JP7422102B2 - 鋼製支保工の脚部補強構造 - Google Patents

鋼製支保工の脚部補強構造 Download PDF

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Description

本発明は、鋼製支保工の脚部補強構造に関し、特に、山岳トンネル工法において、上部にアーチ形状部分を含む断面形状を有するトンネルの掘削内壁面に沿って設置される鋼製支保工の脚部を補強する鋼製支保工の脚部補強構造に関する。
山岳トンネル工法においては、例えばトンネル覆工型枠(セントル)を用いて二次覆工を施工するのに先立って、吹付けコンクリートや吹付モルタルによる一次覆工が、トンネルの掘削内壁面に沿って施工されるようになっており、一次覆工は、掘削直後のトンネルの掘削内壁面からの荷重を、トンネルの軸方向に間隔をおいて周方向に延設させて設置された複数本の鋼製支保工により支持させた状態で、これらの鋼製支保工の間隔部分に吹付けコンクリートや吹付モルタルを所定の厚さで吹き付けることによって形成されることになる。
また、鋼製支保工は、トンネルの上部のアーチ形状部分から側壁部分にかけて設置されると共に、例えばこれの下方に側壁下部の支保工や、インバート部の支保工が接続されるまでの間、掘削直後のトンネルの掘削内壁面からの荷重を、アーチ形状部分を含む掘削断面における両側の側部掘削底面部に、当該鋼製支保工の両側の脚部の下端プレートを各々接地させることによって、支持させるようになっている。
一方、トンネルの掘削内壁面からの荷重を、鋼製支保工の脚部の下端プレートを側部掘削底面部に接地させて支持させる場合、掘削底面部の地盤によっては、地耐力が不足して鋼製支保工が沈下する恐れがあることがら、鋼製支保工の下端部の側部掘削底面部に対する接地面積を増大させて、より広い面積に荷重を分散させることで、鋼製支保工の沈下を防止できるように補強する技術も開発されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
ここで、特許文献1の補強構造では、トンネルの脚部に、トンネルの内方に突出するとともにトンネルの長手方向に連続して、トンネルの底盤面に接するように構築された補強構造体を備えており、この補強構造体は、これの表層部に埋設されて一端が支保工の脚部に接続されると共に、他端がトンネルの内方に突出して配置された補強鋼材と、隣接する補強鋼材同士をトンネルの長手方向に連結する桁鋼材とを備えるようになっている。特許文献2の補強構造では、鋼製支保工の脚部と地盤との間に介設されたベースプレートを備えると共に、鋼製支保抗工の脚部やベースプレートに一体化されて、地山に沿ってトンネル軸方向に延びるウィングプレートを備えるようになっている。
特開2010-53570号公報 特開2012-112104号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2の補強構造では、鋼製支保抗工の脚部に、補強鋼材やベースプレートやウィングプレートを工場制作によって事前に取り付けておく必要があるため、トンネルの掘削地盤の地山の性状に応じて、迅速かつ柔軟に対応することが難しくなる場合があり、またコスト面での課題もある。このようなことから、現場での加工や製作を容易にすると共に、地山の性状の変化に応じて寸法や大きさを容易に変更可能として、簡易な構成によって鋼製支保工が沈下するのを効果的に防止できるようにする新たな補強構造の開発が望まれている。
本発明は、現場での加工や製作を容易に行なうことができると共に、地山の性状の変化に応じて寸法や大きさを容易に変更することができ、また簡易な構成によって鋼製支保工が沈下するのを効果的に防止することのできる鋼製支保工の脚部補強構造を提供することを目的とする。
