JP7399483B2 - コネクター兼用モルタル保持具 - Google Patents
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Description
モルタル塗布時には、モルタルがループ状の係止部内に入り込んで、係止部がモルタルに一体的に埋設されることでアンカー効果を果たし、モルタルの剥落を防止している。そして、経年劣化(例えば、台風などによる海水の飛散による海岸近くの建物のコンクリートの劣化、即ち、塩害や酸性雨)で躯体コンクリートの表面と一部のモルタルとの間に隙間が発生し、上記のようにモルタルの一部に剥離が発生しても、該剥離部分においてモルタルに埋設されている係止部がこれを支え、剥離部分の剥落を回避している。
加えて、躯体コンクリートは表面から酸性雨や塩害により経年劣化していくため、躯体コンクリートの表面に設けた装着穴の周囲も内部に比べて経年劣化により崩れやすく、ネジ固定では長期のモルタル保持には問題が生じる。更に、特許文献2では、モルタル保持具が金属製であるから、上記のように耐火性に優れているとしても、建物が火事に遭遇すると窓から立ち上る炎によってモルタルや躯体コンクリートの表面が高温に曝され、躯体コンクリートの内部に比べて劣化が進む。その結果、大きな面積でモルタル亀裂やモルタル剥離が発生すると共に多数の装着穴が崩れてネジに対する保持力が低下し、モルタルが埋設されたモルタル保持具ごと大きな塊で剥落する恐れもある。
コンクリート打設用の型枠71内にセットされるセパボルト70に連結される金属製のスキンキャッチャー40と、
前記スキンキャッチャー40が取り付けられて躯体コンクリート60内に埋設され、前記型枠71に対する対向面6が躯体コンクリート60の表面61に露出する樹脂製のコネクター部1と、
前記コネクター部1に取り付けられ、前記型枠71の内面に当接し、前記内面と前記内面に対する前記コネクター部1の対向面6との間の空間を囲繞して閉空間Hとする支持枠30と、
前記閉空間H内にてスキンキャッチャー40から延出し、前記躯体コンクリート60の表面61に塗布されたモルタル63を保持する金属係止部50とで構成されたコネクター兼用モルタル保持具Aにおいて、
モルタル63が塗布されるコネクター部1の対向面6に凹溝20が形成され、
前記凹溝20の開口に沿って、前記凹溝20の開口縁又は開口縁から奥に入った前記凹溝20の内面に凸部21が形成され、
前記支持枠30の内周面の全周にわたって内鍔部31が一体的に突設され、前記内鍔部31は前記コネクター部1の前記対向面6より前方側に位置し、内周に内鍔孔部33が形成されているコネクター兼用モルタル保持具Aである。
金属係止部50は、スキンキャッチャー40のナット本体部分40aから一体的に延出された外鍔状の延出部分であることを特徴とする。
金属係止部50は、スキンキャッチャー40のナット本体部分40aとは別体に形成され、前記ナット本体部分40aに溶接されて前記ナット本体部分40aから一体的に延出されている外鍔状の延出部分であることを特徴とする。
金属係止部50は、スキンキャッチャー40のナット本体部分40aとは別体に形成され、前記金属係止部50に穿設した取付孔53aに前記ナット本体部分40aが圧入されて前記ナット本体部分40aから一体的に延出されている外鍔状の延出部分であることを特徴とする。
通常時では、この金属係止部50によってモルタル63が保持されており、仮にモルタル63に部分的な剥離Kや膨れ、亀裂が発生しても部分的な剥落を生じることがない。
仮に建物が火事に遭った場合、コネクター部1や支持枠30のような樹脂部分は焼損しても、セパボルト70や、これに螺着されているスキンキャッチャー40、及びスキンキャッチャー40から延出している金属係止部50が焼損するようなことがなく、火災後もモルタル63を堅固に保持し続けることが出来る。金属係止部50を含む金属製のスキンキャッチャー40の材質を例えば、ステンレスとすることで塩害に対してより優れた効果を発揮する。
加えて、凹溝20の内面に凸部21が設けておけば、凹溝20の開口幅Wが狭くなるため、凹溝20の全体に入り込んだモルタル63の全体がアンカーの役目を果たし、この部分のモルタル63が破損しない限り抜けず、従来の保持具に比べて本発明の保持具Aのモルタル保持力を更に大幅に高める。
