JP7406982B2 - 全固体電池およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、全固体電池およびその製造方法に関する。
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの非水電解質二次電池の開発が盛んに行われている。
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギーを有することが求められている。したがって、現実的な全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
ここで、現在一般に普及しているリチウムイオン二次電池は、電解質に可燃性の有機電解液を用いている。このような液系リチウムイオン二次電池では、液漏れ、短絡、過充電などに対する安全対策が他の電池よりも厳しく求められる。
そこで近年、電解質に酸化物系や硫化物系の固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池に関する研究開発が盛んに行われている。固体電解質は、固体中でイオン伝導が可能なイオン伝導体を主体として構成される材料である。このため、全固体リチウムイオン二次電池においては、従来の液系リチウムイオン二次電池のように可燃性の有機電解液に起因する各種問題が原理的に発生しない。また一般に、高電位・大容量の正極材料、大容量の負極材料を用いると電池の出力密度およびエネルギー密度の大幅な向上が図れる。正極活物質として硫黄単体(S)や硫化物系材料を用いた全固体リチウムイオン二次電池は、その有望な候補である。
硫化物固体電解質に関する技術として、例えば特許文献1には、合成された硫化物固体電解質の粗粒原料を微粒子化し、その後結晶化することによって得られる硫化物固体電解質が開示されている。特許文献1によれば、当該硫化物固体電解質はイオン伝導性に優れるとされている。
特許第5838954号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載された硫化物固体電解質を用いて電極活物質層および固体電解質層を作製したところ、全固体電池において十分な常温レート特性が得られない場合があることが判明した。そのため、電極活物質層を厚膜化することによってエネルギー密度の向上を図ることができない、という問題点を有していた。
そこで、本発明は、硫化物固体電解質を用いた全固体電池において、エネルギー密度を向上させうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、電極活物質層における硫化物固体電解質と、固体電解質層における硫化物固体電解質とを同じ組成とし、前者の平均粒子径を後者の平均粒子径よりも小さくすることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態に係る全固体電池は、集電体の表面に電極活物質および第1の硫化物固体電解質を含有する電極活物質層が配置された電極と、電極活物質層の表面に配置された、第2の硫化物固体電解質を含有する固体電解質層とを有する。そして、第1の硫化物固体電解質および第2の硫化物固体電解質は、同じ組成を有し、第1の硫化物固体電解質の平均粒子径は、第2の硫化物固体電解質の平均粒子径よりも小さいことを特徴とする。
本発明によれば、電極活物質層において微細化された硫化物固体電解質を用いることで、電極活物質の表面が硫化物固体電解質により被覆され、密なイオン伝導パスが形成されうる。また、固体電解質層において、より大きな粒子径を有する硫化物固体電解質を用いることで、粒界抵抗によるイオン伝導性の低下を抑制することができる。その結果、全固体電池における常温レート特性が向上するため、電極活物質層を厚膜化することにより、全固体電池のエネルギー密度を向上させることが可能となる。
本発明の一実施形態である積層型(内部並列接続タイプ)の全固体リチウムイオン二次電池を模式的に表した断面図である。 本発明の一実施形態である双極型の全固体リチウムイオン二次電池を模式的に表した断面図である。 本発明の一実施形態に係る積層型の全固体リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。 実施例1および参考例1~2に係る硫化物固体電解質のリチウムイオン伝導度を示すグラフである。 実施例1に係る全固体リチウムイオン二次電池の放電特性を示すグラフである。
本発明の一形態は、集電体の表面に電極活物質および第1の硫化物固体電解質を含有する電極活物質層が配置された電極と、電極活物質層の表面に配置された、第2の硫化物固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池に関する。そして、第1の硫化物固体電解質および第2の硫化物固体電解質は、同じ組成を有し、第1の硫化物固体電解質の平均粒子径は、第2の硫化物固体電解質の平均粒子径よりも小さいことを特徴とする。
以下、図面を参照しながら、本形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の一実施形態である積層型(内部並列接続タイプ)の全固体リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型二次電池」とも称する)の全体構造を模式的に表した断面図である。図1に示す積層型二次電池10aは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
図1に示すように、本形態の積層型二次電池10aの発電要素21は、正極集電体11’の両面に正極活物質層13が配置された正極と、固体電解質層17と、負極集電体11’’の両面に負極活物質層15が配置された負極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、固体電解質層17を介して対向するようにして、正極、固体電解質層および負極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、固体電解質層、および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型二次電池10aは、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層の正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層の負極集電体が位置するようにし、該最外層の負極集電体の片面又は両面に負極活物質層が配置されるようにしてもよい。
