[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1~図3を用いて説明する。
本例のハブユニット軸受1は、駆動輪用であって、外輪2と、ハブ3と、それぞれが転動体である複数個の玉4と、シール装置5、22とを備える。
なお、ハブユニット軸受1に関して、軸方向外側は、車両への組み付け状態で車両の幅方向外側となる、図1~図3の左側であり、軸方向内側は、車両への組み付け状態で車両の幅方向中央側となる、図1~図3の右側である。
外輪2は、中炭素鋼などの硬質金属により構成されている。外輪2は、内周面に、複列の外輪軌道6a、6bを有し、かつ、軸方向中間部に、径方向外側に突出した静止フランジ7を有する。静止フランジ7は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する支持孔8を有する。外輪2は、静止フランジ7の支持孔8に螺合した支持ボルトにより、懸架装置に対し支持固定され、車輪が回転する際にも回転しない。
ハブ3は、外輪2の径方向内側に外輪2と同軸に配置されており、外周面に、複列の外輪軌道6a、6bと対向する複列の内輪軌道9a、9bを有する。ハブ3は、外輪2よりも軸方向外側に位置する部分に、径方向外側に突出した回転フランジ10を有し、かつ、軸方向外側の端部に、円筒状のパイロット部11を有する。回転フランジ10は、径方向外側部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する取付孔12を有する。取付孔12のそれぞれには、スタッド13が圧入されている。ディスクやドラムなどの制動用回転体、及び、車輪を構成するホイールは、中心部に備えられた中心孔に、パイロット部11を挿通し、かつ、径方向中間部の円周方向複数箇所に備えられた通孔に、スタッド13を挿通した状態で、スタッド13の先端部にハブナットを螺合することにより、回転フランジ10に結合される。
なお、回転フランジの取付孔を、雌ねじ孔により構成することもできる。この場合には、制動用回転体に備えられた通孔と、ホイールに備えられた通孔とを挿通したハブボルトを、取付孔に螺合することにより、制動用回転体及び車輪を回転フランジに結合固定する。
ハブ3は、中心部に、軸方向に貫通するスプライン孔14を有する。スプライン孔14には、エンジンや電動モータを駆動源として回転駆動する駆動軸の先端部がスプライン係合される。自動車の走行時には、駆動軸によりハブ3を回転駆動することで、ハブ3の回転フランジ10に結合固定された車輪及び制動用回転体を回転駆動する。
本例では、回転フランジ10は、径方向内側部を構成する厚肉部23と、径方向外側部を構成する、厚肉部23よりも軸方向寸法が小さい薄肉部24とを、軸方向内側面に備えられた段部25により連続させている。段部25は、径方向内側に向かうほど軸方向内側に向かう方向に傾斜した凹円弧形の断面形状を有する。取付孔12は、薄肉部24に備えられている。また、ハブ3は、外周面のうち、軸方向外側の内輪軌道9aの軸方向外側に隣接する部分に、円筒面状の肩部61を有する。
本例のハブ3は、内輪15とハブ輪16とを組み合わせてなる。
内輪15は、軸受鋼などの硬質金属により構成されている。内輪15は、外周面に、複列の内輪軌道9a、9bのうちの軸方向内側の内輪軌道9bを有する。
ハブ輪16は、中炭素鋼などの硬質金属により構成されている。ハブ輪16は、外周面の軸方向中間部に、複列の内輪軌道9a、9bのうちの軸方向外側の内輪軌道9aを有する。ハブ輪16は、軸方向外側の内輪軌道9aよりも軸方向外側に位置する部分に、径方向外側に向けて突出した回転フランジ10を有し、かつ、軸方向外側の端部に、円筒状のパイロット部11を有する。ハブ輪16は、外周面のうち、軸方向外側の内輪軌道9aの軸方向外側に隣接する部分に、肩部61を有する。さらに、ハブ輪16は、中心部に、軸方向に貫通するスプライン孔14を有する。
ハブ輪16は、軸方向外側の内輪軌道9aよりも軸方向内側に位置する部分に、軸方向外側に隣接する部分よりも外径が小さく、内輪15が外嵌される嵌合筒部17を有する。ハブ輪16は、嵌合筒部17の軸方向内側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がり、内輪15の軸方向内側の端面を押え付けるかしめ部18をさらに有する。すなわち、本例のハブ3は、ハブ輪16の嵌合筒部17に内輪15を締り嵌めで外嵌した状態で、嵌合筒部17の軸方向外側の端部に存在する段差面19と、かしめ部18との間で内輪15を軸方向両側から挟持して、内輪15とハブ輪16とを結合固定することにより構成されている。ただし、内輪とハブ輪とをナットにより結合固定することもできる。
玉4は、複列の外輪軌道6a、6bと複列の内輪軌道9a、9bとの間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ、円周方向に離隔して配置され、かつ、それぞれの列の保持器20により転動自在に保持されている。これにより、ハブ3は、外輪2の径方向内側に回転自在に支持されている。なお、本例では、転動体として玉4を使用しているが、転動体として円すいころを使用することもできる。また、本例では、軸方向外側列の玉4のピッチ円直径と、軸方向内側列の玉4のピッチ円直径とを互いに同じとしているが、本発明は、軸方向外側列の転動体のピッチ円直径と、軸方向内側列の転動体のピッチ円直径とが互いに異なる、異径PCD型のハブユニット軸受に適用することもできる。
外輪2の内周面とハブ3の外周面との間に存在し、かつ、玉4が配置された、略円筒状の内部空間21には、潤滑剤であるグリースが封入されている。玉4の表面(転動面)と外輪軌道6a、6b及び内輪軌道9a、9bとの転がり接触部、並びに、玉4の表面と保持器20のポケットの内面との摺接部は、内部空間21に封入されたグリースにより潤滑されている。
