複数の実施形態が、図面を参照しながら説明される。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
第1実施形態
図1において、モータシステム1は、ポンプシステムを提供している。モータシステム1は、流体を貯めるタンク2、タンク2内の流体を送るポンプ3、および、流体を利用する機器4を含む。流体は、例えば、燃料の液体である。この場合、ポンプシステムは、フューエルポンプシステムとも呼ばれる。ポンプ3は、容積型ポンプ、または、非容積型ポンプによって提供される。ポンプ3は、モータ5から供給される回転力によって駆動される。ポンプ3は、例えば、モータ5によって回転されられるポンプ部材としてのインペラを有する。ポンプ3は、タンク2の外、または、タンク2の中に設けることができる。機器4は、例えば、燃料を消費する内燃機関(EG)である。機器4は、流体の圧力を利用する圧力機器、または、流体が循環する循環機器でもよい。
モータシステム1は、乗り物に利用することができる。乗り物は、車両、船舶、航空機を含む。さらに、乗り物は、移動体に限られない。乗り物は、シミュレーション機器、または、アミューズメント機器などの定置機器を含む。モータシステム1は、空調装置、揚水装置、発電機器などの動力源としての内燃機関に燃料を供給するポンプシステムに利用されてもよい。
モータ5は、多相ブラシレスDCモータである。モータ5は、例示的に3相である。モータ5は、ステータ6と、ロータ7とを備える。モータ5は、インナロータ型の回転電機である。モータ5は、アウタロータ型の回転電機によって提供されてもよい。
ステータ6は、回転不能に固定されている。ステータ6は、ステータコア8と、ステータコイル9とを有する。ステータコア8は、軟鉄、または、積層鋼板によって提供されている。ステータコイル9は、多相のコイルである。ステータコイル9は、異なる相を提供する複数のコイルを備える。複数のコイルは、U相コイル、V相コイル、および、W相コイルを含む。以下の説明において、各相コイルは、U、V、Wの記号で示される場合がある。この実施形態では、ステータコイル9は、3相コイルである。ステータコイル9は、5相、7相など多様な多相コイルによって提供される場合がある。ステータコア8とステータコイル9とは、複数の磁極を提供している。図示の例では、ステータ6は、6極の磁極を提供する。
ロータ7は、ステータ6に対して回転できるように配置されている。ロータ7は、ポンプ3に回転力を供給するように連結されている。ロータ7は、永久磁石を有する。永久磁石は、ロータ7の上に、複数の磁極を提供している。ロータ7は、ロータ7のロータ磁極と、ステータ6のステータ磁極とが対向するように配置されている。ロータ7は、永久磁石によって磁極を提供する。ロータ7は、少なくとも2つの磁極を備える。図示の例では、ロータ7は、4極の磁極を提供する。
モータ5は、ステータ6がステータコイル9の励磁制御によって回転磁界を提供する。ロータ7は、永久磁石によって提供される。よって、モータ5は、ブラシレスDCモータともよばれる。ステータコイル9は、多相巻線である。よって、モータ5は、多相ブラシレスDCモータともよばれる。モータ5は、3相ブラシレスDCモータである。モータ5は、5相、7相など多様な相数を備える場合がある。
モータシステム1は、電気的な制御システム10を備える。制御システム10は、モータ5を駆動する駆動装置を提供する。制御システム10は、モータ5を駆動する駆動方法を実行する。制御システム10は、モータコントローラ11(MCT)を備える。モータコントローラ11は、回転磁界を提供するように、ステータコイル9の各相に電力を供給する。モータコントローラ11は、「120度通電制御」、または、「正弦波通電制御」を実行する。さらに、モータコントローラ11は、通電制御の周期Tを調節することにより、モータ5の回転速度を制御する。モータコントローラ11は、モータ5が目標回転速度TGで回転するように制御を実行する。さらに、モータコントローラ11は、電力を制御することによりモータ5のトルクを制御する。モータコントローラ11は、モータ5のトルクを調節するように電力を制御することにより、高い応答性を実現している。
「120度通電制御」の場合、モータコントローラ11は、(1)U→V、(2)U→W、(3)V→W、(4)V→U、(5)W→U、(6)W→Vといった順で2相通電を循環的に切り替える。これにより、ステータ6に回転磁界が形成され、ロータ7が回転磁界に追従して回転する。「正弦波通電制御」の場合、モータコントローラ11は、複数のコイルのそれぞれに与える電力を、正弦波に近似した電力となるように制御する。これにより、ステータ6に滑らかに回転する回転磁界が形成され、ロータ7が滑らかに回転する。
制御システム10は、直流電源12を含む。直流電源12は、例えば、2次電池によって提供されている。
制御システム10は、モータコントローラ11に指令する上位のコントローラ13(ECU)を備える。コントローラ13は、モータ5の目標回転速度TGを設定して、モータコントローラ11に指令する。コントローラ13は、例えば、機器4の制御装置によって提供される。コントローラ13は、例えば、燃料消費量が少ないときには、相対的に低い目標回転速度TG1を設定し、燃料消費量が多いときには、相対的に高い目標回転速度TG2を設定する(TG1<TG2)。モータコントローラ11は、指令された目標回転速度TGでモータ5が回転するように制御を実行する。
図2は、制御システム10の回路を示す。制御システム10は、直流電源12によって、多相ブラシレスモータであるモータ5を回転させる。制御システム10は、直流電源12から供給される直流電力を多相電力に変換して、モータ5に供給する。制御システム10は、コントローラ13から受信した目標回転速度TGでモータ5が回転するように多相電力を調節する。制御システム10は、モータ5の回転速度の変動を抑制し、安定的に回転するように、供給電力を調節する。この明細書は、制御システム10の構成および作動に関して、特開2011-36083号の全体を参照により援用する。
制御システム10は、インバータ回路20を備える。インバータ回路20は、直流電源12から供給される直流電力を、多相のステータコイル9に供給する。インバータ回路20は、ステータコイル9の相数に対応する数のスイッチングアーム21、22、23を有する。スイッチングアーム21は、U相コイルに電力を供給する。スイッチングアーム21は、アッパアームを提供するスイッチ素子24と、ロワアームを提供するスイッチ素子27とを備える。スイッチングアーム22は、V相コイルに電力を供給する。スイッチングアーム22は、アッパアームを提供するスイッチ素子25と、ロワアームを提供するスイッチ素子28とを備える。スイッチングアーム23は、W相コイルに電力を供給する。スイッチングアーム23は、アッパアームを提供するスイッチ素子26と、ロワアームを提供するスイッチ素子29とを備える。図示の例では、インバータ回路20は、3相インバータ回路である。
スイッチ素子24、25、26、27、28、29は、多様なパワー半導体デバイスによって提供することができる。パワー半導体デバイスは、例えば、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などによって提供することができる。
制御システム10は、スイッチ素子24、25、26、27、28、29のためのドライバ回路30(DRVC)を備える。ドライバ回路30は、スイッチ素子24、25、26、27、28、29をオン駆動、または、オフ駆動に切り替える。ドライバ回路30は、コントローラ40からの指令に応答する。ドライバ回路30は、指令に応答して、オン駆動とオフ駆動とを切り替える。
