JP7414744B2 - 増幅ファイバ及びレーザ光出射装置 - Google Patents

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Description

本開示は、増幅ファイバ及びレーザ光出射装置に関し、例えば、可視領域の励起光からレーザ光を発生させるコアと、当該コアを包囲するクラッドと、を有する増幅ファイバ、及び当該増幅ファイバを用いたレーザ光出射装置に関する。
近年、レーザ光を用いた加工装置が用いられているが、当該レーザ光は増幅されて出射される。例えば、特許文献1のレーザ装置は、340~500nmの波長の励起光を出射する励起光源、励起光を通過させてレーザ光を発生させる発振ファイバ、発振ファイバの一方の端部に配置される第1の反射ミラー、及び発振ファイバの他方の端部に配置される第2の反射ミラーを備えている。
そして、特許文献1のレーザ装置における発振ファイバは、励起光からレーザ光を発生させるコアを備えている。このような発振ファイバのコアは、フッ化物ガラス又はフッ化物結晶を母材としており、当該母材にEr3+、Ho3+、Sm3+、Tm3+、Dy3+、Eu3+、Tb、又はNd3+のいずれか1種類が添加されている。
特開2010-80927号公報
本出願人は、以下の課題を見出した。特許文献1のレーザ装置は、理論上、可視領域のレーザ光を発振させることができるが、発振ファイバにおけるコアの母材として用いられるフッ化物ガラス又はフッ化物結晶は、可視光の高出力化に対する耐性が不十分であった。
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、増幅ファイバのコアの母材としてシリカガラスを用いても可視領域のレーザ光を発生させることが可能な増幅ファイバ及びレーザ光出射装置を実現する。
本開示の一態様に係る増幅ファイバは、可視領域の励起光からレーザ光を発生させるコアと、前記コアを包囲するクラッドと、を有する増幅ファイバであって、
前記コアは、
Dyと、
Al、Ge及びPより選択される1種以上と、
シリカガラスと、
を含有するコア材からなる。
これにより、増幅ファイバのコアの母材としてシリカガラスを用いつつ、可視領域のレーザ光を発生させることができる。
上述の増幅ファイバにおいて、
前記コア材において、原子数比が、Al/Dy:0~135.1、Ge/Dy:0~309.5、P/Dy:0~408.5であることが好ましい。
上述の増幅ファイバにおいて、
前記コア材において、原子数比が、Al/Dy:5.4~12.6、Ge/Dy:6.2~58.6であることが好ましい。
上述の増幅ファイバにおいて、前記コア材は、更に、Ce、F及びOHより選択される1種以上を含有することが好ましい。
上述の増幅ファイバは、480~600nmの波長帯を有するレーザ光を発生することが好ましい。
上述の増幅ファイバにおいて、前記励起光は、400~460nmの励起光であることが好ましい。
本開示の一態様に係るレーザ光出射装置は、
可視領域の励起光を出射する光源と、
前記励起光が通過してレーザ光を発生させる、上述の増幅ファイバと、
を備える。
これにより、増幅ファイバのコアの母材としてシリカガラスを用いつつ、可視領域のレーザ光を発生させることができる。
上述のレーザ光出射装置において、
前記増幅ファイバの一方の端部に配置される第1の反射ミラーと、
前記増幅ファイバの他方の端部で、前記第1の反射ミラーと向かい合うように配置される第2の反射ミラーと、
を備え、
前記励起光が前記増幅ファイバを通過することで前記レーザ光を発生させ、
前記レーザ光は、前記第1の反射ミラーと前記第2の反射ミラーとの間で反射を繰り返して発振することが好ましい。
上述のレーザ光出射装置において、前記光源は、400~460nmの励起光を出射する青色レーザダイオードであることが好ましい。
上述のレーザ光出射装置において、前記レーザ光は、480~600nmの波長帯を有することが好ましい。
