JP7410401B2 - 容器 - Google Patents

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Description

本願発明は、例えばお茶、コーヒーなどの飲料物を入れて持ち運び可能な容器に関するものである。
近時、飲料容器、例えば、お茶、コーヒー及びスープなどの飲料物を入れて持ち運ぶ飲料容器として、一重または内外筒間を真空にした真空二重容器が広く出回っている。
飲料容器は、樹脂製または金属製のもので、蓋のないタンブラー状のもの、高さ方向の全体にわたってほぼ同径筒状で、上部開口にネジにより着脱自在に設けられる蓋や飲み口を備えた水筒形のもの、高さが比較的低く、且つ側面が上方に向かって広がって上端に広口開口を有し、具材の入ったスープなどの比較的流動性の低い食材または飲料を入れるスープカップ状のもの、高さに対して開口径の大きな鍋状のものなど、各種形態のものがある。
そして、従来の飲料容器は、清潔性及び見栄えを高めるためにいろいろな表面処理が施されている。その一つに電解研磨処理が知られている。この電解研磨処理は、金属容器に応じた電解研磨処理液の中で、容器側をプラスにして直流電流を流し、容器の表面を熔解して平滑化、光沢化する処理で、容器の表面にこの処理を施すことにより、容器の清潔性を高め、見栄えをよくしている。
清潔性及び見栄えを高めるための他の表面処理として、フッ素コート処理が知られている。このフッ素コート処理は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、即ち、高い撥水・撥油性を有する表面処理剤を用いる処理であり、容器の表面にフッ素コーティングを施すことにより容器の清潔性及び見栄えを高めている。
清潔性及び見栄えを高めるための他の表面処理として、ホウロウ処理が知られている。このホウロウ処理は、例えば、フリット(粉末ガラス)、粘土(長石など)及び水などからなる釉薬を容器の表面に塗って、約800度で焼成し、容器の表面に略50~100μmの比較的厚い膜厚の「ガラスと粘土とからなる混合層(ポーラス状の粘土層の上にフリットが溶解した混合層)」を形成する処理で、容器の表面にこの処理を施すことにより容器の清潔性及び見栄えを高めている(特許文献1参照)。
ところで、上記従来の電解研磨処理は、処理後も表面は金属表面のままであるため、例えば長時間使用すると表面に汚れ成分が付着しやすく、衛生面及び見た目が悪くなる。更には容器内に飲料物を入れると金属イオンなどが溶出し、内部の飲料物の味や風味が劣化する恐れを有する。
また、電解研磨処理は、電解研磨処理時間を長くすることで表面粗さRa(算術平均粗さ)を小さくすることができる。しかしながら、例えば、コーヒーやお茶やスープなどは、汚れ成分である堆積物が多いため、例え表面粗さRaの小さい容器にコーヒーやお茶やスープなどのような飲料物を入れておくと、どうしても容器の内面に汚れ成分が堆積するようになる。そして、一度付着した汚れは取れにくく、お手入れがしにくくなり、衛生面及び見た目が悪くなる。
また、電解研磨処理は、表面粗さRaを小さくするために電解研磨処理時間を長くすると、それだけ生産コストが高騰するとともに、電解研磨処理液の使用量が増えて廃液処理費用がかかるようになり、やはり生産コストが高騰する。
また、上記従来のフッ素コート処理で用いられる処理剤は、環境負荷の高い物質であること、及びフッ素コート処理を施す箇所は、飲料物が触れる箇所であることを踏まえると、できるだけ避けるのが好ましい。
また、上記従来のホウロウ処理は、容器の表面に、略50~100μmの比較的厚いガラスと粘土とからなる混合層を形成するものである。そのため、当該混合層は、容器の変形に追随しにくく、容器の落下などによる衝撃で割れる恐れを有するとともに、膜厚が厚い分、容器全体が重くなるとの欠点を有する。
特許第6459609号公報
本発明は、容器の表面に、薄くて且つ防汚性の高いガラス層を設けることにより、内容物の変質を抑え、容器の重量を低減するとともに、防汚性の高い容器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
本発明では、上方が開口する有底筒状の容器であって、前記容器は、表面に、膜厚が10μm以下のガラス層を有し、前記ガラス層は、表面粗さが、Ra=0.6以上で、且つ2以下である構成。本発明は、後記するように例えばポリシラザンなどの高分子化合物を焼成することにより、縮合重合反応及び酸化反応させてガラス化し、容器の表面に極薄のガラス層(即ち、ホウロウ処理のようなガラスと粘土とからなる混合層ではない。)をコーティングするものであり、容器の表面に、従来のホウロウ処理の混合膜と比べて膜厚が非常に薄いガラス層を形成することができるようになる。なお、膜厚の下限値は、零以外である。
本発明は、更に前記ガラス層は、表面粗さが、Ra=0.6以上で、且つ2以下(即ち、0.6~2)である構成が好ましい。本発明は、特に、表面粗さRaの下限値を0.6にするものであり、この構成により、本出願人が既に作製している表面粗さRaが0.55のもの(図9の電解研磨品参照)に比べて、電解研磨処理時間を短くすることができるとともに、電解研磨処理液の使用量を低減することができる。その結果、生産コストが低減する。
