JP7390201B2 - アクリル系ポリマーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アクリル系ポリマーの製造方法に関する。
反応性官能基を側鎖に有する高分子化合物は、その官能基を起点にした変換反応による新たな官能基の導入やグラフト化によって様々な機能をベースポリマーに付与することができ、また、架橋剤との反応により硬化物を与えることから、塗料やコーティング、粘・接着剤等様々な用途に用いられ、産業界において有用な材料である。
最近、アルキレングリコール鎖を介して(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を同一分子内に有する特殊モノマーが報告されている(特許文献1)。
上記特殊モノマーの(メタ)アクリロイル基のみを選択的に重合することができれば、反応性官能基として有用なビニルエーテル基を側鎖に有するアクリルポリマーが得られる。ビニルエーテル基は付加反応、ラジカル重合、カチオン重合等様々な反応形式において高い反応性を有するため、架橋剤の種類を選ばず幅広い用途への展開が期待される。
しかしながら、上記特殊モノマーを含むモノマー成分のラジカル重合を行うと、上記特殊モノマーにおいて、(メタ)アクリロイル基が優先的に重合するものの、ビニルエーテル基の反応も同時に進行するため、上記特殊モノマーをわずか数%配合しただけでもゲル化してしまい、所望のアクリル系ポリマーが得られないといった問題がある。
ビニルエーテル基が反応しない重合反応としてはアニオン重合が挙げられる。
しかし、従来の一般的なアニオン重合においては、例えば、次のような問題があり、工業化への障壁となっている。
(1)重合開始剤や中間体であるカルボアニオンと水との反応性が非常に高いため、反応系内の水分量を厳密に制御する必要がある。
(2)反応を抑制するために、-70℃程度の極低温条件で反応を行う必要がある。
(3)アニオン重合で通常用いられる重合開始剤は、有機リチウム試薬のような自然発火性物質であり、このような自然発火性物質を扱うための特殊な設備が必要である。
(4)重合開始剤とモノマー成分を混合した際に起こる発熱によって副反応が起きたり、反応溶液の温度分布が均一にならず、分子量分布を再現性よく制御することができなかったりする。
国際公開第2019/240049号パンフレット
本発明の課題は、アルキレングリコール鎖を介して(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を同一分子内に有する特殊モノマーを用いて該ビニルエーテル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーを製造する方法であって、比較的温和な温度で製造可能であり、連続的に製造可能であり(すなわち、バッチ反応としての製造方法で懸念される、バッチ間ロットにおいて頻発しうる収率、分子量、分子量分布のばらつきが少なくなり得る)、分子量分布が狭いアクリルポリマーを製造可能な、アクリル系ポリマーの製造方法を提供することにある。
本発明者は、アルキレングリコール鎖を介して(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を同一分子内に有する特殊モノマーを用いて該ビニルエーテル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーを製造する方法として、フローリアクターを採用することで、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法は、
アルキレングリコール鎖を介して(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を同一分子内に有するモノマーを用いて該ビニルエーテル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーを製造する方法であって、
一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を、フローリアクターを用いて重合する重合工程を含む。
Figure 0007390201000001
(一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、RおよびRは、それぞれ、水素原子または有機基を表し、Rは、水素原子または有機基を表し、nは、1以上の整数を表す。)
一つの実施形態においては、上記重合工程で行われる重合が、アニオン重合である。
一つの実施形態においては、上記重合工程で行われる重合が、グループトランスファー重合である。
本発明によれば、アルキレングリコール鎖を介して(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を同一分子内に有する特殊モノマーを用いて該ビニルエーテル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーを製造する方法であって、比較的温和な温度で製造可能であり、連続的に製造可能であり(すなわち、バッチ反応としての製造方法で懸念される、バッチ間ロットにおいて頻発しうる収率、分子量、分子量分布のばらつきが少なくなり得る)、分子量分布が狭いアクリルポリマーを製造可能な、アクリル系ポリマーの製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法で用い得る、1つの実施形態によるフローリアクターの模式図である。 図2は、本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法で用い得る、別の1つの実施形態によるフローリアクターの模式図である。
本明細書において記載する本発明の実施形態は、それぞれ1つの実施形態のみであってもよいし、2つ以上の実施形態の組み合わせであってもよい。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸および/またはメタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、「アクリロイル基および/またはメタクリロイル基」を意味する。
≪≪1.アクリル系ポリマーの製造方法≫≫
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法は、アルキレングリコール鎖を介して(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を同一分子内に有するモノマーを用いて該ビニルエーテル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーを製造する方法であって、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を、フローリアクターを用いて重合する重合工程を含む。
Figure 0007390201000002
≪1-1.モノマー成分≫
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法においては、上記の一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を採用する。
一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ、水素原子または有機基を表す。
およびRとして採用し得る有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状若しくは環状の1価の炭化水素基、または、これらの炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部を、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子に置換したものなどが挙げられる。
上記鎖状の1価の炭化水素基としては、例えば、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基等の飽和炭化水素基、アルケニル基等の不飽和炭化水素基が挙げられ、好ましくは飽和炭化水素基が挙げられる。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、オクチル基、メチルヘプチル基、ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、トリメチルペンチル基、3-エチル-2-メチルペンチル基、2-エチル-3-メチルペンチル基、2,2,3,3-テトラメチルブチル基、ノニル基、メチルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、ジメチルヘプチル基、3-エチルヘプチル基、4-エチルヘプチル基、トリメチルヘキシル基、3,3-ジエチルペンチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基;ビニル基、n-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基等のアルケニル基;などが挙げられる。
上記環状の1価の炭化水素基としては、例えば、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレル基、メトキシフェニル基、トリクロロフェニル基、エチルフェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素、フッ素が挙げられ、好ましくは、フッ素が挙げられる。
上記有機基としては、好ましくは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、より好ましくは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、炭素数6~11の芳香族炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素数1~2のアルキル基、炭素数1~2のハロゲン化アルキル基、炭素数6~8の芳香族炭化水素基である。
一般式(1)中、Rは、水素原子または有機基を表す。
として採用し得る有機基としては、例えば、上述したRおよびRとして採用し得る有機基と同じものを挙げることができる。これらの中でも、Rとして採用し得る有機基としては、好ましくは、炭素数1~11の鎖状または環状の炭化水素基であり、より好ましくは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~11の芳香族炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素数1~3のアルキル基である。
一般式(1)中、nは、1以上の整数を表し、好ましくは1~100の整数であり、より好ましくは1~50の整数であり、さらに好ましくは1~10の整数であり、特に好ましくは1~5の整数であり、最も好ましくは1である。
一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチルが挙げられる。
一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
モノマー成分全量中の、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、得ようとするアクリル系ポリマーの使用目的や用途に応じて適宜設計することができる。モノマー成分全量中の、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルの含有割合としては、例えば、100質量%(ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルのみ)であってもよいし、あるいは、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル以外の他のモノマーを併用する場合、例えば、0.001~99.99質量%であってもよい。
他のモノマーとしては、例えば、電子不足二重結合を有する重合性単量体、芳香族置換基を有するビニル化合物、共役ジエンなどの、アニオン重合性のモノマーが挙げられ、これらは製造する重合体の使用目的、用途に応じて適宜選択することができる。
上記電子不足二重結合を有する重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル等の環状エーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸ヘプタドデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル等のハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N’-ジメチルアミノエチル、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等の窒素原子含有重合性単量体類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能性重合性単量体類;2-(メタ)アクロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクロイルイソシアネート等のイソシアネート基含有重合性単量体類;4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性単量体類;メチレンブチロラクトン、メチルメチレンブチロラクトン等の重合性環状ラクトン単量体類;(メタ)アクリロニトリル;無水マレイン酸;などが挙げられる。
