JP5764418B2 - 塗膜防水工法、該工法を使用して形成された塗膜防水全層及び該工法に使用される防水下層構造体 - Google Patents
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また、シ−ト防水工法は、防水層の厚みを均一にすることが容易にでき、屋上等の被防水加工体の表面積が大きかったり長方形であったりする場合の作業性に優れ、職人の習熟度に依存する部分が比較的少ない等の長所があるものの、シート間の継ぎ目の表層防水面の接合方法によっては、防水性能、風圧に対する対策、防火性能、継ぎ目への異物の入り込み等への信頼性の問題、部分補修に適さない、被防水加工体の表面との接着性、紫外線による全厚劣化等の短所があった。
そのため、まず1層目を塗布し、硬化後に2層目を塗布することにより、ピンホールが重なって、全厚通過孔の生じる可能性を最小限にする必要がある。
すなわち、かかる塗膜付シートは、ある程度の防水性能を有していたとしても、シート防水層としても、塗膜防水層としても、防水性に関しては不十分であった。
そのため、塗膜防水工法を行なう場合、塗膜付シートを用いたとしても、塗膜の2回塗り施工をしなければならなかった。
(1)防水層の上層は、施工現場で塗膜防水材を全面塗布することによって形成されるので、防水層の表層防水面が一体に形成され、継ぎ目から水が浸み込むことがなく、継ぎ目から風等により剥離することがなく、継ぎ目に異物が入り込むことがなく、総合的に防水性に優れた防水層が形成できる。
(2)一定以上の層厚を有する塗膜防水層が予め形成された防水下層構造体が存在するため、常に一定以上の層厚は確保されており、極端に薄い防水層の部分や貫通するピンホールが現出する可能性がない。
(3)下層の塗膜防水層は工場等の制御下でピンホールを発生させずに形成できる。塗膜防水工法では、貫通するピンホールの現出を防止するため、JASS8や国土交通省の公共建築工事標準仕様で防水塗料の2度塗り以上が義務付けられているが、下層として「塗膜防水層が予め形成された防水下層構造体」を使用して、施工現場で下層を形成しないため、塗膜防水材を1度しか塗布しなくてもピンホールの現出をほぼ完全に抑制でき、上記規定に適合したものとなる。
(4)塗膜防水材を2度以上にわたって塗布しないため、1度目の塗膜の乾燥に要する時間を節約でき作業の効率化が図れ、また、大規模面積での作業性に優れている。
(5)最低層厚が確保され、貫通するピンホールの現出の可能性がないため、塗膜防水材を塗布する場合の膜厚管理が容易である。
(6)ポリ塩化ビニルを用いるシート防水工法ではないため、紫外線による全厚劣化の可能性がない。
(7)ポリ塩化ビニル、TPO、ゴム、改質アスファルト等を用いるシート防水工法と異なり、2度目に塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層をシームレスに形成させるため、シート防水工法で問題となっているシートの継ぎ目部分に関する問題が起こり難い。更に、防水下層構造体同士を特定の接合方法を用いて接合することにより、継ぎ目部分に関する問題がなくなる。
(8)防水下層構造体を被防水加工体の表面に、機械的に固定、接着剤を用いて固定、又は、粘着材を用いて固定して敷設すれば、被防水加工体の表面と接着不良の問題が発生し難い。
(9)下層と上層を一体化させて塗膜防水全層を形成させるため、硬化物の強度が高く強靭であり、耐久性、寸法安定性等に優れている。
(10)防水下層構造体の基材層に、水蒸気の通気性及び/又は被防水加工体の挙動に対する緩衝性を有するものを使用すれば、通気緩衝シートを使用したのと同様の効果が得られる。
(11)本発明の塗膜防水工法を使用して形成された塗膜防水層が経年によって紫外線等で表層劣化した場合、該表層劣化した塗膜層の上から表層増塗り補修が可能であり省メンテナンスが実現できる。
(12)前記したシート防水工法と塗膜防水工法のそれぞれの長所を生かし、前記したシート防水工法と塗膜防水工法のそれぞれの短所を補うことができる。
本発明の塗膜防水工法は、まず、「塗膜防水層11aが予め形成された防水下層構造体11」を、該被防水加工体13の表面に固定して敷設し、その上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる。
防水下層構造体11が基材層11bを有するものである場合は、基材層11b側を被防水加工体13の表面に固定し、塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させる。
上記何れの場合であっても、塗膜防水層11aの層厚は、0.8mm以上が必須であり、0.9mm以上が好ましく、1.0mm以上が特に好ましい。また、上限は5mm以下で良く、4mm以下が好ましく、3.5mm以下がより好ましく、3mm以下が特に好ましい。