ところで、ガラス層の表面粗さRaが0.6以上で、且つ2以下との状態は、ガラス層の表面に微細な凹凸が多数存在する状態であり、汚れ成分は、微細な凸部の頂点に付着するようになる。そのため、汚れ成分は、小水量の水洗いまたは軽いブラッシングで、容易に除去できるようになる。なお、上限値については、表面粗さRaが所定以上になると、汚れ成分が凸部の頂部のみではなく、谷部にも付着するようになり、防汚性が低下すると思われること、また、容器の表面粗さRaが2程度のものが存在することを踏まえると2が好ましい。
本発明は、このように容器の表面に極薄のガラス層をコーティングするものであり、ガラス層により、金属イオンの溶出などによる内容物の変質が抑えられ、ガラス層が容器の変形に追随し易くなって、割れにくくなる。その結果、清潔性を担保しながらスリム・軽量化が図られるとともに、安全且つ高品質、例えば、耐傷付き性、耐熱性、防食性ないしはガスバリア性が高まる。なお、「表面」は、容器の全表面または一部の表面(例えば、容器の全内面または容器内面の内容物と接触する面など)でもよく、「ガラス層」は、親水性を有するものまたは疎水性を有するものでもよいし、無色または有色でもよいし、透明または不透明でもよいし、あるいはそれらの組み合わせでもよい。
本発明は、更に前記ガラス層は、親水性を有する構成が好ましい。容器表面のガラス層を親水性にすることにより、飲料に起因する汚れ成分が水で流れ易くなり、容器表面への汚れ成分の付着が低減し、防汚性がより高まる。
本発明は、更に前記ガラス層は、少なくとも前記容器の内面と外面の上部とに有する構成が好ましい。このように、少なくともガラス層を容器の内面と、容器の外面の上部(例えば、ユーザーの口が当たる飲み口部分、または飲み口部分とそれより若干下方部分)に極薄のガラス層を形成することにより、特に、容器の外面の上部では、ユーザーが飲み口部に触れた時の金属臭や金属触感による違和感が低減する。
本発明は、更に前記容器は、真空を形成するための排気口をロウ材で封止してなるステンレス製の真空二重容器であり、前記ガラス層を形成する焼成温度は、前記ロウ材の溶解温度より低い構成が好ましい。このような構成により、容器の真空度を維持した状態でガラス層を形成できるようになる。
本発明は、更に前記容器と前記ガラス層との間に熱伝導が前記容器の基材より低い断熱層を設ける構成が好ましい。この構成により、例えば容器内に温度の高い内容物を入れた場合、内容物の温度低下がより緩やかになる(即ち、保温効果が向上する)とともに、容器を素手で直接持つことが容易になる。
本発明は、更に前記断熱層は、有色である構成が好ましい。ガラス層は、極薄であるため、ガラス層をユーザーが好む色に着色したとしても、人の目には透けて見える、即ち、ガラス層の色より、ガラス層の下の基材の色(この場合は、ステンレスボトル1のステンレスの銀色)が見えるようになってユーザーが本来の色(即ち、ガラス層の色)を認識できなくなるところ、当該構成により、ユーザーが容器の本来の色をより確実に認識し得るようになる。
本発明は、金属イオンの溶出などによる内容物の変質を抑え、ガラス層を容器の変形に追随させて割れにくくすることができる。また、清潔性及び見栄えを担保しながらスリム・軽量化を図ることができる。また、ガラス層に親水性を付与したり、ガラス層を所定範囲の粗さのRaにしたりすることにより、汚れ成分の付着を防止して防水性を高めることができるとともに、生産コストを低減することができる。また、真空を形成するための排気口をロウ材で封止してなる真空二重容器では、容器の真空度を維持した状態でガラス層を設けることができる。また、容器とガラス層との間に有色の断熱層を設けことにより、容器内の内容物の保温効果をより向上することができるとともに、断熱層の色を容器の色としてより確実に認識することができる。
本発明の真空二重のステンレスボトルの全体図 図1のA-A線断面図 図2のA部の拡大図 図2のB部の拡大図 図2のA部の他の拡大図 ガラス層形成工程の概略フロー図 セラミック層+ガラス層形成工程の概略フロー図 各種液滴と接触角度などの関連図 各種表面粗さRaと各種飲料物との汚れ比較図
本発明の容器は、一重のものまたは間を真空にした真空二重のものでもよい。また、種類もボトル状のもの、水筒形状のもの、スープカップ状のもの、鍋状のもの、更にはその他の形状でもよく、材質も金属製(即ち、ステンレス、アルミ、鉄、銅など)及び樹脂製などでもよい。
以下においては金属製で真空二重のステンレルボトルを用いて説明する。図1、2に、真空二重のステンレルボトルの全体形状と、断面形状を示し、図3~5に、ガラス層を明示した図2のA部及びB部の拡大図を示す。なお、図3~5のガラス層の膜厚は、分かり易いように他のものより拡大して記載している。また、蓋部材は省略する。
図1、2に示すステンレスボトル1(本発明の容器または真空二重容器に相当)は、ステンレス製の有底筒状の外筒2と、外筒2より一回り小さいステンレス製の有底筒状の内筒10とを有する。
外筒2は、外筒本体部3と、外筒底部4とを有する。外筒本体部3は、その上端に、上方に開口する上部開口3aを有し、その下端に、下方に開口する下部開口3bを有する筒状の部材である。
