JP2020111066A - 高分子複合フィルム - Google Patents

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JP2020111066A JP2020074692A JP2020074692A JP2020111066A JP 2020111066 A JP2020111066 A JP 2020111066A JP 2020074692 A JP2020074692 A JP 2020074692A JP 2020074692 A JP2020074692 A JP 2020074692A JP 2020111066 A JP2020111066 A JP 2020111066A
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俊之 土屋
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全広 山下
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全広 山下
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Abstract

【課題】シリコーン樹脂フィルムとして等価に扱える極薄い高分子複合フィルムを提供する。【解決手段】 少なくともポリジメチルシロキサンを主成分とする樹脂からなる層と、縮合系高分子からなる層からなり、総厚さが1μm以上20μm以下であり、前記縮合系高分子がベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドであることを特徴とする高分子複合フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、縮合系高分子フィルムとシリコーン樹脂層を含む高分子複合フィルムに関し、更に詳しくは、柔軟で弾力があり、かつ耐熱性を備えたシリコーン樹脂と、比較的高弾性率で寸法安定性が良く、なおかつ加工性に長ける縮合系高分子フィルムとからなる、互いの長所を活かした高分子複合フィルムに関するものである。
シリコーン樹脂は、シロキサン結合による主骨格を持つ高分子化合物の総称である。分子量、架橋度、置換基などにより種々のシリコーン樹脂が知られているが、耐熱性、耐水性、耐薬品性、電気特性に優れる性質を持つ、特に適度な弾性を持つように物性が調整されたシリコーン樹脂はシリコーンゴムないしシリコーンエラストマーと呼ばれ、柔軟性と耐熱性の両立を要求されるガスケット、シール材、ダイヤフラム、ラミネーター用ロール、電子写真用トナー定着ロール、保護部材から医療用、美容成形用まだ幅広く用いられている。また、接着性に乏しいことから離型シート、クッション材などとしても重宝されている。
優れた特性を有するシリコーン樹脂であるが、電子基板用途に使われることは希である。理由は接着性に乏しく、銅箔などの多素材との組み合わせが困難である事。また、柔軟素材故に寸法安定性という観点からは難があるためである。
シリコーン樹脂は、柔軟であるが故に機械的強度にやや劣るという欠点がある。シリコーン樹脂の耐熱性かつ弾力性があり、かつ離型性が良いという特性を活かす用途としてプレス加工の際のクッションシート材として利用を例示できる。かかる用途においてシリコーン樹脂シートは、加圧を強めすぎると、シートの面方向への伸びが発生し、シリコーン樹脂シート自身に割れ、破断などが生じることがある。またさらには、シリコーン樹脂シート破断の際に被プレス物を巻き込んで共に破断することさえある。
かかる問題を解決するために、シリコーン樹脂シートに補強材を配する試みが成されている。シリコーン樹脂シートに、ガラスクロスなどの補強材を入れ込んだ製品が既に知られている。クロス状補強材をシート中に挿入することにより機械的強度を改善することができるが、クロス状補強材は不均質であり、また、かかる補強によりシートの柔軟性が損なわれてしまうという欠点がある。
シリコーン樹脂シートと寸法安定性の良い金属箔・金属板、ガラス板、セラミック板などのシリコーン樹脂ないしはガラスエポキシ板などの硬質基板と貼り合わせて用いる形態も同様に補強効果は得られるが、相手方素材の物性の影響を多々受けることにより、結果的に柔軟性が損なわれてしまう場合が多い。
シリコーン樹脂の柔軟性を活かす補強素材として有機高分子フィルム、有機高分子シートを用いる事ができるが、シリコーン樹脂と有機高分子素材との接着性が乏しいため、使用中の剥がれ等の問題が生じることが多い。
例えば、特許文献1には、シームレスベルト状に加工したポリイミド樹脂フィルムの表面にシリコーン樹脂を設けた無端ベルトを、電子写真式プリンターの中間転写ベルトに用いる例が開示されている。例えば、特許文献2には、ポリイミド樹脂フィルムを機材に用い、シリコーン樹脂を粘着剤に用いた粘着シートの例が開示されている。さらに、特許文献3には、ポリイミド樹脂フィルムとシリコーン樹脂フィルムと〜なる高分子複合フィルムを電子写真式プリンターの定着フィルムに用いる例が開示されている。
特開2012−159737号公報 特開2007−266558号公報 特開平9−274402号公報
以上、例示したように、シリコーン樹脂は耐熱性、柔軟性を両立するという優れた特性を有しているが、その耐薬品製の高さ、剥離性の良さが故に、他素材と積層するなどの組み合わせが困難な素材の一つであると受け止められていた。本発明はこのような課題を解決し、シリコーン樹脂層と縮合系高分子フィルムを含む、接着性(剥離強度)に優れかつ外観品位が良好な高分子複合フィルムを提供する事を課題とする。
本発明者らは、かかる問題を、縮合系高分子フィルム側の表面処理によって解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シリコーン樹脂へのシランカップリング剤塗布を気相にて行うことにより、高分子フィルムとシリコーン樹脂層との間に異物の介在しない接着性の良好な高分子複合フィルムを提供し、結果として収率良く高精細なフレキシブル電子デバイスの製作が可能となり、なおかつシリコーン樹脂のリサイクル性が改善されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
[1]少なくともポリジメチルシロキサンを主成分とする樹脂からなる層と、縮合系高分子からなる層からなり、総厚さが1μm以上20μm以下であることを特徴とする高分子複合フィルム。
[2]両面にポリジメチルシロキサンを主成分とする樹脂からなる層を有する、縮合系高分子フィルムにおいて、総厚さが1μm以上20μm以下であることを特徴とする高分子複合フィルム。
[3]前記縮合系高分子フィルムがポリエステルフィルムである事を特徴とする[1]または[2]に記載の高分子複合フィルム。
[4]前記縮合系高分子フィルムがポリイミドフィルムである事を特徴とする[1]または[2]に記載の高分子複合フィルム。
本発明によれば、機械特性に優れるエンジニアリングプラスチックフィルムと、表面性状に優れるシリコーン樹脂の双方の利点を備えた優れた複合フィルムを得ることができる。