本開示によれば、増幅ファイバのコアの母材としてシリカガラスを用いても可視領域のレーザ光を発生させることが可能な増幅ファイバ及びレーザ光出射装置を実現できる。
実施の形態1のレーザ光出射装置を模式的に示す図である。 実施の形態1の増幅ファイバの構成を示す図である。 実施の形態2のレーザ光出射装置を模式的に示す図である。 実施例1の励起光の入力とレーザ光の発振出力との関係を示すグラフである。 実施例1のレーザ光の発振前後の波長と出力との関係を示すグラフである。 実施例2の励起光の入力とレーザ光の発振出力との関係を示すグラフである。 実施例2のレーザ光の発振前後の波長と出力との関係を示すグラフである。 異なる増幅ファイバの構成を示す図である。 原子数比Al/Dyと発振効率との関係を示すグラフである。 原子数比Ge/Dyと発振効率との関係を示すグラフである。
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
<実施の形態1>
先ず、本実施の形態の増幅ファイバを用いたレーザ光出射装置の基本構成を説明する。図1は、本実施の形態のレーザ光出射装置を模式的に示す図である。本実施の形態のレーザ光出射装置1は、光源ユニット2、励起光コンバイナ3、増幅ファイバ4、第1の反射ミラー5及び第2の反射ミラー6を備えている。
光源ユニット2は、1組又は複数組(例えば、3組)の光源2a、レンズ2b及びミラー2cを備えている。光源2aは、可視領域の励起光を出射する。光源2aは、例えば、青色レーザダイオードであり、400~460nmの励起光を出射する。光源2aから出射された励起光は、レンズ2b及びミラー2cを介して励起光コンバイナ3に出射される。本実施の形態のレーザ光出射装置1は、このような光源ユニット2を少なくとも1個備えていればよい。
励起光コンバイナ3には、複数の光源2aから出射された励起光が入射する。そして、励起光コンバイナ3は、当該励起光を増幅ファイバ4に出射するために、複数の励起光を集光する。但し、光源2aが1つの場合は、励起光コンバイナ3を省略してもよい。
増幅ファイバ4は、詳細は後述するが、励起光コンバイナ3から入射された励起光からレーザ光を発生させる。ここで、図2は、本実施の形態の増幅ファイバの構成を示す図である。増幅ファイバ4は、図2に示すように、コア4a、第1のクラッド4b及び第2のクラッド4cを備えている。
コア4aは、詳細な組成は後述するが、母材であるシリカガラス(SiO)、蛍光剤であるDy、及び分散剤である、Al、Ge又はPの少なくとも1つを含有するコア材からなる。第1のクラッド4bは、コア4aの周面を包囲しており、シリカガラスからなる。第2のクラッド4cは、第1のクラッド4bの周面を包囲しており、シリカガラスからなる。第2のクラッド4cの周面は、樹脂層によって包囲されており、これにより、増幅ファイバ4の機械的強度が担保されている。
第1の反射ミラー5は、増幅ファイバ4における励起光コンバイナ3の側である一方の端部に配置されている。第1の反射ミラー5は、励起光を透過し、且つレーザ光を全反射するFBG(Fiber Bragg Grating)である。第2の反射ミラー6は、増幅ファイバ4の他方の端部に配置されている。第2の反射ミラー6は、レーザ光の一部を反射し、レーザ光の残りの一部を透過するFBGである。
このようなレーザ光出射装置1において、光源ユニット2の各々の光源2aから励起光が出射されると、複数の励起光が励起光コンバイナ3に入射する。そして、励起光コンバイナ3は、複数の励起光を集光して、第1の反射ミラー5を介して増幅ファイバ4に出射する。
増幅ファイバ4に入射した励起光は、第1のクラッド4bと第2のクラッド4cとの界面で反射して増幅ファイバ4の他方の端部の側に伝搬しつつ、コア4aのDyに吸収される。これにより、増幅ファイバ4のコア4aは、レーザ光を発生させる。そして、発生したレーザ光は、第1の反射ミラー5と第2の反射ミラー6との間で反射を繰り返して発振し、高出力化されて出射される。
