JP7399375B2 - 接木改善剤 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用申請有り (その1) 開催日 2018年3月21日 集会名 名古屋大学オープンレクチャー2018 名古屋大学(愛知県名古屋市千種区不老町1番)
特許法第30条第2項適用申請有り (その2) 発行日 2018年3月24日 刊行物 園芸学研究別冊
特許法第30条第2項適用申請有り (その3) 開催日 2018年3月23日 集会名 一般社団法人園芸学会平成30年度春季大会 小集会 近畿大学(大阪府東大阪市小若江3丁目4-1)
特許法第30条第2項適用申請有り (その4) 開催日 2018年5月21日 集会名 岐阜県農業技術センター講演 岐阜県農業技術センター(岐阜市又丸729-1)
特許法第30条第2項適用申請有り (その5) 開催日 2018年6月27日 集会名 愛媛大学講演 愛媛大学農学部(愛媛県松山市樽味3丁目5番7号)
特許法第30条第2項適用申請有り (その6) 開催日 2018年7月21日 集会名 立命館大学 総合科学技術研究機構 生物資源研究センター 第4回生物資源セミナー「生物資源研究センターアカデミックセミナー」 立命館大学びわこくさつキャンパス リンクスクエア2階 生命科学部教授会室(滋賀県草津市野路東1丁目1-1)
特許法第30条第2項適用申請有り (その7) 開催日 2018年8月26日 集会名 名大研究室の扉 in 河合塾 河合塾名古屋校(愛知県名古屋市中村区椿町2-1)
特許法第30条第2項適用申請有り (その8) ウェブサイトの掲載日 2018年9月10日 ウェブサイトのアドレス http://bsj82.jp/equb.html
特許法第30条第2項適用申請有り (その9) 開催日 2018年9月14日~2018年9月16日 集会名 日本植物学会第82回大会 広島国際会議場(広島県広島市中区中島町1-5)
特許法第30条第2項適用申請有り (その10) 開催日 2018年10月11日 集会名 長野県農業試験場講演 長野県野菜花き試験場(長野県塩尻市宗賀床尾1066-1)
特許法第30条第2項適用申請有り (その11) 開催日 2018年10月16日 集会名 東北大学 西谷研究室 講演 東北大学 西谷研究室(宮城県仙台市青葉区片平2-1-1)
特許法第30条第2項適用申請有り (その12) 開催日 2018年11月6日 集会名 第5回基礎と応用の融合ため勉強会 意見交換会 山形県農業総合研究センター園芸試験場 (山形県寒河江市 大字島字島南423)
特許法第30条第2項適用申請有り (その13) 開催日 2018年12月7日から2018年12月9日 集会名 農学中手の会 第4回研究集会 雄琴温泉 湯の宿 木もれび(滋賀県大津市稲鹿2-30-1)
特許法第30条第2項適用申請有り (その14) 開催日 2018年12月19日 集会名 ソウル大学校 植物免疫研究センター招待セミナー ソウル大学校 College of Agriculture and Life Sciences (200棟)3110号セミナー室 (1 Gwanak-ro,Gwanak-gu,Seoul,大韓民国)
特許法第30条第2項適用申請有り (その15) ウェブサイトの掲載日 2018年11月26日 ウェブサイトのアドレス https://www.intlpag.org/2019/ https://plan.core-apps.com/pag_2019/event/6e070c0ebde6a5b908f9f08fb2f32ced
特許法第30条第2項適用申請有り (その16) 開催日 2019年1月12日から2019年1月16日 集会名 PAG XXVII Town and Country Hotel(500 Hotel Circle North San Diego,CA 92108)
特許法第30条第2項適用申請有り (その17) 開催日 2019年2月6日 集会名 サントリー講演 サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社 (住所:京都府相楽郡精華町精華台8-1-1)
特許法第30条第2項適用申請有り (その18) 開催日 2019年3月7日 集会名 明治大学シンポジウム 明治大学(住所:神奈川県川崎市多摩区東三田1-1-1)
特許法第30条第2項適用申請有り (その19) 開催日 2018年3月28日 集会名 第59回日本植物生理学会年会 札幌コンベンションセンター (北海道札幌市白石区東札幌6条1丁目1-1)
特許法第30条第2項適用申請有り (その20) 発行日 2018年8月4日 刊行物 INTERNATIONAL PLANT MOLECULAR BIOLOGY 2018 PROGRAM ABSTRACTS‐POSTER PRESENTATIONS
特許法第30条第2項適用申請有り (その21) 開催日 2018年8月5日から2018年8月10日 集会名 INTERNATIONAL PLANT MOLECULAR BIOLOGY 2018 Le Corum(Place Charles de Gaulle,34000 Montpellier,フランス)
特許法第30条第2項適用申請有り (その22) 開催日 2018年12月5日 集会名 次世代の農資源利用研究プロジェクツ キックオフシンポジウム 名古屋大学農学部 第8講義室(愛知県名古屋市千種区不老町1番)
特許法第30条第2項適用申請有り (その23) ウェブサイトの掲載日 2019年3月6日 ウェブサイトのアドレス https://jspp.org/annualmeeting/60/index.html https://jspp.org/annualmeeting/60/abstractbook.html https://jspp.org/annualmeeting/60/sanka.html#08
特許法第30条第2項適用申請有り (その24) 開催日 2019年3月13日~2019年3月15日集会名 第60回日本植物生理学会年会 名古屋大学 東山キャンパス(名古屋市千種区不老町)
本発明は、接木改善剤等に関する。
接木とは2つ以上の植物を外科的に一つに融合する技術である。接木は、一般に裸子植物、被子植物を対象に施され、園芸、農学的に広く利用されている。一般的には、接木は、根部を構成する台木と地上部をなす穂木とを備えており、それぞれの優れた能力を共に発揮させる植物体を作製する技術である。接木の目的及び手法は多岐にわたる。例えば、果樹全般の枝変りや新品種は、接木によってクローン繁殖されることが多い。また、ナス科やウリ科をはじめとする蔬菜類では、有用な根系システムを接木により利用することで病害耐性獲得や果実等の品質・生産性の向上が果たされている。
Simon, S.V. Jahrb. wiss. Bot., 1930. 72, 137-160. Nickell L.G., Science, 1948. 108. 389.
しかしながら、接木には、接木不和合と呼ばれる植物の組み合わせによって接木が成立しない、あるいは、接木の成立する頻度が少ない現象が生じ得ることが知られており、これが技術的な律速となっていた。接木は、概して、同種間、同属間、同科間の順に接木が成立しにくくなり、例外的に特定の異科植物間の接木が報告されている(非特許文献1、2)ものの、接木可能な異科植物の組合せは限られていた。
本発明は上記問題に着目して研究を進める中で、接木効率等を改善する接木改善作用を有する物質であれば、上記問題を解決できることに着目した。
そこで、本発明は、接木改善剤を提供することを目的とする。
本発明者は、接木メカニズムについて不明な部分が多い中、鋭意研究を進めた。その結果、(A)セルラーゼ、(B)配列番号1若しくは2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1若しくは2に示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されてなるアミノ酸配列を含み、且つ接木改善活性を有するペプチド、(C)フェノールアミド類又はポリアミン、及び(D)前記(A)~(C)のいずれかの発現又は生成促進剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、接木改善剤であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者は、この知見に基づいてより一層研究を進めた結果、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
項1. (A)セルラーゼ、
(B)配列番号1若しくは2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1若しくは2に示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されてなるアミノ酸配列を含み、且つ接木改善活性を有するペプチド、
(C)フェノールアミド類又はポリアミン、及び
(D)前記(A)~(C)のいずれかの発現又は生成促進剤
からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、接木改善剤。
項2. 異科接木用又は同科接木用である、項1に記載の接木改善剤。
項3. 前記(A)の発現及又は生成促進剤が前記(A)の発現カセットであり、
前記(B)の発現及又は生成促進剤が前記(B)の発現カセットであり、
前記(C)の発現及又は生成促進剤が前記(C)の生合成関連遺伝子の発現カセット又は前記(C)の生合成関連因子である、
項1又は2に記載の接木改善剤。
項4. 前記ポリアミンがアミノ基を4つ以上含むポリアミンである、項1~3のいずれかに記載の接木改善剤。
項5. 配列番号1若しくは2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1若しくは2に示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されてなるアミノ酸配列を含み、且つ接木改善活性を有するペプチド。
項6. 植物体又は植物部分構造体に項1~4のいずれかに記載の接木接着剤若しくは請求項5に記載のペプチドを施用することを含む、接木用植物部分構造体の製造方法。
項7. 項6に記載の方法により得られた、接木用植物部分構造体。
項8. 接木後の植物体に項1~4のいずれかに記載の接木改善剤若しくは請求項5に記載のペプチドを施用すること、及び/又は項7に記載の接木用植物部分構造体を他の植物部分構造体と接木することを含む、接木植物体の製造方法。
項9. 項8に記載の方法により得られた、接木植物体。
本発明によれば、接木改善剤を提供することができる。さらに、本発明によれば、該接木改善剤を利用した、接木用植物組織及びその製造方法、接木植物体及びその製造方法等を提供することもできる。
