JP7411982B2 - 金属酸化物含有複合体およびその製造方法、ならびにそれを用いた二酸化炭素還元方法 - Google Patents

金属酸化物含有複合体およびその製造方法、ならびにそれを用いた二酸化炭素還元方法 Download PDF

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Description

本発明は、二酸化炭素を光還元する反応において、触媒として機能し得る、金属酸化物を含有する複合体、およびその製造方法、ならびにその複合体を用いた二酸化炭素還元方法、に関する。
従来、有用な有機化合物を得るための炭素資源は、石油、石炭などの化石資源に依存している。化石資源は、使用時に排出される二酸化炭素(CO)が地球温暖化の原因となり、COの削減が地球規模での課題となっている。また、化石資源は、有限の資源と考えられ、資源の枯渇の問題も含んでいる。一方、いわゆる人工光合成によってCOを炭素資源化することが考えられている。COを炭素資源化することができれば、上記の問題を解決することが可能となり、非常に有用な技術となる。COの炭素資源化では、太陽光などの光によってCOを一酸化炭素(CO)に還元する反応(光還元反応)が、重要なステップの1つとなり得る。生成したCOは、合成ガス(CO+H)の原料として使用することができ、合成ガスは、メタノール(CHOH)などの有機化合物を製造するための原料となり得る。そのため、COの光還元反応に寄与する有用な触媒の開発が求められる。
COの還元反応の触媒として、Coを用いた触媒が開示されている(非特許文献1参照)。この文献では、スピネル型Coを数nmの薄膜にすることによって、COの還元活性を向上することが報告されている。しかしながら、この文献の方法は、電気化学による還元を利用するものである。また、光還元触媒として、バナジウム酸化物が担持されたチタン酸化物が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、この文献の方法は、チタン酸化物の光触媒作用をベースとしたものである。
特開2016-073963号公報
S. Gao, et al., "Ultrathin Co3O4 Layers Realizing Optimized CO2 Electroreduction to Formate", Angew. Chem. Int. Ed., 2016, 55, 698
本発明は、触媒として機能することができ、二酸化炭素を効果的に光還元することが可能な新規な複合体材料を提供することを目的とする。また、本発明は、二酸化炭素を効果的に光還元する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、二酸化炭素を効果的に光還元することが可能な複合体材料を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記に挙げられる実施態様を含むが、これらに限定されるものではない。
[1] 周期表で第6族~第12族に分類される金属を2種以上含む金属酸化物の粒子と、前記金属酸化物の粒子を担持する担体とを含み、
前記金属酸化物は、スピネル型、またはペロブスカイト型の結晶構造を形成し、
前記金属酸化物の粒子の平均粒子径が5nm以下である、金属酸化物含有複合体。
[2] 前記金属酸化物は、スピネル型の結晶構造を形成している、[1]に記載の金属酸化物含有複合体。
[3] 前記金属酸化物は、Cu、Co、Mn、Fe、Ni、およびZnからなる群から選択される2種以上の金属を含む、[1]または[2]に記載の金属酸化物含有複合体。
[4] 前記金属酸化物は、CuCo、MnCo、またはFeCoである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の金属酸化物含有複合体。
[5] 前記担体は、TiO、SnO、Al、PbO、またはZnOの粒子である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の金属酸化物含有複合体。
[6] 金属酸化物含有複合体の総重量100重量%に対し、前記金属酸化物の総含有率が、0.001~30重量%である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の金属酸化物含有複合体。
[7] [1]~[6]のいずれか1つに記載の金属酸化物含有複合体を製造する方法であって、
工程1:金属イオン、界面活性剤、水、および疎水性有機溶媒を含み、油中水型のミセルを含むエマルジョンである第1液と、水酸化物イオン、界面活性剤、水、および疎水性有機溶媒を含み、油中水型のミセルを含むエマルジョンである第2液とを、混合する工程、
工程2:前記工程1で得られた混合液に、担体を加える工程、
工程3:前記工程2で得られた混合液に、水溶性有機溶媒を加える工程、
工程4:前記工程3で得られた混合液から、担体を含む不溶物を取り出す工程、および、
工程5:前記工程4で得られた不溶物を焼成する工程、
を含む、金属酸化物含有複合体の製造方法。
[8] 前記工程2において、前記担体および疎水性有機溶媒を含む担体分散液を、前記工程1で得られた混合液に加え、
前記工程3において、水溶性有機溶媒を加えることにより、油中水型のミセルを開裂させる、[7]に記載の金属酸化物含有複合体の製造方法。
[9] 二酸化炭素を還元するための、[1]~[6]のいずれか1つに記載の金属酸化物含有複合体からなる触媒。
[10] [1]~[6]のいずれか1つに記載の金属酸化物含有複合体、光吸収体、および犠牲剤の存在下、二酸化炭素を光還元する、二酸化炭素還元方法。
[11] 光吸収体がルテニウムビピリジンであり、犠牲剤がトリエタノールアミンである、[10]に記載の二酸化炭素還元方法。
[12] 液相中で二酸化炭素を光還元する、[10]または[11]に記載の二酸化炭素還元方法。
[13] 前記金属酸化物含有複合体の総重量が、溶媒1Lに対して、0.001~100gの比率である、[12]に記載の二酸化炭素還元方法。
本発明によれば、二酸化炭素を効果的に光還元する触媒としての機能を有する、新規な複合体材料を提供することができる。また、本発明によれば、二酸化炭素を効果的に光還元する方法を提供することができる。