本発明において、より好適には、高耐熱性を有する縮合系高分子フィルムを用いれば、耐熱性に劣る接着剤や粘着剤を用いることなく貼り合わせが可能であり、高分子複合フィルムを、より高温域で使用することが可能となる。特に縮合系高分子フィルムとしてポリイミドフィルムを用いた場合には、180℃以上、好ましくは230℃以上、さらに好ましくは260℃以上の高温域での用途に用いる事が可能となり、高温でのプレス、ラミネート時に用いるクッション材、半田付けを伴う電子部品、高温環境で用いられる搬送部材などの用途にて好適に用いる事が可能となる。
本発明の高分子複合フィルムは、少なくともシリコーン樹脂層、縮合系高分子フィルム、シランカップリング剤層から構成される高分子複合フィルムである。
<シリコーン樹脂>
本発明におけるシリコーン樹脂層を形成するシリコーン樹脂とは、シロキサン結合による主骨格を持つ、ケイ素系高分子化合物の内、室温で固体状の物を示す。本発明で好ましく用いられるシリコーン樹脂はポリジアルキルシロキサンを基本骨格として、目的に応じて分子量、架橋度、置換基などを調整したシリコーン樹脂を用いる事が好ましい。シリコーン樹脂は 導入する置換基を選択し、さらに骨格を環状や分枝構造とすることで、耐熱性や耐化学性、親水性や疎水性など、さまざまな機能を強化または付与することができる。
本発明のシリコーン樹脂に導入される置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、置換フェニル基、ポリエーテル基、エポキシ基、アミノ基、アミノ基含有置換基、カルボキシル基、アラルキル基などを例示できる、かかる置換基は側鎖ないし分子末端に導入できる。
本発明ではポリジメチルシロキサンないしポリジフェニルシロキサンを主骨格とするシリコーン樹脂、メチル基、フェニル基両方を含むポリシロキサン樹脂が好ましい。
本発明のシリコーン樹脂としては一液型あるいは二液型のシリコーン樹脂を用いる事ができる。
二液型シリコーン樹脂は、主材と架橋剤、反応促進剤などを硬化剤として分け、使用前に両者を混合して用いるものである。本発明のシリコーン樹脂を架橋するのに使用する好適な方法及び/又は触媒としては、縮合触媒が挙げられる。適当な反応基を持つシリコーン樹脂を用意する事によって、他の触媒及び開始剤、例えば、シラン−オレフィン附加(ハイドロシレイション)触媒、例えば過酸化物触媒の様なフリーラジカル触媒、熱、及び紫外線輻射への曝露が使用出来る。
過酸化物触媒の様なフリーラジカル触媒は、シリコーン樹脂が、ビニル基を含む時には、ブレンド−硬化剤又は触媒として使用できる。
シリコーン樹脂が、末端位置にSi−H基を有する時、又は樹脂が末端二重結合を有する時は、シラン−オレフィン付加触媒が有用である。
シラノール停止(末端化)ポリジメチルシロキサンを含む上記シラノール末端化ポリジオルガノシロキサンの様にその中に水酸基を持つシリコーン化合物もまた、熱で触媒化できる。
好ましい硬化系は縮合反応を含む。テトラエチルシリケートの様なシリカ酸エステルは、縮合反応で、本発明組成物のジオルガノシロキサンのヒドロキシ末端基と反応する。この反応ではアルコールが放出され、反応は、例えばジブチル錫ジラウレートの様な金属石鹸で触媒される。
なおより好ましい触媒は、ヘキサン酸亜鉛の様な有機亜鉛化合物である。ヘキサン酸亜鉛の様な縮合触媒は、シラノール末端化ポリジオルガノシロキサン中に存在するシラノール末端基と、ポリジメチルシロキサンポリマーとメチルフェニルセスキシロキサン中に存在すると考えられる残存ヒドロキシ基(シラノール)の縮合反応を触媒する事が考えられる。
<縮合系高分子フィルム>
本発明における縮合系高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル、その他の共重合ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、その他の共重合アクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリイミド、脂環族ポリイミド、フッ素化ポリイミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフェノール、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスチレン等のフィルムを用いることが出来る。本発明において特に効果が顕著・有用であるものは耐熱性が100℃以上の高分子、所謂エンジニアリングプラスチックのフィルムである。ここに耐熱性とはガラス転移温度ないしは熱変形温度を云う。
本発明の縮合系高分子フィルムは前記高分子材料の内、熱可塑性の高分子材料については、溶融延伸法によりフィルムを得ることが出来る。
本発明の縮合系高分子フィルムの厚さは3μm以上が好ましく、11μm以上がなお好ましい。縮合系高分子フィルムの厚さの上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとしての要求より250μm以下であることが好ましく、さらに150μm以下、なおさらには90μm以下が好ましい。
本発明の縮合系高分子フィルムの面積(すなわち高分子複合フィルムの面積)は、高分子複合フィルムやフレキシブル電子デバイスの生産効率・コストの観点より、大面積であることが好ましい。1000cm以上であることが好ましく、1500cm以上であることがより好ましく、2000cm以上であることがさらに好ましい。
本発明で特に好ましく用いられる縮合系高分子フィルムはポリイミドフィルムであり、芳香族ポリイミド、脂環族ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどを用いることが出来る。本発明を特にフレキシブルディスプレイ素子製造に用いる場合には、無色透明性を有するポリイミド系樹脂フィルムを用いることが好ましいが、反射型、ないし自発光型のディスプレイの背面素子を形成する場合においては、特にこの限りではない。
一般にポリイミドフィルムは、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を、ポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥してグリーンフィルム(「前駆体フィルム」または「ポリアミド酸フィルム」ともいう)となし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、あるいは該支持体から剥がした状態でグリーンフィルムを高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることによって得られる。
ポリアミド酸を構成するジアミン類としては、特に制限はなく、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類等を用いることができる。耐熱性の観点からは、芳香族ジアミン類が好ましく、芳香族ジアミン類の中では、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類がより好ましい。ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いると、高い耐熱性とともに、高弾性率、低熱収縮性、低線膨張係数を発現させることが可能になる。ジアミン類は、単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、特に限定はなく、例えば、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール等が挙げられる。
