以下、本発明の実施形態について、図面に従って説明する。
(実施形態1)
図1は、本実施形態の水素供給システムの概略ブロック図である。本実施形態の水素供給システムは、純水の電気分解によって水素ガスと酸素ガスを発生させる水素・酸素発生装置を具備するものであり、このような水素・酸素発生装置は、電解セルを用いて構成された水電解装置1と、該水電解装置1に純水を供給するための純水タンク3と、該純水タンク3から供給される純水を貯留するとともに、貯留された純水に前記水電解装置1が浸漬されるように構成された電解タンク2と、前記水電解装置1で発生した水素を分離して貯留するための水素分離タンク4とを具備して構成されている。
ここで電解タンク2は、上述のように水電解装置1が浸漬されるような状態で純水を貯留するタンクであるが、純水以外の気相部分には、前記水電解装置1で発生した酸素が貯留されるように構成されている。従って本実施形態では、電解タンク2が酸素分離タンクとしての機能を有しているのである。
本実施形態に係る水素供給システムにおいては、水電解装置1を備えた電解タンク2(酸素分離タンク)に対して、純水を供給すべく、純水供給配管部5を介して純水タンク3が接続されている。また、純水供給配管部5には、純水タンク3に貯留された純水を電解タンク2に補給(供給)すべく、補給水ポンプ6が設けられている。純水タンク3には、純水タンク3内の純水貯留量を検知する純水タンク水位計3Lが設けられており、この純水タンク水位計3Lで得られた検知信号は、純水タンク3に純水を供給すべく設けられた純水供給部の純水供給バルブ3Aに送られる。
そして、純水タンク3内の純水貯留量は、純水タンク水位計3Lの検知信号に基づいて、純水供給バルブ3Aを調整することにより、適宜制御される。電解タンク2内には、電解タンク2内の純水貯留量を検知する電解タンク水位計2Lが設けられており、この電解タンク水位計2Lで得られた検知信号は、補給水ポンプに送られる。そして、電解タンク2内の純水貯留量は、電解タンク水位計2Lの検知信号に基づいて、補給水ポンプ6の駆動状態を適宜調整することによって制御される。
また、電解タンク2には、電解タンク2内の純水を循環して再利用すべく、純水循環配管部7が設けられており、この純水循環配管部7は、電解タンク2内の純水を電解タンク2外に取り出した後に、再び、水電解装置1(を構成する電解セル)の純水供給孔(後述する)に供給可能であるように、配管構成されている。そして、この純水循環配管部7には、純水を循環させるための循環水ポンプ8、純水の熱交換を行うため(純水の温度を低下させるため)の熱交換器9、純水の純度を高めるためのポリシャ(polisher)10、及び純水の濾過等を行うためのフィルタ11等が設けられている。
ポリシャ10としては、例えば、イオン交換樹脂が用いられる。さらに、この純水循環配管部7には、純水循環配管部7中の純水の水質(電気伝導度)を監視して、必要な場合(所定の電気伝導度(例えば、0.2μS/cm)を超えた場合等)には警報を発する水質警報手段12、及び純水循環配管部7中の純水の温度を監視して、必要な場合(所定の温度範囲(例えば、40〜90℃)を超えた場合等)には警報を発する水温警報手段13が設けられている。また、この純水循環配管部7を循環される純水は、酸素ガスを溶存した純水であるため、純水中から純水循環配管部7中に溶存酸素が排出される場合がある。このように、酸素ガスが排出されると、純水循環配管部7に設けられている循環水ポンプ8、ポリシャ10、或いはフィルタ11等に酸素ガスが溜まり、かかる酸素ガスが純水の循環に不具合を生じさせるおそれがある。そこで、本実施形態においては、循環水ポンプ8、ポリシャ10、およびフィルタ11の少なくともいずれかの箇所にガス抜きが設けられている。
電解タンク2内の水電解装置1にて生成された水素ガスは、若干の純水と共に、水素ガス搬送配管部14を介して、水素分離タンク4に送られる。この水素ガス搬送配管部14には、バルブ18が設けられると共に、水素ガス搬送配管部14上のバルブ18を迂回すべく、バイパス配管部19が設けられている。そして、このバイパス配管部19には、逆止弁20が設けられている。
水素分離タンク4には、水素分離タンク4内の純水貯留量を検知する水素分離タンク水位計4Lが設けられており、この水素分離タンク水位計4Lで得られた検知信号は、水素分離タンク4から純水タンク3に対して純水を戻すべく(純水を排出して再利用すべく)設けられた純水戻り配管部15の純水排出バルブ4Aに送られる。そして、水素分離タンク水位計4Lにて、水素分離タンク4内に所定量以上の純水が貯留されていると判断されれば、水素分離タンク水位計4Lの検知信号に基づいて、純水排出バルブ4Aを調整することにより、適宜、水素分離タンク4内の純水貯留量が制御されることとなる。
また、純水戻り配管部15内を流通する純水は、若干ではあるが、水素を溶存している。そこで、本実施形態においては、純水戻り配管部15にガススクラバ16を配し、このガススクラバ16には水素放出配管部17が接続されている。従って、本実施形態においては、水素分離タンク4から排出される純水に溶存している水素が、適当に除去されることとなる。この水素放出配管部17は、バルブ41を介して圧力交換器29に接続されている。
水素分離タンク4に貯留されている水素ガスは、水素ガスのユースポイント(図示せず)に対して、水素ガス供給配管部21を介して搬送供給される。そして、この水素ガス供給配管部21には、水素ガスの供給量を気液分離タンクの圧力に応じて調整する水素ガス供給バルブ22と、水素ガスを除湿するための水素ガス除湿手段23と、水素ガスの流量を定格流量に維持するための水素ガス流量制御手段24とが設けられている。この水素ガス流量制御手段24は、水素ガス供給バルブ22を介して水素ガス供給配管部21を流通している水素ガスの流量を検知する流量検知手段24Aと、この流量検知手段24Aで得られた検知信号に基づいて制御可能な定格流量制御バルブ24Bとを用いて構成されている。
ここで、水素ガス除湿手段23は、例えば、中空糸膜等を用いて構成されている。そして、この水素ガス除湿手段23においては、中空糸膜の内部に水素ガスを流通させ、中空糸膜の外部に乾燥空気を流通させることによって、水素ガスの除湿を行っている。尚、図1には特に示していないが、より高純度(例えば6N(99.9999)以上)の水素ガスを得ようとする場合には、水素ガス除湿手段23の後流側、または水素ガス除湿手段の換わりに、ゼオライト、活性アルミナ等のモレキュラシーブを用いて構成された精製器を設ける構成が好ましい。本実施形態は、中空糸膜等を用いた水素ガス除湿手段23(或いは精製器)によって水素ガスの除湿を行う構成であるので、従来において必要であったパラジウム精製器等を用いる必要がなくなる。また、必要に応じて上記精製器を組み合わせて使用してもよい。