また、材料の如何によらず、塗膜防水層11aの材料と塗膜防水上層12の材質とは、同一又は同一系の材質であることが、該2層の密着性、防水性、耐久性、公的仕様としての認可の可能性等の点から特に好ましい。
また、汎用の塗膜防水塗料である、平場用塗膜防水材、立ち上り用塗膜防水材、目止め用塗膜防水材等に用いられているポリウレタン系材料も、防水下層構造体11の塗膜防水層11aの材料として好適に用いられる。
従って、本発明は、「塗膜防水工法」として公的に認められたものと同等と考えられる。
上記防水下層構造体11が、基材層11bの上に上記塗膜防水層11aが予め形成されたものである場合の基材層11bは、特に限定はないが、補強クロス、高分子フィルム、不織布、織布及び金属フィルムよりなる群から選択された1種又は2種以上の組み合わせを有するものが好ましい。該金属フィルムとしては、低コスト、軽量、加工し易い材料が特に好ましい。
例えば、高分子フィルム、金属フィルム等の有するブリード防止機能、塗膜防水材の通気層等への浸透を防止する機能、雨濡対策機能等と、補強クロスの有する寸法安定性や強度と、補強クロスや不織布や織布が有する通気性や緩衝性とを幾つか合わせ持つことができるため特に好ましい。
また、基材層11bには、段差、溝等をつけて、通気性や緩衝性を持たせることも好ましい。
塗膜防水層11aのみを形成させたり、基材層11bの上に塗膜防水層11aを形成させたりして防水下層構造体11を製造する方法は特に限定はないが、要すれば、水を含む無機系溶剤、有機系溶剤、それらを混合した溶剤に溶解し、又は、熱融解(熱溶融)させ、押し出し、モールド、カレンダー、どぶ付け、手塗り、スプレー塗布等の公知の方法で製造することができる。
また、その上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12を形成させる際の該塗膜防水上層12の層厚をより正確に管理できることで、塗膜防水材の不必要な使用量を制限することが可能になる。すなわち、塗膜防水上層12の平均層厚を薄く設定しても、貫通するピンホールが生じず、塗膜防水層11aと塗膜防水上層12とが重層されて形成された合計の塗膜防水全層14の最低層厚が常に確保される。その結果、貫通するピンホール発生の可能性がないことから、塗膜防水全層14の層厚も薄くできる。
「接着剤」とは、化学変化等で接着性を生じさせるものを言い、「粘着材」とは、固定後も材質としては実質的な変化がなく粘着性を有し続けるものを言う。接着剤や粘着材は、公知のものが好適に使用できる。
防水下層構造体11がロール状の場合、その幅は作業性等を勘案して決めればよく、特に限定はないが、500mm〜1500mmが好ましく、900mm〜1100mmが特に好ましい。
上記防水下層構造体11を被防水加工体13の表面に固定する方法は特に限定はないが、機械的に固定、接着剤を用いて固定、又は、粘着材を用いて固定して敷設することが好ましい。
機械的に固定する方法としては、例えば、ビス、釘、足開きアンカー、カールプラグ等の固定部材を用いて固定する方法が挙げられる。これらは、他の機械的固定方法に比べ強固に固定できる。
本発明の塗膜防水工法においては、上記した防水下層構造体11を該被防水加工体13の表面に固定して敷設した後、該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させることを特徴とする。
接合部に注入若しくは塗布された塗膜防水材又はシーラント31の上部を含み、防水下層構造体11の上面に形成された塗膜防水層11aの全面に塗膜防水上層12を形成させることが好ましい。塗膜防水層11aと塗膜防水上層12とは一体となって、塗膜防水全層14となる。
該塗膜防水材の材質から見た分類としては、特に限定はないが、ポリウレタン系、FRP系、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)系、(メタ)アクリル樹脂系、ポリマーセメント系塗膜防水材が防水性、強度、耐久性等の点から好ましい。「FRP」とは、不飽和ポリエステル樹脂、硬化剤、ガラス繊維等の補強材等を組み合わせてなる材料を言う。
塗膜防水上層12の材料がポリウレタン系材料であれば、塗膜防水層11aの材質もポリウレタン系材料とすれば、ポリウレタン系材料の2回塗りの公的仕様を満足すると考えられるために特に好ましい。
該接着プライマーとしては、特に限定はなく、公知のものが使用できる。
本発明の塗膜防水工法においては、要すれば、更なる耐久性や外観を良くするために、図1(c)に示したように、塗膜防水上層12の上に、更にトップコート層15を設けることも好ましい。トップコート層15は、公知のトップコート層形成用の塗料を塗布することで形成することができる。
トップコート層15には、着色剤、紫外線吸収剤、艶消し材、遮熱剤、断熱材等の改良剤を含有させることもできる。