制御システム10は、コントローラ40(CNTL)を備える。コントローラ40は、演算処理を実行するプロセッサとしてのCPU41を備える。コントローラ40は、非遷移的かつ実体的な記憶媒体であるメモリ42(MMR)を備える。メモリ42は、CPU41によって実行されるプログラムを格納する。
メモリ42は、後述する補正量を格納する。補正量は、コギングトルクまたはトルク定数の変動に起因する回転変動を抑制するための補正量である。メモリ42は、格納手段を提供する。補正量は、通電相をパラメータとするマップ、または、通電相を変数とする関数として格納される場合がある。補正量は、ロータ7の回転角度をパラメータとするマップ、または、ロータ7の回転角度を変数とする関数として格納される場合がある。メモリ42に格納された補正量は、コギングトルクまたはトルク定数の変動に起因する回転変動の抑制に貢献する。さらに、メモリ42は、観測によって取得されたコギングトルクまたはトルク定数を格納してもよい。
この明細書におけるコントローラは、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)とも呼ばれる場合がある。コントローラは、(a)if-then-else形式と呼ばれる複数の論理としてのアルゴリズム、または(b)機械学習によってチューニングされた学習済みモデル、例えばニューラルネットワークとしてのアルゴリズムによって提供される。コントローラは、少なくともひとつのコンピュータを含む制御システムによって提供される。制御システムは、データ通信装置によってリンクされた複数のコンピュータを含む場合がある。コンピュータは、ハードウェアである少なくともひとつのプロセッサ(ハードウェアプロセッサ)を含む。ハードウェアプロセッサは、下記(i)、(ii)、または(iii)により提供することができる。
(i)ハードウェアプロセッサは、少なくともひとつのメモリに格納されたプログラムを実行する少なくともひとつのプロセッサコアである場合がある。この場合、コンピュータは、少なくともひとつのメモリと、少なくともひとつのプロセッサコアとによって提供される。プロセッサコアは、CPU:Central Processing Unit、GPU:Graphics Processing Unit、RISC-CPUなどと呼ばれる。メモリは、記憶媒体とも呼ばれる。メモリは、プロセッサによって読み取り可能な「プログラムおよび/またはデータ」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどによって提供される。プログラムは、それ単体で、またはプログラムが格納された記憶媒体として流通する場合がある。
(ii)ハードウェアプロセッサは、ハードウェア論理回路である場合がある。この場合、コンピュータは、プログラムされた多数の論理ユニット(ゲート回路)を含むデジタル回路によって提供される。デジタル回路は、ロジック回路アレイ、例えば、ASIC:Application-Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、SoC:System on a Chip、PGA:Programmable Gate Array、CPLD:Complex Programmable Logic Deviceなどとも呼ばれる。デジタル回路は、プログラムおよび/またはデータを格納したメモリを備える場合がある。コンピュータは、アナログ回路によって提供される場合がある。コンピュータは、デジタル回路とアナログ回路との組み合わせによって提供される場合がある。
(iii)ハードウェアプロセッサは、上記(i)と上記(ii)との組み合わせである場合がある。(i)と(ii)とは、異なるチップの上、または共通のチップの上に配置される。これらの場合、(ii)の部分は、アクセラレータとも呼ばれる。
制御システム10は、センサ回路50を備える。センサ回路50は、ロータ7の回転位置を示す位置信号を出力する。コントローラ40は、位置信号を入力することにより、位置信号を取得する。コントローラ40は、位置信号に応じてインバータ回路20を制御する。コントローラ40は、少なくとも位置信号に応答してインバータ回路20を制御する。これによって、コントローラ40は、モータ5が回転するようにインバータ回路20を制御する。さらに、コントローラ40は、少なくとも2つの位置信号に基づいて、ロータ7の回転速度を取得する。取得された回転速度は、ロータ7の実回転速度として利用される。位置信号は、多相のステータコイル9の各相において観測される。ステータコイル9は、n相(nは自然数)である。センサ回路50は、π/nの周期で位置信号を検出している。よって、π/n間隔で2つの位置信号が取得され、回転速度が取得される。なお、nは自然数である。ステータコイル9が3相である場合、位置信号はπ/n=180/3=60°間隔で観測される。
センサ回路50は、U相コイル、V相コイル、または、W相コイルに誘起される誘起電圧を観測する。センサ回路50は、複数の抵抗素子を含む。複数の抵抗素子は、基準電圧を設定するための基準電圧設定回路を提供する。センサ回路50は、複数のコンパレータ素子を含む。複数のコンパレータ素子は、誘起電圧と基準電圧とを比較する比較回路を提供する。センサ回路50は、いわゆるセンサレス制御のための位置信号を発生する。
図3は、準備工程160を示すフローチャートである。準備工程160は、ブラシレスDCモータの制御装置を設計する段階である。準備工程160は、制御システム10を計画し、設計する段階である。準備工程160は、ブラシレスDCモータの制御方法における初期の工程群である。準備工程160は、モータ5に電力を与えて回転させる工程の前に、設計者によって実行される。準備工程160によって得られた結果は、制御システム10の記録媒体としてのメモリ42に格納される。
準備工程160は、取得工程161と、設定工程162とを備える。準備工程160は、モータ5へ供給される供給電力を設定する。供給電力は、モータ5のコギングトルクまたはトルク定数の変動に応じてモータ5を安定に回転させるように設定される。供給電力は、基本制御量と、補正量とを含む場合がある。
この実施形態では、基本制御量は、モータ5を目標回転速度TGで回転させるための電力である。基本制御量は、速度フィードバック制御のための制御量として与えられる場合がある。速度フィードバック制御は、ロータ7の回転速度を目標回転速度TGに一致させるようにモータ5への供給電力を調節する。補正量は、基本制御量に対する補正量である。補正量は、コギングトルクまたはトルク定数の変動に応じてモータ5を安定に回転させるための電力である。補正量は、速度フィードバック制御のための演算処理の前処理によって、または、速度フィードバック制御のための演算処理の後処理によって、電力に反映することができる。
これに代えて、コギングトルクまたはトルク定数の変動に応じてモータ5を安定に回転させるための電力を基本制御量としてもよい。この場合、補正量は、速度フィードバック制御のための制御量である。
