JP7406667B1 - 目地処理構造の施工方法及び目地処理構造 - Google Patents

目地処理構造の施工方法及び目地処理構造 Download PDF

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Abstract

【課題】目地部分を目地処理材で覆い、その上に柔軟シートおよび樹脂シートを施工することにより、美観を良好にするとともに、樹脂シートの膨れや剥がれを抑制でき、目地処理材の施工箇所が目立たない目地処理構造の施工方法を提供する。【解決手段】コンクリートの構造体間の隙間を覆う目地処理構造の施工方法は、前記隙間を跨いで前記コンクリートの構造体に掛け渡されるように薄板状の目地処理材を配置して、前記コンクリートの構造体と、前記目地処理材との間を接着する工程と、前記目地処理材の上面と前記コンクリートの構造体の上面にわたって、柔軟シートを配置して、前記目地処理材および前記コンクリートの構造体と、前記柔軟シートとの間を隙間なく接着する工程と、前記柔軟シートの上に樹脂シートを配置して接着する工程と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、目地処理構造の施工方法及び目地処理構造に関する。
マンションのルーフバルコニーや、廊下、プール等のコンクリート構造においては、その美観向上のために、樹脂シートの床材を施工することが行われる。一方、コンクリートが外気温や日射により膨張/収縮した際のひび割れ等を抑制すべく、コンクリートを複数の構造体に分けて配設することも行われる。かかる場合、コンクリートの構造体間をシーリング材や樹脂等の目地材(伸縮目地という)で充填しているケースが多く、目地部分は通常コンクリート表面から凹んでいる。
このようなコンクリート床に対して、目地部分を跨いで樹脂シートを施工すると、目地部分が凹んでいるため、目地部分を覆ったシート部分で膨れやしわが入りやすい。また、施工から長期間経過すると、膨れが大きくなり、樹脂シートがコンクリート下地から剥がれることもある。
特に、塩化ビニル製の樹脂シートは、厚みが2.0~5.0mm程度であるが、下地の凹凸に追従しやすく、下地に0.5mm程度の段差があると、樹脂シートの表面にその凹凸のあとが現れ外観が悪くなる。
また、伸縮目地のあるコンクリート製の床は、雨水により水分が含まれているため、材質の柔らかい柔軟シートを直接貼っても、コンクリート製の床と強固に接着することが難しかった。さらに、コンクリートは経年で収縮するため、伸縮目地に跨がっての樹脂シートの施工はさらに剥がれを招きやすく、実際に建築現場で施工されることはなかった。
したがって、コンクリートの上面に樹脂シートの床材を敷設するときは、目地部分を避けて被覆を行うため施工の手間が増え、さらには樹脂シートの表面に凹凸が生じやすいため歩行性も悪く、美観もよくなかった。また、直射日光により、コンクリートや床材、接着剤が経年で伸縮や膨張を繰り返し、ひずみが大きくなると、接着剤の破断が生じやすく、強力な接着剤で固定しても、数年で床材の膨れや剥がれが生じる恐れがある。
上記問題に対して、特許文献1には、目地を跨いで帯状の板をシーリングで固定し、その後樹脂シートを施工する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1の技術によれば、帯状の板に隣接して非接着領域を設けるため、表面を被覆する樹脂シートが、塩化ビニル製のシートのような柔軟性が高い素材である場合、非接着領域が徐々に沈むことでシート表面に帯状の板の凹凸が浮き上がり、美観が悪くなるという問題がある。また、雨などが降ったときは、その凹凸部分に水や汚れがたまり、屋上管理者の清掃の手間も増えるという問題もある。さらに、粘着層及び帯状の板の厚みが0.5~1.0mm程度と比較的厚いため、コンクリート表面と、その上に接着した帯状の板材とに跨るようにして樹脂シートの床材を施工すると、コンクリート表面と帯状の縁との段差により、床材の表面に凹凸(筋)が発生し、美観が悪くなることがあった。
また、特許文献2として、金属板と通気緩衝シートを用いたウレタン防水の施工法が知られている。特許文献2の技術によれば、目地部分に金属板、次いで裏面に凹凸のある通気緩衝シートを接着し、さらにその上にウレタン防水層を積層することで、ウレタン防水層の膨れを防止することができる。
