本願で開示する真空二重容器は、有底筒状の金属製内容器と有底筒状の金属製外容器とを備え、前記内容器と前記外容器との間の空間を真空にした真空二重容器であって、表面に琺瑯加工がなされ、前記外容器の底面が前記内容器側に湾曲した湾曲面として形成されている。
本開示にかかる真空二重容器は、上記の構成を備えることで、内容器と外容器の間の空間を真空とした後に容器の表面に琺瑯加工を施しても、琺瑯加工時の高温によって外容器が変形したり、高温時に溜まった応力によって常温に戻した後に外容器の形状が変わってしまい、形成された琺瑯層が剥離したりすることを効果的に回避することができる。この結果、金属薄板を用いて軽量化を実現すると共に、内容器と外容器の間の空間を真空状態にした後に琺瑯加工を行うという簡易な方法を用いて低コストで製造できる、表面に琺瑯加工が施された真空二重容器を実現することができる。
本開示にかかる真空二重容器において、前記外容器の前記底面は、前記底面の外径をX、前記湾曲面の曲率半径をYとしたとき、前記曲率半径Yが前記外径Xとの関係において、Y=13000/XからY=62000/Xの間の値となることが好ましい。外容器底面の湾曲面の曲率半径Yを上記範囲とすることで、琺瑯層の剥離などが生じない真空二重容器を得ることができる。
また、本開示にかかる真空二重容器において、前記外容器の前記底面は、前記底面の外径をX、前記湾曲面における中心部分での周辺部分に対する深さをZとしたとき、前記深さZが前記外径Xとの関係において、Z=(0.1X)3/100からZ=(0.1X)3/500の間の値となることが好ましい。外容器底面の湾曲面の中心部の深さZを上記範囲とすることで、琺瑯層の剥離などが生じない真空二重容器を得ることができる。
さらに、前記外容器の前記底面が、前記湾曲面に対し、前記外容器の高さ方向に形成された段差部を介して前記内容器側に配置された、前記内容器側に湾曲した内側湾曲面をさらに備えた構成とすることができる。
なお、この場合において、前記内側湾曲面の外径をx、曲率半径をyとしたとき、前記曲率半径yが前記外径xとの関係において、y=13000/xからy=62000/xの間の値となることが好ましい。
また、この場合において、前記内側湾曲面の外径をx、中心部分での周辺部分に対する深さをzとしたとき、前記深さzが前記外径xとの関係において、z=(0.1x)3/100からz=(0.1x)3/500の間の値となることが好ましい。
さらに、前記外容器の前記底面が、前記内側湾曲面に形成された更なる内側湾曲面を備えた構成とすることができる。
さらにまた、本開示の真空二重容器において、大気圧下に置かれた状態で、前記内容器の底面の中心と前記外容器の前記底面の中心との間に、所定の間隔が形成されていることが好ましい。このようにすることで、外容器と内容器との間の真空層が維持でき、保温性に優れた真空二重容器を得ることができる。
以下、本願で開示する真空二重容器について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
以下では、本願で開示する真空二重容器の第1の実施の形態として、最もシンプルな形状である蓋のない有底円筒形状の真空タンブラーを例示して説明する。
図1に、本実施形態にかかる真空二重容器である真空タンブラーの断面形状を示す。
図1に示す本実施形態にかかる真空タンブラー1は、有底筒状の内容器2と、有底筒状で内容器2を包み込む大きさを備えた外容器3とから構成されている。外容器3の底面3aは、内容器2側に湾曲した湾曲面、すなわち、外容器3を底面3aの側から見た場合に凹曲面となるように形成されている。
内容器2と外容器3との間には、気密に構成された空間4が形成され、空間4は排気されて真空に保たれている。また、本実施形態にかかる真空タンブラー1は、内容器2と外容器3の表面全面、すなわち、内容器2と外容器3とにおいてその間に形成される空間4に面している側とは異なる側の表面に琺瑯層5が形成されている。
本実施形態にかかる真空タンブラー1の内容器2と外容器3は、一例として、いずれも板厚0.4mmのステンレス板、より具体的にはSUS304などの300系のステンレス材を成形加工したものである。また、本実施形態の真空タンブラー1は、内容器2と外容器3とを、その上部開口端部分で接合して内容器2と外容器と3との間に気密にできる空間4を形成した後、図示しない排気口から空間4内部の空気を排出して真空状態としたものである。
内容器2と外容器3の素材としては、上記例示したSUS304など300系のステンレス板以外にも、他のステンレス板、その他、鉄、アルミニウム、または、アルミメッキ鋼板や、アルミと亜鉛がメッキされたガルバリウム鋼板などの金属薄板、さらには、その表面が琺瑯加工に適するように加工されたほうろう用鋼板などを用いることができる。また、内容器2と外容器3の板厚は、真空二重容器全体の形状や外径や高さなどの大きさを踏まえ、さらに製造条件を加味してその形状を保つことができる厚さの範囲内として例えば0.25mm程度から1.5mm程度までの範囲で選択できる。ただし、軽量化のためにはなるべく薄い値を選択することが好ましい。さらに、本実施形態の真空タンブラー1では、内容器2と外容器3の材料と厚さをいずれも同じもので形成したものを例示したが、内容器2と外容器3との間の空間4を真空に維持できる範囲において、内容器2と外容器3を、材料または板厚、さらにはその両方を異なるものを用いて形成することができる。
