JP7389146B2 - 回転子、電動機、圧縮機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 - Google Patents

回転子、電動機、圧縮機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 Download PDF

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Description

本開示は、回転子、電動機、圧縮機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置に関する。
冷媒を圧縮する圧縮機構部と、圧縮機構部を駆動する電動機とを有する圧縮機が普及している。例えば、特許文献1を参照。特許文献1では、電動機の回転子は、回転子鉄心と、回転子鉄心の磁石挿入孔に挿入された永久磁石とを有する。
特許第5661903号公報(例えば、段落0023、図24参照)
しかしながら、圧縮機の電動機は、高温の冷媒の雰囲気中に配置されるため、回転子の磁石挿入孔内の永久磁石において、不可逆減磁が発生する場合があった。
本開示は、回転子の永久磁石の不可逆減磁の発生を防止することを目的とする。
本開示の一態様に係る回転子は、冷媒を圧縮する圧縮機構部を駆動する電動機において、前記冷媒の雰囲気中に配置される回転子であって、複数の結晶粒を含む、ネオジウム希土類磁石である永久磁石を有し、前記複数の結晶粒の平均結晶粒径は、1.6μm~12μmであり、前記冷媒はR454A及びR454Cのいずれか1つ以上を含み、前記永久磁石におけるジスプロシウムの含有率及び前記永久磁石におけるテレビウムの含有率は、0重量%である。
本開示の他の態様に係る回転子は、冷媒を圧縮する圧縮機構部を駆動する電動機において、前記冷媒の雰囲気中に配置される回転子であって、複数の結晶粒を含む、ネオジウム希土類磁石である永久磁石を有し、前記複数の結晶粒の平均結晶粒径は、2.0μm~9.9μmであり、前記冷媒は、R454B、R466A及びR463Aのいずれか1つ以上を含み、前記永久磁石におけるジスプロシウムの含有率及び前記永久磁石におけるテレビウムの含有率は、0重量%である。
また、本開示のさらに他の態様に係る回転子は、冷媒を圧縮する圧縮機構部を駆動する電動機において、前記冷媒の雰囲気中に配置される回転子を備える圧縮機であって、複数の結晶粒を含む、ネオジウム希土類磁石である永久磁石を有し、前記複数の結晶粒の平均結晶粒径は、1.6μm~12μmであり、前記冷媒は、R290を含み、前記永久磁石におけるジスプロシウムの含有率及び前記永久磁石におけるテレビウムの含有率は、0重量%である回転子と、固定子とを有する電動機と、前記電動機によって駆動される前記圧縮機構部と、前記電動機及び前記圧縮機構部を収容する容器と、前記容器内を通過する前記冷媒と、前記容器内に貯留された潤滑油と、を有し、前記冷媒の比誘電率は、前記潤滑油の比誘電率よりも小さい。
本開示によれば、回転子の永久磁石の不可逆減磁の発生を防止することができる。
実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の構成を示す図である。 実施の形態1に係る圧縮機の構成を示す断面図である。 実施の形態1に係る電動機の構成を示す断面図である。 実施の形態1に係る電動機の回転子の永久磁石の多結晶組織を示す模式図である。 実施の形態1に係る回転子の永久磁石の結晶粒の平均結晶粒径と保磁力との関係を示すグラフである。 実施の形態1に係る回転子の永久磁石の製造工程を示すフローチャートである。 永久磁石のジスプロシウム含有率と残留磁束密度との関係、及びジスプロシウム含有率と保磁力との関係を示すグラフである。 実施の形態1に係る回転子の永久磁石の減磁曲線、及び比較例に係る永久磁石の減磁曲線を示す図である。 実施の形態1に係る電動機を駆動する電動機駆動装置の構成を示す図である。 実施の形態1に係る空気調和装置の構成を示す図である。 実施の形態2に係る回転子の永久磁石の結晶粒の平均結晶粒径と保磁力との関係を示すグラフである。
以下に、実施の形態に係る回転子、電動機、圧縮機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、実施の形態を適宜組み合わせること及び各実施の形態を適宜変更することが可能である。
また、本明細書では、「冷媒」の種類を国際標準ISO817で定められた“R”で始まる冷媒番号を用いて説明する。
《実施の形態1》
〈冷凍サイクル装置〉
図1は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100の構成を示す図である。図1に示されるように、冷凍サイクル装置100は、圧縮機10と、アキュムレータ15と、凝縮器101と、減圧装置としての膨張弁102と、蒸発器103とを有する。圧縮機10、アキュムレータ15、凝縮器101、膨張弁102、及び蒸発器103が配管110によって接続されることによって、冷媒回路120が構成されている。冷媒回路120では、アキュムレータ15に貯留されている冷媒20が循環する。