上記芳香族置換基を有するビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-ジメチルシリルスチレン、4-トリメチルシリルスチレン、4-トリメチルシリルオキシスチレン、4-tert-ブチルジメチルシロキシスチレン、4-フェニルスチレン、2-メトキシスチレン、3-メトキシスチレン、4―メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1,1-ジフェニルエチレンなどが挙げられる。
上記共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3- シクロヘキサジエンなどが挙げられる。
他のモノマーは、好ましくは、炭素数が1~22であり、より好ましくは、炭素数が1~18であり、さらに好ましくは、炭素数が3~15である。
他のモノマーは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
モノマー成分全量中の、他のモノマーの含有割合は、得ようとするアクリル系ポリマーの使用目的や用途に応じて適宜設計することができる。モノマー成分全量中の、他のモノマーの含有割合としては、例えば、0.001~99.99質量%である。
≪1-2.重合工程≫
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法においては、上記の一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を、フローリアクターを用いて重合する重合工程を含む。
<1-2-1.フローリアクター>
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法においては、フローリアクターを採用することにより、比較的温和な温度で製造可能となり、連続的に製造可能であり(すなわち、バッチ反応としての製造方法で懸念される、バッチ間ロットにおいて頻発しうる収率、分子量、分子量分布のばらつきが少なくなり得る)、分子量分布が狭いアクリルポリマーを製造可能となる。
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法において用いるフローリアクターは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なフローリアクターを採用し得る。このようなフローリアクターとしては、代表的には、1つ以上の送液管と、反応物をフローさせる1つ以上の管状流路と、1つ以上の反応物排出管を備える。送液管は、反応(反応を停止させることも含む)に必要な材料を導入する管である。このようなフローリアクターとしては、例えば、特許第5780662号公報、国際公開第2015/093611号パンフレット、特開2017-66276号公報、国際公開第2017/135398号パンフレット、国際公開第2019/031435号パンフレットなどに記載のフローリアクターを利用し得る。
送液管、管状流路、反応物排出管のそれぞれには、必要に応じて、例えば、国際公開第2015/093611号パンフレットに記載されているような、原料容器、制御弁、定量ポンプ、熱交換器、質量系、圧力センサ、流量計、温度センサなどが、任意の適切な数で、任意の適切な位置に、適宜設けられていてもよい。
フローリアクターは、シンプルでクリーンな反応装置であり、省エネルギー性、省スペース性、安全性に非常に優れる。また、迅速な伝熱、混合により、反応液の濃度や温度が均質化されやすく、副生物の生成などを抑えることができる。
フローリアクターは、重合反応によるポリマー合成に採用する場合、その構造上、重合開始時等の発熱における副反応を効果的に抑制し得、また、効率的に重合反応を進行させ得る。
以下に、フローリアクターの代表例を2つ説明するが、先に述べたように、本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法において用いるフローリアクターは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なフローリアクターを採用し得る。
<1-2-1-a.フローリアクターの代表例(1)>
フローリアクターの代表例の一つとして、図1に示す1つの実施形態によるフローリアクターの模式図に基づいて説明する。しかしながら、本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法において用いるフローリアクターは、この図1に示す1つの実施形態によるフローリアクターに限らず、従来公知のものを含めて、1つ以上の送液管と、反応物をフローさせる1つ以上の管状流路と、1つ以上の反応物排出管を備えるフローリアクターであれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なフローリアクターを採用し得る。すなわち、フローリアクターは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な変更や改良を行ってもよい。
また、図1に記載の各種接続箇所や固定箇所は、必要により取り外し可能に構成されていてもよく、また、取り外しできない状態で構成されていてもよい。
フローリアクター(1)は、2液混合用ミキサーを1個備えているため、1段階のフロー合成が可能であるが、例えば、ブロックポリマーの製造する場合のように、2段階のフロー合成を行う場合は、2液混合用ミキサーが2個でもよく、n段階のフロー合成を行う場合は、2液混合用ミキサーをn個用いてフローリアクターを組み立てればよい。また、後述するように、別の手段によってマイクロリアクター内で2液を混合できるのであれば、2液混合用ミキサーは設けられていなくてもよい。
フローリアクター(1)は、恒温装置(2)の内部に配置された、2液混合用ミキサー(20)が、管状流路(30c)に接続され、反応物排出管(30d)へと導かれている。管状流路(30c)と反応物排出管(30d)は、一体化されていてもよい。図1では、2液混合用ミキサー(20)が設けられているが、別の手段によってマイクロリアクター内で2液を混合できるのであれば、2液混合用ミキサー(20)は設けられていなくてもよい。
2液混合用ミキサー(20)や管状流路(30c)には、液の混合効率を高めるため、必要に応じて、内側の形状を変えたり、充填物を設置したりしてもよい。
2液混合用ミキサー(20)の内管(22)には、第1の液体送液用のポンプ(41a)が送液管(42a)を介して接続されている。図1では、第1の液体送液用のポンプ(41a)が設けられているが、別の手段によって原料をマイクロリアクター内に送液できるのであれば、第1の液体送液用のポンプ(41a)は設けられていなくてもよい。
2液混合用ミキサー(20)のジョイント部材の本体(21)に設けられた導入孔には、第2の液体送液用のポンプ(41b)が送液管(42b)を介して接続されている。図1では、第2の液体送液用のポンプ(41b)が設けられているが、別の手段によって原料をマイクロリアクター内に送液できるのであれば、第2の液体送液用のポンプ(41b)は設けられていなくてもよい。
なお、図1では、2液混合を前提としているが、1液でマイクロリアクターに導入して、マイクロリアクター内で反応させる態様の場合は、第2の液体送液用のポンプ(41b)および送液管(42b)は設けられていなくてもよい。この場合は、送液管が1つの態様となる。この態様の場合も、別の手段によって原料をマイクロリアクター内に送液できるのであれば、第1の液体送液用のポンプ(41a)は設けられていなくてもよい。また、2液混合用ミキサー(20)は設けられていなくてもよい。
このような構成を有するフローリアクター(1)では、第1の液体送液用ポンプ(41a)および第2の液体送液用ポンプ(41b)から送られた各液が、送液管(42a)および送液管(42b)のそれぞれから、2液混合用ミキサー(20)のジョイント部材本体(21)に流入し、その内部を通過した後、ミキサー部材(23)に流入し、その内部で混合・攪拌されつつ反応が起こる。
なお、送液管(42a)および送液管(42b)のそれぞれから、2液混合用ミキサー(20)のジョイント部材本体(21)に流入する角度は、図1においては直角であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な角度とし得る。
また、送液管(42a)および送液管(42b)のそれぞれから、2液混合用ミキサー(20)のジョイント部材本体(21)に流入する位置は、図1における位置に限らず、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な位置とし得る。
なお、2液混合用ミキサー(20)の構成は、図1に記載のものに限られず、2液を混合できるもので、本発明の効果を損なわないものであれば、任意の適切な構成の2液混合用ミキサーを採用し得る。
反応後の反応液は、管状流路(30c)を通過した後、反応物排出管(30d)へと導かれる。
内管(22)、管状流路(30c)、反応物排出管(30d)、送液管(42a)、送液管(42b)の材質としては、本発明の効果を損なわないものであれば、任意の適切な材質を採用し得る。このような材質としては、例えば、ステンレス;チタン、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム等の他の金属;PTFE、FEP、PFA、PEEK、PP等の樹脂;石英ガラスやライムソーダガラス;シリコンゴムや天然ゴム;などが挙げられる。
内管(22)の等価直径は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な大きさに設定すればよい。代表的には、好ましくは、0.01mm~1000mmであり、より好ましくは0.05mm~100mmであり、さらに好ましくは0.1mm~50mmであり、さらに好ましくは0.2mm~10mmであり、さらに好ましくは0.3mm~5mmであり、さらに好ましくは0.4mm~3mmであり、特に好ましくは0.5mm~2mmであり、最も好ましくは0.5mm~1mmである。内管(22)の等価直径を上記範囲内にすれば、流速をある程度上げても系内圧力の過度な上昇を抑えることができるので、アクリル系ポリマーの生産性をより高めることができ、また、ジョイント部材本体(21)導入時の液温を、正確に制御することができる。
管状流路(30c)、反応物排出管(30d)、送液管(42a)、送液管(42b)の等価直径は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な大きさに設定すればよい。代表的には、好ましくは0.01mm~1000mmであり、より好ましくは0.05mm~100mmであり、さらに好ましくは0.1mm~50mmであり、さらに好ましくは0.2mm~30mmであり、さらに好ましくは0.3mm~20mmであり、さらに好ましくは0.4mm~10mmであり、特に好ましくは0.5mm~7mmであり、最も好ましくは1mm~5mmである。管状流路(30c)、反応物排出管(30d)、送液管(42a)、送液管(42b)の等価直径を上記範囲内にすれば、流速をある程度上げても系内圧力の過度な上昇を抑えることができるので、アクリル系ポリマーの生産性をより高めることができ、また、系内での液温を、正確に制御することができる。
「等価直径」(equivalent diameter)は、相当(直)径とも呼ばれ、機械工学の分野で用いられる用語である。任意の管内断面形状の配管ないし流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の管内断面の直径を等価直径という。等価直径(deq)は、A:配管の管内断面積、p:配管のぬれぶち長さ(内周長)を用いて、deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管の管内断面の直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。等価直径は、管内断面が一辺aの正四角形管ではdeq=4a2/4a=a、一辺aの正三角形管ではdeq=a/31/2、流路高さhの平行平板間の流れではdeq=2hとなる(例えば、(社)日本機械学会編「機械工学事典」1997年、丸善(株)参照)。
図1に示すフローリアクター(1)を用いた、本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法においては、送液管(42a)、送液管(42b)に導入する液を適切に決定して、アクリル系ポリマーが製造できるようにすればよい。例えば、送液管(42a)からモノマー成分を含む(重合開始剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい)液を導入し、送液管(42b)から重合開始剤、または触媒、あるいは重合開始剤と触媒の両方を含む液を導入する。グループトランスファー重合を例にとれば、例えば、(i)送液管(42a)からモノマー成分と重合開始剤を含む液を導入し、送液管(42b)から触媒(重合開始剤を活性化させる触媒)を含む液を導入する態様、(ii)送液管(42a)からモノマー成分と触媒(重合開始剤を活性化させる触媒)を含む液を導入し、送液管(42b)から重合開始剤を含む液を導入する態様、(iii)送液管(42a)からモノマー成分を含む液を導入し、送液管(42b)から重合開始剤と触媒(重合開始剤を活性化させる触媒)を含む液を導入する態様、が挙げられる。なお、本明細書においては、送液管(42a)から導入する液を「液A」と称する場合があり、送液管(42b)から導入する液を「液B」と称する場合がある。また、適用できる実施態様において、本発明の効果を損なわない範囲で、液Aの種類と液Bの種類が逆であってもよい。もちろん、ブロックポリマーを製造する場合や、重合停止剤などを導入する必要がある場合には、さらに、もう1段の反応ができるように、管状流路(30c)の途中の反応物排出管(30d)より前に、別途の送液管からのモノマーや重合停止剤などの導入構造を設ければよい。