金属酸化物含有複合体を用いて、二酸化炭素を光還元する反応の一例を説明する模式図である。 実施例のX線回折(XRD)の測定結果を示すチャートである。 (a)~(c)は、触媒例1の透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果を示す画像である。 CuCo粒子の粒子径の分布を示すグラフであり、(a)が触媒例1(実施例)、(b)が触媒例2(比較例)を示す。 実施例の二酸化炭素還元反応の試験を行うための装置の概略図である。 触媒例1および2により二酸化炭素還元反応を行ったときの、金属酸化物含有複合体(CuCo/TiO)1gあたりのCO生成量の経時変化を示すグラフである。 触媒例1および2により二酸化炭素還元反応を行ったときの、金属酸化物含有複合体(CuCo/TiO)1gあたりのH生成量の経時変化を示すグラフである。 触媒例1および2により二酸化炭素還元反応を行ったときの、CuCo単位表面積あたりのCO生成量の経時変化を示すグラフである。 触媒例1および2により二酸化炭素還元反応を行ったときの、CuCo単位表面積あたりのH生成量の経時変化を示すグラフである。
本発明の金属酸化物含有複合体は、周期表で第6族~第12族に分類される金属を2種以上含む金属酸化物(本明細書中、特に断りのない限り、このものを「金属酸化物」と称する)の粒子と、金属酸化物の粒子を担持する担体とを含む。金属酸化物は、スピネル型、またはペロブスカイト型の結晶構造を形成する。金属酸化物の粒子の粒子径が5nm以下である。金属酸化物含有複合体は、金属酸化物の粒子と、担体とにより構成される複合体となっている。
上記の金属酸化物含有複合体において、周期表で第6族~第12族に分類される金属としては、具体的には、第6族では、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、第7族では、Mn(マンガン)、Re(レニウム)、第8族では、Fe(鉄)、Ru(ルテニウム)、Os(オスミウム)、第9族では、Co(コバルト)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、第10族では、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、第11族では、Cu(銅)、Ag(銀)、Au(金)、第12族では、Zn(亜鉛)、Cd(カドミウム)、が挙げられる。金属酸化物含有複合体では、これらの金属の酸化物が用いられる。これらの金属を含有する金属酸化物含有複合体は、本明細書中に記載する二酸化炭素の光還元反応において、触媒活性を高めることができる(図1参照)。具体的には、図1の例では、金属酸化物含有複合体は、助触媒として機能し得る(詳細は後述)。なお、金属酸化物とは、金属元素と酸素元素により構成される化合物を意味する。
金属酸化物は、2種以上の金属を含む。それにより、2種類以上の金属元素を含む多元系酸化物となり、触媒作用を容易に高めることができる。多元系酸化物は、元素の組み合わせが多彩であり、触媒設計によって高活性な触媒を得ることが可能である。多元系酸化物では、2種類または3種類の金属の金属酸化物が好ましい。その場合、2種類または3種類の金属によって、効率よく触媒活性を高めることが可能になる。2種以上の金属を含む場合、それら金属は、周期表において、同一の族であっても、異なる族であってもよい。2種以上の金属を含む場合、異なる族の組み合わせを含むことが好ましい。そのような組み合わせとして、例えば、第9族と第11族の組み合わせ、第7族と第9族の組み合わせ、第8族と第9族の組み合わせなどが挙げられる。なお、2種類以上の金属を含む金属酸化物の場合、周期表で第6族~第12族に分類される金属と、周期表で第6族~第12族に分類される金属以外の金属とを含む金属酸化物であってもよい。周期表で第6族~第12族に分類される金属以外の金属としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、Li、Na、Kが挙げられる。アルカリ土類金属としては、Mg、Caが挙げられる。
金属酸化物が2種以上の金属を含む場合、金属酸化物は、周期表で第6族~第12族に分類される金属を2種以上含むことがより好ましい。それにより、触媒作用をさらに高めることができる。金属酸化物は、Cu、Co、Mn、Fe、Ni、およびZnからなる群から選択される金属を2種以上含むことがより好ましい。その場合、触媒作用をさらに高めることができる。2種以上の金属を含む場合、少なくともCuを含むことがより好ましい。
2種類以上の金属を含む金属酸化物としては、例えば、CuCo、MnCo、FeCo、NiCo、ZnCo、CrCoなどが挙げられる。
金属酸化物は、CuCo、MnCo、またはFeCoであることが、さらに好ましい。これらの金属酸化物により、より優れた触媒作用を奏することが可能になる。金属酸化物として、特に、CuCoが好ましい。
金属酸化物は、スピネル型、またはペロブスカイト型の結晶構造を形成している。これらの結晶構造を形成することで、優れた触媒作用を奏することができる。結晶構造は、スピネル型であることが好ましい。その場合、触媒作用をさらに高めることができる。金属酸化物は、周期表で第6族~第12族に分類される金属で、スピネル型の結晶構造を形成するものが好ましい。金属酸化物に含まれる金属の、特に好ましい例は上記で示したとおりである。例えば、Cu、Co、Mn、Fe、Ni、Zn、およびそれらを複数含む金属の酸化物は、スピネル型、またはペロブスカイト型の結晶構造を容易に形成し得る。金属酸化物の結晶構造における、スピネル型、およびペロブスカイト型については、例えば、Essene, E.J., Peacor, D.R. (1983) Crystal chemistry and petrology of coexisting galaxite and jacobsite and other spinel solutions and solvi. American Mineralogist: 68: 449-455.に記載されている。
上記の金属酸化物含有複合体では、金属が粒子の状態であり、金属酸化物の粒子が担体に担持されている。ここで、担持とは、基材として機能する担体の上に、担持される物質が固定されている状態のことを意味する。担持は、粒子状の金属酸化物が、担体の表面に付着している状態であり得る。例えば、金属酸化物粒子が、担体上に、点在しているような状態でもよい。ここで、金属酸化物含有複合体において、金属酸化物粒子が担体上で複数個集合した状態のものが存在していてもよいが、金属酸化物粒子の集合体は小さい方がよく、例えば、集合体の径が50nm以下であることが好ましい。金属酸化物含有複合体は、金属酸化物粒子を、粒子単体、粒子集合体、またはその両方で含み得る。金属酸化物の粒子は、非共有結合によって担持され得る。その場合、共有結合を介しないで、金属酸化物の粒子が担体の表面に固定される。