取得工程161において、設計者は、モータ5の変動要素を取得する。変動要素は、ロータ7の回転速度を変動させるトルク要素である。変動要素は、例えば、コギングトルクまたはトルク要素を含む。コギングトルクは、モータ5へ通電しない無通電状態において、ロータ7の回転方向におけるトルクとして観測される。トルク定数は、モータ5に供給される電流と、ロータ7に発生するトルクとの関係を示す。コギングトルクまたはトルク定数は、ロータ7の回転変動を生成する変動要素である。コギングトルクまたはトルク定数は、モータ5の構造に起因する点で本来的な変動要素とも呼ぶことができる。以下、変動要素として、コギングトルクを例示して説明する。当業者は、コギングトルクに関する説明が、トルク定数についても当てはまり得ることを容易に理解するはずである。
まず、コギングトルクは、モータ5から計測によって取得することができる。この場合、モータ5のテスト品のロータ7を回転させる実験によって、コギングトルクが取得される。言い換えると、計測された特性に基づいてコギングトルクが取得される。これに代えて、コギングトルクは、モータ5の設計形状または実形状に基づいて理論的に計算することができる。この場合、モータ5の形状に依存する理論計算によって、コギングトルクが取得される。言い換えると、モータ5の構造が既知である場合に、理論的にコギングトルクが取得される。よって、コギングトルクは、モータ5から計測によって取得されたコギングトルク、または、モータ5の構造に基づく理論的な計算によって取得されたコギングトルクである。
コギングトルクは、ロータ7の回転角に対して変動する。コギングトルクの変動のひとつの要因は、ロータ7の回転に対する、モータ5における磁束通路の変化である。ロータ7の1回転(360°)の間に、磁束通路が変化することによって、コギングトルクが変動する。当業者は、磁束通路の変化によって、トルク定数が変動する場合があることを理解するはずである。磁束通路の変化に起因して発生するコギングトルクの変動、または、トルク定数の変動は、磁束通路の変化に依存するトルク変動ともよぶことができる。
磁束通路の変化の主要な要因は、ステータ6の複数の磁極と、ロータ7の複数の磁極との対向関係の変化である。ロータ7の磁極とステータ6の磁極は、(1)径方向に対向する対向状態と、(2)対向状態から離れる過程と、(3)次の対向状態へ接近する過程とを繰り返す。この結果、コギングトルクは、ロータ7の1回転(360°)の中において繰り返えして観測される比較的高周波の変動成分を含む。例えば、図1に図示されるように、モータ5が6極のステータ6と4極のロータ7を備える場合、図5に図示されるコギングトルクCGTQ1が観測される場合がある。コギングトルクCGTQ1の波形は、等間隔に配置された複数の磁極に同期している。図5の場合、コギングトルクCGTQ1の波形は、周期的に変動している。周期は、電気角においてπ/n(ラジアン)=60(°)である。
さらに、磁束通路の変化の副次的な要因は、(1)複数の磁極の間における形状の差、または、(2)ステータ6、または、ロータ7のヨーク断面の変化などを含む。この結果、コギングトルクは、ロータ7の1回転(360°)の中において1度だけまたは数度だけ観測される比較的低周波の変動成分を含む。例えば、図6に図示されるコギングトルクCGTQ2が観測される場合がある。コギングトルクCGTQ2の波形は、ロータ7の1回転に同期している。このような波形は、ロータ7の回転速度に比較的低周波の変動を生じる。比較的低周波の回転速度の変動は、ステータコイル9の通電相ごとに回転速度の差を生じる。
設定工程162において、設計者は、コギングトルクに起因する回転速度の差を抑制するための補正量をコントローラ40に格納する。補正量は、回転速度に影響する要素によって、設定することができる。補正量は、例えば、回転速度の偏差として、係数として、通電される電力に相当するデューティ比の値として、または、電力量として設定することができる。補正量は、モータ5の実回転速度が目標回転速度TGよりも低い場合には、供給電力を増加させるように設定することができる。補正量は、モータ5の実回転速度が目標回転速度TGよりも高い場合には、供給電力を減少させるように設定することができる。
設定工程162は、通電相ごとの補正量を設定する相工程163を備える。相工程163において、設計者は、取得されたコギングトルクに基づいて、任意の通電相において回転速度を目標回転速度TGに一致させるための補正量を設定する。相工程163は、すべての通電相に対して実行される。この実施形態では、「120度通電制御」が採用されるから、通電相は、(1)U→V、(2)U→W、(3)V→W、(4)V→U、(5)W→U、および、(6)W→Vの6種類である。
コギングトルクが計測された特性に基づいて取得されている場合、この特性に基づいて補正量が設定される。これに代えて、コギングトルクが理論的な計算によって取得されている場合、理論的な計算に基づいて補正量が設定される。
設定工程162は、補正量をコントローラ40に格納する格納工程164を備える。補正量は、メモリ42に格納される。言い換えると、メモリ42は、通電相ごとに異なる電力を格納している。メモリ42に格納される補正量は、通電相をパラメータとするマップとして格納することができる。メモリ42に格納される補正量は、通電相を変数とする関数として格納することができる。メモリ42に格納される補正量は、予めメモリ42に格納された補正量を指定する指標であってもよい。
さらに、格納工程164では、コギングトルクそのものを格納してもよい。この場合、コントローラ40は、コギングトルクに基づいて補正量を演算する。演算式は、メモリ42に格納することができる。この場合も、モータの制御方法は、予め観測されたコギングトルクに基づいて補正量を設定する工程を備える。
設定工程162は、取得工程161において取得されたコギングトルクに抗してロータ7が回転するようにステータコイル9への供給電力を設定する。供給電力は、通電相(π/n)ごとに設定されている。この結果、通電相ごとに異なる電力が設定される。この結果、位置信号の検出周期(π/n)よりも長い周期でコギングトルクが変動する場合でも、速度変動が抑制される。通電相ごとに異なる電力が設定されることにより、高い応答性が実現される。
図4は、コントローラ40のプロセッサによる演算処理170を示す。演算処理170は、ブラシレスDCモータの制御装置によって実行される作動段階である。演算処理170は、制御システム10が作動する段階である。演算処理170は、ブラシレスDCモータの制御方法における後期の工程群である。演算処理170は、コントローラ40のプロセッサによって繰り返して実行される繰り返し工程でもある。
ステップ171において、コントローラ40は、初期処理を実行する。初期処理は、パワーオンリセット処理、初期設定処理、および、上位のコントローラ13との通信処理を含む。
ステップ172において、コントローラ40は、モータ5を停止状態から、連続的な回転状態へ移行させる起動制御を実行する。起動制御は、ロータ7が停止している状態から、ロータ7を回転させる工程である。起動制御の一部は、他制制御ともよばれる。起動制御は、例えば、モータ5が正方向に回転するように通電相を強制的に順に切り替える制御を含むことができる。起動制御の後半は、ロータ7を同期的に駆動することにより、位置信号を生成させる。モータ5が正方向に回転すると、コントローラ40は、センサ回路50から位置信号を取得する。位置信号が取得されるまでの起動制御は、開ループ制御ともよぶことができる。起動制御の後半は、後続の位置制御の初期段階とも解することができる。ステップ172は、ロータ7を停止状態から回転状態へ移行させる起動制御部を提供する。ステップ172の後に、コントローラ40は、後続の位置制御に移行する。