送液管(42a)から液Aを導入する流速や、送液管(42b)から液Bを導入する流速としては、流路の等価直径、液A、液Bの濃度、液A,液Bの導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜選択することができる。
送液管(42a)から液Aを導入する場合および送液管(42b)から液Bを導入する場合、液Aおよび液Bは、それぞれ、融点、粘度、反応熱の除熱の観点から、溶媒中に各種成分を溶解してなる溶液であってもよい。液Aが溶媒中に各種成分を溶解してなる溶液である場合、例えば、モノマー成分の濃度や重合開始剤の濃度や触媒の濃度などの各種成分の濃度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な濃度に調整すればよい。
液Aや液Bに含まれ得る溶媒としては、用いるモノマー成分や重合開始剤や触媒などの各種成分の種類に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な溶媒を採用し得る。このような溶媒としては、例えば、直鎖、分岐鎖、環状のエーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上の混合溶媒であってもよい。
エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、これらの誘導体などが挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、これらの誘導体などが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどが挙げられる。
<1-2-1-b.フローリアクターの代表例(2)>
フローリアクターの別の代表例として、図2に示す1つの実施形態によるフローリアクターの模式図に基づいて説明する。しかしながら、本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法において用いるフローリアクターは、この図2に示す1つの実施形態によるフローリアクターに限らず、従来公知のものを含めて、1つ以上の送液管と、反応物をフローさせる1つ以上の管状流路と、1つ以上の反応物排出管を備えるフローリアクターであれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なフローリアクターを採用し得る。すなわち、フローリアクターは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な変更や改良を行ってもよい。
また、図2に記載の各種接続箇所や固定箇所は、必要により取り外し可能に構成されていてもよく、また、取り外しできない状態で構成されていてもよい。
図2に示すフローリアクター(1000)は、導入口(I)を備えた送液管(100)、導入口(II)を備えた送液管(200)、導入口(III)を備えた送液管(300)、送液管(100)と送液管(200)とが合流する合流部(C1)、この合流部(C1)の下流側端部に連結する反応管(400)、この反応管(400)と送液管(300)とが合流する合流部(C2)、この合流部(C2)の下流側端部に連結する反応物排出管(500)を備える。
図2に示すフローリアクター(1000)を用いた、本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法においては、導入口(I)、導入口(II)、導入口(III)に導入する液を適切に決定して、アクリル系ポリマーが製造できるようにすればよい。例えば、導入口(I)からモノマー成分を含む(重合開始剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい)液(以下、「液A」ともいう。)を導入し、導入口(II)から重合開始剤、または触媒、あるいは重合開始剤と触媒の両方を含む液(以下、「液B」ともいう。)を導入し、導入口(III)から重合停止剤を導入する。もちろん、重合停止剤を導入する必要がない場合には、導入口(III)を備えた送液管(300)、反応管(400)と送液管(300)とが合流する合流部(C2)は備えていなくてもよい。
図2において、少なくとも合流部(C1)、この合流部(C1)から合流部(C2)までの間、合流部(C2)、合流部(C2)に続く反応物排出管(500)の一部は、恒温装置(R1)内に配設され、重合反応と重合停止反応における液温を制御する。恒温装置(R1)は、任意の区画で個別に温度を制御することもできる。具体的には、合流区画、重合反応区画、重合停止反応区画における液温を個別の温度で制御することもできる。液温は、好ましくは-100℃~100℃であり、より好ましくは-80℃~80℃であり、さらに好ましくは-50℃~50℃である。
導入口(I)、導入口(II)、導入口(III)には、それぞれ、通常、プランジャーポンプ等の送液ポンプ(図示していない)が接続され、このポンプを作動することにより、液A、液B、および重合停止剤が各流路内を流通する形態とすることができる。
なお、本明細書の説明において、「上流」及び「下流」とは、液体が流れる方向に対して用いられ、液体が導入される側(図2においては、導入口(I)、導入口(II)、導入口(III)が上流であり、その逆側が下流となる。
送液管(100)は、導入口(I)から導入された液Aを、合流部(C1)へと供給する流路である。
送液管(100)の等価直径は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な大きさに設定すればよい。代表的には、好ましくは0.01mm~1000mmであり、より好ましくは0.05mm~100mmであり、さらに好ましくは0.1mm~50mmであり、さらに好ましくは0.2mm~30mmであり、さらに好ましくは0.3mm~20mmであり、さらに好ましくは0.4mm~10mmであり、特に好ましくは0.5mm~7mmであり、最も好ましくは1mm~5mmである。送液管(100)の等価直径を上記範囲内にすれば、流速をある程度上げても系内圧力の過度な上昇を抑えることができるので、アクリル系ポリマーの生産性をより高めることができ、また、合流部(C1)導入時の液温を、正確に制御することができる。
送液管(100)の長さは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な長さに設定すればよい。代表的には、好ましくは10cm~100m、より好ましくは20cm~50mであり、さらに好ましくは30cm~30mである。
送液管(100)の材質としては、本発明の効果を損なわないものであれば、任意の適切な材質を採用し得る。このような材質としては、例えば、ステンレス;チタン、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム等の他の金属;PTFE、FEP、PFA、PEEK、PP等の樹脂;石英ガラスやライムソーダガラス;シリコンゴム、天然ゴム;などが挙げられる。
導入口(I)から液Aを導入する流速としては、流路の等価直径、液A、液Bの濃度、液Bの導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜選択することができる。
導入口(I)から導入する液Aは、モノマー成分そのものであってもよいし、融点、粘度、反応熱の除熱の観点から、溶媒中にモノマー成分を溶解してなる溶液であってもよい。液Aが溶媒中にモノマー成分を溶解してなる溶液である場合、モノマー成分の濃度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な濃度に調整すればよい。
液Aに含まれ得る溶媒としては、用いるモノマー成分の種類に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な溶媒を採用し得る。このような溶媒としては、例えば、直鎖、分岐鎖、環状のエーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上の混合溶媒であってもよい。
エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、これらの誘導体などが挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、これらの誘導体などが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどが挙げられる。
送液管(200)は、導入口(II)から導入された液Bを、合流部(C1)へと供給する流路である。
送液管(200)の等価直径は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な大きさに設定すればよい。代表的には、好ましくは0.01mm~1000mmであり、より好ましくは0.05mm~100mmであり、さらに好ましくは0.1mm~50mmであり、さらに好ましくは0.2mm~30mmであり、さらに好ましくは0.3mm~20mmであり、さらに好ましくは0.4mm~10mmであり、特に好ましくは0.5mm~7mmであり、最も好ましくは1mm~5mmである。送液管(200)の等価直径を上記範囲内にすれば、流速をある程度上げても系内圧力の過度な上昇を抑えることができるので、アクリル系ポリマーの生産性をより高めることができ、また、合流部(C1)導入時の液温を、正確に制御することができる。
送液管(200)の長さは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な長さに設定すればよい。代表的には、例えば、好ましくは10cm~100m、より好ましくは20cm~50mであり、さらに好ましくは30cm~30mである。
送液管(200)の材質としては、本発明の効果を損なわないものであれば、任意の適切な材質を採用し得る。このような材質としては、例えば、ステンレス;チタン、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム等の他の金属;PTFE、FEP、PFA、PEEK、PP等の樹脂;石英ガラスやライムソーダガラス;シリコンゴム、天然ゴム;などが挙げられる。
導入口(II)から液Bを導入する流速としては、流路の等価直径、液A、液Bの濃度、液Aの導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜選択することができる。
導入口(II)から導入する液Bは、重合開始剤、または触媒、あるいは重合開始剤と触媒の混合物そのものであってもよいし、融点、粘度、反応熱の除熱の観点から、溶媒中に重合開始剤、または触媒、あるいは重合開始剤と触媒の混合物を溶解してなる溶液であってもよい。液Bが溶媒中に重合開始剤を溶解してなる溶液である場合、重合開始剤の濃度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な濃度に調整すればよい。
液Aに含まれ得る溶媒としては、用いるモノマー成分の種類に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な溶媒を採用し得る。このような溶媒としては、例えば、直鎖、分岐鎖、環状のエーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上の混合溶媒であってもよい。
エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、これらの誘導体などが挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、これらの誘導体などが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどが挙げられる。
液Aと液Bの導入量は、合流部(C1)において両液が均質に混じり合ったと仮定した場合に、かかる混合液中において、モノマー成分と重合開始剤の当量比が、重合開始剤1当量に対して、モノマー成分が、好ましくは5当量~5000当量であり、より好ましくは10当量~5000当量であり、さらに好ましくは10当量~1000当量である。当量比を上記特に好ましい範囲内とすることにより、理論値と事実上等しい分子量のポリマーを得ることができる点で有利である。すなわち、モノマー成分が重合性官能基を1つ有する化合物である場合、重合開始剤1モルに対して、モノマー成分の使用量が、好ましくは5モル~5000モルであり、より好ましくは10モル~5000モルであり、さらに好ましくは10モル~1000モルである。
液Aと液Bは、合流部(C1)で合流する。合流部(C1)は、代表的には、ミキサーの役割を有し、送液管(100)と送液管(200)とを1本の流路に合流し、合流部(C1)の下流側端部に連結する反応管(400)へと合流した溶液を送り出し得る。図2の実施形態においては、合流部(C1)としてT字型のコネクターを用いている。
合流部(C1)内の流路の等価直径は、混合性能をより良好とする観点から、0.2~10mmが好ましく、圧損をより抑制する観点から1~10mmがより好ましい。
合流部(C1)の材質としては、本発明の効果を損なわないものであれば、任意の適切な材質を採用し得る。このような材質としては、例えば、ステンレス;チタン、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム等の他の金属;PTFE、FEP、PFA、PEEK、PP等の樹脂;石英ガラスやライムソーダガラス;シリコンゴム、天然ゴム;などが挙げられる。
