以下、図面を参照して、本発明を適用した実施形態を説明する。図1及び図2に示す本実施形態のステージ駆動装置10は、撮像装置(不図示)に搭載されるものであり、光学系の光軸OX(図1及び図3参照)に対して垂直な平面(動作平面)に沿って撮像素子11(図10参照)を移動させて手振れ補正を行う。撮像素子11の前方は、カバーガラス11aで覆われている。
以下の説明では、光軸OXに沿う方向を光軸方向と定義する。また、撮像装置にステージ駆動装置10を搭載した状態での、撮像装置の前後、上下、左右の各方向を図中に矢印で示した。本実施形態において光軸方向は撮像装置の前後方向と一致しており、光軸方向における被写体側が撮像装置の前方、像側が撮像装置の後方となる。なお、本実施形態では、光軸OXに沿って各光学要素を直線的に配置した光学系を想定しているが、撮像素子11の受光面上に被写体像を形成する光学系はどのようなものでもよい。例えば、プリズムなどの反射光学素子を含む屈曲光学系であってもよく、屈曲光学系を用いた場合、撮像装置の前後、上下、左右の各方向と、各図中に示すステージ駆動装置10の向きとの対応関係が異なる場合もある。
ステージ駆動装置10は、撮像装置の内部に固定される固定部と、固定部に対して可動に支持される可動部とを有している。固定部として、前ヨーク20と後ヨーク30を有する。可動部として中板40を有する。中板40は、後述するコイル60(60A,60B,60C,60D)を支持するコイル支持要素である。前ヨーク20と後ヨーク30と中板40はそれぞれ光軸OXに対して垂直な方向(動作平面に沿う方向)に広がりを持つ板状体であり、光軸方向で前方に前ヨーク20、後方に後ヨーク30が位置し、前ヨーク20と後ヨーク30の間に中板40が配置される。
前ヨーク20と後ヨーク30はそれぞれ、軟鉄などの磁性体からなる。図1及び図5に示すように、前ヨーク20は、左右方向に延びる下板部21と、上下方向に延びる左板部22及び右板部23とを有し、左板部22と右板部23の下端部を下板部21で接続したコ字状の概略形状である。図2に示すように、後ヨーク30は、前ヨーク20と概ね対応する構成であり、上下方向に延びる左板部32及び右板部33の下端部を、下板部31で接続したコ字状の概略形状を有する。前ヨーク20と後ヨーク30はそれぞれ、光軸OXに沿う正面視(背面視)で、撮像素子11の左右と下方を囲むように構成されている。
図1及び図5に示すように、前ヨーク20には、3つの支持案内部24が設けられている。下板部21における左右方向の中央付近に配置したものを支持案内部24A、左板部22の上端近くに配置したものを支持案内部24B、右板部23の上端近くに配置したものを支持案内部24Cとする。図6に示す支持案内部24の断面構造は、3箇所の支持案内部24A,24B,24Cに共通するものである。
図6に示すように、各支持案内部24は、球状の転動体25と、リテーナ26と、調整ネジ27と、調整バネ28と、を有している。リテーナ26は、前ヨーク20に形成した前後方向への貫通孔に挿入されており、フランジ26aが前ヨーク20の後面に接触して、前ヨーク20に対するリテーナ26の前方への移動を規制する。リテーナ26の後方を向く端部には、内部に転動体25を収めた収容孔26bが形成されている。調整ネジ27は、雄ネジが形成された軸部27aをリテーナ26内のネジ孔に螺合させており、軸部27aよりも大径の頭部27bが前ヨーク20の前面側に位置している。頭部27bとリテーナ26の間に、調整バネ28が挿入されている。軸部27aの先端が転動体25に当接し、調整ネジ27の締め込み量に応じて転動体25の前後方向位置(収容孔26bからの突出量)が変化する。調整バネ28は、リテーナ26と調整ネジ27の間のガタつきを除去する。
図2に示すように、後ヨーク30には、3つの支持案内部34が設けられている。下板部31における左右方向の中央付近に配置したものを支持案内部34A、左板部32の上端近くに配置したものを支持案内部34B、右板部33の上端近くに配置したものを支持案内部34Cとする。図6に示す支持案内部34の断面構造は、支持案内部34A,34B,34Cに共通するものである。
図6に示すように、各支持案内部34は、球状の転動体35と、転動体35を内部に収めた収容孔36と、押さえ板37と、を有している。収容孔36は、後ヨーク30を前後方向に貫通する貫通孔である。押さえ板37は、後ヨーク30の後面側にリベット留めで固定されて、収容孔36の後部を塞ぐ。転動体35は、押さえ板37によって後方への移動が規制され、後ヨーク30の前面よりも前方に突出する。
図3及び図4に示すように、中板40は、左右方向に延びる下板部41と、上下方向に延びる左板部42及び右板部43を有し、左板部42及び右板部43の下端部を下板部41で接続している。また、左板部42と右板部43の上端部を上辺部44で接続している。下板部41と左板部42と右板部43と上辺部44に囲まれる空間に、撮像素子基板45が取り付けられている。撮像素子基板45の前面側に撮像素子11(図10参照)が取り付けられており、撮像素子基板45の後面側にはコネクタ46が設けられている。撮像素子11の受光面は、長辺が左右方向に向き、短辺が上下方向に向く、横長形状である。撮像素子11の受光面の前側がカバーガラス11aで覆われている。カバーガラス11aは、中板40の前面側に取り付けた枠部55によって保持されている。
中板40の前後から前ヨーク20と後ヨーク30を組み合わせると、支持案内部24Aと支持案内部34Aが前後方向に並び、支持案内部24Bと支持案内部34Bが前後方向に並び、支持案内部24Cと支持案内部34Cが前後方向に並ぶ。中板40には、これら3箇所の支持案内部24及び支持案内部34に挟まれる位置に、3つの被挟持部47が形成されている。支持案内部24Aと支持案内部34Aに挟まれる箇所を被挟持部47A、支持案内部24Bと支持案内部34Bに挟まれる箇所を被挟持部47B、支持案内部24Cと支持案内部34Cに挟まれる箇所を被挟持部47Cとする。
各被挟持部47の前後の面はいずれも、光軸OXに対して垂直な平面である。各被挟持部47の前面に支持案内部24側の転動体25が当て付き、各被挟持部47の後面に支持案内部34側の転動体35が当て付く。各支持案内部24における調整ネジ27の締め込み量に応じて、被挟持部47に対する転動体25の接触圧を調整できる。
このようにして前ヨーク20と後ヨーク30の間に中板40を組み付けると、前後方向において、下板部41が下板部21と下板部31の間に位置し、左板部42が左板部22と左板部32の間に位置し、右板部43が右板部23と右板部33の間に位置する。
3つの支持案内部24(転動体25)と3つの支持案内部34(転動体35)によって前後から挟まれた中板40は、光軸OXに対して垂直な動作平面に沿って移動可能である。転動体25と転動体35による支持は、動作平面内での中板40の移動方向を制限しない。そのため、中板40は、上下方向や左右方向への直線的な移動だけでなく、上下方向と左右方向の両方の成分を含む斜め方向への移動や、光軸OXと平行な仮想軸を中心とした傾動も行うことができる。
動作平面に沿う中板40の機械的な最大移動範囲を定めるストッパとして、中板40に3箇所の貫通部48が設けられ、各貫通部48に規制ピン29(図1参照)が挿入されている。貫通部48は、下板部41の中間(被挟持部47Aの下方)に1つと、左板部42と右板部43の上端付近(被挟持部47B,47Cの側方)にそれぞれ1つずつ形成されている。左板部42と右板部43に設けた各貫通部48は、左右方向に延びる一対の内面と上下方向に延びる一対の内面で囲まれる矩形状の孔である。下板部41に設けた貫通部48は、下方が開放されたコ字状の凹部である点が、他の2つの貫通部48と異なっている。各規制ピン29は、前ヨーク20と後ヨーク30に固定されている。中板40は、各貫通部48の内面が規制ピン29に当接するまでの範囲で動作平面に沿って移動可能であり、各貫通部48の内面が規制ピン29に当接すると、それ以上の移動が規制される。各規制ピン29の外面にはゴムなどの弾性体が取り付けられている。規制ピン29によって中板40の移動を規制する際に、規制ピン29に取り付けた弾性体が、貫通部48の内面に対して当接する。これにより、衝突による異音や衝撃を抑制できる。
