図1は、本実施形態の燃料電池装置を備える燃料電池システムの構成の一例を示す構成図である。図1に示す燃料電池システムは、本実施形態の燃料電池装置の一例である発電ユニットと、熱交換後の湯水を貯湯する貯湯ユニットと、これらのユニット間を水が循環するための循環配管とから構成されている。なお、以降の図において同一の構成については同一の符号を用いて説明する。
図1に示す発電ユニットは、燃料側電極層、固体電解質層、空気側電極層を有する固体酸化物形の燃料電池セルを複数個組み合わせてなるセルスタック5、都市ガス等の原燃料を後述する改質器3に供給する原燃料供給ポンプ1を有する原燃料供給ライン、セルスタック5を構成する燃料電池セルに酸素含有ガスを供給するための酸素含有ガス供給ポンプ(ブロワ)2を有する酸素含有ガス供給ライン、原燃料と水蒸気により原燃料を水蒸気改質する改質器3を備えている。原燃料供給ライン1には原燃料供給ポンプ1より供給される原燃料の量を測定する原燃料流量計41が設けられており、また酸素含有ガス供給ラインには、酸素含有ガス供給ポンプ2より供給される酸素含有ガスの量を測定する酸素含有ガス流量計42が設けられている。
なお、図1に示す発電ユニットでは、セルスタック5と改質器3とを収納容器に収納することで燃料電池モジュール4(以下、モジュールという場合がある。)が構成され、図1においては、二点鎖線により囲って示している。なお、図1には示していないが、セルスタック5から排出される発電に使用されなかった排ガスを排出する排ガスラインには、該排ガスを浄化するための浄化装置を設けることができるほか、モジュール4内には発電で使用されなかった燃料ガスを燃焼させるための着火装置を設けることができる。
また、図1に示す発電ユニットにおいては、セルスタック5を構成する燃料電池セルの発電により生じた排ガス(排熱)と水とで熱交換を行なう熱交換器8に水を循環させる循環配管15、熱交換器8で生成された凝縮水を純水に処理するための水処理装置9、水処理装置9にて処理された水(純水)を貯水するための水タンク11とが設けられており、水タンク11と熱交換器8との間が凝縮水供給管10により接続されている。なお、本実施形態においては、モジュール4と熱交換器8との間を排ガスラインと呼ぶ。また、水処理装置9としてはイオン交換樹脂を備えるイオン交換樹脂装置を用いることが好ましい。
水タンク11に貯水された水は、水タンク11と改質器3とを接続する水供給管13に備えられた水ポンプ12により改質器3に供給される。なお、該水供給管13には、水ポンプ12より供給される水の流量を測定する水流量計43が設けられており、本実施形態においては、この水ポンプ12と改質器3との間を水供給ラインと呼ぶ。
さらに図1に示す発電ユニットは、モジュール4にて発電された直流電力を交流電力に変換し、変換された電気の外部負荷への供給量を調整するための供給電力調整部(パワーコンディショナ)6、熱交換器8の出口に設けられ熱交換器8の出口を流れる水(循環水流)の水温を測定するための出口水温センサ14のほか、後述する各種機器の動作を制御する制御装置7が設けられており、循環配管15内で水を循環させる循環ポンプ17とあわせて発電ユニットが構成されている。なお、制御装置7はマイクロコンピュータを有しており、入出力インターフェイス、CPU、RAMおよびROMを備えている。なお、CPUは、燃料電池装置の運転を実施するものであり、RAMはプログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMはプログラムを記憶するものである。
そして、これら発電ユニットを構成する各装置を、外装ケース内に収納することで、設置や持ち運び等が容易な燃料電池装置とすることができる。なお、貯湯ユニットは、熱交換後の湯水を貯湯するための貯湯タンク16を具備して構成されている。なお、循環ポンプ17は貯湯ユニット側に設けることもできる。
ここで、図1に示した燃料電池システムの運転方法について説明する。
セルスタック5の発電に必要な燃料ガスを生成するにあたり、制御装置7は原燃料供給ポンプ1、水ポンプ12を作動させる。それにより、改質器3に原燃料(天然ガス、灯油等)と水とが供給され、改質器3で水蒸気改質を行なうことにより、水素を含む燃料ガスが生成されて燃料電池セルの燃料極層側に供給される。
一方、制御装置7は酸素含有ガス供給ポンプ2を動作させることにより、燃料電池セルの酸素極層側に酸素含有ガス(空気)を供給する。