また、内容器2と外容器3との接合は、上記例示したようにそれぞれの上端開口部分で行う場合には限られない。例えば、内容器2または外容器3のいずれか一方を上端部分から折り返した形状で形成し、内容器2または外容器3の他方の側面の高さ方向における中間部分で接合するなど、内容器2と外容器3とを容易に製造でき、かつ、内容器2と外容器3との接合を容易かつ確実に行えるものであれば、接合部分は内容器2と外容器3の上端を含む側面部のいずれに形成されていてもよい。さらにまた、全体として内容器2と外容器3との二重容器構成を形成する限りにおいて、3つ以上の部材の組合せとすることも可能である。
図1において図示しない、空間4を真空にするための排気口は、通例は外容器3の側面もしくは底面に形成され、空間4を真空状態とした後にロウ材によって封止される。なお、排気口を内容器2に形成することも可能である。
空間4を真空状態にする方法としては、例えば、排気口に排気管を接続して排気管から真空ポンプで空間4内部の空気を排気し、空間4が所定の真空度となった状態で排気管を閉じて真空を維持する方法を採用することができる。また、排気口が形成された内容器と外容器とから構成される二重容器全体を排気炉内に入れて排気炉の内部を所定の真空状態とした後、排気口をロウ材で塞いで容器を取り出す方法など、気密に形成された空間4の内部を真空とする各種の手段を用いることができる。
空間4の真空度は、内容器2の内部に収容される飲料を効果的に保温するために、数Tollオーダー以下とすることが好ましく、10-3Toll以下の高真空とすることがより好ましい。なお、空間4内部の真空を維持するために、排気口を封着した後に内容器2および外容器3から放出されるガスを吸着するためのゲッター材を空間4内部に配置するなど、真空二重容器である真空タンブラー1の空間4内の真空度を維持するために適用される各種技術を採用することができる。
本実施形態の真空タンブラー1は、内容器2と外容器3とで構成された二重容器構造の外側の表面、すなわち、空間4に面している側とは異なる側の表面全体に、琺瑯層5が形成されている。
琺瑯層5は、内容器2と外容器3との内部の空間4を所定の真空度にした後の二重容器を、フリットと称される二酸化珪素を主成分とする釉薬内に浸し、これを800℃程度の高温で焼成したものである。本実施形態では、内容器2と外容器3とをステンレス薄板で形成しているため、釉薬としてステンレス系材料用の一般的な釉薬を用いたが、例えば内容器2と外容器3とをアルミ材で形成した場合には、アルミ系材料用の釉薬を用いる等、容器の材料等を考慮して適宜適切な釉薬を塗布しこれを焼成して琺瑯層5を形成することができる。
釉薬の塗布は、上記例示した、二重容器を釉薬内に浸すいわゆるディップ法に限られず、釉薬をスプレー塗布する方法や刷毛などで塗布する方法も利用できる。
また、琺瑯層5として、下地層であるグランドコートと外観をよくするためのカバーコートとの二層構成、もしくは、三層以上の多層構成のものを形成するなど、琺瑯層5に関する各種技術を適宜採用することで、外観に優れ、かつ、内容器2内に収容される飲料などに内容器3の素材である金属の味や臭いがつくことを防止できる、琺瑯層5を備えた真空タンブラー1が実現できる。
次に、本実施形態にかかる真空タンブラーの底面の形状について、詳細に説明する。
図2は、本実施形態にかかる真空タンブラーの底面近傍部分の断面の形状を示す要部拡大断面図である。なお、以下、本実施形態の真空タンブラーの各種底面形状の説明においては、底面の形状が琺瑯層を塗布形成する前の金属薄板での外容器の形状によって定まるものであるため、図2以降の各図面では琺瑯層が形成されていない状態の断面図を示す。
図2に示すように、本実施形態の真空タンブラー1では、外容器3の底面が内容器2側に湾曲した湾曲面3aとして形成されている。このように、従来は平面形状としていた外容器3の底面を、内容器2側に湾曲した湾曲面3a、すなわち、外容器3の底面の側から見た場合に凹曲面となる形状とすることで、内容器2と外容器3との間の空間4を真空状態とした後に、内容器2と外容器3の外側の表面に琺瑯層5を形成した場合でも、琺瑯層5を形成する高温工程において外容器3の底面部分が変形することを防止することができる。また、外容器3に大きな変形が生じないまでも、琺瑯層5の形成工程である高温工程の終了後、真空タンブラー1を常温に戻した際に、残留していた応力によって外容器3の底面にわずかな変形が生じて、形成された琺瑯層5に割れが生じたり、剥がれてしまったりすることを効果的に防止することができる。
