JP7400558B2 - 鉱石試料の分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、蛍光X線分析(X-ray fluorescence analysis;XRF)装置を用いて、原料鉱石からサンプリングされた鉱石試料における分析対象元素の濃度を分析する方法に関する。
蛍光X線分析法は原料鉱石からサンプリングされた鉱石試料に1次X線を照射し、鉱石試料に含まれる分析対象元素から二次的に発生する二次X線(本発明において、「二次X線」とは、分析対象元素から二次的に発生する「蛍光X線」のことを意味している。)を用いて、当該分析対象元素の定性・定量分析を行う分析法である。当該蛍光X線分析法は、湿式分析法や誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP分析)法等と比較すると、短時間で分析結果を得ることが可能である。この為、分析コストの削減および分析結果の迅速な工程へのフィードバックを目的として、各種の工程の品質管理法として広く利用されている。
尚、本発明において分析対象である鉱石試料とは、例えば、一の鉱石採掘場、所定鉱石の一の鉱脈、等に存在する原料鉱石からサンプリングされた鉱石試料の意味である。従って、当該鉱石試料が、出来るだけ互いに離れた範囲からサンプリングされた場合であっても、分析対象元素の濃度は当該鉱石試料間にて差異があるものの、当該鉱石試料のマトリックス部分の元素組成は当該鉱石試料間において実質的に同一と考えられるものである。
特許第4629158号公報 特開平10-82749号公報
中井泉、「蛍光X線の分析実際 第2版」、朝倉書店、2016年7月10日、第1刷 新井智也他、「けい光X線分析の手引」、株式会社リガク、1982年9月、初版
蛍光X線分析法により、例えば原料鉱石からサンプリングされた鉱石試料に含まれる分析対象元素の定量分析を行う際は、一般的に、前処理として当該鉱石試料の乾燥、粉砕、そして当該乾燥および粉砕後のプレスやガラスビードの作製といった操作が実施される。これは、分析の正確さや精度を担保する上で重要な操作であると考えられている為である(非特許文献1参照)。
本発明者らの検討によると、当該前処理操作の中でも乾燥に費やす時間は長く、数時間から半日程度を要し律速段階となる。一方、工程の操業管理における鉱石試料分析においては、一般的に分析試料数が多く、且つ試料を迅速に分析することが重要である。この結果、本発明者らは、蛍光X線分析操作においても、より迅速な測定が求められることに想到した。
一方、試料を乾燥することなく、水分を含んだままの状態で測定する場合は、分析対象元素の二次X線強度の低下などが起こる。この結果、前記前処理を施した試料で作成した検量線を用いて測定しても正しい分析値を得ることが困難である。そこで、変動する成分に応じて強度が変わる散乱強度補正が一般に行われる(特許文献1、2参照)。
また、変動する成分として有機物を多く含む汚泥分析等においては、有機物の除去は水分のように容易ではない。このような場合の補正方法が非特許文献1、2に記載されている。
本発明者らは、上述した特許文献1、2および非特許文献1、2に記載の補正手段を、分析対象試料である鉱石試料に適用出来るのではないかと考えた。
しかしながら、本発明者らは、鉱石試料のうちでも塊状であったり、粘土状であったりして流動性が悪い試料については、分析値の誤差が大きくなるという課題も知見した。
本発明者らは上述の課題を解決する為、研究を行った。その結果、鉱石試料が塊状であったり、粘土状であったりして流動性が悪い試料である場合、当該流動性が悪い試料を蛍光X線分析装置の試料測定容器に充填しても密に充填することが出来ず、当該試料測定容器壁との間に空隙が生じる為、1次X線の照射を受ける為の試料の平滑な測定面を得ることが困難となっていることを知見した。そして、当該1次X線の照射を受ける為の試料の平滑な測定面を得ることが困難であるという事態が、上述した分析値の誤差が大きくなるという課題の原因であることに想到した。
本発明者らは、分析操作の迅速性や簡便性を損なうことなく、1次X線の照射を受ける為の試料の平滑な測定面を得る為の手段について研究を行った。そして、鉱石試料に適切な前処理を施し、当該試料の流動性を高めた後に当該試料を測定容器内へ充填することで、測定容器内への密な充填を実現し、1次X線の照射を受ける為の試料の平滑な測定面を得ることが出来るという着想を得た。
当該着想に基づき本発明者らは、測定容器内へ試料を充填する前の段階において、当該鉱石試料を乾燥するか、または、適量の純水を添加し混合することによって、当該試料の流動性を高めた後、当該試料を測定容器内に充填することで、測定容器内への密な充填を実現し、1次X線の照射を受ける為の試料の平滑な測定面を得ることが出来た。
しかしながら、上述したように鉱石試料を乾燥するのは長時間を要する。他方、鉱石試料へ純水を添加し混合することによって、当該試料より散乱X線が発生し、鉱石試料の二次X線強度の低下などが起こる。この結果、例えば、当該前処理を施した試料で作成した検量線を用いて測定を行ったとしても、正しい分析値を得ることが出来ないことが懸念された。
本発明は、上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、水分を含む鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を、蛍光X線分析法を用いて迅速、簡便に分析することが出来る分析方法、および、当該分析方法を用いて、塊状や粘土状である鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を、蛍光X線分析法を用いて迅速、簡便に分析することが出来る分析方法を提供することである。
