JP7400273B2 - ポリイミドフィルム積層体および、ポリイミドフィルム積層体の製造方法 - Google Patents

ポリイミドフィルム積層体および、ポリイミドフィルム積層体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリイミドフィルムと反応性化合物層が交互に積み重なった構造からなるポリイミドフィルム重層体の熱処理によって反応性化合物層を反応させることで得られるポリイミドフィルム積層体およびその製造方法に関するものである。
本発明は、フレキシブルプリント回路基板(以下「FPC基板」という)の強度を保持するために、FPC基板に接着させて使用される支持板あるいは補強板、特に複数枚のポリイミドフィルムを貼り合わせて形成されたポリイミドフィルム積層体及びこのポリイミドフィルム積層体作製法に関する。
単層又は複層のポリイミドフィルムの片側又は両側に加熱硬化型の接着剤を設けたフィルムの代表的な例をあげると、「カバーレイフィルム」や「TAB(Tape Automated Bonding)用フィルム」が挙げられる。これらのフィルムに用いられている接着剤は、図1(a)に示されるように、ポリイミドフィルムからなる基材フィルム11上に塗布された後乾燥されて半硬化状態(Bステージ)の接着剤層12とされている。そして、この接着剤層12の表面には、通常更にセパレーター13が積層されている。この積層物は、使用前においては半硬化状態とされた接着剤層を有する形態で保管されている。他の形態のポリイミドフィルムの接着剤層としては、接着剤ワニスをガラスクロスなどの補強基材に含浸させ、乾燥させて得られたプリプレグが挙げられる。プリプレグも、接着剤はBステージの状態で保管される。そして、図1(b)に示されるように、これらカバーレイフィルムやTAB 用フィルムの基材フィルム11 を、接着層2(接着剤あるいはプリプレグからなる)を介してFPC基板14などの対象物に重ね合わせ、加熱、加圧することにより、基材フィルム11がFPC基板14などの対象物に接着される。また、図2に示されるように、銅箔などの金属箔23とポリイミドフィルム11とを接着剤22により接着したFPC基板も知られているが、これらの接着においては、金属箔とポリイミドフィルムとを貼合せた後、加熱エージングを行うことが必要である。
ところで、FPC基板は、通常基板の厚みが薄い(例えば、12.5~100μm)。しかし基板の厚みが薄いと、スイッチ部やコネクター部において不都合が起き易い。このため、従来、この不都合の起き易い部分あるいはこの不都合の起き易い部分をも含むポリイミドフィルムからなるFPC基板を、加熱硬化型の接着剤(ボンディングシートという)を介して支持体に固定することが行われている。この場合、1~3MPa の圧力下において150~180℃で15~45分、加熱、加圧することが一般的な接着条件である。このFPC基板を支持するあるいは補強するために使用される支持板としては、一般的には単層のポリイミドフィルムが用いられている。厚さ225μm以下の単層ポリイミドフィルムは、広く一般的に市販されており、この市販の単層ポリイミドフィルムが支持板として使用されている。これら単層ポリイミドフィルムの代表的なものを挙げると、カプトンHまたはVタイプ(東レ・デュポン(株)製)、ユーピレックスSタイプ(宇部興産(株)製)、アピカルAHまたはNPIタイプ((株)カネカ製)などの商品名で市販されているポリイミドフィルムが挙げられる。単層のポリイミドフィルムは、各商品によりその硬さや腰(Stiffness)が一定である。しかし、用途によっては、同じ厚さであっても、単層のものより剛性が求められる場合がある。
また、ポリイミドフィルムは、主として流延による溶液製膜で製造されており、その製法上厚いフィルムを作ることは困難であったり、またはその生産性が極度に劣ったりしていた。
剛性やフィルム厚みの問題を解決するために、複数のポリイミドフィルムを貼り合わせたポリイミドフィルム積層体が用いられる。ポリイミドフィルム積層体の製造方法としては、熱可塑性ポリイミドを介してポリイミドフィルムを熱プレスにより積層する方法や、ポリイミドフィルムの片面ないしは両面に反応性化合物を塗布し、ラミネート、加熱により反応させる方法などが挙げられる。
ポリイミドフィルムの片面ないしは両面に反応性化合物を塗布してポリイミドフィルム積層体を製造する場合、塗布された化合物の反応には加熱を用いるのが簡便かつ一般的であるが、重ね合わせたポリイミドフィルムを急加熱すると、ポリイミドフィルムに含まれる水分の蒸発により、ポリイミドフィルム層とポリイミドフィルム層の間にウキ(ブリスター)が生じてしまう場合がある。特に、ポリイミドフィルムの枚数が3枚以上の場合、中央に配置されたポリイミドフィルムから蒸発した水分が、より積層体外に放出されにくくなるため、ウキ(ブリスター)の発生が顕著である。なお、フィムル層間に異物が混入すると、テント効果によりウキ(ブリスター)が発生する。しかしながら、本発明において課題とするウキは、フィルムから放散された水分に起因するため、ウキ内部に核となる異物が存在しない。
特願2016-090555
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリイミドフィルムと反応性化合物層が交互に積み重なった、ポリイミドフィルム重層体について、加熱により層間の反応を進行させる際、ポリイミドフィルムに含まれる水分量によって加熱温度を調整することで、重ね合わせたポリイミド間のウキ(ブリスター)の発生を抑制できることを見出し、加えて本手法が広く反応性化合物を介して形成されるフィルム積層体全般に適用可能であることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
[1] 複数のポリイミドフィルム層と反応性化合物層が交互に積み重なった構造を有するポリイミドフィルム積層体であって、ポリイミドフィルム層間に存在する異物コアを有さない直径100μm以上5mm以下のウキ(ブリスター)の数が、100平方cmあたり、((ポリイミドフィルム層数-1)×5個)以下であることを特長とするポリイミドフィルム積層体。
[2] 前記反応性化合物層の厚さが5nm以上800nm以下である事を特徴とする[1]に記載のポリイミドフィルム積層体。
[3] 複数のポリイミドフィルム層と反応性化合物層が交互に積み重なった構造を有するポリイミドフィルム重層体を熱処理してポリイミドフィルム積層体を得るポリイミドフィルム積層体の製造方法において、ポリイミドフィルム層に含まれる平均水分量が1.5質量%以上の場合には180℃以下で、1.5質量%未満の場合には180℃以上で熱処理することを特長とするポリイミドフィルム積層体の製造方法。
[4] 熱処理前のポリイミドフィルム重層体における、各ポリイミドフィルム層間の剥離強度が2N/cm以下となるようにポリイミドフィルム層と反応性化合物層を交互に積み重ねた後に熱処理を行う事を特長とする[3]に記載のポリイミドフィルム積層体の製造方法。
[5] 前記反応性化合物層を形成する反応性化合物が、40℃において液体であり、かつ沸点が100℃以上であることを特長とする[3]または[4]に記載のポリイミドフィルム積層体の製造方法。
本発明のポリイミドフィルム積層体の製造方法は、ポリイミドフィルムに含有される水分の蒸発によるウキ(ブリスター)の発生を抑制できるため、結果として欠点の少ない高品位なフィルム積層体を得ることができる。
図1は、片面に接着剤層を設けたPIフィルム(a)およびPIフィルムが貼り合わされたFPC基板(b)の断面模式図である。 図2は、銅箔とPIフィルムを貼り合わせたFPC基板の断面模式図である。 図3は、2枚の薄いPIフィルムを貼り合わせたスティフナーの断面模式図である。 図4は、本発明における、フィルムへの、気相を介したシランカップリング剤処理法に用いる装置の一例を示す概略構成図である。 図5は、シランカップリング剤処理装置の一例を示す概略図である。
<ポリイミドフィルム重層体>
本発明におけるポリイミドフィルム重層体とは、反応性化合物が片面ないしは両面に塗布されたポリイミドフィルムが重ね合わされたものあるいは仮接着されたものを指し、重ね合わせ方法、仮接着方法は問わない。また、ポリイミドフィルムの重ね合わせ枚数は2枚以上であれば何枚でも良い。
