JP7279963B2 - コネクター兼用モルタル保持具 - Google Patents
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Description
モルタル塗布時には、モルタルがループ状の係止部内に入り込んで、係止部がモルタルに一体的に埋設されることでアンカー効果を果たし、モルタルの剥落を防止している。そして、経年劣化で躯体コンクリートの表面と一部のモルタルとの間に隙間が発生し、上記のようにモルタルの一部に剥離が発生しても、該剥離部分においてモルタルに埋設されている係止部がこれを支え、剥離部分の剥落を回避している。
そして、この剥離部分の係止部の脚部の基部は、常時、外気に曝されているために躯体コンクリート内に埋設されている本体部分より経年劣化が早く、且つ細い直径のループで形成されているために上記引っ張り方向の力や剪断方向の力によって切れやすい。特に、経年劣化が進むとこの係止部は次々と切れ、最後には、剥離部分を支え切れなくなって該剥離部分のモルタルが落下する。剥離が大きくなるとその傾向が高まる。
前記コネクター部1の、前記モルタル63が塗布される前記対向面6に凹溝20が形成され、
前記凹溝20の開口幅Wを狭くするように前記凹溝20の内周面のほぼ全長にわたって凸部21が形成されていることを特徴とする(図12)。
この凸部21が凹溝20の内周面のほぼ全長にわたって設けられておれば、更には、凸部21の入隅22を鋭角に形成されておれば、凹溝20の全体に入り込んだモルタル63の全体がアンカーの役目を果たし、本発明の保持具Aのモルタル保持力を更に大幅に高める。加えて、凸部21は凹溝20の内周面に設けられているので、躯体コンクリート60の表面61から剥離した剥離モルタル63からの剪断力を受けない。なお、凸部21のみで第1、2係止部10、50を設けない場合は、第1、2係止部10、50を設ける場合と比較して保持具Aの高さを第1、2係止部10、50の分だけ低くすることが出来、躯体コンクリート60の欠損量をその分だけ小さく出来る。
塗着されたモルタル63内に埋設される第1係止部10をコネクター部1に、更に第1係止部10の周囲を取り囲むように第2係止部50を支持枠30の内周面に突設された内鍔部31に更に設けておけば、凹溝20の凸部21との相乗効果、更には内鍔部31を加えた相乗効果で本発明の保持具Aのモルタル保持力を更に大幅に高めることが出来るし、細かい破片の剥落も防止できる。
凹溝20を跨ぐように第1係止部10を設置しておけば、凹溝20内に入り込んだ硬化モルタル63を抱持状態で保持することができ、この部分の硬化モルタル63の破断を大幅に緩和出来る。
本体部分2は、円板状の部分3と、この円板状の部分3の前面側に円形台状に設けられ、モルタル63が塗着される台状部分4、及び円板状の部分3の背面側に設けられた円筒状の部分5とで一体的に構成されている。
円板状の部分3は台状部分4より直径が大であって円板状の部分3と台状部分4の境界には段差が形成されている。
円筒状の部分5は円板状の部分3より直径がかなり小さく、円筒状の部分5と円板状の部分3の背面のコーナー部分には円板状の部分3の補強とコネクター部1の廻り止めとなる直角三角形のリブ7が一体的に設けられている。本実施例では、リブ7は円筒状の部分5の周囲に等角度で6本形成されている。なお、リブ7の本数は限定されない。
また、円板状の部分3の外周の前面側には支持枠30を取り付けるための段部8が全周にわたって形成されている。
本体部分2のモルタル63が塗着される面をモルタル塗着面6とする。更に後述するようにこの面は、型枠71の内面に対向する面でもあるから、分かりやすくするために同じ面であるが対向面6とも称することがある。
また、図示していないが、凸部21の形成位置はモルタル塗着面6の開口縁に沿う内周面でなく、開口縁から奥に入った凹溝20の内側でも良い。また、図の実施例では、凸部21は凹溝20の全長に亙って形成されるようになっているが、成形可能な限り、凹溝20の一部としてもよい。