ここで、本発明者らはさらに研究を行い、原料鉱石の複数個所から鉱石試料をサンプリングして一次鉱石試料を得、当該一次鉱石試料を分割して二次鉱石試料を調製し、当該二次鉱石試料から0質量%を含む所定の水分率を有する三次鉱石試料を調製し、当該三次鉱石試料のそれぞれへ一次X線を照射し、当該それぞれの三次鉱石試料から発生する前記分析対象元素の二次X線強度と、コンプトン散乱X線強度とを測定した。そして、同一の前記一次鉱石試料に由来する前記複数の各三次鉱石試料において、分析対象元素の二次X線強度の値をコンプトン散乱X線強度の値で除した値を補正X線強度と定義した。すると、各三次鉱石試料の水分率と補正X線強度との間には、1次式にて表すことの出来る関係があるとの知見を得た。
当該知見より、上述した所定量の水分が添加された鉱石試料において補正X線強度を算出する一方、コンプトン散乱X線強度の値から当該鉱石試料の水分量を求め、得られた補正X線強度の値と水分量の値とから、水分率0%における補正X線強度を算出出来ることに想到した。
そして、三次鉱石試料における、分析対象元素の濃度と補正X線強度の値との関係を求めておけば、所定量の水分が添加されて平滑な試料面を有する鉱石試料によって分析対象元素の濃度を求めることが出来ることに想到したものである。
即ち、上述の課題を解決する第1の発明は、
鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を定量する分析方法であって、
原料鉱石よりサンプリングされた第一の鉱石試料から、水分率0質量%を含む既知量の水分率を有する複数の鉱石試料を調製し、調製された複数の鉱石試料のそれぞれへ一次X線を照射し、発生する分析対象元素の二次X線強度と、コンプトン散乱X線強度とを測定し、
水分率とコンプトン散乱X線強度との関係を示す第一の直線回帰式と、
水分率と、分析対象元素の二次X線強度をコンプトン散乱X線強度で除して得られた補正X線強度との関係を示す第二の直線回帰式とを求め、第二の直線回帰式を外挿して補正X線強度の値が0となる点を求めておき、
原料鉱石より新規にサンプリングされた第二の鉱石試料に対して一次X線を照射し、第二の鉱石試料から発生する分析対象元素の二次X線強度と、コンプトン散乱X線強度とを測定し、第二の鉱石試料のコンプトン散乱X線強度と第一の直線回帰式とから第二の鉱石試料の水分率を求め、第二の鉱石試料の分析対象元素の二次X線強度をコンプトン散乱X線強度で除して第二の鉱石試料の補正X線強度を求め、
前記第二の直線回帰式において補正X線強度の値が0となる点と、第二の鉱石試料における水分率の値と補正X線強度の値とを示す点とを結ぶ第三の1次式を求め、
第三の1次式を外挿して、第二の鉱石試料の水分率の値が0質量%となる点における補正X線強度を、第二の鉱石試料の水分率0質量%のときの補正X線強度とし、予め求めておいた鉱石試料における分析対象元素の濃度と、水分率0質量%のときの補正X線強度との関係から、第二の鉱石試料における分析対象元素の濃度を定量することを特徴とする鉱石試料の分析方法である。
第2の発明は、
原料鉱石の複数個所から、前記第一の鉱石試料として鉱石試料をサンプリングし、サンプリングされた複数の第一の鉱石試料のそれぞれにおいて、発生する分析対象元素の二次X線強度とコンプトン散乱X線強度とを測定して第二の直線回帰式を求め、複数の第二の直線回帰式において補正X線強度の値が0となる点の平均値を求めることを特徴とする第1の発明に記載の鉱石試料の分析方法である。
第3の発明は、
前記第一および/または第二の鉱石試料の形態が塊状であって、1次X線の照射を受ける平滑な測定面を得ることが困難であるとき、
前記第一および/または第二の鉱鉱石試料へ純水を添加して混合することで流動性を付与し、平滑な測定面を得た後、第1または第2の発明に記載の鉱石試料の分析方法を適用し、分析対象元素の濃度を定量することを特徴とする鉱石試料の分析方法である。
第4の発明は、
前記第一および/または第二の鉱石試料の形態が粘土状であって、1次X線の照射を受ける平滑な測定面を得ることが困難であるとき、
前記第一および/または第二の鉱石試料へ純水を添加して混合することで流動性を付与し、平滑な測定面を得た後、第1または第2の発明に記載の鉱石試料の分析方法を適用し、分析対象元素の濃度を定量することを特徴とする鉱石試料の分析方法である。
第5の発明は、
前記第一および/または第二の鉱石試料への純水添加量の総量が、前記鉱石試料の50質量%以下であることを特徴とする第3または第4の発明に記載の鉱石試料の分析方法である。
本発明によれば、水分を含む鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を、蛍光X線分析法を用いて迅速、簡便に分析することが出来た。そして、当該分析方法を用いて、塊状や粘土状である鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を、蛍光X線分析法を用いて迅速、簡便に分析することが出来た。