なお、制御装置7はモジュール4において着火装置(図示せず)を作動させることにより、セルスタック5の発電に使用されなかった燃料ガスを燃焼させる。それにより、モジュール内の温度(セルスタック5や改質器3の温度)が上昇し、効率よい発電を行なうことができる。
セルスタック5の発電に伴って生じた排ガスは、浄化装置にて浄化された後、熱交換器8に供給され、循環配管15を流れる水とで熱交換される。熱交換器8での熱交換により生じたお湯は、循環配管15を流れて貯湯タンク16に貯水される。一方、熱交換器8での熱交換によりセルスタック5より排出される排ガスに含まれる水が凝縮水となり、凝縮水供給管10を通じて、水処理装置9に供給される。凝縮水は、水処理装置9にて純水とされて、水タンク11に供給される。水タンク11に貯水された水は、水ポンプ12により水供給管13を介して改質器3に供給される。このように、凝縮水を有効利用すること
により、水自立運転を行なうことができる。
なお、上述の例においては熱交換器8にて生成される凝縮水のみを改質器3に供給する構成の燃料電池装置を用いて説明したが、改質器3に供給する水として水道水を利用することもできる。この場合、水道水に含まれる不純物を処理するための水処理装置として、例えば、活性炭フィルター、逆浸透膜装置、イオン交換樹脂装置等を、この順に接続することで、純水を効率よく精製することができる。なお、水道水を用いる場合においても、水処理装置にて生成した純水が、水タンク11に貯水されるよう各装置を接続する。
続いて、図1に示すモジュール4の一例について説明する。図2、図3は、本実施形態の燃料電池装置を構成するモジュール4の一例を示し、図2はモジュール4を示す外観斜視図であり、図3は図2に示すモジュール4の断面図である。
図2に示すモジュール4においては、収納容器18の内部に、内部を燃料ガスが流通するガス流路(図示せず)を有する柱状の燃料電池セル19を立設させた状態で一列に配列し、隣接する燃料電池セル19間が集電部材(図示せず)を介して電気的に直列に接続されているとともに、燃料電池セル19の下端をガラスシール材等の絶縁性接合材(図示せず)でマニホールド20に固定してなるセルスタック5を2つ備えるセルスタック装置21を収納して構成されている。なお、セルスタック5の両端部には、セルスタック5(燃料電池セル19)の発電により生じた電気を集電して外部に引き出すための、電気引き出し部を有する導電部材が配置されている(図示せず)。なお、図2においては、セルスタック装置21が2つのセルスタック5を備えている場合を示しているが、適宜その個数は変更することができ、例えばセルスタック5を1つだけ備えていてもよい。また、収納容器18には、モジュール4の温度を測定するための温度計測手段である熱電対27が設けられている。
また、図2においては、燃料電池セル19として、内部を燃料ガスが長手方向に流通するガス流路を有する中空平板型で、ガス流路を有する支持体の表面に、燃料極層、固体電解質層および酸素極層を順に積層してなる固体酸化物形の燃料電池セル19を例示している。なお、燃料電池セル19においては、内部を酸素含有ガスが長手方向に流通するガス流路を有する形状とすることもでき、この場合、内側より酸素極層、固体電解質層、燃料極層を順に設け、モジュール4の構成は適宜変更すればよい。さらには、燃料電池セルは中空平板型に限られるものではなく、例えば平板型や円筒型とすることもでき、あわせて収納容器18の形状を適宜変更することが好ましい。
また、図2に示すモジュール4においては、燃料電池セル19の発電で使用する燃料ガスを得るために、原燃料供給管25を介して供給される都市ガス等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器3をセルスタック5の上方に配置している。また、改質器3は、効率のよい改質反応である水蒸気改質を行なうことができる構造とすることができ、水を気化させるための気化部23と、原燃料を燃料ガスに改質するための改質触媒(図示せず)が配置された改質部22とを備えている。
そして、改質器3で生成された燃料ガス(水素含有ガス)は、燃料ガス流通管24を介してマニホールド20に供給され、マニホールド20より燃料電池セル19の内部に設けられたガス流路に供給される。なお、セルスタック装置21の構成は、燃料電池セル19の種類や形状により、適宜変更することができ、例えばセルスタック装置21に改質器3を含むこともできる。
