JP7403285B2 - 二相ステンレス鋼の溶接継手及び二相ステンレス鋼の溶接方法 - Google Patents

二相ステンレス鋼の溶接継手及び二相ステンレス鋼の溶接方法 Download PDF

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Description

本発明は、二相ステンレス鋼の溶接継手及び二相ステンレス鋼の溶接方法に関する。
SUS329J3Lなどに代表される二相ステンレス鋼はCr、Ni、Mo、Nを主要元素としてフェライト相とオーステナイト相の二相組織からなり、優れた強度と耐食性を有する。また、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて少ないNi、Mo量で優れた耐食性を実現できるため合金元素を節約することができ、経済性にも優れている。以上の理由から、河川インフラ設備、化学プラント、食品製造プラント、貯水タンク、海水淡水化装置をはじめとした様々な分野に適用されている。
これら二相ステンレス鋼の溶接構造物を建造する場合の溶接方法としては、TIG溶接、プラズマ溶接またはレーザ溶接などの非消耗電極式溶接や、MIG溶接、フラックス入りワイヤを用いたガスシールドアーク溶接、被覆アーク溶接、サブマージアーク溶接などの消耗電極式溶接が適用される。これらの中でも、非消耗電極式溶接は、溶接効率では消耗電極式溶接には劣るものの、シールドガスに純Arガスを使用するため、溶接金属中の酸素量が極めて低く、靱性が優れており、品質要求の厳しい溶接構造物の建造に適している。
二相ステンレス鋼の母材では優れた耐食性を引き出すために、熱処理によってフェライト相とオーステナイト相の比率が概ね1:1となるように制御されている。しかしながら、二相ステンレス鋼の溶接施工時では、溶接金属が溶融状態から短時間で冷却される際に、溶接金属中のフェライト相分率が母材よりも高くなる。溶接金属のフェライト相分率が高くなると、Nの固溶量が多いオーステナイト相が少なくなり、フェライト相中にNが濃化してフェライト相中のN量が高くなる。しかし、フェライト相においてNの固溶量は非常に小さいため、過剰のNがCrと結合してCr窒化物を析出させる。これにより、溶接金属中にCr欠乏層が形成され、結果として溶接金属の耐食性が低下してしまう。
このような課題を解決するために、特許文献1では、母材よりもオーステナイト形成元素であるNiが3~4%程度多く含有されている溶接材料を使用して溶接することが記載されている。また、特許文献2では、シールドガスあるいはプラズマガスにArとNの混合ガスを用いてプラズマ溶接を行う方法が記載されている。
特開2017-179427号公報 特開2019-42800号公報
特許文献1または2に記載された方法によって、二相ステンレス鋼の溶接金属の内部ではフェライト相分率が適正範囲に制御されて耐食性が良好となるが、溶接金属の最表面ではフェライト相が過多となり、Cr窒化物が析出して耐食性が低下する場合があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐食性に優れた溶接金属を備え、かつ溶接金属の欠陥も少ない二相ステンレス鋼の溶接継手を提供することを課題とする。また、本発明は、耐食性に優れ、かつ欠陥が少ない溶接金属を形成可能な二相ステンレス鋼の溶接方法を提供することを課題とする。
特許文献1、2に記載された方法では、二相ステンレス鋼の溶接金属の内部のフェライト相分率を適正範囲に制御可能であるが、溶接金属の最表層では、フェライト相が過多となり、Cr窒化物が析出して耐食性が低下する場合がある。溶接材料を使用せずに溶接した場合は、溶接金属の余盛りが形成されず、ビード研削が不要になる。そうすると、フェライトが過多な表面が溶接金属の表面としてそのまま残ることになり、この溶接ままの溶接金属が使用環境に曝された場合に、腐食が起きる恐れがある。
そこで、本発明者らが種々検討した結果、溶接金属の最表面におけるフェライト相分率を低減することがCr窒化物析出を抑制して耐食性を向上する上で重要であり、そのために溶接トーチにおけるシールドガスだけでなくバックシールドガスおよびアフターシールドガスの組成を制御することが重要であると知見した。本発明はこれらの知見をもとになされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、Cr:18%以上を含有し、かつ、フェライト相とオーステナイト相の二相組織を有する二相ステンレス鋼の母材及び溶接金属よりなる溶接継手であって、