次に、冷凍サイクル装置100の動作について、説明する。圧縮機10は、アキュムレータ15から吸入した冷媒20を圧縮して高温高圧の冷媒ガスとして送り出す。凝縮器101は、圧縮機10から送り出された冷媒ガスと媒体(例えば、空気)との熱交換を行い、冷媒ガスを凝縮して液冷媒として送り出す。膨張弁102は、凝縮器101から送り出された液冷媒を膨張させて、低温低圧の液冷媒として送り出す。蒸発器103は、膨張弁102から送り出された低温低圧の液冷媒と媒体(例えば、空気)との熱交換を行い、液冷媒を蒸発させて、冷媒ガスとして送り出す。蒸発器103から送り出された冷媒ガスは、アキュムレータ15を介して、再び圧縮機10に戻って圧縮される。このように、冷媒20は、図1中における矢印で示される経路に沿って、冷媒回路120を循環する。つまり、冷媒回路120では、圧縮機10、凝縮器101、膨張弁102、及び蒸発器103の順に冷媒20が循環する。
冷媒20は、例えば、炭化水素で構成される。実施の形態1では、冷媒20は、R290(つまり、プロパン)である。冷媒20がR290であることによって、他の冷媒(例えば、R32)と比べて、圧縮機10から吐出される冷媒20の温度(以下、「吐出温度」ともいう)の最大値を低減させることができる。実施の形態1では、冷媒20の吐出温度の最大値は、100℃以下ある。具体的には、冷媒20の吐出温度の最大値は、95℃である。
また、R290の比誘電率は、1.6~1.9であり、他の冷媒の比誘電率(例えば、R32の比誘電率は13)よりも小さい。よって、冷媒20としてR290が用いられることによって、圧縮機10内部における比誘電率が小さくなり、漏洩電流が抑制される。また、R290の地球温暖化係数は、R32の地球温暖化係数よりも小さい。
〈圧縮機の構成〉
次に、実施の形態1に係る圧縮機10の構成について説明する。図2は、実施の形態1に係る圧縮機10の構成を示す断面図である。圧縮機10は、例えば、ロータリ圧縮機である。圧縮機10は、冷媒20を圧縮する圧縮機構部2と、圧縮機構部2を駆動する電動機6とを備える。圧縮機構部2と電動機6とは、回転軸7によって連結されている。なお、以下の説明では、回転軸7に平行な方向を「軸方向」、軸方向に直交する方向を「径方向」又は「幅方向」、及び回転軸7を中心とする円の円周に沿った方向を「周方向」と呼ぶ。
圧縮機構部2は、シリンダ21と、ロータリピストン23と、上側フレーム24と、下側フレーム25とを有する。シリンダ21は、回転軸7を中心とする円筒状のシリンダ室22を有する。シリンダ室22には、回転軸7の偏心軸部8が位置している。ロータリピストン23は、偏心軸部8に連結されている。
シリンダ21は、吸入管31を介してアキュムレータ15と接続される吸入口29を更に有する。吸入口29は、アキュムレータ15から供給される冷媒20が流れる通路である。
上側フレーム24は、シリンダ室22の上側端部を閉鎖する。下側フレーム25は、シリンダ室22の下側端部を閉鎖する。つまり、シリンダ室22は、上側フレーム24と下側フレーム25との間の空間である。
圧縮機構部2及び電動機6は、容器としての密閉容器30内に収容されている。密閉容器30は、例えば、円筒状である。
圧縮機10は、密閉容器30内を通過する冷媒20と、密閉容器30内に貯留された冷凍機油18とを更に有する。冷凍機油18は、密閉容器30の下部に貯留されている。冷凍機油18は、圧縮機構部2と回転軸7との間を潤滑する潤滑油である。実施の形態1では、冷凍機油18は、合成油である。冷凍機油18は、例えば、ポリアルキレングリコール油(以下、「PAG油」ともいう)である。
PAG油の密度は、0.96g/cm~1.02g/cmである。ここで、上述した冷媒20の一例であるR290の密度は、0.37g/cm~0.59g/cmである。つまり、実施の形態1では、冷凍機油18の密度は、冷媒20の密度よりも大きい。そのため、実施の形態1では、密閉容器30の下部に冷凍機油18の油リッチ層、密閉容器30の上部に冷媒20の冷媒リッチ層が配置される。なお、冷凍機油18は、PAG油に限定されず、ポリオールエステル油、ポリビニルエーテル油、アルキルベンゼン油などの他の合成油であってもよい。また、冷凍機油18としては、冷媒20が溶解した場合でも圧縮機10を十分に潤滑でき、かつ、圧縮機10の効率を低減させない粘度を有する油が選択されることが望ましい。例えば、40℃における基油の動粘度が、5cSt~300cSt程度であることが望ましい。また、冷凍機油18には、難燃剤が含有されてもよい。これにより、冷凍機油18の燃焼反応を効果的に抑制することができる。難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、又はこれらを組み合わせたものが好ましい。