また図2においては、収納容器18の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されるセルスタック装置21を後方に取り出した状態を示している。ここで、図2に示したモジュ
ール4においては、セルスタック装置21を、収納容器18内にスライドして収納することが可能である。
なお、収納容器18の内部には、マニホールド20に並置されたセルスタック5の間に配置され、酸素含有ガスが燃料電池セル19の側方を下端部から上端部に向けて流れるように、反応ガス導入部材26が配置されている。
図3に示すように、モジュール4を構成する収納容器18は、内壁29と外壁30とを有する二重構造で、外壁30により収納容器18の外枠が形成されるとともに、内壁29によりセルスタック装置21を収納する発電室31が形成されている。さらに収納容器18においては、内壁29と外壁30との間を、モジュール4の底部より供給され、燃料電池セル19に導入する酸素含有ガスが流通する反応ガス流路36としている。なお酸素含有ガスはモジュール4の底部に設けられた酸素含有ガス供給口(図示せず)より供給されて、反応ガス流路36を流れる。
ここで、収納容器18内には、収納容器18の上部より、上端側に酸素含有ガスが流入するための酸素含有ガス流入口(図示せず)とフランジ部39とを備え、下端部に燃料電池セル19の下端部に酸素含有ガスを導入するための反応ガス流出口32が設けられてなる反応ガス導入部材26が、内壁29を貫通して挿入されて固定されている。なお、フランジ部39と内壁29との間には断熱部材33が配置されている。
なお、図3においては、反応ガス導入部材26が、収納容器18の内部に並置された2つのセルスタック5間に位置するように配置されているが、セルスタック5の数により、適宜配置することができる。例えば、収納容器18内にセルスタック5を1つだけ収納する場合には、反応ガス導入部材26を2つ設け、セルスタック5を両側面側から挟み込むように配置することができる。
また発電室31内には、モジュール4内の熱が極端に放散され、燃料電池セル19(セルスタック5)の温度が低下して発電量が低減しないよう、モジュール4内の温度を高温に維持するための断熱部材33が適宜設けられている。
断熱部材33は、セルスタック5の近傍に配置することが好ましく、特には、燃料電池セル19の配列方向に沿ってセルスタック5の側面側に配置するとともに、セルスタック5の側面における燃料電池セル19の配列方向に沿った幅と同等またはそれ以上の幅を有する断熱部材33を配置することが好ましい。なお、セルスタック5の両側面側に断熱部材33を配置することが好ましい。それにより、セルスタック5の温度が低下することを効果的に抑制できる。さらには、反応ガス導入部材26より導入される酸素含有ガスが、セルスタック5の側面側より排出されることを抑制でき、セルスタック5を構成する燃料電池セル19間の酸素含有ガスの流れを促進することができる。なお、セルスタック5の両側面側に配置された断熱部材33においては、燃料電池セル19に供給される酸素含有ガスの流れを調整し、セルスタック5の長手方向および燃料電池セル19の積層方向における温度分布を低減するための開口部34が設けられている。なお、複数の断熱部材33を組み合わせて開口部34を形成するようにしてもよい。
また、燃料電池セル19の配列方向に沿った内壁29の内側には、排ガス用内壁35が設けられており、内壁29と排ガス用内壁35との間が、発電室31内の排ガスが上方から下方に向けて流れる排ガス流路37とされている。なお、排ガス流路37は、収納容器18の底部に設けられた排気孔40と通じている。また、排ガス用内壁35のセルスタック5側にも断熱部材33が設けられている。
それにより、モジュール4の運転に伴って生じる排ガスは、排ガス流路37を流れた後、排気孔40より排気される構成となっている。なお、排気孔40は収納容器18の底部の一部を切り欠くようにして形成してもよく、また管状の部材を設けることにより形成してもよい。また、排気孔40内に、モジュール4より排出される排ガスを浄化するための浄化装置(例えば、ハニカム状の燃焼触媒等)を設けることもできる。
なお、図示はしていないが、モジュール4においては、燃料電池セル19を通過した燃料ガスを着火させるための着火装置が、燃料電池セル19と改質器3との間に位置するように、収納容器2の側面より挿入されていることが好ましい。なお、着火装置により燃料電池セル19を通過した燃料ガスを着火させることにより、モジュール4内の温度を高温とすることができるほか、燃料電池セル19、改質器3の温度を高温に維持することができる。