試験例1の結果を示す。Aは試験例1の接木植物体の模式図を示す。Bは試験後の接木植物体の写真の例である。B中、○は接木成立を示し、×は接木不成立を示す。Cは試験に用いた各タバコ属植物のセルラーゼmRNA発現量比(/アクチン発現量)の相対値を示すグラフである。Dは、接木成功率を示すグラフである。C及びDの横軸中、No graftは接木していない野生型のタバコ属植物を示し、No virusは接木した野生型のタバコ属植物を示し、Vector controlは接木したコントロールベクター(GFP遺伝子を標的としたVIGS用ベクター)導入タバコ属植物を示し、VIGS for Cellulaseは接木したセルラーゼノックダウン(セルラーゼ遺伝子を標的としたVIGS用ベクター)タバコ属植物を示す。 試験例2の結果を示す。Aは試験例2の接木植物体の模式図、及び壊死層が形成されている接木面の写真の例を示す。Bは、壊死層が形成されない接着領域の割合を示すグラフである。B中、1は野生型のタバコ属植物を示し2はコントロールベクター(GFP遺伝子を標的としたVIGS用ベクター)導入タバコ属植物を示し、3はセルラーゼノックダウン(セルラーゼ遺伝子を標的としたVIGS用ベクター)タバコ属植物を示す。 試験例3の結果を示す。写真は、接木部位の断面である。-はセルラーゼ非投与の場合を示す。 試験例4の結果を示す。縦軸は接木成功率を示す。横軸中、NTは薬剤未処理群を示し、2,4-Dはオーキシン処理群を示し、DMSOはDMSO処理群(ネガティブコントロール)を示し、Grf006及びGrf010は、それぞれGrf006処理群、Grf010処理群を示す。 試験例5において接木に使用したトマトのSIMYB14 mRNA量(相対値)を示す。横軸中、Wild typeは野生型トマトを示し、2-4-1はRNAiによりSIMYB14をノックダウンしたトマトを示し、Escape 2-1-1は、RNAi形質転換体作出過程で得られた非形質転換されずに発生したトマト(すなわち野生型トマトと同形質のトマト)を示す。 試験例5において接木に使用したトマトのフェノールアミド類量(相対値)を示す。横軸中、Wild typeは野生型トマトを示し、2-4-1はRNAiによりSIMYB14をノックダウンしたトマトを示し、Escape 2-1-1はRNAi形質転換体作出過程で得られた非形質転換されずに発生したトマト(すなわち野生型トマトと同形質のトマト)を示す。 試験例5においてナス科植物におけるフェノールアミド類の普遍性を評価した結果を示す。横軸には、試料を採取したナス科植物の品種名を記した。「_A」は、非処理区(A)の品種から採取した試料であることを、「_B」は、傷処理区(B)から採取した試料であることを示す。縦軸はLC-MS/MSのシグナル強度値を示す。 試験例5の結果を示す。Wild typeは野生型トマトを示し、2-4-1はRNAiによりSIMYB14をノックダウンしたトマトを示し、Escape 2-1-1はRNAi形質転換体作出過程で得られた非形質転換されずに発生したトマト(すなわち野生型トマトと同形質のトマト)を示す。
1.定義
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
本明細書において、「及び/又は」は、「及び」と「又は」の両方を包含する用語である。すなわち、A及び/又はBは、Aのみ、Bのみ、A及びBの3つの意味を包含する。
本明細書中において、アミノ酸配列の「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対するアミノ酸配列の一致の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の一致性が高いほど、それらの配列の同一性又は類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若しくは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(KarlinS,Altschul SF.“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoringschemes”Proc Natl Acad Sci USA.87:2264-2268(1990)、KarlinS,Altschul SF.“Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences.”Proc Natl Acad Sci USA.90:5873-7(1993))を用いて決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたblastpと呼ばれるプログラムやtblastnと呼ばれるプログラムが開発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウェエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。また、塩基配列の「同一性」も上記に準じて定義される。
本明細書中において、「保存的置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることが、保存的な置換にあたる。その他、アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;スレオニン、バリン、イソロイシンといったβ-分枝側鎖を有するアミノ酸残基;チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、保存的な置換にあたる。
本明細書中において、セルラーゼ等のタンパク質及びペプチドは、その活性が著しく損なわれない限りにおいて、化学修飾されたものであってもよい。タンパク質及びペプチドは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチルなどのC1-6アルキル基;例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基;例えば、フェニル、α-ナフチルなどのC6-12アリール基;例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル-C1-2アルキル基;α-ナフチルメチルなどのα-ナフチル-C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基;ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。タンパク質及びペプチドは、C末端以外のカルボキシル基(またはカルボキシレート)が、アミド化またはエステル化されていてもよい。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。さらに、タンパク質及びペプチドには、N末端のアミノ酸残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成し得るN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質/ペプチドなどの複合タンパク質/ペプチドなども包含される。
本明細書中において、セルラーゼ等のタンパク質及びペプチドは、その活性が著しく損なわれない限りにおいて、他のアミノ酸配列が付加されたものであってもよい。他の配列としては、例えば各種シグナル配列(例えば核移行シグナル、核外移行シグナル等)、タンパク質タグ(例えばビオチン、Hisタグ、FLAGタグ、Haloタグ、MBPタグ、HAタグ、Mycタグ、V5タグ、PAタグ等)、標識タンパク質配列(例えば蛍光タンパク質、発光酵素タンパク質等)、タンパク質不安定化配列(例えばPEST配列等)、タンパク質安定化配列等が挙げられる。
本明細書中において、「コード配列」とは、タンパク質又はペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列であり、その限りにおいて特に制限されない。
本明細書中において、ポリヌクレオチドは、1本鎖であってもよいし、2本鎖であってもよい。また、線状であっても、環状であってもよい。さらに、本発明のポリヌクレオチドは、DNA、RNAのみならず、これらに、次に例示するように、公知の化学修飾が施されたものも包含する。ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート等の化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各リボヌクレオチドの糖(リボース)の2位の水酸基を、-OR(Rは、例えばCH3(2´-O-Me)、CH2CH2OCH3(2´-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。さらには、リン酸部分やヒドロキシル部分が、例えば、ビオチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等で修飾されたものなどを挙げることができるが、これに限定されない。また、「ポリヌクレオチド」の語は、天然の核酸だけでなく、BNA(Bridged Nucleic Acid)、LNA(Locked Nucleic Acid)、PNA(Peptide Nucleic Acid)等の何れも包含する。
本明細書中において、セルラーゼ等のタンパク質、ペプチド、及びポリヌクレオチドは、酸または塩基との薬学的に許容される塩の形態であってもよい。塩は、農学的に許容される塩である限り、特に制限されるものではない。該塩としては、酸性塩、塩基性塩のいずれも採用することができる。酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、塩基性塩の例としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩; 並びにカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩; アンモニアとの塩; モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ジ(ヒドロキシアルキル)アミン、トリ(ヒドロキシアルキル)アミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。
本明細書中において、セルラーゼ等のタンパク質、ペプチド、及びポリヌクレオチドは、溶媒和物の形態であってもよい。溶媒は、農学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば水、エタノール、グリセロール、酢酸等が挙げられる。