ステップ173において、コントローラ40は、位置制御を実行する。位置制御は、位置フィードバック制御でもある。位置制御は、位置信号と同期しており、閉ループ制御ともよぶことができる。位置制御は、自制制御ともよばれる。コントローラ40は、位置信号に同期して、通電相を順に切り替える。コントローラ40は、モータ5を目標回転速度TGで安定的に回転させるように供給電力を調節する。コントローラ40は、ステップ173を繰り返して実行する。
ステップ173は、ステップ174~ステップ179を含む。ステップ174において、コントローラ40は、ロータ7の位置を位置信号によって取得する。ステップ175において、コントローラ40は、ロータ7の位置に応じて、通電相を決定する。通電相は、ロータ7を正方向に回転させるように決定される。
ステップ176において、コントローラ40は、通電相に対応する補正量を決定する。コントローラ40は、ステップ175において決定された通電相に基づいて、準備工程において設定された補正量を読み出す。この処理は、メモリ42に格納されたマップを、決定された通電相に基づいて検索する処理により実行することができる。代替的に、この処理は、メモリ42に格納された関数と、決定された通電相とに基づいて補正量を算出する処理により実行することができる。
ステップ177において、コントローラ40は、基本制御量を演算する。基本制御量は、速度フィードバック制御量である。速度フィードバック制御量は、ロータ7の実回転速度と、目標回転速度TGとの偏差に基づいて、フィードバック演算処理によって算出される。
ステップ178において、コントローラ40は、ステップ176において決定した補正量に基づいて、速度フィードバック量を補正する。補正量は、モータ5の実回転速度が目標回転速度TGよりも低い場合には、供給電力を増加させる。補正量は、モータ5の実回転速度が目標回転速度TGよりも高い場合には、供給電力を減少させる。この処理は、例えば、速度フィードバック量に補正量を加算する加算処理によって実行することができる。代替的に、この処理は、例えば、速度フィードバック量に補正量を乗算する乗算処理によって実行することができる。
ステップ179において、コントローラ40は、モータ5に供給する電力を決定し、インバータ回路20を制御する。モータ5に供給する電力は、スイッチ素子24、25、26、27、28、29をスイッチングするデューティ比(DUTY)によって設定される。コントローラ40は、通電相を順に切り替えるように、スイッチ素子24、25、26、27、28、29をオン状態、または、オフ状態に制御する。さらに、コントローラ40は、任意の通電相における供給電力を調節するように、スイッチ素子24、25、26、27、28、29のオン期間、および、オフ期間をデューティ比制御する。
ステップ173は、制御部を提供している。ステップ173において、コントローラ40は、コギングトルクに抗してロータ7が回転するように、通電相ごとに設定された、通電相ごとに異なる電力をステータコイル9に供給する。ステップ173は、制御工程を提供している。ステップ173において、コントローラ40は、設定工程において設定された供給電力をステータコイル9へ供給するようにインバータ回路20を制御する。ステップ173は、位置信号に応答してロータ7を継続的に回転させる位置制御部を提供している。よって、制御部は、位置制御部である。
図5は、第1比較例におけるモータ5の挙動を示している。横軸は、時刻である。(A)は、通電相CDPHを示す。(B)は、モータ5の磁極位置RTMGを示す。磁極位置RTMGは、ステータ6が提供するステータ磁極M6と、ロータ7のロータ磁極M7とを含む。回転角度RDは、ロータ7の回転角度を示す。回転角度RDは、時刻t0におけるロータ7の位置を0°(ゼロ度)としている。磁極位置RTMGは、理解を容易にするためにモータ5を模式的に示している。(C)は、コギングトルクCGTQ1を示す。(E)は、ロータ7の回転速度RSPDを示す。
第1比較例において、コギングトルクCGTQ1は、電気角においてπ/n=π/3(ラジアン)を周期として、規則的に変動している。位置信号は、π/nの周期で取得されるから、回転速度RSPDもπ/n間隔で取得される。第1比較例では、コギングトルクCGTQ1の変動をキャンセルして回転速度RSPDが取得される。図中には、サンプリングタイミングにおいて観測された回転速度RSPDが黒丸印によってプロットされている。回転速度RSPDは、安定的に推移している。このため、コントローラ40による回転速度の制御は破綻することなく実行される。なお、回転速度RSPDは、高周波の回転変動成分を含む場合がある。この高周波の回転変動成分は、コギングトルクCGTQ1の変動の高周波成分に起因している。
図6は、第2比較例の挙動を示している。第2比較例は、顕著なコギングトルクCGTQ2を示している。ロータ7の1回転においてひとつの極大値CGPK、または、ひとつの極小値CGBMが観測される場合がある。極大値CGPK、または、極小値CGBMは、コギングトルクCGTQ2に含まれる低周波成分に起因している。第2比較例において、コギングトルクCGTQ2の変動は、電気角においてπ/n=π/3を周期とする高周波成分に加えて、それを上回る周期をもつ低周波成分を含む。低周波成分は、ロータ7の1回転360°(2×π)を周期とする低周波成分を含む。低周波成分は、ロータ7の1/2回転180°(π)を周期とする低周波成分を含む場合がある。低周波成分は、ロータ7の1/3回転120°(2×π/n=2×π/3)を周期とする低周波成分を含む場合がある。コギングトルクCGTQ2の変動は、ロータ7の1/6回転60°(π/n=π/3)を上回る周期をもつ低周波成分を含む場合がある。
第2比較例においても、センサ回路50によって、位置信号は、電気角π/n=π/3の周期で取得される。この結果、観測された回転速度RSPDは、ロータ7の1回転の間に変動する。第2比較例では、コギングトルクCGTQ2の変動がキャンセルされることなく、回転速度RSPDの変動として観測され、取得される。
例えば、時刻t0と時刻t1との間において、コギングトルクCGTQ2は、変動量-CGだけ減少している。この結果、時刻t1において、回転速度RSPDは、変動量+SPだけ増加している。同様に、コギングトルクCGTQ2の増加は、回転速度RSPDの減少を生じる。このように、コントローラ40による回転速度の制御にもかかわらず、ロータ7の1回転の間に、回転速度RSPDが変動する。顕著な場合、低周波成分は、モータシステム1の利用者が感じることができる騒音、または、振動を生じる。顕著な場合、低周波成分は、モータシステム1の出力変動、例えば、燃料圧力の変動を生じる。顕著な場合、コントローラ40による回転速度の制御が破綻する。顕著な場合、モータ5は脱調し、回転が困難となる。
図7は、この実施形態の挙動を示している。(D)は、ステップ176において決定された補正量CRDTを示す。図示の例において、補正量CRDTは、デューティ比である。
補正量CRDTは、コギングトルクCGTQ2の減少に抗して、ロータ7の回転速度の増加を抑制し、ロータ7の回転速度を維持するように、設定されている。このとき、補正量CRDTは、モータ5への供給電力を減少させるように設定されている。すなわち、補正量CRDTは、オン期間のデューティ比を減少させるように設定されている。補正量CRDTは、コギングトルクCGTQ2の増加に抗して、ロータ7の回転速度の減少を抑制し、ロータ7の回転速度を維持するように、設定されている。このとき、補正量CRDTは、モータ5への供給電力を増加させるように設定されている。すなわち、補正量CRDTは、オン期間のデューティ比を増加させるように設定されている。