以下に、本実施形態の燃料電池セル19の構成について説明する。なお、燃料電池セル19として、従来知られている中空平板型の燃料電池セル19を用いて説明する。
燃料電池セル19は、一対の対向する平坦面をもつ柱状の導電性支持基板(以下、支持基板と略す場合がある)の一方の平坦面上に燃料側電極層、固体電解質層及び空気側電極層を順次積層してなる柱状(中空平板状)からなる。また、燃料電池セル19の他方の平坦面上にはインターコネクタが設けられており、インターコネクタの外面(上面)にはP型半導体層が設けられている。P型半導体層を介して、集電部材をインターコネクタに接続させることにより、両者の接触がオーム接触となり、電位降下を少なくし集電性能の低下を有効に回避することが可能となる。また、支持基板は燃料側電極層を兼ねるものとし、その表面に固体電解質層および空気側電極層を順次積層してセルを構成することもできる。
燃料側電極層は、一般的に公知のものを使用することができ、多孔質の導電性セラミックス、例えば希土類元素が固溶しているZrO2(安定化ジルコニアと称し、部分安定化も含むものとする)とNiおよび/またはNiOとから形成することができる。
固体電解質層は、燃料側電極層、空気側電極層間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有していると同時に、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有することが必要とされ、3〜15モル%の希土類元素が固溶したZrO2から形成される。なお、上記特性を有する限りにおいては、他の材料等を用いて形成してもよい。
空気側電極層は、一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスから形成することができる。空気側電極層はガス透過性を有していることが必要であり、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。
支持基板としては、燃料ガスを燃料側電極層まで透過するためにガス透過性であること、さらには、インターコネクタを介して集電するために導電性であることが要求される。したがって、支持基板としては、導電性セラミックスやサーメット等を用いることができる。燃料電池セル19を作製するにあたり、燃料側電極層または固体電解質層との同時焼成により支持基板を作製する場合においては、鉄族金属成分と特定希土類酸化物とから支持基板を形成することが好ましい。また、支持基板は、ガス透過性を備えるために開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあるのが好適であり、そしてまたその導電率は300S/cm以上、特に440S/cm以上であるのが好ましい。また、支持基板の形状は柱状であれば良く、円筒状であってもよい。
P型半導体層としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物からなる層を例示することができる。具体的には、インターコネクタを構成する材料よりも電子伝導性が大きいもの、例えば、BサイトにMn、Fe、Coなどが存在するLaMnO3系酸化物、LaFeO3系酸化物、LaCoO3系酸化物などの少なくとも一種からなるP型半導体セラミックスを使用することができる。このようなP型半導体層の厚みは、一般に、30〜100μmの範囲にあることが好ましい。
インターコネクタは、上述したとおり、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)、もしくは、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物(LaSrTiO3系酸化物)が好適に使用される。これらの材料は、導電性を有し、かつ燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガス(空気等)と接触しても還元も酸化もされない。また、インターコネクタは支持基板に形成されたガス流路を流通する燃料ガス、および支持基板の外側を流通する酸素含有ガスのリークを防止するために緻密質でなければならず、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好ましい。
