JP7421420B2 - 二相ステンレス鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、二相ステンレス鋼に関する。
ステンレス鋼は塩化物イオンを含む環境下において孔食と呼ばれる腐食を生じることがあり、環境に適した耐孔食性を確保することが重要視される。ステンレス鋼の中でもフェライト-オーステナイト系二相ステンレス鋼は高強度を有し、熱交換器、化学プラント用配管等、様々な用途で使用されている。二相ステンレス鋼の耐孔食性に関し、PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]で表される耐孔食性指数が知られており、PREが高いほど耐孔食性が高いとされる。
一方、硫酸環境のような全面腐食が生じる条件では、ステンレス鋼のクロム含有量が多いと耐硫酸腐食性が劣化することが報告されている(非特許文献1)。そのため、塩化物イオンを含む硫酸環境のような耐孔食性と耐硫酸腐食性とが同時に要求される環境では、別の解決策が必要になる。特許文献1には、Cr、Ni、Cu、Mn、Mo、及びSnの各含有量から求められるGI値が80以上であることなどで耐酸性が向上した二相ステンレス鋼の発明が記載されている。また、特許文献2には、Cr、Ni、Cu、Mn及びMoの各含有量から求められるGI値が50以上であり、さらにフェライト相のGI値がオーステナイト相のGI値以上であることなどで耐酸性が向上した二相ステンレス鋼の発明が記載されている。
特開2012-201960号公報 特開2013-227669号公報
松橋亮,資源と素材,Vol.113,p.799-804,1997. 小若正倫,日本金属学会誌,Vol.17,No.8,p.657-665,1978. 岡村賢ら,第61回材料と環境討論会講演集,p.511,2014. 沼田光裕ら、鉄と鋼、Vol.97,No.1,p.1-6,1997.
特許文献1、2に記載の二相ステンレス鋼は、いずれもニッケル含有量を低減させ、マンガン含有量を増加させることで低コスト化しつつ良好な耐酸性を有する二相ステンレス鋼である。一方、非特許文献2には、マンガンは耐孔食性を劣化させる元素であることが記載されており、特許文献1、2に記載のマンガン含有量の多い二相ステンレス鋼の場合、高濃度の塩化物イオンを含むような環境下では孔食が発生しやすくなると予想される。近年、石炭火力発電の排ガス再加熱装置で排ガス中のSOから塩化物イオンを含む高温の硫酸が生成され、比較的耐孔食性が高い汎用二相ステンレス鋼のSUS329J4Lに孔食が発生した事例が報告されており(非特許文献3)、高濃度塩化物イオンを含む硫酸環境においては、従来の二相ステンレス鋼では、耐孔食性及び耐硫酸腐食性が共に十分なものではない。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、耐孔食性及び耐硫酸腐食性が共に良好な二相ステンレス鋼を提供することである。
上記課題を解決するためになされた発明は、C:0.03質量%以下、Si:0.2質量%以上1.0質量%以下、Mn:0.4質量%以上1.0質量%以下、P:0.03質量%以下、S:0.002質量%以下、Cr:25.0質量%以上26.0質量%以下、Ni:5.5質量%以上7.5質量%以下、Mo:3.0質量%以上3.5質量%以下、Cu:0.2質量%以上0.6質量%以下、N:0.24質量%以上0.35質量%以下、及びSn:0.04質量%以上0.35質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であり、下記式(a)で表されるPRE値が39.0以上42.0以下であり、下記式(b)で表されるGCE値が30.0以上40.0以下である二相ステンレス鋼である。
PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N] ・・・(a)
GCE=-[Cr]+5[Ni]+7[Mo]+4[Cu]+25[Sn]-16[N] ・・・(b)
(式(a)及び(b)中、[Cr]、[Mo]、[N]、[Ni]、[Cu]及び[Sn]は、それぞれの成分の含有量(質量%)を表す。)