また、外筒底部4は、その上端に、上方に開口する上部開口4aを有する底の浅い容器状の部材であり、その内径は、外筒本体部3の内径とほぼ同じである。また、外筒底部4の中央部には、内部空間15を真空にするための真空排気口5(本発明の排気口に相当)が設けられ、更に外筒底部4の内底面には、内部空間15内に位置する形態でゲッター7が設けられ、内部空間15内で発生する例えばプレス油などのガスを吸着する。
そして、外筒本体部3の下部開口3bと、外筒底部4の上部開口4aとは、溶接により一体化されて、外筒2となる。なお、ステンレスの溶接温度はいろいろあるが、一例として、千数百度のものが知られており、溶接は、この範囲内の高温で行われる。また、外筒本体部3と外筒底部4とは、可能であれば、例えば、プレスなどを用いて一体成形してもよい。
内筒10は、外筒2より一回り小さい部材で、内筒本体部11と、内筒底部12とを有する。内筒本体部11は、その上端に、上方に開口する上部開口11aを有し、その下端に、下方に開口する下部開口11bを有する筒状の部材である。
また、内筒底部12は、その上端に、上方に開口する上部開口12aを有する底の浅い容器状の部材であり、その内径は、内筒本体部11の内径とほぼ同じである。
そして、内筒本体部11の下部開口11bと、内筒底部12の上部開口12aとは、外筒2と同様に溶接により一体化されて、内筒10となる。なお、外筒2と同様に、内筒本体部11と内筒底部12とは、プレスなどを用いて一体成形してもよい。
更に、内筒本体部11は、上部開口11aより少し下方の内側に、雌ネジ11cを有し、雌ネジ11cの少し下方に、内方に向かって突き出るリング状の絞り部11dを有する。そして、雌ネジ11cには、図示しない蓋部材の雄ネジが螺合し、絞り部11dには、同じく図示しない蓋部材のパッキンが当接して、閉蓋時に内筒10内からの飲料物の洩れを防止する。
内筒10は、外筒2内に収納配置される。内筒10が外筒2内に収納配置されると、外筒2と内筒10との間に内部空間15が形成されるとともに、外筒本体部3の上部開口3aと、内筒本体部11の上部開口11aとは当接状態になるので、当該当接部を溶接で一体化して、ステンレスボトル1とする。
ステンレスボトル1の外筒2と内筒10とは、例えば、SUS304などの300系のステンレス材を用いることができる。なお、SUS304など300系のステンレス板以外では、他のステンレス板、チタン、アルミニウムまたはそれらの合金などを用いることができる。
そして、板厚は、軽量化のためになるべく薄いものが選択される。ステンレスボトル1の板厚は、例えば、外筒2が、0.3mm~0.4mmのもの、内筒が0.08mm~0.3mmのものを用いることができる。なお、外筒2と内筒10との板厚は同じ(例えば、0.3mm~0.4mm)であってもよい。
本実施形態のステンレスボトル1の作製の一例を述べる。外筒2用の板材及び内筒10用の板材を所定の長さに切断し、プレスなどで筒状に曲げて端部を溶接して接合する。次いで、筒部材を膨らまして所定の径にし、筒部材を所定の長さに引き延ばして、外筒本体部3及び内筒本体部11を作製する。また、外筒底部4及び内筒底部12は、例えば、プレスで板材を円盤状に切断し、容器状に変形させて作製する。
その後、外筒本体部3の下部開口3bと外筒底部4の上部開口4aとを、溶接で接合して外筒2を作製し、内筒本体部11の下部開口11bと内筒底部12の上部開口12aとを、溶接で接合して内筒10を作製する。
その後、 内筒10を外筒2内に収納し、外筒2の上部開口3aと、内筒10の上部開口11aとを、溶接で接合してステンレスボトル1を作製する。
その後、真空装置で、真空排気口5から内部空間15の空気を吸い出して、内部空間15を所定の真空度にする。そして、真空排気口5にロウ材6(例えば、ガラス)(本発明のロウ材に相当)を置き、当該ロウ材6を所定の温度(例えば、約400℃~600℃)で溶かして封止する。
内部空間15の真空度は、内筒10内の飲料物を効果的に保温できる真空度であり、例えば10Paオーダー以下が好ましく、10-1Pa以下の高真空がより好ましい。即ち、上記真空二重壁のステンレスボトル1は、従来のガラス繊維や発泡スチロールなどの断熱材に比べて遥かに断熱作用が高いものである。
また、ステンレスボトル1の外筒2の外面は、その使用形態として、ステンレスの地肌のままでもよいし、色を付してもよいし、または人気キャラクターのデザインを付してもよい。
ステンレスボトル1の内筒10の内面(本発明の容器の内面に相当)と、外筒2の外面の上部(図2のRで示す範囲であり、ユーザーが口を当てる部分またはそれより若干広い部分)(本発明の容器の外面の上部に相当)には、ガラス層20が設けられる。図2のRの領域は、例えば、ステンレスボトル1の上部開口が図示しない蓋部材によって閉蓋されると、当該蓋部材によって覆われる領域である。
なお、ガラス層20が設けられる内筒10の内面の領域は、本実施形態では全内面として説明するが、一部、例えば、実質的に飲料物が入れられる絞り部11dより下方の領域(即ち、少なくとも飲料物が入れられ、当該飲料物が接触する領域)であってもよい。また、ガラス層20が設けられる外筒2は、一部外面であっても、すべての外面であってもよい。