トップコート層15の形成方法は特に限定はないが、前記した塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12を形成する方法と同様の方法が好ましく用いられる。
本発明の塗膜防水工法においては、従来の塗膜防水材を2度塗布する塗膜防水工法に比べて、塗膜防水層11aすなわち防水下層構造体11には縁があり、その接合部分の防水性担保が重要となる。
更に、その上から、全体に塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させることによって、塗膜防水層A、塗膜防水層B及び塗膜防水上層12が全て一体化して、防水性が極めて確実なものとなる。
また、JASS8や国土交通省の公共建築工事標準仕様等において塗膜防水工法に要求される「2度塗り」という要件(規定)をクリアすることになり、「塗膜防水工法」として公的に認められたものと同等と考えられる。
接合方法1を用いた塗膜防水工法は、上記防水下層構造体11の縁に、塗膜防水層11aが形成されていない耳部分21を幅5mm以上100mm以下で設け、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを、該耳部分21同士を重ならないように突き合わせ、その突き合わされた耳部分21の上部にジョイントテープ32を貼り付けて接合し(図2(a))、更にその上に塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入し(図2(b))、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(図2(c))上記の塗膜防水工法である。
また、防水下層構造体11が防水層11aのみからなる場合には、耳部分21を形成できないため、該接合方法1は適用できないが、防水下層構造体11が基材層11bの上に上記塗膜防水層11aが予め形成されたものである場合には、上記の接合方法1は好適に適用できる。
塗布若しくは注入される塗膜防水材又はシーラント31は、防水性能を有するものであれば特に限定はなく公知のものが使用できる。
すなわち、工場等で形成された塗膜防水層11aであっても、現場で塗布若しくは注入された接合部分であっても共に、その上に一体となった塗膜防水上層12がシームレスに形成され、すなわち2層確保され、塗膜防水工法として優れた防水性が得られる。また、シート防水工法の接合部分に関する短所が現れない。
接合方法2を用いた塗膜防水工法は、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを断面同士で突き合わせ(図3(a))、その突き合わせ部分に上からU字ないしV字に切り込みを入れ(図3(b))、該切り込み部分22に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入し(図3(c))、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(図3(e))上記の塗膜防水工法である。
すなわち、接合部分においても、防水層は2層確保され、かつ一体面として仕上げることができ、塗膜防水工法として優れたものとなる。また、シート防水工法の接合部分に関する短所が現れない。
接合方法3を用いた塗膜防水工法は、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを、1mm以上5mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させ(図4(a))、生じた並設間隔部分23に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入し(図4(b))、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(図4(d))上記の塗膜防水工法である。
すなわち、接合部分においても、防水層は2層確保され、かつ一体面として仕上げることができ、塗膜防水工法として優れた防水性が得られる。また、シート防水工法の接合部分に関する前記した短所が現れない。