内部空間21の軸方向内側の開口は、シール装置22により塞がれており、内部空間21の軸方向外側の開口は、シール装置5により塞がれている。これにより、内部空間21の軸方向内側の開口及び軸方向外側の開口を通じて、泥水などの異物が外部空間から内部空間21に侵入したり、内部空間21に封入されたグリースが外部空間に漏洩したりすることを防いでいる。
内部空間21の軸方向内側の開口を塞ぐシール装置22は、外輪2の軸方向内側の端部に内嵌固定されたシールリングと、内輪15の軸方向内側の端部に外嵌固定されたスリンガとを組み合わせてなる、組み合わせシールリングである。
内部空間21の軸方向外側の開口を塞ぐシール装置5は、図2及び図3に示すように、ハブ3に支持されたハブシール部材26と、外輪2に支持された外輪シール部材27とを備える。
シール装置5は、ハブシール部材26及び回転フランジ10と外輪シール部材27との間に存在する、外部空間から内部空間21への異物の侵入経路68の5箇所に、外部空間に近い側から順に、第1シール部28a、第2シール部28b、第3シール部28c、第4シール部28d、第5シール部28eを備える。
換言すれば、異物の侵入経路68は、第1~第5シール部28a~28eと、第1シール部28aと第2シール部28bとの間に存在する第1シール内部空間57と、第2シール部28bと第3シール部28cとの間に存在する第2シール内部空間58と、第3シール部28cと第4シール部28dとの間に存在する第3シール内部空間59と、第4シール部28dと第5シール部28eとの間に存在する第4シール内部空間60とを備える。
本例の構造では、第1~第5シール部28a~28eのそれぞれは、ラビリンスシール部である。すなわち、本例の構造では、シール装置5は、回転抵抗が大きい接触シール部を備えていない。
シール装置5の構造について、以下、より具体的に説明する。
ハブシール部材26は、金属環33と、シール材34とを備える。
金属環33は、耐食性を有する金属板にプレス加工を施してなり、全体を円環状に構成されている。金属環33は、円筒状の嵌合筒部35と、嵌合筒部35の軸方向内側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がった円輪板状の立板部36と、嵌合筒部35の軸方向外側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がり、径方向外側に向かうほど軸方向外側に向かう方向に傾斜した円すい筒状の連結板部37と、連結板部37の径方向外側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がった円輪板状の側板部38と、側板部38の径方向外側の端部から軸方向内側に向けて折れ曲がり、軸方向内側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜した円すい筒状の傾斜シール筒部39とを有する。このような金属環33において、嵌合筒部35と立板部36と連結板部37とにより三方を囲まれた部分に、径方向外側に開口し、かつ、略台形の断面形状を有する周方向の凹溝32bが、全周にわたり画成されている。
金属環33は、嵌合筒部35を、ハブ輪16の肩部61の軸方向外側部に締り嵌めで外嵌することにより、ハブ輪16に支持固定されている。また、この状態で、側板部38の軸方向外側面を、回転フランジ10の厚肉部23の軸方向内側面に当接させることにより、ハブ輪16に対する金属環33の軸方向位置が規制されている。さらに、この状態で、軸方向に関して傾斜シール筒部39の外周面と回転フランジ10の厚肉部23の軸方向内側面との間に挟まれた部分に、径方向外側に開口し、かつ、略V字形(略三角形)の断面形状を有する周方向の凹溝32aが、全周にわたり画成されている。
シール材34は、ゴムの如きエラストマーなどの弾性材により構成されており、金属環33に結合固定されている。シール材34は、シール基部40と、第1ハブリップ42と、第2ハブリップ43とを備える。
シール基部40は、金属環33の立板部36の表面のうち、軸方向内側面と外周面と軸方向外側面の径方向外側部との連続した範囲を覆っている。シール基部40は、立板部36の軸方向内側面を覆う部分の径方向内側の端部にガスケット部41を有し、ガスケット部41をハブ輪16の肩部61の軸方向中間部に弾性的に当接させている。ガスケット部41は、ハブ輪16と金属環33との間部分を通じて、外部空間から内部空間21に泥水などの異物が侵入することを防ぐとともに、内部空間21内に封入したグリースが外部空間に漏洩することを防ぐ。
第1ハブリップ42は、シール基部40の径方向外側の端部の軸方向外側部に基端部が結合されている。第1ハブリップ42は、円すい筒状に構成されており、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜している。
第2ハブリップ43は、略三角形の断面形状を有し、シール基部40の径方向外側の端部の軸方向内側部に基端部が結合されている。第2ハブリップ43は、第1ハブリップ42に比べて長さ寸法が短いリップであり、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜している。第2ハブリップ43の軸方向外側面は、円弧形の断面形状を有する凹曲面により構成されている。第2ハブリップ43の軸方向内側面は、円弧形の断面形状を有する凸曲面により構成されている。
本例の構造では、軸方向に関して第1ハブリップ42の基端部外周面と第2ハブリップ43の軸方向外側面との間に挟まれた部分に、径方向外側に開口し、かつ、略U字形(略円弧形)の断面形状を有する周方向の受溝66bが、全周にわたり画成されている。