ガラス層20をステンレスボトル1の外面の上部に設ける理由の一つは、外面の上部は、ユーザーが口を当てる部分で、清潔性を求められるためである。また、他の理由は、外面の上部以外の部分は、色を付けたり、人気キャラクターのデザインなどを付す部分でもあり、外面の上部以外の部分に色や人気キャラクターを付す場合にはガラス層20が不用になるためである。また、更に他の理由は、外面の上部以外の部分にガラス層20を設けなければ、その分生産コストが低下するためである。
ガラス層20は、例えば、高分子化合物であるポリシラザンを、ジブチルエーテル(C18O)からなる溶剤に溶かして塗料とし、その塗料を容器であるステンレスボトル1の表面に塗って所定の厚さにして焼成する。塗料を焼成すると、縮合重合反応及び酸化反応が行われて、ステンレスボトル1の表面に緻密で薄い膜厚のガラス層20(例えば、1μm)が形成される。その薄さは極薄とも呼べるナノガラス層である。
ポリシラザンは、無機ポリシラザン(パーヒドロポリシラザン:PHPS)、及び有機ポリシラザン(オルガノポリシラザン:OPSZ)が知られており、いずれも用いることができる。
無機ポリシラザンは、珪素分子を主体にした無機珪素高分子化合物で、原料である前駆体に末端基として水素基を有し、焼成すると末端基が水酸基(OH基)に置換される。
水酸基(OH基)は、2つある酸素の1つの手に水素が結合する形態であるが、この状態は不安定な状態である。そのため、水があると、酸素の他の1つの手は水の水素と結合して安定化しようとする。即ち、形成されるガラス層20は、それ自体で親水性を有するもので、その反応式の一例は、例えば、(SiHNH)+2HO=(SiO)+NH+2Hとして表記される。
そして、実施の形態では、この無機ポリシラザンを用いてガラス層20を形成しており、形成されるガラス層20は、水との接触角が78度であったが、より小さい接触角でもよい。
また、有機ポリシラザンは、珪素分子を主体にした有機珪素高分子化合物で、原料である前駆体に末端基としてメチル基(CH)を有し、焼成後も末端基はメチル基(CH)のままである。
メチル基(CH)は、そのままで安定な化合物であり、水との結びつきは弱く、水をはじく撥水性あるいは疎水性を有する。即ち、当該有機ポリシラザンで形成されるガラス層20は、それ自体で撥水性を有するものである。
このように上記有機ポリシラザンで形成されるガラス層20は、撥水性または疎水性を有し、そのようなものとして使用することができるが、この有機ポリシラザンで形成されたガラス層20に親水性付与処理を施して、親水性を有するようにしてもよい。
親水性付与処理は、親水性付与剤を用いて行う。親水性付与剤としては、例えば、重クロム酸カリを濃硫酸に溶解させたもの、弗化水素水、水酸化アルカリ水溶液など種々のものを用いることができる。
親水性付与処理は、例えば、ガラス層20を形成した容器(例えば、ステンレスボトル1)の表面に親水性付与剤を付与し、常温常圧下あるいは加熱雰囲気下で、数秒~数十分保持することによって行なう。例えば、0.2%弗化水素水溶液を用いる場合、この溶液をガラス層20に付与して30秒~1分程度保持して行う。
なお、無機ポリシラザンをガラス層20の原料として用いる場合、親水性のガラス層が得られるので、親水性付与処理は不要であるが、親水性付与処理を施して親水性の機能をより高める、即ち、水との接触角がより小さくなるようにしてもよい。
また、ガラス層20の材料として、上記ポリシラザンの他に、例えば、ジアルコキシポリシロキサン[((RO)SiO)]、ジアルキルポリシロキサン[(RSiO]などのポリシロキサン、或いはポリシラザンとポリシロキサンとを組み合わせたものなどを用いることができる。
ところで、「超撥水と超親水 その仕組みと応用 辻井薫著 発行所:米田出版 発行所:産業図書株式会社 第2版:2011年5月31日」の「第一節 Wenzelの理論(36頁)」には、「固体表面が微細な凹凸構造を有しており、その上におかれた液体がその固体表面と完全に接触する場合、Wenzelの理論が適用される。この完全に接触するという条件は、接触角が九〇度より小さくて濡れる場合は当然満たされる」(以下、「Wenzelの理論」という。)と記載されているように、平面における水の接触角度が、90度以上の場合の性質を撥水性と呼び、90度以下の場合の性質を親水性と呼んでいる(図8の「各種液滴と接触角等の関連図」参照)。
表面が親水性を有するということは、表面に付着する汚れ成分が水により流れ易い状態にあるということであり、してみると、ステンレスボトル1の表面が親水性を有していれば、例えステンレスボトル1の表面に汚れ成分が付着しても、汚れ成分は、水をかけるという簡単な動作で容易に除去することができる。また、例え頑固な汚れ成分であっても、水をかけながらの軽いブラッシングで容易に除去することができる。
次に、無機ポリシラザン(PHPS)を用いたガラス層20の形成方法の一例を、図6のガラス層形成工程の概略フロー図に基づいて説明する。容器として容量が例えば300cc~350ccのステンレスボトル1を用いる。また、ガラス層20を形成する箇所は、ステンレスボトル1の内面と、外面の上部(即ち、少なくともユーザーの口が当たる飲み口部分)とであるが、外面は、全外面であってもよい。