次に、本実施の形態の増幅ファイバ4の詳細を説明する。本実施の形態の増幅ファイバ4は、励起光からレーザ光を発生させるコアと、当該コアを包囲するクラッドと、を有し、コアは、Dyと、Al、Ge及びPより選択される1種以上と、シリカガラスと、を含有するコア材からなることを特徴とする。
近年、電動化が急速に進み、銅材料が電池やモータなどの電動部品の主役材料になっている。電動部品は、加工点数や部品数の多さからレーザ加工が最適加工法となる一方、銅材料は従来の加工用レーザの波長では光吸収率が数%程度のため、効率的、安定的なレーザ加工ができない。
本発明者らは、増幅ファイバを用いたレーザ光出射装置を加工用レーザに適用するために、高出力化の検討を行った。しかしながら、フッ化物ガラスやフッ化物結晶を母材とするファイバは光強度に対して十分な耐性が得られない場合があった。本発明者らは、耐光強度の観点から、シリカガラスを用いて可視領域の光の増幅が可能な増幅ファイバの検討を行った。
しかし、シリカガラスを用いた場合、フッ化物ガラス等と比較して、希土類元素の非輻射緩和速度が増大しやすく、希土類元素の励起状態が十分に維持されず高出力のレーザ光が得られない場合があった。このような問題は赤外線レーザではあまり問題とならなかったが、短波長(可視~紫外領域)を扱うになるにつれて大きな問題となってきた。
本発明者らは鋭意検討した結果、コアのシリカガラスにドープする希土類元素としてDyを選択し、更にAl、Ge及びPより選択される1種以上とを組み合わせることにより、母材がシリカガラスの場合であっても非輻射緩和速度の増大が抑制され、可視領域のレーザ光が出力されることを見出した。
このように本実施の形態によれば、一般的にコアの母材として用いられているシリカガラスをコア4aの母材として用いつつ、光吸収率の向上が見込まれる可視領域のレーザ光を出射可能な増幅ファイバ4を実現する。
本実施の形態の増幅ファイバ4のコア4aは、母材であるシリカガラス、蛍光剤であるDy、及び分散剤である、Al、Ge又はPの少なくとも一つを含み、更に、Ce、F、OHを含んでいてもよく、上記効果を損なわない範囲で更に他の元素を含んでいてもよいものである。以下、上記シリカガラスにドープする各成分について順に説明する。
Dyは、励起光を吸収し、誘導放出によりレーザ光を出力する成分である。Dyを用いることで可視領域、中でも400~460nmの励起光を吸収し、可視領域のレーザ光、中でも480~600nmの波長帯を有するレーザ光を高出力で出力することが可能となる。
Dyの含有量は、上記効果を奏する範囲で適宜調整すればよい。中でも添加成分を含むコア材100wt%に対して、Dyの含有量は、0.01~2wt%が好ましく、0.07~0.93%がより好ましく、さらに好ましくは0.46~0.93wt%である。Dyの含有量を0.01wt%以上とすることで、良好にレーザ光を発生させることができる。一方、Dyの含有量が2wt%以下とすることで、濃度消光が抑制される。
Alは、Dyの凝集を抑制し、Dyを良好に分散させる成分である。Alの含有量は、この効果を奏する範囲で適宜調整すればよい。中でも添加成分を含むコア材100wt%に対して、Alの含有量は、0.1~2wt%が好ましく、0.15~1.57wt%がより好ましく、さらに好ましくは0.4~0.54wt%である。Alの含有量を0.1wt%以上とすることで、Dyをシリカガラス内に良好に分散することができる。一方、Alの含有量が2wt%以下とすることで、Alに起因するフォトダークニングが抑制され、後述するGeの含有量を抑え、増幅ファイバ4のNA(開口数)が抑制できる。
Geは、フォトダークニングを抑制する成分である。Geの含有量は、この効果を奏する範囲で適宜調整すればよい。中でも添加成分を含むコア材100wt%に対して、Geの含有量は、0.88~10wt%が好ましく、1~10wt%、又は、0.88~9.68wt%がより好ましい。当該Geの含有量は、1.8~2.18wt%がより好ましい。Geの含有量を1wt%以上とすることで、フォトダークニングを効果的に抑制することができる。一方、Geの含有量を10wt%以下とすることでGeに起因するシリカガラス内の構造欠陥の発生が抑制され、レーザ光の出力が安定する。また、GeはAlと組み合わせて用いることにより、Alに起因するフォトダークニングをも抑制する。