正極集電体11’および負極集電体11’’には、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートフィルム29の端部に挟まれるようにしてラミネートフィルム29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27は、それぞれ必要に応じて正極端子リードおよび負極端子リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11’および負極集電体11’’に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
なお、上記の説明では、積層型(内部並列接続タイプ)の全固体リチウムイオン二次電池を例に挙げて本発明の一形態に係る全固体電池の一実施形態を説明した。しかしながら、本発明が適用可能な全固体電池の種類は特に制限されず、集電体の一方の面に電気的に結合した正極活物質層と、集電体の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層とを有する双極型電極を含む、双極型(バイポーラ型)の全固体電池にも適用可能である。
図2は、本発明の一実施形態に係る双極型(バイポーラ型)の全固体リチウムイオン二次電池(以下、単に「双極型二次電池」とも称する)を模式的に表した断面図である。図2に示す双極型二次電池10bは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
図2に示すように、本形態の双極型二次電池10bの発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、固体電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、固体電解質層17は、固体電解質が層状に成形されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが固体電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および固体電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に固体電解質層17が挟まれて配置されている。
隣接する正極活物質層13、固体電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型二次電池10bは、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。
さらに、図2に示す双極型二次電池10bでは、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板(正極タブ)25が配置され、これが延長されて電池外装体であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板(負極タブ)27が配置され、同様にこれが延長されてラミネートフィルム29から導出している。
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型二次電池10bでは、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型二次電池10bでも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装体であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。
以下、上述した積層型二次電池10aの主な構成要素について説明する。
[集電体]
集電体は、正極活物質層と接する一方の面から、負極活物質層と接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はない。集電体の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材などが用いられてもよい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、およびSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、集電体の全質量100質量%に対して5~80質量%である。
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。
[電極活物質層]
電極活物質層(正極活物質層・負極活物質層)は、電極活物質(正極活物質・負極活物質)および硫化物固体電解質を含む。なお、本明細書において、特記しない限り、正極および負極に共通する事項については「電極」として表記するものとする。
(電極活物質)
電極が正極である場合、正極活物質層はリチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む。なかでも、硫黄を含む正極活物質を含むことが好ましい。硫黄を含む正極活物質の種類は、特に制限されない。硫黄単体(S)のほか、有機硫黄化合物または無機硫黄化合物の粒子または薄膜が挙げられるが、硫黄の酸化還元反応を利用して、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸蔵することができる物質であればよい。有機硫黄化合物としては、ジスルフィド化合物、国際公開第2010/044437号パンフレットに記載の化合物に代表される硫黄変性ポリアクリロニトリル、硫黄変性ポリイソプレン、ルベアン酸(ジチオオキサミド)、ポリ硫化カーボン等が挙げられる。なかでも、ジスルフィド化合物および硫黄変性ポリアクリロニトリル、およびルベアン酸が好ましく、特に好ましくは硫黄変性ポリアクリロニトリルである。ジスルフィド化合物としては、ジチオビウレア誘導体、チオウレア基、チオイソシアネート、またはチオアミド基を有するものがより好ましい。ここで、硫黄変性ポリアクリロニトリルとは、硫黄粉末とポリアクリロニトリルとを混合し、不活性ガス下もしくは減圧下で加熱することによって得られる、硫黄原子を含む変性されたポリアクリロニトリルである。その推定構造は、例えばChem. Mater. 2011,23,5024-5028に示されているように、ポリアクリロニトリルが閉環して多環状になるとともに、Sの少なくとも一部はCと結合している構造である。この文献に記載されている化合物はラマンスペクトルにおいて、1330cm-1と1560cm-1付近に強いピークシグナルがあり、さらに、307cm-1、379cm-1、472cm-1、929cm-1付近にピークが存在する。一方、無機硫黄化合物は安定性に優れることから好ましく、具体的には、硫黄単体(S)、S-カーボンコンポジット、TiSおよびFeSがより好ましく、硫黄単体(S)が特に好ましい。ここで、S-カーボンコンポジットとは、硫黄粉末と炭素材料とを含み、これらを加熱処理または機械的混合に供することによって複合化した状態のものである。より詳細には、炭素材料の表面や細孔内に硫黄が分布している状態;硫黄と炭素材料がナノレベルで均一に分散し、それらが凝集して粒子となっている状態;細かな硫黄粉末の表面や内部に炭素材料が分布している状態;または、これらの状態が複数組み合わさった状態のものである。
