一方、小さい単位ごとに、すなわち「スタックセル9」ごとに、セル寿命アップのための上記休止時間を設ける構成になっていることも好ましく、それによって、複数のスタックセル9を同時期に交換することによる「寿命がまだあるスタックセル9を交換してしまうリスク」を防ぐことができる。
しかし、その一方で、複数の載置ボード12に亘って、個別にスタックセル9を交換する必要が生じるため、作業が煩雑となり(又は作業量が増え)、上記した載置ボード12の特長も享受できない場合がある。
逆に、大きい単位ごとに、すなわち「セルモジュール10」ごとに、セル寿命アップのための上記休止時間を同時刻に設ける構成になっていると、好ましい態様が「セルモジュール10内の全てのスタックセル9を同時に交換すること」になり、3次元セルモジュール10のシステム全体に稼働停止状態が生じる場合がある。すなわち、該休止時間に、セル交換、セル動作確認等を行うため、システムに稼働停止時間が必要となる場合がある。
図4は、図3(a)(b)のスタックセル9を、2次元的に、横に3列、縦に3列配列させた本発明の2次元セルモジュール10の概略斜視図である。
スタックセル9とスタックセル9の間には隙間が設けられており、横方向には隙間(1)-(2)が、縦方向には隙間(3)-(6)が設けられている。なお、図面では隙間番号は丸囲字で示されている。
2次元的な配列については、必要な発生水素量に応じて、単セル1のスタック数(スタックセル9の構成)と、縦と横のスタックセル9の個数を、それぞれ変えて調整することが好ましい。
図5は、図3(a)(b)のスタックセル9を、3次元的に、横に3列、縦に3列、奥行き方向に3列配列させた本発明の3次元セルモジュール10の概略斜視図である。すなわち、図5は、第3図(a)(b)のスタックセルを3次元的に配列させたものである。
また、図4を、3次元セルモジュール10における「スタックセルの2次元的な配列部分よりなる2次元スタックセル群11」(2次元スタックセル群11)と見ると、図5は、図4の2次元スタックセル群11を、図面の奥行き方向に積層させた、本発明の3次元水電解用セルモジュール10を示しているとも言える。
2次元スタックセル群11は、ポリカーボネート等の高分子材料でできた載置ボード12上に配置され、手前の載置ボード12上のスタックセル9と、奥隣の載置ボード12上のスタックセル9との間の(1)-(1)’は、隙間(1)-(2)及び/又は隙間(3)-(6)の何れよりも大きな隙間を有しており、配線と配管の取り外しが行い易いようになっていることが好ましい。なお、図面では隙間番号は丸囲字で示されている。
複数のスタックセル9を有する3次元セルモジュール10中の、あるスタックセル又はほぼ全てのスタックセルが、故障した場合や寿命が来た場合には次のように対処する。
スタックセル9を交換する際には、印加電圧を切り、配管のバルブを閉じて、配管の中の水素を、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いてパージラインに流す。
スタックセル9が載置された載置ボード12を、例えば既に設置されたレール13等を用いて、メンテナンス若しくは交換時の位置に移動させて、スタックセル9を交換し、交換及び/メンテナンス完了後に、載置ボード12を使用時の位置に戻し、配線と配管を接続する。
<水素検知器、停止機構、アラーム発報機構>
本発明の水電解用セルモジュール10、又は、本発明の水電解用セルモジュールを有するシステム全体は、更に、水素検知器14を備え、該水素検知器14が水素の漏洩を検知したときに、上記スタックセル9ごとに若しくは上記2次元スタックセル群11ごとに、又は、セルモジュール10全体において、水電解用の印加電圧が遮断され、水素配管に設けられた水素バルブが閉じられる構成になっていることが好ましい。
図9に、水素検知器14を備え、該水素検知器14が水素の漏洩を検知したときに、印加電圧の遮断と水素バルブが閉じられる構成を示す。
印加電圧と水素バルブの遮断は、手動で行ってもよいが、水素検知器14からの水素検知信号をコンピュータシステムが受信したときに、該システムが自動的に行うようになっていることが好ましい。