Pは、Alと同様にDyの凝集を抑制し得る成分である。シリカガラス中の酸素正孔センター(OHC:oxygen hole center)との結合がAlよりも生じにくいため、Pを組み合わせて用いることによりAl-OHCに起因するフォトダークニングが抑制される。一方、Dyの凝集を抑制する効果はAlの方が優れているため、Alの含有量が上記範囲内であれば、Pは0wt%であってもよい。以上の観点から、コア材100wt%に対して、Pの含有量は、0~6wt%が好ましく、0~2wt%がより好ましい。
本実施の形態の増幅ファイバ4においてコア4aは、更に、Ce、F、OHを含んでいてもよい。Ceは、励起光でCeの価数が変化することにより、フォトダークニングを抑制する効果があり、例えば、0~1wt%の含有量が好ましい。また、Fは、シリカネットワークを切断し、フォトダークニングを抑制する効果があり、例えば、0~3wt%の含有量が好ましい。OHは、シリカネットワークを切断し、フォトダークニングを抑制する効果があり、例えば、0~1wt%の含有量が好ましい。ここで、OHとは、シリカガラスの末端に配置されるSi-OHのOH基を表す。
なお、コア4aは、Tbを含まないと、レーザ光出射装置1によるレーザ発振が安定化してよい。具体的には、コア材100wt%に対して、Tbの含有量は、0~0.20wt%に制限されると好ましく、0~0.10wt%に制限されるとより好ましい。
また、コア4aは、Dy、Ge、及びAlを共に含有すると、レーザ光出射装置1によるレーザ発振が安定化してよい。
このように本実施の形態の増幅ファイバ4及びレーザ光出射装置1は、増幅ファイバ4のコア4aが母材であるシリカガラス、蛍光剤であるDy、及び分散剤である、Al、Ge又はPの少なくとも一つを含んでいる。そのため、増幅ファイバ4のコア4aの母材としてシリカガラスを用いつつ、励起光から可視領域(例えば、480~600nm)のレーザ光を発生させることができる。
しかも、本実施の形態の増幅ファイバ4は、一般的な共振ファイバのコアの母材として用いられているシリカガラスをコア4aの母材として用いるので、安価に高出力なレーザ光出射装置1を実現することができる。
また、本実施の形態の光源2aとしては、高出力であって、且つ価格が現実的であることが求められるが、青色レーザダイオードを用いることで、安価に高出力なレーザ光出射装置1を実現することができる。
<実施の形態2>
図3は、本実施の形態のレーザ光出射装置を模式的に示す図である。本実施の形態のレーザ光出射装置21は、図3に示すように、レーザ光を共振させることなく出射する構成とされている。詳細には、レーザ光出射装置21は、光源ユニット22、種光源23及び増幅ファイバ24を備えている。
光源ユニット22は、実施の形態1の光源ユニット2と等しい構成とされており、可視領域の励起光を出射する。種光源23からは種光が出射される。増幅ファイバ24は、実施の形態1の増幅ファイバ4と等しい構成とされており、増幅ファイバ24は一方の端部から入射される光源ユニット22の励起光を吸収し、同じく一方の端部から入射された種光源23からの光を増幅して他方の端部から出射する。
このようなレーザ光出射装置21も、増幅ファイバ24のコアが母材であるシリカガラス、蛍光剤であるDy、及び分散剤である、Al、Ge又はPの少なくとも一つを含んでいる。そのため、増幅ファイバ24のコアの母材としてシリカガラスを用いつつ、励起光から可視領域のレーザ光を発生させることができる。
<実施例1>
実施例1では、増幅ファイバのコアの組成を、Dyの含有量:0.46wt%、Alの含有量:0.54wt%、Geの含有量:1.80wt%とし、当該増幅ファイバを実施の形態1のレーザ光出射装置1に用いて光源2aから可視領域の励起光を出射した。