このように、本実施形態の真空タンブラーでは、外容器の底面が内容器側に湾曲した湾曲面で形成されることで、琺瑯層を形成する工程中に高温に曝されることで軟化する金属薄板で形成される内容器と外容器との変形や、変形に至らないまでも内部に残留した応力の影響を回避することができる。したがって、本実施形態の真空タンブラーは、内容器と外容器との二重容器構造体について、まず内部の空間を真空状態とする真空二重容器としての工程を通常の条件下で行うことができ、その後に、二重容器構造の表面に通常の琺瑯層形成工程によって琺瑯層を形成することができる。
このため、真空二重容器の表面に琺瑯層を形成する工程として、外容器と内容器との間の空間を真空にする工程と内容器と外容器の表面に琺瑯層を形成する工程とを同時に行わなければならないと考えられていた従来の常識を打ち破って、特別な装置を導入する必要なしに、琺瑯層を備えた真空二重容器の、低コストで、かつ、安定した製造条件下での製造を実現することができる。
次に、外容器の底面として形成された湾曲面の好ましい条件について、詳細に説明する。
発明者らの検討の結果、本実施形態にかかる真空タンブラーをはじめとする本開示にかかる真空二重容器において、外容器の底面の湾曲面について、底面の外径をX、湾曲面の曲率半径をYとしたときに、外径Xに対する曲率半径Yの値についての好ましい数値範囲が存在することが確認された。
図3は、図2に示した真空タンブラーにおける、外容器の底面の外径と湾曲面の曲率半径との関係について、さまざまな条件での実験結果を示すグラフである。
図3において、横軸が外容器3の底面3aの外径Xを、縦軸が底面として形成された湾曲面の曲率半径Yを示している。なお、本実施形態にかかる真空タンブラー1では、外容器3が金属薄板により構成されているため、製法上の制約や所定の強度を確保する上での観点から、図2にも示されているとおり、真空タンブラー1の底面3aと側面3bとの間にR形状部分3cが形成されている。厳密には、このR形状部分3cは内容器側に湾曲した湾曲面ではないが、底面3aの湾曲度合いの条件検討においてこのR形状部分3cが与える影響はほとんど無いことが確認できたため、底面3aの湾曲度合いの好ましい範囲を規定する基準として、底面3aの外径Xを用いている。
図3に示すグラフ上の各プロットは、真空タンブラーを構成するステンレス薄板の厚さや湾曲面の曲率半径を変化させた場合の測定結果を示し、図中○で示した条件では琺瑯層の剥がれが生じておらず、×で表示した条件では、外容器底面の琺瑯層に剥がれなどの不良が生じたことを示している。
図3に示す実験結果から、外容器の底面として形成される湾曲面の好ましい湾曲度合いは、湾曲面の曲率半径Yが底面の外径Xに対して、図3中において符号31として示すY=62000/Xが上限であり、図3中において符号32として示すY=13000/Xが下限となる。そして、底面の外径Xとの関係において湾曲面の曲率半径Yの値がこの間の数値範囲であれば、琺瑯層を形成する高温工程後に常温に戻した際の琺瑯層の剥がれが生じないことがわかる。
なお、湾曲面の曲率半径Yが底面の外径Xとの関係において、Y=13000/XからY=62000/Xの間の値である場合には、琺瑯層形成工程中に外容器が変形してしまうことはなく、また、この数値範囲の底面を備える琺瑯層を形成した真空タンブラーは、常温に戻した後でも、テーブルなどの平面上にがたつくことなく載置することができた。さらに、真空タンブラーをテーブルなどの上に載置する際の衝撃が加わった場合でも、通常の使用条件下に生じうる衝撃の範囲では、残留している応力によって外容器が変形したり琺瑯層に割れが生じたりするなどの不都合が生じないことも確認できた。
このように、図3に示す実験結果に基づいて定められた、曲率半径Yが外径Xとの関係において、Y=13000/XからY=62000/Xの間の値であるという数値範囲の湾曲面を備えた底面形状とすることで、空間を真空状態とした後に通常の形成工程を経て琺瑯層を形成した、実用上の問題がない真空タンブラーを得ることができる。
なお、図2に示したように、本実施形態の真空タンブラー1において、内容器2の底面2aは外容器3側に凸の略半球状となっている。
内容器の底面は、外容器の底面のようにそのまま平面上に載置されることを考慮した形状とするなどの制約がないため、内容器と外容器との間の空間を真空に排気する際の熱工程や、琺瑯層を形成する際の熱工程に曝されても変形などが生じないように、最も剛性が高くなる形状として略半球状としたものである。また、内容器の底面部分を略半球状とすることで、内容器内の飲料などの収容物が底面に溜まってしまうことを効果的に防止できるなど、実用的な効果を発揮させることができる。しかし、本実施形態の真空タンブラーにおいて、内容器の底面部分を外容器側へ突出した略半球状とすることは必須の要件ではなく、内容器自体の製造過程や、排気工程や琺瑯層形成の高温工程、さらには、内容器内に収容された飲料の飲みやすさなどの実用的な観点から、内容器底面の形状を適宜好ましい形状とすることができる。
また、本実施形態の真空タンブラー1では、常温の状態において、内容器2の底面2aと外容器3の湾曲面3aの頂点部分との間に、所定の間隔Sを形成している(図2参照)。