<ポリイミドフィルム積層体>
本発明におけるポリイミドフィルム積層体とは、ポリイミドフィルム重層体を熱処理することによって得られる積層体を指し、積層数は2層以上であれば何層でも良い。
<ポリイミドフィルム>
本発明のポリイミドフィルム層はポリイミドフィルムからなる。本発明のポリイミドフィルムの厚さは3μm以上が好ましく、11μm以上がなお好ましい。ポリイミドフィルムの厚さの上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとしての要求より250μm以下であることが好ましく、さらに150μm以下、なおさらには90μm以下が好ましい。
本発明のポリイミドフィルムの面積は、積層体やフレキシブル電子デバイスの生産効率・コストの観点より、大面積であることが好ましい。1000平方cm以上であることが好ましく、1500平方cm以上であることがより好ましく、2000平方cm以上であることがさらに好ましい。
本発明では、ポリイミドフィルムとして芳香族ポリイミド、脂環族ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどを用いることが出来る。より好ましくは、ポリイミド骨格を50%以上含む高分子を指す。
一般にポリイミドフィルムは、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を、ポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥してグリーンフィルム(「前駆体フィルム」または「ポリアミド酸フィルム」ともいう)となし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、あるいは該支持体から剥がした状態でグリーンフィルムを高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることによって得られる。
ポリアミド酸を構成するジアミン類としては、特に制限はなく、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類等を用いることができる。耐熱性の観点からは、芳香族ジアミン類が好ましく、芳香族ジアミン類の中では、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類がより好ましい。ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いると、高い耐熱性とともに、高弾性率、低熱収縮性、低線膨張係数を発現させることが可能になる。ジアミン類は、単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
一般にポリイミドフィルムは、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を、ポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥してグリーンフィルム(「前駆体フィルム」または「ポリアミド酸フィルム」ともいう)となし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、あるいは該支持体から剥がした状態でグリーンフィルムを高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることによって得られる。
ポリアミド酸を構成するジアミン類としては、特に制限はなく、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類等を用いることができる。耐熱性の観点からは、芳香族ジアミン類が好ましく、芳香族ジアミン類の中では、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類がより好ましい。ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いると、高い耐熱性とともに、高弾性率、低熱収縮性、低線膨張係数を発現させることが可能になる。ジアミン類は、単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、特に限定はなく、例えば、5-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5-アミノ-2-(m-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6-アミノ-2-(m-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’-p-フェニレンビス(5-アミノベンゾオキサゾール)、2,2’-p-フェニレンビス(6-アミノベンゾオキサゾール)、1-(5-アミノベンゾオキサゾロ)-4-(6-アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6-(4,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(4,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,3’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,3’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール等が挙げられる。
上述したベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類以外の芳香族ジアミン類としては、例えば、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスアニリン)、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-トリフルオロメチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-フルオロフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-メチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-シアノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-ビフェノキシベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、および上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てが、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1~3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
前記脂肪族ジアミン類としては、例えば、1,2-ジアミノエタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,8-ジアミノオクタン等が挙げられる。
前記脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
芳香族ジアミン類以外のジアミン(脂肪族ジアミン類および脂環式ジアミン類)の合計量は、全ジアミン類の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。換言すれば、芳香族ジアミン類は全ジアミン類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
ポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸類としては、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂肪族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂環族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)を用いることができる。中でも、芳香族テトラカルボン酸無水物類、脂環族テトラカルボン酸無水物類が好ましく、耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸無水物類がより好ましく、光透過性の観点からは脂環族テトラカルボン酸類がより好ましい。これらが酸無水物である場合、分子内に無水物構造は1個であってもよいし2個であってもよいが、好ましくは2個の無水物構造を有するもの(二無水物)がよい。テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
脂環族テトラカルボン酸類としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸等の脂環族テトラカルボン酸、およびこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の無水物構造を有する二無水物(例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等)が好適である。なお、脂環族テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
芳香族テトラカルボン酸類としては、特に限定されないが、ピロメリット酸残基(すなわちピロメリット酸由来の構造を有するもの)であることが好ましく、その酸無水物であることがより好ましい。このような芳香族テトラカルボン酸類としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸無水物等が挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸類は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
本発明におけるポリイミド樹脂は、用途によっては透明であることが好ましい場合がある。その前駆体の合成に用いられる酸成分として1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(別名「ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物」)、メチルノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-(メチルノルボルナン)-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(別名「ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロヘキサノン-6’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物」)、メチルノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-(メチルノルボルナン)-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロプロパノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロブタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘプタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロオクタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロノナノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロウンデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロドデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロトリデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロテトラデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-(メチルシクロペンタノン)-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-(メチルシクロヘキサノン)-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物などが例示されるが、特に好ましいのは1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物である。これらの脂肪族カルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。一方、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物などの不飽和結合を含むものは加熱処理時に着色し、フィルムの光学特性を低下させる傾向があるため好ましくない。
本発明のポリイミド系樹脂またはその前駆体の合成に用いられるジアミン成分をジアミン化合物として例示すると、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,4-ジアミノトルエン、4,5-ジメチル-1,2-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、3-アミノベンジルアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)、4,4’-エチレンジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、ビス(2-アミノフェニル)スルフィド、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、2,7-ジアミノフルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。また脂肪族ジアミンとして1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジアミン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジアミン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,6-ジアミン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,7-ジアミン、2,3-ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンなどが例示される。これらの中で特に好ましいのはp-フェニレンジアミン、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルシクロヘキシルアミン)である。上記アミン成分は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明のポリイミドフィルムは、ガラス転移温度が250℃以上、好ましくは300℃以上、さらに好ましくは350℃以上であり、あるいは500℃以下の領域においてガラス転移点が観測されないことが好ましい。本発明におけるガラス転移温度は、示差熱分析(DSC)により求めるものである。