その結果、図4及び図5に示すように、励起光の入力が40nw以上の場合、可視領域である583nm帯で良好なレーザ発振を確認できた。このとき、発振効率は20.3%であった。ここで、図4は、励起光の入力とレーザ光の発振出力との関係を示すグラフであり、図5は、レーザ光の発振前後の波長と出力との関係を示すグラフである。なお、図5の縦軸はピークを1とした相対的な出力値である。
<実施例2>
実施例2では、増幅ファイバのコアの組成を、Dyの含有量:0.93wt%、Alの含有量:0.40wt%、Geの含有量:2.18wt%とし、当該増幅ファイバを実施の形態1のレーザ光出射装置1に用いて光源2aから可視領域の励起光を出射した。
その結果、図6及び図7に示すように、励起光の入力が90nw以上の場合、可視領域である583nm帯で良好なレーザ発振を確認できた。このとき、発振効率は9.8%であった。ここで、図6は、励起光の入力とレーザ光の発振出力との関係を示すグラフであり、図7は、レーザ光の発振前後の波長と出力との関係を示すグラフである。なお、図7の縦軸はピークを1とした相対的な出力値である。
<実施例1~14>
次に、実施例3~14と、上記した実施例1、2とについて併せて説明する。
実施例1~14では、増幅ファイバのコアの組成を、Dyの含有量:0.07~0.93wt%とした。これに加えて、Al、Ge、又はPを当該コアに含有させた場合、当該増幅ファイバのコアの組成を、Alの含有量:0.15~1.57wt%、Geの含有量:0.88~9.68wt%、Pの含有量:5.45wt%とした。実施例1~14では、当該増幅ファイバのコアは、Tbが添加されなかった。当該増幅ファイバを実施の形態1のレーザ光出射装置1に用いて光源2aから可視領域の励起光を出射した。
その結果、実施例1~14のそれぞれにおいて、励起光の入力が所定の値である場合、可視領域である所定の波長帯域で良好なレーザ発振を確認できた。表1に、各実施例の増幅ファイバのコアの組成と発振効率とを示す。
Figure 0007414744000001
表1に示すように、増幅ファイバのコアは、Dyに加え、Al及びGeを含有する場合、発振効率が10%であり、良好な値であった。すなわち、増幅ファイバのコアは、Al及びGeをともに含有すると、良好な発振効率を得ることができてよい。
続いて、実施例1~14の原子数比Al/Dy、Ge/Dy、P/Dyを算出し、この算出した結果を表2に示す。原子数比Al/Dy、Ge/Dy、P/DyのMax(組み合わせ)は、実施例1~14のAl、Ge、Pの含有量の最大値と、実施例1~14のDyの含有量の最小値との商と、DyとAl、Ge、又はPとの原子量の比との積である。具体的には、原子数比Al/DyのMax135.1は、実施例7のAlの含有量1.57[wt%]と、実施例14のDyの含有量0.07[wt%]との商と、Dy原子量162.5とAl原子量26.98との比との積である。原子数比Ge/DyのMax309.5は、実施例8のGeの含有量9.68[wt%]と、実施例14のDyの含有量0.07[wt%]との商と、Dy原子量162.5とGe原子量72.61との比との積である。原子数比P/DyのMax408.5は、実施例6のPの含有量5.45[wt%]と、実施例14のDyの含有量0.07[wt%]との商と、Dy原子量162.5とP原子量30.97との比との積である。
Figure 0007414744000002
表1及び表2に示すように、原子数比が、Al/Dy:0~135.1、Ge/Dy:0~309.5、P/Dy:0~408.5であると、励起光の入力が適当な値であれば、可視領域である所定の波長帯域で良好なレーザ発振を確認し得る。原子数比が、Al/Dy:0~135.1、Ge/Dy:0~309.5、P/Dy:0~408.5であると、可視領域での良好なレーザ発振を確認し得てよい。