本明細書中において、セルラーゼ等のタンパク質、ペプチド、及びポリヌクレオチドは、機能性物質が付加されたものであってもよい。機能性物質としては、特に制限されず、例えば標識物質、担体等が挙げられる。機能性物質は、通常、タンパク質、ペプチド、及びポリヌクレオチドに直接、又は間接に(例えばリンカーを介して)、連結されている。標識物質としては、例えば蛍光物質(例えばフルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、カルボキシローダミン、フィコエリスリン、6-FAM(商標)、Cy(登録商標)3、Cy(登録商標)5、Alexa Fluor(登録商標)のシリーズ等)、酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ等)等が挙げられる。
担体としては、本発明のポリペプチドを担持可能なものである限り特に制限されない。担体の材質としては、特に制限されず、各種樹脂等の有機材料、ケイ素材料や金属等の無機材料等が例示される。
2.接木改善剤
本発明は、その一態様において、(A)セルラーゼ、(B)配列番号1若しくは2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1若しくは2に示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されてなるアミノ酸配列を含み、且つ接木改善活性を有するペプチド、(C)フェノールアミド類又はポリアミン、及び(D)前記(A)~(C)のいずれかの発現又は生成促進剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、接木改善剤(本明細書において、「本発明の接木改善剤」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。なお、(A)、(B)、(C)、(D)の成分については、それぞれ、A成分、B成分、C成分、D成分と示すこともある。
2-1.A成分について
セルラーゼとしては、特に制限されず、各種セルラーゼを採用することができる。セルラーゼとしては、例えばエンドグルカナーゼ(EC3.2.1.4)、エキソグルカナーゼ(EC.3.2.1.91)が挙げられる。セルラーゼとしては、ファミリー内の各種セルラーゼを使用することができ、例えばグリコシルヒドロラーゼファミリーが挙げられ、具体的には、例えばグリコシルヒドロラーゼ1、グリコシルヒドロラーゼ2、グリコシルヒドロラーゼ3、グリコシルヒドロラーゼ4、グリコシルヒドロラーゼ5、グリコシルヒドロラーゼ6、グリコシルヒドロラーゼ7、グリコシルヒドロラーゼ8、グリコシルヒドロラーゼ9、グリコシルヒドロラーゼ10、グリコシルヒドロラーゼ11、グリコシルヒドロラーゼ12等が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくはグリコシルヒドロラーゼ9(例えば9A、9B、9Cなど、中でも好ましくは9B、より好ましくは9B1、9B13)等が挙げられる。
セルラーゼの由来生物は、特に制限されない。由来生物としては、例えば植物、微生物等が挙げられ、好ましくは植物が挙げられる。植物の中でも、好ましくはナス科、アブラナ科植物、シソ科植物、ハマウツボ科植物等、異科接木能力が高い植物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ナス科植物としては、特に限定されず、例えば、タバコ属、アントケルキス属(Anthocercis)、アントツロケ属(Anthotroche)、クレニディウム属(Crenidium)、キファンテラ属(Cyphanthera)、ドゥボイシア属(Duboisia)、グラムモソレン属(Grammosolen)、シモナンツス属(Symonanthus)、ペチュニア属、ベンタミエラ属(Benthamiella)、ボウケティア属(Bouchetia)、バンマツリ属(Brunfelsia)、コムベラ属(Combera)、ファビアナ属(Fabiana)、フンジケリア属(Hunzikeria)、レプトグロッシス属(Leptoglossis)、アマモドキ属(Nierembergia)、パンタカンタ属(Pantacantha)、カリブラコア属(Calibrachoa)、プロウマニア属(Plowmania)、トウガラシ属、リキアンテス属(Lycianthes)、ナス属、ヤルトマタ属(Jaltomata)、チョウセンアサガオ属、キダチチョウセンアサガオ属、ホオズキ属、イガホオズキ属、ハダカホオズキ属、ハシリドコロ属、ヒヨス属、ベラドンナ属、マンドラゴラ属、クコ属、カリブラコア属等に属する植物が挙げられる。これらの中でも、タバコ属、アントケルキス属(Anthocercis)、アントツロケ属(Anthotroche)、クレニディウム属(Crenidium)、キファンテラ属(Cyphanthera)、ドゥボイシア属(Duboisia)、グラムモソレン属(Grammosolen)、シモナンツス属(Symonanthus)、ペチュニア属、ベンタミエラ属(Benthamiella)、ボウケティア属(Bouchetia)、バンマツリ属(Brunfelsia)、コムベラ属(Combera)、ファビアナ属(Fabiana)、フンジケリア属(Hunzikeria)、レプトグロッシス属(Leptoglossis)、アマモドキ属(Nierembergia)、パンタカンタ属(Pantacantha)、カリブラコア属(Calibrachoa)、プロウマニア属(Plowmania)、トウガラシ属、リキアンテス属(Lycianthes)、ナス属、ヤルトマタ属(Jaltomata)等が好ましく、タバコ属、ペチュニア属、トウガラシ属、ナス属等がより好ましく、タバコ属がさらに好ましい。
タバコ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Nicotiana benthamiana、Nicotiana tabacum、Nicotiana umbratica、Nicotiana rustica、Nicotiana acuminata、Nicotiana alata、Nicotiana attenuata、Nicotiana clevelandii、Nicotiana excelsior、Nicotiana forgetiana、Nicotiana glauca、Nicotiana glutinosa、Nicotiana langsdorffii、Nicotiana longiflora、Nicotiana obtusifolia、Nicotiana paniculata、Nicotiana plumbagifolia、Nicotiana quadrivalvis、Nicotiana repanda、Nicotiana suaveolens、Nicotiana sylvestris、Nicotiana tomentosa等が挙げられる。これらの中でも、Nicotiana benthamiana、Nicotiana tabacum、Nicotiana umbratica、Nicotiana rustica等が好ましく、Nicotiana benthamianaがより好ましい。
ペチュニア属(ツクバネアサガオ属)に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Petunia × atkinsiana(ペチュニア)、Petunia alpicola、Petunia axillaris、Petunia bajeensis、Petunia bonjardinensis、Petunia exserta、Petunia guarapuavensis、Petunia inflata、Petunia integrifolia、Petunia interior、Petunia ledifolia、Petunia littoralis、Petunia mantiqueirensis、Petunia occidentalis、Petunia patagonica、Petunia reitzii、Petunia riograndensis、Petunia saxicola、Petunia scheideana、Petunia villadiana等が挙げられる。これらの中でも、Petunia × atkinsianaが好ましい。
トウガラシ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Capsicum annuum L.(例えば、'Grossum'(ピーマン)、'Abbreviatum'、'Acuminoum'、'Cerasiforme'、'Conoides'、'Fasciculatum'、'Longum'、'Nigrym'、'Parvo-acuminatum'等)、Capsicum baccatum、Capsicum cardenasii、Capsicum chinense Jacq. Heser & Smith、Capsicum frutescens L. 、Capsicum pubescens Ruiz & Pav.等が挙げられる。これらの中でも、Capsicum annuum L.が好ましく、Capsicum annuum L. 'Grossum'(ピーマン)がより好ましい。
ナス属に属する植物としては、特に限定されず、例えばSolanum lycopersicum L(トマト)、Solanum melongena L(ナス)、Solanum tuberosum L、Solanum acaule Bitt、Solanum aethiopicum L、Solanum betaceum Cav、Solanum jasminoides Paxt、Solanum mammosum L、Solanum muricatum Aiton、Solanum nigrum L、Solanum pseudocapsicum L、Solanum ptychanthum Dunal等が挙げられる。これらの中でも、Solanum lycopersicum L(トマト)、Solanum melongena L(ナス)等が好ましい。
アブラナ科植物としては、特に限定されず、例えば、シロイヌナズナ属、アブラナ属、ナズナ属、タネツケバナ属、タイリンミヤコナズナ属、アマナズナ属、セイヨウワサビ属、ヤマガラシ属、オランダガラシ属、イヌガラシ属、マメグンバイナズナ属、カラクサナズナ属、クジラグサ属、ミヤマナズナ属、イワナズナ属、ニワナズナ属、キハナハタザオ属、エダウチナズナ属、キバナスズシロ属、ダイコン属、ダイコンモドキ属、シロガラシ属、ミヤガラシ属、オオアラセイトウ属、タイセイ属、ワサビ属、グンバイナズナ属、ヤマハタザオ属、ムラサキナズナ属、イヌナズナ属、ハクセンナズナ属、タカネグンバイ属、マガリバナ属、トモシリソウ属、ヒメアラセイトウ属、アラセイトウ属、ハナダイコン属、ツノミナズナ属、ゴウダソウ属等に属する植物が挙げられる。これらの中でも、シロイヌナズナ属、アマナズナ属、アブラナ属、エダウチナズナ属、キバナスズシロ属、ダイコン属、ダイコンモドキ属、シロガラシ属、ミヤガラシ属、オオアラセイトウ属、ナズナ属、タネツケバナ属、セイヨウワサビ属 、ヤマガラシ属、オランダガラシ属、イヌガラシ属等が好ましく、シロイヌナズナ属、アブラナ属、ナズナ属、タネツケバナ属等がより好ましく、シロイヌナズナ属、アブラナ属等がさらに好ましく、シロイヌナズナ属がよりさらに好ましい。