しかしながら、この防水仕様は通気緩衝シートから湿気を逃す必要があるため、通気緩衝シートの裏面の凹凸を1~3mm程度と大きくする必要がある。この仕様で、ウレタン防水層の変わりに床材を適用した場合、床材表面に凹凸が発現するため、樹脂シートには転用できなかった。特に床材が熱可塑性樹脂の場合は、下地の凹凸が転写されやすく、意匠性が著しく低下する。
特許第5426298号公報 特許第5354937号公報
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、目地部分を目地処理材で覆い、その上に柔軟シートおよび樹脂シートを施工することにより、美観を良好にするとともに、樹脂シートの膨れや剥がれを抑制でき、目地処理材の施工箇所が目立たない目地処理構造の施工方法及び目地処理構造を提供することを目的とする。
本発明の目地処理構造の施工方法は、
コンクリートの構造体間の隙間を覆う目地処理構造の施工方法において、
前記隙間を跨いで前記コンクリートの構造体に掛け渡されるように薄板状の目地処理材を配置して、前記コンクリートの構造体と、前記目地処理材との間を接着する工程と、
前記目地処理材の上面と前記コンクリートの構造体の上面にわたって、柔軟シートを配置して、前記目地処理材および前記コンクリートの構造体と、前記柔軟シートとの間を隙間なく接着する工程と、
前記柔軟シートの上に樹脂シートを配置して接着する工程と、を有し、
前記柔軟シートの厚みは、1mm~5mmであり、
前記柔軟シートは、発泡体をスライスしてなり、比較的硬いスキン層を一方の面としたときに、該スキン層に対向する他方のスライス面を下地側として使用する、ことを特徴とする。
本発明の目地処理構造は、
コンクリートの構造体間の隙間を覆う目地処理構造において、
前記隙間を跨いで前記コンクリートの構造体に掛け渡されるように配置された薄板状の目地処理材と、
前記目地処理材の上面と前記コンクリートの構造体の上面にわたって配置された柔軟シートと、
前記柔軟シートの上に配置された樹脂シートと、を有し、
前記目地処理材および前記コンクリートの構造体と、前記柔軟シートとの間が隙間なく接着されており、
前記柔軟シートの厚みは、1mm~5mmであり、
前記柔軟シートは、発泡体をスライスしてなり、比較的硬いスキン層を一方の面としたときに、該スキン層に対向する他方のスライス面を下地側とする、ことを特徴とする。
本発明により、目地部分を目地処理材で覆い、その上に柔軟シートおよび樹脂シートを施工することにより、美観を良好にするとともに、樹脂シートの膨れや剥がれを抑制でき、目地処理材の施工箇所が目立たない目地処理構造の施工方法及び目地処理構造を提供することができる。
図1は本実施形態の目地処理構造の断面図である。 図2は、目地処理材の斜視図である。 図3は、本実施形態の目地処理構造の端部周辺の断面図である。 図4は、本実施形態の目地処理構造の端部周辺の断面図である。
図1は、本実施形態の目地処理構造の断面図であり、図2は、目地処理材の斜視図である。図3、4は、本実施形態の目地処理構造の端部周辺の断面図である。図において、実際の形状や寸法比と異なる場合がある。
図1において、隣接するコンクリートの構造体6の間の隙間(目地ともいう)Sに、構造体6の両側面に接するように目地材5が配置されている。本実施形態の目地処理構造は、隙間Sを覆うために、目地処理材3と柔軟シート1と樹脂シート7とを積層してなる。
本実施形態の目地処理構造を施工するときは、まず隙間Sに跨がり構造体6の上面に掛け渡されるようにして、薄板状の目地処理材3を配置し、構造体6および目地材5と目地処理材3との間に付与した第1接着剤4(または粘着剤でもよい)により、これらを接着する。目地処理材3と目地材5の空間は、第1接着剤4により満たされてもよいし、一部空隙があってもよい。空隙を設けた場合、目地処理材3と目地材5の空間を雨水の排水路として利用できる。また、本実施形態の目地処理構造は、伸縮目地の他に、予め決められた位置にひび割れを起こす目的で設けられた誘発目地、意匠性を目的に目地材が設置された化粧目地など、下地に凹みのあるコンクリ―ト構造に適用できる。