当該二相ステンレス鋼は、上記成分組成を有するため、耐孔食性及び耐硫酸腐食性が共に良好である。具体的には、上記式(a)を満たし且つマンガン含有量が比較的低いことなどにより、良好な耐孔食性を示す。一方、スズ含有量及び窒素含有量などが適切な範囲であって且つ上記式(b)を満たすことにより、良好な耐硫酸腐食性を示す。ここで、上記式(a)で表されるPRE値からわかるように、耐孔食性の点からは窒素含有量は大きい方が好ましい。しかし、本発明者らは、窒素含有量は耐硫酸腐食性に影響を与えることを知見し、上記特許文献1、2に記載の窒素含有量を考慮していないGI値は耐硫酸腐食性の指標としては十分ではないため、耐硫酸腐食性の指標として窒素含有量を考慮した上記式(b)を見いだした。そのため、当該二相ステンレス鋼においては、窒素含有量が所定範囲であり、かつ窒素含有量を考慮した上記式(b)で表されるGCE値を満たすことからも、耐硫酸腐食性が良好になる。
当該二相ステンレス鋼は、Al:0.001質量%以上0.02質量%以下、及びMg:0.0001質量%以上0.01質量%以下からなる群より選ばれる1種又は2種をさらに含有することが好ましい。これにより、耐孔食性等をより高めることができる。
当該二相ステンレス鋼は、B:0.001質量%以上0.003質量%以下をさらに含有することが好ましい。これにより、耐孔食性や熱間加工性等を高めることができる。
本発明によれば、耐孔食性及び耐硫酸腐食性が共に良好な二相ステンレス鋼を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る二相ステンレス鋼について詳説する。
[二相ステンレス鋼]
本発明の一実施形態に係る二相ステンレス鋼は、特定の成分組成を有し、これにより、耐孔食性及び耐硫酸腐食性が共に良好なものとなる。
(成分組成)
当該二相ステンレス鋼は、所定量のC、Si、Mn、P、S、Cr、Ni、Mo、Cu、N及びSnを含有し、残部がFe及び不可避的不純物である。さらに、当該二相ステンレス鋼は、所定量のAl及びMgからなる群より選ばれる1種又は2種、並びに所定量のBを含有することが好ましい。以下、各成分の含有量の数値範囲とその限定理由について説明する。
(C:0.03質量%以下)
C(炭素)は鋼中に固溶して、強度を向上させる元素である。但し、Cの含有量が0.03質量%を超えると、溶接等の入熱に伴って鋭敏化し、耐食性、耐孔食性等が劣化する。Cの含有量の上限は、0.025質量%が好ましく、0.022質量%がより好ましく、0.020質量%がさらに好ましい。一方、Cの含有量の下限は、上記強度向上効果を十分発揮させるためには、0.001質量%が好ましく、0.006質量%がより好ましく、0.012質量%がさらに好ましい。
(Si:0.2質量%以上1.0質量%以下)
Si(ケイ素)は脱酸剤として有効な元素である。この効果を得るために、Siの含有量の下限は0.2質量%であり、0.3質量%が好ましく、0.34質量%がより好ましい。一方、Siが過剰に含有することによる延性の低下を抑制するために、Siの含有量の上限は、1.0質量%であり、0.7質量%が好ましく、0.5質量%がさらに好ましい。
(Mn:0.4質量%以上1.0質量%以下)
Mn(マンガン)は脱酸及び脱硫に有効な元素である。この効果を得るために、Mnの含有量の下限は0.4質量%であり、0.5質量%が好ましく、0.6質量%がより好ましい。一方、Mnが過剰に含有すると、孔食起点となる介在物の析出を引き起こし、耐孔食性が低下するため、Mnの含有量の上限は、1.0質量%であり、0.9質量%が好ましく、0.8質量%がより好ましい。
(P:0.03質量%以下)
P(リン)は鋼中に不可避的に含まれる元素であり、過剰に存在すると熱間加工性等が低下する。従って、Pの含有量の上限は、0.03質量%であり、0.025質量%が好ましく、0.02質量%がさらに好ましい。一方、Pの含有量の下限は、実質的に0質量%であってよく、0.001質量%、0.005質量%又は0.01質量%であってもよい。
(S:0.002質量%以下)
S(硫黄)は鋼中に不可避的に含まれる元素であり、過剰に存在すると熱間加工性、耐食性、耐孔食性等が低下する。従って、Sの含有量の上限は、0.002質量%であり、0.0015質量%が好ましい。一方、Sの含有量の下限は、実質的に0質量%であってよく、0.0001質量%又は0.0005質量%であってもよい。
(Cr:25.0質量%以上26.0質量%以下)
Cr(クロム)は不働態皮膜を形成し耐食性、耐孔食性等を向上させるための基本的な元素である。この効果を十分に得るために、Crの含有量の下限は25.0質量%であり、25.2質量%が好ましい。一方、Crが過剰に存在すると、溶接等の入熱を受けた場合にσ相等の金属間化合物を析出させ、耐食性、耐孔食性等が低下し易くなる。従って、Crの含有量の上限は26.0質量%であり、25.9質量%が好ましい。