溶接ままの前記溶接金属の断面における表面長さのうちフェライト相の長さが占める比率が0.46以上0.70以下であることを特徴とする二相ステンレス鋼の溶接継手。
(2)質量%で、Cr:18%以上を含有し、かつ、フェライト相とオーステナイト相の二相組織を有する二相ステンレス鋼の母材を非消耗電極式溶接法により溶接する方法であって、
トーチシールドガス、バックシールドガス及びアフターシールドガスとして、Nを60体積%以上含み、残部がArである混合ガスを使用することを特徴とする二相ステンレス鋼の溶接方法。
本発明によれば、溶接後にビード研削を行わずとも溶接金属の最表面における耐食性に優れ、かつ溶接金属の欠陥も少ない二相ステンレス鋼の溶接継手及び二相ステンレス鋼の溶接方法を提供できる。
図1は、実施例における溶接方法を説明する模式図。 図2は、本発明の実施形態における溶接金属の断面における表面長さのうちフェライト相の長さが占める比率の測定方法を説明する模式図。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明における「%」とは、特に明記しない限り「質量%」を意味し、各相の相分率やシールドガス組成については「体積%」を意味する。
本実施形態の二相ステンレス鋼の溶接継手は、質量%で、Cr:18%以上を含有し、かつ、フェライト相とオーステナイト相の二相組織を有する二相ステンレス鋼の母材及び溶接金属よりなり、溶接ままの前記溶接金属の断面における表面長さのうちフェライト相の長さが占める比率が0.70以下の溶接継手である。
なお、本実施形態では、付き合わせ溶接によって形成された溶接継手を例にして説明するが、本発明は付き合わせ溶接継手に限定する必要はなく、重ね溶接、隅肉溶接などにより溶接された継手にも適用可能である。また、付き合わせ溶接によって形成された溶接継手としては、例えば、鋼板同士を突き合わせ溶接した溶接継手、鋼管の端部同士を突き合わせ溶接した溶接継手などを例示できる。
本実施形態の二相ステンレス鋼とは、フェライト相とオーステナイト相の二相組織を有するものであり、化学組成はCr:18%以上を含有するものである。上記のミクロ組織および化学組成を満足すれば、それ以外の合金元素は特に限定されるものではない。
また、この二相ステンレス鋼の母材の形状は、板材、管材、棒材、線材など、特に限定されるものではない。
さらに、以下に説明する二相ステンレス鋼の化学組成は、母材に限るものではなく、溶接金属においても満足することが望ましい。
以下、二相ステンレス鋼の化学組成の限定理由について説明する。
Cr:18%以上
Crは、ステンレス鋼の不働態皮膜耐食性を高める効果がある。また、本発明において規定するように非消耗電極式溶接方法におけるシールドガスの組成をN:60~100体積%、残部:Arとした場合、溶接金属中のN含有量が著しく増大し、これに起因した気孔欠陥(ブローホール、ポロシティ)が発生しやすい。Crは、フェライト相中のN固溶量を高めてNの凝固ミクロ偏析を抑制し、気孔欠陥を抑制する効果がある。これらの効果は、Cr含有量が18%未満では十分に得られないため、Crの含有量は18%以上に限定する。より好ましくは20%以上である。Cr含有量の上限は特に規定するものではないが、コストの観点から28%以下とすることが好ましい。
上記の通り、Cr以外の合金元素については特に限定しないが、本実施形態を適用できる二相ステンレス鋼としては、例えばC:0.001~0.030%、Si:1.5%以下、Mn:0.1~6.0%、P:0.04%以下、S:0.0100%以下、Ni:0.1~8.0%、Cr:18~28%、Mo:0.1~5.0%、Cu:0.1~2.0%、N:0.1~0.3%、残部がFeおよび不純物といった化学組成が挙げられる。この化学組成はあくまでも例示であり、本実施形態はこれによって限定されるものではない。この化学組成を挙げた理由は次の通りである。
C:0.001~0.030%
C含有量が高いと、Cr炭化物が析出してCr欠乏層を形成し、耐食性が低下することが懸念される。このため、C含有量は0.030%以下にすることが好ましい。より好ましくは0.020%以下であり、さらに好ましくは0.015%以下である。一方、C含有量を極端に低減することはコストアップにつながる。このため、C含有量は0.001%以上とする。
Si:0.1~1.5%