球状の転動体25や転動体35に対して平滑な平面である被挟持部47を接触させた構成であるため、中板40の移動の際には、抵抗の少ない円滑な動作を実現できる。また、左右方向に離れた2箇所の支持位置(支持案内部24B及び支持案内部34B、支持案内部24C及び支持案内部34C)と、これら2箇所に対して上下方向及び左右方向に位置を異ならせた1箇所の支持位置(支持案内部24A及び支持案内部34A)の、計3箇所で中板40を支持するので、上記動作平面に対する中板40の傾きを防ぐことができる。
ステージ駆動装置10は、上記の動作平面に沿って中板40を移動させる駆動手段として、磁気回路内に配したコイルに通電して推力を発生させるボイスコイルモータを備えている。ボイスコイルモータは、前ヨーク20と後ヨーク30の間に永久磁石50とコイル60を配して構成されている。
図5に示すように、複数の永久磁石50が前ヨーク20の後面側に取り付けられている。より詳しくは、下板部21に2セット、左板部22と右板部23にそれぞれ1セットの、計4セットの永久磁石50が配される。下板部21に配した2セットを、左側から順に永久磁石50A,50Bとし、左板部22に配した1セットを永久磁石50Cとし、右板部23に配した1セットを永久磁石50Dとする。
各セットの永久磁石50は、一対の分割磁石51,52で構成されている。分割磁石51,52は、前ヨーク20に対して接着などで固定される。分割磁石51と分割磁石52はそれぞれ、細長い矩形状であり、互いの長手方向を平行にして配置される。分割磁石51と分割磁石52の間には隙間53が存在する。前ヨーク20には、隙間53を形成するためのスペーサ54が設けられている。分割磁石51がスペーサの54の一方の側部に沿って配置され、分割磁石52がスペーサの54の他方の側部に沿って配置される。
下板部21に配した永久磁石50Aと永久磁石50Bでは、それぞれの分割磁石51と分割磁石52が長手方向を左右方向に向けており、分割磁石51と分割磁石52の間に上下方向の隙間53がある。左板部22と右板部23に配した永久磁石50Cと永久磁石50Dでは、分割磁石51と分割磁石52が長手方向を上下方向に向けており、分割磁石51と分割磁石52の間に左右方向の隙間53がある。
図3に示すように、複数のコイル60が中板40に取り付けられている。より詳しくは、下板部41に2つ、左板部42と右板部43にそれぞれ1つずつの、計4つのコイル60が配される。下板部41に配したものを左側から順にコイル60A,60Bとし、左板部42に配したものコイル60Cとし、右板部43に配したものをコイル60Dとする。
各コイル60は、中板40の下板部41と左板部42と右板部43のそれぞれに形成したコイル収容部49の内部に配置されている。各コイル収容部49は、中板40を前後方向に貫通する貫通孔として形成されている。4つのコイル60A,60B,60C,60Dが内部に配置される4つのコイル収容部49を、それぞれコイル収容部49A,49B,49C,49Dとする。
4つのコイル60は、フレキシブル基板70(図4参照)に取り付けられる。フレキシブル基板70は、中板40の後面側に取り付けられ、4箇所のコイル収容部49を後方から塞ぎ、且つ3箇所の被挟持部47と3箇所の貫通部48を覆わない形状となっている。フレキシブル基板70の前面側に各コイル60が取り付けられ、フレキシブル基板70を中板40の後面に貼り付けた状態で、各コイル60が対応するコイル収容部49内に収まる。この状態で、各コイル60の前面が中板40の前面側に露出する(図3参照)。
各コイル60は、空芯部65を囲んで導線を巻回した空芯コイルである。図7に示すように、空芯部65を挟む位置関係にある一対の平行な長辺部(直線状部)61,62で導線が直線状に延びており、長辺部61と長辺部62の両端を一対の短辺部(直線状部)63,64が接続している。短辺部63,64においても導線が直線状に延びている。長辺部61,62を長くすることによって、コイル60に通電したときに生じる推力を大きくさせることができる。
下板部41に配したコイル60Aとコイル60Bでは、長辺部61と長辺部62の延設方向(長手方向)が左右方向に向いており、長辺部61と長辺部62は空芯部65を介して上下方向に間隔を開けている。また、短辺部63と短辺部64の延設方向(長手方向)が上下方向に向いており、短辺部63と短辺部64は空芯部65を介して左右方向に間隔を開けている。
左板部42と右板部43に配したコイル60Cとコイル60Dでは、長辺部61と長辺部62の長手方向が上下方向に向いており、長辺部61と長辺部62は空芯部65を介して左右方向に間隔を開けている。また、短辺部63と短辺部64の長手方向が左右方向に向いており、短辺部63と短辺部64は空芯部65を介して上下方向に間隔を開けている。
光軸方向に沿って見たときの各永久磁石50と各コイル60の関係(投影位置)を、図7に示した。また、前ヨーク20と後ヨーク30の間に中板40を支持した状態の各永久磁石50と各コイル60付近の断面構造を図8に示した。図7及び図8に示す構造は、4箇所の永久磁石50及びコイル60に共通するものである。
なお、図7及び図8は、中板40が初期位置にある場合の永久磁石50とコイル60の位置関係を示している。初期位置とは、永久磁石50に対してコイル60が、上下方向と左右方向のいずれにも偏りなく位置している設計上の基準位置である。撮像装置との関係では、光学系の光軸OXが撮像素子11の所定位置(例えば、受光面の外形中心)を通る状態が、中板40の初期位置として設定される。
永久磁石50においては、図7のように光軸方向に沿って見たときの、各分割磁石51,52の長手方向への大きさを「長さ」とし、各分割磁石51,52の短手方向への大きさを「幅」とする。コイル60においては、図7のように光軸方向に沿って見たときの、各長辺部61,62の延設方向への大きさを「長さ」、各短辺部63,64の延設方向への大きさを「幅」とする。また、図8に示すステージ駆動装置10の各部の前後方向への大きさを「厚さ(厚み)」とする。
図7を参照して、永久磁石50とコイル60の大きさ及び位置関係について説明する。永久磁石50を構成する分割磁石51と分割磁石52は、長さが同じであり、互いに長手方向の位置を揃えて配置されている。従って、個々の分割磁石51,52の長さL1と、永久磁石50全体の長さ(外形長)L1は一致している。分割磁石51と分割磁石52は、互いに同じ幅W1aを有している。分割磁石51の幅W1aと分割磁石52の幅W1aと隙間53の幅W1bを合わせたものが、永久磁石50全体としての幅(外形幅)W1になる。
コイル60では、長辺部61と長辺部62は互いに同じ幅(導線の巻高)W2aを有しており、短辺部63と短辺部64は互いに同じ幅(導線の巻高)L2aを有している。コイル60における各長辺部61,62の長さは、空芯部65の長さL2bに対応している。空芯部65の長さL2bに、短辺部63の幅L2aと短辺部64の幅L2aとを加えたものが、コイル60全体としての長さ(外形長)L2になる。また、空芯部65の幅W2bに、長辺部61の幅W2aと長辺部62の幅W2aとを合わせたものが、コイル60全体としての幅(外形幅)W2になる。
永久磁石50全体の幅W1は、コイル60全体の幅W2よりも大きい。分割磁石51,52のそれぞれの幅W1aは、コイル60の長辺部61,62のそれぞれの幅W2aよりも大きい。永久磁石50の隙間53の幅W1bは、コイル60の空芯部65の幅W2bよりも小さい。