正極活物質層は、硫黄を含む正極活物質に代えて、硫黄を含まない正極活物質を含んでもよい。硫黄を含まない正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、Li(Ni-Mn-Co)O等の層状岩塩型活物質、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO等のオリビン型活物質、LiFeSiO、LiMnSiO等のSi含有活物質等が挙げられる。また上記以外の酸化物活物質としては、例えば、LiTi12が挙げられる。
場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
正極活物質層における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40~99質量%の範囲内であることが好ましく、50~90質量%の範囲内であることがより好ましく、55~80質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
電極が負極である場合、負極活物質層はリチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含む。負極活物質の種類としては、特に制限されないが、炭素材料、金属酸化物および金属活物質が挙げられる。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。また、金属酸化物としては、例えば、Nb、LiTi12、SiO等が挙げられる。さらに、金属活物質としては、例えば、In、Al、SiおよびSn等の金属単体や、TiSi、LaNiSn等の合金が挙げられる。また、負極活物質として、Liを含有する金属を用いてもよい。このような負極活物質は、Liを含有する活物質であれば特に限定されず、Li金属のほか、Li含有合金が挙げられる。Li含有合金としては、例えば、Liと、In、Al、SiおよびSnの少なくとも1種との合金が挙げられる。
場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40~99質量%の範囲内であることが好ましく、50~90質量%の範囲内であることがより好ましく、55~80質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
電極活物質(正極活物質・負極活物質)の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。電極活物質が粒子形状である場合、その平均二次粒子径(D50)は、例えば、1nm~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm~50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm~20μmの範囲内であり、特に好ましくは1~20μmの範囲内であり、最も好ましくは1~10μmである。
電極活物質層は、第1の硫化物固体電解質を含む。本明細書では、電極活物質層に含まれる硫化物固体電解質と、固体電解質層に含まれる硫化物固体電解質とを区別するために、便宜上、前者を「第1の硫化物固体電解質」とも称し、後者を「第2の硫化物固体電解質」とも称する。硫化物固体電解質は、バルクでのイオン伝導度が高いことから、全固体電池における常温レート特性の向上を図ることができる。さらに、電極活物質層を厚膜化することにより、全固体電池のエネルギー密度を向上させることが可能となる。
第1の硫化物固体電解質は、特に制限されないが、Li元素、P元素およびS元素を含有することが好ましい。このような硫化物固体電解質は、例えば、LiPS骨格を有していてもよく、Li骨格を有していてもよく、Li骨格を有していてもよい。LiPS骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-LiPS、LiI-LiBr-LiPS4、LiPSが挙げられる。また、Li骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LPSと称されるLi-P-S系固体電解質が挙げられる。また、硫化物固体電解質として、例えば、Li(4-x)Ge(1-x)(xは、0<x<1を満たす)で表されるLGPS等を用いてもよい。より詳細には、例えば、LiS-P、Li11、Li3.20.96S、Li3.25Ge0.250.75、Li10GeP12、またはLiPSX(ここで、XはCl、BrもしくはIである)等が挙げられる。なお、「LiS-P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
第1の硫化物固体電解質の平均粒子径は、後述する第2の硫化物固体電解質の平均粒子径よりも小さいことを特徴とする。具体的には、第1の硫化物固体電解質の平均粒子径は、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1.5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。このような平均粒子径が小さい硫化物固体電解質を用いて電極活物質層を構成することにより、電極活物質の表面が硫化物固体電解質により良好に被覆され、密なイオン伝導パスが形成されうる。当該平均粒子径の下限値は特に制限されないが、粒界抵抗が大きくなるのを抑制する観点から、好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは0.1μm以上である。すなわち、当該平均粒子径の数値範囲としては、好ましくは0.05~2μmであり、より好ましくは0.05~1.5μmであり、さらに好ましくは0.05~1μmであり、特に好ましくは0.1~1μmである。なお、本明細書において、硫化物固体電解質の平均粒子径は、実施例の欄に記載の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた測定方法により得られる値を採用するものとする。