このような燃料電池セル19を備えるモジュール4において、特にモジュール4の運転停止時において、支持基板や燃料側電極層に空気が供給されると、支持基板や燃料側電極層に含まれるNiが酸化されてNiOとなることで体積膨張し、それにより燃料電池セル19にクラックが入る等の破損が生じる場合があるため、モジュール4の運転停止においては、燃料電池セル19の酸化を抑制しつつ運転を停止する運転制御が求められる。
特に、モジュール4の運転停止においては、通常の運転停止のほか、異常による運転停止など、様々なタイプの運転停止があるため、これら各種の運転停止に対応できる運転制御が求められる。
また、運転停止時において、窒素ガス等の不活性ガスを用いてモジュール4内をパージすることも知られているが、この場合、別途窒素ガスボンベが必要となり、このパージに大量の不活性ガスが必要となると、ボンベ自体が大型化し、それにより燃料電池装置が大型化するという問題がある。それゆえ、窒素ボンベ自体も小型の窒素ボンベで十分対応できる運転停止制御が可能な燃料電池装置が求められている。
そこで、本実施形態の燃料電池装置は、燃料電池モジュールの運転を停止する場合において、制御装置7が、モジュール4の運転停止条件に応じて、原燃料供給ライン、酸素含有ガス供給ライン、水供給ラインおよび不活性ガス供給ラインを流れる流体の供給および停止を変更する制御を行なうことを特徴とする。以降の説明について、各ラインを流れる流体の供給および停止を変更することを、各ラインを稼働するまたは停止すると表現する。なお言うまでもないが、原燃料供給ラインを流れる流体とは原燃料であり、酸素含有ガス供給ラインを流れる流体とは酸素含有ガスであり、水供給ラインを流れる流体とは水であり、不活性ガス供給ラインを流れる流体とは不活性ガスである。
図4〜図7は、本実施形態のモジュール4(燃料電池装置)の運転の停止制御の一例を示すフローチャートである。以下、図に示すフローチャートに基づいて、運転停止制御について説明する。
まず、制御装置10は、停止処理をスタートするにあたり、ステップS1にて、その停止処理の開始が燃料電池装置の異常による処理か否かを判別する。停止処理の開始が異常によるものでない場合は、言い換えれば通常停止処理の場合は、続いてステップS7に進み、モジュール温度が第1の設定温度未満か否かを判別する。
支持基板や燃料側電極層が含有するNiは所定の温度以上において、空気による酸化反応が進みNiOとなるが、所定の温度未満であれば酸化反応は進まない(もしくは進みにくい)ため、モジュールの温度が所定の温度未満であれば、原燃料供給ライン、酸素含有ガス供給ラインおよび水供給ラインの稼働を直ちに停止しても、燃料電池セルが酸化により破損することは抑制できるととともに、効率よくモジュールの運転停止を行なうことができる。
それゆえ、ステップS7において、モジュール温度が上記の所定の温度を反映した第1の設定温度未満である場合には、続いてステップS8に進み、原燃料供給ライン、酸素含有ガス供給ラインおよび水供給ラインの稼働を同時に停止する(以下、この3つのラインの稼働を同時に停止することをシャットダウンと呼ぶ。)制御を行なう。それにより、燃料電池セルが酸化により破損することを抑制できるととともに、効率よくモジュールの運転停止を行なうことができる。
一方、ステップS7において、モジュール温度が第1の設定温度以上である場合には、ステップS9に進み、原燃料供給ライン、酸素含有ガス供給ラインおよび水供給ラインより供給される、原燃料、酸素含有ガスおよび水のそれぞれの量を徐々に低下する通常停止処理の制御を行なう。
なお、上述の第1の設定温度とは、Niの酸化が進まない温度範囲であればよいが、モジュールの運転停止を効率よく行なうことを目的として、例えば300℃以下の範囲で適宜設定することができる。
ステップS1にて、停止処理の開始が燃料電池装置の異常によるものと判別された場合には、続いてステップS2に進み、その停止処理の開始がシステム重故障であるか否かを判別する。
システム重故障であると判別された場合に、そのままモジュールの運転停止処理を時間をかけて実施すると、その間に更に燃料電池装置に故障が生じるおそれがあるため、システム重故障と判別された場合には、直ちにシャットダウン処理を行なうことが好ましい。