また、水素ガス供給バルブ22は、後述すべく、水素分離タンク4の圧力に基づいて制御される。このために、水素分離タンク4には、第一の圧力検知手段25が設けられている。さらに、水素分離タンク4には、第一のリリーフ弁26を有する第一のリリーフ配管部27が設けられている。そして、この第一のリリーフ弁26は、後述すべく、電解タンク2の圧力と、水素分離タンク4の圧力とに基づいて制御されるように構成されている。
また、電解タンク2内の水電解装置1にて生成された酸素ガスは、電解タンク2の上部に貯留され、酸素ガスのユースポイント(図示せず)に供給する場合には、酸素ガス供給配管部31を介して搬送供給される。そして、この酸素ガス供給配管部31には、酸素ガスの供給量を調整する酸素ガス供給バルブ32と、酸素ガスを除湿するための酸素ガス除湿手段33と、酸素ガス供給配管部31を流通している酸素ガス中の水素濃度を検出するための水素ガス検出手段34とが設けられている。ここで、酸素ガス供給バルブ32は、後述すべく、電解タンク2の圧力と、水素分離タンク4の圧力とに基づいて制御される。また、この酸素ガス供給バルブ32は、必要に応じて、電解タンク2の圧力(酸素ガスの圧力)のみに基づいて制御される場合もある。このために、電解タンク2には、第二の圧力検知手段35が設けられている。また、酸素ガス除湿手段33は、例えば、中空糸膜等を用いて構成されている。そして、この酸素ガス除湿手段33においては、中空糸膜の内部に酸素ガスを流通させ、中空糸膜の外部に乾燥空気を流通させることによって、酸素ガスの除湿を行っている。また、図示しないが、水素ガスと同様に流量制御手段を設けた構成としてもよい。
さらに、電解タンク2には、第二のリリーフ弁36を有する酸素放出配管部37が設けられている。そして、この第二のリリーフ弁36は、後述すべく、電解タンク2の圧力と、水素分離タンク4の圧力とに基づいて制御されるように構成されている。そして酸素放出配管部37は、バルブ42を介して圧力交換器29に接続されている。尚、酸素放出配管部37には、図示しないが、大気開放の酸素放出用配管及び制御バルブが別途設けられており、圧力調整や異常時に放出される酸素は圧力交換器29へ供給せずに、そのまま大気放出できる構成となっている。
また、本実施形態においては、第一の圧力検知手段25の検知値と第二の圧力検知手段35の検知値とを比較して、所定の信号を種々のバルブ26,36に送り得る差圧検知手段45が設けられている。さらに、本実施形態においては、第一の圧力検知手段25からの圧力検知信号を受けて、水電解装置1に対して適切な電流を供給する電流値制御手段28が設けられている。なお、差圧検知手段45で得られた信号は、必要に応じて、バルブ22,32の制御を行う際にも用いられる。
上述のように、本実施形態の水素供給システムは、水素・酸素発生装置を具備し、その水素・酸素発生装置は上述のような水電解装置1を具備して構成されているが、その水電解装置1に純水と所定の電流とを供給することによって水素及び酸素が発生することとなる。
図2は、水電解装置を構成する電解セルの一例の概略断面図である。図2において、52は電極板であり、53は固体電解質膜である。54は多孔質給電体であり、55はガスケット、56は保護シートである。また57は水素ガス取り出し経路、57aは水素ガス取り出し通路、58は酸素ガス取り出し経路、58aは酸素ガス取り出し通路である。59、59は端板である。この図では純水供給経路は示されていないが、酸素ガス取り出し経路58と同様の構成によって形成されている。上記のような各部品類をボルト60によって絶縁板61を介して両端板59、59間で挟持するように締結することによって、電解セル(水電解装置1)が形成されているのである。尚、多孔質給電体54の部分が陽極部(酸素発生室A)及び陰極部(水素発生室C)となる。
固体電解質膜53としては、固体高分子電解質を膜状に形成したものを両面に貴金属、特に白金からなる多孔質層を化学的に無電解メッキによって形成した固体電解質膜を使用するのが好ましい。固体高分子電解質としては、カチオン交換膜(フッ素樹脂系スルフォン酸カチオン交換膜であり、たとえばデュポン社製「ナフィオン117」が好ましい。
本実施形態においては、上述のように、図2に示す電解セルにて構成された水電解装置1を用いて水素・酸素発生装置が形成されている。従って、図1に示すべく、電解タンク2内に設けられた水電解装置1においては、電解タンク2内の純水が、純水供給経路を介して酸素発生室Aに供給される。純水は、Oリング等によって、水素発生室Cへの流入が阻止される。
酸素発生室Aで発生した酸素ガスは、酸素ガス取り出し通路58a及び酸素ガス取り出し経路58を介して電解タンク2中に放出され、電解タンク2中から酸素ガス供給配管部31等を介して酸素ガス使用箇所等に供給される。水電解装置1中において、酸素ガスは、Oリング等によって、水素発生室Cへの流入が阻止される。
また、水素発生室で発生した水素ガスは、水電解装置1(電解セル)内の水素ガス取り出し通路57a、水素ガス取り出し経路57、及び水素ガス搬送配管部14を介して、水素分離タンク4に搬送される。水素ガスは、Oリング等によって、酸素発生室Aへの流入が阻止される。
本実施形態に係る水素供給システムは、上述した図1及び図2に示すように構成されており、かかるシステムにおいては、適切に純水供給制御、電流値制御等が行われている。
図3は、本実施形態の水素供給システムを運転する際のフローチャートを示したものである。以下、図3等の必要な図面を用いて、制御方法を具体的に説明する。図3に示すように、本実施形態に係る水素供給システムは、まず、ステップ601において、電解タンク2に対する純水の供給が行われる。具体的には、補給水ポンプ6を駆動させて、純水タンク3から電解タンク2に対して純水を供給する。
次に、ステップ602においては、電解タンク2内の純水の貯留量(水位)が、電解タンク水位計2Lを用いて検知される。
次に、ステップ603においては、ステップ602における水位検知信号に基づいて、電解タンク2内の水位が所定量であるか否かの判断が行われる。そして、ここで、水位が所定量に達している場合には(ステップ603にて「Yes」と判断された場合には)、次いでステップ604の処理が行われる。また、水位が所定量に達していない場合には(ステップ603にて「No」と判断された場合には)、補給水ポンプ6を駆動させた状態で、再度ステップ602以降の処理が行われる。
次に、ステップ604においては、ステップ603の判断に基づいて、純水タンク3から電解タンク2に対する給水が停止される。すなわち、補給水ポンプ6を停止させる。次に、ステップ605においては、電解セル1へ供給される循環水量の検知が行われる。すなわち、このステップ605においては、電解セル1に対する通電前に、循環水ポンプ8を駆動させ、電解セル1に対して純水を供給しているので、その循環水量を検知する。