密閉容器30の下部に貯留された冷凍機油18には、冷媒20の一部が溶解している。ここで、冷凍機油18として用いられるPAG油は、プロピレン・オキサイドとエチレン・オキサイドとの共重合体である。プロピレン・オキサイドとエチレン・オキサイドとの共重合比率が調整されることによって、PAG油中におけるR290の相溶性が調整され、R290とPAG油とが二層に分離される。その結果、PAG油中に溶解しているR290による希釈化が防止されるため、十分に大きい粘度を有するPAG油によって、圧縮機構部2を潤滑することができる。また、PAG油の密度は、R290の密度よりも大きいため、PAG油中におけるR290の溶解性を低減させることができる。
冷凍機油18は、回転軸7の内部を通って圧縮機構部2に供給される。回転軸7の内部には、軸方向に延びる第1の給油通路7aと、第1の給油通路7aから径方向に分岐した複数の第2の給油通路7b,7c,7d,7eとが形成されている。第1の給油通路7aは、回転軸7の下端から電動機6本体(すなわち、図2における上方)に向かって延びている。冷凍機油18は第2の給油通路7b,7c,7d,7eから圧縮機構部2と回転軸7とが摺動している部分に供給される。
電動機6は、例えば、ブラシレスDCモータである。電動機6は、冷媒20が流れる方向において、圧縮機構部2よりも下流側に配置されている。なお、電動機6の構成については、後述する。
圧縮機10は、密閉容器30の上部に取り付けられた吐出管35と端子36とを更に有する。吐出管35は、圧縮機構部2によって圧縮された冷媒20を密閉容器30の外部に吐出する。電動機6には、後述する駆動回路(図9における電動機駆動装置60)から端子36を介して駆動電流が供給される。
〈圧縮機の動作〉
次に、圧縮機10の動作について説明する。端子36から電動機6に駆動電流が供給されることによって、電動機6の回転子4が回転する。回転子4の回転に伴い、回転軸7が回転し、回転軸7の偏心軸部8に連結されているロータリピストン23も回転する。
アキュムレータ15に貯留されている低温低圧の冷媒ガスは、吸入管31、及び吸入口29を通過してシリンダ室22に吸入される。吸入された低温低圧の冷媒ガスは、ロータリピストン23の回転によって圧縮される。圧縮された低温低圧の冷媒ガスは高温高圧の冷媒ガスとなって、電動機6側に向けて上昇する。これにより、電動機6の周囲は、高温高圧のガス冷媒によって覆われる。その後、高温高圧の冷媒ガスは、電動機6における空間(例えば、後述する固定子5と回転子4との間、図3に示される固定子5の凹部51b、及び回転子4における貫通穴など)を通過した後、吐出管35から吐出され、図1に示される凝縮器101に流入する。
高温高圧の冷媒ガスが吐出管35から吐出されるとき、少量の冷凍機油18も吐出管35から吐出される。圧縮機10がロータリ圧縮機である場合、吐出管35から吐出される冷凍機油18の量は、例えば、密閉容器30内で貯留されている冷凍機油18の量の2.0%以下である。ここで、冷凍機油18がPAG油であるとき、PAG油は、液冷媒を2.0%以上溶解可能である。そのため、吐出管35から吐出されたPAG油は、凝縮器101において、液冷媒と分離せずに凝縮され、膨張弁102に送り出される。
図1に示される膨張弁102において、液冷媒は、上述の通り減圧されて気液二相状態となり、少量のPAG油とともに蒸発器103に移動する。蒸発器103において、PAG油は液相中に溶解している状態である。蒸発器103内で液冷媒は気化される。液冷媒の気化に伴い、PAG油は徐々に析出する。液冷媒がガス化されたときに、冷媒とPAG油は分離した状態となる。なお、低圧空間における油中への冷媒の溶解量が少ない場合、油の粘度は増加する傾向にある。実施の形態1では、PAG油を構成する基油の粘度グレードが低く設定されているため(例えば、粘度グレードISO VG32~68程度)、PAG油は粘度を増加させることなく冷媒20と移動し、圧縮機10に戻ることができる。
なお、圧縮機10は、高圧シェル型圧縮機の一例であるロータリ圧縮機に限らず、低圧圧縮機又はスクロール圧縮機であってもよい。
〈電動機の構成〉
図3は、実施の形態1に係る電動機6の構成を示す断面図である。電動機6は、固定子5と、固定子5の内側に回転可能に配置された回転子4とを有する。つまり、電動機6は、インナーロータ型と呼ばれる電動機である。固定子5と回転子4との間には、例えば0.3mm~1.0mmの隙間が形成されている。
〈固定子の構成〉
固定子5は、固定子鉄心50と、固定子鉄心50に巻き付けられたコイル55とを有する。固定子鉄心50は、図2に示される圧縮機10の密閉容器30に、焼き嵌め、圧入又は溶接等によって組み込まれる。
固定子鉄心50は、例えば、複数の分割鉄心5Aが周方向に連結されることによって構成されている。分割鉄心5Aは、ヨーク部51と、ヨーク部51から径方向内側に延びるティース部52とを有する。ヨーク部51は、その周方向外側の端部に連結部51aを有する。周方向に隣接する複数の分割鉄心5Aは、連結部51aを介して連結されている。なお、固定子5は、複数の分割鉄心5Aが連結される構成に限らず、単一の環状のコアによって構成されてもよい。