本発明の一実施の形態に係る蛍光X線分析用試料調製方法における試料調製プロセスの概略を示す工程図である。 塊状を有する鉱石試料の外観の一例である。 図2に示す鉱石試料を測定容器における測定面側から見た外観の一例である。 図2に示す鉱石試料へ流動性を付与した後の外観の一例である。 図4に示す鉱石試料を測定容器における測定面側から見た外観の一例である。 鉱石試料の水分率をX軸にとり、当該鉱石試料に含有される分析対象元素の蛍光X線強度をY軸にとって、両者の関係を示したグラフである。 鉱石試料の水分率をX軸にとり、当該鉱石試料からのコンプトン散乱X線強度をY軸にとって、両者の関係を示したグラフである。 鉱石試料の水分率をX軸にとり、当該鉱石試料からの補正X線強度の値をY軸にとって、両者の関係を示したグラフである。
本発明を実施するための形態について、まず、水分を含む鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を、蛍光X線分析法を用いて迅速、簡便に分析することが出来る分析方法について「1.鉱石試料に含有される分析対象元素の定量方法」にて説明する。
そして、当該分析方法を用いて、塊状や粘土状である鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を、蛍光X線分析法を用いて迅速、簡便に分析することが出来る分析方法について「2.鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を分析する方法」にて説明する。
1.鉱石試料に含有される分析対象元素の定量方法
本発明に係る鉱石試料に含有される分析対象元素の定量方法について、(1)原料鉱石から鉱石試料をサンプリングする工程、(2)所定量の水分率を有する鉱石試料を調製する工程、(3)分析対象である元素の濃度と分析対象元素から発生する補正X線強度との関係を求める工程、の順に説明する。
(1)原料鉱石から鉱石試料をサンプリングする工程
原料鉱石において、鉱石試料のサンプリングを行う点数について特に制限はないが、複数であることが好ましく、例えば4点であることが好ましい。複数点数のサンプリングを行う際は、出来るだけ互いに離れた範囲から鉱石試料のサンプリングを実施する(本発明において「第一の鉱物試料」と記載する場合がある。)。原料鉱石からサンプリングされた当該第一の鉱石試料を本発明では、一次鉱石試料とする。例えば、第一の鉱石試料の一次鉱石試料として4点のサンプリングを実施するのであれば、原料鉱石の東、西、南、北の各地点から、一次鉱石試料A、B、C、Dを採取することが考えられる(尚、サンプリング数は、適宜、設定可能である)。
一方、一次鉱石試料A、B、C、Dを採取した鉱石の領域から、適時、新規の一次鉱石試料E、F、G・・・(本発明において「第二の鉱物試料」と記載する場合がある。)が採取される。
当該第一および第二の鉱物試料における一次鉱石試料A、B、C、D、E、F、G・・・は概ね類似の元素組成を有するが、定量分析の対象となる分析対象元素においては、それぞれ異なった濃度を有していると考えられる。
(2)所定量の水分率を有する鉱石試料を調製する工程
前記第一の鉱物試料における一次鉱石試料A、B、C、Dを乾燥させ、水分率を0質量%とする。そして、水分率0質量%となった一次鉱石試料A、B、C、Dのそれぞれを、好ましくは3個以上に分割して二次鉱石試料を得る。
尚、この一次鉱石試料A、B、C、Dを乾燥させ、水分率を0質量%とする操作は、長時間を要する操作ではある。しかし後述する第一および第二の直線回帰式を求めた後の、鉱石試料E、F、G・・・においては、当該乾燥操作は不要となる。
次に、前記所定個に分割した二次鉱石試料のそれぞれへ、純水を添加しない、または、所定量の純水を添加して、水分率0質量%を含む所定の水分率を有する三次鉱石試料を調製した。
具体的には、例えば上述した分割した二次鉱石試料から、水分率0質量%である三次鉱石試料Awet0%、Bwet0%、Cwet0%、Dwet0%、から、例えば、水分率50質量%である三次鉱石試料Awet50%、Bwet50%、Cwet50%、Dwet50%までの範囲で、複数段階(例えば8段階)の水分率を有する三次鉱石試料を調製した。
(3)分析対象である元素の濃度と分析対象元素から発生する補正X線強度との関係を求める工程
ここで、水分率0質量%の第一の鉱物試料における三次鉱石試料Awet0%~Dwet0%に含有される分析対象元素の濃度を、所定の分析方法によって定量する。具体的には、ICP分析、湿式化学分析、蛍光X線分析等が考えられる。
次に、蛍光X線分析装置を用いて、水分率0質量%である三次鉱石試料Awet0%、Bwet0%、Cwet0%、Dwet0%、から、水分率50質量%である三次鉱石試料Awet50%、Bwet50%、Cwet50%、Dwet50%の範囲で、8段階の水分率を有する三次鉱石試料のそれぞれに一次X線を照射し、それぞれの三次鉱石試料に含有される分析対象元素から発生する二次(蛍光)X線強度と、それぞれの三次鉱石試料から発生するコンプトン散乱X線強度とを測定した。
そして、一次鉱石試料A~Dより導かれた4種の第一の直線回帰式は、実質的に同一である第一の直線回帰式となる。これは、コンプトン散乱X線強度が一次鉱石試料の水分率に起因すること、および、一次鉱石試料A~Dのマトリックス部分の元素組成は実質的に同一あることによると考えられる。この第一の直線回帰式における実質的な同一性は、この後に採取される一次鉱石試料Eや、それ以降の一次鉱石試料F、G・・・においても同様であると考えられる。
従って、一次鉱石試料E以降の一次鉱石試料においては、コンプトン散乱X線強度の値と第一の直線回帰式とから、当該一次鉱石試料の水分率を算出することが出来る。