次に、ステップ606においては、ステップ605における循環水量検知信号に基づいて、電解セル1に対して、所定水量が供給されているか否かの判断が行われる。そして、ここで、循環水量が所定量に達している場合には(ステップ606にて「Yes」と判断された場合には)、次いでステップ607の処理が行われる。また、循環水量が所定量に達していない場合には(ステップ606にて「No」と判断された場合には)、ステップ607に進むことなく、再度ステップ605以降の処理が行われる(すなわち、循環水ポンプ8の駆動および循環水量の検知等が継続して行われる)。
次に、ステップ607においては、水電解装置1に対する通電が開始される。すなわち、本実施形態の水素供給システムにおいては、水電解装置(電解セル)1内に所定量の純水が循環された状態になってから、はじめて、水電解装置1に対する電流の供給が開始される。このように、循環水流量を確認した後に通電を開始するのは、水電解装置1に対して純水が十分に補給されていない状態で通電を行うと、水電解装置1を構成する固体電解質膜53が破損する可能性があるからである。
次に、ステップ608においては、図1に示された水素供給システムの水素・酸素発生装置による連続した水素・酸素発生工程が行われる。ここで、本実施形態の水素供給システムは、本来的に水素の供給を目的としているが、本実施形態では、既に説明したように酸素も供給しうるように構成されているので、以下のステップにおいては、本実施形態の水素供給システムにおける水素・酸素発生工程を、便宜上、水素・酸素供給工程として説明する。
次に、ステップ609においては、水素・酸素供給工程を終了するか否かの判断が行われる。そして、ここで、水素・酸素供給工程を終了すると判断された場合には(ステップ609にて「Yes」と判断された場合には)、次いでステップ610の処理が行われる。また、水素・酸素供給工程を終了しないと判断された場合には(ステップ609にて「No」と判断された場合には)、再度、ステップ608以降の処理が行われる。
次に、ステップ610においては、ステップ609における水素・酸素供給工程の終了の判断に基づいて、水電解装置1に対する通電を終了させる。また、この図3のフローチャートには特に示していないが、ステップ610においては、水電解装置1が純水に十分満たされた状態で、通電を終了させる。具体的には、水電解装置1に対する通電を停止してから、数秒(30秒程度)後に循環水ポンプ8を停止している。このように通電停止後に所定時間循環ポンプを運転することにより、電解装置内に酸素ガスが滞留することを防止することができ、その結果、固体電解質膜53に対して余計な負荷をかけることがない。また、図3におけるステップ601から604までについてはステップ605以降の動作と平行に行なう構成としてもよい。
以上、図3におけるステップ601からステップ610までの工程に基づいて、本実施形態に係る水素・酸素供給システムの運転が制御される。しかしながら、上述した図3のフローチャートにおいては、水素・酸素供給工程の説明が不充分であるため、次に、ステップ608で行われる水素・酸素供給工程を具体的に説明する。
ステップ608にて行われる水素・酸素供給工程の中には、電解タンク2に対する純水供給制御、および水電解装置1に対する電流値制御等があげられる。以下、詳細に説明する。
図4は、本実施形態の純水供給制御の一態様のフローチャートを示したものである。図4に示すように、本実施形態においては、先ずステップ701において、電解タンク2内の純水貯水量の検知が行われる。ここでは、電解タンク水位計2Lを用いて、電解タンク2内の純水の貯留量(水位)が検知される。
次に、ステップ702においては、ステップ701における水位検知信号に基づいて、電解タンク2内の水位が所定値以下であるか否かの判断が行われる。そして、ここで、水位が所定値以下であると判断された場合には(ステップ702にて「Yes」と判断された場合には)、次いでステップ703の処理が行われる。また、水位が所定値以下でない場合には(ステップ702にて「No」と判断された場合には)、再度、ステップ701以降の処理が行われる。
次に、ステップ703においては、ステップ702の判断に基づいて、補給水ポンプ6の駆動が開始される。すなわち、補給水ポンプ6を駆動させて、純水供給配管部を介して、純水タンク3から電解タンク2に対して純水を補給する。次に、ステップ704においては、電解タンク2内の純水貯水量の検知が行われる。ここでは、ステップ701と同様に、電解タンク水位計2Lを用いて、電解タンク2内の純水の貯留量(水位)が検知される。
次に、ステップ705においては、ステップ704における水位検知信号に基づいて、電解タンク2内の水位が所定範囲内にあるか否かの判断が行われる。そして、ここで、水位が所定範囲内にあると判断された場合には(ステップ705にて「Yes」と判断された場合には)、次いでステップ706の処理が行われる。また、水位が所定範囲内にないと判断された場合には(ステップ705にて「No」と判断された場合には)、補給水ポンプ6を駆動させた状態で、再度、ステップ704以降の処理が行われる。
次に、ステップ706においては、ステップ705の判断に基づいて、純水タンク3から電解タンク2に対する給水が停止される。すなわち、補給水ポンプ6を停止させる。そして、このステップ706の後は、再度、ステップ701以降の処理が行われる。
以上のステップ701からステップ706の工程が、本実施形態の水素供給システムにおける、基本的な純水供給(補給)制御である。なお、この図4では特に示さなかったが、本実施形態においては、電解タンク2内の純水が、電解タンク2に対して閉回路として設けられた純水循環配管部7を介して、循環されつつ、水電解装置1に供給されるべく構成されている。
具体的には、本実施形態においては、純水循環配管部7に設けられた循環水ポンプ8によって、電解タンク2内の純水が循環させられ、純水循環配管部7に設けられた熱交換器9、ポリシャ10、およびフィルタ11を介して、水電解装置1に純水が供給される。なお、この純水循環配管部7には、水質警報手段12、水温警報手段13、および循環水量警報手段も設けられている。
本実施形態においては、このように種々の要素を設けた閉回路たる純水循環配管部7を介して、水電解装置1に純水が供給されるので、適切な性状を有する純水の供給が可能となる。すなわち、熱交換器9を設けたことにより、水電解装置1の発熱によって温度が上昇した純水の熱交換を行うことが可能となるので、効率よく水電解装置1を駆動させることができる。また、ポリシャ10を設けたことにより、純水の純度を高めた状態で、水電解装置1に対して純水を供給可能となる。また、フィルタ11を設けたことにより、純水中に含まれた不純物を除去して、水電解装置1に対して純水を供給することができる。さらに、本実施形態においては、水質警報手段12および水温警報手段13が設けられているので、上述した熱交換器9、ポリシャ10、およびフィルタ11に何等かの不具合が生じた(あるいは生じそうであった)としても、その旨を検知して、不適切な(純度が低いあるいは不純物が多い等の)純水が供給される前に、熱交換器9、ポリシャ10、あるいはフィルタ11の不具合に対処可能であって、必要に応じて容易に交換等を行うことができる。
