以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。ただし、以下の実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図を示す。本実施形態では、タイヤ1として、乗用車用の空気入りタイヤ、好ましくは空気入りラジアルタイヤが示されている。
本実施形態のタイヤ1は、好ましい態様として、トレッド部2のデザインによる性能をより有効に発揮させるために、車両への装着の向きが指定されている。これにより、トレッド部2には、車両装着時、車両内側に位置することが意図された内側トレッド端Tiと、車両外側に位置することが意図された外側トレッド端Toとが特定される。なお、車両への装着の向きは、例えば、タイヤ1のサイドウォール部(図示省略)に表示される。
本明細書において、内側トレッド端Ti及び外側トレッド端Toは、タイヤ1の正規荷重負荷状態において、トレッド部2の最もタイヤ軸方向外側の内外の接地位置として定められる。
また、本明細書において、「正規荷重負荷状態」とは、タイヤ1が、正規リム(図示せず)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填され、かつ、正規荷重が負荷されてキャンバー角が0°の状態で平面に接地させた状態を意味する。
また、本明細書において、「正規内圧状態」とは、タイヤ1が、正規リム(図示せず)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態を意味する。特に言及されていない場合、タイヤ1の各部の寸法は、この正規内圧状態で特定されるものとする。
また、本明細書において、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
また、本明細書において、「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
また、本明細書において、「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
図1に示されるように、タイヤ1のトレッド部2には、複数の周方向溝と、複数の陸部とが設けられている。
[周方向溝]
各周方向溝は、正規荷重負荷状態の接地面において、一対の溝壁が互いに接触しないような十分に大きい溝幅を有する。そのようなものとして、周方向溝の溝幅は、例えば、2.5mm以上、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは3.5mm以上とされる。同様に、周方向溝の最大深さは、例えば、5.0mm以上、好ましくは6.0mm以上とされるのが望ましい。このような周方向溝は、タイヤ1の基本的な排水性能を提供する。
本実施形態において、周方向溝は、内側クラウン周方向溝3A、内側ショルダー周方向溝4A、外側クラウン周方向溝3B及び外側ショルダー周方向溝4Bの4本からなる。これらの周方向溝3A、4A、3B及び4Bは、例えば、タイヤ周方向に沿って直線状に延びている。具体的には、周方向溝3A、4A、3B及び4Bは、トレッド部2の接地面において、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐにのびる一対の溝縁を有する。他の態様では、周方向溝は、波状やジグザグ形状に延びても良い。
内側クラウン周方向溝3Aは、タイヤ赤道Cと内側トレッド端Tiとの間に配されている。内側ショルダー周方向溝4Aは、内側クラウン周方向溝3Aと内側トレッド端Tiとの間に配されている。外側クラウン周方向溝3Bは、タイヤ赤道Cと外側トレッド端Toとの間に配されている。外側ショルダー周方向溝4Bは、外側クラウン周方向溝3Bと外側トレッド端Toとの間に配されている。
[陸部]
本実施形態では、トレッド部2に上記周方向溝3A、4A、3B及び4Bによって区分された5つの陸部が形成される。陸部は、クラウン陸部5、内側ミドル陸部6A、内側ショルダー陸部7A、外側ミドル陸部6B及び外側ショルダー陸部7Bからなる。各陸部のタイヤ軸方向の幅は、例えば、トレッド接地幅TWの10%以上とされるのが望ましい。なお、トレッド接地幅TWは、内側トレッド端Tiと外側トレッド端Toとの間のタイヤ軸方向の距離である。
クラウン陸部5は、内側クラウン周方向溝3Aと外側クラウン周方向溝3Bとの間に形成される。内側ミドル陸部6Aは、クラウン陸部5の内側トレッド端Ti側に隣接しており、内側クラウン周方向溝3Aと内側ショルダー周方向溝4Aとの間に形成される。内側ショルダー陸部7Aは、内側ミドル陸部6Aの内側トレッド端Ti側に隣接しており、内側ショルダー周方向溝4Aと内側トレッド端Tiとの間に形成される。外側ミドル陸部6Bは、クラウン陸部5の外側トレッド端To側に隣接しており、外側クラウン周方向溝3Bと外側ショルダー周方向溝4Bとの間に形成される。外側ショルダー陸部7Bは、外側ミドル陸部6Bの外側トレッド端To側に隣接しており、外側ショルダー周方向溝4Bと外側トレッド端Toとの間に形成される。
[主要な構成]
図2は、トレッド部2の外側トレッド端To側の部分拡大図である。図1及び図2に示されるように、本実施形態では、外側ミドル陸部6Bには、フルオープン型のミドルサイプ12(以下、「外側ミドルサイプ12」という。)が複数形成される。外側ミドルサイプ12は、タイヤ軸方向に対して傾斜している。また、外側ミドルサイプ12は、両側のサイプエッジ部がそれぞれ面取り部12aで形成されており、ミドルサイプ12の両端(内端12i、外端12o)での面取り幅が、ミドルサイプ12の長手方向の中央部の面取り幅よりも大きく構成されている。さらに、本実施形態では、外側ショルダー陸部7Bには、複数のショルダーサイプ14及び15(以下、それぞれ「第1外側ショルダーサイプ14」及び「第2外側ショルダーサイプ15」という。)が形成されており、これらは、タイヤ軸方向に対して、外側ミドルサイプ12と同じ向きに傾斜している。
本明細書において、サイプとは、正規荷重負荷状態の接地面において、一対のサイプ壁の少なくとも一部が互いに接触するような小さい幅で形成された切込みを意味し、例えば、1.5mm以下、好ましくは1.0mm以下の幅で形成される。また、本明細書において、「フルオープン型」のサイプとは、サイプの長さ方向の両端が、陸部の端(通常、周方向溝又はトレッド端)に開口しているサイプを意味する。さらに、本明細書において、「セミオープン型」のサイプとは、サイプの長さ方向の一端が、陸部の端(通常、周方向溝又はトレッド端)に開口し、他端は、陸部の内部において、他の溝と連通することなく閉じているサイプを意味する。