上記の金属酸化物含有複合体においては、金属酸化物の粒子の平均粒子径が5nm以下である。平均粒子径が5nm以下になることによって、粒子の表面積が大きくなり、光還元反応の際の活性点を増加させることができるため、優れた触媒作用を奏することが可能になる。金属酸化物の粒子の平均粒子径は、1nm以上であることが好ましい。
金属酸化物粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察によって測定することができる。上記の金属酸化物含有複合体では、金属酸化物粒子が担体により固定されているため、レーザ回折式粒度分布測定装置などを用いる方法では粒子の大きさは確認しにくいこともあるが、TEMによれば、容易に粒子径を確認することができる。例えば、TEMにより金属酸化物含有複合体の表面を観測し、任意に選択した所定個数(例えば50個、100個、200個、または300個)の金属酸化物の粒子の粒子径を計測し、その平均値を算出することで、金属酸化物の粒子の平均粒子径を求めることができる。金属酸化物粒子の粒子径の最大値は、特に限定されるものではないが、30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。また、金属酸化物粒子の粒子径の最小値は、特に限定されるものではないが、1nm以上であることが好ましい。
ここで、金属酸化物粒子の平均粒子径は5nm以下となることで、著しく触媒活性が向上することが見出された(後述の実施例参照)。すなわち、平均粒子径が5nmより大きいものと、5nm以下のものとを比較した場合、単なる表面積の増加からは予測できないような、劇的な触媒活性の向上が確認された。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
上記の金属酸化物含有複合体は、金属酸化物を担持する担体を有する。担体としては、限定されるものではないが、例えば、周期表で第2族~第5族または第12族~第14族に分類される1種の金属の酸化物(例えば、TiO、SnO、Al、PbO、ZnO、MgO、ZrO、CeO、Nb、Taなど)、および、カーボン、ゼオライト(FAU、MFI、MOR、BEA)が挙げられる。
担体は、TiO、SnO、Al、PbO、またはZnOの粒子であることが好ましい。これらの担体を用いることにより、粒子径の小さい金属酸化物を容易に得ることができる。また、これらの担体では、担体自身が化学的作用を有することがあり、その場合、金属酸化物の触媒活性を助けることが可能となるため、高い触媒作用を奏することができる。担体は、TiOであることが、特に好ましい。TiOの場合、アナターゼ型とルチル型とがあるが、アナターゼ型の方が好ましい。
担体は、粒子径が20~5000nmであることが好ましい。粒子径がこの範囲になることにより、金属酸化物粒子を効果的に配置することができる。担体の粒子径は、30~3000nmであることがより好ましく、50~1000nmであることがさらに好ましい。担体は粒子であり得る。そのため、上記の金属酸化物含有複合体は、金属酸化物の微粒子を表面に担持した担体の粒子により構成される複合体であり得る。
上記の金属酸化物含有複合体では、金属酸化物含有複合体の総重量100重量%に対し、金属酸化物の総含有率が、0.001~30重量%であることが好ましい。金属酸化物の含有率がこの範囲になることにより、優れた触媒作用を奏することがより可能になる。この含有率は、金属酸化物含有複合体における金属酸化物の担持率(重量%)となる。金属酸化物含有複合体における金属酸化物の総含有率は、0.01~20重量%がより好ましく、0.1~10%がさらに好ましく、0.5~5重量%がよりさらに好ましい。
上記の金属酸化物含有複合体は、例えば、CuCo/TiO、MnCo/TiO、FeCo/TiO、CuCo/SnO、MnCo/SnO、FeCo/SnOであり得る。これらの中でも、CuCo/TiO、およびMnCo/TiOがより好ましく、CuCo/TiOがさらに好ましい。なお、触媒の表記において、[/」は金属酸化物が担体に担持されていることを示しており、例えば、CuCo/TiOは、CuCoがTiOの担体に担持されている金属酸化物含有複合体であることを意味する。
金属酸化物含有複合体の製造方法について、説明する。
金属酸化物含有複合体の製造においては、〔工程1〕金属イオン、界面活性剤、水、および疎水性有機溶媒を含み、油中水型のミセルを含むエマルジョンである第1液と、水酸化物イオン、界面活性剤、水、および疎水性有機溶媒を含み、油中水型のミセルを含むエマルジョンである第2液とを、混合する工程、〔工程2〕前記工程1で得られた混合液に、担体を加える工程、〔工程3〕前記工程2で得られた混合液に、水溶性有機溶媒を加える工程、〔工程4〕前記工程3で得られた前記混合液から、担体を含む不溶物を取り出す工程、および、〔工程5〕前記工程4で得られた不溶物を焼成する工程、を含んでいる。
第1液(逆ミセル第1液:RM-A)は、金属イオン、界面活性剤、水、および疎水性有機溶媒を含む。第1液は、油中水型(W/O型)のミセル、すなわち、逆ミセルを含むエマルジョンである。逆ミセルでは、金属イオンを含む水相が界面活性剤に取り囲まれたミセルを形成し、このミセルが、疎水性有機溶媒中に存在する構造となる。第1液は、いわば、逆エマルジョンの状態である。
金属イオンは、金属酸化物の金属源となる金属のイオンである。したがって、金属イオンは、金属酸化物含有複合体に含まれる金属酸化物を構成する金属に対応する。例えば、CuであればCu2+、CoであればCo2+、MnであればMn2+、FeであればFe2+、NiであればNi2+、ZnであればZn2+、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属イオンは、水に安定に存在し得る。そのため、逆ミセルにおいて、水相に安定に金属イオンが存在することができる。