上述したベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類以外の芳香族ジアミン類としては、例えば、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスアニリン)、1,4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、および上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てが、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
前記脂肪族ジアミン類としては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン等が挙げられる。
前記脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
芳香族ジアミン類以外のジアミン(脂肪族ジアミン類および脂環式ジアミン類)の合計量は、全ジアミン類の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。換言すれば、芳香族ジアミン類は全ジアミン類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
ポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸類としては、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂肪族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂環族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)を用いることができる。中でも、芳香族テトラカルボン酸無水物類、脂環族テトラカルボン酸無水物類が好ましく、耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸無水物類がより好ましく、光透過性の観点からは脂環族テトラカルボン酸類がより好ましい。これらが酸無水物である場合、分子内に無水物構造は1個であってもよいし2個であってもよいが、好ましくは2個の無水物構造を有するもの(二無水物)がよい。テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
脂環族テトラカルボン酸類としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸等の脂環族テトラカルボン酸、およびこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の無水物構造を有する二無水物(例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等)が好適である。なお、脂環族テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
芳香族テトラカルボン酸類としては、特に限定されないが、ピロメリット酸残基(すなわちピロメリット酸由来の構造を有するもの)であることが好ましく、その酸無水物であることがより好ましい。このような芳香族テトラカルボン酸類としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸無水物等が挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸類は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
本発明のポリイミドフィルムは、ガラス転移温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは350℃以上であり、あるいは500℃以下の領域においてガラス転移点が観測されないことが好ましい。本発明におけるガラス転移温度は、示差熱分析(DSC)により求めるものである。
本発明の縮合系高分子フィルムの線膨張係数(CTE)は、好ましくは、−5ppm/K〜+20ppm/Kであり、より好ましくは−5ppm/K〜+15ppm/Kであり、さらに好ましくは1ppm/K〜+10ppm/Kである。CTEが前記範囲であると、高分子複合フィルム全体の実効的な線膨張係数を小さく保つことができ、高分子複合フィルムの寸法安定性が向上する。
本発明における線膨張係数は30から200℃の間の平均の値を用いているが、用途によって、注目する温度範囲は変わり、高温でのプロセスを考慮して、30℃から400℃の範囲を調べる場合、100℃から400℃の範囲の場合もあり、半田付けを伴う場合には50℃から280℃の範囲を調べる場合、自動車部品などに応用される場合には使用温度範囲として、−50℃から150℃の範囲を重視する場合もありえる。
本発明における縮合系高分子フィルムの破断強度は、好ましくは60MPa以上、より好ましくは120MP以上、さらに好ましくは240MPa以上である。破断強度の上限に制限は無いが、事実上1000MPa程度未満である。なお、ここで前記縮合系高分子フィルムの破断強度とは、縮合系高分子フィルムの長さ方向と幅方向の平均値をさす。
本発明における縮合系高分子フィルムとシリコーン樹脂の接着強度は、前記縮合系高分子フィルムの破断強度の1/2以下であることが好ましい。
仮に、厚さ10μmのフィルムを用いた本発明の高分子複合フィルムにおいて、フィルムの接着強度が0.5N/cmであったとする。
幅10mmのフィルムに加わる破断力は、0.5N/(10μm×10mm)=0.5N/0.1mm=5MPaとなる。かような場合、フィルムにこの10倍程度すなわち50MPa以上の破断強度があれば、フィルムを剥離する際に支障なく剥離操作が可能となる。
該接着強度は、より好ましくは前記縮合系高分子フィルムの破断強度の1/3以下、さらに好ましくは1/4以下である。
本発明における縮合系高分子フィルムの厚さ斑は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは7%以下、特に好ましくは4%以下である。厚さ斑が20%を超えると、狭小部へ適用し難くなる傾向がある。なお、フィルムの厚さ斑は、例えば接触式の膜厚計にて被測定フィルムから無作為に10点程度の位置を抽出してフィルム厚を測定し、下記式に基づき求めることができる。
フィルムの厚さ斑(%)
=100×(最大フィルム厚−最小フィルム厚)÷平均フィルム厚
本発明における縮合系高分子フィルムは、その製造時において幅が300mm以上、長さが10m以上の長尺フィルムとして巻き取られた形態で得られるものが好ましく、巻取りコアに巻き取られたロール状フィルムの形態のものがより好ましい。