各サイプ12、14及び15は、接地時に閉じるように変形する。したがって、各サイプ12、14及び15は、接地時に閉じない横溝やラグ溝に比べると、走行時の変形が小さい。したがって、本実施形態のタイヤ1は、耐摩耗性に優れる。
一方、外側ミドル陸部6Bの周方向剛性が高すぎると、乗り心地の向上が期待できないが、本実施形態では、外側ミドルサイプ12の両側のサイプエッジ部は、それぞれ面取り部で形成される。加えて、外側ミドルサイプ12の両端での面取り幅は、外側ミドルサイプ12の長手方向の中央部の面取り幅よりも大きく構成される。これらにより、外側ミドル陸部6Bの幅方向の中央部の剛性を保ちながら、外側ミドル陸部6Bの両端側の剛性を低下させることができ、ひいては、耐摩耗性と乗り心地とが両立する。
さらに、第1及び第2外側ショルダーサイプ14及び15は、タイヤ軸方向に対して、外側ミドルサイプ12と同じ向きに傾斜しているため、外側ミドル陸部6B及び外側ショルダー陸部7Bの接地挙動が安定し、乗り心地及び耐摩耗性がより一層向上する。
以上のように、本実施形態のタイヤ1は、主として、外側トレッド端To側のパターン部分を改善することにより、乗り心地及び耐摩耗性を高めることができる。以降、本実施形態では、本発明にかかるミドル陸部及びショルダー陸部が、それぞれ、外側トレッド端To側の外側ミドル陸部6B及び外側ショルダー陸部7Bである場合を例にして説明される。
[外側ミドル陸部]
図2に示されるように、外側ミドル陸部6Bには、複数のフルオープン型の外側ミドルサイプ12が設けられている。外側ミドルサイプ12は、接地時の変形が横溝やラグ溝に比べて小さいため、外側ミドル陸部6Bの耐摩耗性を高める。また、外側ミドルサイプ12は、外側ミドル陸部6Bの変形を適度に促進させることで、外側ミドル陸部6Bの衝撃緩和能力を高め、乗り心地を向上させる。
本実施形態の外側ミドル陸部6Bは、サイプ以外の横溝や周方向溝は設けられていない。このような外側ミドル陸部6Bは、高いせん断ないし曲げ剛性を備える。したがって、外側ミドル陸部6Bは、旋回時等、大きな接地圧及びせん断力を受けながらも、優れた耐摩耗性を発揮する。
本実施形態において、外側ミドルサイプ12は、タイヤ軸方向に対して傾斜している。好ましい態様では、外側ミドルサイプ12は、そのタイヤ軸方向の内端12iからタイヤ軸方向の外端12oまで単一の円弧状又は直線状に延びている。このような構成によれば、外側ミドルサイプ12は、路面に徐々に接地することができるため、走行中のノイズを小さくすることができる。また、外側ミドル陸部6Bの剛性が、タイヤ周方向で徐々に変化するので、乗り心地が向上する。
一方、外側ミドルサイプ12のタイヤ軸方向に対する角度が大きくなると、外側ミドル陸部6Bの耐摩耗性が悪化するおそれがある。乗り心地と耐摩耗性とをバランス良く高めるために、外側ミドルサイプ12のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~40°の範囲、より好ましくは5~30°の範囲とされる。とりわけ、外側ミドルサイプ12は、タイヤ軸方向に対して、クラウンサイプ8と同じ向きに傾斜しているのが望ましい。これにより、耐摩耗性がさらに改善する。
図3は、図2の外側ミドルサイプ12の拡大図、図4は、図3のIV-IV線断面図、図5は、図3のV-V線断面図をそれぞれ示す。図3~図5に示されるように、外側ミドルサイプ12は、両側のサイプエッジ部が、それぞれ面取り部12aで形成されている、より詳細には、外側ミドルサイプ12は、サイプを構成する本体部12bと、面取り部12aとからなる。なお、サイプエッジ部とは、サイプと接地面とが交わるサイプエッジ(この例では、符号12eで示される)を含むサイプの接地面側の部分を意味し、他のタイプについても同様である。
本実施形態の面取り部12aは、本体部12bのサイプ壁と外側ミドル陸部6Bの接地面とが形成するコーナ部を斜めにカットしたような傾斜面で構成されている。他の態様では、面取り部12aは、図4の横断面において、円弧状の丸みや矩形状の凹みとして構成されても良い(いずれも図示省略)。面取り部12aは、外側ミドル陸部6Bの周方向剛性を緩和し、外側ミドル陸部6Bの衝撃緩和能力をさらに高めて、乗り心地を向上させる。また、面取り部12aは、サイプエッジ部の接地時の衝突音が低減させ、タイヤの静粛性を向上させるのに役立つ。
面取り部12aは、面取り幅12W1を有する。面取り幅12W1は、図3及び図4に示されるように、本体部12bのサイプ壁から、そのサイプエッジ12eまでの長さであり、本体部12bの長手方向と直交する方向に測定される。
面取り部12aの面取り幅12W1が大きくなると、乗り心地の向上効果が高まるが、そこでの変形量が大きくなるため、耐摩耗性が悪化するおそれがある。一方、面取り幅12W1が小さいと、乗り心地のさらなる改善が得られない。本実施形態では、これらを上手くバランスさせるために、外側ミドルサイプ12の両端(すなわち、内端12i及び外端12o)での面取り幅12W1が、外側ミドルサイプ12の長手方向の中央部12cの面取り幅12W1よりも大きく構成されている。ここで、中央部12cは、外側ミドルサイプ12の長さの中央10%の部分を意味する。
このような構成は、外側ミドル陸部6Bの中央部の剛性を保ちながら、外側ミドル陸部6Bの両端側の剛性が低下する。したがって、外側ミドル陸部6Bの接地時、その両側縁部での変形が促進されて、乗り心地がさらに向上する一方、外側ミドルサイプ12の中央部12cでは、外側ミドル陸部6Bの剛性が高く維持され、耐摩耗性を向上する。これにより、耐摩耗性と乗り心地とが両立する。
本実施形態では、面取り部12aの面取り幅12W1が、中央部12cから内端12i及び外端12oそれぞれに向かって増加している。好ましい態様として、面取り幅12W1は、連続的に増加している。さらに好ましい態様として、図3に示されるように、面取り幅12W1は、サイプエッジ12eが、本体部12b側に凸となる円弧(好ましくは、単一の円弧)を描くように、連続的に増加することが望ましい。このような構成により、乗り心地を高めながら、外側ミドル陸部6Bの耐摩耗性がさらに向上する。
一方、面取り幅12W1が過度に大きくなると、耐摩耗性が悪化する懸念がある。このような観点より、面取り幅12W1は、例えば、0.8~3.0mmの範囲、より好ましくは1.0~2.5mmの範囲とされるのが望ましい。好ましくは、各面取り部12aの面取り幅12W1において、最大値は最小値の1.5倍以上、より好ましくは2.0~3.0倍とされるのが望ましい。