次に、図9を参照して、原子数比Al/Dyと発振効率との関係について説明する。実施例1~14の発振効率に対する原子数比Al/Dyを図9に示す。図9に示すように、原子数比Al/Dyが所定の範囲内であれば、発振効率が概ね良好である。具体的には、原子数比Al/Dyが2.6以上23.6以下であれば、発振効率が10%以上であるため、安定したレーザ発振を行えてよい。原子数比Al/Dyが5.4以上12.6以下であれば、発振効率が14%以上であっため、より好ましい。原子数比Al/Dyが6.8以上10.0以下であれば、発振効率が20%を超え得るため、さらに好ましい。
次に、図10を参照して、原子数比Ge/Dyと発振効率との関係について説明する。実施例1~14の発振効率に対する原子数比Ge/Dyを図10に示す。図10に示すように、原子数比Ge/Dyが所定の範囲内であれば、発振効率が概ね良好である。具体的には、原子数比Ge/Dyが5.2以上58.6以下であれば、発振効率が10%以上であるため、安定したレーザ発振を行えてよい。原子数比Ge/Dyが6.2以上58.6以下であれば、発振効率が14%以上であっため、好ましい。原子数比Ge/Dyが8.8以上20.9以下であれば、発振効率が20%を超え得るため、好ましい。
<原子数比Al/Dyと発振効率との関係>
次に、原子数比Al/Dyを所定の範囲内に制限すると、発振効率が良好であることについて想起される理由について述べる。
上記した通り、Dyは、励起光を吸収し、誘導放出によりレーザ光を出力する成分である。Dy原子のレーザ光を出力する度合い、すなわち、蛍光断面積は、Dy原子の周囲がどのような環境にあるかによって変化する。また、Alは、Dy原子の凝集を抑制し、Dy原子を良好に分散させる成分である。
そのため、原子数比Al/Dyが所定の範囲の下限値以上である場合、Dy原子の周囲に位置するAlが増加し得る。Dy原子の周囲に位置するAl原子の数が増加すると、Dy原子の凝集を抑制し、Dy原子を、コアの母材であるシリカガラス内に良好に分散させる。そのため、コア全体のDyに起因する蛍光断面積が増加し、レーザ光の出力が高まる。以上より、原子数比Al/Dyが所定の範囲の下限値以上であると、レーザ光の出力が高まって、発振効率が良好な値を取り得る。
一方、原子数比Al/Dyがさらに増加すると、Alがシリカガラス内に欠陥を生成したり、Alに起因するフォトダークニングが発生したりする。これらによって、発振効率が低下し得る。よって、原子数比Al/Dyが所定の範囲の上限値以下である場合、Alに起因する欠陥やフォトダークニングを抑制し、発振効率の低下を抑制してよい。
以上より、原子数比Al/Dyを所定の範囲内に制限すると、発振効率が良好である。
<原子数比Ge/Dyと発振効率との関係>
次に、原子数比Ge/Dyが所定の範囲内に制限すると、発振効率が良好であることについて想起される理由について述べる。
上記した通り、Geは、フォトダークニングを抑制する成分である。また、Geは、Alと比較して、シリカガラス内において欠陥を生成し難い。また、Geに起因するシリカガラス内の欠陥は、Alに起因するシリカガラス内の欠陥と比較して、発振効率に悪影響を与え難い。
そのため、原子数比Ge/Dyが所定の範囲の下限値以上である場合、Dy原子の周囲に位置するGeの数が一定確保されると想起される。Dy原子の周囲に位置するGe原子が、フォトダークニングを抑制する。また、Dy原子の周囲に位置するGe原子が、Alと比較して、シリカガラス内において欠陥を生成させない、又は、その欠陥が発生しても発振効率に悪影響をあまり与えない。したがって、原子数比Ge/Dyが所定の範囲の下限値以上であると、発振効率が良好な値を取り得る。
一方、原子数比Ge/Dyがさらに増加して、所定の範囲の上限値を超えると、Geに起因するシリカガラス内の構造欠陥が発生する。これによって、レーザ光の出力が不安定になり、発振効率が低下し得る。よって、原子数比Ge/Dyが所定の範囲の上限値以下である場合、Geに起因する構造欠陥やフォトダークニングを抑制すると想起されるため、発振効率の低下を抑制してよい。