シロイヌナズナ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)、Arabidopsis arenicola、Arabidopsis arenosa、Arabidopsis cebennensis、Arabidopsis croatica、Arabidopsis halleri、Arabidopsis lyrata、Arabidopsis neglecta、Arabidopsis pedemontana、Arabidopsis suecica等が挙げられる。これらの中でも、Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)が好ましい。
アブラナ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Brassica Oleracea(例えば、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ等)、Brassica Napus(例えば、セイヨウアブラナ等)、Brassica Barrelieri、Brassica carinata 、Brassica elongata、Brassica fruticulosa、Brassica juncea、Brassica narinosa、Brassica nigra、Brassica nipposinica、Brassica rapa、Brassica rupestris、Brassica Tournefortii等が挙げられる。これらの中でも、Brassica Oleracea、Brassica Napus等が好ましく、Brassica Oleraceaがより好ましく、ブロッコリーがさらに好ましい。
ナズナ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Capsella rubella(ルベラナズナ)、Capsella abscissa、Capsella andreana、Capsella australis、Capsella austriaca、Capsella bursa-pastoris、Capsella divaricata、Capsella draboides、Capsella gracilis、Capsella grandiflora、Capsella humistrata、Capsella hybrida、Capsella hyrcana、Capsella integrifolia、Capsella lycia、Capsella mexicana、Capsella orientalis、Capsella pillosula、Capsella pubens、Capsella puberula、Capsella schaffneri、Capsella stellata、Capsella tasmanica、Capsella thomsoni、Capsella thracica、Capsella viguieri、Capsella villosula等が挙げられる。これらの中でも、Capsella rubella(ルベラナズナ)が好ましい。
タネツケバナ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Cardamine hirsuta(ミチタネツケバナ)、Cardamine anemonoides、Cardamine appendiculata、Cardamine arakiana、Cardamine dentipetala、Cardamine dentipetala var. longifructa、Cardamine fallax、Cardamine impatiens、Cardamine kiusiana、Cardamine leucantha、Cardamine lyrata、Cardamine niigatensis、Cardamine nipponica、Cardamine pratensis、Cardamine regeliana、Cardamine schinziana、Cardamine scutata、Cardamine tanakae、Cardamine torrentis、Cardamine valida等が挙げられる。これらの中でも、Cardamine hirsuta(ミチタネツケバナ)が好ましい。
シソ科植物としては、特に限定されず、例えば、シソ属、ラベンダー属、ムラサキシキブ属、ハマゴウ属、チーク属、ハマクサギ属、キランソウ属、クサギ属、カリガネソウ属、ルリハッカ属、ニガクサ属、シモバシラ属、ナギナタコウジュ属、ヤマジソ属、カワミドリ属、イヌハッカ属、オレガノ属、ハッカ(メンサ)属、ムシャリンドウ属、カキドオシ属、ヤナギハッカ属、ウツボグサ属、シロネ属、ラショウモンカズラ属、セイヨウヤマハッカ属、ヤグルマハッカ属、アキギリ属、キダチハッカ属、ローズマリー属、イブキジャコウソウ属 、トウバナ属、ヤマハッカ属、イガニガクサ属、メボウキ属、タツナミソウ属、イヌゴマ属、スズコウジュ属、オドリコソウ属、チシマオドリコソウ属、ジャコウソウ属、ミズトラノオ属、テンニンソウ属、メハジキ属、マネキグサ属、ヤンバルツルハッカ属、ニガハッカ属等に属する植物が挙げられる。これらの中でも、シソ属、ラベンダー属、シモバシラ属、ナギナタコウジュ属、ヤマジソ属、カワミドリ属、イヌハッカ属、オレガノ属、ハッカ属、ムシャリンドウ属、カキドオシ属、ヤナギハッカ属、ウツボグサ属、シロネ属、ラショウモンカズラ属、セイヨウヤマハッカ属、ヤグルマハッカ属、アキギリ属、キダチハッカ属、ローズマリー属、イブキジャコウソウ属、トウバナ属、ヤマハッカ属、イガニガクサ属、メボウキ属等が好ましく、シソ属、ラベンダー属等がより好ましく、シソ属がさらに好ましい。
シソ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Perilla frutescens(例えば、シソ、エゴマ等)が挙げられる。中でも、Perilla frutescensが好ましく、シソがより好ましい。
ラベンダー属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Lavandula angustifolia(ラベンダー)、Lavandula latifolia、Lavandula stoechas、Lavandula multifida、Lavandula × intermedia等が挙げられる。これらの中でも、Lavandula angustifolia(ラベンダー)が好ましい。
ハマウツボ科植物としては、特に限定されず、例えば、コシオガマ属、Castilleja属、Orthocarpus属、Agalinis属、Aureolaria属、Esterhazya属、Seymeria属、Lamourouxia属、Cordylanthus属、Triphysaria属、ナンバンギセル属、オニク属、ホンオニク属、ハマウツボ属、キヨスミウツボ属、コゴメグサ属、ヤマウツボ属、ママコナ属、クチナシグサ属、セイヨウヒキヨモギ属、シオガマギク属、ヒキヨモギ属、ストライガ属等に属する植物が挙げられる。これらの中でも、コシオガマ属、シオガマギク属、Castilleja属、Orthocarpus属、Agalinis属、Aureolaria属、Esterhazya属、Seymeria属、Lamourouxia属、Cordylanthus属、Triphysaria属等が好ましく、コシオガマ属がより好ましい。
コシオガマ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Phtheirospermum japonicum(コシオガマ)、Phtheirospermum glandulosum、Phtheirospermum muliense、Phtheirospermum parishii、Phtheirospermum tenuisectum等が挙げられる。これらの中でも、Phtheirospermum japonicum(コシオガマ)が好ましい。
セルラーゼは、接木改善活性を有する限りにおいて、アミノ酸配列の変異(例えば、置換、欠失、挿入、付加等)を有していてもよい。この観点から、セルラーゼは、野生型セルラーゼのアミノ酸配列と、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ接木改善活性を有するタンパク質であってもよい。或いは、同様の観点から、セルラーゼは、野生型セルラーゼのアミノ酸配列に対して1若しくは複数個(例えば2~20個、好ましくは2~10個、より好ましくは2~5個、さらに好ましくは2~3個、よりさらに好ましくは2個)のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入(好ましくは保存的置換)されたアミノ酸配列からなり、且つ接木改善活性を有するタンパク質であってもよい。
接木改善活性の有無は、後述の試験例3、4、6のようにIn vitro graftingの試験系により評価することができる。
セルラーゼの具体例としては、例えば、下記(i)又は(ii)に記載のタンパク質:
(i)配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又は
(ii)配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ接木改善活性を有するを有するタンパク質
である。
配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、共に、タバコ属植物(Nicotiana benthamiana)由来のグリコシルヒドロラーゼ9である。
上記(ii)のタンパク質について、配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列に対する同一性の程度は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上である。
上記(ii)のタンパク質は、好ましくは下記(iia)に記載のタンパク質:
(iia)配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列に対して1若しくは複数個のアミノ酸が変異(例えば置換、欠失、付加、挿入等、好ましくは置換、より好ましくは保存的置換)したアミノ酸配列からなり、且つ接木改善活性を有するタンパク質