そして、同一の一次鉱石試料に由来する前記複数の三次鉱石試料、即ち、一次鉱石試料Aに由来する三次鉱石試料Awet0%~Awet50%、一次鉱石試料Bに由来する三次鉱石試料Bwet0%~Bwet50%、一次鉱石試料Cに由来する三次鉱石試料Cwet0%~Cwet50%、一次鉱石試料Dに由来する三次鉱石試料Dwet0%~Dwet50%の各試料に係る前記二次X線強度の値を、コンプトン散乱X線強度の値で除することにより、各試料に係る補正X線強度を算出した。その結果、各試料に係る補正X線強度と水分率との関係を見出した。
即ち、第一の鉱物試料における一次鉱石試料A、B、C、Dからの、二次X線強度とコンプトン散乱X線強度とを用いて、これらの一次鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を算出出来る直線回帰式を導出することが出来た。そして、一次鉱石試料A、B、C、Dが採取された領域から、一次鉱石試料Eに続いて、適時、新規に採取される第二の鉱物試料における一次鉱石試料F、G・・・、に対しても当該分析対象元素の濃度を算出する直線回帰式を適用することで、これらの第二の鉱物試料における一次鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を容易に算出することが出来た。
以下、当該鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を容易に算出する方法について、〈1〉鉱石試料の水分率と補正X線強度との関係、〈2〉鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度の算出、の順に詳細に説明する。
〈1〉鉱石試料の水分率と補正X線強度との関係
本発明者らは、第一の鉱物試料における三次鉱石試料に含有される分析対象元素の二次(蛍光)X線強度の値をコンプトン散乱X線強度の値で除した値を補正X線強度と定義した。すると、各三次鉱石試料の水分率と補正X線強度との間には、直線回帰式(本発明において「第二の直線回帰式」と記載する場合がある。)にて近似出来る関係があるとの知見を得た。そして当該知見より、上述した所定量の水分が添加された第一の鉱石試料において補正X線強度を算出する一方、コンプトン散乱X線強度の値から当該鉱石試料の水分量を求め、得られた補正X線強度の値と水分量の値とから、水分率0%における補正X線強度を算出出来ることに想到した。
尚、第二の直線回帰式は、例えば最小二乗法を用いて求めることが出来る。以下で説明する第一の直線回帰式も同様である。
以下、第一の鉱石試料の水分率と補正X線強度との関係について説明する。
図6は、第一の鉱石試料Aの水分率をX軸にとり、当該鉱石試料Aに含有される分析対象元素の蛍光X線強度をY軸にとって、両者の関係を示したグラフである。
図6より、第一の鉱石試料Aに含有される分析対象元素の蛍光X線強度は、当該鉱石試料Aの水分率が高くなると、低下する傾向があることが判明した。
尚、鉱石試料Aの性状は、水分率0~20質量%において粉末状、30質量%において塊状、40~50質量%においてスラリー状であった。そして、○で囲った水分率30質量%の試料は、水分による蛍光X線強度低下に加えて、試料が塊状になることによって、測定面が疎になり、X線照射面積が小さくなったことによる、蛍光X線強度低下の結果であると考えられる。
図7は、第一の鉱石試料Aの水分率をX軸にとり、当該鉱石試料Aからのコンプトン散乱X線強度をY軸にとって、両者の関係を示したグラフである。
図7より、第一の鉱石試料Aに含有される分析対象元素からのコンプトン散乱X線強度は、当該鉱石試料の水分率が高くなると、上昇する傾向があり、各三次鉱石試料の水分率とコンプトン散乱X線強度との間には、直線回帰式(本発明において「第一の直線回帰式」と記載する場合がある。)にて近似出来る関係があるとの知見を得た。
これは、コンプトン散乱X線強度が、X線の質量吸収係数が小さい物質において大きくなることに起因していると考えられ、図7の結果は、鉱石試料の水分率の増加が反映した結果だと考えられる。
また、○で囲った鉱物試料A(水分率30質量%)は、図6においても説明したように、水分による蛍光X線強度低下に加えて、試料が塊状になることによって、測定面が疎になり、X線照射面積が小さくなったことによる、コンプトン散乱X線強度低下の結果であると考えられる。そこで、塊状となった鉱物試料A(水分率30質量%)のデータは用いずに、第一の直線回帰式を求めた。
そして、一次鉱石試料A~Dより導かれた4種の第一の直線回帰式は、実質的に同一である第一の直線回帰式となる。これは、コンプトン散乱X線強度が一次鉱石試料の水分率に起因すること、および、一次鉱石試料A~Dのマトリックス部分の元素組成は実質的に同一あることによると考えられる。この第一の直線回帰式における実質的な同一性は、この後に採取される一次鉱石試料Eや、それ以降の一次鉱石試料F、G・・・においても同様であると考えられる。
従って、一次鉱石試料E以降の一次鉱石試料においては、コンプトン散乱X線強度の値と第一の直線回帰式とから、当該一次鉱石試料の水分率を算出することが出来る。
図8は、第一の鉱石試料Aの水分率をX軸にとり、当該鉱石試料Aに含有される分析対象元素の蛍光X線強度をコンプトン散乱X線強度で除した補正X線強度の値をY軸にとって、両者の関係を示したグラフである。
第一の鉱石試料Aの水分率の値と補正X線強度の値とは、第二の直線回帰式で表せる関係を有していることが判明した。