第1の硫化物固体電解質の平均結晶子径は、好ましくは50~150nmであり、より好ましくは60~120nmであり、さらに好ましくは65~110nmであり、特に好ましくは70~100nmであり、最も好ましくは75~90nmである。第1の硫化物固体電解質は、このように従来と比較して大きな平均結晶子径を有する。平均結晶子径が大きな硫化物固体電解質は、結晶構造が維持されているため、高いイオン伝導度を有しうる。その結果、全固体電池における常温レート特性が向上するため、電極活物質層を厚膜化することにより、全固体電池のエネルギー密度を向上させることが可能となる。なお、本明細書において、硫化物固体電解質の平均結晶子径は、実施例の欄に記載のX線回折測定における2θ=29.6±0.5°のピークの半値幅より求めることができる。
第1の硫化物固体電解質は、上記平均結晶子径を有することにより、結晶構造が維持されるため、高いイオン伝導度を有しうる。すなわち、第1の硫化物固体電解質の25℃におけるバルクでのイオン伝導度(例えば、リチウムイオン伝導度)は、1[mS/cm]以上であることが好ましく、2[mS/cm]以上であることがより好ましく、3[mS/cm]以上であることがさらに好ましく、4[mS/cm]以上であることが特に好ましく、5[mS/cm]以上であることが最も好ましい。これにより、全固体電池における常温レート特性が向上するため、電極活物質層を厚膜化することにより、全固体電池のエネルギー密度を向上させることが可能となる。なお、硫化物固体電解質のイオン伝導度は、実施例の欄に記載の交流インピーダンス法により測定することができる。
本形態に係る電極活物質層は、固体電解質として上述したような第1の硫化物固体電解質以外の固体電解質をさらに含有してもよい。第1の硫化物固体電解質以外の固体電解質としては、例えば、ガーネット型酸化物、NASICON型酸化物、ペロブスカイト型酸化物等の酸化物固体電解質が挙げられる。ただし、イオン伝導度が高い硫化物固体電解質の特性を十分に発揮するという観点からは、本形態に係る電極活物質層は固体電解質として酸化物固体電解質を含有しないことが好ましい。本形態に係る電極活物質層に含まれる固体電解質における硫化物固体電解質の含有量は特に制限されない。ただし、優れたイオン伝導性を発揮させるという観点から、硫化物固体電解質の含有量は、固体電解質の全量100質量%に対して、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、50~100質量%の範囲内であることがより好ましく、90~100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
電極活物質層は、電極活物質および第1の硫化物固体電解質に加えて、導電助剤およびバインダの少なくとも1つをさらに含有していてもよい。
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、活性炭素繊維等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンを少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。
導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましい。なお、本明細書中において、「導電助剤の粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「導電助剤の平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
電極活物質層が導電助剤を含む場合、当該電極活物質層における導電助剤の含有量は特に制限されないが、電極活物質層の合計質量に対して、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは2~8質量%であり、さらに好ましくは4~7質量%である。このような範囲であれば、電極活物質層においてより強固な電子伝導パスを形成することが可能となり、電池特性の向上に有効に寄与することが可能である。
バインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。
電極活物質層の厚さは、目的とする全固体電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましい。
電極活物質層の空隙率は、全固体電池のエネルギー密度を向上させる観点から、20%以下であることが好ましく、より好ましくは18%以下であり、さらに好ましくは15%以下である。下限値は特に制限されないが、5%以上が好ましい。
[固体電解質層]
固体電解質層は、正極活物質層と負極活物質層との間に介在する層であり、固体電解質を(通常は主成分として)含有する。本形態に係る固体電解質層は、固体電解質として、第2の硫化物固体電解質を含むことを特徴とする。
本形態において、第2の硫化物固体電解質は、前述の第1の硫化物固体電解質と同じ組成を有することを特徴とする。本明細書において、同じ組成とは、第1の硫化物固体電解質に含まれる一の元素の含有率(原子割合)をX%、第2の硫化物固体電解質に含まれる当該元素の含有率(原子割合)をX%とした場合、(X-X)/X×100%の値が全ての元素に関して±5%以内であることを意味する。なお、硫化物固体電解質の組成は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES)により測定することができる。したがって、第2の硫化物固体電解質として使用される材料は、第1の硫化物固体電解質として使用される材料と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