さらに、一方の構造体6の上面から目地処理材3の上面を経て他方の構造体6の上面までわたって、上下面が平坦である(溝がない)柔軟シート1を配置し、構造体6および目地処理材3と、柔軟シート1の間に付与した第2接着剤2により、これら同士を隙間なく接着する。ここで、「平坦」とは、表層の表面に規則的な配列の凹凸形状がない状態をいい、表層が多孔質である場合を含む。
本実施形態では、目地処理材3の外縁とコンクリートの構造体6との境界に第2接着剤2を付与することで、すなわち目地処理材3に隣接して柔軟シート1の非接着領域が設けられないため、構造体6から柔軟シート1の浮き上がり等は生じない。
さらに、柔軟シート1の上面に第3接着剤8を塗布し、その上に樹脂シート7を載置して接着する。目地処理材3が薄いため、構造体6との段差が小さく、柔軟シート1に構造体6と目地処理材3の段差が浮き上がることが抑制されるとともに、目地処理材3がある部分とない部分との高低差がほとんどない。これにより柔軟シート1の上面は、ほぼフラットとなるため、樹脂シート7は凹凸がなく、歩行性および美観に優れる。
図3、4に示すように、本実施形態の目地処理構造の端部は、樹脂シート7に加え、柔軟シート1の端部が露出する。そこで、樹脂シート7とコンクリートの構造体6(または壁9)の表面との間に、シーリング剤10を配置して端部を被覆する。
本実施形態の施工方法で施工された目地処理構造によれば、構造体6間の隙間Sに配置された目地材5を目地処理材3で覆い、その上に柔軟シート1を施工することにより、美観を良好にするとともに、柔軟シート1上に施工された樹脂シート7の膨れや剥がれを抑制でき、目地処理材3の施工箇所が目立たない目地処理構造を提供することができる。
本実施形態で用いる目地処理材3の材質は、施工時に折れ曲がったり、破損しない程度の剛性と強度を有する腐食性の高い金属であることが好ましく、金属材料を用いることにより下地からの水分を遮断することができる。金属材料としては、例えば、ステンレスやメッキを施した鉄、ガルバリウム鋼板、アルミニウムなどがあげられる。施工時の切断性や腐食性の面から、ステンレスやアルミニウムが好ましい。
目地処理材3の厚さは0.10mmから0.80mmが好ましい。目地処理材3が0.1mmより薄いとコンクリート床面に施工する際に目地処理材3が変形し、その後に柔軟シート1を施工しても樹脂シート7の表面が凹凸になりやすい。また、目地処理材3が0.8mmより厚いと、樹脂シート7を敷設したのち、経年で樹脂シート表面に目地処理材3の跡がくっきりと浮き出てきてしまう。施工性及び床材の仕上がりの面から、目地処理材3の厚みは0.18mm~0.50mmがより好ましい。
目地処理材3の幅は、作業性の面から5~15cmが好ましい。また、施工前の目地処理材3は巻物であっても、短冊状であってもどちらでもよい。短冊状の場合なら、長手方向の長さは、作業性の面から500~1500mmが好ましい。500mmよりも短いと、目地処理材同士のジョイント部分が多くなるため、ジョイント部分の継ぎ目が床材に目立ちやすくなり、作業性が悪くなる。また、長手方向の長さが1500mmより長いと、屋外で作業した場合、風で折れ曲がることがある。
また、目地処理材3は、表裏面が平らな一枚の平板から形成してもよい。ただし、図2に示すように、一方の構造体6に接着する第1面3aと、他方の構造体6に接着する第2面3bとのなす角度θが、175°以上、180°未満の範囲で山折りに屈曲しているとより好ましい。屈曲していることで目地材5の隙間Sの段差による影響を緩和させ、納まりがよくなるからである。目地処理材3を山折りとする場合、第1面3aと第2面3bの双方の裏面に接着剤を塗布する。ただし、例えば第1面3aに接着剤を塗布し、第2面3bに接着剤を塗布しないことで、構造体6の熱膨張等に応じて隙間Sが増減した場合に、構造体6との間の相対的な動きを許容できる。
目地処理材3の継ぎ目部分の施工は、突きつけもしくは重ね合せて施工することができる。目地部分はへこんでいることが多く、その隙間を確実になくすためにも、重ね合わせて施工するのが好ましい。