但し、○で囲った鉱物試料A(水分率30質量%)は、他の水分率を有する試料に比べて若干関係の近似性が劣ることも判明した。これは、図6、7においても説明したように、水分による蛍光X線強度低下に加えて、試料が塊状になることによって、測定面が疎になって平滑でなくなり、X線照射面積が小さくなったことによると考えられる。そこで、塊状となった鉱物試料A(水分率30質量%)のデータは用いずに、第二の直線回帰式を求めた。
〈2〉鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度の算出
上述した第一の鉱石試料Aの水分率と当該鉱石試料の補正X線強度との間における、第二の直線回帰式で表せる関係は、第一の鉱石試料B~Dにおいても確認出来た。そこで、塊状となった鉱物試料B~D(水分率30質量%)のデータは用いずに、第二の直線回帰式を求めた。
当該知見より、所定量の水分率を有する第一の鉱石試料A~Dにおいて、当該水分率の値と補正X線強度との値へ、鉱石試料A~Dの各々の試料に係る第二の直線回帰式を適用すれば、水分率0%における補正後強度を計算することが出来ることに想到した。
本発明者らは、第一の鉱石試料A~D各々の試料に係る第二の直線回帰式を検討したところ、これらの直線回帰式を外挿して補正X線強度の値が0になる点(X切片)において、水分率の値がほぼ同一であることを知見した。
そして、当該知見より、第一の鉱石試料A~Dが存在する領域から採取された、第二の鉱石試料E、F、G・・・の水分率と補正X線強度が測定値と、上述した補正X線強度の値が0になる点(X切片)の値とから、水分率0%における鉱石試料E、F、G・・・の補正X線強度を計算することが出来ることに想到した。当該水分率0%における鉱石試料E、F、G・・・の補正X線強度が判明すれば、第二の鉱石試料E、F、G・・・に含有される分析対象元素の濃度は容易に算出出来る。
また、第一の鉱石試料A~D各々の試料に係る第二の直線回帰式における補正X線強度の値が0になる点(X切片)の値に、若干のズレがある場合は、これらの平均値を用いることが好ましい。
具体的には、スラリー状になる水分率を有する第二の鉱石試料E、F、G・・・へ1次X線を照射し、当該鉱石試料E、F、G・・・に含有される分析対象元素の蛍光X線強度と、コンプトン散乱X線強度とを測定する。そしてコンプトン散乱X線強度から第一の直線回帰式を用いて水分率を求め、分析対象元素の蛍光X線強度の値をコンプトン散乱X線強度の値で除して、補正X線強度を算出した。
そして、算出された第二の鉱石試料E、F、G・・・の水分率の値と補正X線強度、および、上述したX切片の値とから、第二の鉱石試料E、F、G・・・に係る1次式を算出し(本発明において「第三の1次式」と記載する場合がある。)、当該第三の1次式を外挿して水分率が0質量%となる点(Y切片)における補正X線強度の値を求めることで、水分率0%における第二の鉱石試料E、F、G・・・の補正X線強度が判明した。
以下、同様に、第一の鉱石試料A、B、C、Dを採取した領域から、第二の鉱石試料Eに続いて、適時、新規に採取される第二の鉱石試料F、G、H・・・・・、においても、第二の鉱石試料Eと同様の測定、および、各々の第二の鉱石試料における第三の1次式を適用することにより、含有される分析対象元素の濃度は容易に算出出来た。
この結果、第二の鉱石試料E、F、G・・・においては乾燥工程を経ることなく、迅速且つ容易に含有される分析対象元素の濃度を求めることが出来た。即ち、水分を含む鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を、蛍光X線分析法を用いて迅速、簡便に分析することが出来た。
2.鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を分析する方法
原料鉱石から鉱石試料をサンプリングし、当該鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を、迅速、簡便に、精度よく分析する方法について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る蛍光X線分析用試料調製方法における試料調製プロセスの概略を示す工程図であり、(1)試料分取工程、(2)流動性の確認工程、(3)純水添加混合工程、(4)測定容器内への充填工程、(5)二次X線およびコンプトン散乱X線の測定と分析結果の算出工程、の各工程を有する。以下、各工程毎に説明する。
(1)試料分取工程
本発明が対象とする鉱石試料は、原料鉱石からサンプリングされたものである。原料鉱石から、例えば鉱石試料A~Dをサンプリングする際は、上述したように、出来るだけ互いに離れた範囲から鉱石試料のサンプリングを実施する。一方、鉱石試料A、B、C、Dを採取した鉱石の領域から、適時、鉱石試料E、F、G・・・を採取する。
(2)流動性の確認工程
前記分取した適量の鉱石試料の形態や流動性を確認する。
例えば、当該鉱石試料を測定容器内に移入し、当該測定容器を振ったり、容器の壁をたたいたりするなどして、鉱石試料を密に充填することを試みた後、当該測定容器の底面に張られたフィルム面において、平滑な測定面を得ることが出来ているか確認することも好ましい。
この結果、当該鉱石試料の形態が、例えば図2に示すように塊状、または粘土状であって、測定容器内に充填した際、例えば図3に示すように前記フィルム面において鉱石試料との間に多数の空隙が存在したりして、平滑な測定面を得ることが困難と考えられるときは、次の純水添加混合工程に進む。
(3)純水添加混合工程