また、本実施形態においては、循環水量警報手段が設けられているので、循環水量が処理量(所定の処理量)を下回って、電解セルが損傷するのを防止している。つまり、電解セルへの供給水量が不足すると、電解セル内での水の流れが不均一となり、局部的な発熱によって固体電解質膜が損傷するおそれがあるが、本実施形態は、循環水量警報手段を設けることによって、循環水量の低下を事前に察知して、係る問題を効果的に解決することができる。したがって、本実施形態によれば、継続的に、適切な性状を有する純水を水電解装置1に対して供給することができる。また、本実施形態においては、先に述べたように、純水循環配管部7の適切な箇所にガス抜きを設けているので、純水循環配管部7中の酸素ガスが純水の循環に不具合を生じさせないように、必要に応じて、適宜、ガス抜きを行うことができる。
このように、本実施形態においては、純水の水質や温度を制御して、適切な性状を有する純水を水電解装置1に供給しているので、固体電解質膜53の寿命をのばすことが可能となると共に、水電解装置1における電解効率をも向上させることができる。
また、本実施形態においては、水素分離タンク4にて水素ガスと分離された純水についても、純水戻り配管部15(および純水タンク3等)を介して、再利用可能(水電解装置1に対して供給可能)であるべく構成されている。なお、本実施形態においては、上述したように、純水タンク3と電解タンク2とが純水供給配管部5にて接続され、電解タンク2中の水電解装置1と水素分離タンク4とが水素ガス搬送配管部14にて接続され、水素分離タンク4と純水タンク3とが純水戻り配管部15にて接続されている。すなわち、純水タンク3、電解タンク2、および水素分離タンク4は、純水供給配管部5、水素ガス搬送配管部14、および純水戻り配管部15によって、閉じた回路として構成されている。
水素分離タンク4から純水戻り配管部15を用いて搬送される純水には、水素が溶存されており、もし、この閉回路中の循環を連続して繰り返すとすれば、その溶存率は高まる一方となり、システム構成上好ましくない。つまり、水素分離タンク4から排出される純水中には、水素発生圧力下での溶存水素が含まれており、これをそのまま純水タンク(補給水タンク)3に戻した場合、圧力が大気圧に開放されるため、減圧に伴い、差圧分の溶存水素がガス化して放出される。そうすると、純水タンク3内で水素と空気とが混合し、徐々に水素濃度が上昇して、種々の不具合を生ずる可能性がある。そこで、本実施形態に係る水素・酸素供給システムは、係る純水戻り配管部15の所定箇所にガススクラバ16を配して、上述した不具合を解消すべく構成されている。
このように、溶存水素除去のために、ガススクラバ16には、前記水素分離タンク4から純水が供給され、ガススクラバ16で減圧され、純水内に溶解していた水素ガスが放出される。放出された水素ガスは水素放出配管部17を介して圧力交換器29に供給される。そして、この圧力交換器29には、前記電解タンク2から放出された酸素ガスも供給される。
本実施形態の水素供給システムの水素・酸素発生装置においては、水素分離タンク4内の水素ガスの圧力が、酸素分離タンクである電解タンク2内の圧力よりもわずかに高くなるように設定されているが、圧力交換器29に供給される水素ガスは、ガススクラバ16内で減圧されているので、水素放出配管部17を介して圧力交換器29に供給される水素ガスの圧力は、酸素放出配管部37を介して圧力交換器29に供給される酸素ガスの圧力よりも低くなっている。
従って、圧力交換器29に供給される水素ガスと酸素ガスとは、相互に圧力交換されることになる。つまり、高圧側の酸素ガスによって、低圧側の水素ガスが昇圧されることとなるのである。この結果、従来においてガススクラバ16内で減圧されて大気解放により廃棄されていた純水中に溶存していた水素ガスは、従来において酸素放出配管部37から放出されて廃棄されていた酸素ガスによって昇圧されるので、前述のように廃棄していた水素ガスを、各水素ガスのユースポイントにおいて利用することができ、また酸素ガスは結果的に水素ガスの再利用のために活用されることとなる。
ここで、圧力交換器29としては、たとえは図5のような増圧弁のようなものが用いられる。すなわち、この圧力交換器29は、ケーシング43内にシリンダ44が往復動可能に設けられた構成からなるもので、そのシリンダ44によって水素用隔室46と酸素用隔室47とに区画されている。そして、水素側の流入用バルブ48aを開、流出用バルブ48bを閉の状態とし、酸素側の流入用バルブ49aを閉、流出用バルブ49bを開の状態として、水素ガスをケーシング43の水素用隔室46内に供給する。これによりシリンダ44は図5の矢印イ方向に移動する。
次に、図6に示すように水素ガスが水素用隔室46内にある程度貯留された状態となったとき、水素側の流入用バルブ48aと流出用バルブ48bの双方を閉の状態とし、酸素側の流入用バルブ49aを開、流出用バルブ49bを閉の状態として、酸素ガスをケーシング43の酸素用隔室47内に供給する。このとき、水素用隔室46内は閉塞状態とされているが、水素用隔室46内の水素ガスの圧力よりも酸素用隔室47内に供給される酸素ガスの圧力の方が高いため、シリンダ44は図6の矢印ロ方向に移動する。シリンダ44が移動するにつれて酸素用隔室47の容積が増加するとともに水素用隔室46の容積が減少するので、酸素ガスの圧力が徐々に低くなるとともに水素ガスの圧力が徐々に高くなり、最終的には酸素用隔室47内の圧力と水素用隔室46内の圧力が平衡状態となる(図7)。
その後、水素側の流出用バルブ48bを開の状態とすると、水素用隔室46が解放状態となるので、図8に示すようにシリンダ44が矢印ハ方向に移動して、水素ガスが排出されることとなる。排出された水素ガスは、上記のような平衡状態の圧力を維持したまま、各ユースポイントに供給されることとなるのである。尚、上記図5の状態で、水素ガスを水素用隔室46内に供給してシリンダ44を移動させる代わりに、酸素用隔室47内を吸引してシリンダ44を同方向に移動させることも可能である。尚、圧力変換器としては、本実施形態のものに限定されず、ガスの圧力を利用して、そのガス圧力よりも低圧のガスを昇圧させうるものであればよい。
上述のように、本実施形態においては、従来においてともに廃棄されていた溶存水素ガスと酸素ガスとを再利用することができるため、水素・酸素供給装置において、やむを得ず生じていたエネルギーの損失を解消することができるに至ったのである。
次に、水電解装置1に対する電流値制御について説明する。図9は、本実施形態に係る電流値制御の一態様のフローチャートを示したものである。