なお、システム重故障とは、燃料電池装置の構成に応じて予め適宜設定すればよいが、例えば、温度計測手段28により測定されたモジュール4の温度が800℃以上となった場合や、図には示していないがCO濃度センサにより測定された燃料電池装置内のCOの累積濃度が、あらかじめ定められた累積濃度となった場合等を設定することができる。
ステップS2にて、システム重故障ではないと判別された場合には、続いてステップS3に進み、上述したステップS7と同様にモジュール温度が第1の設定温度未満か否かを判別する。
ステップS3にて、モジュール温度が第1の設定温度未満と判別された場合には、上述のステップS8と同様に、原燃料供給ライン、酸素含有ガス供給ラインおよび水供給ラインをシャットダウンする。それにより、燃料電池セルが酸化により破損することを抑制できるととともに、効率よくモジュールの運転停止を行なうことができる。
一方で、ステップS3にて、モジュール温度が第1の設定温度以上と判別された場合には、燃料電池装置の何に異常が生じているかを検知して、その結果に基づいて適宜制御を行なうことで、燃料電池セルが酸化により破損することを抑制できるととともに、効率よくモジュールの運転停止を行なうことができる。
それゆえ、ステップS3にて、モジュール温度が第1の設定温度以上と判別された場合には、続いてステップS4に進み、酸素含有ガス供給ラインに異常があるか否かを判別する。
なお、酸素含有ガス供給ラインに異常があるか否かとは、例えば制御装置7が酸素含有ガス供給ポンプ2に対して伝送した信号に基づく酸素含有ガスの供給量と、酸素含有ガス流量計42が計測した実際の酸素含有ガスの流量とを比較して、その差が所定の範囲外となった場合に、酸素含有ガス供給ラインに異常があると判別すればよい。
酸素含有ガス供給ラインに異常があると判別された場合には、続いてステップS10に進み、不活性ガス供給ラインを稼働させて、モジュール4内に不活性ガスの供給を開始するとともに、酸素含有ガス供給ラインを停止する。すなわち、異常が生じていると判別された酸素含有ガス供給ラインを停止し、代わりに不活性ガスの供給を開始することで、燃料電池セルの酸化をより効率よく抑制することができる。
なお、不活性ガス供給ラインの稼働を開始し、酸素含有ガス供給ラインを停止してしばらくの間は、モジュール4内に空気が多く残っているため、直ちに原燃料供給ラインおよび水供給ラインを停止すると、酸化反応が生じて、燃料電池セルの破損を生じるおそれがあるため、ステップS10においては、原燃料供給ラインおよび水供給ラインはそのまま継続して稼働させておくことが好ましい。
続いて、ステップS11に進み、上述のステップS3、7と同様に、モジュール温度が第1の設定温度未満か否かを判別する。モジュール温度が第1の設定温度未満である場合には、上述のステップS8と同様に、不活性ガス供給ライン、原燃料供給ラインおよび水供給ラインの稼働を停止する。
一方で、ステップS11にて、モジュール温度が第1の設定温度以上であると判別された場合には、そのまま不活性ガスの供給を継続する。続いてステップS13に進み、不活性ガスの供給が開始されてから、所定の時間であるT1分が経過したか否かを判別する。
ここで、T1分が経過していないと判別された場合には、再度ステップS11に戻って、モジュール温度が第1の設定温度未満か否かを判別する。一方、T1分が経過した場合には、続いて排ガスラインを閉鎖する。
モジュール温度が高い状態で、不活性ガス供給ラインの稼働を停止する制御を行なった場合、モジュール内の排ガスを排気する排ガスラインを空気が逆流し、その逆流した空気によって、燃料電池セルが酸化されてしまうおそれがある。
それゆえ、例えば排ガスラインに電磁弁等を設けておき、ステップS13において、不活性ガスの供給が開始されてからT1分が経過したと判別された場合には、電磁弁を閉鎖して、排ガスラインを閉鎖することが好ましい。それにより、モジュール温度が高い状態で不活性ガス供給ラインの稼働を停止する場合であっても、排ガスラインからの逆流を抑制でき、燃料電池セルの酸化を抑制することができる。
なお、所定の時間T1分とは、モジュールを構成する収納容器の体積や、不活性ガスを貯蔵する不活性ガスボンベ(例えば窒素ボンベ)の容量等に基づいて、適宜設定することができるが、例えば不活性ガスのボンベの容量が15〜30L程度である場合には、1〜10分程度で設定することが好ましい。ちなみに、この場合において、不活性ガス供給ラインを稼働させてT1分が経過した時点で、モジュール4内の空気は不活性ガスにて排ガ