鉱石試料を、例えばプラスチック製の密閉可能な容器に移入する。そして、当該鉱石試料中に塊があれば、これをスパチュラ等で解砕する。その後、試料質量に対して例えば5質量%程度の純水を添加し容器を密閉後、当該容器を上下に振る等によって攪拌する。当該攪拌後、容器の蓋を開け、当該容器を動かしながら、鉱石試料の塊が認められないことを目視で確認する。一方、塊が認められた場合は、再度、純水を例えば5質量%追加で加え攪拌を続ける。
鉱石試料によっては、容器の上下攪拌だけでは塊の解砕が困難な場合がある。このような場合は、容器内にボールミル粉砕用のボールを加えて攪拌を続ける。このとき、ボールの材質としては、測定対象元素に含まれない元素で構成されていることが好ましい。
含まれる塊の解砕が終わった鉱石試料の状態の一例を図4に示す。当該塊の解砕が終わった鉱石試料を測定容器に移入し、底面に張られたフィルム面において気泡や空間が認められず、平滑な測定面を得ることが出来ていることが図5より確認できた。
しかしながら、鉱石試料への純水の過剰添加等により、試料の流動性が高すぎこととなった場合、粗大な粒子と微細な粒子が相分離を起こすため、分析値の誤差要因となり得る。そこで鉱石試料への純水添加量の総量は、乾燥した鉱石試料の50質量%以下とすることが好ましいと考えられる。
そして鉱石試料の流動性の目安としては、降伏応力が50Pa以上200Pa以下の範囲を示す状態が好ましいと考えられる。
(4)測定容器内への充填工程
適宜な流動性を付与された鉱石試料を測定容器内へ充填する。当該測定容器の底面に張られたフィルム面において気泡や空間が認められず、平滑な測定面を得ることが出来ていることを確認する。
もし、鉱石試料の流動性不足により平滑な測定面を得ることが出来ていない場合は、「(3)純水添加混合工程」へ戻って、鉱石試料への純水添加、混合を再度実施する。
(5)二次X線およびコンプトン散乱X線の測定と分析結果の算出工程
蛍光X線分析装置を用い、鉱石試料A~Dからの二次X線強度とコンプトン散乱X線強度の値とを測定し、当該測定結果から、「1.鉱石試料に含有される分析対象元素の定量方法、(3)分析対象である元素の濃度と分析対象元素から発生する補正X線強度との関係を求める工程、〈2〉鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度の算出」にて説明したように、第一の直線回帰式を求める。
次に、鉱石試料の水分率をX軸にとり、当該鉱石試料に含有される分析対象元素の蛍光X線強度をコンプトン散乱X線強度で除した補正X線強度の値をY軸にとって、第二の直線回帰式を求める。そして第二の直線回帰式を外挿して、補正X線強度の値が0となる点(X切片)における水分率の値を算出する。
一方、鉱石試料E、F、G・・・の二次X線強度とコンプトン散乱X線強度とから、補正X線強度と水分率を算出する。そして、当該補正X線強度と水分率との値を、上述した鉱石試料の水分率をX軸にとり、当該鉱石試料に含有される分析対象元素の蛍光X線強度をコンプトン散乱X線強度で除した補正X線強度の値をY軸にとって、両者の関係を示したグラフにプロットし、上述したX切片と当該プロット点を結ぶ第三の1次式において水分率が0となる点(Y切片)の値を算出する。当該Y切片の値は、鉱石試料E、F、G・・・の水分率0%における補正X線強度と考えられるので、この値から、鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を算出する。
(6)まとめ
以上、説明した(1)~(5)の工程を、例えば、一の鉱石採掘場、所定鉱石の一の鉱脈、等に存在する原料鉱石において実施し、一旦、第一および第二の直線回帰式を求めた後は、当該一の鉱石採掘場や、鉱石の一の鉱脈等から新たに採取された鉱石試料が、塊状であったり粘土状であったりしても、蛍光X線分析装置を用いて、迅速、簡便に分析対象元素の濃度を精度よく分析することが出来た。
(実施例1)
〈試料の調製〉
非鉄金属鉱山の原料鉱石の、互いに離れた範囲の4箇所から、A、B、C、D4種の鉱石試料をサンプリングした。当該鉱石試料はいずれも塊状を有しており、水分率は30質量%であった。当該塊状を有する鉱石試料A(水分率30質量%)の外観を図2に示す。
当該塊状を有する鉱石試料Aを測定容器内に充填した際、当該測定容器底部のフィルム面より見た外観を図3に示す。図3から解るように、フィルムと鉱石試料との間に多数の空隙が存在した。
そこで、[実施の形態]欄の「2.鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を分析する方法」にて説明したように、鉱石試料中の水分率を調整した。
具体的には、まず鉱石試料Aを乾燥して鉱石試料A(水分率0質量%)とした。次に、鉱石試料A(水分率0質量%)を8分割して、それぞれをプラスチック製の密閉可能な容器へ入れ、そのまま、または、所定量の純水を添加し、容器を密閉後に当該容器を上下に振って攪拌した。そして、鉱石試料A(水分率0質量%)、鉱石試料A(水分率5質量%)、鉱石試料A(水分率10質量%)、鉱石試料A(水分率15質量%)、鉱石試料A(水分率20質量%)、鉱石試料A(水分率30質量%)、鉱石試料A(水分率40質量%)、鉱石試料A(水分率50質量%)を調製した。
攪拌後に当該容器の蓋を開け、当該容器を動かしながら鉱石試料の塊が認められるかを目視で確認したところ、鉱石試料A(水分率30質量%)に塊が認められた。他の鉱石試料には塊が認められなかった。