合流部(C1)としては、市販されているマイクロミキサーなど、任意の適切なマイクロミキサーを用いることができる。
液Aと液Bは、合流部(C1)で合流、混合された後、反応流路である反応管(400)内へと流れ、反応管(400)内を下流へ流通中に、重合性モノマーがアニオン重合する。
反応管(400)の形態としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な形態を採用し得る。通常は、管状体を用いる。
反応管(400)の材質としては、本発明の効果を損なわないものであれば、任意の適切な材質を採用し得る。このような材質としては、例えば、ステンレス;チタン、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム等の他の金属;PTFE、FEP、PFA、PEEK、PP等の樹脂;石英ガラスやライムソーダガラス;シリコンゴム、天然ゴム;などが挙げられる。
反応管(400)の等価直径は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な大きさに設定すればよい。代表的には、好ましくは0.01mm~1000mmであり、より好ましくは0.05mm~100mmであり、さらに好ましくは0.1mm~50mmであり、さらに好ましくは0.2mm~30mmであり、さらに好ましくは0.3mm~20mmであり、さらに好ましくは0.4mm~10mmであり、特に好ましくは0.5mm~7mmであり、最も好ましくは1mm~5mmである。反応管(400)の等価直径を上記範囲内にすれば、流速をある程度上げても系内圧力の過度な上昇を抑えることができるので、アクリル系ポリマーの生産性をより高めることができ、また、系内での液温を、正確に制御することができる。
反応管(400)の長さは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な大きさに設定すればよい。代表的には、好ましくは10cm~500m、より好ましくは20cm~300mであり、さらに好ましくは30cm~100mである。
合流部(C1)や反応管(400)には、液の混合効率を高めるため、必要に応じて、内側の形状を変えたり、充填物を設置したりしてもよい。
送液管(300)は、導入口(III)から導入された重合停止剤を、合流部(C2)へと供給する流路である。
送液管(300)の等価直径は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な大きさに設定すればよい。代表的には、好ましくは0.01mm~1000mmであり、より好ましくは0.05mm~100mmであり、さらに好ましくは0.1mm~50mmであり、さらに好ましくは0.2mm~30mmであり、さらに好ましくは0.3mm~20mmであり、さらに好ましくは0.4mm~10mmであり、特に好ましくは0.5mm~7mmであり、最も好ましくは1mm~5mmである。送液管(300)の等価直径を上記範囲内にすれば、流速をある程度上げても系内圧力の過度な上昇を抑えることができるので、アクリル系ポリマーの生産性をより高めることができ、また、合流部(C2)導入時の液温を、正確に制御することができる。
送液管(300)の長さは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な長さに設定すればよい。代表的には、好ましくは10cm~100m、より好ましくは20cm~50mであり、さらに好ましくは30cm~30mである。
送液管(300)の材質としては、本発明の効果を損なわないものであれば、任意の適切な材質を採用し得る。このような材質としては、例えば、ステンレス;チタン、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム等の他の金属;PTFE、FEP、PFA、PEEK、PP等の樹脂;石英ガラスやライムソーダガラス;シリコンゴム、天然ゴム;などが挙げられる。
導入口(III)から重合停止剤を導入する流速としては、流路の等価直径、液A、液Bの濃度、液A、液Bの導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜選択することができる。
反応管(400)内を流通しながら重合反応が進行している重合反応液と、送液管(300)内を流通する重合停止剤とは、合流部(C2)で合流する。合流部(C2)はミキサーの役割を有し、反応管(400)と送液管(300)とを一本の流路に合流し、下流の反応物排出管(500)へと合流した溶液を送り出す。図2の実施形態においては、合流部(C2)はT字型のコネクターを用いている。
合流部(C2)内の流路の等価直径は、混合性能をより良好とする観点から、0.2~10mmが好ましく、圧損をより抑制する観点から1~10mmがより好ましい。
合流部(C2)の材質としては、本発明の効果を損なわないものであれば、任意の適切な材質を採用し得る。このような材質としては、例えば、ステンレス;チタン、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム等の他の金属;PTFE、FEP、PFA、PEEK、PP等の樹脂;石英ガラスやライムソーダガラス;シリコンゴム、天然ゴム;などが挙げられる。
合流部(C2)としては、市販されているマイクロミキサーなど、任意の適切なマイクロミキサーを用いることができる。
重合反応液と重合停止剤を含む混合溶液は、配管(管状流路)内を流通しながら反応し、アニオンが失活して重合が停止する。
反応物排出管(500)の等価直径は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な大きさに設定すればよい。代表的には、好ましくは0.01mm~1000mmであり、より好ましくは0.05mm~100mmであり、さらに好ましくは0.1mm~50mmであり、さらに好ましくは0.2mm~30mmであり、さらに好ましくは0.3mm~20mmであり、さらに好ましくは0.4mm~10mmであり、特に好ましくは0.5mm~7mmであり、最も好ましくは1mm~5mmである。反応物排出管(500)の等価直径を上記範囲内にすれば、流速をある程度上げても系内圧力の過度な上昇を抑えることができるので、アクリル系ポリマーの生産性をより高めることができ、また、反応物排出時液温を、正確に制御することができる。
反応物排出管(500)の長さは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な長さに設定すればよい。代表的には、好ましくは10cm~100m、より好ましくは20cm~50mであり、さらに好ましくは30cm~30mであり、特に好ましくは50cm~10mである。
反応物排出管(500)の材質としては、本発明の効果を損なわないものであれば、任意の適切な材質を採用し得る。このような材質としては、例えば、ステンレス;チタン、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム等の他の金属;PTFE、FEP、PFA、PEEK、PP等の樹脂;石英ガラスやライムソーダガラス;シリコンゴム、天然ゴム;などが挙げられる。
反応物排出管(500)からの排出流速としては、流路の等価直径、液A、液Bの濃度、液A、液Bの導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜選択することができる。反応物排出管(500)内を流通する液の流速は、送液管(300)内を流通する液の流速と、反応管(400)内を流通する液の流速の合計値となる。
反応物排出管(500)の下流において液を採取することにより、目的のアクリル系ポリマーを得ることができる。
<1-2-2.アニオン重合>
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法においては、重合工程で行われる重合が、代表的には、アニオン重合である。
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法において採用し得るアニオン重合の一つの実施形態(第1の態様)は、複数の液体を混合可能な流路を備えるフローリアクターを用いて、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分と重合開始剤、またはモノマー成分と重合開始剤と添加剤とを、フローリアクター内の流路へ導入し、リビングアニオン重合させて重合体を得る。
モノマー成分としては、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルを単独で用いてもよいし、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーを併用しても構わない。
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法において採用し得るアニオン重合の別の一つの実施形態(第2の態様)は、ブロックポリマーを製造することに適した形態であり、複数の液体を混合可能な流路を備えるフローリアクターを用いて、第1のモノマーと重合開始剤、または第1のモノマー成分と重合開始剤と添加剤とをフローリアクター内の流路へ導入してリビングアニオン重合させて中間重合体を形成する第1工程と、得られた中間重合体と第2のモノマーとをフローリアクターに導入し、フローリアクター内で、中間重合体の成長末端に第2のモノマーをリビングアニオン重合させ、ブロック共重合体を形成する第2工程と、を有する。この場合、第1のモノマーと第2のモノマーのいずれか一方が、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルであり、残りの一方が、他のモノマーである。
重合開始剤としては、アニオン重合に採用し得る重合開始剤であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。重合開始剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。このような重合開始剤としては、例えば、有機リチウム、有機マグネシウムが挙げられる。
有機リチウムとしては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム(n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、iso-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムなど)、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;メトキシメチルリチウム、エトキシメチルリチウム等のアルコキシアルキルリチウム;α-メチルスチリルリチウム;1,1-ジフェニルヘキシルリチウム、1,1-ジフェニル-3-メチルペントリルリチウム、3-メチル-1,1-ジフェニルペンチルリチウム等のジアリールアルキルリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウム等のアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウム等のアルキニルリチウム;ベンジルリチウム、フェニルエチルリチウム等のアラルキルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウム等のアリールリチウム;2-チエニルリチウム、4-ピリジルリチウム、2-キノリルリチウム等のヘテロ環リチウム;トリ(n-ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウム等のアルキルリチウムマグネシウム錯体などが挙げられる。これらの中でも、重合反応を効率よく進行させることができることから、アルキルリチウムが好ましく、その中でもn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムが好ましい。また、工業的に入手が容易で安全性が高いことから、n-ブチルリチウムがより好ましい。
有機マグネシウムとしては、例えば、ジ-n-ブチルマグネシウム、ジ-t-ブチルマグネシウム、ジ-s-ブチルマグネシウム、n-ブチル-s-ブチルマグネシウム、n-ブチル-エチルマグネシウム、ジ-n-アミルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、ジフェニルマグネシウムなどが挙げられる。
上記の第1の態様および第2の態様におけるリビングアニオン重合の際には、モノマー成分と、重合開始剤に加え、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化化合物などからなる群から選ばれる1種以上の添加剤を存在させることで、通常は低温で行う必要があるリビングアニオン重合を、工業的に製造可能な温度域で行うことができる。これらの添加剤の使用量は、重合反応速度を高め、生成するアクリル系ポリマーの分子量制御が容易となることから、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.05モル~10モルであり、より好ましくは0.1モル~5モルである。
モノマー成分、重合開始剤、添加剤は、溶剤を用いて、希釈ないし溶解して、溶液としてフローリアクターに導入することが好ましい。溶剤としては、有機溶剤が好ましい。