これに加えて、フック状の第2係止部35を設けることで、小片に破砕したモルタル63を吊り下げ状で保持できるようになる。
図1に示すコネクター兼用モルタル保持具Aは、コネクター部1、支持枠30、スキンキャッチャー40、及び金属係止部50とで構成されている。コネクター部1と支持枠30は樹脂の射出成形物であり、スキンキャッチャー40と金属係止部50とは金属製(例えば、ステンレス製)である。
コネクター本体部分2は、円板状の部分3と、この円板状の部分3の前面側に円形台状に設けられ、モルタル63が塗布される台状部分4、及び円板状の部分3の背面側に設けられた円筒状の部分5とで一体的に構成されている。
円板状の部分3は台状部分4より直径が大であって円板状の部分3と台状部分4の境界には段差が形成されている。
円筒状の部分5は円板状の部分3より直径がかなり小さく、円筒状の部分5と円板状の部分3の背面のコーナー部分には円板状の部分3の補強とコネクター部1の廻り止めとなる直角三角形のリブ7が一体的に設けられている。本実施例では、リブ7は円筒状の部分5の周囲に等角度で6本形成されている。
また、円板状の部分3の外周の前面側には支持枠30を取り付けるための段部8が全周にわたって形成されている。
コネクター本体部分2のモルタル63が塗布される面をモルタル塗布面6とし、更に後述するように型枠71の内面に対向する面でもあるから分かりやすくするために同じ面であるが対向面6とする。
(ハ)図4のように金属製のナット本体部分40aに金属係止部50を圧入する場合がある。また、図3、図4の場合、金属係止部50が1つの場合と図2(b)に示すように直径や高さの異なる2以上の金属係止部50a、50bを多重に設ける場合とがある。
なお、図2(a)の金属係止部50の外周環状部分をリング部分54とし、ナット本体部分40aとリング部分54とを結ぶ部分を連結アーム部分55とする。
リング部分54はナット本体部分40aより直径が大で、連結アーム部分55はナット本体部分40aの端部から放射状に広がってリング部分54に接続している。ナット本体部分40aの母線と連結アーム部分55のなす角度αは鈍角(例えば、135°±20°)である。
図4のように、圧入リング56を更にナット本体部分40aに圧入し、圧入リング56と外鍔部45で取付部53を押圧挟持するようにしてもよい。
仕切壁41は必ずしも必要とするものではなく、両ネジ孔43、42が互いに連通していてもよい。仕切壁41を設けておくと、セパボルト70と型枠締付用ボルト72のいずれか一方が他方のネジ孔まで侵入することにより他方のボルトのネジ孔長を不足させたり、またセパボルトに対するコネクター部1の固定位置を設定し難くする問題を解消することができる。
内鍔部31を設けた例では、後述するように、内鍔部31に第1係止部10と同方向(型枠71方向)に多数の第2係止部35が一定間隔で設ける場合と、第2係止部35を設けない場合とがあり、図2では第2係止部35を設けない場合とする。
支持枠30の後端内周部分は段状に形成されており、この部分をコネクター部1に対する嵌め込み段部32とする。また、内鍔部31の内側に形成された大孔を内鍔孔部33とする。
内鍔部31が設けられている場合では、コネクター部1に支持枠30を嵌め込んだ状態で、支持枠30の内鍔部31はコネクター部1の台状部分4の対向面6より前方側(モルタル側)に位置する。
なお、型枠71の内面に直接接触するのは、支持枠30の前端面に設けられた幅の狭い環状当接部34であり、これが型枠71の締付圧により変形して型枠71の当接部分に対する傷付きを緩和している。
金属係止部50は、スキンキャッチャー40のナット本体部分40aの端部に設けられた外鍔部45にその取付孔53aが係止され、スキンキャッチャー40から脱落しない。そして、モルタル保持具Aの周囲において、モルタル63に亀裂Kや剥離が発生し、当該部分において躯体コンクリート60からモルタル63が浮いたとしても、そして上記のように樹脂部分の炭化や焼失した状態であったとしても、スキンキャッチャー40の外鍔部45に係止されてスキンキャッチャー40から脱落しない金属係止部50がモルタル63の剥離部分Kを保持することになる。