である。
上記(iia)のタンパク質について、複数個とは、例えば2~20個、好ましくは2~10個、より好ましくは2~5個、さらに好ましくは2~3個、よりさらに好ましくは2個である。
A成分は、1種単独であることもできるし、2種以上の組合せであることもできる。
2-2.B成分について
B成分は、配列番号1若しくは2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1若しくは2に示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されてなるアミノ酸配列を含み、且つ接木改善活性を有するペプチドである。
「数個」とは、例えば2~3個、好ましくは2個である。置換、欠失、付加若しくは挿入されるアミノ酸の数は、例えば1~3個、好ましくは1~2個、より好ましくは1個である。
アミノ酸の変異の態様は、好ましくは置換であり、より好ましくは保存的置換である。
接木改善活性については、上記A成分における説明と同じである。
B成分であるペプチドの長さとしては、オリゴペプチドとしての一般的な長さである限り特に制限されない。該長さは、例えば30アミノ酸残基長以下、好ましくは20アミノ酸残基長以下、より好ましくは15アミノ酸残基以下、さらに好ましくは12アミノ酸残基長以下である。また、該長さは、例えば8アミノ酸残基長以上、好ましくは9アミノ酸残基長以上、より好ましくは10アミノ酸残基長以上である。該長さの範囲は、例えば8~30アミノ酸残基長、好ましくは9~20アミノ酸残基長、より好ましくは10~15アミノ酸残基、さらに好ましくは10~12アミノ酸残基長である。
B成分は、植物の内在性のものであることが好ましい。B成分は、より好ましくはナス科、アブラナ科植物、シソ科植物、ハマウツボ科植物等、異科接木能力が高い植物の内在性のものである。ナス科、アブラナ科植物、シソ科植物、及びハマウツボ科植物それぞれについては、上記A成分における説明と同じである。
B成分は、1種単独であることもできるし、2種以上の組合せであることもできる。
2-3.C成分について
本発明において、C成分としての「フェノールアミド類」とは、フェノール(但し2以上のヒドロキシ基を有していても、またヒドロキシ基以外の置換基(例えばアルコキシ基)を1以上有していてもよい。)を含むアシル基と、(ポリ)アミン残基とが、1以上のアミド結合で連結した化合物群を意味する。植物内では、フェニルプロパノイド類のアシル基が、ポリアミンに転移(結合)して、フェノールアミド(別称として、hydroxycinnamic acid amide (HCAA)ともいう)類が産生する現象が知られている。本発明に利用されるフェノールアミド類には、この様な植物内に存在する天然のフェノールアミド類が含まれる。
本発明に利用可能なフェノールアミド類の一例は、以下の式(I)で表される。
Figure 0007399375000001
式中、R1は、n1価のアミン残基であり、n1は1~10の数である。好ましくは、1~7、1~5、1~4又は1~3である。n2は、0~5である。R2は置換基(例えばC1~5のアルコキシ基)を表し、n3は1~5の数であり、n4は0~4の数であり、n3とn4の和は5以下になる。n1が2以上の場合、2以上のn2,n3,n4及びR2はそれぞれ、互いに同一でも異なっていてもよい。また、n2が2以上の場合、C数がn2個の炭化水素鎖中に、二重結合が含まれていてもよい。
n2は、1~4であるのが好ましく、n3は1~2であるのが好ましく、n4は0~2であるのが好ましい。
R1で表されるn1価のアミン残基は、Nによって上記式中のC=Oと結合する。即ち、式(I)の化合物は分子中にn1個のアミド結合を有する。より具体的には、R1は、(ポリ)アミンに含まれる1以上のN原子に結合した水素原子を、n1個取り除いた残基を意味する。
R1で表されるn1価のアミン残基は、2以上のアミンを有する、ポリアミンの残基であるのが好ましい。2以上の第1級アミン、2以上の第2級アミン、又は1組以上の第1級アミンと第2級アミンとの組み合わせを含む、ポリアミンの残基であるのが好ましい。中でも、2以上の第1級アミンと、1以上の第2級アミンとを有するポリアミンの残基が好ましい。
R1は、C1~C50(好ましくは、C2~C40、又はC2~C30)の(ポリ)アミン残基であるのが好ましい。R1が有するC1~C50の炭化水素基の例には、直鎖、分岐鎖、環状の炭化水素基のいずれも含まれ、またこれらのいずれか2以上を組み合わせた構造の炭化水素基が含まれる。また、前記炭化水素基は、1以上の二重結合もしくは、三重結合を含んでいてもよく、芳香族環(ベンゼン環等)を含んでいてもよい。また、前記炭化水素基中の1以上の炭素-炭素結合の一方の炭素が、ヘテロ原子(窒素原子や酸素原子)に置き換わって、例えば、-C=N-や-C-O-になっていてもよいし、炭素に結合した1以上の水素原子が、置換基(例えば、水酸基又はC1~5のアルコキシ基)に置き換わっていてもよい。
R1の具体例には、アグマチン、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、及びサーモスペルミンの窒素原子に結合した水素原子を、n1個取り除いた残基が含まれる。ただし、この例に限定されるものではない。R1の好ましい一例は、4以上のアミノ基を有するポリアミン残基であり、例えば、スペルミンの残基である。
前記式(I)で表される化合物が有するn1個のアシル基の例には、以下のアシル基が挙げられる。また、植物内に存在する天然のフェノールアミド類は、以下のアシル基を例えば1~3個、1~2個、2個有することが知られている。
本発明において、C成分としての「ポリアミン」とは、2以上のアミノ基と、その間に位置する1以上の炭化水素基とを有する化合物群を意味する。前記炭化水素基の意義、及びその好ましい例は、上記R1が有するC1~C50の炭化水素基と同様である。
また、前記ポリアミン中、2つのアミノ基間に位置する炭化水素基が2以上ある場合は、2以上の炭化水素基は、互いに同一でも異なっていてもよい。また、前記ポリアミンに含まれるアミノ基は、第1級、第2級及び第3級アミノ基のいずれであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
C成分としてのポリアミンの例には、アグマチン、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、サーモスペルミンが含まれる。但し、この例に限定されるものではない。前記ポリアミンは、4以上のアミノ基を有しているのが好ましく、例えば、スペルミンが好ましい。
前記フェノールアミド類(及びそれを構成するアシル基となり得るフェニルプロパノイド類)、及びポリアミンそれぞれは、好ましくはナス科、アブラナ科植物、シソ科植物、ハマウツボ科植物等、異科接木能力が高い植物の内在性のものである。ナス科、アブラナ科植物、シソ科植物、及びハマウツボ科植物それぞれについては、上記A成分における説明と同じである。
C成分は、1種単独であることもできるし、2種以上の組合せであることもできる。
2-4.D成分について
A成分の発現又は生成促進剤としては、A成分の発現又は生成を促進可能なものである限り特に制限されず、例えばA成分(セルラーゼ)の発現カセット、A成分(セルラーゼ)の遺伝子の転写活性化因子の発現カセット、A成分(セルラーゼ)の遺伝子の転写抑制因子の発現又は機能阻害材(例えば抗体、siRNA発現カセット、CRISPR/Casシステム発現カセット等)等が挙げられる。
B成分の発現又は生成促進剤としては、B成分の発現又は生成を促進可能なものである限り特に制限されず、例えばB成分(ペプチド)の発現カセット、B成分(ペプチド)の遺伝子の転写活性化因子の発現カセット、B成分(ペプチド)の遺伝子の転写抑制因子の発現又は機能阻害材(例えば抗体、siRNA発現カセット、CRISPR/Casシステム発現カセット等)等が挙げられる。
C成分の発現又は生成促進剤としては、C成分の発現又は生成を促進可能なものである限り特に制限されず、例えばC成分の生合成関連遺伝子の発現カセット、C成分の生合成関連因子等が挙げられる。生合成関連遺伝子としては、例えばフェノールアミド生合成のマスターレギュレーターであるMYBファミリー遺伝子(例えばNaMYB8、SIMYB14等)が挙げられる。また、これら以外にも、フェノールアミドの前駆体であるポリアミンやフェニルプロパノイドの生合成や代謝に関わる各種酵素遺伝子(例えば、アルギナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、アルギニンデカルボキシラーゼ、スペルミジンシンターゼ、スペルミンシンターゼ、4-クマレート-CoAリガーゼ、クマル酸 3-ヒドロキシラーゼ、O-メチルトランスフェラーゼ、アシルトランスフェラーゼ等)も挙げられる。生合成関連因子としては、例えばジャスモン酸等が挙げられる。
発現カセットは、植物内で、又は植物内で生存可能な微生物若しくはウイルス内で所望のタンパク質又はペプチド(A成分、B成分、C成分の生合成関連遺伝子等)を発現可能なポリヌクレオチドである限り特に制限されない。発現カセットの典型例としては、プロモーター、及びそのプロモーターの制御下に配置された所望のタンパク質又はペプチドのコード配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
発現カセットに含まれるプロモーターとしては、特に制限されず、例えばRPS5A(リボソーマルタンパク質)プロモーター、UBQ(ユビキチン)プロモーター、ACT(アクチン)プロモーター、チューブリンプロモーター、ヒストンプロモーター、35Sプロモーター、NOSプロモーター、WOXプロモーター、LAT52プロモーター、DUOプロモーター、植物ウイルスサブゲノミックプロモーター等が挙げられる。
発現カセットは、上記以外の他の塩基配列を含むことができる。他の塩基配列としては、例えば薬剤耐性遺伝子、レポータータンパク質コード配列、これらの発現カセット; 転写終結シグナル; タンパク質タグコード配列; シグナル配列コード配列; 複製起点; アグロバクテリウム法で使用されるバイナリーベクターの各エレメント配列(例えば左境界領域、右境界領域等)等が挙げられる。