縮合系高分子フィルムにおいては、ハンドリング性および生産性を確保する為、フィルム中に滑材(粒子)を添加・含有させて、縮合系高分子フィルムに微細な凹凸を付与して滑り性を確保することが好ましい。前記滑材(粒子)とは、好ましくは無機物からなる微粒子であり、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭素化物、金属酸塩、リン酸塩、炭酸塩、タルク、マイカ、クレイ、その他粘土鉱物、等からなる粒子を用いることができる。好ましくは、酸化珪素、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、ガラスフィラーなどの金属酸化物、リン酸塩、炭酸塩を用いることができる。滑材は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記滑材(粒子)の体積平均粒子径は、通常0.001〜10μmであり、好ましくは0.03〜2.5μm、より好ましくは0.05〜0.7μm、さらに好ましくは0.05〜0.3μmである。かかる体積平均粒子径は光散乱法で得られる測定値を基準とする。粒子径が下限より小さいと縮合系高分子フィルムの工業的生産が困難となり、また上限を超えると表面の凹凸が大きくなりすぎて貼り付け強度が弱くなり、実用上の支障が出る虞がある。
前記滑材の添加量は、縮合系高分子フィルム中の高分子成分に対する添加量として、0.02〜50質量%であり、好ましくは0.04〜3質量%、より好ましくは0.08〜1.2質量%である。滑材の添加量が少なすぎると滑材添加の効果が期待し難く、滑り性の確保がそれほどなく縮合系高分子フィルム製造に支障をきたす場合があり、多すぎると、フィルムの表面凹凸が大きくなり過ぎて、滑り性の確保が見られても平滑性の低下を招いたり、縮合系高分子フィルムの破断強度や破断伸度の低下を招いたり、CTEの上昇を招く場合がある。
縮合系高分子フィルムに滑材(粒子)を添加・含有させる場合、滑材が均一に分散した単層の縮合系高分子フィルムとしてもよいが、例えば、一方の面が滑材を含有させた縮合系高分子フィルムで構成され、他方の面が滑材を含有しないか含有していても滑材含有量が少量である縮合系高分子フィルムで構成された多層の縮合系高分子フィルムとしてもよい。このような多層高分子のフィルムにおいては、一方の層(フィルム)表面に微細な凹凸が付与されて該層(フィルム)で滑り性を確保することができ、良好なハンドリング性や生産性を確保できる。
多層縮合系高分子フィルムは、溶融延伸製膜法に製造されるフィルムの場合、例えばまず、滑剤含有しない縮合系高分子フィルム原料を用いてフィルム化を行い、その工程途上に置いて少なくともフィルムの片面に、滑剤を含有する樹脂層を塗布することにより得ることが出来る。もちろん、この逆で、滑剤を含有する縮合系高分子フィルム原料を用いてフィルム化を行い、その工程途上、ないし、フィルム化が完了した後に、滑剤を含有しない縮合系高分子フィルム原料を塗布してフィルムを得ることも出来る。
ポリイミドフィルムのような溶液製膜法を用いて得られる縮合系高分子フィルムの場合にも同様で、例えば、ポリアミド酸溶液(ポリイミドの前駆体溶液)として、滑材(好ましくは平均粒子径0.05〜2.5μm程度)をポリアミド酸溶液中のポリマー固形分に対して0.02質量%〜50質量%(好ましくは0.04〜3質量%、より好ましくは0.08〜1。2質量%)含有したポリアミド酸溶液と、滑材を含有しないか又はその含有量が少量(好ましくはポリアミド酸溶液中のポリマー固形分に対して0.02質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満)である2種のポリアミド酸溶液を用いて製造することができる。
多層縮合系高分子フィルムの多層化(積層)方法は、両層の密着に問題が生じなければ、特に限定されるものではなく、かつ接着剤層などを介することなく密着するものであればよい。
ポリイミドフィルムの場合、例えば、i)一方のポリイミドフィルムを作製後、このポリイミドフィルム上に他方のポリアミド酸溶液を連続的に塗布してイミド化する方法、ii)一方のポリアミド酸溶液を流延しポリアミド酸フィルムを作製後このポリアミド酸フィルム上に他方のポリアミド酸溶液を連続的に塗布した後、イミド化する方法、iii)共押し出しによる方法、iv)滑材を含有しないか又はその含有量が少量であるポリアミド酸溶液で形成したフィルムの上に、滑材を多く含有するポリアミド酸溶液をスプレーコート、Tダイ塗工などで塗布してイミド化する方法などを例示できる。本発明では、上記i)ないし上記ii)の方法を用いることが好ましい。
多層の縮合系高分子フィルムにおける各層の厚さの比率は、特に限定されないが、滑材を多く含有する高分子層を(a)層、滑材を含有しないか又はその含有量が少量である高分子層を(b)層とすると、(a)層/(b)層は0.05〜0.95が好ましい。(a)層/(b)層が0.95を超えると(b)層の平滑性が失われがちとなり、一方0.05未満の場合、表面特性の改良効果が不足し易滑性が失われることがある。
<縮合系高分子フィルムの表面活性化処理>
本発明において用いられる縮合系高分子フィルムには表面活性化処理を行うことが好ましい。該表面活性化処理によって、縮合系高分子フィルム表面は官能基が存在する状態(いわゆる活性化した状態)に改質され、シランカップリング剤に対する接着性が向上する。
本発明における表面活性化処理とは、乾式、ないし湿式の表面処理である。本発明の乾式処理としては、紫外線、電子線、X線などの活性エネルギー線を表面に照射する処理、コロナ処理、真空プラズマ処理、常圧プラズマ処理、火炎処理、イトロ処理等を用いることが出来る。湿式処理としては、フィルム表面を酸ないしアルカリ溶液に接触させる処理を例示できる。本発明に置おいて好ましく用いられる表面活性化処理は、プラズマ処理であり、プラズマ処理と湿式の酸処理の組み合わせである。
プラズマ処理は、特に限定されるものではないが、真空中でのRFプラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理、マイクロ波ECRプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理などがあり、フッ素を含むガス処理、イオン源を使ったイオン打ち込み処理、PBII法を使った処理、熱プラズマに暴露する火炎処理、イトロ処理なども含める。これらの中でも真空中でのRFプラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理、大気圧プラズマ処理が好ましい。