本形態において、第2の硫化物固体電解質の平均粒子径は、前述の第1の硫化物固体電解質の平均粒子径よりも大きいことを特徴とする。具体的には、第2の硫化物固体電解質の平均粒子径は、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上である。このような平均粒子径が比較的大きな硫化物固体電解質を用いて固体電解質層を構成することにより、粒界抵抗によってイオン伝導性が低下することを抑制できる。当該平均粒子径の上限値は特に制限されないが、固体電解質層における固体電解質の密度を向上させる観点から、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは70μm以下である。すなわち、当該平均粒子径の数値範囲としては、好ましくは10~100μmであり、より好ましくは20~100μmであり、さらに好ましくは20~70μmであり、特に好ましくは30~70μmである。
第2の硫化物固体電解質の平均結晶子径は、前述の第1の硫化物固体電解質の平均結晶子径と同じく、好ましくは50~150nmであり、より好ましくは60~120nmであり、さらに好ましくは65~110nmであり、特に好ましくは70~100nmであり、最も好ましくは75~90nmである。このように、第1の硫化物固体電解質に加えて、第2の硫化物固体電解質も従来と比較して大きな平均結晶子径を有する。平均結晶子径が大きな硫化物固体電解質は、結晶構造が維持されているため、高いイオン伝導度を有しうる。その結果、全固体電池における常温レート特性が向上するため、電極活物質層を厚膜化することにより、全固体電池のエネルギー密度を向上させることが可能となる。
なお、第2の硫化物固体電解質の25℃におけるバルクでのイオン伝導度(例えば、リチウムイオン伝導度)は、前述の第1の硫化物固体電解質についてのイオン伝導度と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
本形態に係る固体電解質層は、固体電解質として前述したような第2の硫化物固体電解質以外の固体電解質をさらに含有してもよい。第2の硫化物固体電解質以外の固体電解質としては、電極活物質層の欄で説明したものと同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。ただし、イオン伝導度が高い硫化物固体電解質の特性を十分に発揮するという観点からは、本形態に係る固体電解質層は固体電解質として酸化物固体電解質を含有しないことが好ましい。本形態に係る固体電解質層に含まれる固体電解質における硫化物固体電解質の含有量は特に制限されない。ただし、優れたイオン伝導性を発揮させるという観点から、硫化物固体電解質の含有量は、固体電解質の全量100質量%に対して、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、50~100質量%の範囲内であることがより好ましく、90~100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
固体電解質層における固体電解質の含有量は、固体電解質層の合計質量に対して、例えば、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、50~100質量%の範囲内であることがより好ましく、90~100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
固体電解質層は、上述した固体電解質に加えて、バインダをさらに含有していてもよい。固体電解質層に含有されうるバインダの具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
固体電解質層の厚さは、目的とする全固体電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましく、0.1~300μmの範囲内であることがより好ましい。
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、カーボン被覆アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板25と負極集電板27とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
[電池外装体]
電池外装体としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、図1に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
本形態の全固体リチウムイオン二次電池は、複数の単電池層が直列に接続された構成を有することにより、高レートでの出力特性に優れるものである。したがって、本形態の全固体リチウムイオン二次電池は、EV、HEVの駆動用電源として好適に使用される。
図3は、本発明の一実施形態に係る積層型の全固体リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図3に示すように、扁平な積層型二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、積層型二次電池50の電池外装体(ラミネートフィルム52)によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図1に示す積層型二次電池10aの発電要素21に相当するものである。発電要素57は、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
なお、本形態の全固体電池は、扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型の全固体電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装体に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
また、図3に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図3に示すものに制限されるものではない。また、巻回型の全固体電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
[全固体電池の製造方法]