接合方法4を用いた塗膜防水工法は、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを、1mm以上10mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させ(図5(a))、生じた並設間隔部分23を含み隣接する防水下層構造体11の下面に両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51を敷設して、防水下層構造体11と被防水加工体13を貼り付け(図5(a))、更に、該並設間隔部分23に露出した両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51の上面に、幅1mm以上10mm以下の遮蔽フィルムを、塗膜防水材又はシーラント31が該両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51を通過して被防水加工体13に流下しないように貼り付け(図5(a’))、該遮蔽フィルムの上の該並設間隔部分23に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入し(図5(b))、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(図5(c))上記の塗膜防水工法である。
両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51の幅は並設間隔部の幅にもよるが、並設間隔部の幅より30mm〜200mm広いものが好ましく、50mm〜150mm広いものがより好ましく、80mm〜120mm広いものが特に好ましい。
該遮蔽フィルム41の厚みは、0.005mm〜0.03mmが好ましく、0.008mm〜0.02mmがより好ましく、0.01〜0.015mmが特に好ましい。厚すぎると巻き癖が着き易く、固すぎて作業性が悪く、薄すぎると強度が不足する。
防水下層構造体11の基材層11bが高分子フィルム若しくは金属フィルムの場合、上記遮蔽フィルム41の厚みは、該基材層11bの厚みとほぼ同一であって不必要に厚くないことが、隣接する塗膜防水層11a同士を塗膜防水材又はシーラント31で接合し易い等の点から好ましい。
接合方法5を用いた塗膜防水工法は、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを、1mm以上10mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させ、生じた並設間隔部分23を含み隣接する防水下層構造体11の下面に両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51を敷設して、防水下層構造体11と被防水加工体13を貼り付け、更に、該並設間隔部分23に露出した両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51の上面に、防水下層構造体11の基材層11bのみを幅1mm〜10mmに切断した帯状基材52を貼り付け(図6(a))、該帯状基材52上の該並設間隔部分23に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入し(図6(b))、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(図6(c))上記の塗膜防水工法である。
更に、接合部に塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入する際、防水下層構造体11の基材層11bと同じ材質・厚さの帯状基材52を用いれば、該塗膜防水材又はシーラント31の流下を防ぐと同時に、接合部に塗布若しくは注入した塗膜防水材又はシーラント31の膜厚を、防水下層構造体11の塗膜防水層11aの膜厚と同じにすることができるので両者が一体化する。
また、塗膜防水上層12と一体のシームレスな塗膜防水全層14が形成された際に、塗膜防水全層14として、接合部分でも一体化した均一な膜厚を維持することができる。
防水下層構造体11の接合の際に用いられるジョイントテープ32は特に限定はなく、市販品等の公知のものも使用できるが、ジョイントテープ32の基材が塗膜防水材と同質の材料でコーティングされたものは、その上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12を形成させた時に、該塗膜防水上層12との密着性が同じ材質同士であるために良好となり特に好ましい。
両面粘着ジョイントテープ51は、ジョイントテープ32の様に、その上面の上に塗膜防水材やシーラントを塗布若しくは注入するために使用されるわけではないので、上記したような、上面が塗膜防水材と同質の材料でコーティングされたものである必要はない。ただ、下地の挙動に対する追随性向上のため、幅方向に伸縮性のあるものが特に好ましい。
防水下層構造体11の基材層11bには、フクレ等を防止するため通気性があることが好ましいが、複数枚の防水下層構造体11を使用したときにも、それらの接合部分で通気性が遮断されないようにすることが好ましい。