プラズマ処理の適当な条件としては、酸素プラズマ、CF4、C2F6などフッ素を含むプラズマなど化学的にエッチング効果が高いことが知られるプラズマ、或はNe,Ar、Kr,Xe、プラズマのように物理的なエネルギーを高分子表面に与えて物理的にエッチングする効果の高いプラズマによる処理が望ましい。また、CO2、CO、H2、N2、NH4、CH4などプラズマ、およびこれらの混合気体や、さらに水蒸気を付加することも好ましい。これらに加えてOH、N2, N, CO、CO2, H、H2、O2、NH、NH2、NH3、COOH、NO、NO2、 He, Ne, Ar, Kr, Xe, CH2O, Si(OCH3)4、 Si(OC2H5)4、C3H7Si(OCH3)3、 C3H7Si(OC2H5)3 といったからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の成分を気体としてあるいはプラズマ中での分解物として含有したプラズマを作る必要がある。短時間での処理を目指す場合、プラズマのエネルギー密度が高く、プラズマ中のイオンの持つ運動エネルギーが高いもの、活性種の数密度が高いプラズマが望ましいが、表面平滑性を必要とするため、エネルギー密度を高める事には限界がある。酸素プラズマを使った時には、表面酸化が進み、OH基の生成という点ではよいのだが、既にフィルム自体との密着力に乏しい表面ができやすく、かつ表面のあれ(粗さ)が大きくなるため、密着性も悪くなる。また、Arガスを使ったプラズマでは純粋に物理的な衝突の影響が表面ではおこり、この場合も表面のあれが大きくなる。これら総合的に考えると、マイクロ波プラズマ処理、マイクロ波ECRプラズマ処理、高いエネルギーのイオンを打ち込みやすいイオン源によるプラズマ照射、PBII法なども望ましい。
かかる表面活性化処理は高分子表面を清浄化し、さらに活性な官能基を生成する。生成した官能基は、カップリング剤層と水素結合ないし化学反応により結びつき、縮合系高分子フィルム層とカップリング剤層とを強固に接着することが可能となる。
プラズマ処理においては縮合系高分子フィルム表面をエッチングする効果も得ることが出来る。特に滑剤粒子を比較的多く含む縮合系高分子フィルムにおいては、滑剤による突起が、フィルムとシリコーン樹脂との接着を阻害する場合がある。この場合、プラズマ処理によって縮合系高分子フィルム表面を薄くエッチングし、滑剤粒子の一部を露出せしめた上で、フッ酸にて処理を行えば、フィルム表面近傍の滑剤粒子を除去することが可能である。
表面活性化処理は、縮合系高分子フィルムの片面のみに施してもよいし、両面に施してもよい。片面にプラズマ処理を行う場合、並行平板型電極でのプラズマ処理で片側の電極上に縮合系高分子フィルムを接して置くことにより、縮合系高分子フィルムの電極と接していない側の面のみにプラズマ処理を施すことができる。また2枚の電極間の空間に電気的に浮かせる状態で縮合系高分子フィルムを置くようにすれば、両面にプラズマ処理が行える。また、縮合系高分子フィルムの片面に保護フィルムを貼った状態でプラズマ処理を行うことで片面処理が可能となる。なお保護フィルムとしては粘着剤付のPETフィルムやオレフィンフィルムなどが使用できる。
<シランカップリング剤>
本発明におけるシランカップリング剤は、シリコーン樹脂と縮合系高分子フィルムとの間に物理的ないし化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物を云う。
シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
本発明で用いることのできるシランカップリング剤としては、上記のほかにn−プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ドデシルリクロロシラン、ドデシルトリメトキシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリクロロシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロメチルシラン、トリクロロオクタデシルシラン、トリクロロプロピルシラン、トリクロロテトラデシルシラン、トリメトキシプロピルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリクロロ−2−シアノエチルシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、などを使用することもできる。
また、シランカップリング剤の中に他のアルコキシラン類、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを適宜加えても良い。
また、シランカップリング剤の中に他のアルコキシラン類、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを適宜加えた場合、あるいは、加えない場合も含めて、混合、加熱操作を加えて、反応を若干進めてから、使用しても良い。
かかるシランカップリング剤の中で、本発明にて好ましく用いられるシランカップリング剤はカップリング剤の、一分子あたりに一個の珪素原子を有する化学構造のシランカップリング剤が好ましい。
本発明では、特に好ましいシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。プロセスで特に高い耐熱性が要求される場合、Siとアミノ基の間を芳香族基でつないだものが望ましい。
なお本発明では必要に応じて、リン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等を併用しても良い。
<シランカップリング剤の塗布方法>
従来の技術では、シランカップリング剤の塗布は、シランカップリング剤をアルコールなどの溶媒で希釈した溶液状態で行われる。しかしながら、本発明ではこのシランカップリング剤塗布工程を気相を介して行うことに特徴がある。すなわち本発明での、気化させたシランカップリング剤に縮合系高分子フィルムを暴露することにより塗布を行う。シランカップリング剤塗布をシランカップリング剤処理と言い換えても良い。気化とはシランカップリング剤の蒸気、すなわち実質的に気体状態のシランカップリング剤あるいは、微粒子状態のシランカップリング剤が存在する状態を指す。暴露とは、前記の気化したはシランカップリング剤を含んだ気体あるいは真空状態に縮合系高分子フィルムが接触していることを言う。
シランカップリング剤の蒸気は、液体状態のシランカップリング剤を40℃〜シランカップリング剤の沸点までの温度に加温することによって容易に得ることが出来る。シランカップリング剤の上記は沸点以下であっても生成する。シランカップリング剤の微粒子が共存する状態も利用できる。また、温度圧力の操作によって、蒸気密度を高める操作を行っても良い。シランカップリング剤の沸点は、化学構造によって異なるが、概ね100〜250℃の範囲である。ただし200℃以上の加熱は、シランカップリング剤の有機基側の副反応を招く恐れがあるため好ましくない。
シランカップリング剤を加温する環境は、加圧下、常圧下、減圧下のいずれでも構わないが、シランカップリング剤の気化を促進する場合には概ね常圧下ないし減圧下が好ましい。シランカップリング剤は可燃性液体に分類されることが多いため、密閉容器内にて、好ましくは容器内を不活性ガスで置換した後に気化作業を行うことが好ましい。
一方、生産効率向上および生産設備価格低減の観点からは、真空を使わない環境でのシランカップリング剤塗布が望ましい。例えば、チャンバー内に常圧下にて縮合系高分子フィルムをセットし、チャンバー内を気化したシランカップリング剤を含む概ね常圧のキャリアガスを満たしてシランカップリング剤を堆積してから、再び気化したシランカップリング剤の無い状態に戻すまで、概略大気圧のままで行うことができる。