金属イオンは、カウンターとなるアニオンを有し得て、金属塩として存在し得る。第1液の水相には、金属イオンとカウンターアニオンとで構成される金属塩の水溶液が好ましく用いられる。金属塩としては、金属塩化物、金属水酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩などが挙げられる。金属塩の具体例としては、Cuでは、Cu(NO、CuSO、CuCl、Cu(CHCOO)、CuClなどが挙げられ、Coでは、Co(NO、CoSO、CoCl、Co(CHCOO)などが挙げられ、Mnでは、Mn(NO、MnSO、MnCl、Mn(CHCOO)などが挙げられ、Feでは、Fe(NO、FeSO、Fe(SO、FeCl、FeCl、Fe(CHCOO)などが挙げられ、Niでは、Ni(NO、NiSO、NiCl、Ni(CHCOO)などが挙げられ、Znでは、Zn(NO、ZnSO、ZnCl、Zn(CHCOO)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも用いることが可能である。この中でも、非イオン性界面活性剤、およびアニオン性界面活性剤が好ましく、非イオン性界面活性剤がより好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、エトキシ基が複数個連続して結合したエーテル型の界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルがより好ましい。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの具体例としては、下記の構造式で示される、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙げられる。なお、式中、nは1以上の整数である。
例えば、n=6のポリオキシエチレン(6)ノニルフェニルエーテル(下記の構造式)では、良好に、逆ミセル第1液を得ることができる。また、n=5の場合も、良好に逆ミセル第1液を得ることができる。なお、n=6の化合物は、NP-6と称され、n=5の化合物は、NP-5と称される。
疎水性有機溶媒としては、水と混和せず、逆ミセルを形成し得る、各種の有機溶媒を使用することができる。疎水性有機溶媒としては、例えば、炭化水素系の溶媒が挙げられる。具体的には、疎水性有機溶媒として、シクロヘキサン、ヘキサン、トルエンなどが挙げられる。疎水性有機溶媒として、特に、シクロヘキサンが好ましい。
第1液は、例えば、金属酸化物の最終的な組成および担持量を考慮した所望量の金属塩を水に溶解し、界面活性剤と疎水性有機溶媒を加えて、混合することにより、調製することができる。このとき、金属塩の水溶液は、金属イオンの濃度が、限定されるものではないが、例えば、0.01~1mol/Lになるように調製することができる。また、疎水性有機溶媒の、水に対する量(有機溶媒/水)は、限定されるものではないが、例えば、重量比で、5~100:1にすることができる。また、界面活性剤の、疎水性有機溶媒に対する量(界面活性剤/有機溶媒)は、限定されるものではないが、例えば、重量比で、0.01~1:1にすることができる。
第2液(逆ミセル第2液:RM-B)は、水酸化物イオン、界面活性剤、水、および疎水性有機溶媒を含む。第2液は、油中水型(W/O型)のミセル、すなわち、逆ミセルを含むエマルジョンである。逆ミセルでは、水酸化物イオン(OH)を含む水相が、界面活性剤に取り囲まれたミセルを形成し、このミセルが、疎水性有機溶媒中に存在する構造となる。第2液は、いわば、逆エマルジョンの状態である。
水酸化物イオンは、金属酸化物の前駆体となる金属水酸化物を形成すための水酸化物源となり得る。水酸化物イオンは、カウンターとなるカチオンを有し得て、塩として存在し得る。第2液の水相には、水酸化物イオンとカウンターカチオンとで構成される塩の水溶液が好ましく用いられる。塩としては、有機塩を好ましく用いることができ、例えば、第4級アルキルアンモニウム塩が挙げられる。有機塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム([(CHN][OH])が挙げられる。なお、水酸化物イオンは、厳密には、水の解離(2HO→H+OH)によってもわずかに生成し得るが、第2液においては、水酸化物の塩を水に溶解させたときのように、単なる水の解離よりも大きい量で水酸化物イオンを含んでいる。
第2液の界面活性剤は、第1液で例示したものと同様のものを用いることができる。第2液の界面活性剤は、第1液の界面活性剤と、同じであっても、異なっていてもよいが、より小さい金属酸化物粒子を形成する観点から、同じであることが好ましい。第2液の界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤が挙げられ、エトキシ基が複数個連続して結合したエーテル型の界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルがより好ましく、具体例として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙げられる。
第2液の疎水性有機溶媒は、第1液で例示したものと同様のものを用いることができる。第2液の疎水性有機溶媒は、第1液の疎水性有機溶媒と、同じであっても、異なっていてもよいが、より小さい金属酸化物粒子を形成する観点から、同じであることが好ましい。第2液の疎水性有機溶媒としては、例えば、炭化水素系の溶媒が挙げられ、具体例として、シクロヘキサンが挙げられる。
第2液は、例えば、水酸化物となった有機塩を水に溶解し、界面活性剤と疎水性有機溶媒を加えて、混合することにより、調製することができる。このとき、有機塩の水溶液は、限定されるものではないが、有機塩の濃度が、例えば、0.1~30重量%になるように調製することができる。また、疎水性有機溶媒の、有機塩の水に対する量(有機溶媒/水)は、限定されるものではないが、例えば、重量比で、5~100:1にすることができる。また、界面活性剤の、疎水性有機溶媒に対する量(界面活性剤/有機溶媒)は、限定されるものではないが、例えば、重量比で、0.01~1:1にすることができる。
第1液および第2液では、それぞれ、水相となる水溶液に、界面活性剤と、油相となる疎水性有機溶媒とを加えることで、疎水性有機溶媒が外相(連続相)、水が内相(分散相)となった逆ミセルが形成される。なお、ミセル(O/W型)が形成されるか、または逆ミセル(W/O型)が形成されるかは、界面活性剤および疎水性有機溶媒の種類および量などに依存し得るが、第1液および第2液の製造においては、逆ミセルが形成されるように、界面活性剤と疎水性有機溶媒が設定される。例えば、水と、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルと、シクロヘキサンとの組み合わせでは、逆ミセルが容易に形成され得る。