本発明のポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)は、好ましくは、-5ppm/K~+20ppm/Kであり、より好ましくは-5ppm/K~+15ppm/Kであり、さらに好ましくは1ppm/K~+10ppm/Kである。CTEが前記範囲であると、一般的な支持体との線膨張係数の差を小さく保つことができ、熱を加えるプロセスに供してもポリイミドフィルムと無機物からなる支持体(たとえばFPC基板)とが剥がれることを回避できる。また、問題とする本発明におけるポリイミドフィルムの線膨張係数は30から200℃の間の平均の値を用いているが、用途によって、注目する温度範囲は変わり、高温でのプロセスを考慮して、30℃から400℃の範囲を調べる場合、100℃から400℃の範囲の場合もあり、リフロープロセスを念頭において、50℃から280℃の範囲を調べる場合、使用温度範囲として、-50℃から150℃の範囲を重視する場合もありえる。
本発明におけるポリイミドフィルムの破断強度は、60MPa以上、好ましくは120MP以上、さらに好ましくは240MPa以上である。破断強度の上限に制限は無いが、事実上1000MPa程度未満である。なお、ここで前記ポリイミドフィルムの破断強度とは、ポリイミドフィルムの長さ方向と幅方向の平均値をさす。
本発明におけるポリイミドフィルムの厚さ斑は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは7%以下、特に好ましくは4%以下である。厚さ斑が20%を超えると、狭小部へ適用し難くなる傾向がある。なお、フィルムの厚さ斑は、例えば接触式の膜厚計にて被測定フィルムから無作為に10点程度の位置を抽出してフィルム厚を測定し、下記式に基づき求めることができる。
フィルムの厚さ斑(%)
=100×(最大フィルム厚-最小フィルム厚)÷平均フィルム厚
本発明におけるポリイミドフィルムは、その製造時において幅が300mm以上、長さが10m以上の長尺ポリイミドフィルムとして巻き取られた形態で得られるものが好ましく、巻取りコアに巻き取られたロール状ポリイミドフィルムの形態のものがより好ましい。
ポリイミドフィルムにおいては、ハンドリング性および生産性を確保する為、フィルム中に滑材(粒子)を添加・含有させて、ポリイミドフィルム表面に微細な凹凸を付与して滑り性を確保することが好ましい。前記滑材(粒子)とは、好ましくは無機物からなる微粒子であり、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭素化物、金属酸塩、リン酸塩、炭酸塩、タルク、マイカ、クレイ、その他粘土鉱物、等からなる粒子を用いることができる。好ましくは、酸化珪素、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、ガラスフィラーなどの金属酸化物、リン酸塩、炭酸塩を用いることができる。滑材は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記滑材(粒子)の体積平均粒子径は、通常0.001~10μmであり、好ましくは0.03~2.5μm、より好ましくは0.05~0.7μm、さらに好ましくは0.05~0.3μmである。かかる体積平均粒子径は光散乱法で得られる測定値を基準とする。粒子径が下限より小さいとポリイミドフィルムの工業的生産が困難となり、また上限を超えると表面の凹凸が大きくなりすぎて貼り付け強度が弱くなり、実用上の支障が出る恐れがある。
前記滑材の添加量は、ポリイミドフィルム中の高分子成分に対する添加量として、0.02~50質量%であり、好ましくは0.04~3質量%、より好ましくは0.08~1.2質量%である。滑材の添加量が少なすぎると滑材添加の効果が期待し難く、滑り性の確保がそれほどなくポリイミドフィルム製造に支障をきたす場合があり、多すぎると、フィルムの表面凹凸が大きくなり過ぎて、滑り性の確保が見られても平滑性の低下を招いたり、ポリイミドフィルムの破断強度や破断伸度の低下を招いたり、CTEの上昇を招くなどの課題を招く場合がある。
ポリイミドフィルムに滑材(粒子)を添加・含有させる場合、滑材が均一に分散した単層のポリイミドフィルムとしてもよいが、例えば、一方の面が滑材を含有させたポリイミドフィルムで構成され、他方の面が滑材を含有しないか含有していても滑材含有量が少量であるポリイミドフィルムで構成された滑剤濃度傾斜型のポリイミドフィルムとしてもよい。このような滑剤濃度傾斜型のフィルムにおいては、一方の層(フィルム)表面に微細な凹凸が付与されて該層(フィルム)で滑り性を確保することができ、良好なハンドリング性や生産性を確保できる。
滑剤濃度傾斜型ポリイミドフィルムは、溶融延伸製膜法に製造されるフィルムの場合、例えばまず、滑剤含有しないポリイミドフィルム原料を用いてフィルム化を行い、その工程途上に置いて少なくともフィルムの片面に、滑剤を含有する樹脂層を塗布することにより得ることが出来る。もちろん、この逆で、滑剤を含有するポリイミドフィルム原料を用いてフィルム化を行い、その工程途上、ないし、フィルム化が完了した後に、滑剤を含有しないポリイミドフィルム原料を塗布してフィルムを得ることも出来る。
ポリイミドフィルムのような溶液製膜法を用いて得られるポリイミドフィルムの場合にも同様で、例えば、ポリアミド酸溶液(ポリイミドの前駆体溶液)として、滑材(好ましくは平均粒子径0.05~2.5μm程度)をポリアミド酸溶液中のポリマー固形分に対して0.02質量%~50質量%(好ましくは0.04~3質量%、より好ましくは0.08~1。2質量%)含有したポリアミド酸溶液と、滑材を含有しないか又はその含有量が少量(好ましくはポリアミド酸溶液中のポリマー固形分に対して0.02質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満)である2種のポリアミド酸溶液を用いて製造することができる。
滑剤濃度傾斜型ポリイミドフィルムの滑剤濃度傾斜型化(積層)方法は、両層の密着に問題が生じなければ、特に限定されるものではなく、かつ接着剤層などを介することなく密着するものであればよい。
ポリイミドフィルムの場合、例えば、i)一方のポリイミドフィルムを作製後、このポリイミドフィルム上に他方のポリアミド酸溶液を連続的に塗布してイミド化する方法、ii)一方のポリアミド酸溶液を流延しポリアミド酸フィルムを作製後このポリアミド酸フィルム上に他方のポリアミド酸溶液を連続的に塗布した後、イミド化する方法、iii)共押し出しによる方法、iv)滑材を含有しないか又はその含有量が少量であるポリアミド酸溶液で形成したフィルムの上に、滑材を多く含有するポリアミド酸溶液をスプレーコート、Tダイ塗工などで塗布してイミド化する方法などを例示できる。本発明では、上記i)ないし上記ii)の方法を用いることが好ましい。
滑剤濃度傾斜型のポリイミドフィルムにおける各層の厚さの比率は、特に限定されないが、滑材を多く含有する高分子層を(a)層、滑材を含有しないか又はその含有量が少量である高分子層を(b)層とすると、(a)層/(b)層は0.05~0.95が好ましい。(a)層/(b)層が0.95を超えると(b)層の平滑性が失われがちとなり、一方0.05未満の場合、表面特性の改良効果が不足し易滑性が失われることがある。
<ポリイミドフィルムの表面活性化処理>
本発明において用いられるポリイミドフィルムには表面活性化処理を行うことが好ましい。該表面活性化処理によって、ポリイミドフィルム表面は官能基が存在する状態(いわゆる活性化した状態)に改質され、シランカップリング剤との親和性が向上する。
本発明における表面活性化処理とは、乾式、ないし湿式の表面処理である。本発明の乾式処理としては、紫外線、電子線、X線などの活性エネルギー線を表面に照射する処理、コロナ処理、真空プラズマ処理、常圧プラズマ処理、火炎処理、イトロ処理等を用いることが出来る。湿式処理としては、フィルム表面を酸ないしアルカリ溶液に接触させる処理を例示できる。本発明に置いて好ましく用いられる表面活性化処理は、プラズマ処理であり、プラズマ処理と湿式の酸処理の組み合わせである。