目地処理材3とコンクリート表面とを固定する方法としては、接着剤、シーリング材や粘着テープなどがあげられる。接着剤やシーリング材を使用する場合は、固定圧着により押しつぶされうる低粘度のものが好ましく用いられる。押しつぶされることにより、接着剤の厚みを薄くすることができ、目地処理材3および接着部の総厚みを小さくすることができる。
接着剤(第1接着剤4)の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリ酢酸ビニル、尿素樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、ブチル系接着剤を挙げることができる。耐水性及び耐アルカリ性に優れる点ではウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、ブチル系接着剤が好適に使用できる。
接着剤の代わりのシーリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、1成分型シリコーン系シーリング剤、1成分型変性シリコーン系シーリング剤、1成分型ポリイソブチレン系シーリング材、2成分型シリコーン系シーリング剤、2成分型変性シリコーン系シーリング剤、2成分型エポキシ系シーリング剤、2成分型ポリサルファイド系シーリング剤、1成分型ポリウレタン系シーリング剤、2成分型ポリウレタン系シーリング剤などを用いることができる。耐水性および接着性の面から、1成分系変性シリコーン系シーリング材、1成分型ポリイソブチレン系シーリング材が特に好ましい。
接着剤及びシーリング材は、目地処理材3の裏面に直接塗布してもよいし、コンクリートの表面に塗布してもよい。コンクリート表面には不陸や小さい穴などがあることも多いため、目地処理材3の裏面に直接塗布した方が好ましい。また、接着剤の塗布方法は、ローラーやクシメゴテ、スプレー等の公知の方法があげられる。塗布量を管理し、一定の厚さにできる点から、クシメゴテを用いて塗布することが好ましい。
粘着剤としては、基材に粘着剤を塗布してある粘着テープを使用するのが好ましい。粘着テープとしては、ブチル系、アクリル系、シリコーン系などがあげられる。
柔軟シート1は、樹脂シート7よりも可撓性のある(柔軟である)シートであり、コンクリート表面に貼り付けられた目地処理材3とコンクリート表面との段差を吸収する役割がある。柔軟シート1の敷設により樹脂シート7の表面が平滑になり美観がよくなる。また、柔軟シート1があることにより、夏場や冬場に、目地部、床材、コンクリート下地が熱収縮しても、柔軟シート1が動きに追従するため、接着剤や床材の破断が起こりにくくなる。そのため、経年でも樹脂シート7の膨れや剥がれが発生せず、長期にわたり樹脂シート7の美観を保つ働きをする。
柔軟シート1は、公知の樹脂を化学的又は物理的に成形させて得られるシート材からなる。柔軟シート1を構成する樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルなどが挙げられる。中でも、耐熱性が強く、下地の動きに追従しやすい性質を有することから、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニルを用いることが好ましい。下地の追従性が高く、非吸水性に優れていることから、その中ででもポリオレフィンを用いることが好ましく、特に発泡構造であることが好ましい。
また、柔軟シート1とコンクリート下地、柔軟シート1と樹脂シート7との接着性を強固にするために、柔軟シート1の両面に不織布で積層したり、表面処理材で被覆するのが好ましい。
柔軟シート1の厚みは、特に限定されないが、1mm~5mmが好ましく、2mm~4mmがより好ましい。柔軟シート1の厚みが5mmを超えて大きいと、床材の上から荷重が加わったときに沈み込みが大きくなりすぎて、その上に樹脂シート7を敷設しても歩行感が悪くなる。一方、柔軟シート1の厚みが1mm未満で小さいと、目地処理材3とコンクリート表面との段差を吸収できなくなり、樹脂シート7の表面に目地処理材3の縁跡が現れてしまう恐れがある。また、屋上などで施工する場合、柔軟シート1の厚みが薄すぎると、風で破れたり飛ばされたりするため、取り扱いが難しくなる。