上記のようにして調製された第1液および第2液を混合し、混合液(逆ミセル液:RM-AB)を形成する(工程1に対応)。混合液は、エマルジョンが均一になるように撹拌することが好ましい。混合液とすることで、逆ミセルが混じりあい、ミセル径の小さい逆ミセルを形成しやすくなる。さらに、混合液に超音波処理を施すことが好ましい。超音波処理によって、第1液中の逆ミセルと第2液中の逆ミセルとを確実に混じりあわせることができる。また、超音波処理を行うと、逆ミセルのミセル径をより小さくすることができ、粒子系の小さい金属酸化物をより得やすくすることができる。ここで、第1液と第2液との混合により、逆ミセル内の水相が混じりあうことで、混合液の逆ミセルは、金属イオンのカウンターとなるアニオンとして、水酸化物イオンが存在することになる。いわば、水相に、金属水酸化物の前駆体が形成され得る。なお、逆ミセルの液を2つ調製し、その後、混合しているのは、金属酸化物の粒子をより小さくするためである。2液を混合することで、逆ミセルを当初から1液で調製する場合よりも、金属イオンと水酸化物イオンとを含む微細な逆ミセルを形成することが容易になる。
逆ミセルの混合液の調製後、この混合液に担体を加える(工程2に対応)。担体の添加は、好ましくは、あらかじめ疎水性有機溶媒に担体を加えて担体の分散液を調製し、この担体分散液を混合液に加えることにより行われる。疎水性有機溶媒の担体分散液とすることで、逆ミセル液の外相に担体を存在させることができ、金属酸化物を担持する複合体を容易に形成することが可能になる。さらに、担体添加後の混合液に超音波処理を施すことが好ましい。超音波処理によって、粒子径の小さい金属酸化物をより担体に担持させやすくすることができる。疎水性有機溶媒としては、上記の第1液、および/または第2液に使用した疎水性有機溶媒を用いることが好ましい。疎水性有機溶媒が第1液および第2液のものと同じであれば、逆ミセルの分散系がより安定化しやすくなる。担体分散液の疎水性有機溶媒としては、例えば、炭化水素系の溶媒が挙げられ、具体例として、シクロヘキサンが挙げられる。
担体の添加の後、担体を含む混合液に、水溶性有機溶媒を加える(工程3に対応)。水溶性有機溶媒の添加により、逆ミセルを開裂させることができ、金属を担体表面に配置させやすくすることができる。水溶性有機溶媒の量は、逆ミセルを開裂させるのに十分な量であることが好ましい。例えば、混合液の体積の0.1~10倍量の体積の水溶性有機溶媒を加えることができる。さらに、水溶性有機溶媒添加後の混合液に超音波処理を施すことが好ましい。超音波処理によって、粒子径の小さい金属酸化物をより担体に担持させやすくすることができる。水溶性有機溶媒は、水と混和する溶媒であるが、上記の疎水性有機溶媒とも混和する溶媒であることが好ましい。それにより、逆ミセルを容易に開裂させることができる。また、水溶性有機溶媒は、揮発性の有機溶媒であることが好ましい。揮発性の有機溶媒であると、溶媒の除去が容易になる。水溶性有機溶媒としては、低級アルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどを挙げることができる。
水溶性有機溶媒の添加後、混合液から、担体を含む不溶物を取り出す(工程4に対応)。本明細書において、不溶物とは、液に溶解しない物(不溶解性の物)を意味する。不溶物は、担体に金属酸化物の前駆体が付着した粒子を含んでいると考えられる。金属酸化物の前駆体は、限定されるものではないが、金属塩であると推測され、さらに金属水酸化物を含んでいると推測される。不溶物の取り出しは、例えば、遠心分離により、不溶物を沈殿させ、上澄み液をデカンテーションで取り除くことにより、行うことができる。なお、不溶物の取り出しは、これに限定されるものではなく、例えば、ろ過などによって行ってもよい。不溶物は、例えば遠心分離によって取り出した場合、少量の有機溶媒により分散させて、この分散液を移すことによって、焼成容器(例えば焼成皿)に移すことができる。焼成容器に移された不溶物は、液体(溶媒)と混合されたウェットな状態であるため、焼成前に、乾燥することが好ましい。例えば、100℃以上の温度で乾燥すると、水分が蒸発するため、乾燥が容易となる。乾燥温度は、例えば、150℃以下であってよい。
最後に、不溶物の焼成を行う(工程5に対応)。焼成は、焼成容器に移された上記の不溶物を焼成することにより行うことができる。これにより、担体に付着した金属塩が酸化されて、金属酸化物となり、この金属酸化物が担体に固定されて、金属酸化物が担体に担持された金属酸化物含有複合体が形成され得る。焼成は、大気中で行うことが好ましい。大気中で焼成することにより、簡便に焼成を行うことができ、金属酸化物を容易に形成することができる。もちろん、焼成は、不活性ガス(例えば窒素)の雰囲気下で行ってもよい。なお、焼成により、金属酸化物以外の成分(例えば金属イオンの対となっていたアニオンなど)は、分解、蒸発などして、消失する。
焼成温度は、200℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましく、400℃以上がさらに好ましい。また、焼成温度は、900℃以下が好ましく、800℃以下がより好ましく、700℃以下がさらに好ましい。焼成時間は、限定されるものではないが、例えば、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましく、3時間以上がさらに好ましい。また、焼成時間は、10時間以下が好ましく、8時間以下がより好ましく、6時間以下がさらに好ましい。
以上のような工程を経ることにより、上記の金属酸化物含有複合体を製造することができる。もちろん、金属酸化物含有複合体の製造方法は、これに限定されるものではない。
上記の金属酸化物含有複合体の製造方法によって、金属酸化物の粒子が担体上に担持されるメカニズムについて説明する。ただし、メカニズムは、反応の考えられ得る機構の一例であり、本態様の製造方法は、このメカニズムに限定されるものではない。
まず、上記で述べたように、第1液と第2液では、逆ミセル中に、それぞれ、金属イオンと、水酸化物イオンとが含まれている。そして、逆ミセルの第1液と第2液とを混合することで、混合液の逆ミセルの水相内で、第1液に含まれていた金属の組成比の金属水酸化物の前駆体が形成される。このとき、逆ミセルの平均粒子径は、外周の界面活性剤を含めて5nm以下にまでなっている可能性があり、さらに、内部の水相は1nm以下の微細な空間(場所)になっている可能性があり、その微細な空間で前記の前駆体が形成され得る。そして、エタノールなどの水溶性有機溶媒を加えることで逆ミセルが開裂し、逆ミセル中の金属水酸化物前駆体が、シクロヘキサンなどの疎水性有機溶媒中に分散する。その際、金属水酸化物前駆体は、共存する担体と衝突することにより担体表面に粒子状に付着する。そして、焼成によって、前駆体の粒子は担体上で熱拡散し、前駆体粒子の凝集および結晶化により、平均粒子径として10nm以下程度の微粒子が、結晶構造を有する金属酸化物として、担体上に形成される。このとき、担体が金属酸化物であると、金属酸化物前駆体と、担体との相互作用(例えば水素結合などが考えられ得る)によって、焼成の際に前駆体の粒子が拡散したり凝集したりすることが抑制され、より小さい粒子径の金属酸化物粒子が形成しやすくなるのではないかと考えられる。