図5に示されるように、面取り部12aは、外側ミドル陸部6Bの接地面からの面取り部12aのタイヤ半径方向の内側エッジ12fまでのタイヤ半径方向の長さである面取り深さ12D1を有する。面取り部12aの面取り深さ12D1が大きくなると、乗り心地の向上効果が高まるが、耐摩耗性が悪化する傾向がある。本実施形態では、図5に示されるように、外側ミドルサイプ12の内端12i及び外端12oでの面取り深さ12D1は、外側ミドルサイプ12の中央部12cの面取り深さ12D1よりも大きく構成されている。
上記構成によれば、外側ミドル陸部6Bの両側縁部での変形が促進されて、乗り心地がさらに向上する。逆に、面取り深さ12D1が小さい外側ミドルサイプ12の中央部12cは、外側ミドル陸部6Bの剛性を高く維持し、外側ミドル陸部6Bの耐摩耗性の悪化を抑制する。この作用は、面取り幅12W1の上記した好ましい構成との組み合わせにおいて、さらに有意なものとなる。
本実施形態では、面取り部12aの面取り深さ12D1が、中央部12cから内端12i及び外端12oそれぞれに向かって増加している。好ましい態様として、面取り深さ12D1は、連続的に増加している。さらに好ましい態様として、図5に示されるように、面取り深さ12D1は、内側エッジ12fがタイヤ半径方向外側に向かって凸となるように、連続的に増加することが望ましい。このような構成により、乗り心地を高めながら、外側ミドル陸部6Bの耐摩耗性がさらに向上する。
一方、面取り深さ12D1が過度に大きくなると、耐摩耗性が悪化する懸念がある。このような観点より、面取り深さ12D1は、例えば、0.8~3.0mmの範囲、より好ましくは1.0~2.5mmの範囲とされるのが望ましい。好ましくは、各面取り部12aの面取り深さ12D1において、最大値は最小値の1.5倍以上、より好ましくは2.0~3.0倍とされるのが望ましい。
また、図4に示されるように、外側ミドルサイプ12の面取り部12aを含んだ接地面での開口幅12W2は、乗り心地と耐摩耗性とを高い次元で満足させるために、例えば、2.4~6.0mmの範囲、さらには、3.0~5.0mmの範囲とされるのが望ましい。
図5に示されるように、外側ミドルサイプ12の深さ12D2は、外側クラウン周方向溝3Bに向かって深さが大きくなっている。外側ミドル陸部6Bには、タイヤ赤道C側により大きな接地圧が作用しがちであるため、外側ミドルサイプ12の内端12iでの深さを大きくすることで、乗り心地がさらに向上する。一方、外側ミドルサイプ12の外端12oでの深さを小さくすることで、旋回時の大きな横力に対する抵抗性を高め、耐摩耗性が向上する。本実施形態では、好ましい態様として、外側ミドルサイプ12の深さが、段差を含む階段状に変化しているが、連続的に変化するものでも良い。
特に好ましい態様では、外側ミドルサイプ12において、内端12iでの深さは、外側クラウン周方向溝3Bの最大深さの65%~85%とされ、外端12oでの深さは、外側クラウン周方向溝3Bの最大深さの45%~65%とされる。これにより、乗り心地と耐摩耗性とがさらにバランス良く向上する。
[外側ショルダー陸部]
図2に示されるように、外側ショルダー陸部7Bには、複数の第1ショルダーサイプ14(以下、「第1外側ショルダーサイプ14」という。)が形成されている。本実施形態では、外側ショルダー陸部7Bの接地面には、サイプ以外の横溝や周方向溝は設けられていない。これは、タイヤ1の耐摩耗性をより一層高めるのに役立つ。
[第1外側ショルダーサイプ]
第1外側ショルダーサイプ14は、例えば、外側ショルダー周方向溝4Bと外側トレッド端Toとを連通するように延びる、いわゆるフルオープン型として構成されている。このような第1外側ショルダーサイプ14は、特に旋回時に大きな接地圧を受けがちな外側ショルダー陸部7Bの衝撃緩和能力を高め、さらに乗り心地を向上させる。
第1外側ショルダーサイプ14は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。本実施形態の第1外側ショルダーサイプ14は、タイヤ軸方向に対して、外側ミドルサイプ12と同じ向きに傾斜している。これにより、外側ショルダー周方向溝4Bの両側周辺陸部において、接地時の変形挙動が安定し、乗り心地及び耐摩耗性がさらに向上する。
第1外側ショルダーサイプ14のタイヤ軸方向に対する傾斜の角度は、大きすぎると、第1外側ショルダーサイプ14を起点とする偏摩耗が生じやすくなる。したがって、乗り心地と偏摩耗との双方の性能を満足させるために、第1外側ショルダーサイプ14の前記角度は、好ましくは3~15°とされ、より好ましくは3~10°とされる。
本実施形態では、第1外側ショルダーサイプ14は、外側ショルダー周方向溝4Bを介して、外側ミドルサイプ12と滑らかに連続するような位置に配置される。具体的には、トレッド平面視において、タイヤ軸方向に隣接する第1外側ショルダーサイプ14及び外側ミドルサイプ12のペアにおいて、それぞれのサイプ中心線をそれぞれのサイプの形状に沿って外側ショルダー周方向溝4B内に延長したときに、両延長線が互いに交差するか、又は、2mm以内で離間している。このような構成によれば、外側ショルダー周方向溝4Bの内外の陸部剛性が最適化され、さらに優れた乗り心地及び耐摩耗性が得られる。
図6には、図2のVI-VI線断面図が示されている。図6に示されるように、各第1外側ショルダーサイプ14は、外側ショルダー周方向溝4Bから延びる第1部分14aと、外側トレッド端Toに連通し、かつ、第1部分14aよりも大きい深さを有する第2部分14bと、これらの間に配された第3部分14cとを含む。第3部分14cは、第1部分14a及び第2部分14bよりも、単位長さ当たりの深さの変化が大きい。本実施形態では、第3部分14cは、深さが連続的に変化している。このような第1外側ショルダーサイプ14は、外側ショルダー陸部7Bのタイヤ軸方向内側の剛性を過度に低下させることなく、乗り心地の向上を図ることができる。
第1部分14aのタイヤ軸方向の幅14aWは、上述の作用を効果的に発揮させるために、外側ショルダー陸部7Bのタイヤ軸方向の幅W4の、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上とされ、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下とされる。同様に、上述の作用を効果的に発揮させるために、第1部分14aの深さは、外側ショルダー周方向溝4Bの最大深さの、例えば5%~30%、好ましくは10%~25%の範囲とされるのが望ましい。好ましい態様では、第1外側ショルダーサイプ14の第1部分14aの深さは、外側ミドルサイプ12の外端12oでの面取り深さと同一であることが望ましい。これにより、外側ショルダー周方向溝4Bのタイヤ軸方向の両側陸部において、偏摩耗が抑制される。