外輪シール部材27は、芯金44と、シール材45とを備える。
芯金44は、金属板にプレス加工を施してなり、全体を円環状に構成されている。芯金44は、円筒状の嵌合筒部46と、嵌合筒部46の軸方向外側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がった円輪板状の外向鍔部47と、嵌合筒部46の軸方向内側の端部から径方向内側及び軸方向外側にU字形に折り返されるとともに径方向内側に向けて折れ曲がったクランク形の断面形状を有する支持部48とを備える。芯金44は、嵌合筒部46を、外輪2の軸方向外側の端部の内周面に締り嵌めで内嵌することにより、外輪2に支持固定されている。また、この状態で、外向鍔部47の軸方向内側面を、外輪2の軸方向外側の端面に、シール材45のガスケット部50を介して当接させることにより、外輪2に対する芯金44の軸方向位置が規制されている。
シール材45は、ゴムの如きエラストマーなどの弾性材により構成されており、芯金44に結合固定されている。
シール材45は、芯金44の表面のうち、外向鍔部47の軸方向内側面の径方向外側部と、外向鍔部47の外周面と、外向鍔部47の軸方向外側面と、嵌合筒部46の内周面と、支持部48の外周面及び軸方向外側面と、支持部48の内周面と、支持部48の軸方向内側面の径方向内側の端部との連続した範囲を覆う、シール基部49を備える。
シール基部49は、外向鍔部47の径方向外側部の軸方向内側面を覆うガスケット部50を有し、ガスケット部50を外輪2の軸方向外側の端面に弾性的に当接させている。ガスケット部50は、外輪2と芯金44との間部分を通じて、外部空間から内部空間21に泥水などの異物が侵入することを防ぐとともに、内部空間21内に封入したグリースが外部空間に漏洩することを防ぐ。
シール基部49は、径方向外側の端部に、外輪2の軸方向外側の端部の外周面よりも径方向外側に張り出した堰き止め部51を有する。堰き止め部51は、外輪2の外周面に沿って軸方向外側に流れてきた泥水を堰き止めることで、この泥水が外輪2の軸方向外側の端面と回転フランジ10の軸方向内側面との間に侵入することを防ぐ。
シール材45は、堰き止め部51の径方向内側の端部の軸方向外側の端部に基端部が結合された第1外輪リップ52を備える。第1外輪リップ52は、円すい筒状に構成されており、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜している。第1外輪リップ52の先端部(軸方向外側の端部)は、回転フランジ10の軸方向内側面に備えられた段部25に全周にわたり近接対向している。これにより、第1外輪リップ52の先端部と段部25との間に、ラビリンスシール部である第1シール部28aが構成されている。
シール材45は、異物の侵入経路68内で内部空間21から最も遠いシール部である第1シール部28aよりも内部空間21に近い部分、より具体的には、第1外輪リップ52の径方向内側に隣接する部分に、軸方向外側を向いたシール側面29aを備える。シール側面29aは、シール基部49の表面の一部であり、外輪シール部材27の中心軸に対して直交する平面により構成されている。
シール材45は、シール側面29aの径方向内側の端部から軸方向内側に折れ曲がり、径方向内側を向いたシール周面30aを備える。傾斜シール周面に相当する、シール周面30aは、シール基部49の表面の一部であり、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜した円すい凹面状の周面である。
シール材45は、シール側面29aの径方向内側の端部とシール周面30aの軸方向外側の端部との接続部において、径方向内側に突出した突条31aを全周にわたり備える。突条31aは、径方向内側の端部に頂部を有する三角形の断面形状を有する。突条31aの軸方向外側面は、シール側面29aと同一の仮想平面(外輪シール部材27の中心軸に対して直交する仮想平面)上に配置されており、突条31aの軸方向内側面は、径方向内側に向かうほど軸方向外側に向かう方向に傾斜している。ただし、本発明を実施する場合、突条の断面形状は、本例と異なる形状を採用することもできる。突条31aの径方向高さH1は、例えば、0.05mm以上0.20mm以下であり、好ましくは、0.05mm以上0.10mm以下である。また、前述した凹溝32aは、異物の侵入経路68内で突条31aに対し径方向内側に対向する部分に配置されている。
また、本例の構造では、シール周面30aの軸方向中間部に、金属環33の傾斜シール筒部39の先端部(軸方向内側の端部)が全周にわたり近接対向している。これにより、傾斜シール筒部39の先端部とシール周面30aとの間に、外径側ラビリンスシール部に相当するラビリンスシール部である、第2シール部28bが構成されている。
シール材45は、シール周面30aの径方向内側に隣接する部分に、軸方向外側を向いた側面67を備える。側面67は、シール基部49の表面の一部であり、外輪シール部材27の中心軸に対して直交する平面により構成されている。
シール材45は、側面67の径方向内側に隣接する部分に基端部が結合された第2外輪リップ53を備える。第2外輪リップ53は、基端側部を構成する厚肉部54と、先端側部を構成する、厚肉部54よりも肉厚が小さい薄肉部55とを有する。厚肉部54は、略円筒状に構成されている。薄肉部55は、厚肉部54の軸方向外側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がり、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜した円すい筒状に構成されている。本例の構造では、側面67と厚肉部54の外周面と薄肉部55の軸方向内側面とにより三方を囲まれた部分に、径方向外側に開口し、かつ、略台形の断面形状を有する周方向の受溝66aが、全周にわたり画成されている。