上記の金属酸化物含有複合体を用いた二酸化炭素還元方法について説明する。
本明細書では、上記の金属酸化物含有複合体、光吸収体、および犠牲剤の存在下、二酸化炭素を光還元する、二酸化炭素還元方法が、開示される。また、本明細書では、上記の金属酸化物含有複合体からなる触媒が開示される。金属酸化物含有複合体は、触媒として機能する複合体材料となる。
金属酸化物含有複合体は、上記で説明したものが好ましい。二酸化炭素の光還元は、いわゆる人工光合成として知られている。本態様の二酸化炭素還元方法では、好ましくは、二酸化炭素が還元されて、一酸化炭素が生成する。
本態様では、上記の金属酸化物含有複合体は助触媒として機能し得る。すなわち、光を吸収して電子エネルギーに変換する光吸収体(光増感剤とも呼ばれる)とともに用いることで、二酸化炭素を還元する光還元反応が進行し得る。光吸収体としては、金属錯体などが挙げられる。金属錯体としては、例えば、ルテニウムビピリジン、マグネシウムポルフィリン、亜鉛ポルフィリン、などが挙げられるが、これに限定されるものではない。二酸化炭素の還元は、気相(例えば、空気、窒素などの不活性ガスの中)で行ってもよいし、液相(例えば、水、有機溶媒、およびそれらの混合溶媒の中)で行ってもよい。例えば、二酸化炭素を溶解させた水を含む溶媒に、光吸収体と上記の金属酸化物含有複合体を入れ、光(例えば、太陽光、可視光など)を与えることにより、液相中で二酸化炭素を一酸化炭素(CO)に還元させることができる。金属酸化物含有複合体の量は、限定されるものではないが、例えば、溶媒1Lに対して、0.001~100gの比率であってよい。
図1は、上記の金属酸化物含有複合体を用いて、二酸化炭素を光還元する反応の一例を説明する模式図である。この図により、光還元反応の考えられ得る機構の一例を説明する。ただし、本発明は、この機構に限定されるものではない。
図1の例では、金属酸化物含有複合体としてCuCo/TiO、光吸収体としてルテニウムビピリジン(Ru(bpy) 2+)、犠牲剤としてトリエタノールアミン(TEOA)を用いた例を示している。CuCoは助触媒として機能し得る。この機構の例では、光吸収体であるRu錯体が光を吸収して、電子(e)が励起し、この電子は助触媒であるCuCoの伝導帯に移動する。その電子が、CuCo上でCOに作用して、下記式(1)に示す二酸化炭素還元反応が進行し、COからCOが生成すると考えられる。なお、電子の励起により生じたホール(h)は、酸化が可能な犠牲剤によって取り除かれる。本明細書において、犠牲剤とは、二酸化炭素還元反応において、電気化学的な観点から、光吸収体などと反応することで、自らは分解しつつ、反応を進行させる化合物のことを意味する。犠牲剤としては、例えば、トリエタノールアミン、アスコルビン酸、1-ベンジル-1,4-ジヒドロニコチンアミド、ベンゾイミダゾール誘導体などが挙げられる。ところで、二酸化炭素還元反応では、下記式(2)で示す水素還元反応が、同時に進行し得る。二酸化炭素還元反応の電位は-0.53Vであるのに対し、水素還元反応の電位は-0.41であり、水素還元反応は、電位が二酸化炭素還元反応の電位のすぐ下にあり、同じ2電子還元反応である。そのため、二酸化炭素還元反応と水素還元反応とが、競争的に進行し得る。水素還元反応では、溶媒中の水が水素源となり、Hが発生していると考えられる。
CO + 2H + 2e → CO + HO ・・・(1)
2H + 2e → H ・・・(2)
本明細書では、上記の金属酸化物含有複合体について、二酸化炭素を光還元して一酸化炭素を生成する例を示したが、金属酸化物含有複合体による触媒反応は、これに限られるものではない。金属酸化物含有複合体は、一酸化炭素の生成以外の二酸化炭素還元反応や、他の還元反応、さらには酸化反応など、他の触媒材料として用いられてもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
触媒(金属酸化物含有複合体)の調製
触媒例1:CuCo/TiO(担持率1重量%)
Cu(NO・3HO(純度99%、和光純薬工業(株))と、Co(NO・6HO(純度98%、和光純薬工業(株))を、モル比がCu:Co=1:2となる比率で混合し、脱塩した水に溶解し、Coの濃度が0.2mol/Lとなる硝酸塩水溶液を50mL調製した。この溶液0.5mLを、ポリオキシエチレン(6)ノニルフェニルエーテル(NP-6、第一工業製薬(株))4.5g、およびシクロヘキサン(純度99.5%、和光純薬工業(株))9.0gと混合し、10℃の水浴下で30分間撹拌することにより、第1液となる逆ミセル溶液(RM-A)を調製した。
また、ポリオキシエチレン(6)ノニルフェニルエーテル13.5g、シクロヘキサン27.0g、および、10%水酸化テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)水溶液(キシダ化学(株))1.5mLを混合し、10℃の水浴下で30分間撹拌することにより、第2液となる逆ミセル溶液(RM-B)を調製した。
上記の第1液を上記の第2液に加えて、10℃の水浴中で1時間、撹拌速度500rpmで撹拌し、逆ミセルを有する混合液(RM-AB)を調製した。この逆ミセルの混合液(RM-AB)に、周波数45kHzで15分間、超音波処理を行った。
一方、シクロヘキサン100gに、アナターゼ型TiO粒子(A-100、石原産業(株))1.104g(担持率1重量%相当)を加え、15分間、超音波処理を行うことで、TiO分散液を調製した。
上記の混合液(RM-AB)に、上記のTiO分散液を加えて、混合した。その後、エタノール(純度99.5%、キシダ化学(株))200mLを加え、撹拌速度550rpmで、室温、1時間、撹拌した。このとき、過剰量のエタノールによって、逆ミセルが開裂されたものと考えられる。得られた処理液に、周波数45kHzで15分間、超音波処理を行った。その後、15分間、4000rpmで処理液を遠心分離し、上澄み液をデカンテーションにより除いた。残った沈殿物に少量のエタノールを加え、この沈殿物を焼成皿に移した。その後、110℃で13時間乾燥した後、大気中600℃で5時間、焼成(昇温速度:10.0℃/min)することにより、触媒例1(実施例)の金属酸化物含有複合体である、CuCo/TiO(担持率1重量%)を得た。
触媒例2(比較例):CuCo/TiO(担持率10重量%)