例えば、コギングトルクCGTQが変動量-CGだけ減少する場合、補正量CRDTは、オン期間のディーティ比を変動量-CRnだけ減少させ、電力を減少させるように設定されている。同様に、コギングトルクCGTQが増加する場合、補正量CRDTは、ディーティ比を増加させるように設定されている。補正量CRDTは、通電相ごとに設定されている。補正量CRDTは、通電相が切り替わるごとに変動する。コギングトルクCGTQの変動と、補正量CRDTの変動とは、所定の遅れを有する場合がある。
設定工程162は、π/nを上回る周期をもつコギングトルクの低周波成分に抗してロータ7が回転するように、電力を設定している。設定工程162は、通電相ごとに異なる電力を設定している。電力は、補正量CEDTによって設定されている。ステップ173によって提供される制御工程は、π/nの周期で検出される位置信号に基づいてモータ5を位置制御している。よって、位置制御の周期より長い周期をもつ変動成分が抑制される。
この実施形態では、予め観測されたコギングトルクの変動に基づいて、補正量が予め設定されている。補正量は、通電相ごとに、すなわちロータ7の回転角度(位置)ごとに設定されている。通電相は、nを相の数として、π/nの周期で推移する。よって、ロータ7の1回転の間に複数回の補正が実行される。位置制御において、補正量に基づいて、供給電力の補正が実行されている。補正によって、ロータ7の回転速度RSPDは、ロータ7の1回転の間に安定的に推移する。この結果、回転速度RSPDの変動が抑制される。特に、コギングトルクの変動に起因する回転速度RSPDの変動が抑制される。さらに、補正量は、過剰な電力の供給を抑制する。この結果、モータシステム1の電力消費が抑制される場合がある。この実施形態によると、ロータ7の回転変動が抑制されたモータの制御システムおよび制御方法が提供される。この実施形態によると、ロータ7の回転変動に起因する振動、または、騒音が抑制される。
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、速度フィードバック制御量が演算された後に、補正量が反映される。これに代えて、補正量は、速度フィードバック制御量の演算前に反映されてもよい。この実施形態でも、準備工程160が実行される。
図8は、この実施形態の演算処理270を示す。先行する実施形態と同じ処理には、同じ参照番号が付されている。この実施形態では、ステップ178に代えて、ステップ278が設けられている。ステップ278は、ステップ177の前に実行される。ステップ278において、コントローラ40は、ステップ176において決定された補正量に基づいて、速度フィードバック演算のための変数を補正する。
補正される変数は、ロータ7の実回転速度と目標回転速度との偏差である。これに代えて、補正される変数は、ロータ7の実回転速度であってもよい。これに代えて、補正される変数は、目標回転速度であってもよい。この実施形態でも、先行する実施形態と同様の作用効果が得られる。
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、コントローラ40は、位置制御において、ステータコイル9に、通電相ごとに異なる電力を供給するようにドライバ回路30を介してインバータ回路20を制御する。これに代えて、または、これに加えて、コントローラ40は、起動制御において、通電相ごとに異なる電力を供給する場合がある。通電相ごとに異なる電力は、コギングトルクまたはトルク定数の変動に起因する回転変動を抑制してロータ7が回転するように設定されている。この場合、起動制御においても、ロータ7はコギングトルクまたはトルク定数の変動に起因する回転変動を抑制して回転することができる。起動制御は、ロータ7を停止状態から回転状態へ移行させ、さらに、後続の位置制御に移行させる。起動制御と、位置制御とは、ロータ7を回転させる回転制御でもある。この実施形態では、コントローラ40は、起動制御と位置制御との両方において、通電相ごとに異なる電力を供給する。
さらに、この実施形態では、位置決め制御においても、取得されたコギングトルクまたはトルク定数が利用されている。位置決め制御は、ロータ7を停止状態から回転状態へ移行させる前に実行される。コントローラ40は、位置決め制御において、複数の初期基準位置から選択された特定の初期基準位置にロータ7を停止させる場合がある。特定の初期基準位置は、コギングトルクまたはトルク定数の変動に起因する回転変動を抑制してロータ7が回転を開始するように、複数の初期基準位置から選択されている。この実施形態では、位置決め制御と、起動制御の後半における制御と、位置制御とのすべてにおいて、コギングトルクまたはトルク定数の変動に応じた通電制御が実行される。これに代えて、コントローラ40は、位置決め制御と、起動制御の後半における制御と、位置制御との少なくともひとつにおいて、コギングトルクまたはトルク定数の変動に応じた通電制御を実行してもよい。以下、変動要素として、コギングトルクを例示して説明する。当業者は、コギングトルクに関する説明が、トルク定数についても当てはまり得ることを容易に理解するはずである。
図9は、この実施形態における準備工程360を示す。準備工程360は、取得工程161と、設定工程362とを備える。取得工程161は、先行する実施形態と同じである。設定工程362は、相工程163と、第1の格納工程164とを備える。相工程163と、第1の格納工程164とは、先行する実施形態と同じである。設定工程362は、さらに、選択工程365と、第2の格納工程366とを備える。
選択工程365において、作業者は、後続の位置決め制御における通電制御の態様を選択する。この実施形態では、特開2011-36083号に開示される位置決め制御が採用されている。この位置決め制御では、(A)範囲推定通電と、(B)位置確定通電とが、この順で実行される。
位置決め制御における通電制御の態様は、(A)範囲推定通電における通電パターンと、継続期間とを含む。位置決め制御における通電制御の態様は、(B)位置確定通電における通電パターンと、継続期間とを含む。位置決め制御における通電制御の態様は、上記(A)、(B)に加えて、追加的な制御の通電パターンと、継続期間とを含む場合がある。通電制御の態様は、例えば、ロータ7の位置を安定させるための通電パターンと、その継続期間とを含む場合がある。通電制御の態様は、例えば、起動制御における通電パターンと、その継続期間とを含む場合がある。通電パターンの語は、ステータコイル9への通電状態と、通電状態の変遷を含む。通電パターンの語は、任意の相コイルへの通電のオン状態(電流が流れる)だけでなく、任意の相コイルへの通電のオフ状態(電流が流れない)をも含む。
通電パターンは、位置決め制御に含まれるひとつの制御モードの継続期間、または、位置決め制御に含まれる複数の制御モードの継続期間を含む。継続期間は、時間(秒)によって与えられる場合がある。継続期間は、2相通電の継続期間を含む場合がある。継続期間は、位置確定のための通電の継続期間を含む場合がある。継続期間は、後述の位置制御の継続期間を含む場合がある。さらに、継続期間は、任意の2種類の制御モードの間の待機期間を含む場合がある。これらの継続期間は、それぞれの制御モードにおいて期待される結果が得られる確率を高めるために貢献する。継続期間は、例えば、コギングトルクの振幅の大きさに比例して長くなるように設定される場合がある。