凸部21の横断面形状は、図7(a)に示すように、四角形や、同図(b)に示すように、凹溝20の入隅22を鋭角に切り込んでもよいし、同図(c)に示すように、凹溝20と第1係止部10とに跨る境界部分に凸部21を設けてもよい。この場合は、第1係止部10の脚部11が太くなるので、この部分の強度を高めることができる。本発明の保持具Aは、図12(a)(b)に示すように、上記凹溝20に凸部21を設けただけのものでも良いが、次に述べる第1係止部10を更に設けることも出来る。ここでは第1係止部10を設けた事例で説明する。
図6の実施形態の第1係止部10はループ形状であるが、例えば、キノコ形フック(脚部の直径より大きい直径の円錐台状の頭部が脚部の先端に設けられているフック)、又は図11に示すような球状フック(脚部51の直径より大きい直径の頭部52が脚部51の先端に設けられているフック)でもよい。ここではループ形状とする。ループの正面形状はモルタル塗布面6から外側に伸びた半円状または半楕円形である。ループの場合は、ループの長軸方向に向けて大きな荷重が掛ったとしても第1係止部10は切れにくい。
第1係止部10の配列は、図8(a)のように千鳥状、又は同図(b)のように一列に配列して突設されている。
千鳥状の配列とは、隣接する第1係止部10が、隣り合う2つの凹溝20を交互に跨ぐように配列される状態であり、列状の配列とは、隣接する第1係止部10が、同じ凹溝20を跨ぐように配列される状態である。
ループ状の第1係止部10を千鳥状に並べると、隣接する第1係止部10の前後する脚部11が同じ畝状部4aに連なるように設けることができるので、同一面積内では列状に配列する場合に比べてより多くの第1係止部10を設けることができる。
ループ状の第1係止部10と凹溝20で構成された係止空間はこの部分にモルタル63が塗り込まれて硬化した時、この部分のモルタル63を抱持することになるので、係止するためのアンカー効果を強くする。
支持枠30の後端内周部分は段状に形成されており、この部分をコネクター部1に対する嵌め込み段部32とする。また、内鍔部31の内側に形成された大孔を内鍔孔部33とする。
ここで、支持枠30の内鍔部31から下の側壁部分は、台状部分4の側面から離れて、且つ前記内鍔部31は台状部分4の表面であるモルタル塗布面6から離れ、台状部分4と支持枠30の内鍔部31から下の部分に台状部分4の全周にわたって隙間35を形成する。モルタル塗布時には、この隙間35にもモルタル63が入り込んで、この部分でも内鍔部31が硬化したモルタル63に係止する。
コネクター部1に支持枠30を嵌め込んだ状態では、支持枠30の内鍔部31はコネクター部1の台状部分4より前方側(モルタル側)に位置し、第1係止部10の全体が内鍔孔部33の内側でこれに囲まれた状態となり、更に第2係止部50が第1係止部10の全体をその周囲から囲むようになる。この時、第2係止部50は第1係止部10より高く、第2係止部50の頭部52が最外周の第1係止部10の上端より上に位置し、これに被さるようになる。従って、第1係止部10は支持枠30の前端の環状当接部34より低い位置にある。
なお、型枠71の内面に直接接触するのは、支持枠30の前端面に設けられた幅の狭い環状当接部34であり、これが型枠71の締付圧により変形して型枠71の当接部分に対する傷付きを緩和している。
モルタル保持具Aの埋設部分では、塗布されたモルタル63の一部は支持枠30の内側の凹溝20の全長及び台状部分4と支持枠30との間の隙間35に入り込み、且つ第1係止部10及び第2係止部50をモルタル63内に取り込んで硬化する(図13(c))。凹溝20内においては、凸部21の入隅22内にモルタル63が更に入り込む。上記隙間35に入り込んで硬化したモルタル63は、支持枠30の内周全周において、嵌め殺し状態となる。