また、本例の構造では、金属環33の傾斜シール筒部39の内周面の軸方向中間部に、第2外輪リップ53の先端部(薄肉部55の径方向外側の端部)が全周にわたり近接対向している。これにより、第2外輪リップ53の先端部と傾斜シール筒部39の内周面との間に、内径側ラビリンスシール部に相当するラビリンスシール部である、第3シール部28cが構成されている。
すなわち、本例の構造では、ラビリンスシール部(第1~第5シール部28a~28e)のうち、異物の侵入経路68に関して内部空間21から最も遠いラビリンスシール部(第1シール部28a)を除くいずれか1つのラビリンスシール部である内径側ラビリンスシール部(第3シール部28c)は、ハブシール部材26に備えられた、軸方向内側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜した円すい筒状の傾斜シール筒部39の内周面と、外輪シール部材27の一部(第2外輪リップ53の先端部)との間に構成されている。また、ラビリンスシール部(第1~第5シール部28a~28e)のうち、異物の侵入経路68に関して内径側ラビリンスシール部(第3シール部28c)の外部空間側に隣り合うラビリンスシール部である外径側ラビリンスシール部(第2シール部28b)は、外輪シール部材27に備えられた、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜した円すい凹面状の傾斜シール周面(シール周面30a)と、傾斜シール筒部39の軸方向内側の端部との間に構成されている。
シール材45は、異物の侵入経路68内で内部空間21から最も遠いシール部である第1シール部28aよりも内部空間21に近い部分、より具体的には、第2外輪リップ53の軸方向外側面に、軸方向外側を向いたシール側面29bを備える。シール側面29bは、薄肉部55の軸方向外側面により構成されている。シール側面29bは、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜している。
シール材45は、シール側面29bの径方向内側の端部から軸方向内側に折れ曲がり、径方向内側を向いたシール周面30bを備える。シール周面30bは、軸方向外側部が厚肉部54の内周面により構成されており、軸方向内側部がシール基部49の表面の一部(径方向内側の端面)により構成されている。シール周面30bは、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜した円すい凹面状の周面である。
シール材45は、シール側面29bの径方向内側の端部とシール周面30bの軸方向外側の端部との接続部において、径方向内側に突出した突条31bを全周にわたり備える。突条31bは、径方向内側の端部に頂部を有する三角形の断面形状を有する。突条31bの軸方向外側面は、シール側面29bと同一の仮想円すい面上に配置されており、突条31bの軸方向内側面は、径方向内側に向かうほど軸方向外側に向かう方向に傾斜している。ただし、本発明を実施する場合、突条の断面形状は、本例と異なる形状を採用することもできる。突条31bの径方向高さH2は、例えば、0.05mm以上0.20mm以下であり、好ましくは、0.05mm以上0.10mm以下である。また、前述した凹溝32bは、異物の侵入経路68内で突条31bに対し径方向内側に対向する部分に配置されている。
また、本例の構造では、シール周面30bの軸方向外側部に、第1ハブリップ42の先端部(軸方向外側の端部)が全周にわたり近接対向している。これにより、第1ハブリップ42の先端部とシール周面30bとの間に、ラビリンスシール部である第4シール部28dが構成されている。
シール材45は、シール基部49の径方向内側の端部の軸方向内側の端部に基端部が結合された第3外輪リップ56を備える。換言すれば、シール材45は、シール周面30bの軸方向内側に隣接する部分に第3外輪リップ56を備える。第3外輪リップ56は、略円すい筒状に構成されており、軸方向内側に向かうほど径方向内側に向かう方向に傾斜している。第3外輪リップ56の内周面の軸方向外側の端部は、シール周面30bの軸方向内側の端部に滑らかに接続されている。また、第3外輪リップ56の内周面の軸方向内側部は、円弧形の断面形状を有する凹曲面により構成されている。このような第3外輪リップ56の内周面の軸方向内側部は、第2ハブリップ43の軸方向内側面及び外周面に全周にわたり近接対向している。これにより、第3外輪リップ56の内周面の軸方向内側部と第2ハブリップ43の軸方向内側面及び外周面との間に、ラビリンスシール部である第5シール部28eが構成されている。また、本例の構造では、第3外輪リップ56の内径寸法は、突条31bの内径寸法よりも小さい。
以上のような構成を有する本例のハブユニット軸受1は、例えば、次のような手順で組み立てる。
まず、外輪2の内周面に備えられた複列の外輪軌道6a、6bのそれぞれの内径側に、複数個の玉4を保持器20により保持した状態で配置する。また、外輪2の軸方向外側の端部に、外輪シール部材27を支持固定する。具体的には、外輪2の軸方向外側の端部の内周面に、嵌合筒部46を軸方向外側から圧入により(締り嵌めで)内嵌し、かつ、外輪2の軸方向外側の端面に、外向鍔部47の軸方向内側面を、ガスケット部50を介して当接させる。また、かしめ部18を形成する前のハブ輪16の軸方向中間部に、ハブシール部材26を支持固定する。具体的には、かしめ部18を形成する前のハブ輪16の肩部61に、嵌合筒部35を軸方向内側から圧入により(締り嵌めで)外嵌し、かつ、回転フランジ10の厚肉部23の軸方向内側面に、側板部38の軸方向外側面を当接させる。さらに、この状態で、ガスケット部41を、ハブ輪16の肩部61に弾性的に当接させる。