スラインより排気され、モジュール4内が不活性ガスにてパージできる時間となるように、設定することが好ましい。それにより、大型の不活性ガスボンベが必要なく、少量の不活性ガスにて効率よく停止処理を行なうことができる。
ステップS14にて排ガスラインを閉鎖した後は、モジュール4内が不活性ガスにてパージされることから、ステップS12に進んで、不活性ガス供給ライン、原燃料供給ラインおよび水供給ラインの稼働を停止する。
ステップS4にて、酸素含有ガス供給ラインに異常がないと判別された場合には、続いてステップS5に進み、原燃料供給ラインまたは水供給ラインに異常があるか否かを判別する。
なお、原燃料供給ラインに異常があるか否かとは、例えば制御装置7が原燃料供給ポンプ1に対して伝送した信号に基づく原燃料の供給量と、原燃料流量計41が計測した実際の原燃料の流量とを比較して、その差が所定の範囲外となった場合に、原燃料供給ラインに異常があると判別すればよい。
水供給ラインに異常があるか否かについても同様に、例えば制御装置7が水ポンプ12に対して伝送した信号に基づく水の供給量と、水流量計43が計測した実際の水の流量とを比較して、その差が所定の範囲外となった場合に、水供給ラインに異常があると判別すればよい。
ここで、原燃料供給ラインまたは水供給ラインに異常がないと判別された場合には、いわゆる各供給ラインには異常がないものと判別して、ステップS6に進み通常停止処理を行なう。
一方、原燃料供給ラインまたは水供給ラインに異常があると判別された場合には、ステップS15に進み、不活性ガスラインを稼働させるとともに、原燃料供給ラインおよび水供給ラインを停止する制御を行なう。なお、この場合において、モジュールの温度を早期に低下させることを目的として、酸素含有ガス供給ラインの稼働は継続しておくことが好ましい。
ステップS15にて、不活性ガスラインを稼働させるとともに、原燃料供給ラインおよび水供給ラインを停止する制御を行なった後は、続いてステップS16に進み、モジュール温度が第1の設定温度未満か否かを判別する。
ステップS16にて、モジュール温度が第1の温度未満と判別された場合には、続いて、ステップS17に進んで不活性ガス供給ラインの稼働を停止する。モジュールの温度が第1の設定温度未満であれば、不活性ガスを供給しなくても燃料電池セルの酸化反応が進まないことから、不活性ガス供給ラインの稼働を停止することで、不活性ガスの使用量が増大することを抑制することができる。なお、この間、酸素含有ガス供給ラインは継続して稼働している。
ステップS17にて不活性ガス供給ラインの稼働を停止した後は、ステップS18に進み、モジュール温度が第2の設定温度未満か否かを判別する。なお第2の設定温度は、第1の設定温度よりも低い温度に設定され、酸素含有ガス供給ラインからの酸素含有ガスが供給されなくても特に問題が生じない温度であり、例えば90〜120℃の範囲で適宜設定することができる。
ステップS18にて、モジュールの温度が第2の設定温度以上の場合は、このフローを
くり返し行なう。一方、ステップS18にて、モジュールの温度が第2の設定温度未満となった場合には、ステップS20に進み、酸素含有ガス供給ラインの稼働を停止する。それにより、酸素含有ガス供給ラインを効率よく停止させることができる。
ステップS16にて、モジュール温度が第1の設定温度以上であると判別された場合には、そのまま不活性ガスの供給を継続する。続いてステップS20に進み、不活性ガスの供給が開始されてから、所定の時間であるT2分が経過したか否かを判別する。
ここで、T2分が経過していないと判別された場合には、再度ステップS16に戻って、モジュール温度が第1の設定温度未満か否かを判別する。一方、ステップS20において、T2分が経過したと判別された場合には、モジュール内が既に不活性ガスにてパージができていると判断して、続いてステップS21に進んで酸素含有ガス供給ラインを停止する。それにより、T2分までの間は、酸素含有ガスと不活性ガスとでモジュール4の温度を低下させることができるとともに、これ以降は不活性ガスのみが供給されることで、燃料電池セルの酸化を抑制することができる。
なお、T2分とは燃料電池装置の大きさ等に基づいて適宜設定することができ、例えば図6で示したT1分と同じとすることもできる。