図3のように外鍔部45に金属係止部50の取付部53が溶接により一体化されている場合、或いは、図4のように、スキンキャッチャー40のナット本体部分40aが金属係止部50の取付部53の取付孔53aに圧入され、更にはスキンキャッチャー40のナット本体部分40aに圧入リング56が圧入され、外鍔部45と圧入リング56とで金属係止部50の取付部53を押圧挟持するようにしておけば、上記一体化と同様の効果を持つ。
なお、金属係止部50は、1個でもよいが、図2(b)に示すように、直径の異なる複数の金属係止部50a・50bを重ねるようにしてもよい。これにより、モルタル保持具が向上する。
以下、本発明の第2実施形態を説明する。図6に示すコネクター兼用モルタル保持具Aは、第1実施形態と同様、コネクター部1と支持枠30、スキンキャッチャー40、金属係止部50とで構成されている。第2実施形態と第1実施形態との相違点は、コネクター部1と支持枠30にある。以下、相違点を中心に説明する。
第2実施形態の基本形は、図6、図7に示す金属係止部50と第1,2係止部10、35及び凹溝20(凸部21)を併用する場合であるが、第1,2係止部10、35及び凹溝20の内の1又は複数を選択することができる。凸部21は後述するように凹溝20の内周面に設けられるものであるから,凸部21だけを選択することができず、凹溝20に付随して選択される。
台状部分4の対向面(即ち、モルタル塗布面)6に設けられた凹溝20は、台状部分4の一方の側面から他方の側面に貫通し、且つ等間隔で複数条刻設されている。中央部分の複数の凹溝20は通孔9に交差して円形に切り取られている。凹溝20の横断面形状は、本実施例ではコネクター部1の中心軸に平行な方向に伸びた半円状又は半楕円状に形成されている。そして、凹溝20の間の部分を畝状部4aとする。なお、凹溝20の横断面形状は上記に限られず、図示していないが、矩形その他の形状とすることが出来る。
千鳥状の配列とは、隣接する第1係止部10が、隣り合う2つの凹溝20を交互に跨ぐように配列される状態であり、列状の配列とは、隣接する第1係止部10が、同じ凹溝20を跨ぐように配列される状態である。
ループ状の第1係止部10を千鳥状に並べると、隣接する第1係止部10の前後する脚部11が同じ畝状部4aに連なるように設けることができるので、同一面積内では列状に配列する場合に比べてより多くの第1係止部10を設けることができる。
ループ状の第1係止部10と凹溝20で構成された係止空間はこの部分にモルタル63が塗り込まれて硬化した時、この部分のモルタル63を抱持することになるので、係止するためのアンカー効果を強くする。
また、図示していないが、凸部21の形成位置はモルタル塗布面6の開口縁に沿う内周面でなく、開口縁から奥に入った凹溝20の内側でも良い。また、図の実施例では、凸部21は凹溝20の全長に亙って形成されるようになっているが、成形可能な限り、凹溝20の一部としてもよい。
凸部21の横断面形状は、図14(a)に示すように、四角形や、同図(b)に示すように、凹溝20の入隅22を鋭角に切り込んでもよいし、同図(c)に示すように、凹溝20と第1係止部10とに跨る境界部分に凸部21を設けてもよい。この場合は、第1係止部10の脚部11が太くなるので、この部分の強度を高めることができる。第2実施形態の保持具Aは、上記凹溝20に凸部21を設けただけのものでも良いが、上記の第1係止部10を更に設けることも出来る。ここでは第1係止部10を設けた事例で説明する。
内鍔部31には第1係止部10と同方向に多数の第2係止部35が一定間隔で設けられている。第2係止部35も上記のように未硬化のモルタル63内に深く侵入できる剛性を有し、かつ硬化後のモルタル63を支持するだけの破断強度を有し、且つ硬化後のモルタル63から脱落しない形状を有するものであれば特に限定されない。ここでは、脚部36より直径が大で球状の頭部37を有する球状フックが用いられている。球状フック型の第2係止部35の脚部36は、図18から分かるように、支持枠30の中心方向に向けて湾曲している。これにより、モルタル63の塗布時の圧力によって中心方向に変形することになるので、保持具Aの中心方向(換言すれば、第1係止部10)に向かってモルタル63が充填されやすくなる。