上記スタックセル9ごとに、又は、上記2次元スタックセル群11ごとに、水電解用の印加電圧が遮断され、水素配管に設けられた水素バルブが閉じられる構成になっていると、修理又は交換時に、セルモジュール10全体の稼働を停止しなくてもよく、システムの連続運転が可能となる。
水電解用セルモジュール全体が、気体を通過させない筐体15で囲まれており、上記水素検知器14が該筐体15の内部に備えられていて、水素が漏洩したときに確実に上記水素検知器14が水素の漏洩を検知できるようになっていることが好ましい。
該筐体15の存在は、危険な水素ガスが外部に漏れ出すことを防止すると共に、漏洩した水素を水素検知器14が確実に検知できると言う効果を奏する。
図9において、スタックセル9又は2次元スタックセル群11から出た水素は、それぞれの配管に接続され、該配管にはそれぞれバルブが設置されている。「スタックセル9又は2次元スタックセル群11」が複数の場合、すなわち、該配管が複数の場合には、その個数分のバルブが電磁的に開閉できるようになっている。
そして、その合流先は、バルブを介して、水素を貯め込むタンクに輸送されるようになっている。
図9では、セルモジュール10全体又はそのシステム全体が、筐体15で囲まれており、該筐体15の天井部分には、水素を検知するために、例えば100ppm以下の濃度で水素を検知できる水素検知器14が配置されており、システムの中で水素の漏洩があった場合には、コンピュータシステムに水素検知信号送信し、水電解用の印加電圧を緊急停止し、バルブ(電磁弁)を閉じるようになっている。その際、アラームを発報するようになっていることが好ましい。
更に、水素漏洩時(緊急時)には、水素のタンクに水素を供給するためのバルブが閉じられて、窒素(N)又はアルゴン(Ar)等の不活性ガス側のバルブが開かれ、窒素又はアルゴン等の不活性ガスにより配管の中の残留水素をパージラインに排出できるようになっていることが好ましい。
該パージラインでは、水素が、酸化性のガスが存在したときに、着火源により着火しても爆発が起こらないように、水素濃度を0.1%未満にし、かつ、パージラインの配管は直接安全な場所に配置されることが好ましい(図9)。
システムからパージラインで外部に排出される配管の流れは、図10(a)に示すように、ほぼ直線的で、かつ上方に向かうようになっていることが好ましい。
従来の配管で一部なされていた図10(b)に示すような凹凸のある配管ルートでは、図10(b)に示すような箇所で、水素が滞留し易い(水素だまりができ易い)。
水素だまりができると、酸素等の水素と反応し易い気体が存在している場合には、着火源があると爆発する危険があるため、図10(a)に示すように、下流に向けて曲がった配管部分がないことが好ましい。
以下に、実施例及び比較例等を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
以下、特に断りのない限り、比や%に関する値は、質量比や質量%である。
調製例1
<単セルの調製>
図1(a)に示した構成の単セル1を製造した。
すなわち、カーボン繊維を集合体化した多孔質基体に、白金(Pt)触媒を含有する塗布液を、スプレーを用いて塗布した。その際、該塗布液が多孔質基体の表面から内部へ浸み込んでいく様子を確認した。
次いで、塗布液の溶媒を揮発させるために、多孔質基体を70℃で加熱して乾燥させ、その後、300℃で熱処理を行った。
得られた触媒担持多孔質基体3を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図8に示したように、触媒粒子が、多孔質基体を形成しているカーボン繊維の側面に担持されて、該多孔質基体自体の表面から内部にかけて、粒子状で存在していた。
上記の触媒担持多孔質基体3に、アイオノマー(ナフィオン(Nafion(登録商標)))の分散液を塗布した。その際、この分散液が触媒担持多孔質基体3の表面から内部へ染み込んでいく様子を確認した。
次いで、アイオノマー分散液の分散媒を揮発させ乾燥させた。
得られた「アイオノマー充填後の触媒担持多孔質基体3」を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図8に示したように、アイオノマー4が、触媒粒子に接触しつつ、多孔質基体の表面から内部に向かって、厚み方向に濃度勾配を有しながら充填されていることを確認した。