続いてステップS21にて酸素ガス供給ラインを停止した後、続いてステップS22に進み、不活性ガスの供給が開始されてから、所定の時間であるT3分が経過したか否かを判別する。なお、T3分は上述のT2分よりも長いことは言うまでもない。
ステップS22にて、T3分が経過していないと判別された場合は、再度S21に戻って、不活性ガスの供給が開始されてから、所定の時間であるT3分が経過するまでこれをくり返す。
一方、ステップS22にて、T3分が経過したと判別された場合は、続いてステップS23に進んで、排ガスラインを閉鎖する。
モジュール温度が高い状態で、不活性ガス供給ラインの稼働を停止する制御を行なった場合、モジュール内の排ガスを排気する排ガスラインを空気が逆流し、その逆流した空気によって、燃料電池セルが酸化されてしまうおそれがある。
それゆえ、例えば排ガスラインに電磁弁等を設けておき、ステップS22において、不活性ガスの供給が開始されてからT3分が経過したと判別された場合には、電磁弁を閉鎖して、排ガスラインを閉鎖することが好ましい。それにより、モジュール温度が高い状態で不活性ガス供給ラインの稼働を停止する場合であっても、排ガスラインからの逆流を抑制でき、燃料電池セルの酸化を抑制することができる。
また、所定の時間T3分とは、モジュールを構成する収納容器の体積や、不活性ガスを貯蔵する不活性ガスボンベ(例えば窒素ボンベ)の容量等に基づいて、適宜設定することができるが、例えば不活性ガスのボンベの容量が15〜30L程度である場合には、10〜15分程度で設定することが好ましい。
ちなみに、この場合において、不活性ガス供給ラインを稼働させてT3分が経過した時点で、モジュール4内の空気は不活性ガスにて排ガスラインより排気され、モジュール4内が不活性ガスにてパージできる時間となるように、設定することが好ましい。それにより、大型の不活性ガスボンベが必要なく、少量の不活性ガスにて効率よく停止処理を行なうことができる。
ステップS23にて排ガスラインを閉鎖した後は、モジュール4内が不活性ガスにてパージされることから、ステップS24に進んで、不活性ガス供給ラインの稼働を停止する。
上述したように、モジュール(燃料電池装置)の運転の停止処理を、運転の停止条件に応じて、原燃料供給ライン、酸素含有ガス供給ライン、水供給ラインおよび不活性ガス供給ラインの稼働および停止を変更する制御を行なうことで、燃料電池セルの酸化を抑制しつつ、少ない量の不活性ガスで効率よく運転停止処理を行なうことができ、大型化を抑制することができる。
図8は、外装ケース内に図1で示したモジュール4と、モジュール4を動作させるための補機(図示せず)とを収納してなる本実施形態の燃料電池装置の一例を示す分解斜視図である。なお、図8においては一部構成を省略して示している。
図8に示す燃料電池装置44は、支柱45と外装板46から構成される外装ケース内を仕切板47により上下に区画し、その上方側を上述したモジュール4を収納するモジュール収納室48とし、下方側をモジュール4を動作させるための補機を収納する補機収納室49として構成されている。なお、補機収納室49に収納する補機を省略して示している。
また、仕切板47には、補機収納室49の空気をモジュール収納室48側に流すための空気流通口50が設けられており、モジュール収納室48を構成する外装板46の一部に、モジュール収納室48内の空気を排気するための排気口51が設けられている。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
例えば、図6、図7においては、上記説明においては、先にモジュールの温度を判別した後に、不活性ガスを供給開始してからの時間を判別する制御について説明したが、逆に先に不活性ガスを供給開始してからの時間を判別し、続いてモジュールの温度を判別する制御としてもよい。特に不活性ガスのボンベが小型の場合は、不活性ガスの量が少ないことから、この順序とすることが特に有効である。また、この場合において、不活性ガスの供給開始からの時間であるT1〜T3は、それぞれ不活性ガスボンベの容量に基づいて、容量が切れる前の時間で設定することが好ましい。
また、上述の例ではいわゆる中空平板型と呼ばれる燃料電池セル19を用いて説明したが、一般に横縞型と呼ばれる複数の発電素子部を支持体上に設けてなる横縞型の燃料電池セルを用いることもできる。
また、上述の例では燃料電池セル19としてガス流路に燃料ガスを流す構成の燃料電池セル19を用いて説明したが、ガス流路が酸素含有ガスを流す構成の燃料電池セルであっても同様とすることができる。