JP7405376B2 - 切削条件の決定方法 - Google Patents
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Description
すくい角を負にする目的は、難削材を加工する際に刃先の強度を増大させることや、鋳物や硬脆材料を加工する際に仕上げ面を良好にすることである。
すなわち、本開示の参考態様に係るアルミ材の切削方法は、すくい面を有する工具を用いたアルミ材の切削方法であって、前記すくい面の垂直すくい角をα、切削速度をVcとしたとき、α≧-40°とされ、Vc≧2620e^0.16αとされている。
一般的に、アルミニウム合金は、硬度が低い、被削性が良好、融点が低い、延性が大きいという特徴を有する。
なお、すくい角αは、切削面21に対して直交する面よりも切削方向の後方が正であり、前方が負である。
すなわち、図1及び図2に示すような旋削用バイト(工具10)の場合、フラットインサート(インサート12)のすくい面12aが所望のすくい角αに傾くように設計された専用のボディ11を製作しておけば、標準的なフラットインサート(カタログに掲載されているような一般に購入可能なもの)を専用に設計されたボディ11に取り付けるだけで、すくい角αが所定の角度とされた工具10が作製される。
これによって、図4に示すように、生成される切屑23を鋸歯型とすることができる。
これによって、切削抵抗の主分力の増加を抑制して、仕上げ面への影響を小さくすることができる。
ここで、刃先12cの断面形状は、必ずしも円弧である必要はなく、他の曲線、多角形による線、面取り等でもよく、これらを円弧で近似したときの半径が10μm以下となっていればよい。
一方、本実施形態のように刃先12cを鋭くする(半径を10μm以下にする)と刃先12cが欠けやすくなる。このため、すくい角αを負にすることと刃先12cを鋭くすることとは通常であれば相反する技術思想である。
しかしながら、アルミ合金のような軟質金属を脆性破壊によって切屑23を生成する本実施形態の切削方法においてはこれらの両立が可能となる。
ただし、切り取り厚さtはせん断ひずみ及びひずみ速度とは無関係なパラメータであり、本実施形態においてせん断ひずみ及びひずみ速度と関係のあるパラメータはすくい角α及び切削速度Vcである。
なお、図5において、「◎」は細かな鋸歯型の切屑23のみが生成された場合、「○」は鋸歯型の切屑23のみが生成された場合、「△」は鋸歯型の切屑23が生成された場合、「▲」は流れ型の切屑23が分断されるが鋸歯型ではない場合、「×」は鋸歯型の切屑23が生成されずに流れ型の切屑23が生成された場合を表している。
図6に示されたグラフによれば、「△」のプロットに基づいて少なくとも鋸歯型の切屑23が生成されるような閾値(1)、「○」のプロットに基づいて鋸歯型の切屑23が生成されるような閾値(2)、「◎」のプロットに基づいて細かな鋸歯型の切屑23が生成されるような閾値(3)を導くことができる。
Vc≧2620e^0.16α ・・・(1)
Vc≧4960e^0.16α ・・・(2)
Vc≧7440e^0.16α ・・・(3)
すなわち、材料の脆化だけを目的とするならマイナス側で絶対値が大きいほど優れているということになるが、他への悪影響が大きくなる。例えば、加工における摩擦角にもよるが、すくい角αが-50°の場合は、バリが生じ易く背分力も過大になり精度も劣化しやすくなる。また、すくい角αが-60°の場合は、切屑の排出が困難になる。そして、すくい角αが-70°以下の場合は、切屑を排出しないですべてがバリとなる。以上より、実用上切屑の処理のために設定できる負のすくい角は-40°程度となる。
また、試験(図5及び図6参照)に基づいて、より確実に鋸歯型の切屑23を生成し得る範囲として、-15°が設定されている。
α≧-40°の範囲(好ましくはα≧-15°の範囲)において、Vc≧2620e^0.16αとすることで、少なくとも鋸歯型の切屑23を生成することができる。また、Vc≧4960e^0.16αとすることで、鋸歯型の切屑23のみを生成することができる。更には、Vc≧7440e^0.16αとすることで、細かな鋸歯型の切屑23のみを生成することができる。これにより、切屑23が細かくなるので切屑23の処理が容易になり、生産性や自動化率の向上を図ることができる。
アルミ材の通常の切削において、切屑23は、チップブレーカ42dによってカールしながら流れ出る。この切屑23(流れ型の切屑23)は、やがて被切削材料20などの他の部分に接触する。これによって、切屑23の根元付近にはカールと逆方向の曲げモーメントが作用して亀裂23aが生じて、この亀裂23aを起点に切屑23が破断する(これにより生じた切屑23を「分断された流れ型の切屑」と呼ぶ)。
すなわち、本開示の一態様に係るアルミ材の切削方法は、すくい面(12a)を有する工具(10)を用いたアルミ材の切削方法であって、前記すくい面の垂直すくい角をα、切削速度をVcとしたとき、α≧-40°とされ、Vc≧2620e^0.16αとされている。
一方、本態様のように刃先を鋭くする(半径を10μm以下にする)と刃先が欠けやすくなる。このため、すくい角αを負にすることと刃先を鋭くすることとは通常であれば相反する技術思想である。
しかしながら、アルミ合金のような軟質金属を脆性破壊によって切屑を生成する本態様の切削方法においてはこれらの両立が可能となる。
一方、本態様のように刃先を鋭くする(半径を10μm以下にする)と刃先が欠けやすくなる。このため、すくい角αを負にすることと刃先を鋭くすることとは通常であれば相反する技術思想である。
しかしながら、切削速度を高速化することで脆性破壊によって鋸歯型の切屑を生成する場合、これらの両立が可能となる。
11 ボディ
12 インサート
12a すくい面
12b 逃げ面
12c 刃先
20 被切削材料
21 切削面
23 切屑
23a 亀裂
42 インサート
42a すくい面
42b 逃げ面
42c 刃先
42d チップブレーカ
Claims (5)
- すくい面を有する工具を用いたアルミ材の切削における切削条件の決定方法であって、
前記すくい面の垂直すくい角をα、切削速度をVc[m/min]としたとき、
5°≧α≧-40°、かつ、Vc≧2620e^0.16αとする切削条件の決定方法。 - Vc≧4960e^0.16αとする請求項1に記載の切削条件の決定方法。
- Vc≧7440e^0.16αとする請求項1に記載の切削条件の決定方法。
- α≧-15°とする請求項1から3のいずれかに記載の切削条件の決定方法。
- 前記工具は、逃げ面を有し、
前記すくい面と前記逃げ面とが交差する刃先は、半径が10μm以下とされている請求項1から4のいずれか記載の切削条件の決定方法。
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