柔軟シート1が発泡体の場合、発泡体の発泡倍率は特に限定されない。ポリオレフィン系の材料の場合は、10倍~50倍が好ましく、20倍~40倍がより好ましい。発泡倍率が小さすぎると材料が硬くなり、下地の動きに追従する能力が低下する。発泡倍率が大きすぎると、材料強度や、下地や樹脂シートとの接着力が低下するおそれがある。
また、柔軟シート1は、発泡体の断面をスライスして、比較的硬いスキン層を一方の面とし、スキン層に対向する他方の面(切断したスライス面)を下地側として使用することが好ましい。スライス面が下地側にあると、発泡層の表面積が広くなるため、接着剤の接触面積が広くなり、下地と柔軟シート1とが強固に接着させることができる。さらに、スライスされたシートを使用した場合、目地処理材の動きや重歩行にも接着剤の剥がれが起こりにくくなり、樹脂シート7の膨れなども起こりにくくなる。また、柔軟シート1の下地側がスライス構造であるため、目地処理材や下地の凹凸に追従しやすくなり、万が一下地が移動した際にも、柔軟シート1がその凹凸を吸収することができる。
樹脂シート7と柔軟シート1とを固定する接着剤(第3接着剤8)は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、尿素樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤を挙げることができる。耐水性及び接着性に優れる点ではウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤が好適に使用することができる。
特に、コンクリートの表面と、樹脂シート7との接着には、耐水性の面からエポキシ系接着剤を用いるのが好ましい。また、樹脂シート7と柔軟シート1との接着には弾性のあるウレタン系接着剤を用いるのが好ましい。
接着剤の具体的名称として、ウレタン系接着剤の「セメントVG(田島ルーフィング株式会社製)」、「セメントU(田島ルーフィング株式会社製)」、エポキシ系接着剤の「セメントEP20(田島ルーフィング株式会社製)」、「セメントEP30(田島ルーフィング株式会社製)」などが挙げられる。
柔軟シート1は、くし目ごてを用いて接着剤をコンクリート下地に塗布し、その後敷設し、ローラー等で圧着することで施工することができる。
樹脂シート7は、既存のコンクリート床面に敷設されて意匠性や機能性を向上させるシート材である。樹脂シート7の平面視形状は、特に限定されるものではなく、長尺状に形成されていてもよいし、床タイルのように矩形状又は多角形状に形成されていてもよいが、止水性及び施工性の観点から、樹脂シート7は、目地のない1枚のシートからなることが好ましい。長尺状に形成された樹脂シート7は、通常、ロールに巻かれて保管・運搬に供される。
樹脂シート7の表面形状は、特に限定されるものではないが、例えば防滑性を有する突部や傾斜面を有する凹凸形状などとすることができる。また、樹脂シート7の最も上側の表面層は、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料などの着色剤、溶剤などを含んでいてもよい。
樹脂シート7の表面は、光沢度を高くするよりも低くする方が、下地であるコンクリート床面の不陸や凹凸が樹脂シートの表面へ表出した際、人の目で視認し難くする効果があるので好ましい。樹脂シートの表面の凹凸や突部などは、通常はエンボス加工を行って形成するが、エンボス加工方法は特に限定されず、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機を用いることができる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面など)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、微細網状、微細点状、ストライプ状などを挙げることができる。微細な凹凸は、エンボス加工以外に、サンドブラストや鑢がけなどによって表面を粗くしたり、フィラーなどの微粒子を表面に埋め込むなどの方法によっても形成することができる。このような微細な凹凸を加えることによって、不陸による凹凸や目地処理材3による凹凸をさらに隠蔽しやすくなる。