第2部分14bは、外側トレッド端Toに向かって深さが連続的に減少している。また、第2部分14bは、外側トレッド端Toをタイヤ軸方向外側に越えている。このような第2部分14bを含む第1外側ショルダーサイプ14は、旋回時、接地面が外側トレッド端Toにシフトするような状況においても、外側ショルダー陸部7Bの柔軟性を確保し、乗り心地を高めることができる。
第2部分14bの最大深さは、操縦安定性の悪化を招くことなく、乗り心地を高めるために、外側ショルダー周方向溝4Bの最大深さの、例えば、45%~65%とされる。
[第2外側ショルダーサイプ]
図2に示されるように、本実施形態では、外側ショルダー陸部7Bに、さらに、複数の第2ショルダーサイプ15(以下、「第2外側ショルダーサイプ15」という。)が形成されている。第2外側ショルダーサイプ15は、例えば、一端が外側トレッド端Toに連通し、かつ、他端が外側ショルダー陸部7B内で閉じているセミオープン型として構成されている。このような第2外側ショルダーサイプ15は、特に旋回時に大きな接地圧を受けがちな外側ショルダー陸部7Bの衝撃緩和能力をさらに高め、より一層、乗り心地を向上させる。
第2外側ショルダーサイプ15は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。本実施形態の第2外側ショルダーサイプ15は、タイヤ軸方向に対して、第1外側ショルダーサイプ14と同じ向きに傾斜している。これにより、外側ショルダー陸部7Bにおいて、接地時の変形挙動が安定し、乗り心地や耐摩耗性がさらに向上する。
第2外側ショルダーサイプ15のタイヤ軸方向に対する傾斜の角度が大きすぎると、第2外側ショルダーサイプ15を起点とする偏摩耗が生じやすくなる。したがって、ノイズと偏摩耗との双方の性能を満足させるために、第2外側ショルダーサイプ15の前記角度は、好ましくは3~15°とされ、より好ましくは3~10°とされる。さらに、好ましくは、第2外側ショルダーサイプ15は、第1外側ショルダーサイプ14と平行に延びることが望ましい。
本実施形態では、第2外側ショルダーサイプ15は、タイヤ周方向に隣接する第1外側ショルダーサイプ14、14の間のブロックを、タイヤ周方向に二等分するような位置に配されている。このような構成によれば、外側ショルダー陸部7Bのタイヤ周方向の剛性が均一化され、さらに優れた乗り心地及び耐摩耗性が得られる。
図7には、図2のVII-VII線断面図が示されている。図7に示されるように、各第2外側ショルダーサイプ15は、そのタイヤ軸方向の内端15iからタイヤ軸方向外側に延びている。本実施形態では、第2外側ショルダーサイプ15は、タイヤ軸方向外側に向かって深さが連続的に減少している。このような第2外側ショルダーサイプ15は、旋回時、接地面が外側トレッド端Toにシフトするような状況においても、外側ショルダー陸部7Bの柔軟性を確保し、乗り心地を高めることができる。
上記作用を有意に発揮させるために、第2外側ショルダーサイプ15の内端15iは、例えば、外側ショルダー周方向溝4Bから、外側ショルダー陸部7Bのタイヤ軸方向の幅W4の、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上とされ、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下の距離W5を隔てて位置している。
第2外側ショルダーサイプ15の最大深さは、操縦安定性の悪化を招くことなく、乗り心地を高めるために、外側ショルダー周方向溝4Bの最大深さの、例えば、45%以上とされ、例えば、65%以下とされる。
図2に示されるように、本実施形態では、第1外側ショルダーサイプ14と第2外側ショルダーサイプ15との合計本数は、外側ミドルサイプ12の合計本数の2倍とされている。外側ショルダー陸部7Bに、外側ミドルサイプ12の2倍のショルダーサイプ14、15を設けることで、乗り心地を高めることができる。また、本実施形態の第1外側ショルダーサイプ14及び第2外側ショルダーサイプ15は、いずれも面取り部が設けられていない。このため、走行中のノイズの増加を抑えることもできる。
本実施形態のタイヤ1は、以上の主な構成により、乗り心地及び耐摩耗性を向上することができる。以下には、クラウン陸部5、内側ミドル陸部6A及び内側ショルダー陸部7Aの好ましい実施形態が説明される。
[クラウン陸部]
図8は、トレッド部2の内側トレッド端Ti側の部分拡大図である。図8に示されるように、クラウン陸部5には、セミオープン型のクラウンサイプ8が複数形成されている。クラウンサイプ8は、例えば、直線状に延びている。一方、クラウン陸部5には、サイプ以外の横溝や周方向溝は設けられていない。これは、タイヤ1の耐摩耗性をより一層高めるのに役立つ。
サイプは、横溝やラグ溝に比べると、走行時の変形が小さいのは上述のとおりである。特に、本実施形態のクラウンサイプ8は、一端のみがクラウン陸部5の端に開口するセミオープン型であるため、走行時の変形がさらに小さく抑えられる。また、各クラウンサイプ8は、クラウン陸部5の衝撃緩和能力を向上させ、乗り心地の悪化を抑える。したがって、本実施形態のクラウン陸部5は、乗り心地及び耐摩耗をさらに向上させる。
図9は、クラウンサイプ8の拡大平面図を示す。図10及び図11は、図9のX-X線及びXI-XI線断面図である。図9~11に示されるように、クラウンサイプ8は、両側のサイプエッジ部が、それぞれ面取り部8aで形成されている。より詳細には、クラウンサイプ8は、サイプを構成する本体部8bと、面取り部8aとからなる。
本実施形態の面取り部8aは、本体部8bのサイプ壁とクラウン陸部5の接地面5aとが形成するコーナ部を斜めにカットしたような傾斜面で構成されている。他の態様では、面取り部8aは、円弧状の丸みや矩形状の凹みとして構成されても良い(いずれも図示省略)。面取り部8aは、クラウンサイプ8による優れた耐摩耗性を損ねることなく、クラウン陸部5の衝撃緩和能力をさらに高め、乗り心地を向上させる。また、サイプエッジ部の接地時の衝突音が低減し、タイヤの静粛性も向上する。