TiO分散溶液について、触媒例1のものの代わりに、シクロヘキサン5gに、アナターゼ型TiO粒子0.110g(担持率10重量%相当)を加え、15分間、超音波処理を行うことで、TiO分散溶液を調製し、これを使用した。それ以外は、触媒例1と同様にして、比較例として、CuCo/TiO(担持率10重量%)を得た。なお、触媒例2が比較例となるのは、後述の平均粒子径の測定結果によるものである。
X線回折(XRD)測定
上記の触媒例1および2の金属酸化物含有複合体について、粉末X線回折装置(XRD、RIGAKU Ultima IV)を用いて、XRDを測定した。
図2に、XRD測定の結果を示す。なお、図2では、比較のため、担体であるアナターゼ型TiO、および、担持率80重量%のCuCo/TiO(参考例1という)のXRDパターンも示す。参考例1は、金属塩と担体の量の比率を変えた以外は、触媒例1および2と同様の操作で調製したが、金属酸化物の担持量が多く、金属酸化物が微細な粒子となっていない。
触媒例1および2は、いずれも、担体(アナターゼ型TiO)と同様のXRDパターンが観察され、CuCoのXRDパターンは見られなかった。したがって、CuCo粒子は、担体上でよく分散して担持されていると考えられる。一方、参考例1では、CuCoの量が多いため、CuCoのXRDパターンが確認された。ここで、参考例1では、スピネル型構造のCuCoのXRDパターンが確認されたため、触媒例1および2においても、スピネル型構造のCuCoが形成されていることが示唆される。また、参考例1では、不純物であるCuOのXRDパターンも確認された。
透過型電子顕微鏡(TEM)観察
触媒例1および2の金属酸化物含有複合体について、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL、1400plus)を用いて、TEM観察を行った。
図3(a)~(c)に、触媒例1のTEM観察の結果(画像)を示す。図3(a)~(c)は、同じ測定サンプルの異なる部分の画像であり、図3(a)は、小さめの粒子がTiO上に担持された部分を示し、図3(b)は、大きめの粒子がTiO上に担持された部分を示し、図3(c)は、複数の粒子が若干凝集している部分を示している。このように、TEM画像から、CuCoの微粒子が、TiO上に担持されていることが確認された。図3(a)では、CuCoについて、スピネル型構造の面間隔に帰属する模様(格子縞)が確認され(幅d=0.20nm、(400))、図3(b)および(c)では、スピネル型構造の面間隔に帰属する模様(格子縞)が確認された(幅d=0.24nm、(311)。図3(c)では、粒子の形状および格子縞から、平均粒子径5nm以下の粒子が複数集まっていることが分かる。また、図3(a)に示すように、TiOは、アナターゼ型構造の面間隔に帰属する模様(格子縞)が確認された(幅d=0.35nm、(101))。よって、TiO上に、スピネル型構造のCuCoの粒子が形成されたことが確認された。
図4(a)および(b)に、TEM画像に基づいた、CuCo粒子の粒子径の分布を示す。図4(a)が触媒例1、図4(b)が触媒例2である。なお、平均粒子径の測定は、図3で用いたTEM観察ではなく低分解能のTEMでも観察できるので、低分解能のTEM観察で行った。CuCo粒子の平均粒子径を算出したところ、触媒例1は4.5nm、触媒例2は7.4nmであった(そのため触媒例2は比較例となる)。したがって、触媒例1のCuCo粒子は、担体上で平均粒子径5nm以下の微細な粒子として担持されていることが示唆される。
CuCo粒子の表面積の算出
触媒例1および2の金属酸化物含有複合体について、CuCoの比表面積を幾何学的に公式から算出した。算出方法は、CuCo粒子を球状とみなし、200個のCuCo粒子の粒子径から、下記の式により、表面積を求める方法を用いた。
(式中、ρは、CuCo粒子の密度6.33×10g/mであり、rは、CuCo粒子の粒子径(m)である。)
CuCo粒子(1gあたり)の比表面積の結果は、次のとおりである。
触媒例1: 117.4(m/g)
触媒例2: 101.8(m/g)
この結果から、担持量の少ない触媒例1の方が、比表面積が大きくなっていることが示唆される。
二酸化炭素還元反応に対する活性
試験例1
触媒例1または2の金属酸化物含有複合体による二酸化炭素還元反応の試験
触媒例1または2の金属酸化物含有複合体(粉体)25mg、および、[Ru(bpy)]Cl・6HO(純度99.95%、シグマアルドリッチジャパン合同会社)7.5mgを、水2mLおよびアセトニトリル3mLの混合溶媒(計5mL)に懸濁し、さらに、犠牲剤としてトリエタノールアミン(純度98.0%、東京化成工業(株))1mLを加え、24.5mL容量のガラス試験管に入れた。試験管は、光が当たらないようにアルミホイルで覆った。この液に、CO(純度99.95%、日ノ丸産業(株))で20分間バブリングを行って、液体を含む試験管内をCOで満たし、ダブルキャップで試験管を密閉した。その後、COをCuCo上に吸着させる目的で、暗幕の中、撹拌速度300rpmで30分間撹拌した。こうして、準備された反応液に対し、二酸化炭素還元反応の試験を行った。
図5に、二酸化炭素還元反応の試験を行うための装置の概略について示す。この装置では、照射ランプ1から光Lを照射し、光Lは、波長420nm以下の光をカットする紫外線カットフィルター2を通って、貫通孔3aが設けられた試験容器3の中に入る。試験容器3は光が遮断される構造を有しており、貫通孔3aからの光L以外は光が入らないようになっている。試験容器3の中には、上記によって調製された反応液5が入った試験管4が、アルミホイルが外されて設置されており、試験管4の反応液5に照射ランプ1からの光Lが照射される。この光Lにより試験管4内で二酸化炭素還元反応が進行する。反応中、反応液5は、マグネチックスターラーなどによって撹拌される。なお、試験管4は、ゴム製のダブルキャップ6によって密栓されており、反応液5から発生した気体は、試験管4の上部に留まる。そして、試験管4内の気体の一部をシリンジで抜き取って分析することで、二酸化炭素の発生など、反応の進行を確認することができる。なお、この試験では、照射ランプ1として、Xeショートアークランプ、500W、(株)ワコム電創)を使用し、照射光強度100mW/cmの可視光を照射した。照射光強度は、パワーメーター(ネオアーク PM-335A、鳥取サイエンス(株))で測定した。また、紫外線カットフィルター2として、SCF-50S-42Lを使用した。また、反応液5の撹拌は、撹拌速度300rpmで行った。
上記のようにして、二酸化炭素還元反応を開始し、反応開始後、30分、60分、およびそれ以降60分ごとに、1mLガスタイトシリンジを用いて、試験管内の気体1mLを取り、これを試験資料として、熱伝導度検出器(TCD)を備えたガスクロマトグラフィー(TCD-GC、GC-2014、(株)島津製作所)に注入し、一酸化炭素(CO)、および水素(H)の量を定量した。