本発明は、山岳トンネル工法において、上部にアーチ形状部分を含む断面形状を有するトンネルの掘削内壁面に沿って設置される、鋼製支保工の下端部分である脚部を補強する鋼製支保工の脚部補強構造であって、トンネルのアーチ形状部分から側壁部分にかけて設置される前記鋼製支保工の下端部において、前記鋼製支保工からトンネルの軸方向の両側に張り出して設けられた一対の底辺部内側係止部と、該一対の底辺部内側係止部に内側端部が各々係止されると共に、前記鋼製支保工の下端部分の外側に余堀りされた拡幅補強余掘部の底部に沿って配置される一対の底辺部継ぎ部材と、該一対の底辺部継ぎ部材の外側端部に下端部が各々係止されると共に、上端部が前記鋼製支保工の側壁部分からトンネルの軸方向の両側に張り出して設けられた、上部張出し係止部に各々係止される一対の斜辺部継ぎ部材と、該一対の斜辺部継ぎ部材に跨るようにして支持されて、これらの外側を覆って取り付けられた金網状部材と、前記拡幅補強余掘部を充填するように吹き付けられて、前記底辺部継ぎ部材、前記斜辺部継ぎ部材及び前記金網状部材と一体となって硬化した吹付け硬化材とを含んで構成される山岳トンネル工法における鋼製支保工の脚部補強構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
そして、本発明の鋼製支保工の脚部補強構造は、前記鋼製支保工の下端プレートの下方に重ねて配置されて接地面積を拡大する、接地面拡大用鋼板が、前記下端プレートからトンネルの軸方向の両側に張り出すようにして取り付けられており、前記一対の底辺部内側係止部は、前記接地面拡大用鋼板における両側の張出し部分に各々固定されて設けられていることが好ましい。
また、本発明の鋼製支保工の脚部補強構造は、前記接地面拡大用鋼板が、前記鋼製支保工の前記下端プレートの上面側に固定された袋ナットを介して、ボルト部材を用いて前記下端プレートに重ねて取り付けられていることが好ましい。
さらに、本発明の鋼製支保工の脚部補強構造は、前記斜辺部継ぎ部材が、上端部となる一端部に、フック状の係止部が設けられていると共に、下端部となる他端部に、円筒形状の係止部が取り付けられている、細長い帯板形状の鋼製プレート部材となっていることが好ましい。
さらにまた、本発明の鋼製支保工の脚部補強構造は、前記底辺部継ぎ部材が、両側の端部が係止部として折り曲げられた、鉄筋棒となっていることが好ましい。
また、本発明の鋼製支保工の脚部補強構造は、前記上部張出し係止部が、トンネルの軸方向に隣接する一対の前記鋼製支保工の間隔部分に跨って取り付けられている、支保工継ぎ部材によるものとなっていることが好ましい。
さらに、本発明の鋼製支保工の脚部補強構造は、間隔をおいて隣接する一対の前記鋼製支保工の各々に、前記一対の底辺部内側係止部、前記一対の底辺部継ぎ部材、及び前記一対の斜辺部継ぎ部材が取り付けられており、前記拡幅補強余掘部は、隣接する一対の前記鋼製支保工の下端部分の外側に、これらの領域に跨るように連続して余掘りされており、前記金網状部材は、これらの領域に跨るように連続して、各々の前記一対の斜辺部継ぎ部材に支持されてこれらの外側を覆って取り付けられており、前記吹付け硬化材は、隣接する一対の前記鋼製支保工の下端部分の外側の領域に跨るように連続して、余堀りされた前記拡幅補強余掘部の全体を充填するように吹き付けられて、前記底辺部継ぎ部材、前記斜辺部継ぎ部材及び前記金網状部材と一体となって硬化していることが好ましい。
本発明の鋼製支保工の脚部補強構造によれば、現場での加工や製作を容易に行なうことができると共に、地山の性状の変化に応じて寸法や大きさを容易に変更することができ、また簡易な構成によって鋼製支保工が沈下するのを効果的に防止することができる。
図1は、本発明の好ましい一実施形態に係る鋼製支保工の脚部補強構造の構成を説明する、図4(a)におけるA部拡大断面図である。 図2は、本発明の好ましい一実施形態に係る鋼製支保工の脚部補強構造の構成を説明する、図1のB-Bに沿った平面図である。 図3は、本発明の好ましい一実施形態に係る鋼製支保工の脚部補強構造の構成を説明する、隣接する一対の鋼製支保工の間の部分における金網状部材が取り付けられる前の状態の脚部の拡大斜視図である。 図4(a)は、トンネルのアーチ形状部分から側壁上部の掘削内周面に沿って設置される鋼製支保工を説明する略示横断面図、図4(b)は、さらに下方の地盤を掘削して、鋼製支保工に側壁下部の支保工を接続した状態の略示横断面図である。 図5(a)は、トンネルのアーチ形状部分から側壁下部の掘削内周面に沿って設置される鋼製支保工及び側壁下部の支保工を説明する略示横断面図、図5(b)は、さらに下方の地盤を掘削して、側壁下部の支保工にインバート部用の支保工を接続した状態の略示横断面図である。