このように、内容器2と外容器3とのそれぞれの底面部分の最も近接した部分に所定の間隔Sを形成することで、空間を真空にした状態で琺瑯層形成工程の高温工程に曝されても、軟化した内容器2と外容器3とが接触することを回避できる。この結果、内容器2と外容器3との間に真空層を介することができ、真空タンブラー1としての保温性を確実に維持することができる。
なお、内容器と外容器との底面の間隔Sの好ましい数値例としては、外容器の外径が60mmの場合にS=0.5mm以上とすることができる。
以上、本実施形態の真空タンブラーの外容器底面として形成された湾曲面の好ましい条件として、底面の外径Xと湾曲面の曲率半径Yとの関係について説明した。しかし、外容器の底面に形成される湾曲面としては、単一の曲率半径を持った球の一部としての形状を有する場合以外にも、湾曲面が、同心円状の部分ごとに少しずつ異なる曲率半径を有する形状となる場合、もしくは、中心からの方向によって異なる曲率半径を有するような場合など、複合面として形成される場合が想定される。この場合には、湾曲面の好ましい条件を一つの曲率半径を用いて規定することはできないが、湾曲面における周辺部分に対する中央部分の深さとしてその湾曲度合いを把握することができる。
そこで、本実施形態の真空タンブラーにおける、外容器の底面の好ましい湾曲度合いについて、図4に記載したように、底面の外径Xと、湾曲面において中心部分での周辺部分に対する深さZとの関係において把握される好ましい数値範囲を説明する。
図5は、図4に示した真空タンブラーにおける、外容器の底面の外径と湾曲面における中心部分の深さとの関係について、さまざまな条件での実験結果を示すグラフである。
図5において、横軸が外容器3の底面3aの外径X、縦軸が湾曲面の外径部分に対する中心部分の深さZを示している。なお、前述したとおり、本実施形態にかかる真空タンブラー1では、外容器3の底面3aと側面3bとの間にR形状部分3cが形成されている。図5で示す実験結果は、底面3aとして形成された湾曲面の周辺部分として、図4に示したように、外容器3の底面3aの中で最も内容器2から隔たっている部分、すなわち、底面3aとR形状部分3cとの接続部分を測定位置としている。
また、図5においても、図3と同様にグラフ上の各プロットは、真空タンブラーを構成するステンレス薄板の厚さや湾曲面の曲率半径を変化させた場合の測定結果を示し、図中○で示した条件では琺瑯層の剥がれが生じておらず、×で表示した条件では、外容器底面の琺瑯層に剥がれなどの不良が生じたことを示している。
図5に示す実験結果から、外容器の底面として形成される湾曲面の好ましい湾曲度合いは、底面の外径Xに対する湾曲面の中心部分での深さZの値は、図5中において符号51として示すZ=(0.1X)3/100が上限であり、図5中において符号52として示すZ=(0.1X)3/500が下限となる。そして、底面の外径Xとの関係において、湾曲面の周辺部分に対する中心部分での深さZがこの間の数値であれば琺瑯層を形成する高温工程後に常温に戻した際の琺瑯層の剥がれが生じないことがわかる。
なお、湾曲面の中心部分での深さZが底面の外径Xとの関係において、Z=(0.1X)3/100からZ=(0.1X)3/500の間の値である真空タンブラーは、琺瑯層形成工程中に外容器が変形してしまうことはなく、常温に戻した後、テーブルなどの平面上にがたつくことなく載置することができた。また、真空タンブラーをテーブルなどの上に載置する際の衝撃が加わった場合でも、通常の使用条件下の衝撃の範囲では、残留している応力によって外容器が変形したり琺瑯層に剥がれや割れが生じたりするなどの不都合が生じないことも確認できた。
このように、図5に示す実験結果に基づいて定められた、湾曲面の中心部分での深さZが底面の外径Xとの関係において、Z=(0.1X)3/100からZ=(0.1X)3/500の間の値であるという数値範囲の湾曲面を備えた底面形状とすることで、内容器と外容器との間の空間を真空状態とした後に琺瑯層を形成する高温工程を経た場合でも、変形や琺瑯層の剥離などの実用上の問題が生じない真空タンブラーを実現することができる。
なお、真空二重容器の外容器の底面として、内容器側に湾曲する湾曲面を形成することで、底面において湾曲面の周辺部分が最も突出することとなって真空二重容器の脚部としての機能を果たすことができる。琺瑯層の表面には、微細な凹凸が生じることが不可避であるため、琺瑯層を形成した外容器の底面が平坦面である場合には、テーブルなどの硬い平坦面上に載置した場合に真空二重容器に微細なガタツキが生じる場合がある。これに対して、本実施形態の真空タンブラーのように、外容器の底面に内容器側に湾曲する湾曲面を形成することにより、外容器の底面が載置面に触れる面積を低減することができ、琺瑯層の凹凸による不所望なガタツキが生じることを回避することができるという付随的な効果を奏することができる。
次に、本実施形態にかかる真空タンブラーの変形例として、底面に2つの湾曲面が形成されている場合における湾曲面の湾曲度合いについての好ましい条件を説明する。
図6は、本実施形態の真空タンブラーの変形例における、底面部近傍の状態を説明するための拡大断面図である。