樹脂シート7の素材は、既存のコンクリート床面に敷設可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂などの柔軟性を有する樹脂シートを用いることができる。これらの中でも、柔軟性を有する加工性、耐久性、コストに優れることから、主たる樹脂成分として塩化ビニル樹脂を用いることが好ましい。塩化ビニル系樹脂は、柔軟性に優れることにより、施工後に柔軟な床面を構成できるほか、ロールに巻き取って樹脂シート7を簡易に保管・運搬できる上、施工時に容易に搬入できるというメリットもある。また、リフォーム時に下地であるコンクリート床面との密着性に優れるという点においても、塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。
樹脂シート7の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば2.0mm以上、5.0mm以下であることが好ましく、2.5mm以上、4.0mm以下であることがより好ましい。厚みが2.0mm以上であると強度を確保しやすく、厚みが5mm以下であると柔軟性が高まるので、施工する際の作業性が向上する。また、既存のコンクリート床面に樹脂シート7を敷設したとしても、厚みを5mm以下とすることで、施工後の床面高さの変動が支障の出ない範囲に抑えられる上、リフォーム後の美観も保つことができる。
樹脂シート7には、その剛性を高め、寸法安定性を付与するための補強層を単数又は複数設けることができる。補強層としては、例えば、ガラスマット、ガラスネット、樹脂マット、樹脂ネット、無機繊維又は有機繊維からなる不織布又はフェルト、及び、織布などが挙げられるが、強度に優れ、かつ、寸法変化が小さいという点から、特にガラス繊維を用いることが好ましい。また、ガラス繊維を使用することにより、下地であるコンクリート床面の不陸や凹凸が樹脂シートの表面に表出するのを抑制できる。
柔軟シート1の上に接着剤を塗布して樹脂シート7を敷設し、押圧ローラーを用いて、コンクリート床面に敷設した樹脂シート7の全面を押圧する。柔軟シート1の上面がほぼフラットであるため、樹脂シート7の密着性が高まる。
樹脂シート7同士の継ぎ目は、溶接棒による熱溶接もしくはシーリング処理することができる。歩行量が多い場所や、直射日光が当たる場所では、樹脂シート7の収縮や変形に対する強度の面から溶接棒による熱溶接が好ましい。
施工最後に、樹脂シート7の外周縁部のシーリング処理を行う。図3、4に示すように、樹脂シート7は、その外周縁部がコンクリートの構造体6の表面(または壁9の表面)、あるいは排水口との境界から隙間があけられた状態でコンクリート床面に貼り付けられている。この隙間は、コンクリート床面に貼り付けた樹脂シート7の周囲をシーリング剤10でシーリング処理するために設けられたものであり、コンクリートの構造体6の表面と樹脂シート7との間に水が浸入するのを防止する役割がある。シーリング剤10の幅は、2~15mm程度である。シーリング剤10は樹脂シート7の全周に配置することが好ましい。
シーリング剤10は、特に限定されるものではないが、樹脂シート7の外周面に接する側においては、樹脂シート7の表面に乗り上げていることが好ましい。これにより、シーリング剤10によって樹脂シート7の外周縁部の表面が覆われるので、樹脂シート7の外周縁部の捲れを防止することができるうえ、コンクリートの構造体6の表面と樹脂シート7の間への水の浸入をより効果的に防止することができる。
また、シーリング剤10は、特に限定されるものではないが、図4に示すように、壁9の面に接する側が最も高く、樹脂シート7の外周面に接する側が最も低くなるよう傾斜して設けられることが好ましい。これにより、壁9の表面に付着した水をシーリング剤10の傾斜に沿って樹脂シート7の表面上に良好に導いて排水することができる。また、壁のない場所に設置されるシーリング剤10は、図3に示すように、樹脂シート7の外周面に接する側が最も高く、排水口(不図示)との境界側が最も低くなるよう傾斜して設けられることが好ましい。これにより、樹脂シート7上の水を、その周囲にある排水口(不図示)に効率よく導くことができる。