発現カセットは、ベクターを構成していてもよい。ベクターの種類としては、特に制限されず、例えばプラスミドベクター; アグロバクテリウムベクター; タバコモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、アフリカキャッサバモザイクウイルス、リンゴ小球形潜在ウイルス、オオムギ斑葉モザイクウイルス、Bean pod mottle virus、Beet curly top virus、Brome mosaic virus、Cabbage leaf curl virus、Cotton leaf crumple virus、シンビジュームモザイクウイルス、ブドウAウイルス、Pea early browning virus、Poplar mosaic virus、ジャガイモXウイルス、Rice tungro bacilliform virus、サテライトタバコモザイクウイルス、Tobacco curly shoot virus、タバコ茎えそウイルス等の植物ウイルスベクター等が挙げられる。また、上記のベクターのように、植物又は植物細胞への導入に適したベクター以外にも、このようなベクターに発現カセットを移し替えるためのベクター(例えば、ゲートウェイ(登録商標)のエントリークローンベクター等)も一例として挙げることができる。
D成分は、1種単独であることもできるし、2種以上の組合せであることもできる。
2-5.用途、他の成分について
本発明の接木改善剤は、A成分、B成分、C成分、及びDS成分からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。本発明の接木改善剤は、より具体的には、例えば、接木効率向上のために、接木成功率向上のために、接木和合性向上のために、接木成立速度向上のために、接木失敗率低減のために、使用することができる。
本発明の一態様においては、本発明の接木改善剤は、同科接木又は異科接木のために使用することができる。
本発明の接木改善剤の対象植物は、特に限定されない。例えば、被子植物(双子葉植物、単子葉植物等)、裸子植物、シダ植物等の植物に対して広く適用できる。
対象植物としては、植物分類の観点から、例えばアオイ科、アブラナ科、キク科、ヤナギ科、キンポウゲ科、クスノキ科、センリョウ科、ドクダミ科、サトイモ科、シソ科、スミレ科、セリ科、ツゲ科、ツツジ科、タデ科、ヒユ科、ヒルガオ科、バラ科、ビャクダン科、フウチョウソウ科、フウロソウ科、ブドウ科、ブナ科、スイカズラ科、マツムシソウ科、マメ科、ミカン科、ムクロジ科、ヤマモガシ科、ユキノシタ科、キョウチクトウ科、リンドウ科、オシダ科、ヒノキ科、ウリ科、ナス科、ゴマ科、オオバコ科、ハマウツボ科、アゼナ科、フウチョウボク科、カリケラ科、クサトベラ科、ミツガシワ科、スティリディウム科、ヒメハギ科、スリアナ科、ムンティンギア科、キティヌス科、フタバガキ科、サルコラエナ科、ハンニチバナ科、ベニノキ科、スファエロセパルム科、テトラメレス科、ベゴニア科、ダティスカ科、メギ科、ツヅラフジ科、ヒブリス科、スチルベ科、ゴマノハグサ科、サギゴケ科、ハエドクソウ科、キリ科、コショウ科、ディディメラ科、キンモウワラビ科、ツルキジノオシダ科、タマシダ科、ナナバケシダ科、ツルシダ科、ウラボシ科、シノブ科、キンモウワラビ科、ツルキジノオシダ科、タマシダ科、ナナバケシダ科、ツルシダ科、ウラボシ科、シノブ科等に属する植物が挙げられる。
また、別の分類の観点からは、例えばトマト、ピーマン、トウガラシ、ナス等のナス類、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ等のウリ類、キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ等の菜類、セルリー、パセリー、レタス等の生菜又は香辛菜類、ネギ、タマネギ、ニンニク等のネギ類、ダイズ、ラッカセイ、インゲン、エンドウ、アズキ等の豆類、イチゴ等のその他果菜類、ダイコン、カブ、ニンジン、ゴボウ等の直根類、サトイモ、キャッサバ、バレイショ、サツマイモ、ナガイモ等のイモ類、アスパラガス、ホウレンソウ、ミツバ等の柔菜類、トルコギキョウ、ストック、カーネーション、キク等の花卉類、イネ、コムギ、オオムギ、エンバク、トウモロコシ等の穀物類、ベントグラス、コウライシバ等の芝類、ナタネ、ラッカセイ等の油料作物類、サトウキビ、テンサイ等の糖料作物類、ワタ、イグサ等の繊維料作物類、クローバー、ソルガム、デントコーン等の飼料作物類、リンゴ、ナシ、ブドウ、モモ等の落葉性果樹類、ウンシュウミカン、レモン、グレープフルーツといった柑橘類、サツキ、ツツジ、スギ等の木本類等が挙げられる。
さらに、別の分類の観点からは、トマト、ナス、ピーマン、パプリカ等のナス科、キュウリ、スイカ、メロン、カボチャ等のウリ科の蔬菜類の同科接木において、本発明の接木改善剤を好適に使用することができる。ただ、上述の通り、対象には、蔬菜類だけではなく、バラ科果樹など木本性植物も含まれる。
本発明の接木改善剤は、有効成分のみからなるものでもよいが、有効成分に加えて、含有する有効成分の種類、後述の剤形、施用態様等に応じて種々の他の成分を含んでいてもよい。接木改善剤中の有効成分(乾燥重量)の含有割合は、後述の剤形、施用態様等に応じて適宜決定することができるが、例えば0.0001~100質量%の範囲を例示することができる。他の成分としては、例えば担体、固着剤、分散剤、補助剤等が挙げられる。担体としては、例えば、タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、ケイソウ土、ホワイトカーボン、バーミキュライト、ケイ砂等の固体担体;水溶性高分子化合物(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等)、水、植物油、液体動物油等の液体担体等が挙げられる。固着剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸等が挙げられる。分散剤としては、例えば、アルコール硫酸エステル類、ポリオキシエチレングリコールエーテル等が挙げられる。補助剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、デンプン、乳糖等が挙げられる。上記担体、固着剤、分散剤および補助剤は、それぞれの目的に応じて、それぞれ単独でまたは適宜組合せて使用することができる。
本発明の接木改善剤の剤形は、農学的に許容される剤形である限り特に限定されない。例えば、粒剤、1キロ粒剤、500グラム粒剤、250グラム粒剤、ジャンボ剤等の粒剤; 粉剤、DL粉剤、FD粉剤等の粉剤; 粉粒剤、微粒剤F、細粒剤F等の粉粒剤; 粉末; 水和剤、フロアブルゾルSC、顆粒水和剤、ドライフロアブル等の水和剤; 水溶剤、顆粒水溶剤等の水和剤; 乳剤、EW剤等の乳剤; 液剤、EW剤等の液剤; 油剤、サーフ剤等の油剤; エアゾル; ペースト剤; マイクロカプセル剤; パック剤等が挙げられる。
本発明の接木改善剤を植物に施用することにより、他の植物との接木性が改善された接木用植物部分構造体を製造することができ、またより効率的に接木植物を製造すること、接木効率を向上させること等も可能である。
より具体的には、例えば、植物体又は植物部分構造体に本発明の接木改善剤を施用することを含む方法により、他の植物との接木性が改善された接木用植物部分構造体を製造することができる。また、接木後の植物体に本発明の接木改善剤を施用すること、及び/又は上記接木用植物部分構造体を他の植物部分構造体と接木することを含む方法により、より効率的に接木植物体を製造することができる。
植物体は、植物の各組織全てを供えるものであり、この限りにおいて特に制限されない。植物部分構造体は、植物体から一部の組織/部位を除去してなるものであり、この限りにおいて特に制限されない。
接木用植物部分構造体は、接木可能な植物部分構造体である限り、特に制限されない。例えば地下部全体又はその一部からなる構造体、地下部全体又はその一部と地上部全体又はその一部とからなる構造体、地上部全体又はその一部からなる構造体等が挙げられる。なお、本明細書において、地下部としては、地下に埋没して存在し得る構造である限り特に制限されず、例えば根、地下茎等が挙げられる。また、本明細書において、地上部としては、地上に露出して存在し得る構造である限り特に制限されず、例えば茎、幹、枝、葉柄、葉、芽、花等が挙げられる。
接木用植物部分構造体の形態は、接木可能な形態である限り特に制限されない。より効率的に接木が可能であるという観点から、接木用植物部分構造体は、その一部において、接木に適した面を有することが好ましい。接木に適した面としては、公知の各種の形態、例えば平坦状、V字状等の凹状、突起状の凸状等、必要に応じて良好な接触が得られるような切断面が挙げられる。
なお、本発明において、接木は、公知の方法に従って又は準じて行うことができる。本発明において、接木は、典型的には、植物の任意の部位(例えば茎上の任意の部位)を切断して2以上の接木用植物部分構造体(例えば台木、中間台木、穂木等)を得る工程(工程1)、及び接木用部植物分構造体の切断面同士を接触させて栽培する工程(工程2)を含む方法によって行うことができる。
工程1において、接木用植物部分構造体の切断面は、切断面同士の接触面積がより広くなる形態に加工されることが好ましい。例えば、一方の切断面中央部に1~2 cm程度の切れ込みを入れ、他方の切断面をV字型に切削することが挙げられる。これらの加工は、例えば片刃のカミソリを用いて行うことができる。
工程2において、切断面同士の接触の態様は特に制限されない。接触は、接木用部植物分構造体にダメージを与えぬように静かに行うことが望ましい。
工程2において、接触後は、接触部位ができる限り動かないように、接触部位を固定することが好ましい。固定は、例えば接触部位をパラフィルム等のシート状のもので巻くことにより行うことができる。
工程2における栽培の初期(例えば接触から3~14日間)においては、地上部側の接木用部植物分構造体(例えば、穂木、中間台木等)全体を保湿状態に保つことが望ましい。保湿は、例えば水を霧吹きしたプラスチックバックで地上部側の接木用植物部分構造体全体を覆うことによって行うことができる。
工程2における栽培の初期において保湿処理した場合、栽培の後期(例えば接触から~30日間)においては保湿処理が無い状態で栽培することが好ましい。
3つの接木用植物部分構造体を接木する場合、先に2つの接木用植物部分構造体を上記工程1及び2により接木し、得られた植物体から得られた接木用植物部分構造体と3つ目の接木用部植物分構造体を接木することが望ましい。4つ以上の接木用植物部分構造体を接木する場合も、これに準じた方法で接木することが望ましい。
施用は、接木面又は将来的に接木面となる部位に有効成分が到達できる態様であれば、特に制限されない。施用態様は、農薬の使用態様として公知の態様(或いは将来開発される態様)である限り特に限定されない。例えば、散布、滴下、塗布、植物生育環境中(土壌中、水中、固形培地中、液体培地中等)への混合又は溶解等が挙げられる。より具体的には、例えば水耕液に添加する態様、土壌表面上に散布する態様、肥料と混合する態様等が挙げられる。また、好ましい一態様においては、接木面や接木部位に散布、滴下、塗布等する態様が挙げられる。
また、有効成分が発現カセット等のポリヌクレオチドである場合、その植物への導入は、特に制限されず、公知の方法に従って又は準じて行うことができる。