縮合系高分子フィルムを気化したシランカップリング剤に暴露する時間は特に制限されないが、20時間以内、好ましくは60分以内、さらに好ましくは15分以内、なおさらに好ましくは1分以内である。
縮合系高分子フィルムを気化したシランカップリング剤に暴露する間の縮合系高分子フィルム温度は、シランカップリング剤の種類と、求めるシランカップリング剤層の厚さにより−50℃から200℃の間の適正な温度に制御することが好ましい。
気化したシランカップリング剤に暴露された縮合系高分子フィルムは、好ましくは、暴露後に、70℃〜200℃、さらに好ましくは75℃〜150℃に加熱される。かかる加熱によって、縮合系高分子フィルム表面の水酸基などと、シランカップリング剤のアルコキシ基やシラザン基が反応し、シランカップリング剤処理が完了する。加熱に要する時間は10秒以上10分程度以内である。温度が高すぎたり、時間が長すぎる場合にはカップリング剤の劣化が生じる場合がある。また短すぎると処理効果が得られない。なお、シランカップリング剤に暴露中の基板温度が既に80℃以上である場合には、事後の加熱を省略することも出来る。なお、本加熱温度ないし時間が縮合系高分子フィルムの耐熱性に依存する。かかる処理の条件自由度を高める上において、耐熱性の高い縮合系高分子フィルムの使用が好ましい。
また、気化したシランカップリング剤を含む気体を高分子基板に暴露させる部屋に導入する際に、一旦2つ以上に気体を分離して導入すること、2つ以上の気体を前記部屋内で衝突させることで乱流を生じさせ、シランカップリング剤分布を均一化させる操作なども有効である。
シランカップリング剤を気化させる方式としては、加熱による蒸発気化以外に、シランカップリング剤液中に気体を導入して気泡を発生させる方式も好ましい。これを以後バブリングと呼ぶ。バブリングについては、単純に気体の通る配管をシランカップリング剤液に入れること、配管の先に多孔質体を取り付けて、微細な気泡が数多く出るようにしたもの、超音波を重畳して、気化を促すものも有効である。
また、気化したシランカップリング剤には、荷電したものが多く、暴露時に縮合系高分子フィルムに電界を加えることにより多くのシランカップリング剤を短時間で堆積でき、かつシランカップリング剤が運動エネルギーを持つため、堆積膜が、島状膜になることを抑制できる。また、使用するキャリアガスについては、水分が含まれていると、この水分とシランカップリング剤の反応が始まることが知られている。このため、露点が低いことが有効である。望ましくは、露点15℃以下、さらに望ましくは10℃以下、さらに望ましくは、5℃以下である。
さらに本発明においてキャリアガスの露点を0℃以下とすることで、水分とシランカップリング剤の反応を高度に抑制すれば、堆積初期の堆積膜の膜厚が不均一な状態でのシランカップリング剤反応が抑制され、結果的に堆積膜の膜厚が十分に均一に達した後に均一に反応が生じるため、表面の極微細な凹凸が抑制され、極めて平滑な表面状態を実現する事ができる。
シランカップリング剤の塗布方法として具体的に以下の方法を例示できる。
・バブリング方式により気化させたシランカップリング剤に縮合系高分子フィルムを暴露させることにより、シランカップリング剤層を形成する方法。
・気化させたシランカップリング剤に縮合系高分子フィルムを暴露させることにより、シランカップリング剤層を形成する工程において、露点0℃以下の乾燥気体をキャリアガスとして使用する方法。
・気化させたシランカップリング剤に縮合系高分子フィルムを暴露させることにより、シランカップリング剤層を形成する工程において、露点5℃以上の気体を共存させる方法。
・気化させたシランカップリング剤に縮合系高分子フィルムを暴露させることにより、シランカップリング剤層を形成する工程において、該縮合系高分子フィルムに電界を加える方法。
・シランカップリング剤層の形成前に、縮合系高分子フィルムのシランカップリング剤層形成面に活性化処理を行う方法
有機系縮合系高分子フィルム/シリコーン樹脂高分子複合フィルムのシランカップリング剤層に存在する長径10μm以上の珪素含有異物数は2000個/m以下、好ましくは1000個/m以下、更には500個/m以下とすることが、本発明の好ましい形態である。また前記操作を組み合わせる事により珪素含有異物数は達成可能である。
カップリング剤の塗布量、厚さについては理論上は1分子層あれば事足り、機械設計的には無視できるレベルの厚さで十分である。一般的には200nm未満(0.2μm未満)であり、150nm以下(0.15μm以下)が好ましく、さらに実用上は100nm以下(0.1μm以下)が好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。ただし計算上5nm以下の領域になるとカップリング剤が均一な塗膜としてではなく、クラスター状に存在するケースが想定され、余り好ましくはない。シランカップリング剤層は、シリコーン樹脂との密着することが、接着のため必要となる。液体や柔軟な層を介した接触ではなく、固体と固体が接触するため、まずは接触しないと接着はできない。フィルムは柔軟さがあるのだが、微細な表面粗さには追従できないため、表面粗さは5.0nm以下が必要となり、望ましくは3.0nm以下がよく、さらに望ましくは、1.0nm以下がよい。
カップリング剤層の膜厚は、エリプソメトリー法、蛍光X線法、ICP法による灰化分析または塗布時のカップリング剤溶液の濃度と塗布量から計算して求めることができる。
<高分子複合フィルム製造方法>
本発明では、シランカップリング剤層を形成した縮合系高分子フィルムのシランカップリング剤層側に、液状のジメチルシロキサン樹脂を塗布し、その後化学反応によって硬化・固体化させる方法により縮合系高分子フィルムとシリコーン樹脂の高分子複合フィルムを得ることが出来る。
シリコーン樹脂の硬化は主として水酸基(−OH)とメトキシ基(−OCH3)または水酸基どうしが脱水反応ないし脱アルコール反応を生じることにより高分子量化、架橋化することによる。通常、この反応は200℃〜250℃にて生ずるが、硬化触媒の使用や、シリコーン樹脂の変性による下げることができる。
液状シリコーン樹脂の塗布は、スピンコート、ディップコート、バーコート、アプリケーターダイコーと、コンマコーター、スクリーン印刷グラビア印刷、キャピラリーコート、スプレーコートなど、公知の塗布方法を用いる事ができる。本発明におけるシリコーン樹脂の厚さは、好ましくは0.5μm〜10mm、であり、さらに好ましくは2μm〜3mmであり、なお好ましくは5μm以上500μm以下である。
また本発明では、シリコーン樹脂のフィルム、ないしシートの表面を活性化させ、シランカップリング剤塗布縮合系高分子フィルムと重ね合わせて加熱加圧することによっても高分子複合フィルムを得ることが出来る。この際にシリコーン樹脂に未反応基が残存している状態である事が好ましい。言い換えればBステージ状態のシリコーン樹脂を用いる事で、効率よく高分子複合フィルムを得ることが出来る。加熱加圧の手法としてはロールラミ方法、プレス法などを用いる事が出来る、ブリスターなどの無い精密な高分子複合フィルムを得るためには真空プレス装置の使用が好ましい。