本発明の好ましい一実施形態に係る鋼製支保工の脚部補強構造10は、例えばNATM工法等の公知の山岳トンネル工法によって掘削された、上部にアーチ形状部分を含む断面形状を有するトンネルとして、好ましくは馬蹄形の断面形状を有するトンネル30(図4(b)、図5(b)参照)において、図4(a)に示すように、アーチ形状部分から側壁上部にかけてトンネル30を掘削した段階で、掘削されたアーチ形状部分から側壁上部の掘削内壁面32に沿って設置される鋼製支保工11の下端部分11aが、当該鋼製支保工11の下方の地盤を掘削して、図4(b)に示す側壁下部の支保工33が接続されるまでの間、掘削直後の掘削内壁面32からの荷重を受けて沈下することになるのを、効果的に防止できるようにするための補強構造しとして採用されたものである。本実施形態の鋼製支保工の脚部補強構造10は、簡易な構成によって、鋼製支保工11によるトンネル30の掘削側部底面部31への接地面積を増大させることにより、掘削側部底面部31における鋼製支保工11の下端部分11aの沈下を効果的に抑制して回避できるようになっていると共に、構成部材を現場において容易に加工したり製作したりできるようにし、また地山の性状の変化に応じて寸法や大きさを容易に変更できるようになっている。
そして、本実施形態の鋼製支保工の脚部補強構造10は、山岳トンネル工法において、上部にアーチ形状部分を含む断面形状を有するトンネル30の掘削内壁面32に沿って設置される、鋼製支保工11の下端部分11aである脚部を補強するための補強構造であって(図4(a)、(b)参照)、トンネル30のアーチ形状部分から側壁部分にかけて設置される鋼製支保工11の下端部において、図1~図3に示すように、鋼製支保工11からトンネル30の軸方向Xの両側に張り出して設けられた一対の底辺部内側係止部12と、これらの一対の底辺部内側係止部12に内側端部13aが各々係止されると共に、鋼製支保工11の脚部11aの外側に余堀りされた拡幅補強余掘部16の底部16aに沿って配置される一対の底辺部継ぎ部材13と、これらの一対の底辺部継ぎ部材13の外側端部13bに下端部14aが各々係止されると共に、上端部14bが鋼製支保工11の脚部11bからトンネル30の軸方向Xの両側に張り出して設けられた、上部張出し係止部18に各々係止される一対の斜辺部継ぎ部材14と、これらの一対の斜辺部継ぎ部材14に跨るようにして支持されて、これらの外側を覆って取り付けられた金網状部材15と、拡幅補強余掘部16を充填するように吹き付けられて、底辺部継ぎ部材13、斜辺部継ぎ部材14及び金網状部材15と一体となって硬化した吹付け硬化材17とを含んで構成されている。
また、本実施形態では、鋼製支保工11の下端プレート11cの下方に重ねて配置されて接地面積を拡大する、接地面拡大用鋼板19が、下端プレート11cからトンネル30の軸方向Xの両側に張り出すようにして取り付けられており、一対の底辺部内側係止部12は、接地面拡大用鋼板19における両側の張出し部分19aに各々固定されて設けられている。
さらに、本実施形態では、図3に示すように、間隔をおいて隣接する各一対の鋼製支保工11の各々に、一対の底辺部内側係止部12、一対の底辺部継ぎ部材13、及び一対の斜辺部継ぎ部材14が各々取り付けられており、拡幅補強余掘部16は、隣接する各一対の鋼製支保工11の下端部分11aの外側に、これらの領域に跨るように連続して余掘りされており、金網状部材15は、図2に示すように、これらの領域に跨るように連続して、各々の一対の斜辺部継ぎ部材14に支持されてこれの外側を覆って取り付けられており、吹付け硬化材17(図1参照)は、隣接する各一対の鋼製支保工11の下端部分11aの外側の領域に跨るように連続して、余堀りされた拡幅補強余掘部16の全体を充填するように吹き付けられて、底辺部継ぎ部材13、斜辺部継ぎ部材14及び金網状部材15と一体となって硬化している。