シーリング剤10としては、特に限定されるものではないが、例えば、1成分型シリコーン系シーリング剤、1成分型変性シリコーン系シーリング剤、2成分型シリコーン系シーリング剤、2成分型変性シリコーン系シーリング剤、2成分型エポキシ系シーリング剤、2成分型ポリサルファイド系シーリング剤、1成分型ポリウレタン系シーリング剤、2成分型ポリウレタン系シーリング剤などを用いることができる。耐候性及び耐水性の面から、1成分系変性シリコーン系シーリング材または1成分型ポリウレタン系シーリング剤が特に好ましい。
以下、本発明者が行った試験結果について説明する。
[実施例1]
目地処理材として、テープの総厚みが0.18mm、幅50mmであり裏面にアクリル系粘着剤が塗布されたアルミニウムテープ(製品名:エースクロス011アルミ、光洋化学株式会社製)を、コンクリートの伸縮目地(伸縮目地の幅25mm)の上に貼り付け、その後ハンドローラーで圧着した。
一方、柔軟シートとして、以下のものを製造した。厚さ6mmのPEライト(株式会社イノアックコーポレーション製の独立気泡型の化学架橋ポリエチレン発泡体、20倍発泡、幅1000mm)をスライスした厚さ3mmの発泡体のスキン層側の面に、ポリエチレンをコーティングした不織布(製品名:ポリエチレン防音不織布、ポリエチレンテレフタレート製の長繊維不織布(目付量25g/m)にポリエチレンを8μmの膜厚になるように塗布したもの(押谷化成株式会社製)を、ポリエチレンコーティング面がポリエチレン発泡体側になるようにして、熱溶融にて積層した。次いで、裏面のスライス層にプライマー(サーフレン(登録商標)P-1000、三菱ケミカル株式会社製)を固形分が4g/mになるように塗布し、熱風乾燥器で乾燥し、柔軟シートを製造した。
得られた柔軟シートをエポキシ系接着剤(セメントEP20、田島ルーフィング株式会社製)を用いてコンクリート下地に貼り付け、ハンドローラーで圧着して施工した。1日養生した後、樹脂シート(ビュージスタ おそうじらくらくVPC-402, 田島ルーフィング株式会社製)をウレタン系接着剤(セメントVG、田島ルーフィング株式会社製)を用いて施工した。次に、継ぎ目部分を溶接棒(V-402Y、田島ルーフィング株式会社製)で施工した。溶接棒施工の翌日に、樹脂シートの端末をシーリング材(変成シリコーン系シーリング材のVGシーリングMS(品番VG-102)、田島ルーフィング株式会社製)で、シートの全周を打設幅10mmにて施工した。施工は3m×2.5mの格子状に伸縮目地が敷設された1ブロック分を施工した。
(樹脂シートの経過観察)
樹脂シートの施工から1週間経過した後、樹脂シートの状態を目視で観察したところ、伸縮目地部や樹脂シートの表面に、膨れや剥がれの問題は見られず、歩行性も問題はなかった。また、樹脂シートの施工から3年経過した後も、伸縮目地部に凹凸は見られず、歩行性も問題はなかった。
[実施例2]
柔軟シートの厚みを1.5mmに変更した点以外は、実施例1と同様の方法で柔軟シートを製造し、同様に樹脂シートを施工し経過観察した。その結果については後述する(実施例3~比較例1にて、同様)。
[実施例3]
柔軟シートの厚みを2mmに変更した点以外は、実施例1と同様の方法で柔軟シートを製造し、同様に樹脂シートを施工し経過観察した。
[実施例4]
柔軟シートの厚みを4mmに変更した点以外は、実施例1と同様の方法で柔軟シートを製造し、同様に樹脂シートを施工し経過観察した。
[実施例5]
柔軟シートの厚みを5mmに変更した点以外は、実施例1と同様の方法で柔軟シートを製造し、同様に樹脂シートを施工し経過観察した。
[実施例6]
柔軟シートの素材をポリウレタンシート(タスクレイシートU、田島ルーフィング株式会社製)に変更した上で、ウレタン発泡体の両面をスライスしたこと以外は、実施例4と同様の方法で柔軟シートを製造し、同様に樹脂シートを施工し経過観察した。
[実施例7]
柔軟シートをポリ塩化ビニルシート(アンダーレイシートK(3mm)、フクビ化学工業株式会社製)に変更した点以外は、実施例1と同様の方法で柔軟シートを製造し、同様に樹脂シートを施工し経過観察した。
[実施例8]
目地処理材のテープとして、テープの総厚み0.6mm、幅50mmのブチル系粘着剤が塗布されたアルミニウムテープ(製品名:スーパーブチルテ-プ(0.6mm厚)、マクセルスリオンテック株式会社)を、コンクリートの伸縮目地(伸縮目地の幅25mm)の上に貼り付け、その後ハンドローラーで圧着した。ブチルテープの継ぎ目部は、下地の隙間がないようにテープを5mm重ねて施工し、それ以外は実施例1と同様であり、経過観察した。