次に、外輪2の内径側に、かしめ部18を形成する前のハブ輪16を軸方向外側から挿入する。これにより、軸方向外側の外輪軌道6aと軸方向外側の内輪軌道9aとの間に、軸方向外側の保持器20により保持された、軸方向外側列の複数個の玉4を配置するとともに、ハブシール部材26と外輪シール部材27とを組み合わせることで、シール装置5を構成する。
次に、内輪15を、かしめ部18を形成する前のハブ輪16の嵌合筒部17に軸方向内側から圧入により(締り嵌めで)外嵌し、かつ、内輪15の軸方向外側の端面を、段差面19に当接させる。これにより、軸方向内側の外輪軌道6bと軸方向内側の内輪軌道9bとの間に、軸方向内側の保持器20により保持された、軸方向内側列の複数個の玉4を配置する。
次に、ハブ輪16の軸方向内側の端部にかしめ部18を形成する。これにより、段差面19とかしめ部18との間で内輪15を軸方向両側から挟持する。
次に、外輪2の軸方向内側の端部の内周面と、内輪15の軸方向内側の端部の外周面との間に、シール装置22を組み付ける。具体的には、シール装置22を構成するシールリングとスリンガとを互いに組み合わせた状態で、シールリングとスリンガとを治具により軸方向外側に押圧することに基づいて、外輪2の軸方向内側の端部の内周面にシールリングを構成する芯金を軸方向内側から圧入により(締り嵌めで)内嵌するとともに、内輪15の軸方向内側の端部の外周面にスリンガを軸方向内側から圧入により(締り嵌めで)外嵌する。このとき、シールリング及びスリンガのそれぞれの軸方向位置を、同じ基準面(例えば、外輪2の軸方向内側の端面)を基準に規制する。
なお、以上のようなハブユニット軸受1の組立順序は、矛盾を生じない限り、適宜変更可能である。
以上のような構成を有する本例のハブユニット軸受1によれば、内部空間21の軸方向外側の開口を塞ぐシール装置5に関して、回転抵抗を低く抑えられ、かつ、高いシール性能を確保することができる。この点について、以下、具体的に説明する。
本例の構造では、ハブシール部材26及び回転フランジ10と外輪シール部材27との間に存在する、外部空間から内部空間21への異物の侵入経路68の5箇所に、第1~第5シール部28a~28eが存在するが、第1~第5シール部28a~28eのそれぞれは、ラビリンスシール部により構成されている。つまり、本例の構造では、シール装置5は、回転抵抗が大きい接触シール部を備えていない。このため、シール装置5の回転抵抗を低く抑えられる。
なお、内部空間21の軸方向内側の開口を塞ぐシール装置22は、ハブユニット軸受1を組み立てる際に、シールリング及びスリンガのそれぞれの軸方向位置を、同じ基準面を基準に規制することができる。このため、シールリングに備えられたシールリップの先端部をスリンガの表面に摺接させてなる、接触シール部の軸方向の締め代を精度良く規制する(ばらつきを小さく抑える)ことができる。したがって、シール装置22の回転抵抗を小さく抑えることが容易である。
これに対して、内部空間21の軸方向外側の開口を塞ぐシール装置5は、ハブユニット軸受1を組み立てる際に、ハブシール部材26及び外輪シール部材27のそれぞれの軸方向位置を、同じ基準面を基準に規制することができない。このため、ハブシール部材26と外輪シール部材27との間に、軸方向の締め代を有する接触シール部が存在する場合には、外輪3の内周面に対する軸方向外側の外輪軌道6aの軸方向位置のずれや、ハブ輪16の外周面に対する軸方向外側の内輪軌道9aの軸方向位置のずれなどに起因して、前記接触シール部の軸方向の締め代を精度良く規制することが難しい。この結果、シール装置5の回転抵抗(摩擦抵抗)が大きくなる可能性がある。
この点に関して、本例の構造では、第1~第5シール部28a~28eのそれぞれは、ラビリンスシール部により構成されている。このため、外輪3に対する軸方向外側の外輪軌道6aの軸方向位置のずれや、ハブ輪16に対する軸方向外側の内輪軌道9aの軸方向位置のずれなどが生じることにかかわらず、シール装置5の回転抵抗を小さく抑えることができる。
また、本例の構造では、第2外輪リップ53とともに第3シール部28cを構成する、傾斜シール筒部39の内周面は、軸方向内側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜している。このため、車両の旋回時に外輪2とハブ3とが軸受中心O(外輪2及びハブ3の中心軸Xと両列の中央に位置する仮想平面Yとの交点(図1参照))を中心として相対的に傾斜した場合にも、第3シール部28cの隙間の大きさの変化を小さく抑えることができる。このため、第3シール部28cの隙間を小さく設定することができ、第3シール部28cのラビリンスシール性能を高くすることができる。なお、本発明を実施する場合に、傾斜シール筒部39の内周面の母線形状を、軸受中心Oを中心とする円弧又はその接線により構成すれば、外輪2とハブ3とが軸受中心Oを中心として相対的に傾斜する際の、第3シール部28cの隙間の大きさの変化を十分に小さく抑えることができるため、第3シール部28cの隙間を十分に小さく設定して、第3シール部28cのラビリンスシール性能を十分に高くすることができる。
