JP7395288B2 - アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤 - Google Patents

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本発明は、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤に関する。
近年、食生活、運動不足、精神的ストレス、喫煙、遺伝的要因等を原因とした、高血圧症をはじめとする生活習慣病の増加が問題となっている。
高血圧症の治療に用いられる薬物としては、血管を拡張させることで血圧を下げるカルシウム(Ca)拮抗剤、血圧上昇作用を有するアンジオテンシンIIの産生を抑えることで血圧を下げるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンIIの受容体(例えば、アンジオテンシンIIType1受容体)への結合を阻害することで血圧を下げるアンジオテンシン受容体拮抗剤(ARB)等が知られており、高血圧を治療する作用機序は様々である。
アンジオテンシンIIが受容体へ結合することを阻害する組成物として、例えば、特許文献1には、アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩を有効成分として含有するレニン-アンジオテンシン系抑制用組成物であって、特定の環状ジペプチド又はその塩を含むものである、レニン-アンジオテンシン系抑制用組成物が記載されている。
国際公開第2017/002838号
本発明者らは、クエン酸がアンジオテンシンIIType1受容体拮抗作用を有することを見出した。本発明は、この新規な知見に基づくものであり、新規なアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤を提供することを目的とする。
本発明は、クエン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤に関する。
上記アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、クエン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有するため、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗作用を示す。
一態様において、上記アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、血圧上昇抑制剤であってよい。
一態様において、上記アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、炎症反応抑制剤であってよい。
一態様において、上記アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、腎保護剤であってよい。
本発明はまた、クエン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗用食品組成物に関する。
本発明によれば、新規なアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤を提供することができる。
クエン酸のアンジオテンシンIIType1受容体拮抗作用を確認した結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、クエン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
(有効成分)
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤の有効成分は、クエン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種である。
クエン酸は、ヒドロキシ酸の一種であり、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸とも称される。クエン酸は、クエン酸無水物又はクエン酸水和物であってもよい。
クエン酸の塩としては、食品、医薬部外品又は医薬品として許容可能なものであれば特に制限されない。クエン酸の塩の具体例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。クエン酸の塩は、水和物であってもよい。
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、有効成分として、クエン酸又はその塩を1種単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗作用を有する。アンジオテンシンIIは、アンジオテンシノゲンからアンジオテンシンIを経て産生されるポリペプチドである。アンジオテンシンIIType1受容体(AT1R)は、血管、肝、腎、副腎皮質等に存在するGタンパク質共役型受容体である。
アンジオテンシンIIは、AT1Rに結合することにより、細胞質内にCa2+を流入させるため、血管が収縮し血圧が上昇する。そのため、AT1Rのシグナルを抑制することで、血圧上昇を抑制することができる。この場合、本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、血圧上昇抑制剤ということもできる。
アンジオテンシンIIは、AT1Rに結合することにより、炎症反応が惹起する。そのため、AT1Rのシグナルを抑制することで、炎症反応を抑制することができる。この場合、本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、炎症反応抑制剤ということもできる。
アンジオテンシンIIは、AT1Rに結合することにより、糸球体内圧が上昇するため、蛋白尿の増加及び/又は糸球体濾過量の増加を引き起こす。そのため、AT1Rのシグナルを抑制することで、蛋白尿の増加及び/又は糸球体濾過量の増加を抑制することができる。この場合、本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、腎保護剤ということもできる。
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤における有効成分の含有量は、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤の具体的態様(例えば、形態、用法及び用量等)に応じて、適宜設定することができる。
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤が経口投与(経口摂取)される場合、1日あたりの経口投与(経口摂取)量は、例えば、600mg以上、650mg以上、700mg以上、750mg以上、800mg以上、850mg以上、900mg以上、950mg以上、又は1000mg以上であってよい。また、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗作用の観点からは、上述の1日あたりの経口投与(経口摂取)量の上限に特に制限はないが、製造原価を下げるという観点から、例えば、20000mg以下、15000mg以下、10000mg以下、8000mg以下又は6000mg以下であってよい。また、上記の1日あたりの経口投与(経口摂取)量は、60kg-体重あたりの量とするのが好ましい。
例えば、本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤が、1日あたり3回経口投与(経口摂取)されるように用いられるものである場合、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤が200mg以上の有効成分を含有することで、1日あたりの経口投与(経口摂取)量が600mg以上となる。
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤における有効成分の含有量は、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤の具体的態様(例えば、形態、用法及び用量等)に応じて、適宜設定されるものであるが、一態様において、本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤における有効成分の含有量は、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤全量を基準として、例えば、600mg以上、650mg以上、700mg以上、750mg以上、800mg以上、850mg以上、900mg以上、950mg以上、又は1000mg以上であってよい。これにより、上述した1日あたりの経口投与(経口摂取)量を簡便に達成することができる。本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤における有効成分の含有量の上限は、例えば、20000mg以下、15000mg以下、10000mg以下、8000mg以下又は6000mg以下であってよい。