複数のヨーク部51が互いに連結されることによって、環状のヨーク本体が形成される。複数のティース部52は、周方向に一定間隔で配置される。図3では、ティース部52の数は、9つである。なお、ティース部52の数は9つに限定されず、2つ以上あればよい。
周方向に隣接する複数のティース部52の間には、コイル55を収容する空間であるスロット53が形成されている。コイル55は、絶縁性を維持するために、被覆材によって絶縁される。被覆材として、例えば、コイル55の内側にポリエステル(PE)、コイル55の外側にポリアミド(PA)が用いられてもよい。また、コイル55の内側に、変性ポリエステル又はポリエステルイミド(PEI)が用いられ、コイル55の外側に変性ポリアミド又はポリアミドイミド(PAI)が用いられてもよい。更に、コイル55の内側及び外側にPAIが用いられてもよい。このような絶縁材が用いられることによって、図1に示される冷凍機油18が加水分解することによって酸が発生した場合でも、コイル55の絶縁性を維持することができる。
ヨーク部51は、その外周面に径方向外側から内側に向けて凹む凹部51bを更に有する。分割鉄心5Aは、軸方向に積層された複数の電磁鋼板によって構成されている。複数の電磁鋼板は、ヨーク部51の複数のカシメ部57及びティース部52のカシメ部58によって、固定されている。1枚の電磁鋼板の板厚は、例えば、0.1mm~0.5mmである。実施の形態1では、分割鉄心5Aを構成する1枚の電磁鋼板の板厚は、0.25mmである。なお、固定子5では回転子4よりも鉄損が大きくなり易いため、板厚が薄い電磁鋼板が用いられることが望ましい。そのため、分割鉄心5Aを構成する1枚の電磁鋼板の板厚は、後述する回転子鉄心40を構成する1枚電磁鋼板の板厚よりも薄いことが望ましい。これにより、固定子5の鉄損が大きくなり難くいため、固定子5における温度上昇を抑制することができる。
固定子鉄心50とコイル55との間には、樹脂製の絶縁部(図示せず)が配置されていてもよい。絶縁部は、樹脂の成形体を固定子鉄心50に取り付ける、又は固定子鉄心50と一体成形することによって、形成される。絶縁部は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂によって構成される。なお、絶縁部には、強度を上げるために、10%~60%のガラス繊維が含まれていてもよい。更に、絶縁部には、樹脂として、オリゴマー含有率が1.5重量%以下であるオリゴマーが用いられる。これにより、冷媒回路120を循環する冷媒20又は冷凍機油18にオリゴマーが溶出することが抑制され、オリゴマーが配管110内に詰まることを防止できる。よって、冷媒20と冷凍機油18との適合性に優れ、オリゴマーの抽出が少ない固定子5を有する電動機6を提供することができる。また、この電動機6を有する圧縮機10が冷凍サイクル装置100に用いられることによって、信頼性の高い冷凍サイクル装置100を提供することができる。
〈回転子の構成〉
次に、実施の形態1に係る回転子4の構成について説明する。回転子4は、回転子鉄心40と、回転子鉄心40に取り付けられた永久磁石45とを有する。回転子鉄心40は、軸方向に積層された複数の電磁鋼板によって構成されている。1枚の電磁鋼板の板厚は、例えば、0.1mm~0.7mmである。実施の形態1では、回転子4を構成する1枚の電磁鋼板の板厚は、0.35mmである。
ここで、図2に示されるように、回転子鉄心40の軸方向長さ(つまり、回転子鉄心40の積厚)をL、密閉容器30の内部空間Vの幅方向の寸法(つまり、内径)をDとしたとき、密閉容器30の寸法Dに対する回転子鉄心40の軸方向長さLの比L/Dは、以下の式(1)を満たす。
0.2≦L/D≦1.1 (1)
比L/Dが式(1)の上限値1.1以下であることにより、回転子4の上端部と端子36との間に十分に大きな空間体積が確保されるため、圧縮機10から吐出される冷媒20の体積流量を多くすることができる。また、比L/Dが式(1)の下限値0.2以上であることにより、圧縮機構部2を駆動させるために必要な電動機6のトルクを発生させることもできる。
回転子鉄心40は、回転軸7が固定される軸孔44を有する。軸孔44には回転軸7が、焼き嵌め、圧入又は接着等によって固定されている。回転子鉄心40の外周には、回転子4の剛性を高めるために、円筒状の保持部46が固定されている。保持部46は、接着剤、圧入、焼き嵌め、又は冷やし嵌めによって回転子鉄心40の外周に固定されている。保持部46は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ステンレス鋼及び樹脂のいずれか1つの材料によって形成されている。
図3に示されるように、回転子鉄心40は、永久磁石45が挿入される磁石挿入孔41を有する。実施の形態1では、回転子鉄心40は、複数(図3では、6つ)の磁石挿入孔41を有する。1つの磁石挿入孔41は、1つの磁極に相当する。上述した固定子5におけるスロット53の数は、9つであるため、電動機6における極数とスロット数との組み合わせは、6極9スロットである。なお、磁石挿入孔41の数は、6つに限らず、2つ以上あればよい。