本実施形態では、トンネル30の掘削内壁面32に沿って設置される鋼製支保工11は、例えばH型鋼を、図4(a)、(b)に示すように、トンネル30の掘削内壁面32に沿った、アーチ形状部分を含む形状となるように曲折加工することによって形成することができる。鋼製支保工11は、トンネル30の切羽面に近接する領域において、トンネル30の掘削作業の進行に伴って、公知の施工方法によりトンネル30の掘削内壁面32に沿うように配設されて、トンネル30の軸方向X(図2参照)に、例えば100cm程度の間隔をおいて、外周面となる外側フランジ11dを、トンネル30の掘削内壁面32に対向させた状態で(図1参照)、順次設置されることになる。
本実施形態の脚部補強構造10を構成する底辺部内側係止部12は、図1及び図3に示すように、例えば鋼製の円筒形状のスリーブ部材からなり、上述のように、好ましくは鋼製支保工11の下端プレート11cに重ねて取り付けられた、接地面拡大用鋼板19の両側の張出し部分19aに各々固定されることで、鋼製支保工11の下端部において、鋼製支保工11からトンネル30の軸方向Xの両側に張り出した状態で設けられている。接地面拡大用鋼板19は、トンネル30の軸方向Xの長さが大きくなった、縦長矩形の平面形状を備えており、略正方形の平面形状を備える下端プレート11cの下方に、後述する袋ナット21a及びボルト部材21bを用いて取り付けられることで、トンネル30の軸方向Xの両側に、下端プレート11cから張出し部分19aを張り出させている。本実施形態では、鋼製の円筒形状のスリーブ部材からなる底辺部内側係止部12は、接地面拡大用鋼板19における両側の張出し部分19aの外側の縁部分に沿ってトンネル30の軸方向Xに延設して、溶接等により各々固着された状態で取り付けられている。
また、本実施形態では、鋼製支保工11の接続板となる下端プレート11cには、例えば特開2018-127802号公報に記載の上側の支保工部材と同様に、側壁下部の支保工33(図1参照)と接続するための接続孔や袋ナット21aが、H型鋼のリブプレート11eを挟んだ両側に各々設けられている(図2参照)。これらの接続孔や袋ナット21aを利用して、ボルト部材21b(図1参照)を各々締着させることで、接地面拡大用鋼板19を、下端プレート11cに一体として強固に取り付けることができるようになっている。鋼製支保工11の下端プレート11cに、接地面拡大用鋼板19が一体として取り付けられていることにより、鋼製支保工11の下端プレート11cによる接地面積を拡大して、応力の分散を図ることで、拡幅補強余掘部16を充填して吹き付けられた吹付け硬化材17が硬化するまでの間、建て込まれた鋼製支保工11を、より安定させた状態で設置しておくことが可能になる。
本実施形態では、鋼製支保工11から張り出して設けられた底辺部内側係止部12に係止される底辺部継ぎ部材13は、円筒形状の当該底辺部内側係止部12に挿入係止することが可能な太さを有する、例えば鉄筋棒からなり、図3に示すように、好ましくは両側の端部13a,13bが係止部として垂直方向に折り曲げられた形状を備えている。鉄筋棒からなる底辺部継ぎ部材13は、例えば両側の端部13a,13bの間の直線部分を切断したり、溶接等により接合したりすることによって、その長さを容易に調節できるようになっている。底辺部継ぎ部材13は、鋼製支保工11の脚部11aの外側に、好ましくは略直角三角形状の断面形状を備えるように余堀りされた拡幅補強余掘部16の底部16aに沿って、各々の鋼製支保工11の両側に平行に一対並べて配置されて、略直角三角形状の底辺部を形成するように設けられている。各々の底辺部継ぎ部材13は、これの一方の内側端部13aが、円筒形状の底辺部内側係止部12に挿入係止されると共に、他方の外側端部13bには、斜辺部継ぎ部材14の下端部の円筒形状の係止部14aが各々係止されることになる。
本実施形態では、斜辺部継ぎ部材14は、図2及び図3に示すように、好ましくは細長い帯板形状の鋼製プレート部材となっており、各々の鋼製支保工11の下端部分11aを挟んだ両側に、一対平行に並べて配置されて設けられている。鋼製プレート部材による斜辺部継ぎ部材14には、上端部となる一端部に、フック状の係止部14bが、例えばU字形状に湾曲して折り返された状態で設けられていると共に、下端部となる他端部に、円筒形状の係止部14aが、例えば鋼製のパイプ部材を溶接等により固着することによって取り付けられている。各々の斜辺部継ぎ部材14は、上端部のフック状の係止部14bを、鋼製支保工11の側壁部分からトンネル30の軸方向Xの両側に張り出して設けられた上部張出し係止部18として、好ましくは後述する支保工継ぎ部材22に引っ掛けるようにして係止すると共に、下端部の円筒形状の係止部14aに、底辺部継ぎ部材13の外側端部13bを横方向から挿入係止することによって、略直角三角形状の斜辺部を形成するように各々設けられている。細長い帯板形状の鋼製プレート部材からなる斜辺部継ぎ部材14は、例えば両側の係止部14a,14bの間の直線部分を切断したり、溶接等により接合したりすることによって、その長さを容易に調節できるようになっている。