まずは、容器を形成する基材に付着した溶剤を除去するために、基材をアルカリ洗浄し(S1参照)、次いで、塗料を塗装する(S2参照)。塗料は、無機ポリシラザン(PHPS)を、ジブチルエーテル(C18O)からなる溶剤に溶かしたもので、無機ポリシラザンとジブチルエーテルとの割合は、例えば、(5~25):(75~95)のものを用いることができる。
焼成後に所定の膜厚(例えば、1μm)になるように、塗料の所定量(例えば、1g)をステンレスボトル1の内筒10内に滴下し、ステンレスボトル1の外筒2の外面の上部を、筆で塗ったり、またはステンレスボトル1を逆さ状態にして塗料内に浸けたりする。
その後、ステンレスボトル1を専用の回転機に掛けて例えば、20秒~30秒間、1分間あたり10回~15回程度回転させて、付着した塗料を伸ばして均一な所定の厚さにする。なお、膜厚に対する塗料の量は、ステンレスボトル1の内筒10の内面及び外面の上部の面積に応じて変わるため、例えば、塗料の量、回転機の回転数及び回転時間を変えて予め確かめておくことになる。
この場合、塗料の粘性は、水とほぼ同等の低さである。そのため、塗膜は、フッ素コートに使用するような専用の塗装ガンが不要になり、例えば、より簡単なデッピングなどで行うことができ、その分、生産コストを低減することができる。そして、塗装後に塗料を乾燥させる(S3参照)。
その後、ステンレスボトル1を焼成する(S4参照)。ステンレスボトル1を焼成すると、塗料に対して縮合重合反応及び酸化反応が行われて、ステンレスボトル1の表面にガラス層20が形成される。なお、作製されるガラス層は、無色なものまたは無色透明なものである。
その焼成は、例えば、炉内温度を300℃にして、約15分~20分間行うことになる。焼成が行われると、ステンレスボトル1の内面温度は、約250℃まで上昇し、内筒10の内面の塗料、及び外筒2の外面上部の塗料は、極薄(例えば、1μm)のガラス層20になる。そして、この焼成温度は、ステンレスボトル1の内部空間15を封止するロウ材6の溶解温度(約400℃~600℃)より低い。
なお、上記塗料は、時間を掛ければ常温でもガラス化する。即ち、常温で3週間程度置けば、ガラス化する。そのため、容器の材質が高温に弱い樹脂等である場合、このような常温での作製方法が用いられる。ただし、常温での作製方法は、硬化条件が一定でないため、樹脂が溶ける温度以下での焼成、例えば、約50℃での焼成が好ましい。
また、上記作製方法では、ガラス層20の膜厚を1μmとしたが、10μm以下であればよく、5μm以下であればよりよい。このように、ガラス層の膜厚をできるだけ薄くすることにより、ガラス層が容器の変化に追随し易くなり、ガラス層20が割れにくくなる。また、薄くすればするほど使用する塗料の量を少なくでき、その分生産コストが抑制される。なお、1μm以上の膜厚は、例えば、上記作製方法を複数回繰り返すことにより作製することができる。
本発明者は、容器の表面に上記緻密で極薄のガラス層20を形成することにより、容器の汚れが低減すること、ガラス層20に親水性を付与することにより、容器の汚れがより低減すること、ガラス層20の表面の粗さRaを所定の範囲にすることにより、容器の表面粗さRa(ガラス層の表面粗さRaでもある。)を必要以上に小さくしなくても汚れが低減すること、を見いだしたものである。この点については後でも述べる。
ところで、ステンレスボトル1の基材(即ち、外筒2及び内筒10)の表面の粗さRa(算術平均粗さ)は、種々のもの、例えば、約1~2のものが存在する。また、基材表面の粗さRaは、ガラス層20を形成する前に、例えば上記した電解研磨処理で、より小さいRaにすることができる。本出願人は、電解研磨加工でRa=0.55のもの(電解研磨処理時間は、約100秒)を既に作製している。
なお、ガラス層20を形成後に、電解研磨処理でガラス層20の粗さRaを小さくすることは不可能である。そのため、基材表面の粗さRaを電解研磨処理で予め所定の粗さにしておいて、その後にガラス層20を形成することになる。本発明者は、基材表面の粗さRaと、ガラス層20形成後の表面の粗さRa(即ち、ガラス層の表面粗さRa)とを比較したところ、両者はほぼ同じか、またはガラス層の方が若干小さかった。
そして、ガラス層20を形成することにより、汚れが低減することを実験により確かめた。実験は、以下の飲料物に対して以下の条件を設定して行った。その結果を図9に示す。
飲料物は、コーヒーと、お茶と、スポーツドリンクであるポカリスエット(登録商標であり、以下においては登録商標との記載は省略する。)と、粉末スープであるオニオンスープと、同じく粉末スープであるコーンスープの5種類である。
コーヒーでの条件は、「インスタントコーヒーの粉をお湯に溶かしてコーヒーを作製する。その後、コーヒーをステンレスボトル1の内筒10内に約半量入れ、横置き状態で数時間放置した後、水洗いし、再びコーヒーの入れ替えを行う。ただし、放置時間は検体間で差異のないように統一する。これを同じ位置での横置き状態で20回繰り返し、10回目と20回目の内筒10の表面を観察する。」である。
お茶での条件は、「お茶パックをお湯に溶かしてかき混ぜてお茶を作製する。その後、お茶をステンレスボトル1の内筒10内に約半量入れ、横置き状態で数時間放置した後、水洗いし、再びお茶の入れ替えを行う。ただし、放置時間は検体間で差異のないように統一する。これを同じ位置での横置き状態で20回繰り返し、10回目と20回目の内筒10の表面を観察する。」である。