有機溶剤としては、例えば、直鎖、分岐鎖、環状のエーテル溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。より具体的には、エーテル溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトシキエタン、トリオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジグライム、これらの誘導体などを用いることができる。炭化水素溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、これらの誘導体などを用いることができる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどを用いることができる。これらの中でも、モノマー成分の溶解性や重合速度の観点から、テトラヒドロフランを用いることが好ましい。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
モノマー成分の有機溶剤溶液中の濃度としては、単位時間当たりの重合体の生成量が良好となり、重合反応熱の除熱も効率的に行えることから、0.01M(mol/L、以下同じ。)~4Mの範囲が好ましく、0.05M~3Mの範囲がより好ましく、0.1M~2Mの範囲が特に好ましい。
重合開始剤は、有機溶剤を用いて、希釈ないし溶解して、溶液としてフローリアクターに導入することが好ましく、用いる有機溶剤としては、重合開始剤の溶解性や対カチオンに対する溶媒和が高く、重合速度が高いことから、テトラヒドロフラン(THF)が好ましい。
重合開始剤の有機溶剤溶液中の濃度としては、重合反応を効率よく進行させることができ、マイクロリアクターの流路が閉塞の原因となる重合中の不溶性物質が析出を抑制できることから、0.001M~1Mの範囲が好ましく、0.002M~0.75Mの範囲がより好ましく、0.01M~0.5Mの範囲がさらに好ましく、0.02M~0.2Mの範囲が特に好ましい。
アニオン重合においては、ジフェニルエチレンまたはその誘導体(以下、「ジフェニルエチレン等」と称する。)を重合開始剤とともにフローリアクターへ導入してもよい。ジフェニルエチレン等の使用により、フェニル基によって嵩高い重合開始剤となるため、重合開始剤の活性を弱めることができ、モノマー成分の一つとして(メタ)アクリレート系単量体を用いる場合に、副反応を抑制し適切にリビングアニオン重合を制御できる利点がある。なお、ジフェニルエチレン等は、重合開始剤と別個にフローリアクターへ導入してフローリアクター内で混合しても、予め重合開始剤と混合して、ジフェニルエチレン等と重合開始剤との反応物とした後、フローリアクターへ導入しても構わない。
アニオン重合で用いるフローリアクターは、複数の液体を混合可能な流路を備えるものであるが、流路が設置された伝熱性反応容器を有するものであってもよく、内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器を有するものであってもよく、表面に複数の溝部が形成された伝熱性プレート状構造体を積層された伝熱性反応容器を有するものであってもよい。
アニオン重合反応は、第1の態様、第2の態様ともに、従来のバッチ方式での反応温度である-78℃以下の温度で行うこともできるが、本発明のようにフローリアクターを用いると、工業的に実施可能な温度である-40℃以上の温度でも行うことができ、-28℃以上でも行うことができる。反応温度が-40℃以上であると、簡易な構成の冷却装置を用いてアクリル系ポリマーを製造することができ、製造コストを低減できることから好ましい。また、反応温度が-28℃以上であると、より簡易な構成の冷却装置を用いてアクリル系ポリマーを製造することができ、製造コストを大幅に低減できることから好ましい。
アニオン重合で用い得るフローリアクターが備える複数の液体を混合可能な流路としては、例えば、マイクロミキサーが挙げられる。このマイクロミキサーとしては、市販されているマイクロミキサーを含め、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なマイクロミキサーを用いることが可能である。
アニオン重合においては、重合を停止させるために、重合停止剤を添加してもよい。重合停止剤としては、活性種であるアニオンを失活させる成分(重合停止成分)を含む液であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合停止剤を採用し得る。重合停止剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合停止剤としては、アルコール、酸性物質、それらの水溶液や有機溶液(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、メチルターシャリーブチルエーテル、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン等を溶媒とする溶液)が挙げられる。また、重合停止剤として、ハロゲン化アルキルやクロロシラン等の求電子剤を含む液を用いることもできる。
重合停止剤としてのアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
重合停止剤としての酸性物質としては、例えば、酢酸、塩酸などが挙げられる。
重合停止剤としてのハロゲン化アルキルとしては、例えば、アルキルブロマイド、アルキルヨージドなどが挙げられる。
<1-2-3.グループトランスファー重合>
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法においては、重合工程で行われる重合が、グループトランスファー重合であってもよい。
上記グループトランスファー重合は、代表的には、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物、および、触媒の存在下で、グループトランスファー重合する。
上記グループトランスファー重合は、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物を重合開始剤としてモノマーを重合させるアニオン重合の一種である。炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物が、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリロイル基に付加し、新たに形成されたポリマーの成長末端のシリルケテンアセタールが次々とポリマー分子の末端へと移っていくことによりアクリル系ポリマーが得られる。
グループトランスファー重合を用いることにより、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の重合反応を、室温等の、制御が比較的容易な温度範囲で行うことができる。また、反応系内の水分量を厳密に制御せずに上記重合反応を行うことができる。さらに、グループトランスファー重合を用いれば、不純物の生成が少なく、高転化率でビニルエーテル基を残存させたままアクリル系ポリマーを製造することができる。
このように、グループトランスファー重合を用いると、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリロイル基のみを重合させて、ビニルエーテル基を残存させたアクリル系ポリマーを、極めて容易かつ効率的に製造することができる。
グループトランスファー重合においては、重合開始剤として炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物を用い、触媒の存在下で、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を重合させる。具体的には、反応前に、モノマー成分、触媒、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物のうちのいずれか2つを反応容器内に仕込み、残り1つを添加することにより重合が開始する。これらを添加する順序は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法で添加して重合を開始することができる。また、モノマー成分、触媒、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物は、それぞれ、使用する全量を一度に添加してもよいし、少量ずつ連続的に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。
本発明のようにフローリアクターを採用する場合は、用いるフローリアクターが備える送液管の数に応じて、原料を適切に配分し、該送液管に導入して、反応を行えばよい。一つの実施形態としては、例えば、送液管の1つ(第1の送液管)に、モノマー成分、触媒、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物のうちのいずれか2つを含む原料(1)を、送液管の別の1つ(第2の送液管)に、モノマー成分、触媒、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物のうちの残り1つを含む原料(2)を、それぞれ導入して、反応を行えばよい。また、モノマー成分、触媒、炭素―炭素二重結合を有するシラン化合物をそれぞれ別々の送液管で導入して反応を行うこともできる。
炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物の使用量としては、目的とするアクリル系ポリマーに応じて、任意の適切な使用量を採用すればよい。より効率的にアクリル系ポリマーを製造できる点で、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物の使用量は、使用するモノマー成分100モル%に対して、好ましくは1×10-4モル%~10モル%であり、より好ましくは1×10-3モル%~5モル%であり、さらに好ましくは1×10-2モル%~1モル%である。
触媒の使用量としては、目的とするアクリル系ポリマーに応じて、任意の適切な使用量を採用すればよい。より効率的にアクリル系ポリマーを製造できる点で、触媒の使用量は、使用するモノマー成分100モル%に対して、好ましくは1×10-4モル%~10モル%であり、より好ましくは1×10-3モル%~5モル%であり、さらに好ましくは1×10-2モル%~1モル%である。
グループトランスファー重合においては、溶媒を使用しなくてもよいし、溶媒を使用してもよい。グループトランスファー重合においては、好ましくは、溶媒を使用する。
グループトランスファー重合で用い得る溶媒としては、例えば、原料、触媒、重合開始剤、アクリル系ポリマーを溶解させ得る溶媒であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な溶媒を採用し得る。このような溶媒としては、重合反応が効率良く進行し得る点で、非プロトン性溶媒が好ましい。
グループトランスファー重合で用い得る溶媒としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル系溶媒;ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペンタフルオロベンゼン、オクタフルオロトルエン等のフッ素系溶媒;DMSO;ニトロメタン;などが挙げられる。
これらの溶媒の中でも、グループトランスファー重合がより一層効率良く進行し得る点で、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、およびニトリル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、およびエステル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒の使用量としては、使用するモノマー成分100質量%に対して、好ましくは10質量%~10000質量%であり、より好ましくは50質量%~5000質量%であり、さらに好ましくは100質量%~1000質量%である。
グループトランスファー重合においては、重合開始時の溶媒中の酸素濃度が、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、さらに好ましくは0ppm~500ppmである。重合開始時の溶媒中の酸素濃度が上記範囲内にあれば、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物や触媒等の活性がより低下しにくくなるため、重合反応がより良好に進行し、所望のアクリル系ポリマーをより効率良く製造することができる。
本発明のようにフローリアクターを採用すれば、原料が配管を通って連続的にフローされながら反応するため、重合開始時の溶媒中の酸素濃度を低く維持することが確実に実現できるというメリットがある。
上記酸素濃度は、例えば、ポーラロ方式溶存酸素計により測定することができる。
グループトランスファー重合においては、重合開始時の溶媒中の水分量が、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは0ppm~300ppmである。重合開始時の溶媒中の水分量が上記範囲内にあれば、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物が分解を起こしにくく、触媒等の活性がより低下しにくくなるため、重合反応がより良好に進行し、所望のアクリル系ポリマーをより効率良く製造することができる。
本発明のようにフローリアクターを採用すれば、原料が配管を通って連続的にフローされながら反応するため、重合開始時の溶媒中の水分量を低く維持することが確実に実現できるというメリットがある。