図7に示す初期位置では、コイル60の各長辺部61,62の幅W2aが、対応する各分割磁石51,52の幅W1aの範囲内に位置しており(光軸方向に沿って見て、幅W2aの全域が幅W1aと重なっており)、各分割磁石51,52には、各長辺部61,62とは重ならない幅方向の駆動代G1,G2が存在する。
初期位置からコイル60を幅方向の一方(図7における矢印F1)に移動させたとき、駆動代G1の範囲までは、長辺部61の幅W2a全体が分割磁石51の幅W1aの範囲に収まる状態が維持される。初期位置からコイル60を幅方向の他方(図7における矢印F2)に移動させたとき、駆動代G2の範囲までは、長辺部62の幅W2a全体が分割磁石52の幅W1aの範囲に収まる状態が維持される。従って、永久磁石50とコイル60を幅方向に相対移動させるときに、各長辺部61,62が各分割磁石51,52と前後方向に正対する(各長辺部61,62の投影位置が各分割磁石51,52と重なる)関係が、駆動代G1,G2の範囲で確保され、この範囲内で永久磁石50からコイル60(特に長辺部61,62)を逸脱させずに中板40を移動させることができる。永久磁石50の幅W1内にコイル60の幅W2が収まっている範囲が、ボイスコイルモータによって中板40の駆動が制御される際の好適な駆動範囲となる。この好適な駆動範囲は、貫通部48と規制ピン29により制限される機械的な中板40の可動範囲よりも小さい。なお、理想に近い駆動特性を得るためには、駆動代G1,G2の範囲で永久磁石50とコイル60の長辺部61,62が重なる関係を維持することが望ましいが、装置の小型化などを優先して、コイル60の幅方向での駆動範囲が、永久磁石50とコイル60の長辺部61,62が重ならない領域を含むように設定することも可能である。
コイル60全体の長さ(外形長)L2は、空芯部65の長さL2bよりも大きく、この空芯部65の長さL2bが、各長辺部61,62の実質的な長さに相当する。永久磁石50の各分割磁石51,52の長さL1は、コイル60全体の長さL2よりも大きい。
図7に示す初期位置では、空芯部65の長さL2bが、各分割磁石51,52の長さL1の範囲内に位置しており、各分割磁石51,52には、各長辺部61,62とは重ならない長手方向の駆動代H1,H2が存在する。
初期位置からコイル60を長手方向の一方と他方に移動させたとき、駆動代H1,H2の範囲までは、長辺部61,62の長さの全体が、対応する分割磁石51,52の長さの全体に収まる状態が維持される。従って、永久磁石50とコイル60を長手方向に相対移動させるときに、各長辺部61,62が各分割磁石51,52と前後方向に正対する(各長辺部61,62の投影位置が各分割磁石51,52と重なる)関係が、駆動代H1,H2の範囲で確保され、この範囲内で永久磁石50からコイル60(特に長辺部61,62)を逸脱させずに中板40を移動させることができる。永久磁石50の長さL1内に空芯部65(長辺部61,62)の長さL2bが収まっている範囲が、ボイスコイルモータによって中板40の駆動が制御される際の好適な駆動範囲となる。この好適な駆動範囲は、貫通部48と規制ピン29により制限される機械的な中板40の可動範囲よりも小さい。なお、理想に近い駆動特性を得るためには、駆動代H1,H2の範囲で永久磁石50とコイル60の長辺部61,62が重なる関係を維持することが望ましいが、装置の小型化などを優先して、コイル60の長手方向での駆動範囲が、永久磁石50とコイル60の長辺部61,62が重ならない領域を含むように設定することも可能である。
続いて、図8を参照して、前後方向におけるステージ駆動装置10の各部の厚さについて説明する。前ヨーク20の前面から後ヨーク30の後面までが、ステージ駆動装置10全体の厚さT1である。厚さT1から、前ヨーク20の厚さT2と後ヨーク30の厚さT3と永久磁石50の厚さT4を引くと、空隙厚さT5となる。空隙厚さT5は、永久磁石50の後面から後ヨーク30の前面までの前後方向寸法を表しており、この空隙厚さT5内には、コイル60(コイル収容部49内にコイル60を収容した中板40を含む)が位置する。前後方向へのコイル60の厚さ(導線の巻厚)T6は、空隙厚さT5よりも小さい。永久磁石50の後面とコイル60の前面の間には空間U1があり、コイル60の後面と後ヨーク30の前面の間には空間U2がある。空間U2には、フレキシブル基板70が配置されている。
永久磁石50の分割磁石51と分割磁石52は、図8に示すように着磁されており、前ヨーク20と後ヨーク30の間で、前後方向への磁界の向きが形成される。この磁界内にコイル60が位置しており、分割磁石51と長辺部61が前後方向に対向し、分割磁石52と長辺部62が前後方向に対向している。コイル60に通電すると、フレミングの左手の法則によって、磁界の向き(前後方向)及び長辺部61,62に沿う電流の向き(図8の紙面直交方向)に対して垂直な推力Fが発生する。コイル60Aとコイル60Bでは、長辺部61及び長辺部62に沿って左右方向に電流が流れるため、上下方向への推力Fが生じる。コイル60Cとコイル60Dでは、長辺部61及び長辺部62に沿って上下方向に電流が流れるため、左右方向への推力Fが生じる。
4つのコイル60への通電を適宜制御することによって、光軸OXに対して垂直な動作平面内で、中板40を任意の位置に移動させることができる。そして、撮像素子11の受光面の長辺部分に沿う2箇所(永久磁石50A及びコイル60A、永久磁石50B及びコイル60B)と、撮像素子11の受光面の短辺部分に沿う2箇所(永久磁石50C及びコイル60C、永久磁石50D及びコイル60D)に永久磁石50とコイル60を配したので、中板40に対してバランス良く高い駆動力を与えることができる。
コイル60の空芯部65の内側には磁気センサ66が設けられている。磁気センサ66は、フレキシブル基板70の前面側に取り付けられており、コイル60と同様に、中板40と共に移動する。磁気センサ66はホール素子からなり、中板40の移動で永久磁石50との相対位置が変化することに伴う磁界の状態変化を、磁気センサ66で検出する。
本実施形態で磁気センサ66が配されるのは、3つのコイル60A,60B,60Cの3つの空芯部65の内側であり、残る1つのコイル60Dの空芯部65には磁気センサ66が配されていない。コイル60A,60B,60Cのそれぞれの空芯部65内に配置されている磁気センサ66を、磁気センサ66A,66B,66Cとして区別する。下側の磁気センサ66A,66Bによって、主に上下方向での中板40の位置を検出し、左側の磁気センサ66Cによって、主に左右方向での中板40の位置を検出する。そして、各磁気センサ66A,66B,66Cの検出信号に基づいて、光軸OXに対して垂直な動作平面内での中板40の位置や姿勢の変化を検出することができる。
図4に示すように、フレキシブル基板70は、中板40の後面に貼り付けられる板状の固定部分から延設される帯状部71を有する。本実施形態のステージ駆動装置10は、固定部である前ヨーク20側に永久磁石50が取り付けられ、可動部である中板40側にコイル60が取り付けられた、いわゆるムービング・コイル型の構造である。そのため、中板40を移動させる際には、中板40に取り付けられたフレキシブル基板70も追随して移動する。帯状部71は可撓性を有しており、フレキシブル基板70が中板40に追随して移動するときの抵抗を抑制する。
図2及び図4に概念的に示すように、ステージ駆動装置10は、撮像装置を統括的に制御する制御部72と電気的に接続される。撮像素子11での光電変換を経て得られた被写体の画像信号が、コネクタ46に接続するフレキシブル基板(不図示)を通して制御部72に送られ、画像処理回路によって処理されて所定の画像データに変換される。