そのために、接続方法2ないし5の場合、上記防水下層構造体11の基材層11bの通気性が、隣接する防水下層構造体11の基材層11b間でも連続して確保できるように、図7に一例を示したように、該防水下層構造体11を、その接合面が直線上に揃わないようにずらして被防水加工体13の表面に固定して敷設することによって解決できる。
そこで、図7に示したように、短手方向の接合面をずらして、一直線上に並ばないようにすることで、通気は隣接する防水下層構造体11を経由して確保される。
熱可塑性ポリウレタンを溶融し、押出し成型で層厚1mmの塗膜防水層のみからなる防水下層構造体11を製造した。
次いで、その並設間隔部分に、シーラント(日本シーカ社製、Sikaflex 11FC)を注入した。
塗膜防水全層のうちの、該防水下層構造体の該塗膜防水層は1mm、塗膜防水上層は2mmであり、合計の層厚(塗膜防水全層の層厚)は3mmであった。
まず、東洋紡社製スパンボンド不織布3701ADと4163Nを貼り合わせた目付230g/m2、厚み1.3mmの不織布層である基材層の上に、直接、溶融した熱可塑性ポリウレタンをモールディングによって、ピンホールのない、強靭にして均一な塗膜防水層を層厚1mmとなるように形成し、防水下層構造体を得た。
この防水下層構造体は、その縁の部分(側部)には、塗膜防水層がなく基材層(不織布)のみの部分(耳部分)を30mm設けた。この防水下層構造体の幅は、1000mmであり、ロール状に巻き取られた。
すなわち、防水下層構造体を3mmの間隔で並設させ、その下に両面粘着ジョイントテープである上記両面粘着PUジョイントテープ(幅105mm)を貼り、該両面粘着ジョイントテープの上面の幅のほぼ中央部に、防水下層構造体の基材層(東洋紡社製スパンボンド不織布3701ADと4163Nを貼り合わせた目付230g/m2、厚み約1.3mmの不織布層)を3mm幅に切断した帯状基材を貼り付けた。
当面ジョイントテープの下面は被防水加工体の表面に貼り付けた。
次に、該注入されたシーラント31を含み上記防水下層構造体の塗膜防水層の上から、全面、実施例1と同様の塗膜防水材を、硬化後の層厚として、2mmとなるように塗布してポリウレタン上層をシームレスで形成させた。
実施例2において、基材層を通気緩衝シート(ユープレックス社製CMマットE)に代えた以外は、実施例2と同様に塗膜防水工法を行なって、ポリウレタン塗膜防水層を形成させた。それぞれの層厚は、実施例2と同様であった。
実施例2において、基材層を自着通気緩衝シート(ユープレックス社製CAマットSB)に代えた以外は、実施例2と同様に塗膜防水工法を行なった。接合方法も実施例2と同様に行った。
そのようにして、塗膜防水全層(ポリウレタン塗膜防水層)を形成させた。それぞれの層厚は、実施例2と同様であった。
実施例2において、最後に、トップコート(ユープレックス社製コスミックトップP)を、常法に従って0.2kg/m2で塗布した以外は、実施例2と同様に塗膜防水工法を行なって、ポリウレタン塗膜防水層を形成させた。それぞれの層厚は、実施例2と同様であった。
実施例2において、短手方向の接合方法5に代えて、接合方法2を採用した以外は実施例2と同様に行った。切り込み部分は、層厚1mmの塗膜防水層のみにV字型に形成させた。そのV字型の切り込み部分の開口部の幅は、平均で1.4mm(すなわち、1つの防水下層構造体では、切り込み部分の開口部の幅は、平均で0.7mm)とした。
実施例2において、短手方向の接合方法5に代えて、接合方法3を採用した以外は実施例2と同様に行った。並設間隔部分の幅は平均3mmとした。
被防水加工体にプライマー(東洋ゴム工業社製AD−12R)0.2kg/m2を塗布し、プライマー乾燥後、接着剤(東洋ゴム工業社製アクメボンドAD−102)0.2kg/m2を塗布した。
EPDMシート(東洋ゴム工業社製トーヨーシートエキストラTS−S1.2)を広げ、シート下面にもアクメボンドAD−102を0.2kg/m2塗布し、シートとシートのジョイント部は両面粘着ブチルテープ(東洋ゴム工業社製トーヨーGテープ)で接着させた。
シート施設後、トップコート(東洋ゴム工業社製カバーペイントHTCシルバー)を0.3kg/m2塗布した。
被防水加工体に、下地専用クシゴテを使い、接着剤(田島ルーフィング社製ビューボンド)0.3kg/m2を塗布した。塩ビ防水シート(田島ルーフィング社製、塩ビ防水シート)を仮敷きした。
塩ビシートを墨にあわせ貼付け、モップで抑え充分に圧着した。ラップ部を熱風で融着した。ラップ部にくちあきがないことを確認してから、塩ビ系シール材(田島ルーフィング社製Uシール)で端末処理を行った。
被防水加工体である下地コンクリート層をケレン処理し、脆弱部分を取り払い、プライマー塗布した後、ガラスクロス補強布を平場用2液ウレタン(ユープレックス社製コスミックプロ12)0.4kg/m2で固定し、更に、同じ平場用2液ウレタン1.7kg/m2を塗布した。