本実施形態のクラウンサイプ8は、クラウン陸部5の内部で閉じている閉鎖端8oと、内側クラウン周方向溝3Aに位置する開口端8iとを含む。近年、多くの自動車は、ネガティブキャンバーを採用している。このため、クラウン陸部5の内側トレッド端Ti側に、より高い接地圧が作用する傾向があり、その部分での衝撃緩和能力が重要である。本実施形態のクラウンサイプ8は、クラウン陸部5の内側クラウン周方向溝3A側の衝撃緩和能力を相対的に高めることができ、乗り心地をさらに向上させる。
面取り部8aは、面取り幅8W1を有する。面取り幅8W1は、図9及び図10に示されるように、本体部8bのサイプ壁から、そのサイプエッジ8eまでの長さであって、本体部8bの長手方向と直交する方向に測定される。また、面取り部8aは、接地面5aからの面取り部8aの内側エッジ8fまでのタイヤ半径方向の長さである面取り深さ8D1を有する。
面取り部8aの面取り幅8W1が大きくなると、乗り心地の向上効果が高まるが、走行中の変形が大きくなる傾向がある。本実施形態では、図9に示されるように、面取り部8aの面取り幅8W1が、閉鎖端8oから開口端8i(すなわち、内側クラウン周方向溝3A)に向かって増加している。
上記構成は、接地圧が高くなりがちなクラウン陸部5の内側クラウン周方向溝3A側の衝撃緩和能力を効果的に高め、乗り心地をさらに向上させる。また、閉鎖端8o側での面取り幅8W1が相対的に小さい部分は、走行中の変形を抑制する。好ましい態様では、面取り幅8W1は、連続的に増加しても良い。さらに好ましい態様では、図9に示されるように、サイプエッジ8eが本体部8bに対して傾斜し、かつ、直線状に延びるように、面取り幅8W1が一定の割合で連続的に増加しても良い。
また、面取り部8aの面取り深さ8D1が大きくなると、乗り心地の向上効果が高まるが、走行中の変形が大きくなる傾向がある。本実施形態では、図11に示されるように、面取り部8aの面取り深さ8D1が、閉鎖端8oから開口端8iに向かって増加している。このような構成は、上記と同様の作用を発揮させる。好ましい態様では、面取り深さ8D1は、連続的に増加しても良い。さらに好ましい態様では、図11に示されるように、面取り深さ8D1は、内側エッジ8fが接地面に対して傾斜し、かつ、直線状に延びるように、一定の割合で連続的に増加しても良い。
一方、面取り幅8W1又は面取り深さ8D1が過度に大きくなると、耐摩耗性が悪化する懸念がある。このような観点より、面取り幅8W1及び面取り深さ8D1は、例えば、0.8~3.0mmの範囲、より好ましくは1.0~2.5mmの範囲とされるのが望ましい。
また、図10に示されるように、クラウンサイプ8の面取り部8aを含んだ接地面5aでの開口幅8W2は、乗り心地と耐摩耗性とを高い次元で満足させるために、例えば、2.4~6.0mmの範囲、さらには、3.0~5.0mmの範囲とされるのが望ましい。
図11に示されるように、クラウンサイプ8の深さ8D2は、内側クラウン周方向溝3Aに向かって深さが大きくなっている。このようなクラウンサイプ8は、接地圧が高くなりがちなクラウン陸部5の内側クラウン周方向溝3A側の衝撃緩和能力を効果的に高め、乗り心地をさらに向上させる。また、閉鎖端8o側でのクラウンサイプ8の深さが相対的に小さいため、走行中の変形の増加を抑制することもできる。本実施形態では、好ましい態様として、クラウンサイプの深さが、2以上の段差を含む階段状に変化しているが、連続的に変化するものでも良い。
クラウンサイプ8の深さ8D2が、過度に大きくなると、走行中のクラウンサイプ8の変形が大きくなる懸念がある。このような観点より、クラウンサイプ8の深さ8D2の最大値は、例えば、内側クラウン周方向溝3Aの最大深さの90%以下、より好ましくは50%~85%の範囲とされるのが望ましい。
図8に戻ると、クラウンサイプ8は、例えば、タイヤ赤道Cを横切るように延びている。加えて、クラウンサイプ8のタイヤ軸方向の長さは、クラウン陸部5のタイヤ軸方向の幅W1の40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは55%以上とされる。これにより、乗り心地がより一層向上する。なお、陸部の幅は、正規内圧状態において、当該陸部の接地縁間のタイヤ軸方向の距離を意味する。
クラウンサイプ8は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。このようなクラウンサイプ8は、その一端から他端へと徐々に路面に接地するため、クラウンサイプ8の接地時のインパクトノイズを低減し、かつ、乗り心地を高める。このような作用を高めるために、クラウンサイプ8のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~40°の範囲、より好ましくは5~30°の範囲であるのが望ましい。なお、サイプのタイヤ軸方向に対する角度は、サイプ幅の中心を通るサイプ中心線のタイヤ軸方向に対する角度を意味する。
[内側ミドル陸部]
図8に示されるように、本実施形態において、内側ミドル陸部6Aには、面取りが形成された第1内側ミドルサイプ9と、面取りが形成されていない第2内側ミドルサイプ10とが、タイヤ周方向に交互に配されている。上記のように特定された第1内側ミドルサイプ9及び第2内側ミドルサイプ10の両方が設けられることで、耐摩耗性を悪化させずに、乗り心地と静粛性とを向上させることができる。本実施形態の内側ミドル陸部6Aには、サイプ以外の横溝や周方向溝は設けられていない。これは、タイヤ1の耐摩耗性をより一層高めるのに役立つ。
[第1内側ミドルサイプ]
図12は、第1内側ミドルサイプ9の拡大平面図を示す。図13及び図14は、図12のXIII-XIII線及びXIV-XIV線断面図である。図12~14に示されるように、第1内側ミドルサイプ9は、両側のサイプエッジ部が、それぞれ面取り部9aで形成されている。より詳細には、第1内側ミドルサイプ9は、サイプを構成する本体部9bと、面取り部9aとからなる。
本実施形態の面取り部9aは、本体部9bのサイプ壁と内側ミドル陸部6Aの接地面6aとが形成するコーナ部を斜めにカットしたような傾斜面で構成されている。他の態様では、面取り部9aは、円弧状の丸みや矩形状の凹みとして構成されても良い(いずれも図示省略)。面取り部9aは、クラウン陸部5の衝撃緩和能力をさらに高め、乗り心地を向上させる。また、サイプエッジ部の接地時の衝突音が低減し、タイヤの静粛性が向上する。
本実施形態の第1内側ミドルサイプ9は、内側ミドル陸部6Aの内部で閉じている閉鎖端9oと、内側クラウン周方向溝3Aに連通する開口端9iとを含む。ネガティブキャンバー等の理由により、内側ミドル陸部6Aには、より高い接地圧が作用する傾向があり、その部分での衝撃緩和能力が重要である。本実施形態の第1内側ミドルサイプ9は、内側ミドル陸部6Aの衝撃緩和能力を高めることができ、乗り心地をさらに向上させる。