図6に示すように、変形例の真空タンブラー1は、外容器3の底面3aとして形成された内容器側に湾曲する湾曲面に対して、外容器3の高さ方向に形成された段差部3dを介して、より内容器2側に配置された、内容器2側に湾曲する内側湾曲面3eをさらに備えた構成となっている。すなわち、変形例の真空タンブラー1は、外容器3の底面3aに、湾曲面として形成された底面3aと段差部3dにより隔てられた内側湾曲面3eとの2つの湾曲面が形成されている。
図6に示したような、外容器3の底面3aに段差部3dを介して内側湾曲面3eが形成されている場合において、内側湾曲面3eの好ましい湾曲度合いの範囲は、図3として示した実験結果から求められた数値範囲となる。すなわち、図6において、内側湾曲面3eの外径をx、曲率半径をyとすると、外径xに対する内側湾曲面3eの曲率半径yの値は、y=13000/xからy=62000/xの間の数値範囲とすることで、琺瑯層の剥がれや割れなどが生じない真空タンブラーを得ることができる。
なお、段差部3dの外側の湾曲面の曲率半径Yの数値範囲の基準となる外径Xが、外容器3の底面3aの外径であるのに対し、段差部3dの内側に形成された内側湾曲面3eの曲率半径yの数値範囲の基準となる外径xは、内側湾曲面3eの外径、すなわち、段差部3dの径となる。これは、内側湾曲面3eが、外容器3の高さ方向に形成された段差部3dによって外側の湾曲面である底面3aから明確に分離されて、段差部3dにおける外容器3の高さ方向の側面によって支持されているため、内側湾曲面3eの剛性を考える上では、この段差部3dの径を外径xとして基準とすることが合理的であるからである。また、外容器3の底面3aの曲率半径Yの好ましい数値範囲を考えるに当たって、外容器3の底面3aと側面3bとの間に形成されたR形状部分3cを考慮の対象から除外できたと同様に、内側湾曲面3eの曲率半径yの望ましい範囲を考える上では、段差部3dと内側湾曲面3eとの間に形成されるR形状部分3fは、外径xを規定する上で考慮の対象から外すことができる。
さらに、外容器3の底面3aに、外容器3の高さ方向に形成された段差部3dを介して、より内容器2側に配置された内側湾曲面3eをさらに備えた構成となっている場合でも、内容器2の底面形状は、上記図2で説明した底面3aが一つの湾曲面で形成されている真空タンブラー1の場合と同様に、底面2aが外容器3側に凸の略半球状となっている。また、内容器2の底面の中心部分に対する外容器3の底面部の中心部分との間隔Sは、段差部3dの内側に形成された内側湾曲面3eの中心部分の位置によって定まるものとなるが、間隔Sの好ましい数値範囲は、図2の場合と同様である。
次に、外容器3の底面3aに形成された内側湾曲面3eが、球面の一部ではない複合的な湾曲面である場合などの曲率半径以外の条件でその湾曲度合いが規定される場合について説明する。
図4と図5とを用いて説明した、外容器3の底面3aが、湾曲度合いがその曲率半径では規定できない一つの湾曲面として形成されている場合と同様に、内側湾曲面3eについて、内側湾曲面3eにおける中心部分での周辺部分に対する深さzの、内側湾曲面3eの外径xとの関係で好ましい湾曲度合いを把握することができる。そして、図7に示したように内側湾曲面3eについても、図5に示した実験結果に基づいて、外径xとの関係において中心部分の深さzを、z=(0.1x)3/100からz=(0.1x)3/500の間の値とすることで、琺瑯層形成工程における高温に曝された場合でも、変形や、琺瑯層の剥がれなどが生じない真空二重容器を実現することができる。
なお、図7に示したように、段差部3dの外側の湾曲面3aは、平面視円環状であるため、外側の湾曲面3aの中央部分の深さZは、周辺部分の湾曲面3aの湾曲を外挿した仮想線に基づいて中心部の位置を求めて規定することとなる。また、内側湾曲面3dの外径xは、図6に示した内側湾曲面3eの湾曲度合いを曲率半径yで規定する場合と同様に、段差部3dの径となる。そして、内側湾曲面3eの中心部分の深さzの望ましい範囲を考える上では、段差部3dと内側湾曲面3eとの間に形成されるR形状部分3fは、内側湾曲面3eの外径xを規定する上で考慮の対象から外して求めることとなる。
以上、本実施形態にかかる真空タンブラー1の変形例として、外容器3の底面3aに外容器3の高さ方向に形成された段差部3dを介して、内容器側に配置された内側湾曲面3eをさらに備えた構成について説明した。
ここで、図6および図7に示す、本実施形態の変形例の真空タンブラー1では、段差部3dの高さは外容器3の底面3aの変形度合いに与える影響は少ない。このため、段差部3dの高さは、製品設計上の観点等から決めることができ、一例として、0.2mm程度から15mm程度までの範囲で適宜設定することができる。