図9に示すように、本実施形態においては、先ずステップ801において、水素分離タンク4に設けられた第一の圧力検知手段25を用いて、水素ガスの圧力を検知する。ここで、水素分離タンク4内の水素ガスの圧力は、水素ガス発生量(水電解装置1で発生し、水素ガス搬送配管部14を介して水素分離タンク4に搬送される水素ガス量)と、水素ガス供給量(水素ガス供給配管部21を介して、水素分離タンク4から水素ガスのユースポイントに供給される水素ガス量)とのバランスによって変動するものである。
次に、ステップ802においては、ステップ801における圧力検知信号に基づいて、水素分離タンク4内の水素ガス圧力が所定値以下であるか否かの判断が行われる。水素ガス圧力が所定値以下になると、必要とされる水素ガスの供給が困難となるからである。そして、ここで、水素ガス圧力が所定値以下であると判断された場合には(ステップ802にて「Yes」と判断された場合には)、次いでステップ803の処理が行われる。また、水素ガス圧力が所定値以下ではないと判断された場合には(ステップ802にて「No」と判断された場合には)、再度、ステップ801以降の処理が行われる。
次に、ステップ803においては、ステップ802の判断に基づいて、第一の圧力検知手段25から電流値制御手段28に対して圧力検知信号を送り、この圧力検知信号に基づいて、電流値制御手段28から水電解装置1に対して適切な値の電流が供給される。ここで、供給する電流は、必要とする供給水素ガス量(あるいは水素ガス圧等)、および水素ガス圧変動率(単位時間当たりの水素ガス圧変動量)等によって、適宜、適切な値が選択されて水電解装置1に供給される。
次に、ステップ804においては、水素分離タンク4に設けられた第一の圧力検知手段25を用いて、水素ガスの圧力を検知する。
次に、ステップ805においては、ステップ804における圧力検知信号に基づいて、水素分離タンク4内の水素ガス圧力が所定範囲内にあるか否かの判断が行われる。そして、ここで、水素ガス圧力が所定範囲内にあると判断された場合には(ステップ805にて「Yes」と判断された場合には)、次いでステップ806の処理が行われる。また、水素ガス圧力が所定範囲内にないと判断された場合には(ステップ805にて「No」と判断された場合には)、再度、ステップ803以降の処理が行われる。
次に、ステップ806においては、ステップ805の判断に基づいて、水電解装置1に対する電流値制御手段28からの電流の供給が停止される。そして、このステップ806の後は、再度、ステップ801以降の処理が行われる。
本実施形態においては、上述したように、ステップ801からステップ806の工程に示すべく、水電解装置1に対して、電流が供給される。すなわち、本実施形態においては、水素ガス発生量と水素ガス供給量とのバランスを第一の圧力検知手段25を用いて検知し、この検知信号を電流値制御手段28に送って、検知信号に応じた(圧力変動に応じた)電流値が水電解装置1に供給されている。なお、本実施形態においては、電流値制御手段28としては、整流器等が用いられる。すなわち、本実施形態においては、整流器等を用いて、整流器PID制御が行われる。具体的には、この電流値制御手段28は、第一の圧力検知手段25にて得られる圧力検知信号が送られるシーケンサまたは調節計と、整流器等とを用いて構成されており、水素の現在の圧力値(圧力検知信号)をシーケンサまたは調節計に送ってPID制御し、ここで得られた指令値を整流器に送り、この指令値に基づいた電流を整流器から電解セルに供給して、電解セル(水電解装置)の制御が行われている。
本実施形態の水素供給システムにおいては、閉回路たる純水循環配管部7を介して、水電解装置1に対して純水が供給されるため、水電解装置1および電解タンク2は、比較的高い密閉性を維持することができる。つまり、水電解装置1を駆動させなくとも、所定の水素ガス圧力を得ることができる。よって、水素ガスの圧力に特に変動がない場合(水素ガスが使用されていない場合)には、水電解装置1に対する電流の供給を停止することも可能である。従って、本実施形態の水素供給システムにおいては、適切な圧力の水素等の供給を行いつつ、水電解装置1を0〜100%の範囲で駆動させることが可能となる。
本実施形態ではPID制御により整流板の制御を行なうこととしたが、本実施形態に限定されず、ON/OFF運転による制御を行なっても良い。
また、本実施形態の水素供給システムにおいては、第一の圧力検知手段25によって水素分離タンク4内の水素ガスの圧力を検知し、第二の圧力検知手段35によって電解タンク2内の酸素ガスの圧力を検知して、それぞれの検知信号が差圧検知手段45に送られる。そして、この差圧検知手段45で得られる水素ガス圧力と酸素ガス圧力との差圧信号に基づいて、水素ガス供給バルブ22、第一のリリーフ弁26、酸素ガス供給バルブ32、および第二のリリーフ弁36が、適宜調整される。本実施形態の水素供給システムにおいては、固体電解質膜を透過して酸素ガスが水素ガスに混入することを防止し、得られる水素ガスの純度を高くしうる点において水素ガス圧力を酸素ガス圧力よりも若干高く設定している。すなわち、本実施形態においては上述した差圧信号に基づいて、水電解装置1内にて、酸素ガス圧力よりも水素ガス圧力の方が若干高くなるよう、各バルブ26、36の調整が行われている。
尚、要すれば、逆に酸素ガスの圧力を水素ガスの圧力に比べて若干高いものとすることもできる。このように、水素ガスと酸素ガスとの間に設ける若干の圧力差としては、固体電解質膜に加わる負荷を抑制しうる点から通常1MPa以下とされ、好ましくは0.05〜0.4MPa、さらに好ましくは0.05〜0.1MPaである。
さらに、本実施形態においては、上述した各リリーフ弁26,36が、インターロックとしても機能することとなる。すなわち、差圧検知手段45で得られる差圧信号に何等かの異常が生じた場合には、固体電解質膜53等を保護するために、各リリーフ弁26,36を適切に調整して、水素ガスおよび酸素ガスの少なくとも一方を各リリーフ配管部27、酸素放出配管部37を介して放出する。
特に、本実施形態では、水素ガスがユースポイントに供給されて使用されることから、主として酸素ガス側のリリーフ配管部である酸素放出配管部37から酸素ガスが放出される。すなわち、水素分離タンク4内の水素ガスが各ユースポイントに供給されることで、水素分離タンク4内の圧力が下がり、酸素の分離タンクである電解タンク2内との圧力のバランスの均衡が崩れるが、酸素放出配管部37から酸素ガスが放出されることで、圧力のバランスの均衡を維持することができるのである。
しかも、このような圧力のバランスの均衡を維持するために酸素ガス放出部37から放出され、本来であれば廃棄されていた酸素ガスを、上記のような水素の昇圧、再利用のために用いることができるので、エネルギー損失防止の観点からもきわめて有用である。