上記水分量は、例えば、カールフィッシャー水分測定法により測定することができる。
グループトランスファー重合における反応温度は、目的とするアクリル系ポリマーに応じて、任意の適切な反応温度を採用すればよい。グループトランスファー重合における反応温度は、分子量および分子量分布の制御や触媒活性の維持ができる点で、好ましくは-100℃~100℃であり、より好ましくは-80℃~80℃であり、さらに好ましくは-50℃~50℃である。また、製造コスト低減の観点からは、反応温度を室温±20℃とすることも、本発明の製造方法の好ましい形態の一つである。
本発明のようにフローリアクターを採用すれば、原料が配管を通って連続的にフローされながら反応するため、グループトランスファー重合における反応温度を上述の範囲に確実に制御できるというメリットがある。
グループトランスファー重合における反応時間は、目的とするアクリル系ポリマーに応じて、任意の適切な反応時間を採用すればよい。グループトランスファー重合における反応時間は、分子量および分子量分布の制御や触媒活性の維持ができる点で、好ましくは3分~48時間であり、より好ましくは5分~36時間であり、さらに好ましくは10分~24時間である。
グループトランスファー重合における反応雰囲気は、一般には、大気下でもよく、また、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下でもよい。しかしながら、本発明のようにフローリアクターを採用すれば、フローさせる配管は密閉系であるので、反応雰囲気を考慮する必要性が低くなるというメリットがある。もちろん、密閉状態にない装置部分においては、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下とすることが好ましい。
グループトランスファー重合における反応雰囲気中の酸素濃度は、分子量および分子量分布の制御や触媒活性の維持ができる点で、好ましくは10000ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下である。
本発明のようにフローリアクターを採用すれば、原料が配管を通って連続的にフローされながら反応し、フローさせる配管は密閉系であるので、グループトランスファー重合における反応雰囲気中の酸素濃度を上述の範囲に確実に制御できるというメリットがある。
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法において得られるアクリル系ポリマーは、好ましくは、主鎖末端に重合開始剤のシリル基を含むシリルケテンアセタール構造またはエノレートアニオン構造となっており、反応系内に水、アルコール、または酸を添加して、重合体の片末端のシリルケテンアセタール構造またはエノレートアニオン構造をカルボン酸またはエステルに変換させることにより、重合反応を停止させることができる。このような添加は、フローリアクターの配管における、重合反応の箇所より後ろの箇所において行うことになる。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等が挙げられる。
酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、安息香酸等の有機酸が挙げられる。
水、アルコール、または酸の使用量としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な使用量を採用し得る。このような水、アルコール、または酸の使用量としては、使用する炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物1molに対し、好ましくは1mol~1000molであり、より好ましくは1mol~100molであり、さらに好ましくは1mol~10molである。
水、アルコール、または酸の代わりに、求電子剤を添加してもよい。求電子剤を添加することにより、目的の官能基を導入して、重合反応を停止させることができる。
求電子剤としては、例えば、ヨウ素や臭素等のハロゲン、ハロゲン化コハク酸イミド化合物、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリル、ハロゲン化プロパルギル、アルデヒド、酸クロライドなどが挙げられる。
求電子剤の使用量としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な使用量を採用し得る。このような求電子剤の使用量としては、使用する炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物1molに対し、好ましくは0.5mol~1.5molであり、より好ましくは0.6mol~1.3molであり、さらに好ましくは0.8mol~1.2molである。
グループトランスファー重合において使用し得る炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物としては、例えば、一般式(2)で表されるシリルケテンアセタール、一般式(3)で表されるビニルシラン化合物、および一般式(4)で表されるアリルシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、反応性が高く、効率良く重合が進行する点で、好ましくは、一般式(2)で表されるシリルケテンアセタールが挙げられる。
Figure 0007390201000003
一般式(2)中、RおよびRは、それぞれ、水素原子または有機基を表し、R、R、R、およびR10は、それぞれ、有機基を表し、RとRまたはRとRは、結合して環構造を形成していてもよく、R、R、およびR10は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。
Figure 0007390201000004
一般式(3)中、R、R、およびR7’は、それぞれ、水素原子または有機基を表し、R、R、およびR10は、それぞれ、有機基を表し、RとRまたはRとR7’は、結合して環構造を形成していてもよく、R、R、およびR10は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。
Figure 0007390201000005
一般式(4)中、R、R、およびR7’は、それぞれ、水素原子または有機基を表し、R、R、およびR10は、それぞれ、有機基を表し、RとRまたはRとR7’は、結合して環構造を形成していてもよく、R、R、およびR10は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。
一般式(2)、(3)、(4)において、RおよびRは、それぞれ、水素原子または有機基を表し、有機基としては、炭素数1~12の炭化水素基であることが好ましい。
上記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。上記炭化水素基は、上記炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換されていてもよいし、上記炭化水素基を構成する水素原子の一つ以上が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;アルコキシ基;などの置換基で置換されていてもよい。
上記炭化水素基としては、好ましくは、炭素数1~6のアルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、芳香族炭化水素基であり、より好ましくは、炭素数1~6のアルキル基、シクロアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数1~6のアルキル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基である。
一般式(2)、(3)、(4)において、Rが有機基である場合やR7’が有機基である場合、その有機基は、好ましくは、炭素数1~22の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、アダマンチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、tert-ブチル基である。
一般式(2)、(3)、(4)において、RとRは、結合して環構造を形成していてもよく、RとRは、結合して環構造を形成していてもよく、RとR7’は、結合して環構造を形成していてもよい。
上記環構造としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル等のシクロアルキル等の脂環式炭化水素構造、ジヒドロフラン環、テトラヒドロフラン環、ジヒドロピラン環、テトラヒドロピラン環等の含酸素ヘテロ環構造等が挙げられる。
一般式(2)、(3)、(4)において、R、R、およびR10は、それぞれ、好ましくは、炭素数1~12の炭化水素基、アルコキシ基、トリメチルシリル基であり、より好ましくは、炭素数1~6の炭化水素基、アルコキシ基であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、トリメチルシリル基である。
一般式(2)、(3)、(4)において、R、R7’、R、R、およびR10は、それぞれ、有機基であり、好ましくは、炭化水素基である。この炭化水素基は、該炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換されていてもよいし、該炭化水素基を構成する水素原子の一つ以上が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;アルコキシ基等の置換基;で置換されていてもよい。また、R、R、およびR10で表される有機基のうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。
一般式(2)、(3)、(4)において、-SiR10で表される基としては、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリイソブチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。これらの中でも、入手容易であることや合成容易である点で、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェニルシリル基が好ましい。
一般式(2)で表されるシリルケテンアセタールとしては、具体的には、例えば、メチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリエチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリイソプロピルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(tert-ブチルジメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリメチルシリル)ジエチルケテンアセタール、メチル(トリフェニルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(メチルジフェニルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(ジメチルフェニルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリエトキシシリル)ジメチルケテンアセタール、エチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、2-エチルヘキシル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、tert-ブチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、1-[(1-メトキシ-2-メチル-1-プロペニル)オキシ]-1-メチルシラシクロブタン等が挙げられる。これらの中でも、入手容易である点や合成容易な点、また安定性の点から、メチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリイソプロピルシリル)ジメチルケテンアセタール、エチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタールが好ましい。
一般式(2)で表されるシリルケテンアセタールは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(3)で表されるビニルシラン化合物としては、具体的には、例えば、ビニルトリメチルシラン、1-トリメチルシリルヘキセン、1-トリメチルシリルオクテン、1-トリメチルシリル-1-フェニルエチレン、1-トリメチルシリル-2-フェニルエチレン、ビニル-tert-ブチルジメチルシラン、1-tert-ブチルジメチルシリルヘキセン、1-tert-ブチルジメチルシリルオクテン、1-tert-ブチルジメチルシリル-2-フェニルエチレン、ビニルトリス(トリメチルシリル)シラン、1-トリス(トリメチルシリル)シリルヘキセン、1-トリス(トリメチルシリル)シリルオクテン、1-トリス(トリメチルシリル)シリル-2-フェニルエチレンなどが挙げられる。