以上より、原子数比Ge/Dyを所定の範囲内に制限すると、発振効率が良好である。
<Al、及びGeの含有と発振効率との関係>
次に、表1に示すように、増幅ファイバのコアは、Al及びGeを共に含有すると、発振効率が良好であることについて想起される理由について述べる。
増幅ファイバのコアは、Al及びGeを共に含有すると、Dyの周囲に位置するAl原子及びGe原子が増加すると想起される。すると、Alに起因する欠陥とに加えて、Geに起因する欠陥とがシリカガラス内に生成され得る。このような場合、欠陥の起因がAlとGeとであるため、欠陥の起因がAlのみである場合と比較して、発振効率への悪影響が小さいと想起される。よって、増幅ファイバのコアは、Al及びGeを共に含有すると、発振効率が良好である。
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
上記実施の形態の増幅ファイバは、第1のクラッド4b及び第2のクラッド4cを備える所謂ダブルクラッド構造であるが、図8に示す増幅ファイバ41のように、第2のクラッド4cを備えていない所謂シングルクラッド構造であってもよい。
1 レーザ光出射装置
2 光源ユニット、2a 光源、2b レンズ、2c ミラー
3 励起光コンバイナ
4 増幅ファイバ、4a コア、4b 第1のクラッド、4c 第2のクラッド
5 第1の反射ミラー
6 第2の反射ミラー
21 レーザ光出射装置
22 光源ユニット
23 種光源
24 増幅ファイバ
41 増幅ファイバ

Claims (11)

  1. 可視領域の励起光からレーザ光を発生させるコアと、前記コアを包囲するクラッドと、を有する増幅ファイバであって、
    前記コアは、
    Dyと、
    Al、及びPより選択される1種のみと
    シリカガラスと、
    を含有するコア材からなる、増幅ファイバ。
  2. 前記コア材は、前記選択される1種のみがAlである場合、Geを含有する、請求項1に記載の増幅ファイバ。
  3. 前記コア材において、原子数比が、Al/Dy:0~135.1、Ge/Dy:0~309.5、P/Dy:0~408.5である、請求項1又は2に記載の増幅ファイバ。
  4. 前記コア材において、原子数比が、Al/Dy:5.4~12.6、Ge/Dy:6.2~58.6である、請求項2又は3に記載の増幅ファイバ。
  5. 前記コア材は、更に、Ce、F及びOHより選択される1種以上を含有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の増幅ファイバ。
  6. 480~600nmの波長帯を有するレーザ光を発生する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の増幅ファイバ。
  7. 前記励起光は、400~460nmの励起光である、請求項1乃至のいずれか1項に記載の増幅ファイバ。
  8. 可視領域の励起光を出射する光源と、
    前記励起光が通過してレーザ光を発生させる、請求項1乃至のいずれか1項に記載の増幅ファイバと、
    を備える、レーザ光出射装置。
  9. 前記増幅ファイバの一方の端部に配置される第1の反射ミラーと、
    前記増幅ファイバの他方の端部で、前記第1の反射ミラーと向かい合うように配置される第2の反射ミラーと、
    を備え、
    前記励起光が前記増幅ファイバを通過することで前記レーザ光を発生させ、
    前記レーザ光は、前記第1の反射ミラーと前記第2の反射ミラーとの間で反射を繰り返して発振する、請求項に記載のレーザ光出射装置。
  10. 前記光源は、400~460nmの励起光を出射する青色レーザダイオードである、請求項8又は9に記載のレーザ光出射装置。
  11. 前記レーザ光は、480~600nmの波長帯を有する、請求項8乃至10のいずれか1項に記載のレーザ光出射装置。
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