図3に示されるように、1つの磁石挿入孔41は、例えば、軸方向上側から見たときに、V字状に形成されている。また、磁石挿入孔41の周方向両端部には、漏れ磁束抑制穴としてのフラックスバリア42が形成されている。フラックスバリア42と回転子鉄心40の外周との間の部分は薄肉部であるため、隣り合う磁極間における漏れ磁束が抑制される。なお、磁石挿入孔41の形状は、V字状に限られない。
実施の形態1では、1つの磁石挿入孔41には、例えば、2つの永久磁石45が挿入されている。永久磁石45が磁石挿入孔41から脱落することを防止するために、回転子4の軸方向両端部には、図2に示される端板47,48がそれぞれ固定されている。なお、1つの磁石挿入孔41には、少なくとも1つの永久磁石45が挿入されていればよい。また、端板47,48には、回転子4の回転バランスを向上させるためのバランスウェイト(図示せず)が備えられていてもよい。
永久磁石45は、例えば、板状である。実施の形態1では、永久磁石45は、平板状である。永久磁石45は、平面視で、長方形状である。永久磁石45の厚さは、例えば、固定子5と回転子4との間の隙間の2.5倍以上である。永久磁石45の厚さは、例えば、2.0mmである。永久磁石45の軸方向長さは、例えば、回転子鉄心40の軸方向長さLよりもやや小さい。これにより、磁石挿入孔41への永久磁石45の実装を容易にしつつ十分に大きな磁力を確保することができる。その結果、電動機6は、圧縮機構部2を駆動させるために必要なトルクを発生させつつ、密閉容器30に流れる漏洩電流も抑制することができる。
1つの磁石挿入孔41に挿入された2つの永久磁石45は、外側に同一の磁極を有する。例えば、永久磁石45の外側がN極であり、内側がS極である。また、磁石挿入孔41に挿入された永久磁石45は、隣接する磁石挿入孔41に挿入された永久磁石45と異なる磁極を有する。例えば、隣接する磁石挿入孔41に挿入された永久磁石45の外側がS極であり、内側がN極である。
図4は、永久磁石45の多結晶組織を示す模式図である。図4に示されるように、永久磁石45は、複数の結晶粒45aによって構成される多結晶組織を有する。複数の結晶粒45aの間は、粒界相45bによって隔てられている。複数の結晶粒45aのそれぞれは、磁化されている。複数の結晶粒45aのそれぞれが、同じ方向に磁化されていることにより、永久磁石45は一方向に磁束を発生させる。実施の形態1では、永久磁石45の短手方向に磁束が発生する。結晶粒45a及び粒界相45bは、ネオジウム(Nd)、鉄(Fe)及びボロン(B)を含む。つまり、永久磁石45は、ネオジウム希土類磁石によって構成されている。
実施の形態1では、永久磁石45は、ジスプロシウム(Dy)を含まない。また、実施の形態1では、永久磁石45は、テレビウム(Tr)も含まない。つまり、実施の形態1では、永久磁石45におけるDyの含有率(以下、「Dy含有率」という)、及び永久磁石45におけるTrの含有率(以下、「Tr含有率」という)は、0重量%である。Dy及びTrはレアアース資源であるため、高価である。実施の形態1では、永久磁石45におけるDy含有率、及び永久磁石45におけるTr含有率は、0重量%であるため、永久磁石45のコストを下げることができる。なお、永久磁石45は、0.1重量%未満のDy、又は0.1重量%未満のTr、又はこれらの両方を含有していてもよい。
実施の形態1では、永久磁石45の複数の結晶粒45aの平均径(以下、「平均結晶粒径」という)は、1.6μm~12μmである。
次に、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径の測定方法の一例について説明する。まず、永久磁石45の断面を研磨することによって鏡面に加工した後に、腐食液を用いて粒界相45bをエッチングする。そして、光学顕微鏡によって、粒界相45bがエッチングされた断面を数百倍から2000倍までの範囲内の倍率に拡大して観察し、観察画像を取得する。その後、画像処理等の手法によって、観察画像から結晶粒45aの断面積を測定する。そして、測定された断面積と同じ面積を有する円の直径である円相当径を、結晶粒45aの粒径として算出する。永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径は、複数の結晶粒45aの円相当径の平均値である。なお、結晶粒45aの大きさのばらつきを考慮して、光学顕微鏡による観察の際に、永久磁石45における複数の断面が選定されてもよい。また、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径は、観察画像において、複数の結晶粒45aのそれぞれが占める面積の割合に基づいて算出されてもよい。