なお、図6および図7で示した本実施形態の真空タンブラーの変形例では、外容器の底面の湾曲面に段差部を介して内側湾曲面が一つ形成された、底面の湾曲面が合わせて2つある場合について説明した。しかし、本実施形態の変形例の真空タンブラーとしては、内側湾曲面は一つに限られることはなく、内側湾曲面が複数形成された構成、すなわち、内側湾曲面に対して段差部を介してさらに別の内側湾曲面が形成された構成とすることができる。このように内側湾曲面が2つ以上形成されている構成の場合でも、それぞれの湾曲面の湾曲度合いは、上記図6および図7を用いて説明した好ましい数値範囲を採用することで、内容器と外容器との間の空間を真空状態にした後に、加熱工程を経て琺瑯層を形成した場合でも、変形や琺瑯層の剥がれが生じない真空二重容器を実現することができる。
以上説明したように、本実施形態にかかる真空タンブラーは、外容器の底面が内容器側に湾曲した湾曲面として形成されることで、二重容器構造の内部の空間を真空状態とした後に琺瑯層を形成しても、容器の変形や形成された琺瑯層の割れや剥がれなどが生じない、真空二重容器とすることができる。このため、保温性に優れ、軽量、かつ、低コストでありながら、内容器の飲料を収容する部分や使用者の唇に触れる飲み口部分にガラス質の琺瑯加工が施され、内容器の素材である金属薄板の味や臭いが飲料等に付着しない真空二重容器を実現することができる。
なお、本開示にかかる真空タンブラーは、外容器の底面そのもの自体を湾曲面とした構成とすることで剛性を高くして、内容器と外容器との間の空間が真空に維持された状態で琺瑯加工の高温工程を経た際に加わる応力による変形や、常温に戻した際に残留応力により生じる変形を防止するものである。
このため、例えば、図8に示すように、外容器の底面に複数個の突起状の脚部6が形成されている場合には、この脚部6を除いた外容器の底面自体を内容器側に湾曲した湾曲面として構成することとなる。また、この湾曲面の好ましい数値範囲についても、脚部を取り外した状態における形状を規定するものである。なお、外容器底面に形成される脚部としては、図8に示した突起状の複数個の脚部に限られず、例えば湯飲みの高台のような、環状に形成された壁状の突起物を形成することができ、この場合でも、突起物である脚部を除外した形状に対して湾曲面の湾曲度合いを規定するものである。
なお、上記本開示にかかる真空二重容器の実施形態において、最もシンプルな外形を備えた真空タンブラーとして外容器の側面が底面に対して垂直に立ち上がる円筒状のもの、すなわち、高さ方向において径の大きさが変わらない形状のものを例示して説明した。しかし、タンブラーとしては、このように側面が形成する径が高さによって変わらない形状のものの他に、図9に例示するような、底面から上端部の飲み口部分に向かってその径が徐々に大きくなるような形状とされる場合も多い。
本実施形態にかかる真空タンブラーとしても、外容器の側面が上方に向かうにつれて径大となる形状とすることができる。図9に示す、本実施形態にかかる異なる形状の真空タンブラー1’では、内容器2’の側面2b’と外容器3’の側面3b’とが、共に上方に行くにつれて径大となる形状となっている。この異なる形状の真空タンブラー1’の場合も、外容器3’の底面3a’を内容器2’側に湾曲する湾曲面とすることで、内容器2’と外容器3’との間の空間4’を真空状態にした後に表面に琺瑯層5’を形成した場合でも、外容器3’の変形や琺瑯層5’の剥がれが生じない真空タンブラー1’を実現することができる。
なお、図9に示す、異なる形状の真空タンブラー1’において、外容器の底面3a’における好ましい湾曲形状は、図2に示した真空タンブラー1’と同様に、曲率半径Y’が底面の外径X’に対して、Y’=13000/X’からY’=62000/X’の間の数値範囲となる状態である。なお、この場合において、底面3a’の外形X’は、外容器3’の側面3b’の内の、底面3a’に隣接する部分、すなわち、側面3b’の中で最も小さな径の部分の大きさとなる。さらに、外容器底面の好ましい湾曲度合いが底面の中央部分における周辺部分からの深さZで示される場合、また、底面に段差部を介して内側湾曲面が形成されている場合においても、底面や内側湾曲面の好ましい数値範囲は、図4、図6、図7として示した、真空タンブラー1の場合と同様にして把握することができる。
また、上記の実施形態では、真空二重容器として蓋のない真空タンブラーを例示して説明したが、本開示にかかる真空二重容器は、底面の形状が上記説明した要件を満たしていれば真空タンブラー以外の真空二重容器に好適に適用することができる。このため、本開示にかかる真空二重容器として、外容器の底面が内容器の側に湾曲した湾曲面として形成されているものであれば、外容器の上端部形状が小径に絞られて、小径部分の外側もしくは内側にねじ山が形成されて別体の蓋を螺結するような、いわゆる水筒タイプの真空二重容器に適用することができる。さらには、内容器と外容器がともに上部に行くにつれて、図9として図示した真空タンブラーの異なる形状の場合よりもさらに高い度合いで大径となる、側面がコーン状に形成されたスープカップや、内容器と外容器が高さと比較して大口径の鍋状となっている真空二重容器にも好適に使用することができる。