ここで、一酸化炭素量の定量には、検量線として、減圧し、密栓した三口フラスコ(55.1mL)にガスタイトシリンジを用いて70μLの一酸化炭素(純度99.9%、ジーエルサイエンス(株))を注入し、その後、常圧に戻し、三口フラスコからガスタイトシリンジを用いて採取した、1、2、3、4、または5mLの気体のガスクロマトグラフ測定から求めた検量線を用いた。
また、水素の定量には、検量線として、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5mLの純水素(純度99.995%、日の丸産業(株))のガスクロマトグラフ測定から求めた検量線を用いた。
ガスクロマトグラフィーの条件
キャリアガス: N、He
カラム: WG-100(並列分流カラム)
温度: 50℃で10分後、10℃/分で95℃まで昇温し、5.5分維持
Lカラム流量: 50mL/min
Rカラム流量: 50mL/min
信号極性:+
電流:200mA
気化室温度:110℃
検出器温度:95℃
フィルタ信号定数:4ms
信号レンジ:×1
図6に、触媒例1および2により二酸化炭素還元反応を行ったときの、金属酸化物含有複合体(CuCo/TiO)1gあたりのCO生成量の経時変化をグラフにより示す。比較のため、担体のみで同様の試験を行っときの、担体(TiO)1gあたりのCO生成量の経時変化も示す。なお、二酸化炭素還元反応は、4回行っており、グラフでは、標準誤差の範囲をエラーバーにより記載している(以下同様)。
図6から、触媒例1および2において、反応開始から約60分以降にCOが生成していることが分かる。そして、生成量は、触媒例2よりも、担持率の少ない触媒例1の方が多い。なお、担体のみ(TiO)では、COの生成が見られなかったことから、二酸化炭素還元反応は、CuCo上で進行していると考えられる。
ここで、金属酸化物含有複合体(CuCo/TiO)1gあたりのCuCoの表面積は、上記の表面積の算出結果、および担持率から、次のとおりとなる。
触媒例1: 1.2(m
触媒例2: 10.2(m
したがって、触媒例1による触媒能力の向上は、表面積の増加によるものではないと示唆される。触媒能力向上の理由は、明らかでないが、例えば、より小さい粒子となることによる電子伝導性の向上や、担体TiOによる寄与に基づく触媒活性の向上が理由に挙げられるが、これに限定されるものではない。
図7に、触媒例1および2により二酸化炭素還元反応を行ったときの、金属酸化物含有複合体(CuCo/TiO)1gあたりのH生成量の経時変化をグラフにより示す。比較のため、担体のみで同様の試験を行ったときの、担体(TiO)1gあたりのH生成量の経時変化も示す。
図7のグラフで示すように、反応開始から約120分以降にHの生成量が増加することが確認された。触媒例2は、担体であるTiOとHの生成量が同程度であった。これに対して、触媒例1では、触媒例2および担体よりも、Hの生成量が多いことが確認された。このことからも、触媒例1は、触媒活性が高いことが示唆される。
図8に、上記の触媒例1および2を用いた二酸化炭素還元反応について、CuCo単位表面積あたりのCOの生成量に換算した結果のグラフを示す。また、図9に、上記の触媒例1および2を用いた二酸化炭素還元反応について、CuCo単位表面積あたりのHの生成量に換算した結果のグラフを示す。なお、担体(TiO)による一酸化炭素および水素の生成量は補正している。この結果から、触媒例1は、触媒例2よりも、単位表面積あたりの活性が20倍以上に向上していることが分かる。このように、粒子がより小さくなることによって触媒活性が向上することが示唆される。

Claims (11)

  1. CuCo、MnCo、FeCo、NiCo、ZnCo、およびCrCoから選択される金属酸化物の粒子と、前記金属酸化物の粒子を担持する担体とを含む、金属酸化物含有複合体からなる、二酸化炭素を還元するための触媒であって
    前記金属酸化物は、スピネル型の結晶構造を形成し、
    前記金属酸化物の粒子の平均粒子径が5nm以下であり、
    前記担体は、TiO、SnO、Al、PbO、ZnO、MgO、ZrO、CeO、Nb、Ta、およびゼオライトから選択される担体である、触媒
  2. 前記金属酸化物は、CuCo、MnCo、またはFeCoである、請求項1に記載の触媒
  3. 前記担体は、TiO、SnO、Al、PbO、またはZnOの粒子である、請求項1または2に記載の触媒
  4. 金属酸化物含有複合体の総重量100重量%に対し、前記金属酸化物の総含有率が、0.001~30重量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の触媒を構成する金属酸化物含有複合体を製造する方法であって、
    工程1:金属イオン、界面活性剤、水、および疎水性有機溶媒を含み、油中水型のミセルを含むエマルジョンである第1液と、水酸化物イオン、界面活性剤、水、および疎水性有機溶媒を含み、油中水型のミセルを含むエマルジョンである第2液とを、混合する工程、
    工程2:前記工程1で得られた混合液に、担体を加える工程、
    工程3:前記工程2で得られた混合液に、水溶性有機溶媒を加える工程、
    工程4:前記工程3で得られた混合液から、担体を含む不溶物を取り出す工程、および、
    工程5:前記工程4で得られた不溶物を焼成する工程、
    を含む、金属酸化物含有複合体の製造方法。
  6. 前記工程2において、前記担体および疎水性有機溶媒を含む担体分散液を、前記工程1で得られた混合液に加え、
    前記工程3において、水溶性有機溶媒を加えることにより、油中水型のミセルを開裂させる、請求項5に記載の金属酸化物含有複合体の製造方法。
  7. 前記工程5の焼成の温度が600℃以上である、請求項5または6に記載の金属酸化物含有複合体の製造方法。
  8. 請求項1~4のいずれか1項に記載の触媒、光吸収体、および犠牲剤の存在下、二酸化炭素を光還元する、二酸化炭素還元方法。
  9. 光吸収体がルテニウムビピリジンであり、犠牲剤がトリエタノールアミンである、請求項に記載の二酸化炭素還元方法。
  10. 液相中で二酸化炭素を光還元する、請求項またはに記載の二酸化炭素還元方法。
  11. 前記触媒の総重量が、液相に用いる溶媒1Lに対して、0.001~100gの比率である、請求項10に記載の二酸化炭素還元方法。
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