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、経口投与(経口摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与(経口摂取)されることが好ましい。アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、1日1回投与(摂取)されてもよく、1日複数回に分けて投与(摂取)されてもよい。
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、ヒトに投与(摂取)されても、非ヒト哺乳動物に投与されてもよい。
(その他成分)
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、上記有効成分のみからなるものであってもよく、またアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤の具体的態様に応じて、上記有効成分の他、食品、医薬部外品又は医薬品に許容されるその他成分を含有するものであってもよい。
(アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤の形状)
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、固体、液体(溶液及び懸濁液を含む。)、ペースト等のいずれの形状であってもよい。また、本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、例えば、錠剤(口腔内崩壊錠、チュアブル錠、フィルムコーティング錠等)、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤(シロップ剤、ゼリー剤等)、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形であってもよい。
(アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤の具体的態様)
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、例えば、食品組成物(飲料及び食品)、医薬部外品又は医薬品として調製することができる。飲料としては、例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、炭酸飲料、乳飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。また、食品組成物には、例えば、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品等が含まれる。
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、日常的に手軽に摂取できることから、食品組成物(アンジオテンシンIIType1受容体拮抗用食品組成物)であることが好ましい。本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗用食品組成物の形態としては、上述したものが挙げられ、日常的に手軽に摂取できるという観点から、飲料(アンジオテンシンIIType1受容体拮抗用飲料)であることが好ましい。
(アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤の製法)
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、その具体的態様に応じて、例えば上述の有効成分を配合することで得ることができる。このとき、有効成分であるクエン酸及びその塩として、クエン酸又はその塩そのものを使用してもよいし、クエン酸又はその塩を含有する組成物(例えば、レモン果汁、グレープフルーツ果汁、オレンジ果汁、みかん果汁及び梅果汁等の果汁)を使用してもよい。
(作用効果)
本実施形態に係るアンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤は、クエン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有するものであることから、当該アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤を投与(摂取)することにより、血圧上昇を抑制し、炎症反応を抑制し、又は腎臓を保護することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
<試験例1:アンジオテンシンIIType1受容体拮抗作用の評価>
クエン酸のアンジオテンシンIIType1受容体拮抗作用を、レポータージーンアッセイにより評価した。このレポータージーンアッセイは、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗作用を、アンジオテンシンIIType1受容体下流のシグナルであるNFAT-REの転写活性化によって評価するものである。
(ベクターの作製及び遺伝子導入)
アンジオテンシンIIType1受容体発現ベクターは、以下の手順で作製した。ヒト骨格筋cDNA(Clontech社製)を鋳型として、アンジオテンシンIIType1受容体(AT1R)遺伝子を、PCR法により増幅した。増幅したDNA断片は、In-Fusion HD Cloning Kit(TaKaRa Bio社製)を用いてp3×Flag CMV14ベクター(SIGMA-ALDRICH社製)に組み込み、AT1R発現ベクターを得た。ルシフェラーゼ発現ベクターは、ホタルルシフェラーゼ発現ベクターpGL4.30(Promega社製)、及び内部標準としてウミシイタケルシフェラーゼ発現ベクターpGL4.74(Promega社製)を使用した。
100mmディッシュにHEK293細胞を150万個/ディッシュで播種し、DMEM培地(SIGMA-ALDRICH社製)中で1日培養した。その後、OPTI-MEM培地(Thermo FISHER社製)に培地交換後、OPTI-MEM500μLに、AT1R発現ベクター1μg及びpGL4.30 1μg、pGL4.74 0.5μgを混合し、Lipofectamine3000(Thermo FISHER社製)を用いてHEK293細胞に添加して遺伝子導入し、3時間培養した。遺伝子導入後、細胞を回収し、DMEM培地で96wellプレートに1000個/wellで播種し、1日培養した。クエン酸ナトリウム(1mM,5mM,10mM)を添加し、16時間後、クエン酸ナトリウム(1mM,5mM,10mM)とともにアンジオテンシンII(100nM)を共添加した。その後、5時間後に細胞を回収した。なお、水のみを添加したものをコントロールとした。陽性対照としてテルミサルタン(10nM)を用いた。
(レポータージーンアッセイ)
細胞内のルシフェラーゼ活性を、Dual-Luciferase ReporterAssay System(Promega社製)を用いて測定した。ルシフェラーゼの発光は、ルミノメーター(Promega社製)を用いて定量した。結果を表1及び図1に示す。相対ルシフェラーゼ活性量は、アンジオテンシンII(100nM)のみを添加した場合のルシフェラーゼ活性に対する値である。
Figure 0007395288000001
表1及び図1に示すとおり、クエン酸には、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗作用が認められた。

Claims (2)

  1. クエン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗剤。
  2. クエン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アンジオテンシンIIType1受容体拮抗用食品組成物。
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