プラズマ処理は、特に限定されるものではないが、真空中でのRFプラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理、マイクロ波ECRプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理などがあり、フッ素を含むガス処理、イオン源を使ったイオン打ち込み処理、PBII法を使った処理、熱プラズマに暴露する火炎処理、イトロ処理なども含める。これらの中でも真空中でのRFプラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理、大気圧プラズマ処理が好ましい。
プラズマ処理の適当な条件としては、酸素プラズマ、CF4、C2F6などフッ素を含むプラズマなど化学的にエッチング効果が高いことが知られるプラズマ、或はNe,Ar、Kr,Xe、プラズマのように物理的なエネルギーを高分子表面に与えて物理的にエッチングする効果の高いプラズマによる処理が望ましい。また、CO、CO、H、N、NH、CHなどプラズマ、およびこれらの混合気体や、さらに水蒸気を付加することも好ましい。これらに加えてOH、N, N, CO、CO, H、H、O、NH、NH、NH、COOH、NO、NO、 He, Ne, Ar, Kr, Xe, CHO, Si(OCH、 Si(OC、CSi(OCH、 CSi(OC といったからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の成分を気体としてあるいはプラズマ中での分解物として含有したプラズマを作る必要がある。短時間での処理を目指す場合、プラズマのエネルギー密度が高く、プラズマ中のイオンの持つ運動エネルギーが高いもの、活性種の数密度が高いプラズマが望ましいが、表面平滑性を必要とするため、エネルギー密度を高める事には限界がある。酸素プラズマを使った時には、表面酸化が進み、OH基の生成という点ではよいのだが、既にフィルム自体との密着力に乏しい表面ができやすく、かつ表面のあれ(粗さ)が大きくなるため、密着性も悪くなる。
また、Arガスを使ったプラズマでは純粋に物理的な衝突の影響が表面ではおこり、この場合も表面のあれが大きくなる。これら総合的に考えると、マイクロ波プラズマ処理、マイクロ波ECRプラズマ処理、高いエネルギーのイオンを打ち込みやすいイオン源によるプラズマ照射、PBII法なども望ましい。
かかる表面活性化処理は高分子表面を清浄化し、さらに活性な官能基を生成する。生成した官能基は、カップリング剤層と水素結合ないし化学反応により結びつき、ポリイミドフィルム層とカップリング剤層とを強固に接着することが可能となる。
プラズマ処理においてはポリイミドフィルム表面をエッチングする効果も得ることが出来る。特に滑剤粒子を比較的多く含むポリイミドフィルムにおいては、滑剤による突起が、フィルム同士の接着を阻害する場合がある。この場合、プラズマ処理によってポリイミドフィルム表面を薄くエッチングし、滑剤粒子の一部を露出せしめた上で、フッ酸にて処理を行えば、フィルム表面近傍の滑剤粒子を除去することが可能である。
表面活性化処理は、ポリイミドフィルムの片面のみに施してもよいし、両面に施してもよい。片面にプラズマ処理を行う場合、並行平板型電極でのプラズマ処理で片側の電極上にポリイミドフィルムを接して置くことにより、ポリイミドフィルムの電極と接していない側の面のみにプラズマ処理を施すことができる。また2枚の電極間の空間に電気的に浮かせる状態でポリイミドフィルムを置くようにすれば、両面にプラズマ処理が行える。また、ポリイミドフィルムの片面に保護フィルムを貼った状態でプラズマ処理を行うことで片面処理が可能となる。なお保護フィルムとしては粘着剤付のPETフィルムやオレフィンフィルムなどが使用できる。
<ポリイミドフィルムの表面粗さ>
本発明におけるポリイミドフィルムの表面粗さRaは70nm以下が望ましく、より望ましくは30nm以下、さらに望ましくは1.5nm以下である。Raが70nmよりも大きいと、反応性化合物層を介して複数のポリイミドフィルムを重ね合わせた際、反応性化合物の塗工ムラやそれによる剥離ムラの原因になる。
<反応性化合物>
本発明における反応性化合物とは、不飽和二重結合を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、アミノ基を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物、水酸基を有する化合物、イソシアネート化合物、シラノール基を有する化合物、等を例示することができる。本発明は好ましくは25℃にて液体の反応性化合物に好ましく適用できる。
本発明における反応性化合物は、沸点が130℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは150℃以上である。沸点が130℃以下の場合、ポリイミドフィルム重層体の熱処理時に反応性化合物が沸騰・蒸発し、ポリイミド/ポリイミド間の剥離を引き起こす恐れがある。
本発明で好ましく用いられる反応性化合物としてシランカップリング剤を用いる事ができる。シランカップリング剤は単独ないし複数種の組み合わせにて用いる事ができる。またアルコール、水、各種溶剤の溶液として用いる事ができる。
<シランカップリング剤>
本発明におけるシランカップリング剤とは、分子内に珪素元素を有し、ポリイミドフィルム間を物理的および化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物を云う。
シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
本発明で用いることのできるシランカップリング剤としては、上記のほかにn-プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ドデシルリクロロシラン、ドデシルトリメトキシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリクロロシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロメチルシラン、トリクロロオクタデシルシラン、トリクロロプロピルシラン、トリクロロテトラデシルシラン、トリメトキシプロピルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、トリクロロ-2-シアノエチルシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、などを使用することもできる。
また、シランカップリング剤の中に他のアルコキシラン類、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを適宜加えても良い。
また、シランカップリング剤の中に他のアルコキシラン類、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシランなどを適宜加えた場合、あるいは、加えない場合も含めて、混合、加熱操作を加えて、反応を若干進めてから、使用しても良い。
かかるシランカップリング剤の中で、本発明にて好ましく用いられるシランカップリング剤はカップリング剤の、一分子あたりに一個の珪素原子を有する化学構造のシランカップリング剤が好ましい。
本発明では、特に好ましいシランカップリング剤としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。プロセスで特に高い耐熱性が要求される場合、Siとアミノ基の間を芳香族基でつないだものが望ましい。
なお本発明では必要に応じて、リン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等を併用しても良い。
<シランカップリング剤の塗布方法>
一般にシランカップリング剤処理とは、対象物表面にシランカップリング剤、ないしシランカップリング剤の縮合物からなる薄膜層を形成する処理を云う。
シランカップリング剤処理は、一般に、シランカップリング剤をアルコールなどの溶液とし、対象物に塗布ないし、対象物をシランカップリング剤溶液に浸漬等の手段により塗布し、その後、乾燥、加熱によりシランカップリング剤を縮合させると同時に対象物表面に化学反応的に結合させることによる。