本形態に係る全固体電池の製造方法は、同じ組成の硫化物固体電解質であって、平均粒子径の相対的に小さいものを電極活物質層に、平均粒子径の相対的に大きなものを固体電解質層に含有させることができる方法であれば、特に制限されない。一方で、硫化物固体電解質は、合成直後は二次粒子が凝集した凝集体を形成している。凝集体の粒子径は数十μm程度であるため、通常、当該凝集体を解砕した後、電極活物質層または固体電解質層に用いる。本発明者らの検討によると、合成後の硫化物固体電解質をヘプタンを含む溶媒中で超音波を用いて解砕したところ、溶媒に分散する粒子径の小さい粒子と、沈殿する粒子径の大きな粒子とが得られることが判明した。また、アセトニトリルを含む溶媒(好ましくはアセトニトリル)を用いた場合であっても、硫化物固体電解質に対する溶媒量を少なくする(溶媒量を硫化物固体電解質の質量に対して50倍質量以下とする)ことによって、同様の現象が生じることが判明した。そこで、これらの方法により得られる解砕物を分級し、粒子径の小さい硫化物固体電解質を第1の硫化物固体電解質、粒子径の大きい硫化物固体電解質を第2の固体電解質として全固体電池を製造することにより、本形態に係る全固体電池が効率よく製造できることを見出した。
すなわち、本発明の一形態にかかる全固体電池の製造方法(第一形態の製造方法)は、合成後の硫化物固体電解質を、ヘプタンを含む溶媒中で、超音波を用いて解砕する工程(以下、単に「解砕工程」ともする);解砕後の硫化物固体電解質を、第1の硫化物固体電解質と、第2の硫化物固体電解質と、に分級する工程(ここで、第1の硫化物固体電解質の平均粒子径は、第2の硫化物固体電解質の平均粒子径よりも小さい)(以下、単に「分級工程」ともする);電極活物質および第1の硫化物固体電解質を含有する電極活物質層を形成する工程(以下、単に「電極活物質層形成工程」ともする);ならびに、第2の硫化物固体電解質を含有する固体電解質層を形成する工程(以下、単に「固体電解質層形成工程」ともする);を有する。また、本発明の他の一形態にかかる全固体電池の製造方法(第二形態の製造方法)は、合成後の硫化物固体電解質を、当該硫化物固体電解質の質量に対してアセトニトリルを含む50倍質量以下の溶媒中で、超音波を用いて解砕する工程(解砕工程);解砕後の硫化物固体電解質を、第1の硫化物固体電解質と、第2の硫化物固体電解質と、に分級する工程(ここで、第1の硫化物固体電解質の平均粒子径は、第2の硫化物固体電解質の平均粒子径よりも小さい)(分級工程);電極活物質および第1の硫化物固体電解質を含有する電極活物質層を形成する工程(電極活物質層形成工程);ならびに、第2の硫化物固体電解質を含有する固体電解質層を形成する工程(固体電解質層形成工程);を有する。以下、本形態の製造方法について詳細に説明する。
(解砕工程)
第一形態の製造方法における解砕工程では、合成後の硫化物固体電解質をヘプタンを含む溶媒中で超音波を用いて解砕する。
原料となる硫化物固体電解質は、湿式メカニカルミリング等の公知の合成方法により調製されうる。
本形態の製造方法では、硫化物固体電解質をヘプタンを含む溶媒中(好ましくはヘプタン中)で解砕することを特徴の一つとする。ヘプタンを含む溶媒中(好ましくはヘプタン中)で解砕することにより、溶媒に分散する粒子径の小さい粒子と、沈殿する粒子径の大きな粒子とを含む硫化物固体電解質が得られる。ここで、粒子径の異なる粒子が得られる理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。すなわち、ヘプタン中で超音波を用いて解砕すると、一旦、硫化物固体電解質は一次粒子(粒子径1μm以下)にまで解砕され、溶媒中に分散すると考えられる。しかしながら、非極性溶媒であるヘプタン中では、一旦生成した一次粒子の一部が、再び凝集し、10μm以上の二次粒子を形成することにより、沈殿した粒子が得られると推測している。
ヘプタンの量は、解砕を促進させる観点から、硫化物固体電解質の質量に対して、好ましくは2倍質量以上であり、より好ましくは3倍質量以上であり、さらに好ましくは5倍質量以上である。なお、ヘプタン以外の他の溶媒を併用してもよいが、この場合の他の溶媒の量は、凝集体の残存を抑制するために、少ないほうが好ましい。具体的には他の溶媒の質量は、ヘプタンの質量に対して、好ましくは1倍質量以下であり、より好ましくは0.5倍質量以下であり、さらに好ましくは0.1倍質量以下であり、特に好ましくは0.01倍質量以下であり、最も好ましくは0倍質量(他の溶媒を含まない)である。
第二形態の製造方法では、硫化物固体電解質を、当該硫化物固体電解質の質量に対してアセトニトリルを含む50倍質量以下の溶媒中で超音波を用いて解砕することを特徴の一つとする。少量のアセトニトリル含有溶媒中(好ましくはアセトニトリル中)で解砕することにより、溶媒に分散する粒子径の小さい粒子と、沈殿する粒子径の大きな粒子とを含む硫化物固体電解質が得られる。ここで、粒子径の異なる粒子が得られる理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。すなわち、少量のアセトニトリル含有溶媒中で超音波を用いて解砕すると、一旦、硫化物固体電解質は一次粒子(粒子径1μm以下)にまで解砕され、溶媒中に分散すると考えられる。アセトニトリルは、ヘプタンよりも極性が高いため硫化物固体電解質の分散に適している。しかしながら、溶媒量を少なくすることにより、一旦生成した一次粒子の一部が、再び凝集し、10μm以上の二次粒子を形成することにより、沈殿した粒子が得られると推測している。
アセトニトリルを含む溶媒の量は、一次粒子の再凝集を促す観点から、硫化物固体電解質の質量に対して、50倍質量以下であり、好ましくは30倍質量以下で得あり、より好ましくは20倍質量以下であり、さらに好ましくは10倍質量以下である。一方、アセトニトリルを含む溶媒の量の下限値は特に制限されない。ただし、粒子径の小さな粒子(解砕された粒子)の量と、粒子径の大きな粒子(再凝集した粒子)の量とのバランスを図る観点から、好ましくは2倍質量以上であり、より好ましくは3倍質量以上であり、さらに好ましくは5倍質量以上である。なお、アセトニトリル以外の他の溶媒を併用してもよいが、この場合の他の溶媒の量は、凝集体の残存を抑制するために、少ないほうが好ましい。具体的には他の溶媒の質量は、アセトニトリルの質量に対して、好ましくは1倍質量以下であり、より好ましくは0.5倍質量以下であり、さらに好ましくは0.1倍質量以下であり、特に好ましくは0.01倍質量以下であり、最も好ましくは0倍質量(他の溶媒を含まない)である。
なお、第一形態の製造方法および第二形態の製造方法は、解砕工程に用いる溶媒の種類および溶媒量の点で異なるが、これ以外の点については同じ方法・条件が適用される。以下、第一形態の製造方法および第二形態の製造方法に共通する事項について説明する。
超音波の周波数は、一般的には5~100kHzであり、好ましくは10~50kHzであり、より好ましくは15~30kHzであり、さらに好ましくは18~22KHzである。周波数がこの範囲であると、凝集体を効率よく解砕することができる。