第2実施形態では、金属係止部50の他に第1係止部10、第2係止部35、(凸部21を有する凹溝20)を設けてある。第2実施形態のモルタル保持具Aには金属係止部50、第1係止部10、第2係止部35と同等以上の高さを持ち、円板状の部分3の段部8に嵌め込まれてバックアップされた支持枠30が存在するので、この支持枠30が型枠71の締付圧を支えて第1係止部10、第2係止部35、金属係止部50を保護するため、第1係止部10、第2係止部35、金属係止部50が押し潰されることはない。
然る後、躯体コンクリート60の表面61にモルタル63を塗布する。モルタル保持具Aの埋設部分では、塗布されたモルタル63の一部は、凹溝20が設けられている場合には、支持枠30の内側の凹溝20の全長に入り込み、且つ第1係止部10及び第2係止部35、金属係止部50をモルタル63内に取り込んで硬化する(図19(c))。
凸部21を設けている場合には、凹溝20内において、凸部21の入隅22内にモルタル63が更に入り込む。
Claims (8)
- コンクリート打設用の型枠内にセットされるセパボルトに連結される金属製のスキンキャッチャーと、
前記スキンキャッチャーが取り付けられて躯体コンクリート内に埋設され、前記型枠に対する対向面が躯体コンクリートの表面に露出する樹脂製のコネクター部と、
前記コネクター部に取り付けられ、前記型枠の内面に当接し、前記内面と前記内面に対する前記コネクター部の対向面との間の空間を囲繞して閉空間とする支持枠と、
前記閉空間内にてスキンキャッチャーから延出し、前記躯体コンクリートの表面に塗布されたモルタルを保持する金属係止部とで構成されたコネクター兼用モルタル保持具において、
モルタルが塗布されるコネクター部の対向面に凹溝が形成され、
前記凹溝の開口に沿って、前記凹溝の開口縁又は開口縁から奥に入った前記凹溝の内面に凸部が形成され、
前記支持枠の内周面の全周にわたって内鍔部が一体的に突設され、前記内鍔部は前記コネクター部の前記対向面より前方側に位置し、内周に内鍔孔部が形成されていることを特徴とするコネクター兼用モルタル保持具。 - 金属係止部にモルタルを保持するモルタル係止孔が穿設されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクター兼用モルタル保持具。
- 金属係止部は、スキンキャッチャーのナット本体部分から一体的に延出された外鍔状の延出部分であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクター兼用モルタル保持具。
- 金属係止部は、スキンキャッチャーのナット本体部分とは別体に形成され、前記ナット本体部分に溶接されて前記ナット本体部分から一体的に延出されている外鍔状の延出部分であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクター兼用モルタル保持具。
- 金属係止部は、スキンキャッチャーのナット本体部分とは別体に形成され、前記金属係止部に穿設した取付孔に前記ナット本体部分が圧入されて前記ナット本体部分から一体的に延出されている外鍔状の延出部分であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクター兼用モルタル保持具。
- 前記コネクター部の前記対向面に塗布された前記モルタル内に埋設される第1係止部が前記対向面に更に設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のコネクター兼用モルタル保持具。
- 第1係止部が、前記凹溝を跨ぐように設けられていることを特徴とする請求項6に記載のコネクター兼用モルタル保持具。
- 前記閉空間内で、支持枠から前記第1係止部の周囲を取り囲むように、塗布された前記モルタル内に埋設されるフック状の第2係止部が設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載のコネクター兼用モルタル保持具。
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