塗膜防水用ウレタンの比重は1.2のものを使用し、ウレタン塗膜防水層の合計膜厚が3.0mmとなるように施工した。
更に、翌日、2層目の硬化後、0.2kg/m2でトップコート(ユープレックス社製コスミックトップP)を塗布して仕上げた。
[貫通するピンホールの有無]
高電圧のピンポールテスターを使用して、常法に従って、全面50m2について検査した。
○:ピンホールが、全く観察されない
×:ピンホールが、観察される
接合部分の仕上がりを目視検査し、防水性と耐風圧性能を常法に従って評価した。
○:接合部分の仕上がりも綺麗で、防水性と耐風圧性能も確保されている
△:接合部分の防水性は確保されているものの、仕上がりが不均一で、耐風圧性能にも不安がある
×:接合部分に密着しきれていない部分が残っており、防水性と耐風圧性能で問題あり
塗膜防水工法にかかった全ての時間を測定した。
○:トップコート層なしの場合1日、トップコート層ありの場合2日
×:トップコート層なしの場合2日以上、トップコート層ありの場合3日以上
作業の難易度を評価した。
○:熟練工でなくても充分作業可能、単純
△:熟練工でないと作業が難しい、やや複雑
×:熟練工でないと作業不可能、複雑
また、作業時間が短かった。すなわち、補強クロスの目止めに要する時間、1層目の塗布時間、1層目の硬化時間を待つ時間が節約され、大幅に作業時間が短縮できた。
更に、熟練工でなくても充分作業可能であった。
また、塗膜防水全層に貫通するピンホールも僅かに観察された。
11a 塗膜防水層
11b 基材層
12 塗膜防水上層
13 被防水加工体
14 塗膜防水全層
15 トップコート層
21 耳部分
22 切り込み部分
23 並設間隔部分
31 塗膜防水材又はシーラント
32 ジョイントテープ
41 遮蔽フィルム
51 両面粘着クロステープ又は両面粘着ジョイントテープ
52 帯状基材
Claims (16)
- 被防水加工体の表面に対して塗膜防水加工を施す方法であって、層厚0.8mm以上5mm以下の塗膜防水層が予め形成された防水下層構造体を、該被防水加工体の表面に固定して敷設し、防水下層構造体とその隣に敷設される防水下層構造体とを断面同士で突き合わせ、その突き合わせ部分に上からU字ないしV字に切り込みを入れ、該切り込み部分に、塗膜防水材又はシーラントを塗布若しくは注入し、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラントの上をも含めて該防水下層構造体の該塗膜防水層の上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層をシームレスに形成させることを特徴とする塗膜防水工法。
- 請求項1に記載の塗膜防水工法において、塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラントの上にジョイントテープを敷設し、隣接する防水下層構造体同士の引張り強度を高めるように、該ジョイントテープの両端を隣接する防水下層構造体の塗膜防水層の表面にも貼り付けて接合して、更に、該ジョイントテープの上をも含めて該防水下層構造体の該塗膜防水層の上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層をシームレスに形成させる請求項1に記載の塗膜防水工法。
- 被防水加工体の表面に対して塗膜防水加工を施す方法であって、層厚0.8mm以上5mm以下の塗膜防水層が予め形成された防水下層構造体を、該被防水加工体の表面に固定して敷設し、防水下層構造体とその隣に敷設される防水下層構造体とを、1mm以上10mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させ、生じた並設間隔部分を含み隣接する防水下層構造体の下面に両面粘着クロステープ又は両面粘着ジョイントテープを敷設して、防水下層構造体と被防水加工体を貼り付け、更に、該並設間隔部分に露出した両面粘着クロステープ又は両面粘着ジョイントテープの上面に、幅1mm以上10mm以下の遮蔽フィルムを、塗膜防水材又はシーラントが該両面粘着クロステープ又は該両面粘着ジョイントテープを通過して被防水加工体に流下しないように貼り付け、該遮蔽フィルムの上の該並設間隔部分に、塗膜防水材又はシーラントを塗布若しくは注入し、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラントの上をも含めて該防水下層構造体の該塗膜防水層の上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層をシームレスに形成させることを特徴とする塗膜防水工法。
- 上記防水下層構造体が、基材層の上に上記塗膜防水層が予め形成されたものである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の塗膜防水工法。