選択工程365において、作業者は、取得工程161において取得された変動要素に応じて、位置決め駆動のための通電制御の態様を選択する。選択工程365において、作業者は、取得工程161において取得されたコギングトルクに応じて、(A)範囲推定通電における通電パターンと、(B)位置確定通電における通電パターンとを少なくとも選択する。(A)範囲推定通電における通電パターンと、(B)位置確定通電における通電パターンとは、対になっており、全体として「位置決め駆動の通電パターン」ともよばれる。
(A)範囲推定通電の通電パターンは、停止しているロータ7の停止位置を推定する探索処理のための探索通電である。探索通電は、励起通電、または、2相通電ともよばれる。範囲推定通電においては、準備工程360において予め設定された2相通電が実行され、残る相の誘起電圧が観測される。範囲推定通電においては、2相通電によってロータ7を回転させ、残る相コイルの誘起電圧に基づいて、π/2ごとに設定された複数の範囲のどれに、停止位置が属するかが推定される。
(B)位置確定通電は、準備工程360において予め設定された初期基準位置へロータ7を回転させるための通電である。初期基準位置は、範囲推定通電に応じて予め設定されている。初期基準位置は、範囲推定通電によって推定されたロータ7の位置から、比較的小さい移動角度によって提供可能な位置が選定されている。位置確定通電は、ロータ7を初期基準位置に向けて回転させるための通電パターンによって実行される。通電パターンは、プラス通電(#1)とマイナス側通電(#2)とを含む。プラス通電とマイナス側通電とは、探索通電の結果として観測された誘起電圧に応じて選択される。プラス通電とマイナス側通電とは、ロータ7の回転角度を抑制するように選択される。
この実施形態においては、モータ5は、3相ブラシレスDCモータである。よって、選択工程365において、作業者は、図示される(C1)~(C6)の通電パターンから、少なくとも1つを選択する。
図10は、位置決め制御の通電パターンを示している。通電パターンC1は、探索通電として、U相コイルからV相コイルへの2相通電(U→V)を実行する。このとき、ステータ6の330°にステータ磁極M6が生成される。通電パターンC1は、W相コイルの誘起電圧に応じた位置確定通電を択一的に実行する。W相コイルの誘起電圧がプラス(+)である場合、U相コイルから、V相コイルおよびW相コイルへの通電(U→VW)を実行する。このとき、ステータ6の0°(ゼロ)にステータ磁極M6が生成される。この結果、ロータ7は、0°±30°の範囲内に位置づけられる。W相コイルの誘起電圧がマイナス(-)である場合、U相コイルおよびW相コイルから、V相コイルへの通電(UW→V)を実行する。このとき、ステータ6の300°にステータ磁極M6が生成される。この結果、ロータ7は、300°±30°の範囲内に位置づけられる。
通電パターンC6は、探索通電として、W相コイルからV相コイルへの2相通電(W→V)を実行する。このとき、ステータ6の270°にステータ磁極M6が生成される。通電パターンC6は、U相コイルの誘起電圧に応じた位置確定通電を択一的に実行する。U相コイルの誘起電圧がプラス(+)である場合、W相コイルから、U相コイルおよびV相コイルへの通電(W→UV)を実行する。このとき、ステータ6の240°にステータ磁極M6が生成される。この結果、ロータ7は、240°±30°の範囲内に位置づけられる。U相コイルの誘起電圧がマイナス(-)である場合、U相コイルおよびW相コイルから、V相コイルへの通電(UW→V)を実行する。このとき、ステータ6の300°にステータ磁極M6が生成される。この結果、ロータ7は、300°±30°の範囲内に位置づけられる。通電パターンC2、C3、C4、および、C5も同様に解釈される。
図11は、モータ5におけるステータ磁極M6とロータ磁極M7とを示している。図示される状態は、通電パターンC1によって提供される状態である。通電パターンC1が実行されると、ロータ7は、少なくとも初期基準位置の近傍に位置づけられる。この近傍の範囲は、例えば、最大±30°(±π/(n×2))の範囲内である。ロータ7は、例えば、初期基準位置C1+、または、初期基準位置C1-に位置づけられる。図示される状態は、ロータ7が初期基準位置C1-に位置づけられた状態である。
図9に戻り、選択工程365における選択は、ロータ7が初期基準位置から回転しやすいように実行される。選択工程365における選択は、コギングトルクの変動に起因する起動困難を抑制するように選択される。
コギングトルクに起因する起動困難は、コギングトルクの波形と、初期基準位置との位置的な関係に依存して、発生することがある。典型的な例として、コギングトルクCGTQ2が極大値CGPKを有する場合を想定することができる。
ひとつの例として、初期基準位置の直後に極大値CGPKがあらわれる場合がある。この場合、ステータ磁極M6が移動すると、初期基準位置からロータ7は回転しようとする。しかし、起動制御の初期においては、ロータ7の回転速度が不十分である。このため、ロータ7の回転が極大値CGPKによって妨げられる。この結果、ロータ7の回転が遅れる。顕著な場合、ロータ7の回転は、極大値CGPKを乗り越えることができない。顕著な場合、脱調が発生する。
ひとつの例として、マイナス側の初期基準位置(例えば、C1-)とプラス側の初期基準位置(例えば、C1+)との間に極大値CGPKがあらわれる場合がある。この場合、極大値CGPKの前に位置する初期基準位置では、極大値CGPKが起動を妨げる。反対に、極大値CGPKの後に位置する初期基準位置では、起動直後に極大値があらわれない。この場合、ロータ7がほぼ1回転したところで極大値CGPKがあらわれる。したがって、ロータ7はすでに十分に加速しているから、極大値CGPKは起動を妨げない。この結果、ロータ7の停止位置に依存して、起動が妨げられる場合と、起動が妨げられない場合が発生する。
図11において、例えば、0°付近に極大値CGPKが発生する場合を想定する。この場合、通電パターンC1は、初期基準位置C1+、または、初期基準位置C1-の直後にコギングトルクの極大値CGPKがあらわれるから、起動困難となる場合がある。この場合、選択工程365において、作業者は、通電パターンC6、C5、C4、C3、または、C2を選択する。選択工程365においては、コギングトルクCGTQ2の極大値CGPKから1回転以内の進角側に位置する特定の初期基準位置を提供する通電パターンが選択される。特定の初期基準位置は、複数の初期基準位置候補から選択される。複数の初期基準位置候補は、マイナス側の初期基準位置(例えば、C1-)とプラス側の初期基準位置(例えば、C1+)とを含む場合がある。この場合、選択される特定の初期基準位置は、マイナス側の初期基準位置とプラス側の初期基準位置とのいずれか一方である。複数の初期基準位置候補は、複数の通電パターンである場合がある。この場合、選択される特定の初期基準位置のそれぞれは、マイナス側の初期基準位置とプラス側の初期基準位置とを含む。特定の初期基準位置は、π/nを上回る周期をもつコギングトルクの低周波成分に抗してロータ7が停止状態から回転状態へ移行するように選択されている。
図9に戻り、選択工程365において少なくともひとつの通電パターンが選択されると、準備工程360は格納工程366に進む。第2の格納工程366において、作業者は、選択工程365において選択した位置決め制御の通電パターンと継続期間とをメモリ42に格納する。位置決め制御の通電パターンと継続期間とは、通電パターンC1からC6のいずれか少なくともひとつを示す指標によって格納されてもよい。よって、メモリ42は、特定の初期基準位置にロータ7を停止させるための通電パターンを格納する。