シランカップリング剤の塗布方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、ディップ法などが一般的である。
シランカップリング剤処理は、必要に応じてポリイミドフィルムの片面、ないし両面に行われる。
本発明では、好ましくは、シランカップリング剤塗布工程を気相を介して行うことができる。気相を解するとは、気化させたシランカップリング剤にポリイミドフィルムを暴露させる方法である。気化とは、シランカップリング剤の蒸気、すなわち実質的に気体状態のシランカップリング剤あるいは、微粒子状態のシランカップリング剤が存在する状態を指す。そして、ここへの暴露とは、前記の気化したシランカップリング剤を含んだ雰囲気にポリイミドフィルムを接触させることを云う。シランカップリング剤は一定の蒸気圧を有するため、常温雰囲気かであっても一定量の気体状態のシランカップリング剤は存在する。液体状態のシランカップリング剤を40℃~シランカップリング剤の沸点までの温度に加温すれば、さらに高濃度のシランカップリング剤の蒸気を得ることができる。気化したシランカップリング剤は露点の関係からミスト化し気体中での微粒子状態で存在する場合もある。本発明ではこのような状態も利用できる。また、温度圧力の操作によって、蒸気密度を高める操作を付け加えることも行いうる。シランカップリング剤の沸点は、化学構造によって異なるが、概ね100~250℃の範囲である。ただし200℃以上の加熱は、シランカップリング剤の有機基側の副反応を招く恐れがあるため好ましくない。
シランカップリング剤を加温する環境は、加圧下、常圧下、減圧下のいずれでも構わないが、シランカップリング剤の気化を促進する場合には常圧下ないし減圧下が好ましい。多くのシランカップリング剤は可燃性液体であるため、密閉容器内にて、好ましくは容器内を不活性ガスで置換した後に気化作業を行うことが好ましい。しかし、生産効率向上および生産設備価格低減の観点からは、真空を使わない環境でのシランカップリング剤塗布が望ましい。本発明における真空を使わないシランカップリング剤堆積法とは、堆積時のみに真空を使わないのではなく、通常大気雰囲気でポリイミドフィルムをセットしてから、キャリアガスに置換してシランカップリング剤を堆積してから、またシランカップリング剤の無い状態に戻す時まで、大気圧のままで行うことを指す。
ポリイミドフィルムをシランカップリング剤に暴露する時間は特に制限されないが、60分以内、好ましくは20分以内、さらに好ましくは10分以内である。暴露時間はシランカップリング剤の濃度と、必要なシランカップリング剤塗布量との関係によって定まる工程設計値である。暴露時間の下限は特に限定されないが、工業的に生じる塗布量の斑を低減するためには10秒以上、好ましくは30秒以上程度の時間を設けた方が良い。
本発明では、ポリイミドフィルムのシランカップリング剤塗布面を下向きに保持してシランカップリング剤蒸気に暴露することが好ましい。シランカップリング剤の溶液を塗布する従来法では、必然的に塗布中および塗布前後にポリイミドフィルムの塗布面が上を向くため、作業環境下の浮遊異物などがポリイミドフィルム表面に沈着する可能性を否定できない。しかしながら本発明ではポリイミドフィルムを下向きに保持することにより、環境中の異物付着を大幅に減ずることが可能となる。
また、気化したシランカップリング剤を含む気体を高分子基板に暴露させる部屋に導入する際に、一旦2つ以上に気体を分離して導入すること、2つ以上の気体を前記部屋内で衝突させることで乱流を生じさせ、シランカップリング剤分布を均一化させる操作なども有効である。
シランカップリング剤を気化させる方式としては、加熱による蒸発気化以外に、シランカップリング剤液中に気体を導入してウキ(ブリスター)を発生させる方式もあり得る。これを以後バブリングと呼ぶ。バブリングについては、単純に気体の通る配管をシランカップリング剤液に入れること、配管の先に多孔質体を取り付けて、微細なウキ(ブリスター)が数多く出るようにしたもの、超音波を重畳して、気化を促すものも有効である。
気化させたシランカップリング剤は暴露だけでなく、ポリイミドフィルムに噴き付けても良い。その場合、噴き付ける角度はフィルムに対し10°以上であることが望ましい。噴き付け角度が10°以下の場合、搬送されるポリイミドフィルム表面に十分な量のシランカップリング剤が塗布できない恐れがある。
また、気化したシランカップリング剤は帯電する場合がある。この効果を利用して暴露時にフィルムに電界を加えることにより多くのシランカップリング剤を短時間で堆積でき、かつシランカップリング剤が運動エネルギーを持つため、堆積膜が、島状膜になることを抑制できる。また、使用するキャリアガスについては、水分が含まれていると、この水分とシランカップリング剤の反応が始まることが知られている。このため、露点が低いことが有効である。望ましくは、露点15℃以下、さらに望ましくは10℃以下、さらに望ましくは、5℃以下である。
シランカップリング剤層積層ポリイミドフィルムのシランカップリング剤層に存在する長径10μm以上の珪素含有異物数は2000個/m以下、好ましくは1000個/m以下、更には500個/m以下とすることが、本発明の好ましい形態である。また前記操作を組み合わせる事により珪素含有異物数は達成可能である。
シランカップリング剤の塗布量は、シランカップリング剤縮合物層の厚さよる。カップリング剤層が厚すぎると、高温暴露時に発生する分解物量が増え、ポリイミドフィルム間の接着を阻害する場合がある。本発明のシランカップリング剤縮合物層の厚さは0.1nm以上800nm以下である事が好ましく、0.5nm以上200nm以下がさらに好ましい。さらに、厚さの上限は200nm未満が好ましく、150nm以下が好ましく、さらに実用上は100nm以下が好ましく、より好ましくは70nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。0.1nm以下の領域になるとカップリング剤が均一な塗膜としてではなく、クラスター状に存在するケースが想定され、好ましくはない。
シランカップリング剤縮合物層の膜厚は、ポリイミドフィルム積層体のフィルム面に垂直方向の断面を研磨した後にミクロトームで超薄切片とし、透過型電子顕微鏡にて断面写真を撮影し、実測値を拡大倍率から逆算して求めた。
<フィルムラミネート条件>
本発明では、シランカップリング剤層を介してポリイミドフィルムを貼り合わせることにより、ポリイミドフィルム層とシランカップリング剤縮合物層が交互に積層されたポリイミドフィルム積層体を得る。
ポリイミドフィルムの積層は、シランカップリング剤処理を行った面が、ポリイミドフィルム層間に配置されるように、ポリイミドフィルムを重ね、加圧することによる。加圧と加熱の組み合わせは有効である。
加圧処理は、例えば、大気圧雰囲気下あるいは真空中で、プレス、ラミネート、ロールラミネート等を、加熱しながら行えばよい。またフレキシブルなバッグに入れた状態で加圧加熱する方法も応用できる。生産性の向上や、高い生産性によりもたらされる低加工コスト化の観点からは、大気雰囲気下でのプレスまたはロールラミネートが好ましく、特にロールを用いて行う方法(ロールラミネート等)が好ましい。
加圧処理の際の圧力としては、1MPa~30MPaが好ましく、さらに好ましくは3MPa~25MPaである。圧力が高すぎると、ポリイミドフィルム重層体を破損するおそれがあり、圧力が低すぎると、密着しない部分が生じ、接着が不充分になる場合がある。また加圧処理は、上述のように大気圧雰囲気中で行うこともできるが、全面の安定した接着強度を得る為には、真空下で行うことが好ましい。このとき真空度は、通常の油回転ポンプによる真空度で充分であり、10Torr以下程度あれば充分である。
加圧加熱処理に使用することができる装置としては、真空中でのプレスを行うには、例えば井元製作所製の「11FD」等を使用でき、真空中でのロール式のフィルムラミネーターあるいは真空にした後に薄いゴム膜によりガラス全面に一度に圧力を加えるフィルムラミネーター等の真空ラミネートを行うには、例えば名機製作所製の「MVLP」等を使用できる。