これらの鉱石試料Aを、それぞれ蛍光X線分析装置の試料測定容器内に充填した。このときの、鉱石試料A(水分率40質量%)の外観を図4に、測定容器における測定面側から見た外観を図5に示す。図5から解るように、フィルムと鉱石試料との間には空隙が存在せず、平滑な測定面を得ることが出来ていることが確認出来た。
尚、当該純水添加後の鉱石試料の測定容器への充填が完了したら、迅速に二次X線とコンプトン散乱X線との測定を開始した。攪拌が終わった鉱石試料を長時間静置すると、粗大な粒子と微細な粒子との相分離が進行し、分析値の誤差要因となり得るからである。
〈二次X線とコンプトン散乱X線との測定〉
鉱石試料A(水分率0質量%~50質量%)の平滑な測定面に1次X線を照射して、分析対象元素であるNiから発生する二次X線の強度と、コンプトン散乱X線強度とを測定した。
水分率をX軸に、Niの二次X線の強度をY軸にとったグラフを図6に、水分率をX軸に、コンプトン散乱X線強度をY軸にとったグラフを図7に示す。
図7のグラフより、水分率とコンプトン散乱X線強度との関係を示す第一の直線回帰式を最小二乗法により求めたところ式1が得られた。

Y=-0.0685X+2.0184・・・・(式1)

次に、二次X線の強度の値をコンプトン散乱X線強度の値で除して補正X線強度を算出した。そして、水分率の値をX軸に、算出されたNiの補正X線強度をY軸にとったグラフを図8に示す。水分率と補正X線強度の値との関係を示す第二の直線回帰式を最小二乗法により求めたところ、Niに関しては式2が得られた。尚、式1、式2を求める際、塊状となった鉱物試料A(水分率30質量%)のデータは用いなかった。また、X線管としては、ロジウムターゲットX線管を用いた。

Y=-0.2477X+18.777・・・・(式2)
以上説明した鉱石試料Aに対する操作を鉱石試料B~Dに対しても行った。
第一の直線回帰式は、鉱石試料A~Dにおいて実質的に一致した。また、鉱石試料A~Dのそれぞれにおいて、Niに関する第二の直線回帰式を求めた。そして、鉱石試料A~DのNiに関する第二の直線回帰式のX切片の値として75.8を得た。
次に、鉱石試料Eをサンプリングした。当該鉱石試料も塊状を有していたので純水を添加し、測定容器底部のフィルム面と鉱石試料との間には空隙が存在しない状態とした。そして鉱石試料Eの平滑な測定面に1次X線を照射して、分析対象元素であるNiから発生する二次X線の強度と、コンプトン散乱X線強度とを測定した。そして、測定されたコンプトン散乱X線強度へ式1で示す第一の直線回帰式を適用して、純水を添加した鉱石試料Eの水分率を算出した。次に、二次X線の強度の値をコンプトン散乱X線強度の値で除して補正X線強度を算出した。算出された鉱石試料Eの水分率と補正X線強度とが示す点を、上述した図8に示すグラフにプロットし、上述したX切片と当該プロット点とを通る直線の1次式を求め、当該1次式を外挿してY切片の値を得た。そして当該Y切片の値として、鉱石試料Eの水分率0質量におけるNiの補正X線強度を得た。
そして、当該Niの補正X線強度へ、水分率0質量%におけるコンプトンX線強度を乗じて、鉱石試料Eに係る水分率0質量%におけるNiの二次X線強度の値を求め、当該結果を表1の水分率補正後強度欄に示した。
以下、鉱石試料中のAl、Siについても、上述したNiの場合と同様の測定と操作を行って、鉱石試料Eの水分率0質量におけるAl、Siの二次X線強度の値を求めた。
そして、当該補正X線強度へ水分率0質量%におけるコンプトンX線強度を乗じて、鉱石試料Eにおける水分率0質量%における、Al、Siについての二次X線強度の値を求め、当該結果を表1の水分率補正後強度欄に示した。
尚、実施例1および後述する比較例1において使用した蛍光X線装置は、Malvern Panalytical社製のAxios Advanced 4kWである。
尚、表1において、基準強度(水分率0質量%)とは、本実施例の効果を確認する為に、敢えて鉱石試料Eを乾燥して作製した乾燥済みの鉱石試料E(水分率0質量%)からの分析対象元素(Ni、Al、Si)に係る二次X線強度(バックグラウンド補正後)であり、実測強度とは鉱石試料E(塊が認められなかった状態:水分率40質量%)からの分析対象元素(Ni、Al、Si)に係る二次X線強度である。
また、基準値との相対差とは、式3の値である。

相対差(%)=[基準強度(水分率0質量%)-水分率補正後強度]/基準強度(水分率0質量%)・・・・(式3)
表1の結果より、水分率補正後強度と基準強度(水分率0質量%)との差は、Ni、Al、Siのいずれの元素においても相対差で10%未満であった。即ち、鉱石試料Eを乾燥することなく、逆に純水を添加した鉱石試料Eから測定した二次X線強度と、コンプトン散乱X線強度とから、水分率0質量%における鉱石試料Eの補正X線強度の値を精度良く求めることが出来た。この結果、本発明に係る水分率補正方法が有効であることが理解できる。従って、水分を含む鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を、蛍光X線分析法を用いて迅速、簡便に分析することが出来、塊状や粘土状である鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を、蛍光X線分析法を用いて迅速、簡便に分析することが理解できる。
Figure 0007400558000001
(比較例1)
実施例1で使用した塊状を有する鉱石試料(水分率30質量%)へ純水を添加することなく、そのまま測定容器内に充填した。その際、上述したように、フィルムと鉱石試料との間に多数の空隙が存在した(図3参照)。