各コイル60と各磁気センサ66は、フレキシブル基板70の帯状部71を介して制御部72に接続されている。制御部72は、各コイル60への通電を制御して、中板40を駆動させる。各磁気センサ66で検出した信号が制御部72に送信され、当該信号に基づいて、制御部72が中板40(撮像素子11)の位置情報などを取得する。
撮像装置の姿勢や挙動が姿勢検出センサ73によって検出され、姿勢検出センサ73の検出信号が制御部72に入力される。姿勢検出センサ73はジャイロセンサなどからなる。姿勢検出センサ73からの検出信号に基づいて、制御部72は撮像装置に加わった手振れ(又はその他の原因による撮像装置の挙動)の大きさや方向などの情報を得る。そして、撮像素子11の受光面上での像振れを解消させるように、コイル60への通電制御を行う。
ところで、手振れ補正などで撮像素子11の位置制御を行う際には、中板40を非常に高速且つ微細に移動させるので、中板40を支持する構造は、動作抵抗が小さく高レスポンスの動作を実現できることが求められる。その一方、ステージ駆動装置10を構成する各部品には、製品として成立する範囲内で精度の個体差が存在する。また、複数の部品を組み付ける際の精度のばらつきもある。例えば、球状の転動体25,35によって中板40を支持する構造は、中板40の円滑な動作を実現できるが、被挟持部47の前面や後面の面精度や位置精度に応じて、適正な支持状態はステージ駆動装置10の個体ごとに異なる。そのため、支持案内部24及び支持案内部34による被挟持部47の支持部分に、ごく僅かなクリアランスを設定して、上記のような精度の個体差や組み付け精度のばらつきを吸収できるようにする。本実施形態のステージ駆動装置10では、このようなクリアランスを設けても、中板40の安定した動作を実現可能にする手段として、磁気バネを備えている。以下、その詳細を説明する。
図9から図11は、磁気バネの第1の形態を示している。磁気バネに関する要素として、複数の磁性体80が中板40側に取り付けられている。より詳しくは、中板40のうち、コイル収容部49Cの内部に1セット、コイル収容部49Dの内部に1セットの、計2セットの磁性体80が配される。コイル収容部49Cの内部に配した1セットを磁性体80Aとし、コイル収容部49Dの内部に配した1セットを磁性体80Bとする。なお、図11には、コイル収容部49C,49Dのうちコイル収容部49C側のみに存在する磁気センサ66(66C)を記載しているが、磁性体80Aと磁性体80Bの構成は共通である。そのため、図11は、磁性体80Aと磁性体80Bの両方に対応しており、磁性体80Bとして見る場合には、図11から磁気センサ66(66C)を省略するものとする。
図9に示すように、各セットの磁性体80A,80Bは、一対の分割磁性体81,82で構成されている。図10及び図11に示すように、分割磁性体81,82は、コイル収容部49C,49Dの内周部とコイル60C,60Dの外周部との間に配置されている。より詳しくは、一方の分割磁性体81は、各コイル60C,60Dの一方の長辺部61の外周部に沿って配置されており、他方の分割磁性体82は、各コイル60C,60Dの他方の長辺部62の外周部に沿って配置されている。各分割磁性体81,82はそれぞれ薄板状の金属などからなり、コイル収容部49C,49Dの内周部とコイル60C,60Dの外周部にそれぞれ対向する平面部分を表裏に有する。
各分割磁性体81,82は、左右方向から見て細長い矩形状であり、長手方向が上下方向、短手方向(表裏の平面部分の幅方向)が前後方向、厚みの方向(表裏の平面部分を結ぶ方向)が左右方向となるように配置される。各磁性体80A,80Bにおける各分割磁性体81,82の長手方向(上下方向)の大きさを「長さ」とし、各分割磁性体81,82の短手方向(前後方向)の大きさを「幅」とする。分割磁性体81と分割磁性体82は、互いの長さが同じであり、且つ互いの幅が同じである。
図11に示すように、コイル60C,60Dの各長辺部61,62及び各短辺部63,64と、コイル収容部49C,49Dの内周部との間には、所定のクリアランスが設けられている。このうち、各長辺部61,62とコイル収容部49C,49Dの内周部との間の左右方向の隙間に収まるように、各分割磁性体81,82の厚みが設定されている。
図11に示すように、コイル60C,60Dの四隅の外周形状は、各長辺部61,62と各短辺部63,64の境界部分が滑らかに湾曲している。このコイル60C,60Dの四隅では、上記の各長辺部61,62や各短辺部63,64に比べて、コイル収容部49C,49Dの内周部とのクリアランスが大きくなり、注入空間S1を形成している。
図7に示すように、各分割磁性体81,82の長さは、コイル60C,60Dの一対の長辺部61,62の長さ(空芯部65の長さL2b)よりも大きく、且つ上下方向でのコイル60C,60D全体の長さL2よりも短く設定されている。そのため、各分割磁性体81,82は、各長辺部61,62とコイル収容部49C,49Dの内周部との間の隙間に収まるだけでなく、当該隙間から上下に突出している。そして、各分割磁性体81,82の上下の端部が、コイル60C,60Dの四隅とコイル収容部49C,49Dの内周部との間の注入空間S1内に位置している(図11参照)。
図8に示すように、各分割磁性体81,82の幅は、コイル60C,60Dの前後方向の厚み以下に設定されている。前後方向でのコイル60C,60Dの厚みは、コイル収容部49C,49Dが形成されている部分での中板40の厚み以下である。そして、各分割磁性体81,82は、コイル収容部49C,49Dから前後方向に突出せず、中板40の前後方向の厚みの範囲内に収まっている。
従って、各セットの磁性体80A,80Bは、上下方向及び左右方向でコイル収容部49C,49Dの寸法の範囲内に収まり、且つ前後方向で中板40の厚みの範囲内に収まり、外側に突出することなくコイル収容部49C,49D内に収容される。
コイル60C,60Dの外側に磁性体80A,80Bを配置する際に、磁性体80A,80Bの取り付け作業性に留意する必要がある。特に、本実施形態では、非常に薄型で単体での剛性が低い(柔軟な)分割磁性体81,82を用いているので、コイル60C,60Dの外周部とコイル収容部49C,49Dの内周部との間の狭い隙間に対して、後から薄板状の分割磁性体81,82を挿入して取り付けることは、作業上難しい。そこで、コイル60C,60Dを中板40に取り付ける前の段階で、コイル60C,60Dの外周部又はコイル収容部49C,49Dの内周部に対して各セットの磁性体80A,80Bの取り付けを行う。
図11に示す構成は、先に磁性体80A,80Bをコイル60C,60Dに取り付けた上で、コイル60C,60Dと共に磁性体80A,80Bを中板40に対して取り付けた場合を示している。この取り付け手順を経たことによって、コイル60C,60Dの外周部に分割磁性体81,82が隙間なく密接しているのに対して、コイル収容部49C,49Dの内周部と分割磁性体81,82との間には、僅かに隙間が存在する。
具体的な作業手順として、最初に、中板40に取り付ける前のコイル60C,60Dの各長辺部61,62の外周部に対して、各分割磁性体81,82を取り付ける。このコイル60C,60Dへの分割磁性体81,82の取り付けは、両面テープによる貼り付けや接着などの手法を用いることができる。
続いて、分割磁性体81,82が付いた状態のコイル60C,60Dを、コイル収容部49C,49Dに挿入する。ここで、第1の方法として、コイル60C,60Dを予めフレキシブル基板70上に取り付けておき、各コイル60C,60Dをそれぞれ対応するコイル収容部49C,49Dに後方から挿入しながら、フレキシブル基板70を中板40の後面側に取り付けることが可能である。この場合、分割磁性体81,82を取り付ける段階でのコイル60C,60Dは、既にフレキシブル基板70に支持された状態であってもよい。第2の方法として、フレキシブル基板70を先に中板40の後面側に取り付けた上で、各コイル60C,60Dをそれぞれ対応するコイル収容部49C,49Dに前方から挿入して、フレキシブル基板70に接続させることが可能である。