ポカリスエットでの条件は、「ポカリスエットの試験液を作製する。その後、試験液をステンレスボトル1の内筒10内に約半量入れ、横置き状態で一日放置した後、試験液を捨て、再び試験液の入れ替えを行う。これを同じ位置での横置き状態で30日間繰り返し、25日目(25回目)と30日目(30回目)の内筒10の表面を観察する。」である。
コーンスープでの条件は、「コーンスープの試験液を作製する。その後、試験液をステンレスボトル1の内筒10内に約半量入れ、横置き状態で一日放置した後、試験液を捨て、再び試験液の入れ替えを行う。これを同じ位置での横置き状態で25日間繰り返し、20日目(20回目)と25日目(25回目)の内筒10の表面を観察する。」である。
オニオンスープでの条件は、「オニオンスープの試験液を作製する。その後、試験液をステンレスボトル1の内筒10内に約半量入れ、横置き状態で一日放置した後、試験液を捨て、再び試験液の入れ替えを行う。これを同じ位置での横置き状態で25日間繰り返し、20日目(20回目)と25日目(25回目)の内筒10の表面を観察する。」である。
容器であるステンレスボトル1は、表面に何らの表面処理を施していないもの(以下、未処理品といい、図9の未処理に相当)と、表面に100秒間の電解研磨処理を施したもの(以下、電解研磨100S品といい、図9の電解研磨100Sに相当)と、表面に何らの表面処理を施さないものに、ガラス層20を形成したもの(以下、(未処理+ガラス層)品といい、図9の未処理+ガラス層に相当)と、表面に電解研磨処理を50秒間施して表面を滑らかにした後に、ガラス層20を形成したもの(以下、(電解研磨50S+ガラス層)品といい、図9の電解研磨50S+ガラス層に相当)と、表面に電解研磨処理を70秒間施して表面をより滑らかにした後に、ガラス層20を形成したもの(以下、(電解研磨70S+ガラス層)品といい、図9の電解研磨70S+ガラス層に相当)とである。
そして、未処理品は、表面粗さRa(算術平均粗さ)が1.2~1.5のものを用いたが、より粗いもの、例えば、2またはそれ以上のものでもよい。その場合、(未処理+ガラス層)品も、用いる未処理品に応じて替わることになる。
電解研磨品100Sは、表面粗さRaが0.55のものを用いた。このものは、本出願人が電解研磨加工ですでに得ている粗さが非常に小さいもの、即ち、表面が非常に滑らかなものである。なお、表面粗さRaがこれだけ小さくなると、その分、電解研磨処理時間が長くなるとともに、電解研磨処理液の使用量が増えて廃液処理費用が嵩むことになる。
(未処理+ガラス層)品は、表面粗さRaが1.11のものを用いた。なお、このものは、未処理品と比べて表面粗さRaが若干小さいものである。
(電解研磨50S+ガラス層)品は、表面粗さRaが0.79のものを用いた。また、(電解研磨70S+ガラス層)品は、表面粗さRaが0.65のものを用いた。なお、(電解研磨70S+ガラス層)品の表面粗さRaが、(電解研磨50S+ガラス層)品の表面粗さRaより小さいのは、(電解研磨70S+ガラス層)品が20秒間多く電解研磨処理を行った結果、表面がより滑らかになったためである。
結果の概要を 図9に示す。まずは、ガラス層20がない未処理品と、ガラス層20がない電解研磨100S品とについて検討する。コーヒー、お茶、コーンスープ及びオニオンスープの実験結果によると、コーヒーの10回目の結果、お茶の10回目の結果及びオニオンスープの20回目の結果は、いずれも未処理品は、汚れが確認できたのに対し、電解研磨100S品は、汚れが確認できなかったであり、コーンスープの25回目の結果及びオニオンスープの25回目の結果は、いずれも未処理品は、汚れが確認できたのに対し、電解研磨品は、若干の汚れが確認できた程度であった。
上記コーヒー、お茶、コーンスープ及びオニオンスープによる汚れ実験によると、未処理品に比べて、電解研磨100S品の方が汚れにくいことになる。即ち、容器の表面は、ガラス層がない場合、表面粗さRaが小さいほど汚れにくいことになる。
次いで、ガラス層20がない未処理品と、ガラス層20を有する(未処理+ガラス層)品とについて検討する(なお、両品のRaは若干異なる)は、コーヒー、お茶、ポカリスエット、コーンスープ及びオニオンスープの実験結果によると、コーヒーの10回目と20回目の結果、お茶の10回目と20回目の結果、ポカリスエットの30回目の結果、コーンスープの25回目の結果及びオニオンスープの20回目の結果は、いずれも未処理品は、汚れが確認できたのに対し、(未処理+ガラス層)品は、汚れが確認できなかったであり、オニオンスープの25回目の結果は、未処理品は、汚れが確認できたのに対し、(未処理+ガラス層)品は、若干の汚れが確認できた程度であった。
上記コーヒー、お茶、ポカリスエット、コーンスープ及びオニオンスープによる汚れ実験によると、未処理品に比べて、(未処理+ガラス層)品の方が汚れにくいことになる。即ち、ステンレスボトル1の表面は、ガラス層20がないものより、ガラス層20を有する方が汚れにくいことになる。