面取り部9aは、面取り幅9W1を有する。面取り幅9W1は、図12及び図13に示されるように、本体部9bのサイプ壁から、そのサイプエッジ9eまでの長さであって、本体部9bの長手方向と直交する方向に測定される。また、面取り部9aは、接地面6aからの面取り部9aの内側エッジ9fまでのタイヤ半径方向の長さである面取り深さ9D1を有する。
面取り部9aの面取り幅9W1が大きくなると、乗り心地の向上効果が高まるが、耐摩耗性が悪化する傾向がある。本実施形態では、図12に示されるように、面取り部9aの面取り幅9W1が、閉鎖端9oから開口端9i(すなわち、内側クラウン周方向溝3A)に向かって増加している。このような構成は、接地圧が高くなりがちな内側ミドル陸部6Aのタイヤ赤道側の衝撃緩和能力を効果的に高め、乗り心地をさらに向上させる。また、閉鎖端9o側での面取り幅9W1が相対的に小さい部分は、耐摩耗性の悪化を抑制する。好ましい態様では、面取り幅9W1は、連続的に増加しても良い。さらに好ましい態様では、図12に示されるように、面取り幅9W1は、サイプエッジ9eが本体部9bに対して傾斜し、かつ、直線状に延びるように、一定の割合で連続的に増加しても良い。
また、面取り部9aの面取り深さ9D1が大きくなると、乗り心地の向上効果が高まるが、耐摩耗性が悪化する傾向がある。本実施形態では、図14に示されるように、面取り部9aの面取り深さ9D1が、閉鎖端9oから開口端9i(すなわち、内側クラウン周方向溝3A)に向かって増加している。このような構成は、上記と同様の作用を発揮させる。好ましい態様では、面取り深さ9D1は、連続的に増加しても良い。さらに好ましい態様では、図14に示されるように、面取り深さ9D1は、接地面6aに対して傾斜し、かつ、直線状に延びるように、一定の割合で連続的に増加しても良い。
一方、面取り幅9W1又は面取り深さ9D1が過度に大きくなると、上述の通り、第1内側ミドルサイプ9に起因して耐摩耗性が悪化する懸念がある。このような観点より、面取り幅9W1は、例えば、例えば、0.8~3.0mmの範囲、より好ましくは1.0~2.5mmの範囲とされるのが望ましい。同様に、面取り深さ9D1は、例えば、例えば、0.8~3.0mmの範囲、より好ましくは1.0~2.5mmの範囲とされるのが望ましい。
また、図13に示されるように、第1内側ミドルサイプ9の面取り部9aを含んだ接地面6aでの開口幅9W2は、乗り心地と耐摩耗性とを高い次元で満足させるために、例えば、2.4~6.0mmの範囲、さらには、3.0~5.0mmの範囲とされるのが望ましい。
図14に示されるように、第1内側ミドルサイプ9の深さ9D2は、内側クラウン周方向溝3Aに向かって深さが大きくなっている。このような第1内側ミドルサイプ9は、接地圧が高くなりがちなクラウン陸部5の内側クラウン周方向溝3A側の衝撃緩和能力を効果的に高め、乗り心地をさらに向上させる。また、閉鎖端9o側での第1内側ミドルサイプ9の深さが相対的に小さいため、耐摩耗性の悪化を抑制することもできる。本実施形態では、好ましい態様として、第1内側ミドルサイプ9の深さが、漸増した後、一定となって内側クラウン周方向溝3Aに開口する態様を示しているが、連続的に変化するものでも良い。
第1内側ミドルサイプ9の深さ9D2が、過度に大きくなると、第1内側ミドルサイプ9に起因して耐摩耗性が悪化する懸念がある。このような観点より、第1内側ミドルサイプ9の深さ9D2の最大値は、例えば、内側クラウン周方向溝3Aの最大深さの90%以下、より好ましくは50%~95%の範囲とされるのが望ましい。
図8に戻ると、第1内側ミドルサイプ9のタイヤ軸方向の長さは、例えば、内側ミドル陸部6Aのタイヤ軸方向の幅W2の35%以上、より好ましくは40%以上とされる。これにより、乗り心地がより一層向上する。他方、内側ミドル陸部6Aには、第2内側ミドルサイプ10も設けられているから、第1内側ミドルサイプ9のタイヤ軸方向の長さは、クラウンサイプ8のタイヤ軸方向の長さよりも小さいことが望ましい。とりわけ、第1内側ミドルサイプ9のタイヤ軸方向の長さは、内側ミドル陸部6Aのタイヤ軸方向の幅W2の60%未満であるのが望ましい。
第1内側ミドルサイプ9は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。このような第1内側ミドルサイプ9は、その一端から他端へと徐々に路面に接地するため、第1内側ミドルサイプ9の接地時のインパクトノイズを低減し、かつ、乗り心地を向上することができる。このような作用を高めるために、第1内側ミドルサイプ9のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~40°の範囲、より好ましくは5~30°の範囲であるのが望ましい。特に限定されるわけではないが、第1内側ミドルサイプ9は、タイヤ軸方向に対して、クラウンサイプ8とは逆向きに傾斜しているのが好ましい。
図8から明らかなように、第1内側ミドルサイプ9のそれぞれは、クラウンサイプ8のそれぞれと、タイヤ周方向にオーバーラップしない位置に配置されているのが望ましい。すなわち、クラウンサイプ8のそれぞれを内側ミドル陸部6A上に投影した場合、その投影像(図8において薄く着色して示す)の中に第1内側ミドルサイプ9が含まれないように、第1内側ミドルサイプ9が配列されている。このように、面取り部8a及び9aをそれぞれ有するサイプ8及び9がタイヤ周方向で互い違いに配置されることで、内側クラウン周方向溝3A周辺の陸部の局部的な剛性低下が抑制され、乗り心地と耐摩耗性がさらに向上する。また、各サイプ8及び9が発する走行時のノイズが分散され、タイヤ走行時の静粛性が向上する。
[第2内側ミドルサイプ]
図8に示されるように、第2内側ミドルサイプ10は、内側ショルダー周方向溝4Aに連通する開口端10oと、内側ミドル陸部6A内で閉じている閉鎖端10iとを含む。図15には、図8のXV-XV線断面図が示されている。図15に示されるように、本実施形態において、第2内側ミドルサイプ10には、面取り部が設けられていない。すなわち、第2内側ミドルサイプ10は、サイプを構成する本体部10bのみからなる。そして、第2内側ミドルサイプ10において、本体部10bのサイプ壁と接地面6aとは、実質的に直角(例えば、90°±3°)に交差している。