- 被防水加工体の表面に対して塗膜防水加工を施す方法であって、層厚0.8mm以上5mm以下の塗膜防水層が予め形成された防水下層構造体を、該被防水加工体の表面に固定して敷設し、該防水下層構造体の縁に、塗膜防水層が形成されておらず基材層のみの部分である耳部分を幅5mm以上100mm以下で設け、防水下層構造体とその隣に敷設される防水下層構造体とを、該耳部分同士を重ならないように突き合わせ、その突き合わされた耳部分の上部にジョイントテープを貼り付けて接合し、更にその上に塗膜防水材又はシーラントを塗布若しくは注入し、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラントの上をも含めて該防水下層構造体の該塗膜防水層の上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層をシームレスに形成させることを特徴とする塗膜防水工法。
- 被防水加工体の表面に対して塗膜防水加工を施す方法であって、層厚0.8mm以上5mm以下の塗膜防水層が予め形成された防水下層構造体を、該被防水加工体の表面に固定して敷設し、防水下層構造体とその隣に敷設される防水下層構造体とを、1mm以上10mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させ、生じた並設間隔部分を含み隣接する防水下層構造体の下面に両面粘着クロステープ又は両面粘着ジョイントテープを敷設して、防水下層構造体と被防水加工体を貼り付け、更に、該並設間隔部分に露出した両面粘着クロステープ又は両面粘着ジョイントテープの上面に、防水下層構造体の基材層のみを幅1mm〜10mmに切断した帯状基材を貼り付け、該帯状基材上の該並設間隔部分に、塗膜防水材又はシーラントを塗布若しくは注入し、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラントの上をも含めて該防水下層構造体の該塗膜防水層の上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層をシームレスに形成させることを特徴とする塗膜防水工法。
- 上記基材層が、補強クロス、高分子フィルム、不織布、織布及び金属フィルムよりなる群から選択された1種又は2種以上の組み合わせを有する基材層である請求項4ないし請求項6の何れかの請求項に記載の塗膜防水工法。
- 上記基材層が、水蒸気の通気性及び/又は被防水加工体の挙動に対する緩衝性を有するものである請求項4ないし請求項7の何れかの請求項に記載の塗膜防水工法。
- 上記防水下層構造体の基材層の通気性が、隣接する防水下層構造体の基材層間でも連続して確保できるように、該防水下層構造体を、その接合面が直線上に揃わないようにずらして被防水加工体の表面に固定して敷設する請求項8に記載の塗膜防水工法。
- 上記防水下層構造体が、予め形成された上記塗膜防水層のみからなるものである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の塗膜防水工法。
- 上記防水下層構造体を上記被防水加工体の表面に、機械的に固定、接着剤を用いて固定、又は、粘着材を用いて固定して敷設する請求項1ないし請求項10の何れかの請求項に記載の塗膜防水工法。
- 上記防水下層構造体が、該上記防水下層構造体の最下層の全面若しくは一部に、粘着層又は接着層が設けられているものである請求項1ないし請求項11の何れかの請求項に記載の塗膜防水工法。
- 上記防水下層構造体を、上記被防水加工体の表面に固定して敷設し、該防水下層構造体の該塗膜防水層の上面を接着プライマーで処理した後、その上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層をシームレスに形成させる請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載の塗膜防水工法。
- 上記防水下層構造体の塗膜防水層と、該塗膜防水層の上から塗膜防水材を塗布して形成した塗膜防水上層の合計の層厚を1mm以上7mm以下にする請求項1ないし請求項13の何れかの請求項に記載の塗膜防水工法。
- 上記塗膜防水上層の上に、更にトップコート層を形成させる請求項1ないし請求項14の何れかの請求項に記載の塗膜防水工法。
- 請求項1ないし請求項15の何れかの請求項に記載の塗膜防水工法を使用して被防水加工体の上に形成された塗膜防水全層であって、防水下層構造体が有する層厚0.8mm以上5mm以下の塗膜防水層と、該塗膜防水層の上から塗膜防水材を塗布してシームレスに形成された塗膜防水上層とが重層されて形成されたものであることを特徴とする塗膜防水全層。
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