本発明において、シリコーン樹脂層と高分子フィルムの剥離強度は0.3N/cm以上、15N/cm以下である。剥離強度は0.4N/cm以上、12N/cm以下が好ましく、0.7N/cm以上、10N/cm以下がさらに好ましく、1.5N/cm以上、8N/cm以下が好ましい。シリコーン樹脂層と高分子フィルムの剥離強度は、高分子フィルムの表面処理、シランカップリング剤の塗布条件、塗布量、塗布膜厚、積層条件によって制御可能である。特に重要なパラメーターはシランカップリング剤の厚さであり、概ねシランカップリング剤層の厚さを40nm以下とする事で剥離強度を所定の範囲無いに治める事が出来る。
<高分子複合フィルムの応用分野>
本発明の高分子複合フィルムは、シリコーン樹脂の持つ柔軟性、耐熱性、電気特性、化学的耐久性と、縮合系高分子フィルムの剛性とを併せ持つ優れた特性を示す。
耐熱性かつ寸法安定性の良い縮合系高分子フィルムの両面にシリコーン樹脂を配置した高分子複合フィルムは、良好な電気特性と、良好な寸法安定性を両立するため、高周波回路基板、高周波アンテナ基板として応用できる。
縮合系高分子フィルムをシームレスパイプ、ないしシームレスベルト状に形成し、その表面にシリコーン樹脂層を形成したシームレスパイプないしシームレスベルトは、レーザープリンターなどのトナー画像の熱由宇着による定着ベルトや、静電気画像を搬送、重ね合わせるためのキャリアベルトとして有用である。
本発明の高分子複合フィルムをプレス時のクッション材として用いれば、厚さ方向の良好なクッション性と、面方向での剛直性を両立し、さらに繊維補強体のような面方向の斑も無いため、非常に精緻で良好なプレス物を得ることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチルー−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
2.高分子フィルムなどの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
3.高分子フィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R) 機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
4.90度剥離強度
JISK6854−1 の90度剥離法に従って、高分子複合フィルムの縮合系高分子からなる層と、ポリジメチルシロキサンからなる層の接着強度を求めた。具体的には
ポリイミドフィルム/得られた高分子複合フィルム/ガラス板となるように、各々を信越化学工業株式会社製二液型RTVシリコーンゴム KE-1800T-A/Bを接着剤にもちいて接着し、ガラス板を90度剥離測定治具に固定し、ポリイミドフィルムを引っ張り上げて、剥離界面がポリジメチルシロキサン層と縮合系高分子フィルム層との界面となるようにして剥離強度を求めた。
装置名 ; 島津製作所社製 オートグラフAG−IS
測定温度 ; 室温
剥離速度 ; 50mm/min
雰囲気 ; 大気
測定サンプル幅 ; 1cm
5.線膨張係数(CTE)
測定対象の高分子フィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)において、下記条件にて伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。
機器名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
初荷重 ;34.5g/mm2
6.無機粒子の平均粒子径
測定対象の無機粒子を後述のように溶媒に分散し、堀場製作所社製のレーザー散乱式粒度分布計LB−500により粒子径分布を求め、重量(体積)平均粒子径とCV値を算出した。
7.カップリング剤層厚さの測定法
カップリング層厚さはSiウエハに作製した膜厚を測定した。
膜厚測定法は、エリプソメトリーにて行い、測定器はPhotal社製FE-5000を使用した。
この測定器のハード仕様は以下の通りである。
反射角度範囲 45から80°、波長範囲 250から800nm、波長分解能1.25nm、スポット径 1mm、tanΨ 測定精度±0.01、cosΔ 測定精度±0.01、方式回転検光子法。測定は偏向子角度 45°、入射 70°固定、検光子は11.25°刻みで0〜360°、250〜800nmの測定を行った。
非線形最小2乗法によるフィッティングで、膜厚を求めた。このとき、モデルとしては、Air/薄膜/Siのモデルで、
n=C3/λ4+C2/λ2+C1
k=C6/λ4+C5/λ2+C4
の式で波長依存C1〜C6を求めた。
8.高分子フィルムの評価:ロール巻取り性
長尺状の多層ポリイミドフィルムを巻取りロ−ル(心棒の外径:15cm)に2m/分の速度で巻取る際に、皺が生じず円滑に巻取りが可能である場合を○、部分的に皺が発生する場合を△、皺が発生したり、ロ−ルに巻きついて円滑に巻取りが出来ない場合を×とした。
9.乾燥窒素
本実施例で、乾燥窒素と記載の時には露点―10℃以下の窒素を使った。また、窒素の純度は99.9%以上であった。
10.高分子フィルム表面粗さ
本実施例表中の縮合系高分子フィルム表面粗さは、縮合系高分子フィルムにシランカップリング剤塗布後の3次元表面粗さSaを示す。
11.SC層の3次元算術平均粗さ(Sa)は、非接触表面・層断面形状計測システム(菱化システム社製「VertScanR2.0」)を用いて求めた。測定は以下の条件にて行った。
測定モード:Phaseモード
視野サイズ:640×480
使用フィルター:520nmフィルター
対物レンズ倍率:×5
ズームレンズ倍率:×1
1測定ごとの測定範囲:1.4mm×1.8mm
積算回数:1回
上記条件にて得られた生データについて、補間は実施せずに4次の面補正のみを実施して測定データとした。この測定データ中から以下の式に基づいて計算し求めた。

(lx, lyはそれぞれx方向とy方向の範囲、Z(x,y)は平均面からの高さ)
<異物密度>
100mm×100mmの領域をサンプリングし、100倍拡大の測長機能付き顕微鏡にてサンプリング領域を観察し、100倍観察にて確認された異物については、さらに拡大率を400倍として長径長さを測定し、10μm以上のものの個数を数え、観察面積で除して異物密度とした。異物密度の単位は(個/m2)である。
<外観品位>
フィルムの外観を目視観察し、傷、皺の有無、平面性(うねり)等の欠点が認められない場合には◎、一分に欠点が認められるが、300mm幅にスリットすることにより欠点部を避ける事が可能な場合は○、同じく150mmにスリットすることにより欠点部を避ける事が出来る場合には△、スリットにより目視認識できる欠点を避ける事ができない場合を×とした。
〔製造例1〜2〕
(ポリアミド酸溶液A1〜A2の作製)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物217質量部、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業製)をシリカが表1記載量になるように加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液A1〜A2が得られた。