このように、内側ミドル陸部6Aには、面取り部9aが設けられた第1内側ミドルサイプ9と、面取り部が設けられていない第2内側ミドルサイプ10とが交互に設けられることで、タイヤ1の耐摩耗性を損ねずに、乗り心地を改善することができる。また、第1内側ミドルサイプ9と第2内側ミドルサイプ10とが交互に配されることにより、内側ミドル陸部6Aのサイプで区分される個々の陸部片の剛性が最適化され、乗り心地と静粛性とを高い次元で両立することもできる。
図16には、図8のXVI-XVI線断面図が示される。図16に示されるように、第2内側ミドルサイプ10の深さ10D2は、内側ショルダー周方向溝4Aに向かって深さが大きくなっている。このような第2内側ミドルサイプ10は、接地圧が高くなりがちな内側ミドル陸部6Aの内側ショルダー周方向溝4A側の衝撃緩和能力を効果的に高め、乗り心地をさらに向上させる。また、閉鎖端10i側での第2内側ミドルサイプ10の深さが相対的に小さいため、耐摩耗性の悪化を抑制することもできる。本実施形態では、好ましい態様として、第2ミドルサイプの深さが、漸増した後、一定となって内側ショルダー周方向溝4Aに開口する態様を示しているが、連続的に変化するものでも良い。
第2内側ミドルサイプ10の深さ10D2が、過度に大きくなると、第2内側ミドルサイプ10に起因して耐摩耗性が悪化する懸念がある。このような観点より、第2内側ミドルサイプ10の深さ10D2の最大値は、例えば、内側クラウン周方向溝3Aの最大深さの90%以下、より好ましくは50%~95%の範囲とされるのが望ましい。好ましくは、第2内側ミドルサイプ10の深さ10D2の最大値は、第1内側ミドルサイプ9の深さ9D2の最大値と同一とされる。
図8に戻ると、第2内側ミドルサイプ10のタイヤ軸方向の長さは、例えば、内側ミドル陸部6Aのタイヤ軸方向の幅W2の35%以上、より好ましくは40%以上とされる。これにより、乗り心地がより一層向上する。他方、内側ミドル陸部6Aには、第1内側ミドルサイプ9も設けられているから、第2内側ミドルサイプ10のタイヤ軸方向の長さは、クラウンサイプ8のタイヤ軸方向の長さよりも小さいことが望ましい。とりわけ、第2内側ミドルサイプ10のタイヤ軸方向の長さは、内側ミドル陸部6Aのタイヤ軸方向の幅W2の60%未満であるのが望ましい。好ましくは、第2内側ミドルサイプ10と、第1内側ミドルサイプ9とは、タイヤ軸方向において、オーパラップするように形成されるのが望ましい。これによって、さらに乗り心地が向上する。
第2内側ミドルサイプ10は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。このような第2内側ミドルサイプ10は、その一端から他端へと徐々に路面に接地するため、第2内側ミドルサイプ10の接地時のインパクトノイズを低減し、かつ、乗り心地を向上することができる。このような作用を高めるために、第2内側ミドルサイプ10のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~40°の範囲、より好ましくは5~30°の範囲であるのが望ましい。特に限定されるわけではないが、第2内側ミドルサイプ10は、タイヤ軸方向に対して、第1内側ミドルサイプ9と同じ方向に傾斜しているのが好ましい。特に好ましくは、第2内側ミドルサイプ10は、第1内側ミドルサイプ9と平行に延びるのが好ましい。
図8から明らかなように、第2内側ミドルサイプ10のそれぞれは、クラウンサイプ8のそれぞれと、タイヤ周方向にオーバーラップする位置に配置されているのが望ましい。すなわち、クラウンサイプ8のそれぞれを内側ミドル陸部6A上に投影した場合、その投影像(図8において薄く着色して示す)の中に第2内側ミドルサイプ10の少なくとも一部、好ましくは全部が含まれるように、第2内側ミドルサイプ10が配列されている。このように第2内側ミドルサイプ10が配置されることで、耐摩耗性と乗り心地とをバランス良く高めることができる。
本実施形態では、第1内側ミドルサイプ9の合計本数及び第2ミドルサイプの合計本数は、クラウンサイプ8の合計本数と同じである。これらの各サイプは、一定又は可変のピッチでタイヤ周方向に配置されている。換言すれば、内側ミドル陸部6Aのサイプ合計本数は、クラウン陸部5のサイプ合計本数の2倍とされている。
[内側ショルダー陸部]
図8に示されるように、本実施形態において、内側ショルダー陸部7Aには、ショルダーサイプ11(以下、「内側ショルダーサイプ11」という)が形成されている。本実施形態では、内側ショルダー陸部7Aの接地面には、サイプ以外の横溝や周方向溝は設けられていない。これは、タイヤ1の耐摩耗性をより一層高めるのに役立つ。
内側ショルダーサイプ11は、例えば、内側ショルダー周方向溝4Aと内側トレッド端Tiとを連通するように延びる、いわゆるフルオープン型として構成されている。このような内側ショルダーサイプ11は、大きな接地圧を受けがちな内側ショルダー陸部7Aの衝撃緩和能力を高め、さらに乗り心地を向上させる。
図17には、図8のXVII-XVII線断面図が示されている。図17に示されるように、各内側ショルダーサイプ11は、内側ショルダー周方向溝4Aから延びる第1部分11aと、内側トレッド端Tiに連通し、かつ、第1部分11aよりも大きい深さを有する第2部分11bと、これらの間に配された第3部分11cとを含む。第3部分11cは、第1部分11a及び第2部分11bよりも、単位長さ当たりの深さの変化が大きい。本実施形態では、第3部分11cは、深さが連続的に変化している。このような内側ショルダーサイプ11は、内側ショルダー陸部7Aのタイヤ軸方向内側の剛性を過度に低下させることなく、乗り心地の向上を図ることができる。
第1部分11aのタイヤ軸方向の幅11aWは、上述の作用を効果的に発揮させるために、内側ショルダー陸部7Aのタイヤ軸方向の幅W3の、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上とされ、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下とされる。同様に、上述の作用を効果的に発揮させるために、第1部分11aの深さは、内側ショルダー周方向溝4Aの最大深さの、例えば5%~30%、好ましくは10%~25%の範囲とされるのが望ましい。
第2部分11bは、内側トレッド端Tiに向かって深さが連続的に減少している。また、第2部分11bは、内側トレッド端Tiをタイヤ軸方向外側に越えている。このような第2部分11bを含む内側ショルダーサイプ11は、旋回時、トレッド接地面が内側トレッド端Tiにシフトするような状況においても、内側ショルダー陸部の柔軟性を確保し、乗り心地を高めることができる。