ここで、本実施形態では、図3に示すように、トンネル30の軸方向Xに隣接する一対の鋼製支保工11の間隔部分に跨って、これらの一対の鋼製支保工11の間に所定の間隔を保持できるようにするめのスペーサとして機能する、支保工継ぎ部材22が取り付けられている。支保工継ぎ部材22は、例えば両側の端部係止部22aを垂直方向に折り曲げた、好ましくは所定の長さを有する鉄筋棒からなる。支保工継ぎ部材22は、隣接する鋼製支保工11の各々の下端部分である脚部11aにおいて、トンネル30の掘削内壁面32と対向する外側フランジ11dの内側における、リブプレート11eとの接合角部分に溶接等により固着された係止スリーブ11fに、両側の端部係止部22aを各々挿入係止することによって、鋼製支保工11の脚部11aからトンネル30の軸方向Xの両側に張り出した状態で設けられている。本実施形態では、これらの支保工継ぎ部材22を、上部張出し係止部18として用いて、斜辺部継ぎ部材14の上端部のフック状の係止部14bを、係止させることができるようになっている。
本実施形態では、複数の斜辺部継ぎ部材14に跨るようにして、これらの外側を覆って取り付けられた金網状部材15は、吹付けコンクリートや吹付モルタル等による吹付け硬化材に埋設されて、これらを補強する部材として公知の、各種の金網部材を適宜選択して用いることができる。金網状部材15は、吹付け硬化材である例えば吹付けコンクリートが一次覆工として吹き付けられる、アーチ形状部分から側壁上部にかけた、トンネル30の掘削内壁面32に沿って配設されると共に、図1に示すように、鋼製支保工11の脚部11aの外側の拡幅補強余掘部16においては、略直角三角形の断面形状の斜辺部に沿って、複数の斜辺部継ぎ部材14に跨るようにして支持されて、公知の取り付け方法によって、これらの外側を覆って取り付けられることになる。また本実施形態では、上述のように、拡幅補強余掘部16は、隣接する各一対の鋼製支保工11の下端部分11aの外側に、これらの領域に跨るように連続して余掘りされているので、金網状部材15は、図2に示すように、これらの領域に跨るように連続して、各々の一対の斜辺部継ぎ部材14に支持されてこれの外側を覆って取り付けられることになる。
本実施形態の脚部補強構造10を構成するこれらの部材を取り付けたら、アーチ形状部分から側壁下部にかけたトンネル30の掘削内壁面32に沿って、吹付け硬化材17として好ましくは吹付けコンクリートを吹き付けて、一次覆工を施工すると共に、これと連続して吹付けコンクリートを、拡幅補強余掘部16を充填するようして、当該拡幅補強余掘部16に吹き付けることによって、脚部補強構造10を形成する。また本実施形態では、上述のように、拡幅補強余掘部16は、隣接する各一対の鋼製支保工11の下端部分11aの外側に、これらの領域に跨るように連続して余掘りされているので、吹付け硬化材17(図1参照)は、隣接する各一対の鋼製支保工11の下端部分11aの外側の領域に跨るように連続して、余堀りされた拡幅補強余掘部16の全体を充填するように吹き付けられる。吹き付けられた例えば吹付けコンクリートによる吹付け硬化材17が、底辺部継ぎ部材13、斜辺部継ぎ部材14及び金網状部材15と一体となって硬化することで、本実施形態の鋼製支保工の脚部補強構造10が形成されることになる。
そして、上述の構成を備える本実施形態の鋼製支保工の脚部補強構造10によれば、現場での構成部材の加工や製作を容易に行なうことが可能になると共に、地山の性状の変化に応じて寸法や大きさを容易に変更することが可能になり、また簡易な構成によって鋼製支保工が沈下するのを効果的に防止することが可能になる。