尚、リリーフ弁26,36を用いたインターロックは、上述した構成に限定されるものではない。したがって、例えば、各リリーフ弁26,36としては、ばね逃がし弁等を用いることが可能であり、各リリーフ配管部27,37内の圧力が、所定の圧力を超えた場合には、各リリーフ弁26,36が適切に開放されるべく構成されていてもよい。
また、本実施形態の水素供給システムにおいては、電解タンク2から酸素使用箇所(図示省略)に対して酸素ガスを供給するために設けられた酸素ガス供給配管部31に、水素ガス検出手段34が設けられている。この水素ガス検出手段34は、酸素ガス中の水素濃度を検出すべく、熱伝導率式、密度式等のオンラインガス分析計等を用いて構成されている。本実施形態によれば、この酸素ガス供給配管部31において酸素ガス中の水素ガス濃度を検出することによって、固体電解質膜53におけるピンホールの発生等を検知することができる。すなわち、本実施形態によれば、上述したように、水電解装置1内の圧力は、酸素ガス発生側(酸素発生室側)よりも水素ガス発生側(水素発生室側)の方が、高くなるように構成されているため、固体電解質膜53にピンホール等が発生すれば、水素発生室から酸素発生室に対して水素ガスが混入し、水素ガスが混入した酸素ガスが、酸素ガス供給配管部31を介して供給されることとなる。したがって、本実施形態によれば、図1に示すべく、酸素ガス供給配管部31に水素ガス検出手段34を設けて、酸素ガス中の水素ガス濃度を監視することによって、固体電解質膜53の破損(ピンホール)等を早期に発見して、システムの保守管理を効果的に行うことが可能となる。
この水素ガス検出手段の設置場所は本実施例の部位に特定されず、たとえば電解タンク2に濃度測定用のガス取り出し配管を設け、その配管に水素ガス検出手段を設置してもよい。
さらに、本実施形態の水素供給システムにおいては、水素分離タンク4から水素のユースポイント(図示せず)に対して水素ガスを供給するために設けられた水素ガス供給配管部21に、水素ガス流量制御手段24が設けられている。この水素ガス流量制御手段24は、上述のように、流量検知手段24Aと定格流量制御バルブ24Bとを用いて構成されている。
そして、この流量検知手段24Aは、水素ガス供給配管部21中を流れる水素ガスの流量を常時監視して、この水素ガスの流量に応じて、定格流量制御バルブ24Bに対し適切な制御信号を送信すべく構成されている。すなわち、本実施形態によれば、水素ガス供給配管部21の後流側にて(すなわち、水素ガスのユースポイントにて)大量の水素ガスが使用されたとしても、水素ガス供給配管部21中を流れる水素ガスが定格流量を超える前に、流量検知手段24Aから定格流量制御バルブ24Bに対して制御信号が送られ、定格流量以上の水素ガスが流れないように、定格流量制御バルブ24Bが調整される。
従って、本実施形態によれば、水素ガス供給配管部21の後流側における水素ガス使用量がどのように変動したとしても、水素ガス供給配管部21にて定格流量以上の水素ガスが流れることはないので、水素ガスの品質を一定に維持することができる。このような水素ガス流量制御手段24を有する構成によれば、ユーザがバッファタンク等を用いる場合における不具合を効果的に防止可能である。具体的には、バッファタンクを用いるケースでは、水素の使用量が平常時とピーク時とで大きく変動する場合がある。
このような場合、ピーク時の使用量に合わせて水素・酸素供給システムを構成すると、大容量のものとなり、稼働率が低下し、経済性も悪い。このため、バッファタンクの圧力に幅をもたせて使用している(例えば、0.9MPaから0.4MPaの幅で使用している)。この間は、水電解装置1の定格発生量以上のガスを使用することになる。このような構成において、水電解装置1を定格運転するためには、本実施形態に示すべく、定格以上のガスが流れないように、流量制御を行う必要がある。これにより、水電解装置1が安定して稼動を続けると共に、後段の除湿器入口のガス性状(圧力等)も一定に制御でき、供給ガス品質を一定に維持することができる。また、このような構成であれば、水電解装置(電解セル)1の性能以上の使用をも防止することが可能となるので、システムの長寿命化を図ることもできる。
また、本実施形態の水素供給システムにおいては、水電解装置1と水素分離タンク4との間に設けられた水素ガス搬送配管部14には、バルブ18が設けられており、さらに、水素ガス搬送配管部14上のバルブ18を迂回すべく、バイパス配管部19が設けられている。そして、このバイパス配管部19には、逆止弁20が設けられている。ここで、逆止弁20は、所定値以上の圧力が作用しない場合には開放せず、水電解装置1から水素分離タンク4に対して水素ガスが流通しないように構成されている。すなわち、本実施形態は、所定値以上(例えば、0.1MPa以上)の圧力が作用したときに、はじめて逆止弁20が開放されて、バイパス配管部19を介して、水電解装置1から水素分離タンク4に対して水素ガスが流通すべく構成されている。
従って、本実施形態の水素供給システムによれば、バイパス配管部19に所定値以上の圧力が作用した場合には、逆止弁20を介して、水素ガスの搬送が行われることとなる。よって、逆止弁20が開いて、水素ガス搬送配管部14、バイパス配管部19、および逆止弁20を介して、水素ガスを適切に流通させることが可能となるので、水電解装置1を構成する固体電解質膜53の破損等を効果的に防止することができる。また、通常時は閉じているため、運転停止時に水素ガスが気液分離タンクから水電解装置へ逆流することを防止することができる。また、バルブ18は通常閉にし、装置メンテナンスや装置内部を窒素ガス等により置換する際に開にすることで、取り扱いを容易にし、上記同様に固体電解質膜の破損等を効果的に防止することが可能となる。
さらに、本実施形態の水素供給システムは、種々の検知手段等を用いて、ガス圧力および各タンク2,4内の水位をそれぞれ所定値となるべく制御可能に構成されている。具体的には、電解タンク2は、図1に示す構成においては、第二の圧力制御手段35、差圧検知手段45、および第二のリリーフ弁36等を用いてタンク内圧力が所定値となるべく制御されている。また、電解タンク水位計2Lおよび補給水ポンプ6を用いてタンク内水位が所定値となるべく制御されている。
そして、水素分離タンク4は、第一の圧力制御手段25、差圧検知手段45、および第一のリリーフ弁26等を用いてタンク内圧力が所定値となるべく制御されており、また、水素分離タンク水位計4Lおよび純水排出バルブ4Aを用いてタンク内水位が所定値となるべく制御されている。さらに、水電解装置1内における酸素発生室Aと水素発生室Cとの圧力についても、先に述べたように、適切に所定値となるべく制御されている。本実施形態においては、以上のように、各ガス圧力および各タンク2,4内の水位をそれぞれ所定値となるべく制御可能である。すなわち、本実施形態に係る水素・酸素供給システムは、一定の条件に基づいて、運転可能に構成されている。