これに加えて、上記隙間35に入り込んで硬化したモルタル63は、支持枠30の内周全周において、内鍔部31に係止し、且つ支持枠30の内周面に全周にわたって接触しているので、モルタル63を躯体コンクリート60から引き剥がす方向の引張力、及びモルタル63を躯体コンクリート60の表面から剥落させる、躯体コンクリート60の表面に平行な方向の剪断力に対して強い抵抗力を示す。
試験条件
図1から4に示す本発明のコネクター兼用モルタル保持具と比較例として特許文献1に記載の保持具を用いた。
両保持具のモルタル塗布面が露出するように試験用のコンクリートブロック(躯体コンクリートに相当)に埋設し、両保持具の強度を測定するためにモルタル接着面だけにモルタルを塗着した。
特許文献1に記載の保持具ではリング状の係止部内にモルタルが十分入り込むようにした。
本発明の保持具では、支持枠内にモルタルを塗布した。塗布されたモルタルはモルタル塗布面に凹設された凹溝の凸部を越えて凹溝内に、そして支持枠の内鍔部を越えてその下側の隙間にモルタルが十分入り込むようにした。更に第1係止部と第2係止部がモルタル内に十分埋設するように塗布した。
モルタルの厚みは、いずれもコンクリートブロックの表面から5mmの厚みとした。
引っ張り強度は、保持具1個に塗着したモルタルをコンクリートブロックの埋設面に対して垂直に引張した時の保持具の破壊強度であり、剪断強度は、コンクリートブロックの埋設面に対して平行に力を掛けた時の保持具の破壊強度である。
測定機は島津製作所の万能試験機である。
(型式AG-50KND 定速ひずみ方式 最大荷重5t 載荷速度 1mm/分)
試験は、試験片作成(モルタル塗り付け)後、14日目に実施した。
判定基準から保持具1個に塗着したモルタルの引っ張り強度は629N以上、剪断強度は123N以上であることが要求される。
本発明の保持具は、引っ張り強度が1236N(安全率197%)、剪断強度は7199N(安全率5449%)であり、十分な強度を示すことが認められた。
本発明の保持具の引っ張り強度は、比較例より1.3倍高い値が得られた。
また、本発明の保持具は、引っ張り試験において、最大引っ張り強度を示した後も支持枠や第1、2係止部が変形しつつも強度を保ち、モルタルの破壊後も主として第2係止部によって破壊されたモルタル片を保持する粘り強い特性が見られた。
Claims (6)
- 型枠内にセットされるセパボルトに連結され、且つ躯体コンクリート内に埋設されて前記躯体コンクリートの表面に塗布されたモルタルを保持するコネクター部と、前記コネクター部に取り付けられ、前記型枠の内面に当接し、前記内面と前記内面に対する前記コネクター部の対向面との間の空間を囲繞して閉空間とする支持枠とで構成されたコネクター兼用モルタル保持具であって、
前記コネクター部の、前記モルタルが塗布される前記対向面に凹溝が形成され、
前記凹溝の開口幅を狭くするように前記凹溝の内周面のほぼ全長にわたって凸部が形成されていることを特徴とするコネクター兼用モルタル保持具。 - 前記凸部の前記凹溝側の入隅が鋭角に形成されている特徴とする請求項1に記載のコネクター兼用モルタル保持具。
- 請求項1又は2に記載のコネクター兼用モルタル保持具おいて、前記支持枠の内周面に前記コネクター部の対向面から離間した位置に内鍔部が突設されていることを特徴とするコネクター兼用モルタル保持具。
- 塗着された前記モルタル内に埋設される第1係止部が前記コネクター部の前記対向面に更に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコネクター兼用モルタル保持具。
- 前記第1係止部は前記凹溝を跨ぐように設置されていること特徴とする請求項4に記載のコネクター兼用モルタル保持具。
- 前記閉空間内で、支持枠から前記第1係止部の周囲を取り囲むように、塗着された前記モルタル内に埋設されるフック状の第2係止部が設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載のコネクター兼用モルタル保持具。
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