次いで、表面粗さRaに着目して、表面粗さRaが近いもの、即ち、ガラス層20がない電解研磨100S品と、ガラス層20を有する(電解研磨70S+ガラス層)品とについて検討する。なお、上記したように電解研磨100S品は、本出願人が電解研磨加工ですでに得ている表面粗さRaが0.55の非常に滑らかで、且つ汚れにくいものである。
コーヒー、お茶、ポカリスエット及びコーンスープの実験結果によると、コーヒーの20回目の結果、お茶の20回目の結果、ポカリスエットの30回目の結果は、いずれも電解研磨品は、汚れが確認できたのに対し、(電解研磨70S+ガラス層)品は、汚れが確認できなかったであり、コーンスープの25回目の結果は、電解研磨品は、若干の汚れが確認できたのに対し、(電解研磨70S+ガラス層)品は、汚れが確認できなかったであった。
上記コーヒー、お茶、ポカリスエット及びコーンスープによる汚れ実験によると、電解研磨100S品に比べて、(電解研磨70S+ガラス層)品の方が汚れにくいことになる。
この結果から以下のことが分かる。即ち、ステンレスボトル1の表面粗さRaが多少大きくても、ガラス層を形成することにより、表面粗さRaが小さいものより防汚性が向上することである。してみれば、表面粗さRaは、電解研磨100S品のように電解研磨処理時間を長くして形成する必要がないことになる。そして、表面粗さRaの下限値を0.6にすることにより、電解研磨処理時間は、100秒以下に短縮でき、使用する電解研磨処理液も少量で済むため、それだけ生産コストが低減する。
次いで、ガラス層20を有する(電解研磨70S+ガラス層)品と、ガラス層20を有する(電解研磨50S+ガラス層)品と、ガラス層20を有する(未処理+ガラス層)品とについて検討する。(電解研磨70S+ガラス層)品のRaは、0.65で、(電解研磨50S+ガラス層)品のRaは、0.79で、(未処理+ガラス層)品のRaは、1.11であるように、いずれも上記下限値の0.6以上のもので、結果は、電解研磨100S品(Ra=0.55)より良好である。即ち、ステンレスボトル1の表面は、表面粗さRaが下限値である0.6以上であれば汚れにくいことになる。これは、汚れ成分が、ガラス層20の表面に有する非常に小さな凸部の頂部に点状になって付着するためであると思われる。そして、このような汚れ成分は水で容易に除去できるものである。
ところで、ガラス層20がない未処理品と、ガラス層20がない電解研磨100S品との比較結果からも分かるように、表面粗さRaは、粗くなるに従って汚れ易くなる。そこで、表面粗さRaの上限値を、未処理品よりも大きく、且つ既存の容器として存在する値である2とした。即ち、容器の表面にガラス層20を形成するとともに、ガラス層20の表面粗さRaを所定範囲、即ち、0.6~2にすることにより、生産コストを低減するとともに、防汚性を向上するという相乗的な作用効果を奏する。
次いで、親水性についてであるが、「容器の表面は、親水性を有するほど汚れにくくなる」ことは、上記したとおりであるとともに、上記実験で用いたガラス層20は、それ自体で親水性を有するものである。即ち、本発明は、親水性を奏するガラス層20を有するものでもある。そのため、それ自体で親水性を奏するガラス層20の場合には、防汚性が更に向上するという相乗的な作用効果を奏する。
なお、ガラス層20それ自体が親水性を有しないものであれば、ガラス層20に別途親水性付与処理を施せばよい。その結果、上記同様、防汚性が更に向上するという相乗的な作用効果を奏する。また、ガラス層は、無色のもの、または有色のもの(公知の製法で作製可能である。)でもよいし、透明なものまたは不透明なものでもよいし、あるいはそれらの組み合わせでもよい。
ところで、本発明のガラス層は、熱伝導率が30W/m・K以下(後記するセラミック層とほぼ同様)であり、一応の保温機能を有するが、極薄であるため十分な保温効果を奏することができない。そのため、例えば、一重の容器または二重の真空容器内に温度の高い内容物を入れた場合、ガラス層だけでは、内容物の温度が早期に低下したり、あるいは容器の外面が熱くなり、容器を手で持ったり、あるいは外面上部の飲み口に口を当てたりすることができにくくなる。このような問題を解決する手段を以下に記載する。
上記手段は、図5に示すように、容器の表面とガラス層との間に、熱伝導が容器の基材より低い断熱層、例えば、セラミック層を設けるものであり、図5にステンレスボトル1の内筒10の内面とガラス層20との間にセラミック層21を設けるものを示すが、外筒2に設けるセラミック層21は、外筒2の外面とガラス層20との間になる。なお、セラミック層21は、内筒10及び外筒2の全てに設けても、一部に設けてもよい。また、断熱層は、熱伝導が容器より低い断熱層であれば、どのようなものでもよく、例えば、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着するものでもよい。
以下に、容器の基材の表面に断熱層であるセラミック層21を形成し、その後セラミック層21の表面にガラス層20を形成する製法の一例を、図7のガラス層+セラミック層形成工程の概略フロー図に基づいて説明する。まずは、容器であるステンレスボトル1の表面に、ブラスト処理を施して、ステンレスボトル1の表面に微細な多数の凹凸を形成する(S1参照)。