従って、本実施形態に係る水素・酸素供給システムは、基本的に、一定の条件に基づいて運転させることが可能であるため、高品質のガス(特に高純度の水素ガス)を得ることができる。また、一定の条件にて運転可能であるため、システムを構成している各要素に対して、ストレスが生じにくくなり、各構成要素は勿論のこと、システム全体としても、寿命を延ばすことが可能となる。なお、上述したように、本実施形態においては、ガス圧制御のみではなく、水位制御も合わせて行っているため、ガス圧制御のみを行う場合よりも、容易にガス圧制御を行うことが可能となる。
(実施形態2)
本実施形態では、図10に示すように、分離される酸素ガス及び水素ガスの圧力が異なる3つの水素・酸素発生装置を備えた水素供給システムの実施形態であり、この点で1つの水素・酸素発生装置のみを用いた実施形態1の場合と相違している。
本実施形態においては、図10に示すように、高圧側(図10における上段側)の水素・酸素供給装置40aにおける電解タンク2に接続された酸素放出配管部37と、中圧側(図10における中段側)の水素・酸素供給装置40bにおける溶存水素ガスのためのガススクラバ16からの水素放出配管部17とが、1つの圧力交換器29aに接続され、さらに中圧側の水素・酸素発生装置40bにおける電解タンク2に接続された酸素放出配管部37と、低圧側(図10における下段側)の水素・酸素発生装置40cにおける溶存水素ガスのためのガススクラバ16からの水素放出配管部17とが、他の圧力交換器29bに接続されている。つまり、本実施形態では2つの圧力交換器29a、29bが用いられている。
本実施形態では、高圧側の水素・酸素発生装置40aから放出される酸素ガスを用いて中圧側の水素・酸素供給装置40bから放出される溶存水素ガスを昇圧させることができ、中圧側の水素・酸素供給装置40bから放出される酸素ガスを用いて低圧側の水素・酸素供給装置40cから放出される溶存水素ガスを昇圧させることができるので、異なる圧力の溶存水素ガスを段階的に昇圧させることができ、その結果、異なるユースポイントに圧力の異なる2種類の水素ガスを供給して再利用することができるのである。また、高圧側の水素・酸素供給装置40aにおける溶存水素ガスのためのガススクラバ16から水素放出配管部17を介して排出される水素ガスは、前記中圧側の水素・酸素供給装置40bにおいて放出された水素ガスと混合し、昇圧させる。
本実施形態では、高圧、中圧におけるガススクラバ16からの水素を圧力交換器29aに接続し、低圧におけるガススクラバ16からの水素を圧力交換器29bに接続しているが、これに限定されず、利用したい圧力に合わせて29a,29bのどちらに接続してもよい。また、水素分離タンクからの返送純水を大気圧まで減圧しない場合は、それぞれガススクラバ16の圧力よりも高い圧力の酸素配管が接続されている圧力交換器に接続するのがよい。
尚、各水素・酸素発生装置40a、40b、40cにおける構成、作用は、上記実施形態1における水素・酸素発生装置と同じであるため、その説明は省略する。
(実施形態3)
本実施形態においても、水素供給システムにおいて、分離される酸素ガス及び水素ガスの圧力が異なる3つの水素・酸素発生装置、すなわち高圧側、中圧側、低圧側の水素・酸素発生装置を備えており、この点で上記実施形態2と共通する。
しかし、本実施形態では、図11に示すように、高圧側(図11における上段側)の水素・酸素発生装置40aにおける電解タンク2に接続された酸素放出配管部37と、中圧側(図11における中段側)の水素・酸素発生装置40bにおける水素ガス供給配管部21とが、1つの圧力交換器29aに接続され、さらに中圧側の水素・酸素発生装置40bにおける電解タンク2に接続された酸素放出配管部37と、低圧側(図11における下段側)の水素・酸素発生装置40cにおける水素ガス供給配管部21とが他の圧力交換器29bに接続されている。
つまり本実施形態では、昇圧の対象が、水素ガス供給配管部21からそのままユースポイントに供給される水素ガスであり、その点で廃棄される溶存水素ガスを昇圧させて再利用している実施形態2の場合と相違する。このように昇圧の対象となる水素ガスの種類が実施形態2の場合と相違するものの、本実施形態においても、高圧側の水素・酸素発生装置40aから放出される酸素ガスを用いて中圧側の水素・酸素発生装置40bからの水素ガスを昇圧させることができ、中圧側の水素・酸素供給装置40bから放出される酸素ガスを用いて低圧側の水素・酸素発生装置40cからの水素ガスを昇圧させることができるので、異なる圧力の水素ガスを段階的に昇圧させることができ、異なるユースポイントに圧力の異なる2種類の水素ガスを供給することができる点では上記実施形態1と共通している。本実施形態では低圧の水素をコンプレッサーなしで昇圧することができる。
(実施形態4)
本実施形態では、上記実施形態2と同様にガススクラバ16から放出される水素ガスを昇圧させ、さらに実施形態3と同様に水素分離タンク4からユースポイントに供給される水素ガスを昇圧させるように構成されている。すなわち、本実施形態では上記実施形態2と実施形態3とを組み合わせて、従来供給していた水素の昇圧を行いつつ、ガススクラバ等により純水中から放出させ廃棄していた水素の昇圧を行ないうるように構成されている。このように双方の水素の昇圧を行なう機能を有するもので、図12に示すように、ユースポイントに供給される水素ガスを昇圧させるための圧力交換器29a、29bの他、ガススクラバ16から放出される水素ガスを昇圧させるための圧力交換器29c、29d、29eも設けられている。
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態においては、1つの水素・酸素発生装置に1つの水電解装置1を備えている場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、複数の水電解装置1を1つの水素・酸素発生装置に具備させてもよい。この際、各水電解装置1については、それぞれ電解タンク2等を設けて、各水電解装置1をブロック化して、水素・酸素発生装置を構成してもよい。かかる構成によれば、システム全体はもとより、各ブロック毎についても、水電解装置1等の不具合を検知可能であるため、システムのいずれかの箇所に故障等が発生した場合であっても、その故障したブロックのみを停止させて交換等を行うことができる。従って、このようなブロック化を実現した水素供給システムであれば、水電解装置1等に故障が発生した場合であっても、システム全体を停止させる必要がないので、安定したガス供給を実現可能なシステムとすることができる。