超音波の出力は、解砕する粒子の量によっても異なるが、一般的には1~50Wの範囲内である。また、解砕に要する時間も、解砕する粒子の量および超音波の出力によって異なるが、通常10秒~30分間であり、好ましくは30秒~10分間であり、より好ましくは1~5分間である。
超音波を用いた解砕の後に、得られた分散液をボルテックスミキサー等を用いて攪拌することが好ましい。当該攪拌により、解砕された粒子の再凝集を抑制し、よりいっそう粒子径を均一にすることができる。攪拌時間は、粒子の量によっても異なるが、通常10秒~30分間であり、好ましくは30秒~10分間であり、より好ましくは1~5分間である。
解砕の後、硫化物固体電解質の分散液から適宜溶媒を乾燥させることによって、硫化物固体電解質の粉末を得る。なお、この際の乾燥方法は、特に制限されない。
(分級工程)
分級工程では、解砕後の硫化物固体電解質を、第1の硫化物固体電解質と、第2の硫化物固体電解質と、に分級する。分級方法は、特に制限されず、従来公知の方法、例えば篩を用いた分級方法や、流体中での沈降速度あるいは移動距離の差を利用した分級方法を制限なく用いることができる。これらの方法を適宜採用することにより、所望の粒子径を有する第1の硫化物固体電解質と第2の硫化物固体電解質とを得ることができる。
(電極活物質層形成工程)
電極活物質層形成工程では、電極活物質および第1の硫化物固体電解質を含有する電極活物質層を形成する。電極活物質層の形成方法は、特に制限されず、従来公知の方法を適宜採用することができる。一例を挙げると、電極活物質層、第1の硫化物固体電解質、必要に応じて添加される導電助剤、バインダを混合して電極合剤を調製し、これを圧粉成形することにより、シート状の電極活物質層を形成する方法が挙げられる。
(固体電解質層形成工程)
固体電解質層形成工程では、第2の硫化物固体電解質を含有する固体電解質層を形成する。固体電解質層の形成方法は、特に制限されず、従来公知の方法を適宜採用することができる。一例を挙げると、第2の硫化物固体電解質、必要に応じて添加されるバインダを混合し、これを圧粉成形することにより、シート状の第2の固体電解質層を形成する方法が挙げられる。
以上の製造方法によって全固体電池を製造することにより、本形態に係る全固体電池を効率よく製造することができる。
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列にまたは並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
[車両]
本形態に係る全固体電池は、体積あたりのエネルギー密度が高い。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められる。したがって、本形態に係る全固体電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、出力特性に優れた高容量の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより、走行距離の長い自動車とすることができるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、以下において、グローブボックス内で用いた器具および装置等は、事前に十分に乾燥処理を行った。
<物性の測定方法>
各物性は、下記の方法で測定した。
(硫化物固体電解質の平均粒子径)
硫化物固体電解質の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される粒子の粒子径の平均値を算出することによって求めた。結果を表1に示す。
(硫化物固体電解質の平均結晶子径)
硫化物固体電解質の結晶子径は、Cu-Kα線を用いたX線回折測定における2θ=29.6±0.5°のピークの半値幅よりDebye-Scherrerの式を用いて算出される値を採用した。結果を表1に示す。
<全固体リチウムイオン二次電池の作製>
[実施例1]
1.硫化物固体電解質の調製
(1)解砕
グローブボックス内(露点-80~-97℃、酸素濃度1ppm以下、以下同様)で、硫化物固体電解質(Li10GeP12(LGPS)、合成後に未解砕のもの)0.5gをサンプル瓶に入れた。サンプル瓶に蓋用アルミホイルで蓋をし、ガラスチューブオーブンに入れた。ガラスチューブオーブンをグローブボックスから取り出し、サンプル瓶中の硫化物固体電解質を真空乾燥させた。ガラスチューブオーブンを再びグローブボックス内に入れた。グローブボックス内で、硫化物固体電解質が入ったサンプル瓶に、硫化物固体電解質の質量に対して10倍質量のアセトニトリルを、パスツールピペットを用いて入れた。超音波ホモジナイザーを用いて、アセトニトリル中の硫化物固体電解質を解砕した。その後、ボルテックスミキサーを用いて、アセトニトリル中の硫化物固体電解質を振動混合した。サンプル瓶に蓋用アルミホイルで蓋をし、ガラスチューブオーブンに入れた。ガラスチューブオーブンをグローブボックスから取り出してドラフト内に入れ、サンプル瓶中の硫化物固体電解質を室温(25℃)で1~2時間真空乾燥させた。アセトニトリルの沸騰が落ち着いた後、150℃まで昇温し、一晩真空乾燥させた。
(2)分級
ガラスチューブオーブンを再びグローブボックス内に入れた。グローブボックス内で、回収用アルミホイル上に10μmメッシュを置き、その上にスパチュラで乾燥させた硫化物固体電解質を載せ、ヘラを用いて分級した。メッシュを通過したものを第1の硫化物固体電解質(平均粒子径:0.6μm)とし、メッシュ上に残ったものを第2の硫化物固体電解質(平均粒子径:30μm)として、それぞれスクリュー瓶に移した。
2.正極合剤の調製
グローブボックス内で、正極活物質としてLiCoO(LCO)(商品名「セルシードC-5H」、日本化学工業株式会社製、平均二次粒子径:7μm)60mg、上記で解砕・分級した第1の硫化物固体電解質(平均粒子径:0.6μm)34mg、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)(商品名「デンカブラック(登録商標)HS-100」、デンカ株式会社製、平均一次粒子径:36nm)6mgを秤量した。これらをメノウボールの入ったサンプル瓶に入れ、スパチュラで軽く混合した。サンプル瓶をテーブルミルを用いて混合し、正極合剤を得た。
3.電池の作製
上記で調製した正極合剤と、対極であるLi-In電極とを対向させ、この間に固体電解質層を介在させることで、全固体リチウムイオン二次電池を作製した。