すなわち、本実施形態によれば、脚部補強構造10は、鋼製支保工11からトンネル30の軸方向Xの両側に張り出して設けられた一対の底辺部内側係止部12と、これらの底辺部内側係止部12に係止されると共に、拡幅補強余掘部16の底部16aに沿って配置される一対の底辺部継ぎ部材13と、これらの底辺部継ぎ部材13に下端部14aが係止されると共に、上端部14bが上部張出し係止部18に係止される一対の斜辺部継ぎ部材14と、これらの斜辺部継ぎ部材14に支持されて、これらの外側を覆って取り付けられた金網状部材15と、拡幅補強余掘部16を充填するように吹き付けられて、底辺部継ぎ部材13、斜辺部継ぎ部材14及び金網状部材15と一体となって硬化した吹付け硬化材17とを含んで構成されている。
これによって、本実施形態によれば、例えば底辺部継ぎ部材13や斜辺部継ぎ部材14の太さや幅を適宜調整したり、長さを適宜調整したりすることによって、地山の性状の変化に応じて寸法や大きさを容易に変更することが可能になると共に、現場での加工や製作を容易に行なうことが可能になる。また、拡幅補強余掘部16に吹付け硬化材17を充填する作業は、例えば吹付け硬化材17として吹付けコンクリートを用いた一次覆工を施工する作業に連続させて、容易に行なうことが可能になると共に、拡幅補強余掘部16に吹き付けられた吹付け硬化材17が、底辺部継ぎ部材13、斜辺部継ぎ部材14、金網状部材15及び鋼製支保工11の脚部11aと一体となって硬化することによって、鋼製支保工11の下端部の掘削側部底面部31に対する接地面積を増大させて、より広い面積に荷重を分散させることで、簡易な構成によって、鋼製支保工11が沈下するのを効果的に防止することが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、斜辺部継ぎ部材は、細長い帯板形状の鋼製プレート部材である必要は必ずしもなく、丸鋼や異形鉄筋、FRP製の棒状部材や板状部材等であっても良い。斜辺部継ぎ部材の一端部や他端部の係止部は、フック状の係止部や円筒形状の係止部以外の、その他の種々の構造の係止部であっても良い。底辺部継ぎ部材もまた、両側の端部が係止部として折り曲げられた鉄筋棒である必要は必ずしも無く、丸鋼や長尺の鋼板、FRP製の棒状部材等であっても良い。円形の断面形状以外の、例えば星形や多角形等の非円形の断面形状とすることにより、例えば吹付けコンクリートとの親和性を向上させることが可能になる。底辺部継ぎ部材の一端部や他端部の係止部もまた、フック状の係止部以外の、その他の種々の構造の係止部であっても良い。
また、拡幅補強余掘部は、隣接する一対の鋼製支保工の下端部分の外側に、これらの領域に跨るように連続して余掘りされている必要は必ずしも無く、金網状部材は、これらの領域に跨るように連続して取り付けられている必要はない。拡幅補強余掘部や金網状部材は、個々の鋼製支保工の脚部の外側に、各々独立して設けられていても良く、吹付け硬化材は、個々の拡幅補強余掘部毎に充填されて、底辺部継ぎ部材、斜辺部継ぎ部材及び金網状部材と一体となって硬化していても良い。
さらに、本発明の鋼製支保工の脚部補強構造10は、図4(a)、(b)に示すように、アーチ形状部分から側壁上部にかけてトンネル30を掘削した段階で、掘削されたアーチ形状部分から側壁上部の掘削内壁面32に沿って設置される鋼製支保工11の下端部分11aが、掘削直後の掘削内壁面32からの荷重を受けて沈下することになるのを、効果的に防止できるようにするための補強構造しとして採用できる他、好ましくは図5(a)に示すように、アーチ形状部分から側壁下部にかけてトンネル30を掘削した段階で、掘削されたアーチ形状部分から側壁下部の掘削内壁面32に沿って設置される鋼製支保工11及び側壁下部の支保工33が、当該側壁下部の支保工33の下方の地盤をさらに掘削して、図5(b)に示すインバート部用の支保工34が接続されるまでの間、掘削内壁面32からの荷重を受けて沈下することになるのを、効果的に防止できるようにするための補強構造しとして採用することも可能である。
10 鋼製支保工の脚部補強構造
11 鋼製支保工
11a 脚部(下端部分)
11c 下端プレート
11d 外側フランジ
11e リブプレート
11f 係止スリーブ
12 底辺部内側係止部