さらに、第2の格納工程366では、コギングトルクそのものを格納してもよい。この場合、コントローラ40は、コギングトルクに基づいて通電パターンを選択する。選択のための条件を含むアルゴリズムは、メモリ42に格納することができる。この場合も、モータの制御方法は、予め観測されたコギングトルクに基づいて、複数の初期基準位置から、少なくともひとつの初期基準位置を選択する工程を備える。
図12は、コントローラ40のプロセッサによる演算処理370を示す。演算処理370は、先行する実施形態の演算処理170に相当する。ステップ171、および、ステップ173は、先行する実施形態と同じである。ステップ173においては、コントローラ40は、補正量に基づいて、通電相ごとに通電量を補正している。さらに、この実施形態は、ステップ372を備える。ステップ372は、起動制御を提供する。ステップ372は、ステップ381と、ステップ384とを備える。
ステップ381は、位置決め制御を提供する。ステップ381は、位置決め工程を提供する。ステップ381は、ステップ382と、ステップ383とを備える。ステップ382は、上述の(A)範囲推定通電を提供する。ステップ382は、範囲推定通電部を提供する。ステップ382は、ロータ7の位置が属する範囲を推定するために、互いにπ/nだけ離れた複数の所定角度位置(C1~C6)のいずれかにステータ磁極M6を生成する。ステップ383は、上述の(B)位置確定通電を提供する。ステップ383は、位置確定通電部を提供する。ステップ383は、所定角度位置(C1~C6)から両側にπ/(n×2)だけ離れた角度位置のいずれか一方を特定の初期基準位置としてロータ7を停止させる。ステップ382とステップ383とが実行されることにより、ロータ7は、初期基準位置に停止する。
図13において、(A)範囲推定通電を提供するためのステップ382は、ステップ382aと、ステップ382bとを備える。ステップ382aは、2相通電を提供する。ステップ382aでは、コントローラ40は、選択工程365において選択された2相通電を提供する。コントローラ40は、例えば、2相通電C1~C6のいずれか少なくともひとつを実施する。ステップ382aにより、ロータ7が停止位置から移動する。ステップ382bは、誘起電圧の観測を提供する。ステップ382bでは、コントローラ40は、残るひとつの相コイルに誘起される電圧を観測する。2相通電がU相コイルからV相コイルへの通電である場合、ステップ382bは、W相コイルの誘起電圧を観測する。
(B)位置確定通電を提供するためのステップ383は、ステップ383aと、ステップ383bと、ステップ383cと、ステップ383dとを備える。ステップ383aは、ステップ382bで観測された誘起電圧がプラス(+)であるか否かを判定する。この処理は、ロータ7の位置が第1範囲であるか否かを判定する。誘起電圧がプラス(+)である場合、ロータ7は、第1範囲に位置している。誘起電圧がマイナス(-)である場合、ロータ7は、第2範囲に位置している。誘起電圧がプラス(+)である場合、処理は、ステップ383bに進む。誘起電圧がマイナス(-)である場合、処理は、ステップ383cに進む。ステップ383bでは、第1通電が実行される。第1通電は、メモリ42に予め設定されている。ステップ383cでは、第2通電が実行される。第2通電は、メモリ42に予め設定されている。この結果、ロータ7は、初期基準位置に向けて回転し、初期基準位置に停止する。
図10において、選択工程365において選択された通電パターンが、例えば、通電パターンC1である場合、ステップ383aでは、U相コイルからV相コイルへの2相通電(U→V)が実行される。誘起電圧がプラス(+)である場合、第1通電#1が実行される。第1通電#1は、U相コイルから、V相コイルおよびW相コイルへの通電(U→VW)である。これにより、ロータ7は、初期基準位置C1+に向けて回転し、停止する。誘起電圧がマイナス(-)である場合、第2通電#2が実行される。第2通電#2は、U相コイルおよびW相コイルから、V相コイルへの通電(UW→V)である。これにより、ロータ7は、初期基準位置C1-に向けて回転し、停止する。選択工程365において選択された通電パターンが、C2からC6のいずれかである場合も、図示から同様に理解することができる。
図13に戻り、ステップ383dでは、停止制御が実行される。ステップ383dにおいて、コントローラ40は、ロータ7を安定的に停止させる。
図12に戻り、ステップ384は、位置制御の初期段階を提供する。ステップ384におけるステータコイル9への通電制御は、ロータ7を同期駆動する。ステップ383の処理によって、ロータ7の停止位置は、初期基準位置に確定されている。初期基準位置が確定されているから、ステップ384においてステータコイル9に供給するべき通電相は特定することができる。ステップ384における供給電力は、第1の格納工程164において格納された補正量によって補正されている。ステップ384は、ロータ7を初期基準位置から正方向へ回転させるようにステータ磁極M6を生成する。言い換えると、コントローラ40は、ロータ7を初期基準位置から正方向に回転させるようにインバータ回路20を制御する。しかも、ステータコイル9に供給される電力は、補正量によって補正されている。ここで、補正量は、供給電力に相当するデューティ比に対する補正と、通電期間とを含む。
したがって、コギングトルクに抗してロータ7が停止状態から回転状態へ移行するために必要な強度のステータ磁極M6を生成することができる。例えば、ロータ7の回転がコギングトルクの極大値CGPKを乗り越えるように、ステータ磁極M6が調節される。また、別の観点では、コギングトルクが相対的に低い領域において、過剰な電力供給が抑制される。
この実施形態では、ステップ384は、ロータ7を停止状態から回転状態に移行させる起動制御部を提供する。さらに、この実施形態でも、ステップ173は、位置制御部を提供する。この結果、通電相ごとに異なる電力を供給する制御部は、起動制御部、および、位置制御部の両方である。
図14は、この実施形態の挙動を示している。横軸は時間(秒)を示している。(A)は、モータシステム1への電力供給+Bを示している。電力供給+Bの立ち上がりt1の前においてロータ7は停止している。電力供給+Bの立ち上がりの時刻t1の後にモータ5の制御が開始されている。(B)は、目標回転速度TGの指令を示している。(C)、(D)、(E)は、U相、V相、W相をそれぞれ示している。(F)は、制御モード(MODE)を示している。制御モードは、演算処理のステップによって示されている。
時刻t1の後に、ステップ171による初期処理が実行される。時刻t2から、ステップ382による(A)範囲推定通電が実行される。ステップ171とステップ382との間には待機状態の継続期間が設定されている。時刻t3から、ステップ383による(B)位置確定通電が実行される。これにより、ロータ7の位置は、プラス側の初期基準位置、または、マイナス側の初期基準位置のいずれか一方に確定される。ステップ383は、初期基準位置においてロータ7を安定させる停止制御の継続期間を含んでいる。時刻t4から、ステップ384による初期駆動が実行される。これにより、ロータ7は、初期基準位置から滑らかに回転を開始する。時刻t5から、ステップ172による位置制御が実行される。この実施形態では、ロータ7が初期基準位置に停止した後に、位置制御が実行される。この結果、初期駆動によって、ロータ7が滑らかに回転を開始し、しかも、その回転速度が確実に加速される。この結果、初期駆動から、位置制御への移行が、迅速、かつ、滑らかに実行される。