具体的には、第2の硫化物固体電解質(Li10GeP12(LGPS)、平均粒子径:30μm)を秤量し、PET管内に入れ、表面を平滑にならした上で、締結治具を用いて400MPaで加圧し、硫化物固体電解質ペレットを作製した。作製された硫化物固体電解質ペレットの表面積は0.817cm(ペレットの径φ=1.02cm)であった。また、固体電解質層の厚みを作製前後の厚み変化から計測したところ、600μmであった。
その後、締結治具を抜き、ペレット両面に正極合剤および対極Li-In電極をそれぞれ配置して全固体電池評価セルにて締結を行うことにより、全固体リチウムイオン二次電池を作製した。なお、正極合剤の目付量は7.3mg/cmとした。また、負極に用いたLi-In電極はLi金属箔とIn金属箔との積層体であり、In金属箔が固体電解質層側に位置するようにLi-In電極を配置して用いた。
[参考例1]
「1.硫化物固体電解質の調製 (1)解砕、(2)分級」を下記の方法で行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で硫化物固体電解質を調製した。
グローブボックス内(露点-80~-97℃、酸素濃度1ppm以下、以下同様)で、硫化物固体電解質(Li10GeP12(LGPS)、合成後に未解砕のもの)0.5gをサンプル瓶に入れた。サンプル瓶に蓋用アルミホイルで蓋をし、ガラスチューブオーブンに入れた。ガラスチューブオーブンをグローブボックスから取り出し、サンプル瓶中の硫化物固体電解質を真空乾燥させた。ガラスチューブオーブンを再びグローブボックス内に入れた。グローブボックス内で、ガラスチューブオーブンからサンプル瓶を取り出し、硫化物固体電解質を乳鉢に移して2時間解砕した。
(2)分級
ガラスチューブオーブンを再びグローブボックス内に入れた。グローブボックス内で、回収用アルミホイル上に10μmメッシュを置き、その上にスパチュラで乾燥させた硫化物固体電解質を載せ、ヘラを用いて分級した。メッシュを通過したものを硫化物固体電解質としてスクリュー瓶に移した。
[参考例3]
硫化物固体電解質として、合成後未解砕のLi10GeP12(LGPS)(平均粒子径:10μm超)をそのまま用いた。
<硫化物固体電解質のリチウムイオン伝導度評価>
実施例1、参考例1および2の硫化物固体電解質についてについてリチウムイオン伝導度を測定した。具体的には、Au粉末/硫化物固体電解質/Au粉末をプレス圧350MPaで圧縮成形し、ペレットを作製した。ペレットについて、交流インピーダンス法によりリチウムイオン伝導度(25℃)を測定した。なお、測定には周波数応答アナライザ(FRA)を用い、測定条件は、印加電圧0.01V、測定周波数域1~10Hzとして測定した。結果を表1および図4に示す。
<全固体リチウムイオン二次電池の特性評価>
実施例1において作製した各全固体リチウムイオン二次電池について、以下の充放電試験条件に従って、常温でのレート特性の評価を行った。
(充放電試験条件)
1)充放電条件[電圧範囲]1.9~3.6V
[充電過程]0.05C CCCV(CV:0.01C)
[放電過程]10、5、3、2、1、0.2C CCCV(CV:0.05C)
2)評価温度:298K(25℃)。
評価用セルは、充放電試験機を使用して、上記評価温度に設定された恒温槽中にて、充電過程(評価用電極へのLi挿入過程をいう)では、定電流・定電圧(CCCV)モードとし、0.05Cにて1.9Vから3.6Vまで充電した。その後、放電過程(評価用電極からのLi脱離過程をいう)では、定電流・定電圧(CCCV)モードとし、それぞれ10、5、3、2、1、0.2Cにて3.6Vから1.9Vまで放電した。充電と放電との間は30分休止した。なお、ここで、1Cとは、その電流値で1時間充電すると、ちょうどその電池が満充電(100%充電)状態になる電流値のことである。結果を図5に示す。
表1および図5に示す結果から、実施例1の本発明に係る全固体リチウムイオン二次電池は、常温でのレート特性に優れる(特に、10Cでは40mV向上する)ことが示された。本発明によれば、全固体電池における常温レート特性が向上するため、電極活物質層を厚膜化することにより、全固体電池のエネルギー密度を向上させることが可能となることが示された。
10a、50 積層型二次電池、
10b 双極型二次電池、
11 集電体、
11’ 正極集電体、
11’’ 負極集電体、
11a 正極側の最外層集電体、
11b 負極側の最外層集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
23 双極型電極、
25 正極集電板(正極タブ)、
27 負極集電板(負極タブ)、
29、52 ラミネートフィルム、
31 シール部、
58 正極タブ、
59 負極タブ。

Claims (3)

  1. 集電体の表面に電極活物質および第1の硫化物固体電解質を含有する電極活物質層が配置された電極と、
    前記電極活物質層の表面に配置された、第2の硫化物固体電解質を含有する固体電解質層と、
    を有し、
    前記第1の硫化物固体電解質および前記第2の硫化物固体電解質は、同じ組成を有し、
    前記第1の硫化物固体電解質の平均粒子径は、前記第2の硫化物固体電解質の平均粒子径よりも小さく、
    前記第1の硫化物固体電解質の平均結晶子径および前記第2の硫化物固体電解質の平均結晶子径は、ともに50~150nmである、全固体電池。
  2. 合成後の硫化物固体電解質を、ヘプタンを含む溶媒中で、超音波を用いて解砕する工程、
    解砕後の硫化物固体電解質を、第1の硫化物固体電解質と、第2の硫化物固体電解質と、に分級する工程(ここで、前記第1の硫化物固体電解質の平均粒子径は、前記第2の硫化物固体電解質の平均粒子径よりも小さい)、
    電極活物質および前記第1の硫化物固体電解質を含有する電極活物質層を形成する工程、ならびに
    前記第2の硫化物固体電解質を含有する固体電解質層を形成する工程、
    を有する、全固体電池の製造方法。
  3. 合成後の硫化物固体電解質を、当該硫化物固体電解質の質量に対してアセトニトリルを含む50倍質量以下の溶媒中で、超音波を用いて解砕する工程、
    解砕後の硫化物固体電解質を、第1の硫化物固体電解質と、第2の硫化物固体電解質と、に分級する工程(ここで、前記第1の硫化物固体電解質の平均粒子径は、前記第2の硫化物固体電解質の平均粒子径よりも小さい)、
    電極活物質および前記第1の硫化物固体電解質を含有する電極活物質層を形成する工程、ならびに
    前記第2の硫化物固体電解質を含有する固体電解質層を形成する工程、
    を有する、全固体電池の製造方法。
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