図5は、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径と永久磁石45の保磁力との関係を示すグラフである。図5において、横軸は、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径[μm]を対数目盛によって示し、縦軸は、永久磁石45の保磁力[kA/m]を示す。図5において、保磁力H1は、電動機6が100℃以下の冷媒20の雰囲気中に配置された場合であっても、永久磁石45に不可逆減磁を発生させない保磁力(つまり、減磁耐力)である。保磁力H1は、例えば、実験により求められる。実施の形態1では、永久磁石45の保磁力を保磁力H1以上にするために、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径を、1.6μm~12μmの範囲R1内にしている。言い換えれば、永久磁石45が保磁力H1以上の保磁力を有するために、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径のばらつきは、範囲R1内で許容される。
次に、永久磁石45の製造方法について説明する。図6は、永久磁石45の製造工程の一例を示すフローチャートである。まず、ステップST1において、Nd、Fe、及びBを含む磁石材料が、真空溶解炉で溶解され、その後、鋳型に流し込まれることによってインゴットが作製される。
ステップST2において、窒素ガス又はヘリウムガスなどの不活性ガスの雰囲気中で、インゴットがジェットミルによって粉砕されることによって、平均粒径が1.6μm~12μmである微粉が作製される。
ステップST3において、微粉は、磁場をかけた金型内で行う磁場成型プレスによって、予め定められた形状に成型される。これにより、磁気配向された成型体が作製される。
ステップST4において、成型体は、真空焼結炉において、熱処理されることによって、焼き固められる。これにより、焼結体が作製される。
ステップST5において、焼結体が追加工(例えば、表面処理、及び寸法調整など)されることによって、永久磁石45の製造が終了する。
なお、ステップST3において、微粉を磁場成型プレスするのではなく、容器内で磁気配向を行うプレスレス方法が採用されてもよい。プレスレス法では、磁気配向時に、微粉が容器内で自由に回転し、磁気配向度が高められるため、永久磁石45の保磁力を更に高めることができる。
次に、永久磁石45の保磁力と残留磁束密度との関係について説明する。一般的に、永久磁石の保磁力は、温度上昇により低下する。一般的に、高温(例えば、130℃程度)の冷媒の雰囲気中に電動機が配置された場合、回転子の永久磁石の保磁力は低下する。例えば、永久磁石の保磁力は、温度が上昇するにつれて、約0.55%/ΔKの割合で低下する。この場合、高温時における永久磁石の保磁力は、常温(例えば、20℃)時における永久磁石の保磁力よりも、60.5%低下する。保磁力の低下を抑制するため、永久磁石に重希土類元素であるDy又はTrが添加される場合があるが、Dy又はTrの添加により、残留磁束密度が低下する。
また、一般的に、永久磁石の残留磁束密度(つまり、磁力)は、温度上昇により低下する。一般的に、高温(例えば、130℃程度)の冷媒の雰囲気中に電動機が配置された場合、回転子の永久磁石の残留磁束密度は低下する。例えば、永久磁石の残留磁束密度は、温度が上昇するにつれて、約0.12%/ΔKの割合で低下する。この場合、高温時における永久磁石の残留磁束密度は、常温(例えば、20℃)時における永久磁石の残留磁束密度よりも、13.2%低下する。残留磁束密度の低下を抑制するためには、永久磁石の体積を増加させる必要があった。
図7は、永久磁石に含有されるDy含有率と保磁力との関係、及びDy含有率と残留磁束密度との関係を示すグラフである。図7において、横軸は、Dy含有率[重量%]を示し、右側の縦軸は、残留磁束密度[T]を示し、左側の縦軸は、保磁力[kA/m]を示す。また、図7において、永久磁石は、ネオジウム希土類磁石である。
図7に示されるように、永久磁石の保磁力は、Dy含有率に比例して増加する。一方、永久磁石の磁力の大きさを表す残留磁束密度は、Dy含有率に比例して減少する。つまり、永久磁石に不可逆減磁を発生させない十分に大きい保磁力を確保するためには、Dy含有率を大きくすることが望ましい。一方で、電動機の出力及び効率を向上させる十分に大きい残留磁束密度を確保するためには、Dy含有率を小さくすることが望ましい。このように、永久磁石において、保磁力及び残留磁束密度の両方を十分に大きくすることは困難であった。また、Dyは高価であるため、永久磁石のコストを増加させていた。
実施の形態1では、上述した通り、永久磁石45におけるDy含有率は0重量%である。そのため、永久磁石45では、十分に大きい残留磁束密度が確保されている。永久磁石45の保磁力については、上述した通り、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径が1.6μm~12μmであることによって、永久磁石45におけるDy含有率が0重量%であっても、永久磁石45は、図5に示される保磁力H1以上の保磁力を有する。つまり、実施の形態1では、永久磁石45は、保磁力及び残留磁束密度の両方を十分に大きくすることができる。