調製例2
<スタックセルの調製>
図2に示したように、双極板8を挟んで上記単セル1を積層し、その外側に、給電体6、樹脂槽体7を配置した。図2は、2個の単セル1でスタックセル9が構成されているが、5個の単セル1で、同様にしてスタックセル9を調製した。
次いで、図3(a)(b)に示したように、電気配線(陰極配線及び陽極配線)を行い、陽極側に水の配管(入口及び出口)を行った。更に、気体配管(陰極側に水素及び陽極側に酸素)を行い、1個のスタックセル9を得た。陽極側の水出口と酸素排出口は兼用した。
調製例3
<セルモジュールの調製>
上記で得たスタックセル27個を用いて、図5に示したような3次元セルモジュール10を調製した。
前面に、縦3個×横3個=計9個のスタックセルを配置し、2次元スタックセル群11を形成させ、該2次元スタックセル群11の9個のスタックセルを、1個の載置ボード12に載置させた(図5)。奥の9個のスタックセルよりなる2次元スタックセル群11も、1個の載置ボード12に載置させた(図示せず)。
この載置ボード12を、該載置ボード12単位でレール13の上に乗せて、「9個のスタックセルよりなる2次元スタックセル群11」を、図5では右側に移動させて、スタックセル9の交換やメンテナンス等が行い易くした。
この3次元セルモジュール10では、図6に示したような、水や水素の配管付属のバルブや電気配線の、一定単位ごとの制御が可能であった(可能にできた)。
評価例1
<休止時間の効果>
調製例1で得られた単セルは、0.25L/分の水素を発生させることができたので、調製例2で得られた「単セルが5個積層されたスタックセル9」は、1.25L/分の水素を発生させることができた。
図7に示したように、スタックセル9ごとに、1日(24時間)ごとに、セル電圧(スタックセル9への印加電圧)を遮断して、すなわち休止時間を設けて、セル寿命が尽きるまで運転を行った。
比較のために、調製例2で同様に得られたスタックセル9を用いて、休止時間を設けずにセル寿命が尽きるまで運転を行った。
なお、運転条件については、上記休止時間以外は、最大可能電流値が流れるように電解電圧を調整して印加し続けた。
休止時間を設けたスタックセル9の寿命は2000時間であったが、比較のために休止時間を設けなかったスタックセル9の寿命は1000時間であった。
なお、休止時間を同様に設けた上で、最大可能電流値の80%が流れるように電解電圧を調整して印加し続けたところ、スタックセル9の寿命は3000時間であった。
連続運転を行うと単セル1の高分子電解質膜(PEM)が徐々に劣化して、電極間の電場が強い部分で電解集中が起こり、そのために単セルの寿命(すなわちスタックセル9の寿命)が来ると考えられる。
本発明によって、休止時間を設けることで、高分子電解質膜(PEM)の劣化が抑制できるため、延命が可能になったと推認された。
評価例2
<2次元スタックセル群ごとの、休止時間の設定、スタックセルの交換・メンテナンスの効果等>
調製例3で調製した3次元セルモジュール10は、「9個のスタックセルからなる2次元水電解用スタックセル群」ごとに、図6に示したような、気体や水のバルブと電源の制御が可能であったため、上記した休止時間やスタックセル交換時間を設けても、27個のスタックセルからなる3次元セルモジュール10全体として運転が停止することがなかった。
また、図5に示すように、「9個のスタックセルが配置された2次元水電解用スタックセル群」を1つの載置ボード12に乗せて、該載置ボード12をレール移動できるようにしたので、スタックセル交換・メンテナンスが容易となった。
しかも、「9個のスタックセルが配置された2次元水電解用スタックセル群」ごとに休止時間を設けることによって、該休止時間を利用して、9個のスタックセル交換・メンテナンスが同時にでき、その結果、水素獲得が高効率になると共に、9個のスタックセルがほぼ同時に寿命が来るので、次回のスタックセル交換・メンテナンスが更に効率的になった。すなわち、寿命がまだ長くあるスタックセルを交換してしまうリスクがなくなった。
本発明の水電解用セルモジュールは、印加電圧を遮断する休止時間を設けるようになっているので、セル寿命を延長することができた。また、本発明のセルモジュールの中の一部である「2次元スタックセル群」ごとに交換やメンテナンスを行えるので、システム全体の停止時間をなくせた。更に、それらを組み合わせることで、例えば、それらを同時刻に行うことで、高効率の水電解が可能となった。