導入方法の1つ目の例(導入例1)としては、プロモーター(例えばT7プロモーター、T3プロモーター、35Sプロモーター等)、及びその下流に発現カセットを含む配列を含むプラスミドを準備する工程(工程a1)、工程a1で得られたプラスミドから、試験管内転写により、植物ウイルスのゲノムRNAを得る工程(工程b1)、及び工程b1で得られたゲノムRNA(有効成分)を植物に接種(例えば、摩擦接種法、パーティクルガン接種法等)する工程(工程c1)を含む方法によって行うことができる。或いは、工程a1で得られたプラスミドが35Sプロモーター等の植物細胞内で転写活性化能を持つプロモーターを含むTiプラスミドである場合であれば、上記工程b1及びc1に代えて、例えば工程a1で得られたプラスミドをアグロバクテリアに導入して培養する工程(工程b2)、及び工程b2で得られた培養液(有効成分を含む培養液)を植物に接種(例えば、インフィルトレーション法、爪楊枝接種法、吸引注入法等)する工程(工程c2)を含む方法によって行うことができる。或いは、上記工程b1及びc1に代えて、例えば工程a1で得られたプラスミド(有効成分)を植物に接種(例えば磨砕接種法、パーティクルガン接種法等)する工程(工程c3)を含む方法によって行うことができる。或いは、上記工程c2に代えて、例えばリーフディスク法や花序浸潤法、減圧濾過法等を行う工程(工程c4)を含む方法によって行うことができる。これらの方法により植物内に導入されたゲノムRNAやプラスミド、T-DNA等から、所望のタンパク質やペプチドが産生される。
導入方法の2つ目の例(導入例2)としては、(例えば上記導入例1によって得られた)植物ウイルスを含む植物から、該ウイルスを採取する工程(工程d1)、及び工程d1で採取された該ウイルス(有効成分を含むウイルス)を植物に接種する工程(工程e1)を含む方法が挙げられる。工程d1における採取は、例えば植物ウイルスを含む植物の一部(例えば、葉等)を磨砕することにより得られるウイルス液を回収することにより行うことができる。工程e1における接種は、例えば炭化ケイ素等の研磨剤を用いて植物の接種対象部位(例えば、葉等)に傷をつけ、そこにウイルスを接触させることにより行うことができる。
3.接木用植物部分構造体、接木植物体
本発明は、その一態様において、植物体又は植物部分構造体に本発明の接木接着剤を施用することを含む、接木用植物部分構造体の製造方法、及び該方法により得られた接木用植物部分構造体に関する。
本発明は、その一態様において、接木後の植物体に本発明の接木改善剤を施用すること、及び/又は本発明の接木用植物部分構造体を他の植物部分構造体と接木することを含む、接木植物体の製造方法、及び該方法により得られた接木植物体に関する。
各用語、方法の具体的態様等については、上記「2-5.用途、他の成分について」における説明の通りである。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
試験例1.セルラーゼの接木改善作用の評価1
セルラーゼ遺伝子をノックダウンしたタバコ属植物(Nicotiana benthamiana)(穂木)とシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(台木)とを接木し、接木成立の程度を評価した。具体的には以下のようにして行った。
セルラーゼ遺伝子が接木の成立に寄与するかを調べるため、セルラーゼ遺伝子の一つであるNiben101Scf01184g16001遺伝子の一部領域(ATGのAを+1として、-154から+156までの300 bpの配列)をウィルスベクターに導入したvirus-induced gene silencing(VIGS)用コンストラクトを作成し、セルラーゼ遺伝子のノックダウン試験に供した。その際にネガティブコントロールとして、GFP遺伝子の一部領域を同様にウィルスベクターに導入したコンストラクトを作成し、実験の対象区として用いた。
作成したセルラーゼ遺伝子あるいはGFP遺伝子を標的したコンストラクトを鋳型にin vitro RNA転写を行い、転写したRNAを発芽後1月ほど栽培したNicotiana benthamianaに葉面接種し、ノックダウン試験用のウィルスを増殖した。
ウィルス増殖が確認されたNicotiana benthamianaの感染葉を採取し、磨砕液を調整した。磨砕液を発芽後1月ほど栽培した別のNicotiana benthamiana個体に葉面接種し、ウィルスを二次感染させて、これらの個体を接木実験に供した。
ウィルス接種後1週間の時点でNicotiana benthamiana個体を穂木として、シロイヌナズナ台木に接木した。接木は、抽台したシロイヌナズナ台木の花茎に1.5 cm程度の切れ込みを入れて、そこにNicotiana benthamianaの茎をV 字型に切削して差し込み、両者を固定するためにパラフィルムで接木部位を覆うことで行った。Nicotiana benthamiana穂木部は、接木してすぐに水で内部を霧吹きしたプラスチックバックで覆い、接木部位の活着が起こる場合に活着までに要する一週間の間その状態において、水分の蒸散による穂木の乾燥を防いだ。この際、ウィルス非接種のNicotiana benthamianaについても同様に接木し、対象区とした。
接木後2週間の時点で、穂木が生存しているかを調べることで、各試験区の接木の成功率を調べた。
なお、VIGSによるセルラーゼ遺伝子のノックダウンは、接木していないNicotiana benthamianaの茎、ウィルス非接種のNicotiana benthamianaをシロイヌナズナに接木した際の接木部位、セルラーゼ遺伝子あるいはGFP遺伝子を標的したックダウン試験用のウィルスを接種したNicotiana benthamianaをシロイヌナズナに接木した際の接木部位を対象に、セルラーゼ遺伝子およびアクチン遺伝子に対するqRT-PCRを行って調べた。qRT-PCRは、セルラーゼ遺伝子の増幅には、5’-GGCCAATCGAGAAAAGATGAC-3’ (配列番号5)と5’-AACTGTGTGGCTGACACCATC-3’(配列番号6)を、アクチン遺伝子の増幅には5’-ATTGGGAGCCAATGATGTACC-3’ (配列番号7)と5’-TGTCATTTCCAACAACGCTTC-3’(配列番号8)をプライマーとして用いて、実施した。
結果を図1に示す。セルラーゼ遺伝子をノックダウンすることにより、接木が成立しなくなることが分かった。接木成立性の低下は、実験区ごとのセルラーゼ遺伝子の発現量の低下レベルと相関しており、セルラーゼ遺伝子がタバコ属植物の異科接木に因果的に結びつく必須な遺伝子であることも示された。これらのことから、セルラーゼが、接木成立性を改善する作用を有することが分かった。
試験例2.セルラーゼの接木改善作用の評価2
試験例1と同様にタバコ属植物とシロイヌナズナとの接木試験を行い、壊死層領域の頻度を調べた。具体的には以下のようにして行った。
各接木の組み合わせについて、6つの接木を行い、それぞれから3片の徒手切片を作製した。それぞれの切片には、維管束周辺で接着する領域が4箇所あり、それぞれの領域で100μm以上連続して接着している領域(壊死層が形成されない領域)がある場合に、接着としてカウントし、そのような領域がない場合にはカウントしないことにした。このように、6接木について、それぞれ3切片×4調査領域=12領域を調べた結果を集計してデータとし、壊死層が形成されていない接着領域の割合を算出した。
結果を図2に示す。セルラーゼ遺伝子をノックダウンすると、接木部位に壊死層形成の頻度が上昇することが分かった。このことから、セルラーゼが、接木部位の壊死層形成を抑制することが分かった。
試験例3.セルラーゼの接木改善作用の評価3
セルラーゼ投与による接木成立性への影響を、In vitro graftingの試験系により評価した。具体的には以下のようにして行った。
In vitro graftingは、種後1月ほど栽培したNicotiana benthamianaの茎を用いて行った。はじめに、葉を取り除いた主茎を用意し、そこから1 mm厚程度にスライスした二片の切断茎を調整した。それら二片を重ね合わせて、あらかじめ用意した微小セルに埋めた。微小セルは、厚さ4 mm程度のポリジメチルシロキサン樹脂に2 mm×4 mm程度の穴を空けて用意した。一つの微小セルにつき、1組の切断茎二片を埋めた。これら切断茎二片が収まった樹脂は、植物育成用寒天培地(Half strength Murashige and Skoog medium, 1% Agar)の上にナイロンメンブレンを一枚敷き、そのメンブレン上に接木部位の片側が乗るようにして静置し、その状態で4~5日間培養した。培養後に、二片の組織片を互いが外れないように外側をピンセットで挟みこんだ状態で微小セルから取り出した。その後、取り出した切断茎二片のうち片側を抑えてもう片側をピンセットで引き剥がそうとピンセットを動かし、容易に外れるか、あるいは抵抗感を持って容易には外れないかを調べた。容易に外れなかったものを接着したと判定した。以上がIn vitro grafting試験系である。
セルラーゼ投与は、切断茎1片の片側の切断面に精製セルラーゼの粉末を微量まぶしてから、その切断面がもう1片の切断茎と重なるように切断茎二片を重ね合わせて微小セルに埋めて培養し、In vitro grafting試験を行った。
結果を図3に示す。セルラーゼ投与により、接木成功率が上昇することが分かった。
試験例4.ペプチドの接木改善作用の評価
配列番号1のアミノ酸配列(MVTDHVKNAT)からなるペプチド(Grf006)と配列番号2のアミノ酸配列(MALIVQMISA)からなるペプチド(Grf010)の接木改善作用を、In vitro graftingの試験系により評価した。具体的には以下のようにして行った。
試験に供する各種ペプチドを10 μM濃度で添加して調整した。試験に供する各種ペプチド(Grf001, Grf002, Grf003, Grf004, Grf006, Grf010, Grf011, Grf020, Grf024)はDimethyl sulfoxide(DMSO)で10 mM/濃度に調整し、ストック溶液とした。ストック溶液を1000倍希釈してIn vitro grafting試験系を行う際に用いる植物育成用寒天培地に溶解し、10 μM濃度のペプチドが含まれる培地を各種ペプチドごとに用意した。対象区としてDMSOを1000倍希釈した培地も用意して試験に供した。また実験のネガティブコントロールとして無添加の培地、ポジティブコントロールとして接木の接着効果を高めることが知られている人工オーキシン2,4-Dを0.5 μM濃度で含む培地についても試験に供した。これらの培地を用いて、In vitro grafting試験を行った。
結果を図4に示す。Grf006及びGrf010は接木改善作用を有することが分かった。また、その作用は、オーキシンと同程度に強いことが分かった。