[比較例1]
柔軟シートを施工せずに、樹脂シートを施工した点以外は、実施例1と同様の方法で施工し経過観察した。
以上の実施例および比較例の試験結果を、表1にまとめて示す。
[床材表面の評価]
実施例および比較例で施工した樹脂シートについて、施工後1週間及び3年後に、床の凹凸や膨れの状態を目視及び触診にて観察し、耐久試験後の樹脂シートの状態に従って、次のように評価した。
◎:目視でも手で触っても段差が全く確認できないため、合格とした。
〇:目視では確認できず、手で触ると段差がわずかに確認できる程度であるため、合格とした。
△:電灯もしくは日光の下では凹凸は見られず、また暗所で光を斜めから照射すると、凹凸がわずかに見える程度であるため、合格とした。
×:凹凸が目視で確認できるため、不合格とした。
[歩行性の評価]
実施例および比較例で施工した樹脂シート上を、施工後1週間及び3年後に評価者が歩行して、その感触から次のように評価した。
◎:下地の沈みこみがなく、歩行性に問題がないため、合格とした。
〇:ごくわずかに沈み込む感覚があるが、実用上問題ないため、合格とした。
△:沈み込む感覚があるが、短期間の歩行では問題がないため、合格とした。
×:足もとが沈み込み、歩行者の疲労を招くことが予想されるため、不合格とした。
[総合評価]
実施例および比較例について、次の基準で総合評価を行った。
◎:外観および歩行性の評価がすべて◎である場合とする。
〇:外観および歩行性の評価が〇もしくは◎である場合とする。
△:外観および歩行性の評価に△があり、それ以外は〇もしくは◎である場合とする。
×:評価に1つでも不合格があり、実用上問題がある場合とする。
以上の総合評価において、△以上を合格とする。したがって実施例1~8はいずれも合格水準に達し、比較例1は不合格となった。
1 柔軟シート
2 第2接着剤
3 目地処理材
4 第1接着剤
5 目地材
6 コンクリートの構造体
7 樹脂シート
8 第3接着剤
9 壁
10 シーリング剤

Claims (3)

  1. コンクリートの構造体間の隙間を覆う目地処理構造の施工方法において、
    前記隙間を跨いで前記コンクリートの構造体に掛け渡されるように薄板状の目地処理材を配置して、前記コンクリートの構造体と、前記目地処理材との間を接着する工程と、
    前記目地処理材の上面と前記コンクリートの構造体の上面にわたって、柔軟シートを配置して、前記目地処理材および前記コンクリートの構造体と、前記柔軟シートとの間を隙間なく接着する工程と、
    前記柔軟シートの上に樹脂シートを配置して接着する工程と、を有し、
    前記柔軟シートの厚みは、1mm~5mmであり、
    前記柔軟シートは、発泡体をスライスしてなり、比較的硬いスキン層を一方の面としたときに、該スキン層に対向する他方のスライス面を下地側として使用する、
    ことを特徴とする目地処理構造の施工方法。
  2. 前記目地処理材は、厚みが0.1mm以上、0.8mm以下である帯状の薄板の鋼板から形成され、また前記コンクリートの構造体の上面に対して平らか、もしくは山折りに屈曲している、ことを特徴とする請求項1に記載の目地処理構造の施工方法。
  3. コンクリートの構造体間の隙間を覆う目地処理構造において、
    前記隙間を跨いで前記コンクリートの構造体に掛け渡されるように配置された薄板状の目地処理材と、
    前記目地処理材の上面と前記コンクリートの構造体の上面にわたって配置された柔軟シートと、
    前記柔軟シートの上に配置された樹脂シートと、を有し、
    前記目地処理材および前記コンクリートの構造体と、前記柔軟シートとの間が隙間なく接着されており、
    前記柔軟シートの厚みは、1mm~5mmであり、
    前記柔軟シートは、発泡体をスライスしてなり、比較的硬いスキン層を一方の面としたときに、該スキン層に対向する他方のスライス面を下地側とする、
    ことを特徴とする目地処理構造。
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