〔製造例3〜4〕
(ポリアミド酸溶液B1〜B2の作製)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、テトラカルボン酸二無水物として3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物398質量部、パラフェニレンジアミン147質量部を4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業製)をシリカが表2記載量になるよう加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液B1〜B2が得られた。
《縮合系高分子フィルム作製例1》
ポリアミド酸溶液A1を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡株式会社製)の無滑材面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを製膜機の巻きだし部に取り付け、3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、ポリイミドフィルム1を得た。得られたポリイミドフィルム1の特性を表3に示す。
《縮合系高分子フィルム作製例2》
ポリアミド酸溶液A1を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡株式会社製)の無滑材面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液A2をポリアミド酸溶液A1の塗布量を表3に示す厚さ比となるように、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし、110℃にて20分間乾燥することで、2層構成のポリアミド酸フィルムを得た。2層全体の厚さが熱処理後に表3に示す厚さとなるように、塗布厚さは調整した。
この多層ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、多層ポリイミドフィルム2を得た。このとき、熱処理後巻き取る前に剥離可能な非ポリイミド保護フィルムとして、PETフィルムに微粘着層の付いたフィルム(フィルムA)をポリアミド酸溶液A1側にラミネートしてから、巻き取った。得られたポリイミドフィルムをフィルム2とした。このポリイミドフィルムの特性を表3に示す。
《縮合系高分子フィルム作製例3》
ポリアミド酸溶液B1、B2のコーティング厚さを表3に示した値とした以外は全く作製例1と同様にして、フィルム3 を得た。その内容を作製例1と同様に表3に示した。
縮合系高分子フィルム4として、12.5μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムA4100(東洋紡株式会社製)を用いた。
<縮合系高分子フィルムのプラズマ処理>
得られた縮合系高分子フィルムの両面に真空プラズマ処理を施して、プラズマ処理ポリイミドフィルムとした。真空プラズマ処理としては、平行平板型の電極を使ったRIEモード、RFプラズマによる処理を採用し、真空チャンバー内に窒素ガスを導入し、13.54MHzの高周波電力を導入するようにし、処理時間は3分間とした。
<縮合系高分子フィルムへのカップリング剤層形成>
ホットプレートを有する真空チャンバーを用い、以下の条件にて縮合系高分子フィルムへのシランカップリング剤塗布を行った。
シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBM−903」:3−アミノプロピルトリメトキシシラン)100質量部をシャーレに満たし、ホットプレートの上に静置した。このときホットプレート温度は25℃であった。次いでシランカップリング剤の液面から水平方向に100mm以上離れた箇所に、350mm×490mmの縮合系高分子フィルムをSUSの枠に固定して垂直に保持し、真空チャンバーを閉じ、真空引きと窒素導入を数回行い、大気圧にて酸素濃度が0.1%以下となるまで繰り返した、次いで、チャンバー内を3×10-1Paまで減圧し、ホットプレート温度を60℃まで昇温し、10分間保持してシランカップリング剤蒸気への暴露を行い、その後、ホットプレート温度を下げ、同時に真空チャンバー内にクリーンな乾燥窒素ガスを4か所から静かに導入して大気圧まで戻し、枠に固定した縮合系高分子フィルムを取り出し、クリーン環境下にて100℃のホットプレートにSUSの枠ごと保持した。SUS枠の厚みのため、縮合系高分子フィルムはホットプレートの熱盤面から訳3mm離れた状態で加熱される。約3分間熱処理を行った後、同様の操作を裏側にも行い、縮合系高分子フィルムの両面にシランカップリング剤層を形成した縮合系高分子フィルムS1を得た。
<縮合系高分子フィルムへのポリジメチルシロキサン層の形成>
得られたシランカップリング剤層付きの縮合系高分子フィルムのシランカップリング剤塗布面に、信越化学工業株式会社製の二液硬化型シリコーン樹脂SIM−260をアプリケータにて塗布し150℃30分の熱処理を行い、さらに裏側にも同様に塗布から熱処理を行い、表4.に示す高分子複合フィルムを得た。なお主剤と硬化剤の比率は質量比にて10/1とした。以下、縮合系高分子フィルムと塗布条件を替え、表4に示す積層複合フィルムを得た。
以上述べてきたように、本発明によれば機械的物性に優れた縮合系高分子フィルムを芯材とし、表面をシリコーン樹脂にて被覆した薄い高分子複合フィルムを得ることができる。シリコーン樹脂は、その柔軟性故に機械的強度が低く、極薄いフィルムを得ることは困難であるが、本発明によればシリコーン樹脂の特殊な表面性状を有しながら、機械的強度に優れるエンジニアリングフィルムのようにハンドリングが可能な特殊な性状を有する複合フィルムを得ることができる。本発明の高分子複合フィルムは、精密プレスのクッション剤のようなサポート材料として、高周波回路基板などの電子部品用基板として、高度な重ね合わせ精度が必要な熱定着画像様の定着機、画像搬送ベルトなどとして応用可能で有り、情報電子分野、精密機械加工分野において産業界への寄与は大きい。




Claims (3)

  1. 少なくともポリジメチルシロキサンを主成分とする樹脂からなる層と、縮合系高分子からなる層からなり、総厚さが1μm以上20μm以下であり、前記縮合系高分子がベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドであることを特徴とする高分子複合フィルム。
  2. 両面にポリジメチルシロキサンを主成分とする樹脂からなる層を有する、縮合系高分子フィルムにおいて、総厚さが1μm以上20μm以下であり、前記縮合系高分子がベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドであることを特徴とする高分子複合フィルム。
  3. 前記縮合系高分子フィルムがポリイミドフィルムである事を特徴とする請求項1または2に記載の高分子複合フィルム。
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