Siは、脱酸元素であり、その効果を得るためには0.1%以上含有させる必要がある。このため、Si含有量は0.1%以上が好ましい。一方、Si含有量が高くなるとCr炭窒化物の析出が促進され、耐食性が低下する。このため、Si含有量は1.5%以下とする。
Mn:0.1~6.0%
Mnは、オーステナイト形成元素であり、溶接金属および溶接熱影響部(HAZ)におけるオーステナイト相の析出を促進してフェライト相中のN量を低下させ、Cr窒化物の析出を抑制する。このためには、Mn含有量を0.1%以上にすることが好ましい。一方、Mnを過剰に含有すると耐食性が低下するため、Mn含有量を6.0%以下とする。
P:0.04%以下
Pは不純物であるが、ステンレス鋼の耐食性を低下させる元素のため、可能な限り低減することが望ましい。ただし、極端に低減させることはコストアップにつながるため、P含有量は0.04%以下とする。
S:0.0100%以下
Sは不純物であるが、Pと同様にステンレス鋼の耐食性を低下させる元素のため可能な限り低減することが望ましい。ただし、極端に低減させることはコストアップにつながるため、S含有量は0.0100%以下とする。好ましくは0.0050%以下であり、さらに好ましくは0.0020%以下である。
Ni:0.1~8.0%
Niは、オーステナイト形成元素であり、溶接金属および溶接熱影響部(HAZ)におけるオーステナイト相析出を促進してフェライト相中のN量を低下させ、Cr窒化物の析出を抑制する。このためには、Ni含有量を0.1%以上にすることが好ましい。一方、Niを過剰に含有するとコストが著しく上昇するため、Ni含有量を8.0%以下とする。
Mo:0.1~5.0%
Moは、ステンレス鋼の耐食性を高める元素であり、そのためには0.1%以上含有させる必要がある。このため、Mo含有量を0.1%以上とする。一方、Mo含有量が高くなるとσ相という金属間化合物が生成して、靭性が低下してしまう。このため、Mo含有量は5.0%以下とする。
Cu:0.1~2.0%
Cuは、オーステナイト形成元素であり、溶接金属および溶接熱影響部(HAZ)におけるオーステナイト相の析出を促進してフェライト相中のN量を低下させ、Cr窒化物の析出を抑制する。このためには、Cu含有量を0.1%以上にすることが好ましい。一方、Cu含有量が過剰になると、母材の熱間加工性が低下するので、Cuの上限は2.0%以下とする。
N:0.1~0.3%
Nは、耐食性を向上する元素である。また、拡散速度が大きいオーステナイト形成元素であるため、溶接における短時間の冷却過程においてもオーステナイト相の析出を著しく促進する。N含有量が0.1%未満ではこれらの効果は十分に得られないため、0.1%以上に限定する。より好ましくは0.15%以上である。一方、Nを過度に含有させると製造性が著しく低下してコストが増大してしまうため、N含有量の上限を0.3%以下とする。
また、熱間加工性や耐食性、加工性などを改善するために、必要に応じてAl:0.10%以下、Ca:0.0050%以下、Mg:0.0050%以下、REM:0.10%以下、B:0.0050%以下、V:0.5%以下、Nb:0.5%以下、Ta:0.5%以下、W:4.0%以下、Sn:1.0%以下、Co:1.0%以下などを含有させることができる。
次に、溶接金属の最表面におけるフェライト相分率の限定理由について述べる。なお、溶接金属の最表面とは、溶接継手の表面側における溶接金属の表面をいう。溶接金属の最表面における耐食性を考える上では腐食環境と接する部分の組織の耐食性が良好であればよいので、深さ方向の領域は特に規定しない。腐食環境と接する部分の深さ方向の範囲は溶接条件や鋼の成分によって変動する可能性があるので、本発明では、最表面におけるフェライト相の長さの比率で評価することとする。
溶接金属の最表面におけるフェライト相分率が高くなると、N固溶量の大きいオーステナイト相が少なくなって、フェライト相中にNが過飽和に存在することになり、これがCr窒化物として析出して耐食性が低下してしまう。このため、溶接金属の最表面におけるフェライト相分率を「溶接ままの溶接部断面において、溶接金属の表面長さ(表ビード幅)に占めるフェライト相の長さの比率」と定義し、これが0.70以下となるように制御する必要がある。一方、下限については特に限定されるものではない。
