JP7393622B2 - 重荷重用空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、優れたウェットトラクション性および耐偏摩耗性を有する重荷重用空気入りタイヤに関するものである。
空気入りタイヤは左右一対のビード部およびサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるとともにキャップトレッドとアンダートレッドとからなるトレッド部から主に構成されている。タイヤの内側にはベルト層およびカーカス層が設けられ、カーカス層の両端部はビードコアをタイヤ内側から外側へ包みこむように折り返されている。
また空気入りタイヤにおけるショルダー部の発熱を低減し、耐久性を改良するため、ベルト層のタイヤ幅方向端部とカーカス層との間に、ベルトクッションゴムが配置される。
一方、トラックまたはバス用タイヤのような重荷重用空気入りタイヤとしては、安全かつ快適な運行が重視されている。そのため重荷重用空気入りタイヤは、雨天時等のウェット路面での坂道発進性(ウェットトラクション性)が求められる。ウェットトラクション性を高めるには、キャップトレッドパターンのブロックおよび溝面積を大きくする手法がある。また、ベルトクッションゴムやサイドウォール部を軟らかくして駆動時の応答を遅れさせることでも向上する。しかし、これらの手法ではブロックの動きが不安定になり耐偏摩耗性が悪化するという問題点がある。なお、ベルトクッションゴムやサイドウォール部を硬くすれば上記問題は生じないが、ウェットトラクション性の向上は見込まれない。
なお、重荷重用空気入りタイヤのウェットトラクション性の向上を図る技術としては、例えば特許文献1~2に開示がある。
特開平6-48122号公報 特開平1-306304号公報
したがって本発明の目的は、優れたウェットトラクション性および耐偏摩耗性を有する重荷重用空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、ベルトクッションゴムの組成、ベルトクッションゴムとサイドウォールゴムの60℃における弾性率の関係、並びにベルトクッションゴムの厚みを特定化することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
1.ベルト層とカーカス層との間に配置されたベルトクッションゴムが、少なくともジエン系ゴムおよび窒素吸着比表面積(NSA)が55~90m/gのカーボンブラックを含み、
前記ジエン系ゴム100質量部中、天然ゴムの割合が70質量部以上であり、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記カーボンブラックの配合量が20~40質量部であり、かつ
前記ベルトクッションゴムの60℃における弾性率(E’BC)とサイドウォールゴムの60℃における弾性率(E’side)の比が下記式を満たし、かつ
前記ベルトクッションゴムの厚みが、5.0mm~10.0mmである
ことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
(E’side)/(E’BC)=0.90~1.15
2.前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が65~80m/gであることを特徴とする前記1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
3.前記カーボンブラックの配合量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、25~40質量部であることを特徴とする前記1または2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
4.前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムの割合が5~15質量部であることを特徴とする前記1~3のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、ベルト層とカーカス層との間に配置されたベルトクッションゴムが、少なくともジエン系ゴムおよび窒素吸着比表面積(NSA)が55~90m/gのカーボンブラックを含み、前記ジエン系ゴム100質量部中、天然ゴムの割合が70質量部以上であり、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記カーボンブラックの配合量が20~40質量部であり、かつ前記ベルトクッションゴムの60℃における弾性率(E’BC)とサイドウォールゴムの60℃における弾性率(E’side)の比が(E’side)/(E’BC)=0.90~1.15を満たし、かつ前記ベルトクッションゴムの厚みが、5.0mm~10.0mmであることを特徴としているので、ウェットトラクション性および耐偏摩耗性に優れる。
上述のように、ウェットトラクション性を高めるには、キャップトレッドパターンのブロックおよび溝面積を大きくしたり、ベルトクッションやサイドウォール部を軟らかくして駆動時の応答を遅れさせる等の手法が採られていた。しかし、これらの手法では耐偏摩耗性が悪化するという問題点があった。本発明では、ベルトクッションゴムの組成、ベルトクッションゴムとサイドウォールゴムの60℃における弾性率の関係、並びにベルトクッションゴムの厚みを特定化したので、従来技術では達成困難であったウェットトラクション性および耐偏摩耗性を高い次元で維持することが可能となった。
本発明の重荷重用空気入りタイヤの一例の子午線断面図である。 図1の重荷重用空気入りタイヤの一部拡大図である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に空気入りタイヤと言うことがある)の一例の子午線断面図である
図1において、空気入りタイヤTは、タイヤ接地面を構成するキャップトレッド部1、サイドウォール部2およびビード部(図示せず)からなり、トレッド部1のタイヤ幅方向外側からサイドウォール部2のタイヤ径方向外側にかけての領域をショルダー部3という。空気入りタイヤTの内部には、タイヤの骨格たるカーカス層4が、ビードコアをタイヤ内側から外側へ包みこむように折り返されている(図示せず)。カーカス層4のタイヤ径方向外側には、複数のベルト層5が設けられている。図1では4層のベルト層が示され、タイヤ径方向内側から外側に向かって、1番、2番、3番および4番のベルト層が存在している。またカーカス層4の内側には、インナーライナー層6が配置される。またベルト層5のタイヤ幅方向外側端部とカーカス層4との間およびそのタイヤ幅方向外側のショルダー部3にベルトクッション7を有する。