次に、実施の形態1に係る回転子4の永久磁石45の保磁力及び残留磁束密度について、比較例に係る永久磁石と対比しながら説明する。比較例に係る永久磁石の平均結晶粒径は、例えば、20μm~30μmである。図8は、実施の形態1に係る永久磁石45の減磁曲線C1と比較例に係る永久磁石の減磁曲線C2を示す図である。減磁曲線C2は、比較例に係る永久磁石を有する回転子を備えた電動機が、130℃の冷媒の雰囲気中に配置されたときの永久磁石の減磁曲線である。図8において、横軸は、保磁力[kA/m]を示し、縦軸は、残留磁束密度[T]を示す。図8では、横軸の左側ほど保磁力が大きいことが示され、及び縦軸の上側ほど残留磁束密度が大きいことが示されている。
図8に示される減磁曲線C1及びC2からわかるように、実施の形態1に係る永久磁石45の保磁力及び残留磁束密度は、比較例に係る永久磁石の保磁力及び残留磁束密度よりもそれぞれ大きい。つまり、実施の形態1では、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径が1.6μm~12μmであることによって、永久磁石45の保磁力を比較例に係る永久磁石の保磁力よりも大きくすることができる。また、実施の形態1では、永久磁石45におけるDy含有率が0重量%であることによって、永久磁石45の残留磁束密度を比較例に係る永久磁石の残留磁束密度よりも大きくすることができる。
また、実施の形態1では、圧縮機10において、冷媒20としてR290が用いられることによって、電動機6が配置される冷媒20の雰囲気温度の上限値が100℃以下(具体的には、95℃)に抑えられるため、実施の形態1に係る永久磁石45の保磁力及び残留磁束密度を、比較例に係る永久磁石の保磁力及び残留磁束密度よりもそれぞれ大きくすることができる。
〈電動機駆動装置の構成〉
次に、実施の形態1に係る電動機6を駆動する駆動回路としての電動機駆動装置60について説明する。図9は、電動機駆動装置60の構成を示す図である。
電動機駆動装置60は、コンバータ70と、インバータ80と、電源電圧検出部61と、直流電圧検出部62と、制御装置65とを有する。コンバータ70は、外部電源としての商用交流電源11から供給される交流電圧を直流電圧に変換する。コンバータ70は、整流器70aを有する。整流器70aは、リアクタ63を介して商用交流電源11に接続されている。小型のリアクタ63が用いられることによって、電動機駆動装置60は電動機6に容易に実装される。
整流器70aは、複数のスイッチング素子71a,71bと、第1のダイオード72aと、第2のダイオード72bとを有する。スイッチング素子71a,71bは、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。なお、スイッチング素子71a,71bは、MOSFETに限定されず、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、又は窒化ガリウム(GaN)を用いたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他のトランジスタであってもよい。
第1のダイオード72aのアノード側と第2のダイオード72bのカソード側とが接続されることによって、第1のダイオード72a及び第2のダイオード72bによる直列回路が構成されている。第1のダイオード72aと第2のダイオード72bとの接続点は、整流器70aの入力端である。また、第1のダイオード72aと第2のダイオード72bとの直列回路の両端はそれぞれ、整流器70aの出力端である。
コンバータ70は、整流器70aから出力される直流電圧を平滑する平滑コンデンサ73a,73bを更に有していてもよい。
コンバータ70から出力される直流電圧の最大値は、商用交流電源11の電圧のピーク値よりも大きい。コンバータ70から出力される直流電圧の最大値の平均値をVdcmax、商用交流電源11の電圧のピーク値をVとしたとき、Vに対するVdcmaxの比Vdcmax/Vは、以下の式(2)を満たす。
1.2≦Vdcmax/V≦2.0 (2)
比Vdcmax/Vが式(2)の下限値1.2以上であることにより、圧縮機構部2(図2参照)を駆動させるために必要な電動機6への供給電圧を発生させることができる。また、比Vdcmax/Vが式(2)の上限値2.0以下であることにより、電動機6から密閉容器30に流れる漏洩電流を抑制することができる。
また、コンバータ70から出力される電圧の電圧値に対応して、電動機6の固定子5のコイル55の巻数が設定される。コイル55の巻数は、同一回転数において、無負荷誘起電圧のピーク値がコンバータ70から出力される直流電圧の平均値よりも大きくなるように設定される。無負荷誘起電圧のピーク値をV、コンバータ70から出力される直流電圧の平均値をVdcとしたとき、Vdcに対するVの比V/Vdcは、以下の式(3)を満たす。
1.1≦V/Vdc≦2.5 (3)
比V/Vdcが式(3)の下限値1.1以上であることにより、コンバータ70の整流器70aにおけるスイッチング動作を合わせることによって、電動機6を低速運転から高速運転まで高効率で駆動させることができる。また、比V/Vdcが式(3)の上限値2.5以下であることにより、電動機6から密閉容器30に流れる漏洩電流を抑制することができる。