この実施形態によると、n相のステータコイル9を有するステータ6と永久磁石を有するロータ7とを備えるモータ5を制御する装置、および、制御方法が提供される。装置、または、方法は、モータ5の停止状態からの起動に先立ち、ステータコイル9をn相未満の少なくとも2相のステータコイル9に探索通電する。装置、または、方法は、探索通電したときに非通電の残る少なくともひとつの1相のステータコイル9に生じる誘起電圧と基準電圧とを比較した結果に基づいてロータ7の磁極位置を検出、または、推定する範囲推定のためのモジュール、または、ステップを備える。装置、または、方法は、検出されたロータ7の磁極位置に基づいて、ロータ7の初期基準位置を決定するためのモジュール、または、ステップを備える。装置、または、方法は、決定された初期基準位置にロータ7を位置決めするために通電すべき相コイルに対して通電を行う位置確定通電のためのモジュール、または、ステップを備える。
装置、または、方法は、範囲推定のためのモジュール、または、ステップでは、誘起電圧と基準電圧の比較結果に応じて、ロータ7の磁極位置が属する範囲を検出、または、推定する。誘起電圧の極性がマイナス(-)であるときには、ロータ7の磁極位置は、マイナス範囲に属すると検出、または、推定される。マイナス範囲は、第1の角度範囲と、第2の角度範囲とを含む。第1の角度範囲は、非通電の相コイルが位置する角度位置から回転方向に電気角でπ/2ラジアン角変位する位置までの範囲である。第2の角度範囲は、回転中心について第1の角度範囲と点対称の関係にある範囲である。誘起電圧の極性がプラス(+)であるときには、ロータ7の磁極位置は、プラス範囲に属すると検出、または、推定される。プラス範囲は、第1の角度範囲と、第2の角度範囲とを含む。第1の角度範囲は、非通電の相コイルが位置する角度位置から逆回転方向に電気角でπ/2ラジアン角変位する位置までの範囲である。第2の角度範囲は、回転中心について第1の角度範囲と点対称の関係にある範囲である。位置確定通電のためのモジュール、または、ステップでは、検出、または、推定された範囲に含まれない角度範囲であって、電気角でπ/2ラジアン以内の角度からなる範囲内に、ロータ7の初期基準位置を決定する。位置確定通電のためのモジュール、または、ステップは、少なくとも2つの初期基準位置から、ひとつの初期基準位置を決定する。位置確定通電のためのモジュール、または、ステップは、決定された初期基準位置に向けてロータ7を回転させ、ロータ7を停止させるようにステータコイル9に通電する。
この実施形態では、予め観測されたコギングトルクに基づいて、位置決め制御における通電パターンが選択される。この選択は、コギングトルクの変動に起因する起動困難を抑制するように実施される。モータ5が起動される際には、初期の位置決め制御において、選択された通電パターンが実行される。この結果、コギングトルクの変動に起因する起動困難が抑制される。別の観点では、モータ5の起動に要する時間が短縮される。さらに、起動制御と位置制御との境界における初期駆動においても、補正量によって補正された電力が提供される。この結果、コギングトルクの変動に抗してロータ7が滑らかに回転する。このように、起動制御の終期における初期駆動においても、コギングトルクの変動に起因する起動困難が抑制される。別の観点では、モータ5の起動に要する時間が短縮される。さらに、補正量は、過剰な電力の供給を抑制する。この結果、モータシステム1の電力消費が抑制される場合がある。この実施形態によると、ロータの回転変動が抑制されたモータの制御システムおよび制御方法が提供される。この実施形態では、起動が容易なモータの制御システムおよび制御方法が提供される。さらに、この実施形態では、起動が容易であって、かつ、ロータの回転変動が抑制されたモータの制御システムおよび制御方法が提供される。
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形形態を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
上記実施形態で説明した3相ブラシレスDCモータは、フューエルポンプの他、各種の電動ファン、空調装置の送風機、ハードディスクドライブ、CD(Compact Disc)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ等に適用することができる。
フューエルポンプにおいては、電源スイッチがオンされてからの起動、アイドリングストップからの再起動において、エンジンを迅速に始動するために、クランクシャフトが90度回転する前に燃料圧力を上昇させることが求められる場合がある。センサレス駆動制御を実行するモータシステム1では、起動時における位置決めに失敗すると、エンジンを始動するのに時間を要してしまう。上記実施形態のモータシステム1によると、短時間かつ確実な位置決めが可能になり、適切なフューエルポンプの起動及びアイドリングストップからの再起動を実現できる。
各種の電動ファン、空調装置の送風機においては、低騒音及び安定した始動が要求されている。上記実施形態のモータシステム1によると、短時間かつ確実な位置決めが可能になり、低騒音及び安定的始動の要求を満たすことができる。
ハードディスクドライブ、CDドライブ、DVDドライブにおいては、応答性の高い駆動が要求されている。上記実施形態のモータシステム1によると、短時間かつ確実な位置決めが可能になり、高い応答性及び高速処理性能を図ることができる。
上記実施形態では、位置制御は、いわゆるセンサレス制御によって実行されている。モータシステム1は、センサレス制御を実行するために、相コイルの誘起電圧を検出するセンサ回路50を備えている。これに代えて、センサ回路50は、ロータ7の回転角度を検出する位置センサを備えていてもよい。位置センサは、例えば、ホール素子、エンコーダ、または、レゾルバなど多様な角度センサによって提供することができる。この場合、モータ5は、起動制御なしで、位置制御される場合がある。この場合も、設定工程162、または、設定工程362において、位置制御における通電相ごとの供給電力が設定される。制御工程173では、設定工程において設定された供給電力によりモータ5が位置制御される。
上記実施形態では、モータ5は、3相ブラシレスDCモータである。これに代えて、モータ5は、4相、5相、6相、7相など多様な相数を備えることができる。相の数nは、自然数とすることができる。相の数nは、3以上の奇数とすることができる。4相以上のモータの場合、範囲推定通電では、4相以上のコイルのうち、2相以上の相コイルに対して通電して、残りの1相以上の通電しない相コイルを形成する。非通電の相コイルに生じる誘起電圧と基準電圧とを比較した結果に基づいてロータの磁極位置の推定範囲を検出することができる。さらに、位置確定通電では、推定範囲に基づいて、所定範囲の角度にロータの初期基準位置を決定することができる。
以上に説明した複数の実施形態では、主としてコギングトルクの変動をロータ7の回転変動の要因として説明した。これに代えて、回転変動の要因は、モータ5に応じてひとつまたは複数の要因を想定してもよい。例えば、ステップ178、278、または、384において利用される補正量は、コギングトルクの変動のみ、コギングトルクの変動とトルク定数の変動との両方、または、トルク定数の変動のみに基づいて設定されてもよい。さらに、準備工程360における特定の初期基準位置の選択は、コギングトルクの変動のみ、コギングトルクの変動とトルク定数の変動との両方、または、トルク定数の変動のみに基づいて実行されてもよい。