溶接金属の最表面におけるフェライト相分率の測定方法は次の通りである。まず、溶接方向に垂直な断面において、溶接金属のミクロ組織を10%シュウ酸電解エッチングにより現出させる。次いで、溶接金属の最表面の長さLと、溶接金属の最表面におけるフェライト相の合計長さLとを測定する。そして、溶接金属最表面のフェライト相分率をL/Lと定義する。
図2には、溶接金属の溶接方向に垂直な断面の模式図を示す。溶接金属には、フェライト相とオーステナイト相とが混在している。そして、溶接金属の最表面においても、図2に示すように、フェライト相とオーステナイト相とが混在している。このような場合は、フェライト相の最表面に沿う長さLF,1、LF,2、…、LF,i-1、LF,i、をそれぞれ計測し、その合計長さΣLF,n(ただし、n=1~i)をフェライト相の合計長さLとする。また、当該断面における溶接金属の最表面に沿う長さをLとする。
本実施形態において、溶接金属の耐食性は、孔食電位により評価する。溶接後、表ビード側の表面に対して硝フッ酸酸洗剤による溶接スケール除去を行う。試験面は溶接金属、熱影響部、母材を含むように5mm×20mmの領域を選択し、50℃の25%硝酸に浸漬して不働態化処理を行った後、600番エメリー研磨紙を用いて乾式研磨する。なお、研磨紙による研磨は乾式がよい。湿式研磨では、溶接金属の表面を過剰に研磨してしまい、新たな金属面が現出されることになり、溶接ままの溶接金属の耐食性の評価ができなくなる。上記の領域外は樹脂によって被覆する。Ar脱気した30℃の1M NaCl水溶液中にて孔食電位を測定し、電流密度が100μA/cmに達した電位を孔食電位と定義する。繰り返し数は4とし、この平均値を最終的な溶接金属最表面の孔食電位とする。この後、各試験片の表ビード側を0.5mm研磨して上記と同様の方法により孔食電位を測定し、溶接金属内部の孔食電位とする。そして、溶接金属最表面と溶接金属内部の孔食電位の差が0.05V未満である場合、溶接金属最表面の耐食性は良好とする。
また、本実施形態において、溶接金属の欠陥は、X線透過試験により評価する。溶接金属における気泡欠陥の有無をX線透過試験により分析し、直径0.5mm以上の気泡欠陥が検出されない場合、気泡欠陥が少ないとする。
次に、本実施形態の二相ステンレス鋼の溶接方法について説明する。
本実施形態の二相ステンレス鋼の溶接方法では、非消耗電極式溶接方法を用いる。非消耗電極式溶接方法としては、TIG溶接、プラズマアーク溶接のいずれを用いてもよい。また、溶接材料の使用有無については特に限定されない。入熱量は、板厚や溶接材料の使用有無によって変化するため特に限定されるものではないが、例えば1000~30000J/cmの入熱範囲において使用できる。なお、入熱量は60×電流(A)×電圧(V)÷溶接速度(cm/min)によって規定される。
本実施形態の溶接方法において、開先形状は特に限定する必要はない。
本実施形態の溶接方法では、トーチから噴射するシールドガス(以下、トーチシールドガスという場合がある)として、Nを60~100体積%含有し、残部がArの混合ガスを用いる必要である。すなわち、N及びArの混合ガスか、またはNガスでもよい。また、本実施形態では、このガスを、バックシールドガス及びアフターシールドガスとして用いる必要がある。
これらのシールドガス中のN含有率が増加すると、アーク中でNが解離して形成された単原子窒素(N)が溶融金属へ吸収されるため、溶接金属のN量が著しく高くなる。加えて、雰囲気中のN分圧が高まるため、凝固後の冷却過程において溶接金属最表面からの固相内拡散によるNの放出が抑制される。N分圧が増加するにつれて溶接金属最表面からのN放出が抑制される。溶接金属の最表面におけるフェライト相分率を0.70以下にするためには、N:60体積%以上、残部:Arとすることが必要である。N含有率の上限は特に限定されないが、コストの観点からN:100%とすることが好ましい。なお、こららのシールドガスが100%Nの場合は、残部Arは含有されない。
また、溶接部が高温であるほど、Nの固相内拡散によるNの放出が起きやすくなる。そのため、Nの拡散・放出が起きやすい温度範囲にある溶接金属に対して、バックシールドガス及びアフターシールドガスを吹き付けることが好ましい。具体的には、バックシールドガス及びアフターシールドガスを吹き付ける範囲は、温度が1000℃以上となる溶接金属を含む領域とすることが好ましい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
表1に示す2種類の化学成分を有する二相ステンレス鋼を実験室にて溶製し、熱間鍛造、熱間圧延、冷間圧延、固溶化熱処理を経て、板厚2mm、幅50mm、長さ150mmの溶接用鋼板を作製した。