本発明における反応性化合物塗布後の単層ポリイミドフィルムまたはポリイミドフィルム重層体の熱処理前の状態での保存環境は15℃以下である事が好ましく、さらには5℃以下である事が好ましく、なお好ましくは-5℃以下であり、さらに好ましくは-15℃以下である。
本発明におけるポリイミドフィルム重層体の熱処理に用いる手法は特に問わない。例えば、バッチ式オーブン、過熱水蒸気炉、ホットプレート、ロールtoロール加熱炉などを用いることができる。また、処理雰囲気は大気下、不活性ガス雰囲気下のいずれでも良い。
本発明におけるポリイミドフィルム重層体の熱処理温度は70℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。処理温度が70℃よりも低いと、フィルム間の反応が不十分であったり、長時間の処理が必要になるおそれがある。
本発明におけるポリイミドフィルム重層体1枚あたりの含水量は、1.5質量%以下が望ましい。加熱前のポリイミドフィルム重層体は、反応性化合物層を介して弱く接着している。そのため、含水量が1.5質量%以上だと、ポリイミド間を接着するための加熱時に蒸発した水分によりフィルム間にウキ(ブリスター)が生じてしまう恐れがある。
本発明におけるポリイミドフィルムへの反応性化合物の塗布から熱処理までのプロセスは、バッチ式、ロールtoロール、またはその組み合わせのいずれでも良い。
本発明におけるポリイミドフィルム重層体の、ポリイミド層間の接着強度は、90度剥離法において、2N/cm以下であり、好ましくは1.5N/cm以下である。接着強度が2N/cmより大きい場合、ポリイミド層間の接着強度は十分に強いので、ポリイミドフィルムに含有される水分の量によらず熱処理後に高品位なポリイミドフィルム積層体を得ることが可能である。
本発明におけるポリイミドフィルム積層体の、熱処理後のポリイミドフィルム層間の接着強度は、90度剥離法において、0.4N/cm以上、20N/cm以下であり、好ましくは0.4N/cm以上18N/cmであり、さらに好ましくは0.4N/cm以上15N/cm以下である。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における物性の評価方法は下記の通りである。
<ウキ(ブリスター)数>
10cm×10cmの積層体において直径0.1mm以上5mm以下の核となる異物のないウキ(ブリスター)の個数を計数した。ウキ(ブリスター)の個数計測は各サンプルにつきn=5となるように測定し、小数点以下を四捨五入した。ウキ(ブリスター)の個数は2層積層体相当の値となるように、たとえば3層積層体であれば、実際の数を2で割った値を用いた。すなわち、ポリイミドフィルム層に挟まれた反応性化合物層の層数で規格化した。別の表現によれば、((ポリイミドフィルム層数-1)で規格化したのと同義である。
熱処理時に生じたウキ(ブリスター)のみをカウントするため、熱処理前から存在したウキ(ブリスター)についてはマークを付け、熱処理時に生じたウキ(ブリスター)計数からは除外した。
<層間剥離強度>
JISK6854-1 の90度剥離法に従って、ポリイミドフィルム積層体のポリイミドフィルム層間の接着強度を求めた。
装置名 : 島津製作所社製 オートグラフAG-IS
測定温度 : 室温
剥離速度 : 50mm/min
雰囲気 : 大気
測定サンプル幅 : 1cm
サンプルは一辺が100mmの正方形のポリイミドフィルム積層体の表面に、最表層のポリイミドフィルム厚さの120%に相当する深さまで切り込みを入れ、積層体の端から最表層のポリイミドフィルムを剥がして測定した。
接着強度は、加熱処理後について測定した。
<ポリイミドフィルムの含水率(TGA)>
島津製作所製熱重量測定計( T G A - 5 0 ) を用い、窒素雰囲気中、昇温速度5℃/minで測定を行った。試料はそれぞれ27℃4%RH(窒素雰囲気下)、23℃50%RH、35℃95%RHに保たれた恒温恒湿槽内で一晩調湿したポリイミドフィルムを用いた。
〔製造例〕
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(DAMBO)223質量部と、N,N-ジメチルアセトアミド4416質量部とを加えて完全に溶解させ、次いで、ピロメリット酸二無水物(PMDA)217質量部とともに、滑剤としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC-ST30」)とをシリカ(滑剤)がポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量にて0.12質量%)になるように加え、25℃の反応温度で24時間攪拌して、褐色で粘調なポリアミド酸溶液V1を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に窒素雰囲気下、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン205.8g(0.480mol)とN,N-ジメチルアセトアミド1200gを仕込んで溶解させた後、反応容器を冷却しながらシクロブタンテトラカルボン酸二無水物93.8g(0.478mol)を固体のまま分割添加し、室温で12時間攪拌した。その後4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物1.0g(5.9mmol)を加え4時間攪拌した後、N,N-ジメチルアセトアミド1000gで希釈し、還元粘度5.28dl/gのポリアミド酸溶液V2を得た。アミン末端量が5eq/tであったポリアミック酸溶液V2に、平均粒径0.08μmのコロイダルシリカ微粒子をN,N-ジメチルアセトアミドに分散してなる溶液を、微粒子がポリアミック酸に対して2.0質量%となるように加え、微粒子含有ポリアミド酸溶液V2’を得た。
(ポリイミドフィルムの作製)
上記で得られたポリアミド酸溶液V1を、スリットダイを用いて幅1050mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「A-4100」)の平滑面(無滑剤面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が38μmとなるように塗布し、105℃にて20分間乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離して、幅920mmの自己支持性のポリアミド酸フィルムを得た。
上記で得られたポリアミド酸フィルムを得た後、ピンテンターによって、1段目150℃×5分、2段目220℃×5分、3段目495℃×10分間)熱処理を施してイミド化させ、両端のピン把持部分をスリットにて落とし、幅850mmの長尺ポリイミドフィルムF1(1000m巻き)を得た。
(ポリイミドフィルムの作製)
微粒子含有ポリアミック酸溶液V2’を最終乾燥厚みが3μmとなるようコンマコーターを用いて厚み188μmのポリエステルフィルム上に塗布した後、その上にポリアミック酸溶液V2を最終乾燥厚みが40μmとなるようTダイのスリットより連続的に押し出し薄膜を形成した。いずれのポリマー溶液も脱泡工程、ろ過精度3μmのポリマーフィルターを通過させるろ過工程を経て供給された。この薄膜を110℃~135℃で15分間加熱後、支持体から剥離して揮発成分が23.7質量%の自己支持性フィルムを得た。
続いてこの自己支持性フィルムをレールに沿って駆動するチェーンに取り付けたフィルム把持装置に両端部を把持させ、150℃~320℃に加熱された連続加熱炉に挿入し、炉内最高温度での処理が5分以下となる条件で熱処理した。その時の炉内の酸素濃度は20.6%であった。上記工程により揮発成分量が1質量%以下でイミド化が完了したすることで、厚み40μmの長尺状ポリイミドフィルムF3(200m巻き)を得た。
<ポリイミドフィルムの真空プラズマ処理>
ポリイミドフィルムにシランカップリング剤処理またはジアミン処理を行う前工程として、ポリイミドフィルムに真空プラズマ処理を行った。真空プラズマ処理は枚葉ガラス用の装置もしくは長尺フィルム処理用の装置を用い、真空チャンバー内を1×10-3Pa以下になるまで真空排気し、真空チャンバー内にアルゴンガスを導入して、放電電力100W、周波数15kHzの条件で20秒間、アルゴンガスのプラズマ処理を行った。以下、実施例および比較例ではプラズマ処理後の広幅ポリイミドフィルムをスリットするか、予めサンプルサイズにカットしたフィルムをプラズマ処理して用いた。