なお、本開示にかかる真空二重容器は、外容器の底面が基本的には平担面として形成されている場合に、これを内容器側に湾曲した湾曲面とするものである。このため、例えば図10に示すように、外容器13が内容器12と同様に下に凸の略半球状のボウル状の真空二重容器11の場合でも、外容器13の底面中央部分にその底面形状が基本として平担面である脚体15が形成されていて、この脚体15と内容器12との間に空間14が形成されている場合には、この脚体15部分に本開示の発明を適用することができる。
すなわち、内容器12との間に空間14が形成されている外容器13の脚体15の底面を、内容器12に向かって湾曲した湾曲面16として形成することで、脚体15を含めた外容器13の変形や、脚体15部分に形成された琺瑯層の割れや剥がれなどを防止することができる。さらにこの場合には、脚体15の底面の湾曲面16について、脚体15の外径Xに対する曲率半径Yが、Y=13000/XからY=62000/Xの間の値、もしくは、脚体15の外径Xに対する湾曲面16の中心部分の深さZが、Z=(0.1X)3/100からZ=(0.1X)3/500の間の値とすることがより好ましい。
(第2の実施の形態)
次に、本願で開示する真空二重容器についてのさらに別の形態について、第2の実施の形態として説明する。
図11は、第2の実施形態にかかる真空二重容器である、真空タンブラーの断面図である。
本実施形態にかかる真空タンブラー61は、有底筒状の内容器62と、有底筒状で内容器62を包み込む大きさを備えた外容器63とから構成されている。内容器62と外容器63との間には、気密に構成された空間64が形成され、空間64は排気されて真空に保たれている。本実施形態にかかる真空タンブラー61の内容器62と外容器63の外側の表面全面、すなわち、内容器62と外容器63とにおいてその間に形成される空間64に面している側とは異なる側の表面に琺瑯層65が形成されている。
本実施形態にかかる真空タンブラー61の内容器62と外容器63は、一例として板厚0.4mmのSUS300系のステンレス板を成形加工したものである。また、図11に示す本実施形態の真空タンブラー61は、内容器62と外容器63とを、その上部開口端部分で接合して内容器62と外容器63との間に気密にできる空間64を形成した後、図示しない排気口から空間64内部の空気を排出して真空状態としたものである。
上記した第1の実施形態にかかる真空タンブラー1と同様に、本実施形態の真空タンブラー61も、内容器62と外容器63の素材として鉄、アルミニウム、または、アルミメッキ鋼板や、アルミと亜鉛がメッキされたガルバリウム鋼板、ほうろう用鋼板などの金属薄板を用いることができ、その板厚は、例えば0.25mm程度から1.5mm程度までの範囲で選択できる。また、本実施形態の真空タンブラー61も、内容器62と外容器63の材料や厚さをそれぞれ異ならせて構成することができ、内容器62と外容器63との間に真空状態とできる空間64を確保できる形態であれば、内容器62と外容器63の接合位置を自由に設定することができる。
本実施形態の真空タンブラー61においても、空間64を真空にするための排気口を外容器63の側面もしくは底面に形成することができ、空間64を真空状態とした後にロウ材によって排気口が封止される。なお、排気口を内容器2に形成することも可能である。
また、空間64を真空状態にする方法として、排気口に排気管を接続して排気管から真空ポンプで空間64内部の空気を排気して、その後に排気管を閉じる方法や、その他、気密に形成された空間64の内部を真空とする各種の手段を用いることができる。
空間64の真空度としては、内容器に収容される飲料の保温の観点から、数Tollオーダー以下とすることが好ましく、10-3Toll以下の高真空とすることがより好ましい。また、空間64内部の真空を維持するために、放出されるガスを吸着するためのゲッター材を空間64内部に配置するなど、真空二重容器61の空間64内の真空度を維持するために適用される各種技術を採用することができる。
本実施形態の真空タンブラー61は、内容器62と外容器63とで構成された二重容器構造の外側の表面、すなわち、空間64に面している側とは異なる側の表面全体に、琺瑯層65が形成されている。琺瑯層65の形成方法としては、空間64の内部を所定の真空度にした後の二重容器を釉薬内に浸しこれを800℃程度の高温で焼成するなど、琺瑯層を形成する周知の工程を用いることができる。
本実施形態の真空タンブラーは、内容器の形状、特に開口部分の径と開口部分から底面までの深さとの関係に特徴を有している。
図12は、本実施形態にかかる真空タンブラー61における、内容器62上部の開口部62aの開口径Aと、内容器62の開口部62aから底面62bまでの深さBの値を異ならせた実験の実験結果を示す。
図12において、○で示すデータは、内容器62の表面全体に琺瑯層65が良好に形成されたもの、×で示すデータは、内容器62の特に底面62b部分の琺瑯層65にひび割れや剥がれなどの不良が生じたものをそれぞれ示している。
図12に示す実験結果において、図中に71として示す線がB=2×Aとなる条件を示しており、この線71よりも図中左側、すなわちB>2×Aとなると琺瑯層65に不良が生じ、線71上もしくは右側、すなわちB≦2×Aであれば良好な琺瑯層65が形成されることが分かる。