溶接用鋼板の幅中央にて、溶接材料を使用せずにTIG溶接法によりビードオンプレート溶接を行った。溶接トーチの進行方向後方には、図1に示すような長さ140mm、幅40mm、高さ40mmのアフターシールドボックスを設置し、トーチシールドガス、バックシールドガス、アフターシールドガスにおけるNとArの含有率を様々に変化させた。ガス流量は、トーチシールドガス:10L/min、バックシールドガス:15L/min、アフターシールドガス:30L/minとした。各シールドガスの組成に応じて適正溶接条件は変化させた。すなわち、アーク長を1mm一定として、裏ビード幅が4~6mm程度となるように溶接電流、溶接速度を調整した。なお、バックシールドガス及びアフターシールドガスの吹き付け範囲は、温度が1000℃以上となる溶接金属を含む領域とした。
[溶接金属の最表面におけるフェライト相分率測定]
溶接方向に垂直な断面において、溶接金属のミクロ組織を10%シュウ酸電解エッチングにより現出した。そして、図2に示すように、表ビード側の溶接金属最表面の長さLとフェライト相の合計長さLを測定し、溶接金属最表面のフェライト相分率をL/Lと定義した。
[溶接金属最表面における孔食電位測定試験]
溶接金属の耐食性は、孔食電位により評価した。溶接後、表ビード側の表面に対して硝フッ酸酸洗剤による溶接スケール除去を行った。試験面は溶接金属、熱影響部、母材を含むように5mm×20mmの領域を選択し、50℃の25%硝酸に浸漬して不働態化処理を行った後、600番エメリー研磨紙を用いて乾式研磨した。上記の領域外は樹脂によって被覆した。Ar脱気した30℃の1M NaCl水溶液中にて孔食電位を測定し、電流密度が100μA/cmに達した電位を孔食電位と定義した。繰り返し数は4とし、この平均値を最終的な溶接金属最表面の孔食電位とした。この後、各試験片の表ビード側を0.5mm研磨して上記と同様の方法により孔食電位を測定し、溶接金属内部の孔食電位とした。溶接金属最表面と溶接金属内部の孔食電位の差が0.05V未満である場合、溶接金属最表面の耐食性は良好と判断した。
[溶接金属の気泡欠陥検査試験]
溶接金属における気泡欠陥の有無をX線透過試験により分析した。直径0.5mm以上の気泡欠陥が検出されない場合、気泡欠陥が生じていないと判断した。
表2に、トーチシールドガス、バックシールドガス及びアフターシールドガスにおけるNの含有率(残部:Ar)と各試験の結果を示す。
記号1~3の発明例では、トーチシールドガス、バックシールドガス、アフターシールドガスの組成がN:60体積%以上、残部:Arを満たしているため、溶接金属最表面のフェライト相分率が0.70以下となっており、最表面の孔食電位が良好となった。なお、記号1の試験例は参考例である。
一方、記号4~8の比較例では、トーチシールドガス、バックシールドガス、アフターシールドガスのいずれかの組成がN:60体積%以上、残部:Arを満たしていないため、溶接金属最表面のフェライト相分率が0.70超となり、Cr窒化物が析出して、最表面の孔食電位が内部に比べて低くなった。
また、記号9の比較例では、鋼板中のCr量が18%未満であるため、溶接金属において気泡欠陥が発生した。
以上、本発明によれば、溶接後にビード研削を行わずとも溶接金属の最表面における耐食性に優れた二相ステンレス鋼溶接継手、溶接方法、製造方法を提供できる。
Figure 0007403285000001
Figure 0007403285000002

Claims (2)

  1. 質量%で、Cr:18%以上を含有し、かつ、フェライト相とオーステナイト相の二相組織を有する二相ステンレス鋼の母材及び溶接金属よりなる溶接継手であって、
    溶接ままの前記溶接金属の断面における表面長さのうちフェライト相の長さが占める比率が0.46以上0.70以下であることを特徴とする二相ステンレス鋼の溶接継手。
  2. 質量%で、Cr:18%以上を含有し、かつ、フェライト相とオーステナイト相の二相組織を有する二相ステンレス鋼の母材を非消耗電極式溶接法により溶接する方法であって、
    トーチシールドガス、バックシールドガス及びアフターシールドガスとして、Nを60体積%以上含み、残部がArである混合ガスを使用することを特徴とする二相ステンレス鋼の溶接方法。
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