続いて、コイル60C,60Dの四隅とコイル収容部49C,49Dの内周部との間の注入空間S1(図11参照)に、接着剤を注入する。注入空間S1に注入した接着剤により、コイル60C,60Dと共に分割磁性体81,82が中板40に対して固定される。上述したように、各分割磁性体81,82の上下の端部が注入空間S1内に位置しているので、コイル60C,60Dの外周部全体に接着剤が行き渡らなくても、注入空間S1付近に接着剤を入れるだけで、分割磁性体81,82を確実に固定させることができ、作業効率に優れる。
以上のように磁性体80A,80Bの取り付け作業を行うことで、コイル60C,60Dとコイル収容部49C,49Dの間の狭い隙間に対して後から分割磁性体81,82を挿入するよりも、容易且つ確実に分割磁性体81,82の取り付けを行うことができ、組み立ての作業性が向上する。
なお、上記とは異なる取り付け手順として、コイル60C,60Dを進入させる前のコイル収容部49C,49Dの内周部に対して、磁性体80A,80Bの取り付け(両面テープによる貼り付けや接着など)を行ってもよい。コイル60C,60Dを進入させる前にコイル収容部49C,49Dへの磁性体80A,80Bの取り付け作業を行うことで、上記と同様に優れた作業性が得られる。
続いて、分割磁性体81,82が付いた状態のコイル収容部49C,49Dに対してコイル60C,60Dを進入させて、フレキシブル基板70を中板40の後面側に取り付ける。その結果、コイル収容部49C,49Dの内周部とコイル60C,60Dの外周部の間に分割磁性体81,82が位置する状態になる。最後に、注入空間S1付近への接着剤の注入を行う。
この別形態の取り付け手順を採用した場合、図11とは異なり、コイル収容部49C,49Dの内周部に分割磁性体81,82が隙間なく密接し、コイル60C,60Dの外周部と分割磁性体81,82との間に僅かに隙間が存在する構成になる。
以上の各形態の取り付け手順の説明から分かるように、コイル60C,60Dとコイル収容部49C,49Dの間の狭い隙間に対して後から分割磁性体81,82を挿入する場合に比して、磁性体80A,80Bの取り付け作業を行いやすくなる。つまり、取り付け作業性の向上という観点からは、コイル60C,60Dをコイル収容部49C,49Dに入れる前の段階で、分割磁性体81,82の取り付けを行うという要件を満たせばよい。
また、細長い分割磁性体81,82に対応する形状であるコイル60C,60Dの外周部やコイル収容部49C,49Dの内周部を取り付けの対象箇所とすることで、分割磁性体81,82の取り付け位置を容易に精度良く選択することができる。例えば、コイル60C,60Dやコイル収容部49C,49Dの前後方向の厚みが、前後方向での分割磁性体81,82の位置基準となる。また、コイル60C,60Dの長さL2の範囲が、分割磁性体81,82の長手方向の位置基準になる。そして、コイル60C,60Dの外周部やコイル収容部49C,49Dの内周部に取り付けることで、左右方向での分割磁性体81,82の位置が確実に定まる。従って、手間のかかる複雑な調整を要さずに、前後方向、上下方向、左右方向の各方向の磁性体80A,80Bの適正な位置を簡単に設定できる。
また、コイル収容部49C,49Dの四隅の注入空間S1への接着剤の注入で、磁性体80A,80Bを簡単且つ確実に固定できる。そのため、コイル60やフレキシブル基板70周りでの接着剤の塗布領域が小さくて済み、効率良く低コストに磁性体80A,80Bの固定を行うことができる。
以上のようにして磁性体80A,80Bを備えた中板40をステージ駆動装置10に組み込むと、これらの磁性体80A,80Bが、前ヨーク20に設けた永久磁石50C,50Dに対して前後方向に並ぶ位置関係になる(図7及び図8参照)。そして、各永久磁石50C,50Dからの磁気的な吸引力が、前後方向で対向関係にある各磁性体80A,80Bに対して作用する。この吸引力が、中板40を前ヨーク20側に引き付ける磁気バネとして機能し、中板40の3箇所の被挟持部47の前面が3つの転動体25に接触する状態が維持される。従って、固定部である前ヨーク20及び後ヨーク30と、可動部である中板40との間に、部品の個体差や組み付け誤差を吸収するための前後方向のクリアランスを設けても、中板40の前後方向位置を安定させることができる。その結果、前後方向への中板40のガタつきや光軸OXに対する中板40の傾きを防いで、中板40の高精度な支持及び動作を実現できる。つまり、撮像素子11の受光面の位置と向きを高精度に管理できる。
磁性体80A,80Bを用いて磁気バネの効果で中板40を安定させる構造は、引張バネや圧縮バネなどの機械的な付勢手段を用いる構造に比べて、小型に構成でき、生産性や製造コストの面でも優れている。具体的には、磁性体80A,80Bは、シンプルな薄板形状の金属などで構成されるので、安価に得られる。また、コイル60C,60Dや中板40のコイル収容部49C,49Dに磁性体80A,80Bを取り付けることで、磁気バネ用の構造が完成する。そのため、付勢手段を取り付けるための独自構造を前後のヨーク20,30や中板40に設ける必要がない。特に、コイル60C,60Dを収容するためのコイル収容部49C,49Dを、磁性体80A,80Bの設置スペースとしても利用しているので、中板40の構造の複雑化が生じず、シンプルで安価な構成となっている。
中板40の初期位置での分割磁性体81,82の位置を、図7に一点鎖線で示した。中板40の初期位置では、分割磁性体81,82の長手方向は、分割磁石51,52の長手方向と平行である。左右方向での分割磁性体81の位置は、分割磁石51の幅W1aの範囲内(分割磁石51の幅方向の中央よりも、隙間53から反対側(図7での左方)にやや偏った位置)であり、左右方向での分割磁性体82の位置は、分割磁石52の幅W1aの範囲内(分割磁石52の幅方向の中央よりも、隙間53から反対側(図7での右方)にやや偏った位置)である。また、上下方向での分割磁性体81,82のそれぞれの位置は、対応する分割磁石51,52の長さL1の範囲内にあり、分割磁石51,52の上端から分割磁性体81,82の上端までの長さと、分割磁石51,52の下端から分割磁性体81,82の下端までの長さは、略等しい。つまり、中板40の初期位置では、前後から見た分割磁石51,52のそれぞれの外形の内側に、分割磁性体81,82が位置している。そして、分割磁性体81は前後方向で対向する分割磁石51からの磁気的な吸引力を受け、分割磁性体82は前後方向で対向する分割磁石52からの磁気的な吸引力を受ける。
中板40が初期位置から動作平面に沿って移動すると、各分割磁石51,52に対する各分割磁性体81,82の位置が変化する。中板40が初期位置から移動しても、各分割磁性体81,82の少なくとも一方が対応する分割磁石51,52と前後方向で対向する関係にあることにより、磁気的な吸引力によって中板40の安定性が維持される。
正面視の状態での中板40の重心Pを図10に示した。重心Pは撮像素子11の受光面の中心よりもやや下方に位置している。撮像素子11を挟んで左右方向に離間して配された2箇所(永久磁石50Cと磁性体80A、永久磁石50Dと磁性体80B)に、磁気バネとして機能する永久磁石50と磁性体80を配置している。そして、磁性体80Aと永久磁石50Cのペアと、磁性体80Bと永久磁石50Dのペアが、中板40における重心Pを挟んだ配置関係にある。そのため、中板40を重心Pの両側でバランス良く付勢して、高度な安定性を持たせることができる。