試験例5.フェノールアミド類生合成経路の接木への影響の解析
タバコ属植物(Nicotiana attenuata)においては、NaMYB8がフェノールアミド生合成のマスターレギュレーターであることが知られている(Kaur et al., Plant Physiology, March 2010, Vol. 152, pp. 1731-1747、Onkokesung et al., Plant Physiology, January 2012, Vol. 158, pp. 389-407)。本試験では、トマトの野生株に対して、NaMYB8のオーソログであるSIMYB14を、RNAi法でノックダウンしてRNAi体(2-4-1)を製造し、この2-4-1体のSIMYB14遺伝子発現量、及び代謝物(フェノールアミド類)の蓄積量を、野生株と対比するとともに、接木への影響を評価した。
<RNAi法による2-4-1体及び2-1-1体の製造>
SIMYB14遺伝子の部分配列(323 bp)をRNAiのトリガー配列とし、ユビキチンプロモータ下でRNAiのトリガー配列を発現させる形質転換ベクター(pANDA)をアグロバクテリウム法により、トマト‘Ailsa Craig’の子葉に形質転換し、得られた形質転換シュートを発根させ、形質転換体(RNAi体(2-4-1))を得た。形質転換体作出過程で得られた非形質転換個体(すなわち野生型トマトと同形質の個体)をEscape個体(2-1-1体)として以下の実験に用いた。
<SIMYB14遺伝子発現量の測定>
野生株、並びに上記で製造した2-4-1体及び2-1-1体それぞれからTotal RNAを抽出し、逆転写反応を行い、cDNAを得た。得られたcDNAを鋳型として、SIMYB14の部分長を増幅するプライマーを用い、定量PCR法により、SIMYB14遺伝子発現量を測定した。
結果を図5に示す。図5に示す結果から、2-4-1体は、SIMYB14遺伝子の発現が顕著に抑制されていることが理解できる。
<代謝物の同定及び定量>
SlMYB14RNAi体(2-4-4)の凍結粉末サンプルとジルコニアビーズ1個が入ったチューブに1 mg新鮮重当たり5 μlの80%メタノール(内部標準として2.5 μMのリドカインを含む)を加え、ミキサーミルで攪拌抽出を行った。当該チューブを遠心分離にかけ、残渣を沈殿させ、上清を新しいチューブに移すことで抽出液を得た。
野生株(Wild type)及びEscape 2-1-1体についても、上記と同様にして、それぞれ抽出液を得た。
これらの抽出液をそれぞれ用いて、LC-MS/MSにより、代謝物を同定及び定量した。具体的には、以下の通りである。
前記抽出液100 μlをガラスインサートが入ったLC-MS/MS分析用バイアルに分注した。
ノンターゲットのメタボローム解析はポジティブイオンモードおよびネガティブイオンモードのMSおよびMS/MS分析を行い、それぞれに対して抽出液を1 μl用いた。質量分析装置はウォーターズ社製LC-QTOF/MSを用いた (LC, Waters Acquity UPLC System; MS, Waters Xevo G2 Q-Tof) 。
分析条件は以下の通りである。
液体クロマトグラフィー(LC)部: カラム, Acquity bridged ethyl hybrid C18 (1.7 μm, 2.1 mm × 100 mm, Waters);溶媒系:溶媒 A (0.1% ギ酸を含む水) 及び 溶媒 B (0.1% ギ酸を含むアセトニトリル);濃度勾配: 99.5% 溶媒A/0.5% 溶媒B、0分まで、99.5%A/0.5%Bを0.1分まで、20%A/80%Bを10分まで、0.5%A/99.5%Bを10.1分まで、0.5%A/99.5%Bを12.0分まで、99.5%A/0.5%Bを12.1分まで、99.5%A/0.5%Bを15.0 分まで;流速:0.3 ml/minを0 minまで, 0.3 ml/minを10分まで、0.3 ml/minを10.1分まで、0.3 ml/mlを14.4分まで、0.3 ml/minを14.5分まで:カラム内温度: 40 度;質量分析(MS)部:極性, ポジティブおよびネガティブイオンモード;キャピラリーボルテージ、+3.00 kV (ポジティブ)/-2.75 kV (ネガティブ);コーンボルテージ: 25.0 V;イオンソース内温度:120 ℃;デソルベーション温度:450 ℃;コーン内ガス流速: 50 l/h;デソルベーションガス流速: 800 l/h;コリジョンエナジー:6 V;質量分析範囲:m/z 50-1,500;スキャンデュレーション:0.1 s;inter-scan delay: 0.014 s;データ取得方法:セントロイドモード;ロックスプレー (ロイシンエンケファリン);スキャンデュレーション:1.0 s; inter-scan delay:0.1 s.。
MS/MSデータは以下に従って取得した。
(1) MS:極性, ポジティブおよびネガティブイオンモード;質量分析範囲, m/z50-1,500;スキャンデュレーション、0.1 s;interscan delay、0.014 s;データ取得方法:セントロイドモード。
(2) MS/MS:極性, ポジティブおよびネガティブイオンモード;質量分析範囲, m/z50-1,500;スキャンデュレーション、0.02 s; inter-scan delay、0.014 sデータ取得方法:セントロイドモード。
なお、代謝物として、複数種のフェノールアミド類が検出されたが、その構造決定は、必要に応じて、標準物質を用いて、LC-MS/MSのデータに基づいて行った。
上記3種の抽出液のMS/MSデータをそれぞれ照合して、フェノールアミド類を特定し、その定量値を対比した。結果を表1に示す。表1に示す結果から、フェノールアミド類のシグナル強度が、2-4-4体で顕著に減少していることが理解できる。
Figure 0007399375000003
一例として、図6に、上記分析によって構造決定及び定量分析されたフェノールアミド類のうち、N1,N10-bisdihydrocaffeoyl spermidineの定量値を、グラフとして示す。
<ナス科植物におけるフェノールアミド類の普遍性評価>
次に、フェノールアミドのナス科植物における普遍性を、種々の品種のナス科植物をサンプルとして評価した。具体的には以下の通りである。
各ナス科植物を、非処理区(A)と傷処理区(B)に分け、Bについては、茎に傷をつけ、2日後にサンプリングし、Aについては、なんら処理することなく、同様にサンプリングした。それぞれ採取した試料について、メタボローム解析を行った。なお、メタボローム解析用の試料の調製、及びLC-MS/MSの測定条件等は、上記2-4-1体等で行った調製、及び測定条件と同様である。なお、各試料からは、複数種のフェノールアミド類が検出されたが、その構造決定は、必要に応じて、標準物質を用いて、LC-MS/MSのデータに基づいて行った。
非処理区(A)と傷処理区(B)を比較した結果、フェノールアミド一群はナス科植物において普遍的に存在し、傷応答性であることが分かった。ナス科で傷誘導されたフェノールアミドのうち一例としてN1,N10-bisdihydrocaffeoyl spermidineの結果を、図7に示す。横軸には、試料を採取したナス科植物の品種名を記した。「_A」は、非処理区(A)の品種から採取した試料であることを、「_B」は、傷処理区(B)から採取した試料であることを示す。
<ナス科以外の植物におけるフェノールアミド類の誘導性評価>
N. benthamiana(シロイヌナズナ)とA. thaliana(タバコ)の接ぎ木植物、並びにN. benthamiana(シロイヌナズナ)の傷処理穂木及び台木をそれぞれ準備した。接ぎ木植物については、接木処理から28日間育成し、2時間後、及び1日後、3日後、5日後、7日後、10日後、14日後及び28日後に、それぞれ試料を採取して、上記と同様にして、メタボローム解析を行い、フェノールアミド類の構造決定及び定量を行った。また、シロイヌナズナの傷処理穂木及び台木についても、7日間育成し、2時間後、及び1日後、3日後、5日後及び7日後に、それぞれ試料を採取して、上記と同様にして、メタボローム解析を行い、フェノールアミド類の構造決定及び定量を行った。それぞれの結果を、なんら処理をしていないシロイヌナズナ及びタバコからそれぞれ採取した試料(参照例)のメタボローム解析結果と対比したところ、参照例と比較して、明らかに、フェノールアミド類の量が時間経過で変動していることが確認された。
<接木への影響評価>
野生株、並びに上記で製造した2-4-1体及び2-1-1体それぞれについて、セルフ接ぎ木(切り取った茎を元の茎に接ぎ木)し、活着(穂木の成長)を評価した。
結果を図8に示す。図8の各写真の下の数字は、「接木成功回数/接木回数」を意味する。接木の成功の有無は、穂木の葉の成長等を目視で観察し、野生型と対比することで判断した。図8に示す結果から、フェノールアミド類量が顕著に低下した2-4-4体では、接木成功率が著しく低下したことが理解できる。このことから、フェノールアミド類生合成経路及びフェノールアミド類が、接木成立に重要な役割を果たしていることが分かった。
試験例6.ポリアミンの接木改善作用の評価
フェノールアミド類生合成経路上の中間体(ポリアミン)の接木改善作用を、In vitro graftingの試験系により評価した。具体的には以下のようにして行った。
PDMS(ポリジメチルシロキサン)樹脂で形成した型に、5 mm長のエンドウの茎をはめ込み、茎を2片に切断した。茎がはめ込まれたままのPDMS樹脂の型をポリアミン類を含むあるいは含まない(対照区)MS培地の上に置き、3~5日後の茎片の接着を評価し、接ぎ木活着率とした。
結果を表2に示す。フェノールアミド類生合成経路上の中間体であるポリアミンが接木改善作用を有することが分かった。
Figure 0007399375000004

Claims (6)

  1. (A)セルラーゼ

    (D)プロモーター及びそのプロモーターの制御下に配置されたセルラーゼコード配列を含むポリヌクレオチドからなる発現カセット
    からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、接木改善剤。
  2. 異科接木用又は同科接木用である、請求項1に記載の接木改善剤。
  3. 植物体又は植物部分構造体に請求項1又は2に記載の接木改善剤を施用することを含む、接木用植物部分構造体の製造方法。
  4. 請求項に記載の方法により得られた、接木用植物部分構造体。
  5. 接木後の植物体に請求項1又は2に記載の接木改善剤を施用すること、及び/又は請求項に記載の接木用植物部分構造体を他の植物部分構造体と接木することを含む、接木植物体の製造方法。
  6. 請求項に記載の方法により得られた、接木植物体。
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