次いで、ブラスト処理を施した表面にセラミック塗料を塗布する(S2参照)。その塗布は、スプレーガンによる塗装や上記段落0065に記載した塗布手段を用いることができる。
塗布後、塗料を乾燥させ(S3参照)、乾燥後にステンレスボトル1を焼成する(S4参照)。その焼成は、例えば、炉内温度を300℃にして、約15分~20分間行うことにより行う。そして、焼成の後、室温で自然冷却する(S5参照)。
その結果、ステンレスボトル1の表面に、膜厚が20~30μmのセラミック層21からなる断熱層(本発明の断熱層が相当)がコーティングされる。このセラミック層21は、酸化珪素を主成分とする塗膜で、熱伝導がステンレスボトル1より低いものである。なお、本発明のガラス層は、セラミック層を含まない。
その後、セラミック層21の表面にガラス層20を形成する。その詳細は、図6のS2~S4と同じであり、図7に基づけば、セラミック層21の表面にガラス塗料を塗装し(S6参照)(図6のS2に相当)、その後乾燥し(S7参照)(図6のS3に相当)、その後焼成するものである(S8参照)(図6のS4に相当)。
即ち、S8の焼成は、例えば、炉内温度を300℃にして、約15分~20分間行われ、焼成の結果、セラミック層21の表面に極薄(例えば、1μm)のガラス層20が形成されることになる。
セラミック層21は、白色であり、本件発明の「断熱層は、有色である」は、この場合白色が相当する。なお、セラミック層の表面を必要とする色(例えば、黒など)に着色することにより、さまざまな色や、色模様にすることができる。
セラミック層21は、膜厚が少なくとも10μm以上であり、熱伝導率が少なくとも30W/m・K以下である。このようにセラミック層21をガラス層20より厚くすることにより保温性能が向上する。別言すれば、容器の表面上の膜厚を10μm以下のガラス層20と、10μm以上のセラミック層21との2層構造にし、容器の基材とガラス層との間の距離を長くすることにより、容器の保温効果をより向上することができる。因みにステンレスボトル1の熱伝導率は、30.6W/m・K(80℃)である。
本発明の特徴的構成をまとめると、本発明の特徴的構成は、容器の表面に、極薄のガラス層20を設けることであり、本発明の他の特徴的構成は、容器の表面に、親水性で、且つ極薄のガラス層20を設けることであり、本発明の更に他の特徴的構成は、容器の表面に、表面粗さRaが所定範囲で、且つ極薄のガラス層20を設けることであり、本発明の更に他の特徴的構成は、容器の表面に、親水性で、表面粗さRaが所定範囲で、且つ極薄のガラス層20を設けることであり、本発明の更に他の特徴的構成は、基材の表面を熱伝導の低い断熱層とガラス層との2層構造にすることである。そして、それぞれの特徴的構成により、特有な作用効果並びに相乗的な作用効果を奏する。
本発明は、容器であるステンレスボトル1の基材がガラス層20で覆われるため、金属イオンの溶出などによる内容物の変質が抑えられ、ガラス層20が基材の変形に追随し易くなるため、割れにくくなる。その結果、清潔性及び見栄えの良さを担保しながらスリム・軽量化を図ることができるとともに、安全且つ高品質、例えば、耐傷付き性、耐熱性、防食性ないしはガスバリア性が高い容器を得ることができるようになる。
本発明は、更にガラス層20に親水性を付与することにより、容器表面への汚れの付着をより低減することができるとともに、防汚性をより高めることができるようになる。
本発明は、更にガラス層20の領域を容器の外面の上部にすることにより、ユーザーが飲み口部に触れた時の金属臭や触感の違和感を低減することができるようになる。
本発明は、更にガラス層20の表面粗さRaを、0.6~2にすることにより、生産コストを低減することができるとともに、防汚性をより向上することができるようになる。
本発明は、更にガラス層と容器の基材との間に熱伝導の低い断熱層を設けることにより、内容物の温度低下を防止するとともに、素手で容器を直接持つことを容易にすることができるようになる。また、断熱層をユーザーの好みの色にすることにより、容器の色をユーザーにより確実に認識させることができるようになる。
本願発明は、上記実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能であることは勿論である。
1…ステンレスボトル
2…外筒
5…真空排気口
6…ロウ材
10…内筒
15…内部空間
20…ガラス層
21…断熱層


Claims (5)

  1. 上方が開口する有底筒状の容器であって、
    前記容器は、表面に、膜厚が10μm以下のガラス層を有し、前記ガラス層は、表面粗さが、Ra=0.6以上で、且つ2以下であることを特徴とする容器。
  2. 前記ガラス層は、親水性を有することを特徴とする請求項1に記載の容器。
  3. 前記ガラス層は、少なくとも前記容器の内面と外面の上部とに設けることを特徴とする請求項1または2に記載の容器。
  4. 前記容器と前記ガラス層との間に熱伝導が前記容器の基材より低い断熱層を設けることを特徴とする請求項1に記載の容器。
  5. 前記断熱層は、有色であることを特徴とする請求項に記載の容器。
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