また、本例の構造では、シール装置5の設置箇所の上部(図2参照)において、回転フランジ10の軸方向内側面に沿って径方向内方に導かれた泥水が、第1シール部28aを通じて第1シール内部空間57に侵入した場合でも、第1シール内部空間57に侵入した泥水の多くは、凹溝32aに集められる。特に、本例の構造では、第1シール内部空間57の上部(図2参照)において、シール側面29aに沿って下方に導かれた泥水は、突条31aの先端部(径方向内端部、下端部)から凹溝32aに向けて落下(滴下)し、凹溝32aに集められる。換言すれば、シール側面29aに沿って、シール側面29aの下端部まで案内された泥水は、突条31aの存在に基づいて、シール周面30a側(第2シール部28b側)に案内されることを抑制される。そして、凹溝32aに集められた泥水は、凹溝32aに沿って下方へ案内されることで、第1シール内部空間57の下部(図3参照)に集められた後、第1シール部28aを通じて外部空間に排出される。特に、本例の構造では、第1外輪リップ52の内周面が、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜しているため、第1外輪リップ52の内周面に沿って泥水の排出を促進することができる。
また、本例の構造では、シール装置5の設置箇所の上部(図2参照)において、第1シール内部空間57に侵入した泥水が、さらに第2シール部28bを通じて第2シール内部空間58に侵入した場合でも、第2シール内部空間58に侵入した泥水の多くは、受溝66aに集められる。そして、受溝66aに集められた泥水は、受溝66aに沿って下方へ案内されることで、第2シール内部空間58の下部(図3参照)に集められた後、第2シール部28bを通じて第1シール内部空間57に戻される(排出される)。特に、本例の構造では、シール周面30aが、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜しているため、シール周面30aに沿って第1シール内部空間57への泥水の排出を促進することができる。そして、第1シール内部空間57に戻された泥水は、さらに第1シール部28aを通じて外部空間に排出される。
なお、本例の構造では、シール周面30aの軸方向外側に隣接する部分に、突条31aが存在する。このため、シール装置5の設置箇所の下部(図3参照)において、軸方向に関して突条31aの軸方向内側面とシール周面30aとの間に挟まれた部分(凹部)に泥水が溜まる可能性がある。ただし、本例の構造では、突条31aの径方向高さH1が小さいため、そのような凹部に溜まる泥水の量を微量に抑えることができる。
また、本例の構造では、シール装置5の設置箇所の上部(図2参照)において、第2シール内部空間58に侵入した泥水が、さらに第3シール部28cを通じて第3シール内部空間59に侵入した場合でも、第3シール内部空間59に侵入した泥水の多くは、凹溝32bに集められる。特に、本例の構造では、第3シール内部空間59の上部(図2参照)において、シール側面29bに沿って下方に導かれた泥水は、突条31bの先端部(径方向内端部、下端部)から凹溝32bに向けて落下(滴下)し、凹溝32bに集められる。換言すれば、シール側面29bに沿って、シール側面29bの下端部まで案内された泥水は、突条31bの存在に基づいて、シール周面30b側(第4シール部28d側)に案内されることを抑制される。
そして、凹溝32bに集められた泥水は、凹溝32bに沿って下方へ案内されることで、第3シール内部空間59の下部(図3参照)に集められた後、第3シール部28cを通じて第2シール内部空間58に戻される(排出される)。特に、本例の構造では、第1ハブリップ42の内周面とシール周面30bとシール側面29bとのそれぞれが、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜しており、傾斜シール筒部39の内周面が、軸方向内側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜している。このため、第1ハブリップ42の内周面とシール周面30bとシール周面30aと、傾斜シール筒部39の内周面とのそれぞれに沿って、第2シール内部空間58への泥水の排出を促進することができる。そして、第2シール内部空間58に戻された泥水は、第2シール部28bを通じて第1シール内部空間57に戻される。
特に、本例の構造では、傾斜シール筒部39の内周面は、軸方向内側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜しており、シール周面30aは、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜しており、換言すれば、中心軸Xに対する傾斜シール筒部39の内周面の傾斜方向と、中心軸Xに対するシール周面30aの傾斜方向とが、互いに逆になっている。このため、図3に破線の矢印で示すように、第3シール内部空間59から第1シール内部空間57への泥水の排出は、傾斜シール筒部39の内周面とシール周面30aとのそれぞれに沿ってスムーズに行われる。第1シール内部空間57へ排出された泥水は、その後、第1シール部28aを通じて外部空間に排出される。
なお、本例の構造では、シール周面30bの軸方向外側に隣接する部分に、突条31bが存在する。このため、シール装置5の設置箇所の下部(図3参照)において、軸方向に関して突条31bの軸方向内側面とシール周面30bとの間に挟まれた部分(凹部)に泥水が溜まる可能性がある。ただし、本例の構造では、突条31bの径方向高さH2が小さいため、そのような凹部に溜まる泥水の量を微量に抑えることができる。また、本例の構造では、第3外輪リップ56の内径寸法が突条31bの内径寸法よりも小さいため、そのような凹部に溜まった泥水が、第3外輪リップ56を乗り越えて内部空間21に侵入することを防止できる。