(Ni:5.5質量%以上7.5質量%以下)
Ni(ニッケル)はオーステナイト相を増加及び安定化させるために必要な元素であり、また、活性溶解を抑制することで耐硫酸腐食性を向上させる効果もある。十分な耐孔食性及び耐硫酸腐食性を発揮するために、Niの含有量の下限は、5.5質量%であり、6.0質量%が好ましく、6.5質量%がより好ましい。一方、Niの過剰な添加は材料コストの増加に繋がるため、Niの含有量の上限は7.5質量%であり、7.3質量%が好ましい。
(Mo:3.0質量%以上3.5質量%以下)
Mo(モリブデン)は、不働態皮膜の再不働態化を促進させることで、耐食性、耐孔食性等を向上させる元素である。上記効果を得るために、Moの含有量の下限は、3.0質量%であり、3.1質量%が好ましい。一方、Moが過剰に存在すると、溶接等の入熱を受けた場合にσ相等の金属間化合物を析出させ、耐食性、耐孔食性等が低下し易くなる。従って、Moの含有量の上限は、3.5質量%であり、3.4質量%が好ましい。
(Cu:0.2質量%以上0.6質量%以下)
Cu(銅)は、ニッケルと同様にオーステナイト相を増加及び安定化させる作用をもつ元素であり、活性溶解を抑制することで耐硫酸腐食性を向上させる効果もある。十分な耐孔食性及び耐硫酸腐食性を発揮するために、Cuの含有量の下限は、0.2質量%であり、0.3質量%が好ましく、0.4質量%がより好ましい。一方、Cuの過剰な存在は、熱間加工性の低下等を招く。従って、Cuの含有量の上限は、0.6質量%であり、0.55質量%が好ましい。
(N:0.24質量%以上0.35質量%以下)
N(窒素)は、オーステナイト相に固溶して、強度、耐孔食性等を高める元素である。上記効果を得るために、Nの含有量の下限は、0.24質量%であり、0.25質量%が好ましい。一方、Nの過剰な存在は、耐硫酸腐食性を低下させ、また、溶接等の入熱時にクロム窒化物が形成することにより耐食性、耐孔食性等が低下する場合もある。従って、Nの含有量の上限は、0.35質量%であり、0.32質量%が好ましく、0.30質量%がより好ましい。
(Sn:0.04質量%以上0.35質量%以下)
Sn(スズ)は、溶液中にイオンとして溶出し活性溶解を抑制することで耐硫酸腐食性を向上させる効果を有する元素である。上記効果を得るために、Snの含有量の下限は、0.04質量%であり、0.05質量%が好ましい。一方、Snの過剰な存在は、Cuと同様に熱間加工性等の低下を招く。従って、Snの含有量の上限は、0.35質量%であり、0.33質量%が好ましい。
(Al:0.001質量%以上0.02質量%以下)
任意成分であるAl(アルミニウム)は、脱酸に有効な元素であり、必要に応じて添加することで、孔食を引き起こす好ましくない酸化物の生成を抑制することができる。上記効果を得るために、Alの含有量の下限は、0.001質量が好ましく、0.003がより好ましい。一方、Alの過剰な存在は、多量の酸化物の析出による耐食性や靭性の劣化を引き起こす。従って、Alの含有量の上限は、0.02質量%が好ましく、0.01質量%がより好ましい。
(Mg:0.0001質量%以上0.01質量%以下)
任意成分であるMg(マグネシウム)は、脱酸・脱硫に有効な元素であり、必要に応じて添加することで、孔食を引き起こす好ましくない酸化物・硫化物の生成を抑制することができる。上記効果を得るために、Mgの含有量の下限は、0.0001質量%が好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%がさらに好ましい。一方、Mgの過剰な存在は、多量の酸化物・硫化物の析出による耐食性や靭性の劣化を引き起こす。従って、Mgの含有量の上限は、0.01質量%が好ましく、0.005質量%がより好ましい。またCaはMgと同様の脱酸・脱硫効果を有することが非特許文献4に記載されていることから、Mgの代わりにCaを添加してもよい。Caを添加する場合のその含有量としては、例えば上記Mgの好適な含有量の範囲と同様である。
(B:0.001質量%以上0.003質量%以下)
任意成分であるB(ホウ素)は、熱間加工性、耐食性、耐孔食性等を向上させる元素であるが、過剰な存在はホウ素化物が析出し、かえって熱間加工性の低下を招く場合がある。従って、Bの含有量は0.001質量%以上0.003質量%以下が好ましい。