一般式(3)で表されるビニルシラン化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(4)で表されるアリルシラン化合物としては、具体的には、例えば、3-(トリメチルシリル)-1-プロペン、3-(トリエチルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルエチルシリル)-1-プロペン、3-(トリイソプロピルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルイソプロピルシリル)-1-プロペン、3-(トリノルマルプロピルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルノルマルプロピルシリル)-1-プロペン、3-(トリノルマルブチルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルノルマルブチルシリル)-1-プロペン、3-(トリフェニルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルフェニルシリル)-1-プロペン、2-メチル-3-(トリメチルシリル)-1-プロペン、3-(トリメチルシリル)-2-メチル-1-プロペン、3-(トリフェニルシリル)-2-メチル-1-プロペンなどが挙げられる。
一般式(4)で表されるアリルシラン化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グループトランスファー重合において使用し得る触媒としては、ブレンステッド塩基やルイス塩基等の塩基性触媒として作用するものが好ましく挙げられ、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の無機塩基;トリアルキルアミン、ピリジン等の有機塩基;などが挙げられる。
グループトランスファー重合において使用し得る触媒としては、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルの重合をより一層効率良く行うことができる点で、有機リン化合物、N-ヘテロ環カルベン、フッ素イオン含有化合物、環状アミン化合物、およびアンモニウム塩化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。これらの特定の触媒を使用する場合、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルにおいて、ビニルエーテル基のカチオン重合やビニルエーテルの分解が起こりにくく、(メタ)アクリロイル基のみを選択的により一層効率良く重合させることができる。
上記有機リン化合物としては、例えば、1-tert-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P4-t-BuP4)、1-tert-オクチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P4-tOct)、1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ5,-4λ5-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P2-t-Bu)、1-エチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P2-t-Et)、tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(ホスファゼン塩基P1-t-Bu)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン等のホスファゼン塩基;トリス(2,4,6-トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス(ジメチルアミノホスフィン)、2,8,9-トリイソブチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカン、2,8,9-トリメチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカン、2,8,9-トリイソプロピルー2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカン;などが挙げられる。これらの中でも、塩基性が強く、シリルケテンアセタールを効果的に活性化できる点で、ホスファゼン塩基P4-t-BuP4、2,8,9-トリイソブチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカンが好ましい。
上記N-ヘテロ環カルベンとしては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジエチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-シクロヘキシルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-イソプロピルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ(1-アダマンチル)イミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-メシチルイミダゾール-2-イリデンなどが挙げられる。これらの中でも、シリルケテンアセタールを効果的に活性化できる点で、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-イソプロピルイミダゾール-2-イリデンが好ましい。
上記フッ素イオン含有化合物としては、例えば、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムビフルオリド(TASHF2)、フッ化水素-ピリジン、テトラブチルアンモニウムビフルオリド、フッ化水素カリウムなどが挙げられる。これらの中でも、入手容易である点やシリルケテンアセタールを効果的に活性化できる点で、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)、テトラブチルアンモニウムビフルオリド、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムビフルオリド(TASHF2)が好ましい。
上記環状アミン化合物としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンなどが挙げられる。
上記アンモニウム塩化合物としては、例えば、テトラブチルアンモニウムビスアセテート、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムビスベンゾエート、テトラブチルアンモニウムメタクロロベンゾエート、テトラブチルアンモニウムシアネート、テトラブチルアンモニウムメトキシド、テトラブチルアンモニウムチオレート、テトラブチルアンモニウムビブロマイド、及び、これらのアンモニウム塩化合物のアンモニウムカチオンをテトラメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、N-メチル-N-ブチルピペリジニウム、N-メチル-N-ブチルピロリジニウムカチオンに変えたものやピリジニウムカチオンに変えたものなどが挙げられる。
また、上記の他に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンのような塩基性の強い含窒素複素環化合物も用いることができる。
触媒は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グループトランスファー重合においては、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した成分以外に、任意の適切な他の成分を使用してもよい。このような他の成分としては、例えば、重合反応において通常使用される重合開始剤、連鎖移動剤、重合促進剤、重合禁止剤等の公知の添加剤などが挙げられる。
≪1-3.他の工程≫
本発明の実施形態によるアクリル系ポリマーの製造方法においては、上記重合工程以外の他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、熟成工程、中和工程、重合開始剤や連鎖移動剤の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程などが挙げられる。これらの工程は、公知の方法により行うことができる。
≪≪2.アクリル系ポリマー≫≫
本発明の実施形態による製造方法により得られるアクリル系ポリマーは、アルキレングリコール鎖を介して(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を同一分子内に有するモノマーを用いて得られる、該ビニルエーテル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーである。具体的には、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位であるモノマー単位(後述する一般式(5)で表される構造単位)を必須に含み、必要に応じて、他のモノマー由来のモノマー単位を含む。
アクリル系ポリマーは、数平均分子量が、好ましくは1000~1000000の範囲であり、より好ましくは1000~500000の範囲であり、さらに好ましくは5000~200000の範囲である。アクリル系ポリマーの数平均分子量が上述の範囲であると、粘・接着剤、印刷用インク組成物、レジスト用組成物、コーティング、成形材等各種用途に好適に用いることができる。
本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により求めることができる。
アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が、好ましくは1000~1000000の範囲であり、より好ましくは5000~200000の範囲であり、さらに好ましくは10000~200000の範囲である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量が上述の範囲であると、粘・接着剤、印刷用インク組成物、レジスト用組成物、コーティング、成形材等各種用途に好適に用いることができる。
本明細書において、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により求めることができる。
本発明の実施形態による製造方法により得られるアクリル系ポリマーは、フローリアクターを用いて製造するので、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が非常に狭く、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2.0以下であり、さらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.3以下であり、最も好ましくは1.2以下である。下限値は、通常1.0以上である。このように、本発明の実施形態による製造方法においては、フローリアクターを採用するため、分子量分布が非常に狭いアクリルポリマーを製造可能である。
本発明の実施形態による製造方法により得られるアクリル系ポリマーは、ゲル成分の含有量が、アクリル系ポリマー100質量%に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下である。ゲル成分は、好ましくは酢酸エチル、トルエン、またはテトラヒドロフランに対して不溶な成分であり、25℃での溶解度が、酢酸エチル、トルエン、またはテトラヒドロフラン100gに対して、好ましくは0.5g以下であり、より好ましくは0.1g以下である。不溶分の量は、アクリル系ポリマーの濃度が約33質量%となるように、酢酸エチル、トルエン、またはテトラヒドロフランを加え、室温で充分に攪拌した後、孔径4μmのフィルターに通し、そのフィルター上に残った不溶分の乾燥後の質量を(b)とし、初期のアクリル系ポリマーの質量を(a)とする場合に、(b)/(a)×100より求めることができる。
本発明の実施形態による製造方法により得られるアクリル系ポリマーは、ラジカル硬化性、カチオン硬化性、光硬化性等の特性を有する。また、ビニルエーテル基を起点としラジカル重合やカチオン重合を行うことでグラフトポリマーを得たり、ビニルエーテル基を酸や求電子剤と反応させることで各種官能基を導入することができたりする。本発明の実施形態による製造方法により得られるアクリル系ポリマーは、粘・接着剤、印刷用インク組成物、レジスト用組成物、コーティング、成形材などに好適に使用することができる。
本発明の実施形態による製造方法により得られるアクリル系ポリマーの好ましい形態の一つとして、グループトランスファー重合を採用した場合について説明する。
本発明の実施形態による製造方法を、グループトランスファー重合を採用して行えば、一般式(5)で表される構造単位、および、主鎖に炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物由来の末端基を有するアクリル系ポリマーを容易に効率良く得ることができる。
Figure 0007390201000006
一般式(5)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、RおよびRは、それぞれ、水素原子または有機基を表し、Rは、水素原子または有機基を表し、nは、1以上の整数を表す。
一般式(5)で表される構造単位は、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位であるモノマー単位である。