また、本例の構造では、シール装置5の設置箇所の上部(図2参照)において、第3シール内部空間59に侵入した泥水が、さらに第4シール部28dを通じて第4シール内部空間60に侵入した場合でも、第4シール内部空間60に侵入した泥水の多くは、受溝66bに集められる。そして、受溝66bに集められた泥水は、受溝66bに沿って下方へ案内されることで、第4シール内部空間60の下部(図3参照)に集められた後、第4シール部28dを通じて第3シール内部空間59に戻される(排出される)。特に、本例の構造では、シール周面30bが、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜しているため、シール周面30bに沿って泥水の排出を促進することができる。そして、第3シール内部空間59に戻された泥水は、第3シール部28cを通じて第2シール内部空間58に戻されてから、第2シール部28bを通じて第1シール内部空間57に戻された後、第1シール部28aを通じて外部空間に排出される。
以上のように、本例の構造では、第1~第5シール部28a~28eのそれぞれがラビリンスシール部により構成されているものの、外部空間から内部空間21に向けて泥水が侵入することを十分に抑制することができる。また、外部空間から内部空間21に向けて侵入してきた泥水を、内部空間21に到達する前に外部空間に向けて排出しやすくすることができる。
また、本例のハブユニット軸受1の運転時に、軸方向外側の内輪軌道9aと複数個の玉4の表面との転がり接触部を潤滑するグリースは、複数個の玉4が転走(自転及び公転)することによるポンピング効果で、ハブ輪16の外周面のうち、内輪軌道9aの軸方向外側に隣接する部分である、肩部61に乗り上がる。これに対して、本例の構造では、第1~第5シール部28a~28eのうち、異物の侵入経路68に関して内部空間21に最も近い第5シール部28eは、肩部61から径方向外側に大きく離れた箇所に配置されている。このため、肩部61に乗り上がった圧力の高いグリースが、第5シール部28eの内側に入り込むことを有効に防止できる。
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図4及び図5を用いて説明する。
本例の構造では、シール装置5aを構成するハブシール部材26aは、シール材34(図2及び図3参照)を備えていない。本例の構造では、シール装置5aが備える第1シール部28a、第2シール部28b、第3シール部28c、及び第4シール部28fのうち、異物の侵入経路68に関して内部空間21に最も近い第4シール部28fのみが、接触シール部により構成されている。本例の構造では、内部空間21に最も近い第4シール部28fは、シール装置5aが備える第1シール部28a、第2シール部28b、第3シール部28c、及び第4シール部28fのうち、径方向に関して最も内側に位置する(直径が最も小さい)。
すなわち、本例の構造では、ハブシール部材26aを構成する金属環33aは、立板部36の径方向外側の端部から軸方向外側に向けて折れ曲がった内側筒部62を備える。内側筒部62は、円すい筒状に構成されており、軸方向外側に向かうほど径方向内側に向かう方向に傾斜している。また、外輪シール部材27aを構成するシール材45aの第3外輪リップ56aは、径方向内側に向けて伸長し、かつ、軸方向内側面が凸面となり、軸方向外側面が凹面となる、三日月形の断面形状を有する。そして、このような第3外輪リップ56aの先端部(径方向内側の端部)が、内側筒部62の外周面に全周にわたり弾性的に摺接している。これにより、第3外輪リップ56aの先端部と内側筒部62の外周面との間に、接触シール部である第4シール部28fが構成されている。
なお、本例の構造では、シール装置5aを組み立てる際に、第3外輪リップ56aの径方向内側に内側筒部62を軸方向外側から軸方向内側に挿入できるようにするため、第3外輪リップ56aの基端部(径方向外側の端部)の直径を、内側筒部62の外周面の軸方向内側の端部(最大径部)の直径よりも大きくしている。また、第3外輪リップ56aの径方向内側に内側筒部62を軸方向外側から軸方向内側に挿入する際に、第3外輪リップ56aがリップ反転しない程度に、第4シール部28fの締め代を規制している。
また、本例の構造では、ハブシール部材26aを構成する傾斜シール筒部39aを、ゴムの如きエラストマーなどの弾性材により構成している。
このために、本例の構造では、ハブシール部材26aを構成する金属環33aは、側板部38の径方向外側の端部から軸方向内側に向けて折れ曲がった、軸方向寸法が小さい鉤部63を備える。
また、ハブシール部材26aは、金属環33aに結合固定されたシール材34aを備える。シール材34aは、ゴムの如きエラストマーなどの弾性材により構成されている。シール材34aは、側板部38の径方向外側の端部及び鉤部63の表面を覆うシール基部40aと、シール基部40aの軸方向内側の端部に基端部が結合された傾斜シール筒部39aとを備える。本例の場合も、傾斜シール筒部39aは、円すい筒状に構成されており、軸方向内側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜している。そして、傾斜シール筒部39aの先端部とシール周面30aとの間に、ラビリンスシール部である第2シール部28bが構成され、かつ、傾斜シール筒部39aの内周面と第2外輪リップ53の先端部との間に、ラビリンスシール部である第3シール部28cが構成されている。
また、シール基部40aは、軸方向外側の端部にガスケット部41aを有し、ガスケット部41aを回転フランジ10の厚肉部23の軸方向内側面に弾性的に当接させている。ガスケット部41aは、ハブ輪16と金属環33aとの間部分を通じて、外部空間から内部空間21に泥水などの異物が侵入することを防ぐとともに、内部空間21内に封入したグリースが外部空間に漏洩することを防ぐ。