第2部分11bの最大深さは、操縦安定性の悪化を招くことなく、乗り心地を高めるために、内側ショルダー周方向溝4Aの最大深さの、例えば、50%以上、好ましくは60%以上とされ、例えば、90%以下、好ましくは80%以下とされる。
図8に示されるように、内側ショルダーサイプ11は、タイヤ軸方向に対して傾斜している。本実施形態では、内側ショルダーサイプ11において、第1部分11aは、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜しており、第2部分11bは、タイヤ軸方向に対して、前記第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜している。また、内側ショルダーサイプ11は、第3部分11cの範囲において、これらの傾斜の変化が滑らかに行われている。このような屈曲した内側ショルダーサイプ11は、耐摩耗性の悪化を抑えつつ、スリップ角が与えられたときに、多方向にサイプエッジを提供し、優れた操縦安定性を発揮するのに役立つ。
好ましい態様では、第1部分11aは、第2内側ミドルサイプ10と同じ向きに傾斜することが望ましい。これにより、内側クラウン周方向溝3Aの両側周辺陸部において、接地時の変形挙動が安定し、乗り心地及び耐摩耗性がさらに向上する。
第1部分11a及び第2部分11bのタイヤ軸方向に対する傾斜の角度は、大きすぎると、内側ショルダーサイプ11を起点とする偏摩耗が生じやすくなる。したがって、ノイズと偏摩耗との双方の性能を満足させるために、内側ショルダーサイプ11の第1部分11a及び第2部分11bのタイヤ軸方向に対する傾斜の角度は、好ましくは3~15°とされ、より好ましくは3~10°とされる。
内側ショルダーサイプ11の合計本数は、例えば、クラウンサイプ8の合計本数よりも多い。本実施形態では、内側ショルダーサイプ11の合計本数は、クラウンサイプ8の合計本数の2倍とされている。同様に、内側ショルダーサイプ11の合計本数は、第2内側ミドルサイプ10の合計本数よりも多く、その2倍とされている。内側ショルダー陸部7Aに、より多くのフルオープン型の内側ショルダーサイプ11を設けることで、乗り心地をさらに高めることができる。また、本実施形態の内側ショルダーサイプ11は、面取り部が設けられていないため、耐摩耗性の悪化も抑えることができる。
本実施形態では、内側ショルダーサイプ11の半数は、内側ショルダー周方向溝4Aを介して、第2内側ミドルサイプ10と滑らかに連続するように配置される。具体的には、トレッド平面視において、タイヤ軸方向に隣接する内側ショルダーサイプ11及び第2内側ミドルサイプ10のペアにおいて、それぞれのサイプ中心線をそれぞれのサイプの形状に沿って内側ショルダー周方向溝4A内に延長したときに、両延長線が互いに交差するか、又は、2mm以内で離間している。このような構成によれば、内側ショルダー周方向溝4Aの内外の陸部剛性が最適化され、さらに優れた乗り心地及び耐摩耗性が得られる。
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。例えば、本発明の特許請求の範囲にかかるミドル陸部及びショルダー陸部が、それぞれ、内側トレッド端Ti側の内側ミドル陸部6A及び内側ショルダー陸部7Aに適用されても良い。
本発明の効果を確認するために、図1の基本パターンを有する乗用車用空気入りタイヤ(225/45R18 95W)が、表1の使用に基づいて試作された(実施例1及び2)。そして、これらのタイヤについて、乗り心地及び耐摩耗性がテストされた。
また、比較のために、図18及び図19に示されるような外側ミドル陸部を備えたタイヤについても合わせて性能がテストされた。図18のタイヤ(比較例1)の外側ミドル陸部には、面取り部が設けられていないオープン型ミドルサイプが設けられており、図19のタイヤ(比較例2)の外側ミドルサイプには、面取り部及び面取り深さが一定とされている。なお、比較例1及び2は、外側ミドル陸部の構成を除き、実施例1と同じパターンを備える。また、各タイヤとも、サイプ本体部の幅は0.8mmとされた。以下は、実施例の主な共通仕様である。
[外側ミドルサイプ]
サイプの深さ12D2:外端3.7(mm)、内端5.7(mm)
面取り深さ12D1: 0.5~2.0(mm)
タイヤ軸方向に対する角度: 12(°)
[第1外側ショルダーサイプ(面取り部なし)]
サイプの深さ(最大値):5.7(mm)
第1部分の深さ: 1.5(mm)
タイヤ軸方向に対する角度: 約10(°)
[第2外側ショルダーサイプ(面取り部なし)]
サイプの深さ(最大値):5.7(mm)
W5/W4: 32(%)
タイヤ軸方向に対する角度: 約10(°)
[クラウンサイプ]
面取り幅8W1: 0~1.5mm
面取り深さ8D1: 0~1.8mm
サイプの深さ8D2(最大値):5.7(mm)
開口幅8W2: 0~3.8(mm)
陸部の幅W1に対するタイヤ軸方向の長さ: 75(%)
タイヤ軸方向に対する角度: 18(°)
[第1内側ミドルサイプ]
面取り幅9W1: 0~1.0mm
面取り深さ9D1: 0~1.6mm
サイプの深さ9D2(最大値):5.7(mm)
開口幅9W2: 0~2.8(mm)
陸部の幅W2に対するタイヤ軸方向の長さ: 55(%)
タイヤ軸方向に対する角度: 12(°)
[第2内側ミドルサイプ(面取り部なし)]
サイプの深さ10D2(最大値):5.7(mm)
陸部の幅W2に対するタイヤ軸方向の長さ: 50(%)
タイヤ軸方向に対する角度: 12(°)
[内側ショルダーサイプ(面取り部なし)]
サイプの深さ(最大値):5.7(mm)
第1部分の深さ:2.5mm
第1部分の角度: 8°
第2部分の角度: 8°(第1部分とは逆向き)
乗り心地については、テストタイヤが4輪に装着された排気量2500ccのFR乗用車を、周回路で走行させ、その時の乗り心地がドライバーの官能による評価された。結果は、表1において、比較例1を100とする評点であり、数値が大きいほど良好であることを示す。テストで用いられたタイヤ装着条件は、次のとおりである。
リム:18×7.5J
内圧:220kPa
耐摩耗性については、各タイヤの数値計算用のタイヤモデルが作成され、コンピュータシミュレーションにより、外側ミドル陸部及び外側ショルダー陸部の摩耗ライフが計算された。結果は、表1において、比較例1を100とする評点であり、数値が大きいほど良好であることを示す。
テストの結果が表1に示される。
テストの結果、実施例のタイヤは、乗り心地及び耐摩耗性を高めることが確認できた。