発明者らが確認したところ、内容器62の開口部62aの開口径Aと内容器62の底面62bまでの深さBとの関係が、B>2×Aである場合に内容器62の底面62b部分に生じる琺瑯層65の不良は、琺瑯層を形成する高温工程時における温度不足、いわゆる焼成不足であることが分かった。本実施形態の真空タンブラー62は、内容器62内に収容される飲料などの保温効果を得るために、内容器62と外容器63との間に真空に維持された空間64を形成している。このため、琺瑯層65の形成工程としての高温工程時に、内容器62の開口部62aから最も遠い底面62bの温度が十分に上昇しないことが、底面62b部分の琺瑯層に不良が生じる原因であると推測された。このような不良を回避することを目的として、単に内容器62の底面部62bの温度を上昇させるだけであるなら、琺瑯層65の形成工程における処理温度を高くすればよい。しかし、琺瑯層形成工程での焼成温度を例えば850℃とすると、内容器62と外容器63の材料であるステンレス板の軟化温度に到達してしまい、特に高温に曝される外容器63の変形が生じてしまう。
そこで、本実施形態の真空タンブラー61では、内容器62の開口部62aの開口径Aと内容器62の底面62bまでの深さBとの関係をB≦2×Aとすることで、内容器62と外容器63との間の空間64を真空とした後に、内容器62と外容器63の表面に良好な琺瑯層65を形成することができ、内容器62に収容される飲料などに金属の臭いや味が付着しない、真空タンブラー61を得ることができる。
なお、本実施形態の真空タンブラーにおいて、Bとして規定される内容器62の開口部62aから底面62bまでの深さは、開口部分62aから底面62bの最も深い部分までの距離を意味する。このため、上記実施の形態1として説明した真空タンブラーのように、内容器62の底面62bが外容器63側に凸の略半球状に形成されている場合には、図13に示すように、開口部62aから底面62bまでの深さBは、底面62b中央部分の最も深い部分までの距離となる。
また、これとは逆に、内容器62の底面62bが開口部62a側に凸となる形状で構成されている場合には、図14に示すように、内容器62の開口部62aと底面62bの周辺部分との距離が、深さBとなる。
なお、本実施形態の真空タンブラー61においては、内容器62の開口部62aの開口径Aは、真空タンブラー61の側面形状には影響を受けないことが確認されている。このため、第1の実施形態において図11として示したような、上方に行くにしたがって側面の径が大きくなる構成を採用した場合にも、内容器62の上端部分である開口部62aの開口径をそのままAとして規定して、深さBとの間の関係がB≦2×Aの条件を満たすようにすることで、内容器62と外容器63との表面に良好な琺瑯層65が形成された真空タンブラー61を得ることができる。
また、本実施形態にかかる真空二重容器として、外容器の上端部形状が小径に絞られて小径部分の内側にねじ山が形成されて別体の蓋を螺結するような、いわゆる水筒タイプの真空二重容器を構成することができる。
図15は、本実施形態にかかる真空二重容器としての水筒について、琺瑯層形成前の状態での断面形状を示す図である。
水筒81は、有底筒状の内容器82とこれを包み込む大きさの有底筒状の外容器83とから構成されていて、内容器82と外容器83との間に、真空に維持される空間84が形成されている。内容器82の上方の開口部82aに近い部分に、図示しない蓋体が螺結されるねじ山85が形成されている。このように、内容器82にねじ山85が形成されている場合には、内容器82の上方の開口部82aの径よりも、ねじ山85の山部分が形成する径が小さくなる。このため、琺瑯層の形成工程において内容器82の底部が十分な処理温度に到達するように規定される開口径Aは、図15に示すように、ねじ山85の山部分の径となる。なお、図15に示すように、内容器82の深さBは、内容器82の開口部82aから内容器82の底面82bまでの距離となる。図15に示す水筒81では、外容器83の底面83aに脚体86が形成されている。
以上、本実施形態にかかる真空二重容器として、最も簡単な構成である真空タンブラーと、内容器にねじ山が形成された水筒を例示して説明したが、本実施形態にかかる真空二重容器はこれらには限られず、開口部を覆う蓋体を螺結するねじ山が外容器の上部に外側に向かって形成されている水筒タイプの真空二重容器、さらには、内容器と外容器がともに上部に行くにつれて大径となるコーン状に形成されたスープカップ、また、内容器と外容器が高さと比較して大口径の鍋状となっている真空二重容器など、各種の側面形状を有する真空二重容器に好適に適用することができる。
以下、第2の実施形態として説明した真空二重容器について、その特徴部分の構成を付記として記載する。
[付記1]
有底筒状の金属製内容器と有底筒状の金属製外容器とを備え、前記内容器と前記外容器との間の空間を真空にした真空二重容器であって、表面に琺瑯加工がなされ、前記内容器の開口部の径をA、前記内容器の前記開口部から底面までの深さをBとするとき、B≦2×Aの条件を満たす、真空二重容器。