また、本発明においては、自らのシステムにて生成した酸素ガスを用いて、純水タンク3内の純水をバブリングすべく構成することが好ましい。本実施形態に係る水素・酸素供給システムにおいては、空気(中の特に窒素)が唯一の不純物であり、かかる空気は主に純水タンク3を介してシステム中に混入する。したがって、かかる空気を排除すれば、さらに高い純度の水素あるいは酸素を得ることが可能となる。そこで、本発明においては、かかる不純物たる空気を排除するために、純水タンク3中を酸素ガスにてバブリングする構成とすることが好ましい。この際、バブリングには、本来リリーフされるはずの酸素ガス等を用いることが可能である。係る構成によれば、本来リリーフされるべき酸素ガス等を用いることによって、特に新たな設備等を用いることなく、純度の高い水素ガスあるいは酸素ガスを得ることが可能な水素・酸素供給システムを実現することができる。
上記実施形態においては、水素ガス昇圧のための酸素として廃棄する酸素を利用したが、通常の酸素供給配管31から供給される酸素を利用してもよい。また、本実施形態においてはリリーフ弁36を設けた酸素放出配管37を利用して圧力変換器29に酸素を供給する構成としたが、酸素放出配管37とは別に圧力変換器29に酸素を供給するための酸素供給配管を設けてもよい。酸素放出配管37は装置異常時に使用されるものであるため、圧力変換器への酸素供給配管と酸素放出配管を別々に設けることが好ましい。
さらに上記実施形態においては、水電解装置を酸素分離タンク内に収容する構成としたが、酸素分離タンクに代えて水素分離タンク内に収容することも可能で、別の圧力容器内に収容することも可能である。また水電解装置を圧力容器内に収容しない構成とすることも可能である。尚、水電解装置を酸素分離タンク内に収容する構成とした場合においては、水電解装置内部の圧力と水電解装置外部の圧力差を小さいものとし、水電解装置への圧力差による負荷を低減しつつ、より高い圧力の水素ガスを発生させうる。さらに、水素分離タンク内に収容した場合に比べ、部材が水素脆化するのを低減することができる。また、水電解装置に不具合が生じた場合でも、水素分離タンク内の水素ガスの純度低下を防止しうる。尚、部材が水素脆化することを低減しうる点、水電解装置に不具合が生じても水素分離タンク内の水素ガスの純度低下を防止しうる点においては、水電解装置を別途圧力装置に収容して該圧力容器内を窒素ガス等のガスにより加圧しても同様の効果を得ることができるが、水電解装置を酸素分離タンク内に収容する場合、別途圧力装置を用いることで装置の部品点数が増加し、製造コストが増大することを抑制しうる。さらに窒素ガス等の圧力制御等により運転コストが増大することも防止しうる。また、必要とされる水素の純度が低くともかまわない場合、水素分離タンク内に水電解装置を収容した構成としてもよい。
また、上記実施形態においては、水電解装置を水中に水没させることにより水電解装置を全体的に冷却することができ、局所的な高温が発生することを防止しうる点から水電解装置を水中に水没させた状態で収容しているが、本発明においては、タンク内に台座等を設ける等して水電解装置を水面上に露出させて収容してもよい。本実施形態で使用する超純水は、高圧状態となることで金属等を溶解させ易くなる可能性があることから、前述のように水電解装置を水面上に露出させることで、水電解装置自体の劣化と超純水の純度低下を抑制しつつ、より高い圧力の水素ガスを発生させうる。さらに上記実施形態においては、純水装置配管にポリシャやフィルタ類を配設する構成としたが、発生させうる水素の圧力によっては耐圧性上の関係から使用できない場合がある。このような場合には、高圧に保持されていない箇所、たとえば純水タンクの後段で、補給水ポンプの手前等に配置する構成としてもよい。この場合、水電解装置に供給される純水の純度が低下することが考えられるので、上述のように水電解装置を水面上に露出させ、循環水の一部を系外に取り出し、順次、補給水ポンプにより超純水を供給する構成とするのが好ましい。
なお、本明細書中において、「所定値」とは、定められたある値を示す場合のみならず、定められたある範囲(ある範囲内の値、あるいは範囲内の複数の値)を示す場合も含む概念である。さらに、昇圧した水素は、ユースポイントに供給せず、気液分離タンクへ戻す構成としてもよい。
また本発明の水素供給システムは、種々の分野における使用が可能であり、その用途としては、エネルギ関連(燃料電池、水素エネルギ等)、半導体関連(プロセスガス、廃ガス燃焼等)、電力関連(タービン発電機の冷却ガス等)、金属関連(還元炉、表面処理等)等があげられる。
〔数値計算による考察〕
次に、水素発生量や水素の圧力の具体的数値を設定し、従来廃棄されていた酸素によって、同様に廃棄されていた水素を昇圧することの意義について考察する。
固体高分子電解質膜1枚あたりの水素発生量が240NL/hである電解セルにおいて、固体高分子電解質膜1枚あたり、たとえば循環水量60L/hとした場合、このような電解セルにおいては、水素側への移動純水量が循環水量の約3%であることが経験的に認められており、従って約1.8L/hの純水がどうしても水素側へ移動し、その結果、その量の純水が水素分離タンクに供給されることとなる。
発生する水素ガスの圧力が0.4MPa程度の低圧の装置を想定すると、ガススクラバーから大気放出されて廃棄される水素量は、(0.4MPaにおける溶存水素量)−(0.1MPaにおける溶存水素量)となる。1気圧(0.1MPa)における溶存水素量は0.03NL/hであり、0.4MPaでは約0.12NL/hであるから、大気放出されて廃棄される水素量は0.09NL/hであり、これは発生する水素量の約0.04%であり、運転コスト等の観点からほとんど問題となることはない。
ところが発生する水素ガスの圧力が40MPa程度の高圧の装置を想定すると、ガススクラバーから大気放出されて廃棄される水素量は、(40MPaにおける溶存水素量)−(0.1MPaにおける溶存水素量)となる。40MPaにおける溶存水素量は、12.44NL/hであるので、大気放出されて廃棄される水素量は12.41NL/hとなる。これは発生する水素量の約5.2%であり、運転コスト等の観点から問題となる。この廃棄される水素量は高圧になる程コスト面で大きな問題となり、また反応条件や循環水量の変動等により移動循環水量が増加した場合も非常に大きな問題となる。
しかしながら、上記各実施形態では、従来では廃棄されていた酸素によって、水素分離タンクから排出され、ガススクラバーから放出される水素ガスを昇圧して利用することができるので、上記のように40MPaの水素ガスを発生させる装置において、従来では12.44NL/h廃棄されていた水素量のうち、99%近くを有効利用することが可能となった。その結果、高圧化する際に起こっていた運転コストの上昇を防ぐことが可能となる。
この種の電解セルを備えた装置の水素自動車等への適用を考慮すると、水素の圧力を高圧にせざるを得ない。従って、上記各実施形態の装置は、水素自動車等に適用されるには非常に適したものとなる。