当該測定容器を蛍光X線測定装置へ入れ、試料中のNi、Al、Siから発生する二次X線の強度を測定した以外は、実施例1と同様の操作と測定を行った。
当該結果を表2に示す。
Figure 0007400558000002
表2の結果より、水分率補正後強度と基準強度(水分率0質量%)との相対差は、10~32%と大きく、誤差の大きな測定となったことが理解できる。

Claims (4)

  1. 鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を定量する分析方法であって、
    原料鉱石よりサンプリングされた第一の鉱石試料から、水分率0質量%を含む既知量の水分率を有する複数の鉱石試料を調製し、調製された複数の鉱石試料のそれぞれへ一次X線を照射し、発生する分析対象元素の二次X線強度と、コンプトン散乱X線強度とを測定し、
    水分率とコンプトン散乱X線強度との関係を示す第一の直線回帰式と、
    水分率と、分析対象元素の二次X線強度をコンプトン散乱X線強度で除して得られた補正X線強度との関係を示す第二の直線回帰式とを求め、第二の直線回帰式を外挿して補正X線強度の値が0となる点を求めておき、
    原料鉱石より新規にサンプリングされた第二の鉱石試料に対して一次X線を照射し、第二の鉱石試料から発生する分析対象元素の二次X線強度と、コンプトン散乱X線強度とを測定し、第二の鉱石試料のコンプトン散乱X線強度と第一の直線回帰式とから第二の鉱石試料の水分率を求め、第二の鉱石試料の分析対象元素の二次X線強度をコンプトン散乱X線強度で除して第二の鉱石試料の補正X線強度を求め、
    前記第二の直線回帰式において補正X線強度の値が0となる点と、第二の鉱石試料における水分率の値と補正X線強度の値とを示す点とを結ぶ第三の1次式を求め、
    第三の1次式を外挿して、第二の鉱石試料の水分率の値が0質量%となる点における補正X線強度を、第二の鉱石試料の水分率0質量%のときの補正X線強度とし、予め求めておいた鉱石試料における分析対象元素の濃度と、水分率0質量%のときの補正X線強度との関係から、第二の鉱石試料における分析対象元素の濃度を定量する鉱石試料の分析方法であって、
    前記第一および/または第二の鉱石試料の形態が塊状であって、1次X線の照射を受ける平滑な測定面を得ることが困難であるとき、
    前記第一および/または第二の鉱石試料へ純水を添加して混合することで流動性を付与し、平滑な測定面を得た後、前記鉱石試料の分析方法を適用し、分析対象元素の濃度を定量することを特徴とする鉱石試料の分析方法。
  2. 鉱石試料に含有される分析対象元素の濃度を定量する分析方法であって、
    原料鉱石よりサンプリングされた第一の鉱石試料から、水分率0質量%を含む既知量の水分率を有する複数の鉱石試料を調製し、調製された複数の鉱石試料のそれぞれへ一次X線を照射し、発生する分析対象元素の二次X線強度と、コンプトン散乱X線強度とを測定し、
    水分率とコンプトン散乱X線強度との関係を示す第一の直線回帰式と、
    水分率と、分析対象元素の二次X線強度をコンプトン散乱X線強度で除して得られた補正X線強度との関係を示す第二の直線回帰式とを求め、第二の直線回帰式を外挿して補正X線強度の値が0となる点を求めておき、
    原料鉱石より新規にサンプリングされた第二の鉱石試料に対して一次X線を照射し、第二の鉱石試料から発生する分析対象元素の二次X線強度と、コンプトン散乱X線強度とを測定し、第二の鉱石試料のコンプトン散乱X線強度と第一の直線回帰式とから第二の鉱石試料の水分率を求め、第二の鉱石試料の分析対象元素の二次X線強度をコンプトン散乱X線強度で除して第二の鉱石試料の補正X線強度を求め、
    前記第二の直線回帰式において補正X線強度の値が0となる点と、第二の鉱石試料における水分率の値と補正X線強度の値とを示す点とを結ぶ第三の1次式を求め、
    第三の1次式を外挿して、第二の鉱石試料の水分率の値が0質量%となる点における補正X線強度を、第二の鉱石試料の水分率0質量%のときの補正X線強度とし、予め求めておいた鉱石試料における分析対象元素の濃度と、水分率0質量%のときの補正X線強度との関係から、第二の鉱石試料における分析対象元素の濃度を定量する鉱石試料の分析方法であって、
    前記第一および/または第二の鉱石試料の形態が粘土状であって、1次X線の照射を受ける平滑な測定面を得ることが困難であるとき、
    前記第一および/または第二の鉱石試料へ純水を添加して混合することで流動性を付与し、平滑な測定面を得た後、前記鉱石試料の分析方法を適用し、分析対象元素の濃度を定量することを特徴とする鉱石試料の分析方法。
  3. 原料鉱石の複数個所から、前記第一の鉱石試料として鉱石試料をサンプリングし、サンプリングされた複数の第一の鉱石試料のそれぞれにおいて、発生する分析対象元素の二次X線強度とコンプトン散乱X線強度とを測定して第二の直線回帰式を求め、複数の第二の直線回帰式において補正X線強度の値が0となる点の平均値を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の鉱石試料の分析方法。
  4. 前記第一および/または第二の鉱石試料への純水添加量の総量が、前記鉱石試料の50質量%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鉱石試料の分析方法。
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