なお、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向を指す。またタイヤ径方向とは空気入りタイヤの回転軸と直交する方向を指す。
本発明の空気入りタイヤは、前記ベルトクッションゴムの組成が特定される。
すなわち、本発明におけるベルトクッションゴムは、少なくともジエン系ゴムおよび窒素吸着比表面積(NSA)が55~90m/gのカーボンブラックを含み、前記ジエン系ゴム100質量部中、天然ゴム(NR)の割合が70質量部以上であり、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記カーボンブラックの配合量が20~40質量部である。
前記NRの配合割合が70質量部未満である場合、前記カーボンブラックの配合割合が20~40質量部の範囲外である場合、および/または、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が55~90m/gの範囲外の場合は、ウェットトラクション性および耐偏摩耗性を共に改善するという本発明の効果を奏することができない。
ここで、本発明の効果向上の観点から、下記の形態が好ましい。
(1)前記ジエン系ゴム100質量部中、NRの配合割合は85~95質量部が好ましい。
(2)前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴム(BR)の配合割合は5~15質量部が好ましい。
(3)前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記カーボンブラックの配合割合は25~40質量部が好ましい。
(4)前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は65~80m/gが好ましい。
なお本発明で言うNRは、合成イソプレンゴム(IR)を含むものとする。また窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K 6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
本発明で使用されるジエン系ゴムは、NRおよびBR以外のジエン系ゴムを必要に応じて併用することもできる。例えば、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。本発明で使用されるジエン系ゴムは、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
また、前記ベルトクッションゴムには、前記した成分に加えて、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのベルトクッションゴムに一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
本発明において、サイドウォールゴムの組成は、下記で説明する(E’side)/(E’BC)の関係を満たすことができれば、とくに制限されず、適宜選択することができる。
例えば、ジエン系ゴム、シリカやカーボンブラック等の各種充填剤、カップリング剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのサイドウォールゴムに一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
加硫後のサイドウォールゴムの厚み(カーカス層からタイヤ幅方向外側に垂直方向に向かうサイドウォールゴムの最大厚み)はとくに制限されないが、例えば2mm~10mmであり、4mm~7mmが好ましい。
また、本発明の空気入りタイヤにおけるその他の部材、例えばトレッド部やビード部等を構成する部材についても、各成分の配合割合はとくに制限されず、適宜選択することができる。
例えば前記その他の部材のゴム組成物として、ジエン系ゴム、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛等の一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
本発明の空気入りタイヤは、前記ベルトクッションゴムの60℃における弾性率(E’BC)と前記サイドウォールゴムの60℃における弾性率(E’side)の比が下記式を満たすことが必要である。
(E’side)/(E’BC)=0.90~1.15
(E’side)/(E’BC)がこの範囲外である場合は、前記本発明の効果を奏することができない。
前記(E’side)および(E’BC)は、JIS K6394に準拠し、粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、60℃の条件で測定した貯蔵弾性率の値(MPa)とする。
本発明において、(E’BC)は、2.5~4.5MPaが好ましく、3.0~4.0MPaがさらに好ましい。
また本発明において、(E’side)は、3.0~5.0MPaが好ましく、3.7~4.7MPaがさらに好ましい。
また本発明の効果がさらに向上するという観点から、(E’side)/(E’BC)は、1.00~1.15が好ましい。
なお前記(E’side)および前記(E’BC)の調整は、例えば加硫剤、架橋剤、可塑剤や充填剤量の増減により可能である。
本発明では、ベルトクッションゴムの厚みが、5.0mm~10.0mmであることが必要である。
ベルトクッションゴムの厚みとは、図2に示すように、2番ベルト52の厚み方向の中心Cから、カーカス層4に垂線を引いた場合の、該垂線の長さtを意味し、具体的には、2番ベルトの厚み方向の中心Cからカーカス層4までの最短距離である。
前記ベルトクッションゴムの厚みは、6.0mm~9.0mmであることがさらに好ましい。
また本発明の重荷重用空気入りタイヤは、従来の重荷重用空気入りタイヤの製造方法に従って製造が可能である。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
実施例1~6および比較例1~9
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、各種ベルトクッションゴム組成物を得た。
一方、サイドウォールゴムを常法にしたがい調製し、加硫剤、架橋剤、可塑剤や充填剤量を増減を増減することにより、表1に示す各種(E’side)を有するサイドウォールゴムを得た。
(E’side)および(E’BC)は、上述のように測定した。結果を表1に示す。