そのため、セルモジュールのシステム全体として、連続運転を維持しつつ、効率的に運転・稼働が可能となるため、水素や酸素を必要とするあらゆる分野に広く利用されるものである。
1 水電解用単セル
2 水電解用電極
3 触媒担持多孔質基体
4 アイオノマー
5 高分子電解質膜(PEM)
6 給電体
7 樹脂槽体
8 双極板
9 水電解用スタックセル
10 水電解用セルモジュール
11 2次元スタックセル群
12 載置ボード
13 レール
14 水素検知器
15 筐体

Claims (9)

  1. 高分子電解質膜(PEM)の両側を水電解用電極で挟んだ構造を水電解用単セルとしたときに、該水電解用単セルを2個以上積層してなる水電解用スタックセルを、3次元に配列してなる水電解用セルモジュールであって、
    該水電解用電極は、触媒が多孔質基体自体の表面から内部にかけて担持されている多孔質基体で構成されているものであり、かつ、アイオノマーが該多孔質基体の表面から内部に向かって充填されているものであり、
    該水電解用スタックセルごとに、又は、該水電解用スタックセルの2次元的な配列部分よりなる2次元水電解用スタックセル群ごとに、又は、該水電解用セルモジュール全体ごとに、水電解用の印加電圧を遮断して電解電流を流さない休止時間を設ける構成になっていることを特徴とする水電解用セルモジュール。
  2. 上記2次元水電解用スタックセル群を構成する水電解用スタックセルの全体が、1個の載置ボードに載置されていて、該載置ボーの単位で移動できるようになっていて、該2次元水電解用スタックセル群ごとに水電解用セルモジュールから引き出せるようになっている請求項1に記載の水電解用セルモジュール。
  3. 上記2次元水電解用スタックセル群の単位で、そこに配列された水電解用スタックセルの全部を点検若しくは交換できるような構成になっている請求項1又は請求項2に記載の水電解用セルモジュール。
  4. 上記休止時間に同期させて、気体及び/又は水のバルブの開閉制御ができるようになっている請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の水電解用セルモジュール。
  5. 上記休止時間を、1時間以上100時間以下の運転時間ごとに、定期的に1回設ける請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の水電解用セルモジュール。
  6. 上記休止時間が、1秒以上120分以下の連続した時間である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の水電解用セルモジュール。
  7. 更に、水素検知器を備え、該水素検知器が水素の漏洩を検知したときに、上記水電解用スタックセルごとに若しくは上記2次元水電解用スタックセル群ごとに、又は、水電解用セルモジュール全体において、水電解用の印加電圧が遮断され、水素配管に設けられた水素バルブが閉じられる構成になっている請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の水電解用セルモジュール。
  8. 水電解用セルモジュール全体が、気体を通過させない筐体で囲まれており、上記水素検知器が該筐体の内部に備えられていて、水素が漏洩したときに確実に上記水素検知器が水素の漏洩を検知できるようになっている請求項7に記載の水電解用セルモジュール。
  9. 請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の水電解用セルモジュールの運転方法であって、
    上記水電解用スタックセルごとに、若しくは、該水電解用スタックセルの2次元的な配列部分よりなる2次元水電解用スタックセル群ごとに、上記休止時間を設ける、又は、該水電解用スタックセルを点検若しくは交換をして、連続運転を途切れさせないようにすることを特徴とする水電解用セルモジュールの運転方法。

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