一般式(5)中の、R、R、R、およびRは、上述した一般式(1)中の、R、R、R、およびRとそれぞれ同じである。
アクリル系ポリマーの全構造単位中の、一般式(5)で表される構造単位の含有割合は、アクリル系ポリマーの使用目的や用途に応じて適宜設計することができる。
アクリル系ポリマーは、一般式(5)で表される構造単位の他に、他の構造単位を有していてもよい。他の構造単位としては、上述の製造方法において記載した他のモノマー由来のモノマー単位が挙げられる。
アクリル系ポリマーの全構造単位中の、他のモノマー由来のモノマー単位の含有割合は、アクリル系ポリマーの使用目的や用途に応じて適宜設計することができる。
アクリル系ポリマーは、主鎖開始末端側に炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物由来の末端基を有することが好ましい。グループトランスファー重合を採用すると、重合開始剤として炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物を使用するので、得られる重合体の片末端はその開始剤由来の構造となる。
炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物由来の末端基としては、例えば、上記シリルケテンアセタール由来の末端基、上記ビニルシラン化合物由来の末端基、上記アリルシラン化合物由来の末端基が挙げられる。
上記シリルケテンアセタール由来の末端基としては、具体的には、下記一般式(6)で表される構造が挙げられる。
Figure 0007390201000007
一般式(6)中、RおよびRは、それぞれ、水素原子または有機基を表し、Rは、有機基を表す。一般式(6)において、R、R、およびRは、一般式(2)中のR、R、およびRとそれぞれ同じである。
上記ビニルシラン化合物由来の末端基としては、具体的には、下記一般式(7)で表される構造が挙げられる。
Figure 0007390201000008
一般式(7)中、R、R、およびR7’は、それぞれ、水素原子または有機基を表す。一般式(7)中、R、R、およびR7’は、一般式(3)中のR、R、およびR7’とそれぞれ同じである。
上記アリルシラン化合物由来の末端基としては、具体的には、下記一般式(8)で表される構造が挙げられる。
Figure 0007390201000009
一般式(8)中、R、R、およびR7’は、それぞれ、水素原子または有機基を表す。一般式(8)中、R、R、およびR7’は、一般式(4)中のR、R、およびR7’とそれぞれ同じである。
アクリル系ポリマーは、さらに、下記一般式(9)で表される末端構造を有することが好ましい。一般式(9)で表される末端構造を有すると、重合体に所望の機能を付与することができる。炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物由来の末端基は、重合体の重合開始側末端に相当し、一般式(9)で表される末端構造は、重合体の重合終了側末端に相当する。
Figure 0007390201000010
一般式(9)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、RおよびRは、それぞれ、水素原子または有機基を表し、Rは、水素原子または有機基を表し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシメチル基、アリル基、またはプロパルギル基を表し、nは、1以上の整数を表す。
一般式(9)中、R、R、R、およびRは、一般式(1)中のR、R、R、およびRとそれぞれ同じである。
一般式(9)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシメチル基、アリル基又はプロパルギル基を表す。アルキル基としては、好ましくは、炭素数1~8のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1~6のアルキル基である。Xは、アクリル系ポリマーの末端基を統一できる点では水素原子であることが好ましく、アクリル系ポリマーに機能を付与しやすい点ではプロパルギル基であることが好ましく、アクリル系ポリマーの安定性を高める点ではアルキル基であることが好ましい。
≪≪3.アクリル系ポリマー組成物≫≫
本発明の実施形態による製造方法により得られるアクリル系ポリマーは、アクリル系ポリマー組成物とすることができる。本発明の実施形態による製造方法によれば、モノマー成分の転化率が非常に高く、残存モノマー量が非常に少ない。このように、本発明の実施形態による製造方法によれば、アクリル系ポリマーを含み、かつ、残存モノマー量が少ないものである。すなわち、本発明の実施形態による製造方法により得られる、アクリル系ポリマーを含み、かつ、残存モノマー量が少ないものは、アクリル系ポリマー組成物となり得る。アクリル系ポリマー組成物は、残存モノマーの含有量が、アクリル系ポリマー100質量%に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%~3質量%である。
残存モノマーの含有量は、例えば、H-NMR、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーなどにより測定することができる。
アクリル系ポリマー組成物は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤、分散剤、酸化防止剤、レベリング剤、無機微粒子、カップリング剤、硬化剤、硬化助剤、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、帯電防止剤、酸発生剤、樹脂、重合性化合物等の1種又は2種以上の任意の成分が挙げられる。これらは、アクリル系ポリマー組成物の使用目的や用途に応じて、公知のものから適宜選択するとよい。また、その使用量も適宜決定することができる。
アクリル系ポリマー組成物は、例えば、粘・接着剤、印刷用インク組成物、レジスト用組成物、コーティング、成形材などに好適に使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
H-NMR測定>
装置:アジレント・テクノロジー社製核磁気共鳴装置(600MHz)
測定溶媒:重クロロホルム
サンプル調製:得られた重合体組成物の数mg~数十mgを測定溶媒に溶解した。
<分子量測定>
得られたポリマーを、テトラヒドロフランで溶解・希釈し、孔径0.45μmのフィルターで濾過したものを、下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置および条件で測定した。
・装置:HLC-8420GPC(東ソー社製)
・溶出溶媒:テトラヒドロフラン
・標準物質:標準ポリスチレン(Varian製)
・分離カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ-M(東ソー社製)を二本連結した。
<フローリアクター>
以下の構成のフローリアクターを用いた。
送液ポンプ:DP-8020(東ソー製)
低温恒温槽:アセトン浴
送液管(原料供給流路):外径1/16インチ、内径0.8mm、長さ200cmのSUSチューブ(GLサイエンス社製)
合流部:T字コネクター(GLサイエンス社製)。原料供給流路をT字コネクターに互いに対向するように接続し残りの接続口を反応液排出口(反応物排出管)として用いた。
反応管:上記T字コネクターの反応液排出口に、外径1/8インチ、内径2.17mm、長さ300cmのSUS316チューブを接続して反応管とした。
排出管:反応管の、T字コネクターに接続されていない側に外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ10cmのSUS316チューブを接続し排出管とした。
〔実施例1〕
〈A液(モノマー/開始剤のテトラヒドロフラン溶液)の準備〉
250mLガラス瓶にメタクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル(以下、「VEEM」と称することがある)(100g)とメチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール(0.87g)を入れ、テトラヒドロフラン(97mL)に溶解させ、モノマー/開始剤の濃度が2.6MのA液を調整した。
〈B液(触媒のテトラヒドロフラン溶液)の準備)
250mLガラス瓶にテトラブチルアンモニウムベンゾエート(Sigma-Aldrich社製、56mg)を入れ、テトラヒドロフラン(154mL)に溶解させ、触媒濃度が0.001MのB液を調整した。
〈アクリル系ポリマーの製造〉
A液(1.0mL/分)、B液(0.5mL/分)を、フローリアクターに備えられた2つの送液管のそれぞれから送液し、T字菅内で混合することにより、グループトランスファー重合を行った。反応管および排出管を通った重合体溶液はメタノールを張ったサンプル瓶に直接投入し、クエンチを行った。クエンチ後の反応溶液を濃縮することにより、アクリル系ポリマー(1)を得た。
得られたアクリル系ポリマー(1)をH-NMRで確認したところ、ビニルエーテル由来のピークを確認し、積分値からビニルエーテル基がすべて残存していることが分かった。
得られたアクリル系ポリマー(1)の重量平均分子量は33931、数平均分子量は25748であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.32であった。
〔比較例1〕
50mLのシュレンクフラスコに、VEEM(4.0g,20mmol)とメチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール(41μL、0.2mmol)を入れ、テトラヒドロフラン(8mL)に溶解させ、モノマー/開始剤の濃度が1.7MのA液を調整した。これを窒素気流下、室温で攪拌しながら、テトラブチルアンモニウムベンゾエート(0.1Mテトラヒドロフラン溶液、20μL)を一括で投入した。滴下直後、20℃であった内温は急激に上昇し、約3分後には49℃に到達した。室温で5時間攪拌した後、メタノールでクエンチし、反応溶液を濃縮することで、アクリル系ポリマー(C1)を得た。
得られたアクリル系ポリマー(C1)をH-NMRで確認したところ、ビニルエーテル由来のピークを確認し、積分値からビニルエーテル基がすべて残存していることが分かった。
得られたアクリル系ポリマー(C1)の重量平均分子量は42259、数平均分子量は24776であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.71であった。
本発明の製造方法で得られるアクリル系ポリマーは、反応性官能基を側鎖に有し、その官能基を起点にした変換反応による新たな官能基の導入やグラフト化によって様々な機能をベースポリマーに付与することができ、また、架橋剤との反応により硬化物を与えることから、塗料やコーティング、粘・接着剤等様々な用途に用いられ、産業上の利用可能性が高い。
フローリアクター 1
恒温装置 2
2液混合用ミキサー 20
ジョイント部材の本体 21
内管 22
ミキサー部材 23
管状流路 30c
反応物排出管 30d
第1の液体送液用のポンプ 41a
第2の液体送液用のポンプ 41b
送液管 42a
送液管 42b
フローリアクター 1000
送液管 100
送液管 200
送液管 300
反応管 400
反応物排出管 500
導入口 I
導入口 II
導入口 III
合流部 C1
合流部 C2
恒温装置 R1


Claims (1)

  1. アルキレングリコール鎖を介して(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を同一分子内に有するモノマーを用いて該ビニルエーテル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーを製造する方法であって、
    一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を、フローリアクターを用いてグループトランスファー重合する重合工程を含み、
    前記フローリアクターは、2液混合用ミキサーを少なくとも1個備えており、さらに前記2液混合用ミキサーには、第1の液体を送液するための送液管と、第2の液体を送液するための送液管とが少なくとも接続されており、下記の態様のいずれかによって前記第1の液体および前記第2の液体が前記フローリアクター内に導入される、アクリル系ポリマーの製造方法。
    (i)前記第1の液体は、モノマー成分と重合開始剤とを含み、前記第1の液体を送液するための送液管によって導入され、前記第2の液体は、触媒を含み、前記第2の液体を送液するための送液管によって導入される態様。
    (ii)前記第1の液体は、モノマー成分と触媒とを含み、前記第1の液体を送液するための送液管によって導入され、前記第2の液体は、重合開始剤を含み、前記第2の液体を送液するための送液管によって導入される態様。
    (iii)前記2液混合用ミキサーには、前記第1の液体を送液するための送液管および前記第2の液体を送液するための送液管とは異なる送液管が、さらに接続されており、モノマー成分、触媒、重合開始剤が、それぞれ別々の送液管によって導入される態様。
    Figure 0007390201000011
    (一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2およびR3は、それぞれ、水素原子または有機基を表し、R4は、水素原子または有機基を表し、nは、1以上の整数を表す。)
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