また、図8に示すように、磁性体80A,80Bをそれぞれ構成する分割磁性体81,82は、前方の永久磁石50C,50Dに対して空間U1を間にして対向している。肉厚が大きい別の部材を間に介在させずに、分割磁性体81,82を中板40の前面側に臨む位置に設けているので、前後方向での永久磁石50C,50Dと分割磁性体81,82の距離も近づける(前後方向の空間U1の幅を小さくする)ことができる。これにより、磁気的な吸引力を効率良く磁性体80A,80Bに作用させることができ、小型の磁性体80A,80Bを用いて優れた磁気バネ効果を得ることができる。なお、図3や図5では、中板40の前面側にコイル60が露出し、前ヨーク20の後面側に永久磁石50が露出する状態を示しているが、ステージ駆動装置10の完成状態で、コイル60(磁性体80A,80B)の前側や、永久磁石50の後側に、薄いテープなどを取り付けてもよい。薄いテープなどであれば、前後方向での永久磁石50C,50Dと分割磁性体81,82の間隔設定には大きく影響せず、上記の効果を支障なく得られる。
前後方向での分割磁性体81,82の幅がコイル60C,60Dの厚み以下に抑えられており、分割磁性体81,82はコイル収容部49C,49Dから前後に突出しない。そのため、分割磁性体81,82は、中板40の前後に設けた前ヨーク20、永久磁石50C,50D、後ヨーク30などの他の構成要素に接触することがない。また、コイル収容部49C,49Dの内部に分割磁性体81,82を配置して中板40の厚みの範囲内に収めることで、ステージ駆動装置10を前後方向でコンパクトにすることができる。
例えば、分割磁性体81,82が中板40から前方に大きく突出していると、動作平面に沿って中板40が移動する際に、分割磁性体81,82が前ヨーク20側の永久磁石50C,50Dなどに擦れたり引っ掛かったりして、余分な動作抵抗が生じたり、部品のダメージが生じたりするおそれがある。また、分割磁性体81,82が中板40の後方に大きく突出していると、中板40が移動する際に、分割磁性体81,82が後ヨーク30側に干渉するおそれがある。本実施形態では、分割磁性体81,82が中板40の前後に突出していないので、このような不具合が生じない。そして、磁性体80A,80Bの存在に影響されずに、中板40に対して前ヨーク20や後ヨーク30を接近させて、前後方向で薄型のステージ駆動装置10にすることができる。
分割磁性体81,82は、表裏の平面部分をコイル収容部49C,49Dの内周部とコイル60C,60Dの外周部に対向させて、コイル収容部49C,49Dとコイル60C,60Dの間の隙間に配置されている。従って、図10に示すように、光軸OXに沿って前方から中板40を見たときに、分割磁性体81,82の狭い縁(厚み)の部分だけが表れる形態になり、磁性体80A,80Bが占める正面投影面積が極めて小さくなっている。これにより、コイル60C,60Dの外側に磁性体80A,80Bを設けながらも、光軸OXに対して垂直な方向での中板40の大きさをコンパクトに保つことができる。
具体的には、本実施形態のステージ駆動装置10では、個々の部品の個体差や、部品同士の組み付け誤差などを吸収する目的で、コイル収容部49C,49Dの内周部とコイル60C,60Dの外周部との間に予めクリアランスが設けられている。分割磁性体81,82は当該クリアランスを利用して配置されており、磁性体80A,80Bの取り付けに伴う中板40の外形寸法(上下方向や左右方向の大きさ)の増大は生じていない。
また、上述したように、コイル収容部49C,49Dとコイル60C,60Dの間という限定されたスペースに配置することで、分割磁性体81,82の位置精度を高めることができる。つまり、長辺部61,62における帯状の外周部や、コイル収容部49C,49Dの帯状の内周部を、分割磁性体81,82の取り付け位置の指標として利用できる。
また、コイル収容部49C,49Dとコイル60C,60Dの間に挿入された形態の分割磁性体81,82は、剥離や脱落を生じにくく、取り付け後の位置の安定性にも優れている。より詳しくは、左右方向への分割磁性体81,82の位置ずれは、コイル収容部49C,49Dの内周部や、コイル60C,60Dの長辺部61,62によって制限される。そのため、薄板状の部材において剥離が生じやすい厚み方向への脱落が、分割磁性体81,82においては確実に防止される。また、注入空間S1に注入した接着剤により分割磁性体81,82の両端部が固定されているので、左右方向以外の方向への分割磁性体81,82の移動(コイル収容部49C,49Dから前方への脱落など)も防止される。特に、分割磁性体81,82は、前ヨーク20と後ヨーク30の間で前後方向に向けて形成される磁界内に配置されているが、継続的な磁力の影響下でも、前後方向への分割磁性体81,82の剥離や脱落が生じにくい。
各磁性体80A,80Bを構成する一対の分割磁性体81,82は、左右方向(コイル60C,60Dの幅方向)に分けて配置されている。各分割磁性体81,82は、コイル60C,60Dの長辺部61,62の両側に沿って配置されており、左右方向でコイル60C,60Dの寸法分(図7に示すコイル60の幅W2の分)だけ分割磁性体81,82が離間した位置関係にある。
これにより、コイル60Cの空芯部65内に位置する磁気センサ66Cとは前後方向で重ならない位置に(光軸OXと垂直な動作平面に沿う方向で、磁気センサ66Cとは位置を異ならせて)、磁性体80Aの各分割磁性体81,82が設置される。このように磁気センサ66Cから離して分割磁性体81,82を位置させると、永久磁石50Cから磁性体80Aの分割磁性体81,82に働く磁力が、磁気センサ66Cの検出精度に影響することを抑制できる。特に、分割磁性体81,82は、単に前後方向で空芯部65と重ならないだけでなく、長辺部61,62の幅W2aの分だけ空芯部65から離れた位置にある。そのため、左右方向で磁気センサ66Cからの分割磁性体81,82の距離を大きくさせ、磁気センサ66Cの検出精度への影響をより一層小さくできる。
また、一対の分割磁性体81,82を、各コイル60C,60Dの両側に振り分けて配置することで、中板40が左右方向(コイル60の幅方向)のいずれに移動した場合でも、概ね均等な磁気バネの効果を得ることができる。
なお、本実施形態ではコイル60Dの空芯部65内には磁気センサを有していないが、磁性体80Aと磁性体80Bの構成は略同じであるため、コイル60Dの空芯部65内に磁気センサを配置する場合には、磁性体80Bの各分割磁性体81,82と磁気センサの関係性においても、上記と同様の効果が得られる。
コイル60C,60Dの長辺部61,62に沿って配置した磁性体80A,80Bは、コイル収容部49C,49Dの空間の範囲内で、それぞれの分割磁性体81,82が長く形成されている。そのため、磁性体80A,80Bは、永久磁石50C,50Dからの磁力を受ける範囲が大きくなり、高い磁気バネ効果を得ることができる。特に、分割磁性体81,82は、長辺部61,62の長さ(空芯部65の長さL2b)を超えて、注入空間S1まで進入する長さを有しているので、より高度な性能の磁気バネとすることができる。
各磁性体80A,80Bは、推力Fの作用方向で分割磁性体81,82の占める範囲(厚み)が小さく、コイル60Cやコイル60Dへの通電によって中板40を左右方向に駆動させたときに永久磁石50C,50Dとの対向位置を外れにくい。例えば、図7に示す左右方向の駆動代G1,G2の範囲の略全体で、各分割磁性体81,82が永久磁石50C,50Dと対向する位置関係を維持できる。
また、各磁性体80A,80Bの分割磁性体81,82は、上下方向に長く、コイル60Aやコイル60Bへの通電によって中板40を上下方向に駆動させたときにも、永久磁石50C,50Dとの対向位置を外れにくい。例えば、図7に示す左右方向の駆動代H1,H2の範囲で中板40を上下方向に移動させた場合、分割磁性体81,82の長手方向の大部分が、永久磁石50C,50Dと対向する位置関係を維持できる。つまり、分割磁性体81,82が永久磁石50C,50と対向する長さを多く確保できる。