(Fe及び不可避的不純物)
当該二相ステンレス鋼を構成する成分組成の基本成分は上記のとおりであり、残部成分はFe及び不可避的不純物である。不可避的不純物は、溶製時に不可避的に混入する不純物などであり、鋼の諸特性を害さない範囲で含有される。また、当該二層ステンレス鋼の成分組成は、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、上記成分に加えて、さらに他の元素を含有していてもよい。
当該二相ステンレス鋼においては、下記式(a)表されるPRE値が39.0以上42.0以下である。
PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N] ・・・(a)
式(a)中、[Cr]、[Mo]及び[N]は、それぞれの成分の含有量(質量%)を表す。
当該二相ステンレス鋼は、PRE値が39.0以上であることで、良好な耐孔食性を示す。耐孔食性をより高める点から、PRE値は、39.7以上が好ましく、40.0以上がより好ましい。一方、PRE値が高過ぎる場合、金属間化合物の析出を引き起こす場合がある。このため、PRE値の上限は42.0であり、41.5が好ましい。
当該二相ステンレス鋼においては、下記式(b)で表されるGCE値が30.0以上40.0以下である。
GCE=-[Cr]+5[Ni]+7[Mo]+4[Cu]+25[Sn]-16[N] ・・・(b)
(b)中、[Cr]、[Ni]、[Mo]、[Cu]、[Sn]及び[N]は、それぞれの成分の含有量(質量%)を表す。
上記GCE値は、硫酸環境における全面腐食に対する耐性を示す指標であり、上記式(b)は、耐硫酸腐食性向上に効果のある元素であるNi、Mo、Cu及びSnの含有量、並びに耐硫酸腐食性を低下させる元素であるCr及びNの含有量と、測定した腐食速度とから求めた関係式である。当該二相ステンレス鋼は、GCE値が30.0以上であることで、良好な耐硫酸腐食性を示す。耐硫酸腐食性をより高める点から、GCE値は、32.0以上が好ましい。一方、GCE値が高過ぎる場合、コスト増や熱間加工性の低下を引き起こす場合がある。このため、GCE値の上限は40.0であり、39.0が好ましく、38.0がより好ましい。
(組織)
当該二相ステンレス鋼の組織は、実質的にフェライト相とオーステナイト相とからなり、残部は析出物及び介在物等である。
(製造方法)
当該二相ステンレス鋼の製造方法は特に限定されるものではない。当該二相ステンレス鋼は、通常、上記成分組成を有するように溶製することで得ることができる。溶製は、電気炉、真空脱炭炉等により行うことができる。溶製された二相ステンレス鋼は、例えば、造塊法によりインゴットに製造されてもよいし、連続鋳造法により鋳片(スラブ、ブルーム又はビレット)に製造されてもよい。
(形状、用途等)
当該二相ステンレス鋼の形状としては、特に限定されず、板状、棒状、管状等であってよいが、管状であることが好ましい。すなわち、当該二相ステンレス鋼は、鋼管として好適に用いられる。鋼管としては、シームレス鋼管、電縫鋼管、UOE鋼管やスパイラル鋼管等の溶接鋼管、鍛接鋼管等が挙げられる。
鋼管は、例えば、以下の方法で製造される。製造されたインゴット、スラブ、ブルーム等に対して熱間加工等を施してビレットを製造する。製造されたビレットを熱間加工等することにより鋼管が得られる。熱間加工は、例えばマンネスマン法による穿孔圧延を挙げることができる。熱間加工として熱間押出を実施してもよいし、熱間鍛造を実施してもよい。
鋼板は、例えば製造されたインゴット、スラブ等に対して熱間加工及び/又は冷間加工等を施して得ることができる。
当該二相ステンレス鋼は、耐孔食性を損なうことなく、高い耐硫酸腐食性を有する。従って当該二相ステンレス鋼は、耐孔食性と耐硫酸腐食性との双方が要求される用途に特に好適に用いることができる。当該二相ステンレス鋼は、例えば熱交換器、化学プラント配管、計装配管、煙突、排煙脱硫装置、排ガス処理設備等の鋼材として好適である。
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例及び比較例]No.1~5