<シランカップリング剤処理1>
図5に概略を示したシランカップリング剤蒸気を発生させる装置を用い、以下の条件にてポリイミドフィルムにシランカップリング剤を塗布した。
幅220mmのポリイミドフィルムを20mm×250mmのスリットを有する750mm×20mm×10mmのチャンバー内を速度240mm/minで通過させた。
シランカップリング剤100gを入れた容器を、40℃に温調した後に窒素ガスを10L/minでバブリングの要領で送り、発生したシランカップリング剤蒸気を含んだ窒素ガスを、配管を通じて前期チャンバー内に導入し、ポリイミドフィルムの両面を前記ガスに3分間暴露し、その後直ちに第2、第3のポリイミドフィルムと2MPaの圧力でラミネートすることでポリイミドフィルム重層体を得た。
<シランカップリング剤処理2>
図4に概略を示したシランカップリング剤蒸気を発生させる装置を用い、以下の条件にてポリイミドフィルムにシランカップリング剤処理を行った。ポリイミドフィルムを370mm×470mmの開口部を有するステンレス枠に保持し、
シランカップリング剤蒸気を導入するチャンバー内にて垂直に保持した。シランカップリング剤100gを入れた容器を、40℃に温調した後に窒素ガスを流量10L/minでバブリングの要領で送り、発生したシランカップリング剤蒸気含んだ窒素ガスを、配管を通じて前記チャンバー内に導入し、ポリイミドフィルムの両面を前記ガスに5分間暴露した。その後フィルムをチャンバーから取り出し、110℃のクリーンドライオーブンにて1分間加熱しシランカップリング剤処理とした。
<ラミネート>
シランカップリング剤処理2方法で得られた反応性化合物塗布ポリイミドフィルムを複数枚重ねて重層体とし、さらに離型シート挟み、真空プレスにて、減圧下に100Paの圧力を印加し、仮接着を行った。次いで得られた仮接着積層
板をクリーンオーブンに入れ、窒素雰囲気下で所定の温度にて1時間加熱し、ポリイミドフィルム積層体を得た。得られたポリイミドフィルム積層体の評価結果を表1に示す。
以下に比較例および実施例で用いた反応性化合物とポリイミドフィルムをまとめた。
<反応性化合物>
SC1:KBM-903(信越化学工業株式会社、3-アミノプロピルトリメトキシシラン)
SC2:KBM-603(信越化学工業株式会社、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)
SC3:KBM-1003(信越化学工業株式会社、ビニルトリメトキシシラン)
<市販のポリイミドフィルム>
F2:カプトン100EN(東レ・デュポン株式会社製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)
<比較例1>
シランカップリング剤処理1によって3枚のポリイミドフィルムF1をSC1を介して重ね合わせ、仮接着を行った。次いで得られたポリイミドフィルム重層体を10cm角に切出し、クリーンオーブンに入れ、窒素雰囲気下で200℃にて1時間加熱し、ポリイミドフィルム積層体を得た。得られたポリイミドフィルム積層体の評価結果を表1に示す。
<比較例2>
シランカップリング剤処理2によって得られた、SC3が塗布された6枚のポリイミドフィルムF1を重ね、さらに離型シート挟み、真空プレスにて、減圧化に100Paの圧力を印加し、仮接着を行った。次いで得られたポリイミドフィルム重層体をクリーンオーブンに入れ、窒素雰囲気下で200℃にて1時間加熱し、ポリイミドフィルム積層体を得た。得られたポリイミドフィルム積層体の評価結果を表1に示す。
<比較例3>
含水量の異なるフィルムを用いた以外は、比較例2と同様に実施した。得られたポリイミドフィルム積層体の評価結果を表1に示す。
<実施例1>
シランカップリング剤処理2によって得られた、SC1が塗布された6枚のポリイミドフィルムF1を重ね、比較例2と同様に加圧、熱処理することでポリイミドフィルム積層体を得た。得られたポリイミドフィルム積層体の評価結果を表1に示す。
<実施例2>
含水量の異なるフィルム、SC1を用いて、熱処理温度を150℃とした以外は比較例2と同様にポリイミドフィルム積層体を得た。得られたポリイミドフィルム積層体の評価結果を表1に示す。
<実施例3>
含水量の異なるフィルムを用いた以外は比較例1と同様にポリイミドフィルム積層体を得た。得られたポリイミドフィルム積層体の評価結果を表1に示す。
<実施例4>
フィルムとしてF2、シランカップリング剤としてSC2を用いた以外は、比較例2と同様に加圧、熱処理することでポリイミドフィルム積層体を得た。得られたポリイミドフィルム積層体の評価結果を表1に示す。
<実施例5>
フィルムとしてF3、シランカップリング剤としてSC1を用いて、実施例と同様にシランカップリング剤塗布、加圧、熱処理することでポリイミドフィルム積層体を得た。
以上述べてきたように、本発明のポリイミドフィルム積層体はポリイミドフィルム層間のウキ(ブリスター)の数が抑えられた高品位のポリイミドフィルム積層体である。本発明は、例示したように熱硬化型化合物であるエポキシ樹脂、光硬化型化合物である(メタ)アクリレート、さらにはシランカップリング剤など種々の反応性化合物を用いてフィルム積層体を作製する場合に有効であり、フレキシブルプリント配線板用のスティフナーとして有効に利用できるほか、厚さのあるポリイミドシート材ないし板材として、産業上の様々な分野に利用できる。
11 基材フィルム
12 接着剤層
13 セパレーター
14 フレキシブルプリント基板
22 接着剤層
23 銅箔
31 ポリイミドフィルム
32 接着剤層
51 フィルム巻出し部
52 塗工液供給部
53 塗工液吐出部
54 塗工液蒸気の排気口
55 第二の長尺基材巻出し部
56 加圧部
57 巻取部
58 長尺基材の高さ調整ロール
59 第三の長尺基材巻出し部

Claims (5)

  1. 複数のポリイミドフィルム層と反応性化合物層が交互に積み重なった構造を有するポリイミドフィルム積層体であって、
    前記ポリイミドフィルム層の厚さが3μm以上250μm以下であり、前記ポリイミドフィルム層の表面粗さRaは70nm以下であり、
    前記反応性化合物層に含まれる反応性化合物は、不飽和二重結合を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、アミノ基を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物、水酸基を有する化合物、イソシアネート化合物、シラノール基を有する化合物、のうち少なくともいずれか1つであって、
    ポリイミドフィルム層間に存在する異物コアを有さない直径100μm以上5mm以下のウキ(ブリスター)の数が、100平方cmあたり、((ポリイミドフィルム層数-1)×5個)以下であることを特とするポリイミドフィルム積層体。
  2. 前記反応性化合物層の厚さが5nm以上50nm以下である事を特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム積層体。
  3. 前記ポリイミドフィルム層間の接着強度は、90度剥離法において、0.4N/cm以上20N/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム積層体。
  4. 前記反応性化合物は、25℃にて液体であり、130℃以上の沸点を有することを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム積層体。
  5. 前記反応性化合物層に含まれる反応性化合物は、シラノール基を有する化合物であり、
    前記反応性化合物層に存在する長径10μm以上の珪素含有異物数は2000個/m 以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム積層体。
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