前記ベルトクッションゴムと、前記サイドウォールゴムとを組み込み、タイヤサイズ275/80R22.5 151/148Jの各種試験タイヤを製造した。またサイドウォールゴムおよびベルトクッションゴム以外の各部材の条件は、各種試験タイヤ間で同一とした。
得られた各種試験タイヤについて、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
ウェットトラクション性:各試験タイヤをリムサイズ151/148Jのホイールに組み付けて、空気圧を900kPaとして、排気量12770ccの試験車両(トラック)に装着し、トラクターヘッドの駆動軸に付加荷重6.2kNをかけ、低μ路面で水深1mmのウェット路面にてトラクションコントロール作動無し(デフロック)条件で、停止状態からフルアクセルで加速をし、速度6km/hから21km/hの平均タイヤスリップ率を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用いて、比較例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどスリップ率が小さく、ウェット路面におけるトラクション性(ウェット性能)に優れることを意味する。
耐偏摩耗性:各試験タイヤをリムサイズ151/148Jのホイールに組み付けて、空気圧を900kPaとして、タイヤ1本あたり3650kgの負荷荷重をかけた状態にて5万km走行させた。新品時と走行後のインフレートプロファイルの比較し、「ショルダーエッジ摩耗量-外主溝摩耗量」の値ををショルダー肩落ち摩耗量とし、比較例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、耐偏摩耗性に優れることを意味する。
Figure 0007393622000001
*1:NR(RSS#3)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*3:IR(日本ゼオン(株)製Nipol IR2200)
*4:カーボンブラック1(キャボットジャパン社製商品名ショウブラックN110、N2SA=144m/g)
*5:カーボンブラック2(キャボットジャパン社製商品名ショウブラックN330、N2SA=75m/g)
*6:カーボンブラック3(キャボットジャパン社製商品名ショウブラックN550、N2SA=42m/g)
*7:老化防止剤(精工化学(株)製オゾノン6C)
*8:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*9:ステアリン酸(千葉脂肪酸(株)製工業用ステアリン酸N)
*10:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
*11:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS-P)
上記の表1から明らかなように、各実施例で調製された重荷重用空気入りタイヤは、ベルトクッションゴムの組成、ベルトクッションゴムとサイドウォールゴムの60℃における弾性率の関係、並びにベルトクッションゴムの厚みを特定化したので、比較例1に比べ、優れたウェットトラクション性および耐偏摩耗性を両立できる。
比較例2は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が本発明で規定する範囲外であるので、ウェットトラクション性が悪化した。
比較例3は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が本発明で規定する範囲外であるので、耐偏摩耗性性が悪化した。
比較例4は、カーボンブラックの配合割合が本発明で規定する上限を超えているので、ウェットトラクション性が悪化した。
比較例5は、NRの配合割合が本発明で規定する下限未満であるので、耐偏摩耗性が悪化した。
比較例6は、(E’side)/(E’BC)が本発明で規定する下限未満であるので、耐偏摩耗性が悪化した。
比較例7は、(E’side)/(E’BC)が本発明で規定する上限を超えているので、ウェットトラクション性が悪化した。
比較例8は、ベルトクッションゴムの厚みが本発明で規定する下限未満であるので、ウェットトラクション性および耐偏摩耗性が悪化した。
比較例9は、ベルトクッションゴムの厚みが本発明で規定する上限を超えているので、ウェットトラクション性および耐偏摩耗性が悪化した。
1 キャップトレッド部
2 サイドウォール部
3 ショルダー部
4 カーカス層
5 ベルト層
6 インナーライナー層
7 ベルトクッション

Claims (4)

  1. ベルト層とカーカス層との間に配置されたベルトクッションゴムが、少なくともジエン系ゴムおよび窒素吸着比表面積(NSA)が55~90m/gのカーボンブラックを含み、
    前記ジエン系ゴム100質量部中、天然ゴムの割合が70質量部以上であり、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記カーボンブラックの配合量が20~40質量部であり、かつ
    前記ベルトクッションゴムの60℃における弾性率(E’BC)とサイドウォールゴムの60℃における弾性率(E’side)の比が下記式を満たし、かつ
    前記ベルトクッションゴムの厚みが、5.0mm~10.0mmである
    ことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
    (E’side)/(E’BC)=0.90~1.15
    (ここで前記ベルトクッションゴムの厚みとは、タイヤ径方向内側から外側に向かって2番目のベルト層端部に存在するベルトクッションゴムの、前記ベルト層端部の厚み方向の中心からカーカス層までの最短距離である。)
  2. 前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が65~80m/gであることを特徴とする請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
  3. 前記カーボンブラックの配合量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、25~40質量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
  4. 前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムの割合が5~15質量部であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
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