13 底辺部継ぎ部材
13a 内側端部
13b 外側端部
14 斜辺部継ぎ部材
14a 下端部(円筒形状の係止部)
14b 上端部(フック状の係止部)
15 金網状部材
16 拡幅補強余掘部
16a 底部
17 吹付け硬化材
18 上部張出し係止部
19 接地面拡大用鋼板
19a 張出し部分
21a 袋ナット
21b ボルト部材
22 支保工継ぎ部材
22a 端部係止部
30 トンネル
31 掘削側部底面部
32 掘削内壁面
33 側壁下部の支保工
34 インバート部用の支保工
X トンネルの軸方向

Claims (7)

  1. 山岳トンネル工法において、上部にアーチ形状部分を含む断面形状を有するトンネルの掘削内壁面に沿って設置される、鋼製支保工の下端部分である脚部を補強する鋼製支保工の脚部補強構造であって、
    トンネルのアーチ形状部分から側壁部分にかけて設置される前記鋼製支保工の下端部において、前記鋼製支保工からトンネルの軸方向の両側に張り出して設けられた一対の底辺部内側係止部と、該一対の底辺部内側係止部に内側端部が各々係止されると共に、前記鋼製支保工の下端部分の外側に余堀りされた拡幅補強余掘部の底部に沿って配置される一対の底辺部継ぎ部材と、該一対の底辺部継ぎ部材の外側端部に下端部が各々係止されると共に、上端部が前記鋼製支保工の側壁部分からトンネルの軸方向の両側に張り出して設けられた、上部張出し係止部に各々係止される一対の斜辺部継ぎ部材と、該一対の斜辺部継ぎ部材に跨るようにして支持されて、これらの外側を覆って取り付けられた金網状部材と、前記拡幅補強余掘部を充填するように吹き付けられて、前記底辺部継ぎ部材、前記斜辺部継ぎ部材及び前記金網状部材と一体となって硬化した吹付け硬化材とを含んで構成される山岳トンネル工法における鋼製支保工の脚部補強構造。
  2. 前記鋼製支保工の下端プレートの下方に重ねて配置されて接地面積を拡大する、接地面拡大用鋼板が、前記下端プレートからトンネルの軸方向の両側に張り出すようにして取り付けられており、前記一対の底辺部内側係止部は、前記接地面拡大用鋼板における両側の張出し部分に各々固定されて設けられている請求項1記載の山岳トンネル工法における鋼製支保工の脚部補強構造。
  3. 前記接地面拡大用鋼板は、前記鋼製支保工の前記下端プレートの上面側に固定された袋ナットを介して、ボルト部材を用いて前記下端プレートに重ねて取り付けられている請求項2記載の山岳トンネル工法における鋼製支保工の脚部補強構造。
  4. 前記斜辺部継ぎ部材は、上端部となる一端部に、フック状の係止部が設けられていると共に、下端部となる他端部に、円筒形状の係止部が取り付けられている、細長い帯板形状の鋼製プレート部材となっている請求項1~3のいずれか1項記載の山岳トンネル工法における鋼製支保工の脚部補強構造。
  5. 前記底辺部継ぎ部材は、両側の端部が係止部として折り曲げられた、鉄筋棒となっている請求項1~4のいずれか1項記載の山岳トンネル工法における鋼製支保工の脚部補強構造。
  6. 前記上部張出し係止部は、トンネルの軸方向に隣接する一対の前記鋼製支保工の間隔部分に跨って取り付けられている、支保工継ぎ部材によるものとなっている請求項1~5のいずれか1項記載の山岳トンネル工法における鋼製支保工の脚部補強構造。
  7. 間隔をおいて隣接する一対の前記鋼製支保工の各々に、前記一対の底辺部内側係止部、前記一対の底辺部継ぎ部材、及び前記一対の斜辺部継ぎ部材が取り付けられており、前記拡幅補強余掘部は、隣接する一対の前記鋼製支保工の下端部分の外側に、これらの領域に跨るように連続して余掘りされており、前記金網状部材は、これらの領域に跨るように連続して、各々の前記一対の斜辺部継ぎ部材に支持されてこれらの外側を覆って取り付けられており、前記吹付け硬化材は、隣接する一対の前記鋼製支保工の下端部分の外側の領域に跨るように連続して、余堀りされた前記拡幅補強余掘部の全体を充填するように吹き付けられて、前記底辺部継ぎ部材、前記斜辺部継ぎ部材及び前記金網状部材と一体となって硬化している請求項1~5のいずれか1項記載の山岳トンネル工法における鋼製支保工の脚部補強構造。
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