真空誘導溶解炉(VIF)を用いて、表1に記載のNo.1の成分組成(残部はFe及び不可避的不純物)の150kg円柱状インゴットを作製した。インゴットを800~1250℃で熱処理し、1250℃~950℃の温度域で熱間鍛造を行いφ150×L800mmの棒材を作製した、さらにこの鋼材に熱間押出、冷間抽伸を加えOD25.4×WT2.0~2.2×L6000mmの鋼管を作製した。この鋼管から試験片(No.1)を採取し、以下の試験(耐孔食性評価及び耐硫酸腐食性評価)に使用した。
真空誘導溶解炉(VIF)を用いて、表1に記載のNo.2~5の各成分組成(残部はFe及び不可避的不純物)の20kg円柱状インゴットを作製した。インゴットを1150℃~1250℃で熱処理し、1200℃~950℃の温度域で熱間鍛造を行いW110mm×L700mm×t20mmの板材を作製した。さらにこの鋼材を長さ方向に3分割し、中央部の1枚を冷間圧延でW110mm×L330mm×t14mmに加工した。この圧延材を用いて1100℃、水冷で熱処理を行い、30×20×3mmtの試験片(No.2~5)を採取して以下の試験(耐孔食性評価及び耐硫酸腐食性評価)に使用した。
(耐孔食性評価)
上記各試験片を#600で研磨後、導線を溶接し10×10mmの試験面だけ残して試験片全体をシリコン被覆材で被覆した。この試験片を80℃の人工海水に10分浸漬後、ポテンショスタットで掃引速度20mV/minでアノード方向に電流密度が1mA/cmを超えるまで分極した。電流密度が100μA/cmを超えたときの電位を孔食電位とし、N=3で測定して平均を測定値とした。なお参照電極は飽和カロメル電極(SCE)を用いた。孔食電位が0.6V vs.SCE以上の場合、耐孔食性が良好(〇)であり、孔食電位0.6V vs.SCE未満の場合、耐孔食性が不十分(×)であると判定した。結果を表1に示す。
(耐硫酸腐食性評価)
上記各試験片を#600で研磨後、600mLの沸騰10%硫酸に24時間浸漬し、浸漬前後の質量変化から腐食速度を算出した。腐食速度が0.01g/m/hr未満の場合、耐硫酸腐食性が良好(〇)であり、腐食速度が0.01g/m/hr以上の場合、耐硫酸腐食性が不十分(×)であると判断した。結果を表1に示す。
Figure 0007421420000001
表1に示されるように、実施例のNo.1~3の各試験片においては、耐孔食性及び耐硫酸腐食性が共に良好であった。また、硫酸の腐食速度は、式(b)で表されるGCE値との相関性が高いことが確認できた。
本発明の二相ステンレス鋼は、一般的な二相ステンレス鋼と同様の用途に用いることができる。特に本発明の二相ステンレス鋼は、耐孔食性及び耐硫酸腐食性の双方が求められる用途に好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. C:0.03質量%以下、
    Si:0.2質量%以上1.0質量%以下、
    Mn:0.4質量%以上1.0質量%以下、
    P:0.03質量%以下、
    S:0.002質量%以下、
    Cr:25.0質量%以上26.0質量%以下、
    Ni:5.5質量%以上7.5質量%以下、
    Mo:3.0質量%以上3.5質量%以下、
    Cu:0.2質量%以上0.6質量%以下、
    N:0.24質量%以上0.35質量%以下、及び
    Sn:0.04質量%以上0.35質量%以下
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であり、
    下記式(a)で表されるPRE値が39.0以上42.0以下であり、
    下記式(b)で表されるGCE値が30.0以上40.0以下である二相ステンレス鋼。
    PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N] ・・・(a)
    GCE=-[Cr]+5[Ni]+7[Mo]+4[Cu]+25[Sn]-16[N] ・・・(b)
    (式(a)及び(b)中、[Cr]、[Mo]、[N]、[Ni]、[Cu]及び[Sn]は、それぞれの成分の含有量(質量%)を表す。)
  2. Al:0.001質量%以上0.02質量%以下、及び
    Mg:0.0001質量%以上0.01質量%以下
    からなる群より選ばれる1種又は2種をさらに含有する請求項1に記載の二相ステンレス鋼。
  3. B:0.001質量%以上0.003質量%以下
    をさらに含有する請求項1又は請求項2に記載の二相ステンレス鋼。
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