従って、本実施形態の磁性体80A,80Bの構成及び配置によれば、永久磁石50C,50Dなどの大型化を伴わずに、磁気バネ効果を得られる中板40の有効駆動範囲を大きくさせることができる。言い換えれば、小型な構成で、中板40の大きい駆動量に対応した磁気バネを構成できる。
図12から図14は、磁気バネの第2の形態を示している。この第2の形態は、中板40のうち、コイル収容部49Cの内部に1セット、コイル収容部49Dの内部に1セットの、計2セットの磁性体80を配している点では、先に説明した第1の形態と共通している。コイル収容部49Cの内部に配した磁性体80Cと、コイル収容部49Dの内部に配した磁性体80Dのそれぞれの構成が、上述した第1の形態の磁性体80A,80Bとは異なっている。
図12に示すように、各セットの磁性体80C,80Dは、一対の分割磁性体83,84で構成されている。分割磁性体83,84は、コイル収容部49C,49Dの内周部とコイル60C,60Dの外周部の間に配置されており、コイル収容部49C,49Dの内周部とコイル60C,60Dの外周部にそれぞれ対向する平面部分を表裏に有する薄板状の金属などで構成されている。分割磁性体83は、各コイル60C,60Dの一方の短辺部63の外周部に沿って配置されている。分割磁性体84は、各コイル60C,60Dの他方の短辺部64の外周部に沿って配置されている。
各分割磁性体83,84は、上下方向から見て細長い矩形状であり、長手方向が左右方向、短手方向(表裏の平面部分の幅方向)が前後方向、厚みの方向(表裏の平面部分を結ぶ方向)が上下方向となるように配置される。各磁性体80C,80Dにおける各分割磁性体83,84の長手方向(左右方向)の大きさを「長さ」とし、各分割磁性体83,84の短手方向(前後方向)の大きさを「幅」とする。
図14に示すように、コイル60C,60Dの各短辺部63,64とコイル収容部49C,49Dの内周部との間の上下方向の隙間に収まるように、各分割磁性体83,84の厚みが設定されている。
図7に示すように、各分割磁性体83,84の長さは、コイル60C,60Dの一対の短辺部63,64の長さ(空芯部65の幅W2b)よりも大きく、且つ左右方向でのコイル60C,60D全体の幅W2よりも短く設定されている。そのため、各分割磁性体83,84は、各短辺部63,64とコイル収容部49C,49Dの内周部との間の隙間に収まるだけでなく、当該隙間から左右に突出している。そして、各分割磁性体83,84の左右の端部が、コイル60C,60Dの四隅とコイル収容部49C,49Dの内周部との間の注入空間S1内に位置している(図14参照)。
図8に示すように、各分割磁性体83,84の幅は、コイル60C,60Dの前後方向の厚み以下に設定されており、各分割磁性体83,84は、コイル収容部49C,49Dから前後方向に突出しない。
従って、各セットの磁性体80C,80Dは、上下方向及び左右方向でコイル収容部49C,49Dの寸法の範囲内に収まり、且つ前後方向で中板40の厚みの範囲内に収まり、外側に突出することなくコイル収容部49C,49D内に収容される。
各セットの磁性体80C,80Dは、上述した第1の形態の磁性体80A,80Bと同様の手順によって中板40に対して取り付けられる。すなわち、少なくともコイル収容部49C,49D内にコイル60C,60Dを配置するよりも前に、コイル60C,60Dの外周部又はコイル収容部49C,49Dの内周部に分割磁性体83,84を取り付けることが好ましい。そして、コイル60C,60Dと分割磁性体83,84をコイル収容部49C,49D内に位置させた状態で、注入空間S1に接着剤を注入することで、分割磁性体83,84が中板40に対して確実に固定される。
以上のようにして取り付けた各セットの磁性体80C,80Dでは、対をなす分割磁性体83,84が、コイル60C,60Dを間において、上下方向に間隔を空けて略平行に配置されている。そして、磁性体80C,80Dのそれぞれの分割磁性体83,84が、前ヨーク20に設けた永久磁石50C,50Dに対して前後方向に並ぶ位置関係になる(図7及び図8参照)。各永久磁石50C,50Dからの磁気的な吸引力が、前後方向で対向関係にある各磁性体80C,80Dに対して作用して、中板40を前ヨーク20側に引き付ける磁気バネとして機能する。
図7に示すように、中板40の初期位置において、上下方向での分割磁性体83,84のそれぞれの位置は、対応する分割磁石51,52の長さL1の範囲内にあり、分割磁石51,52の上端から上側の分割磁性体83までの長さと、分割磁石51,52の下端から下側の分割磁性体84までの長さは、略等しい。また、分割磁性体83,84の長手方向は分割磁石51,52の幅方向と平行であり、左右方向での分割磁性体83,84の位置は、永久磁石50全体の幅W1の中央付近である。
中板40が初期位置から動作平面に沿って移動すると、各分割磁石51,52に対する各分割磁性体83,84の位置が変化する。永久磁石50とコイル60で構成したボイスコイルモータによって中板40の駆動が制御される実用上の駆動範囲では、各磁性体80C,80Dにおいて、対をなす分割磁性体83,84の少なくとも一方が、分割磁石51,52との対向関係を維持するように、各部品の形状や配置が設定されている。個々の磁性体80C,80Dで、少なくとも一方の分割磁性体83,84が分割磁石51,52と対向していれば、中板40のガタつきや傾き防止に必要な吸引力が得られる設定になっている。従って、中板40が初期位置から移動しても、常に磁気的な吸引力によって中板40の安定性が維持される。
図14に示すように、磁性体80Cにおいては、コイル60Cの空芯部65内に位置する磁気センサ66Cとは前後方向で重ならない位置に(光軸OXと垂直な動作平面に沿う方向で、磁気センサ66Cとは位置を異ならせて)、分割磁性体83,84が設置される。そのため、永久磁石50Cから磁性体80Cの分割磁性体83,84に働く磁力が、磁気センサ66Cの検出精度に影響することを抑制できる。特に、分割磁性体83,84は、単に前後方向で空芯部65と重ならないだけでなく、短辺部63,63の幅L2aの分だけ空芯部65から離れた位置にある。そのため、上下方向で磁気センサ66Cからの分割磁性体83,84の距離を大きくさせ、磁気センサ66Cの検出精度への影響をより一層小さくできる。
第2の形態の磁性体80C,80Dは、コイル収容部49C,49Dの内部に収まる配置によって、ステージ駆動装置10の小型(特に前後方向での薄型化)や、配置構造の簡略化に寄与する。また、磁性体80C,80Dをそれぞれ構成する分割磁性体83,84は、肉厚が大きい別の部材を間に介在させずに、前方の永久磁石50C,50Dに対して近い位置で空間U1を間にして対向しているため、磁気的な吸引力を効率良く磁性体80C,80Dに作用させて、小型の磁性体80C,80Dを用いて優れた磁気バネ効果を得ることができる。なお、上記の第1の形態と同様に、コイル60(磁性体80C,80D)の前側や、永久磁石50の後側に、薄いテープなどを取り付けてもよい。また、コイル収容部49C,49Dの内周部とコイル60C,60Dの外周部との間に分割磁性体83,84を配置することで、磁性体80C,80Dの位置精度や安定性を向上させることができる。このように、第2の形態の磁性体80C,80Dは、小型で簡単な構造によって中板40の安定性や高精度に駆動制御を実現できるという点において、上述した第1の形態の磁性体80A,80Bと同様の特徴及び効果を有する。
上記実施形態では、コイル60(60C,60D)の外周部、あるいはコイル収容部49(49C,49D)の内周部に対して、磁性体80を構成する分割磁性体81,82,83,84を直接に貼り付けるものとしたが、磁性体を取り付ける構成や手法はこれに限定されない。例えば、図15に示す磁性体の取り付け構造の変形例では、コイル60の外周部に取り付けられる取付部材85,86を用いている。