以上のような本例の構造では、シール装置5aが備える第1シール部28a、第2シール部28b、第3シール部28c、及び第4シール部28fのうち、内部空間21に最も近い第4シール部28fが、接触シール部により構成されている。このため、シール装置5aの設置箇所が浸水するような場合でも、接触シール部である第4シール部28fによって、外部空間から内部空間21に水が浸入しにくくすることができる。
また、本例の構造では、シール装置5aが備える第1シール部28a、第2シール部28b、第3シール部28c、及び第4シール部28fのうち、1つのシール部(第4シール部28f)のみが接触シール部により構成されている。このため、2つ以上のシール部が接触シール部により構成されている場合に比べて、シール装置5aの回転抵抗を小さく抑えることができる。
また、接触シール部である第4シール部28fは、それぞれがラビリンスシール部である第1シール部28a、第2シール部28b、及び第3シール部28cよりも奥側(内部空間21に近い側)に配置されているため、あまり締め代を大きくする必要がない。したがって、このような面からも、シール装置5aの回転抵抗を小さく抑えることができる。
また、接触シール部における接触圧が一定である場合、接触シール部の回転抵抗(シールトルク)は、接触シール部の直径に比例する。本例の構造では、シール装置5aが備える第1シール部28a、第2シール部28b、第3シール部28c、及び第4シール部28fのうち、最も径方向内側に位置する第4シール部28fが、接触シール部により構成されている。このため、第1シール部28a、第2シール部28b、及び第3シール部28cのうちのいずれかが接触シール部により構成されている場合に比べて、シール装置5aの回転抵抗を小さく抑えることができる。
さらに、本例の構造では、第3外輪リップ56aとともに接触シール部である第4シール部28fを構成する、内側筒部62の外周面は、軸方向外側に向かうほど径方向内側に向かう方向に傾斜している。このため、車両の旋回時に外輪2とハブ3とが軸受中心O(図1参照)を中心として相対的に傾斜した場合にも、第4シール部28fの締め代の変化を小さく抑えることができる。このため、第4シール部28fの締め代を小さく設定することができる。したがって、このような面からも、シール装置5aの回転抵抗を小さく抑えることができる。なお、本発明を実施する場合に、内側筒部62の外周面の母線形状を、軸受中心Oを中心とする円弧又はその接線により構成すれば、外輪2とハブ3とが軸受中心Oを中心として相対的に傾斜する際の、第4シール部28fの締め代の大きさの変化を十分に小さく抑えることができるため、第4シール部28fの締め代を十分に小さく設定して、シール装置5aの回転抵抗を十分に小さくすることができる。
また、本例の構造では、傾斜シール筒部39aがゴムの如きエラストマーなどの弾性材により構成されている。このため、外輪2とハブ3とが軸受中心Oを中心として相対的に傾斜した場合などに、傾斜シール筒部39aの先端部とシール周面30aとが一時的に摺接したり、傾斜シール筒部39aの内周面と第2外輪リップ53の先端部とが一時的に摺接したりした場合でも、これらの摺接部の回転抵抗を低く抑えることができる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、図6及び図7を用いて説明する。
本例の構造では、ハブシール部材26bを構成する金属環33bの内側筒部62aは、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜している。具体的には、内側筒部62aは、外輪シール部材27bを構成するシール材45bのシール周面30bと同方向に同角度だけ傾斜している。そして、シール周面30bに内側筒部62aの外周面を近接対向させることにより、シール周面30bと内側筒部62aの外周面との間に、軸方向寸法が大きい円すい筒状のラビリンスシール部である第4シール部28gを構成している。そして、このように第4シール部28gを軸方向寸法が大きい円すい筒状のラビリンスシール部とすることで、第4シール部28gに高いラビリンスシール性能を持たせている。
本例の構造では、第3外輪リップ56bは、L字形の断面形状を有する。第3外輪リップ56bは、軸方向内側に向かうほど径方向内側に向かう方向に傾斜した円すい筒状の基端側部64と、基端側部64の軸方向内側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がり、径方向内側に向かうほど軸方向外側に向かう方向に傾斜した円すい筒状の先端側部65とを備える。そして、このような第3外輪リップ56bの先端部(先端側部65の径方向内側の端部)が、金属環33bの立板部36の軸方向内側面の径方向中間部に全周にわたり摺接している。これにより、第3外輪リップ56bの先端部と立板部36の軸方向内側面との間に、接触シール部である第5シール部28hが構成されている。本例の構造では、最も径方向内側に位置する接触シール部(第5シール部28h)の径方向位置が、実施の形態の第2例(図4及び図5参照)において最も径方向内側に位置する接触シール部(第4シール部28f)よりも径方向内側に位置するため、接触シール部(第5シール部28h)の回転抵抗をより小さくすることができる。したがって、シール装置5bの回転抵抗をより小さくすることができる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第2例と同様である。
上述したような各実施の形態の構造は、矛盾が生じない範囲で、適宜組み合わせて実施することができる。
本発明は、従動輪用のハブユニット軸受に適用することもできる。
また、本発明は、内部空間の軸方向外側の開口を塞ぐシール装置が、異物の侵入経路の3以上の複数箇所のそれぞれにシール部を備えているハブユニット軸受に適用可能である。