取付部材85,86はそれぞれ、コイル60の長辺部61,62に沿う平板状部分と、平板状部分の両端を湾曲(屈曲)させてコイル60の短辺部63,64に沿うようにした屈曲部分とを有している。各取付部材85,86は、僅かに変形させてコイル60の外周部に嵌めることが可能である。取付部材85の平板状部分に対して上記実施形態の分割磁性体81を取り付け、取付部材86の平板状部分に対して上記実施形態の分割磁性体82を取り付ける。そして、各取付部材85,86をコイル60に取り付ける。
この変形例によれば、分割磁性体81,82を予め支持させた取付部材85,86を、コイル60に対して嵌めるだけで、磁性体の取り付けを行うことができるので、組立時の作業性に優れる。取付部材85,86は、コイル収容部49の注入空間S1に注入した接着剤によって中板40やコイル60に固定されるので、脱落するおそれがない。
図15の構成では、二分割された取付部材85,86を用いているが、コイル60の外周全体を囲む一体型の取付部材を用いることもできる。また、図15は磁性体80A,80Bを構成する分割磁性体81,82の取り付けを例にしたが、磁性体80C,80Dを構成する分割磁性体83,84の取り付けにも適用が可能であり、この場合は、コイル60の短辺部63,64に沿う形状の取付部材を用いればよい。
以上、図示実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨内における変更や改良が可能である。
本発明では、中板40のコイル収容部49の内部のうち、コイル60の外側に磁性体80を配置する上記実施形態の構成が有効である。例えば、上記実施形態では、コイル60(60A,60B,60C)の空芯部65に磁気センサ66(66A,66B,66C)が配置されており、空芯部65の内側に磁気バネ用の磁性体を配置すると、磁気センサ66の検知精度に影響が及びやすくなる。また、図9から図11に示す第1の形態の磁性体80A,80Bとは異なり、コイル60C,60Dの長辺部61,62の内側(空芯部65側)に分割磁性体81,82を配置すると、左右方向において、分割磁性体81と分割磁石52の距離が近くなり、分割磁性体82と分割磁石51の距離が近くなる。そのため、中板40を左右方向に駆動する際に、上述した前後方向への磁気吸引力に加えて、分割磁石52から分割磁性体81へ作用する磁力や、分割磁石51から分割磁性体82へ作用する磁力が強まって、中板40の動作精度に影響する余分な外力が加わりやすくなる。
但し、これらの問題点を解消できる場合に、コイルの内側に磁性体を配置する構成を選択することも可能である。また、コイル収容部の内部で、コイルの外側と内側の両方に磁性体を配置する構成を選択することも可能である。
上記実施形態のステージ駆動装置10では、コイル収容部49の内部に、コイル60の幅方向に分割された一対の分割磁性体81,82や、コイル60の長手方向に分割された一対の分割磁性体83,84を配置している。これにより、永久磁石50からの磁気的な吸引力を効率的に且つバランス良く受けて、中板40の高い安定性と高度な位置精度の確保を実現している。
しかし、個々のコイル収容部49の内部に、分割されない単一の磁性体を配置する構成を選択することもできる。例えば、第1の形態の変形例として、分割磁性体81と分割磁性体82のいずれか一方のみによって磁性体80Aや磁性体80Bを構成することも可能である。
磁気バネ用の磁性体を複数設ける場合、上記実施形態のように、可動部である中板40の重心Pを挟む位置関係にあるコイル収容部49C,49Dの内部に、磁性体80A,80Bや磁性体80C,80Dを配置することが好ましい。特に、重心Pに関して対称に近い関係で略同じ大きさの磁性体を配置することが好ましい。これにより、中板40に対してバランスが最適化された磁気的な吸引力を作用させることができる。第1の形態の磁性体80Aと磁性体80B、第2の形態の磁性体80Cと磁性体80Dは、いずれも当該要件を満たす配置である。
しかし、磁性体の配置は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では磁性体の配置箇所として使用していないコイル収容部49A,49Bを用いて、磁性体を配置してもよい。具体的には、コイル収容部49Aとコイル収容部49Cのそれぞれの内部に磁性体を配置したり、コイル収容部49Bとコイル収容部49Dのそれぞれの内部に磁性体を配置したりすることも可能である。コイル収容部49Aとコイル収容部49C、コイル収容部49Bとコイル収容部49Dはそれぞれ、概ね中板40の重心Pに関して互いに反対側に位置する関係であるため、これらの内部に磁性体を配置する構成でも、中板40に対する磁気的な吸引力のバランスをとることができる。
さらに、上記実施形態の中板40とは異なる形状の中板においても、本発明による磁性体の配置を適用できる。例えば、撮像素子の受光面の2つの辺に沿うL字形状の中板で、一方の辺に沿って上記実施形態のコイル60Aやコイル60Bに相当するコイルを支持し、他方の辺に沿って上記実施形態のコイル60Cやコイル60Dに相当するコイルを支持したものが知られている。このような中板で、各コイルを収容するコイル収容部の内部に磁性体を配置してもよい。
上記実施形態では、中板40の各コイル収容部49が前後方向に貫通する構造である。これにより、コイル収容部49の後方にフレキシブル基板70を配しつつ、コイル収容部49の前方を開放させて、ボイスコイルモータの駆動効率や磁性体80への磁気吸引力を向上させる効果が得られる。また、コイル収容部49の前後に余分な肉厚が存在しないので、前後方向で中板40を薄型化できる。しかし、上記実施形態のような貫通構造ではなく、有底の凹状であるコイル収容部を採用することも可能である。
上記実施形態のステージ駆動装置10では、コイル60の幅方向に分割及び離間された分割磁石51,52によって永久磁石50を構成しているが、各コイルに対して分割されない1つの永久磁石を配した構成や、2つの分割磁石51,52を隙間なく隣接して配置する構成などを選択することもできる。
上記実施形態のステージ駆動装置10では、球状の転動体25,35を介して中板40を支持しているが、異なる支持構造によって中板を移動可能に支持したものにも適用可能である。一例として、直線的に移動可能なステージ機構を2段階備えた、いわゆるXYステージによって可動部を支持した場合でも、本発明を適用可能である。
上記実施形態のステージ駆動装置10は、前ヨーク20と後ヨーク30で固定部を構成しているが、固定部の基本となる部材を非磁性体にして、ヨークを別途取り付けるという構成を選択してもよい。
上記実施形態のステージ駆動装置10とは逆に、可動部に永久磁石を設けた、いわゆるムービング・マグネット型のステージ駆動装置に本発明を適用することも可能である。この場合、固定部側をコイル支持要素にして、コイル、磁性体(磁気バネ用)、磁気センサなどを設ける。その上で、可動部側の永久磁石との間で磁気バネの作用を発揮し(可動部が移動する動作平面に対して垂直な方向で永久磁石と並び)、且つ固定部側のコイル収容部の内部に位置するように、磁性体を配置すればよい。
上記実施形態のステージ駆動装置10は撮像素子11を駆動するものであるが、撮像装置において撮像素子以外の光学素子(レンズなど)を駆動するものにも適用が可能である。
ステージ駆動装置で撮像素子を駆動させる場合の用途は、手振れ補正以外でもよい。例えば、上記実施形態のステージ駆動装置10は、光軸OXと垂直な平面内で撮像素子11を傾けることが可能であり、この撮像素子11の動きによって、撮影構図の傾き調整を実行してもよい。
本発明は撮像装置に好適であるが、撮像装置以外にも適用が可能であり、ステージ駆動装置による駆動対象は、撮像素子や光学素子以外のものでもよい。