インバータ80は、コンバータ70に接続されている。インバータ80は、コンバータ70から供給される直流電圧を所望の高周波電圧に変換して、電動機6に出力する。インバータ80は、複数(図7では、6つ)のインバータスイッチ81a~81fと、複数(図7では、6つ)のフライホイルダイオード82a~82fとを有する。
インバータスイッチ81a~81fは、例えば、Si、SiC、又はGaNを用いた絶縁ゲートバイポーラトランジスタである。なお、インバータスイッチ81a~81fは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタに限定されず、MOSFETなどの他のトランジスタであってもよい。MOSFETがインバータスイッチ81a~81fに用いられる場合、インバータスイッチ81a~81fは、スーパジャンクション構造のMOSFETであってもよい。インバータスイッチ81a~81fのオンオフのタイミングは、キャリア波に基づいて決定される。キャリア波は、一定の振幅をもつ三角波で構成される。キャリア波の周波数は、例えば、4kHz~100kHzである。これにより、電動機駆動装置60は、漏洩電流を抑制しつつ、電動機6を140rps以上で高速回転させることができる。また、インバータ80のスイッチング周波数が4kHz以上100kHz以下であることによって、電動機6を8極以上に多極化して小型化することができる。
フライホイルダイオード82a~82fには、例えば、SiCが用いられる。フライホイルダイオード82a~82fは、インバータスイッチ81a~81fが電流をオンからオフにするときに生じる逆起電力を抑制する。
電源電圧検出部61は、検出情報として商用交流電源11の電源電圧を検出し、その検出情報を制御装置65に出力する。電源電圧検出部61は、例えば、オペアンプである。直流電圧検出部62は、検出情報として複数の平滑コンデンサ73a,73bの両端の電圧を検出し、その検出情報を制御装置65に出力する。直流電圧検出部62は、例えば、オペアンプである。制御装置65は、電源電圧検出部61及び直流電圧検出部62から出力された検出情報に基づいて、整流器70aのスイッチング素子71a,71bをオンオフ動作させる。
制御装置65は、運転条件に応じて商用交流電源11における予め定められた区間、又は、全区間において、スイッチング素子71a,71bにオンオフ動作(つまり、同期整流動作)させることによって、商用交流電源11に含まれる高調波成分を抑制して、電動機6の力率を改善する。また、制御装置65は、インバータ80に供給される直流電圧の値を商用交流電源11の電圧のピーク値以上に上昇させることで、電動機6を高効率かつ高出力を駆動させることができる。なお、スイッチング素子71a,71bによる所定のスイッチング動作とは、20kHz以上100kHz以下である。これにより、インバータ80に供給する直流電圧の値を上昇させることができる。
電動機6は、図2に示される端子36を介してインバータ80に接続されている。電動機6は、インバータ80に備えられたインバータスイッチ81a~81fによるPWM(Pulse Width Modulation)制御に基づく可変速駆動を行うことによって、回転数とトルクを可変し、低速から高速まで幅広い運転を行うことができる。
〈空気調和装置〉
次に、実施の形態1に係る空気調和装置150について説明する。図10は、実施の形態1に係る空気調和装置150の構成を概略的に示す図である。図10に示されるように、空気調和装置150は、室内機151と、冷媒配管152と、室外機153とを有する。室内機151及び室外機153は、冷媒配管152によって連結されることで、冷媒回路120を構成する。空気調和装置150は、例えば、室内機151から冷たい空気を送風する冷房運転、又は温かい空気を送風する暖房運転等の運転を行うことができる。
室内機151は、電動機151aと、室内送風機151bと、ハウジング151cとを有する。電動機151aは、室内送風機151bを駆動するための駆動源である。室内送風機151bは、電動機151aによって駆動されることにより、空気を送風する。ハウジング151cは、電動機151a及び室内送風機151bを覆っている。
室内機151は、室内側熱交換器151dを更に有する。室内側熱交換器151dは、冷媒20(図1参照)と空気との熱交換を行う。
室外機153は、電動機153aと、室外送風機153bと、圧縮機10と、ハウジング153cとを有する。電動機153aは、室外送風機153bを駆動するための駆動源である。室外送風機153bは、電動機153aによって駆動されることにより、空気を送風する。ハウジング153cは、電動機153a、室外送風機153b、圧縮機10、及び熱交換器を覆っている。
室外機153は、室外側熱交換器153dと、四方弁(図示しない)とを更に有する。室外側熱交換器153dは、冷媒20(図1参照)と室外の空気との熱交換を行う。四方弁は、冷媒20の流れ方向を切り替える弁である。
室外機153の四方弁は、圧縮機10から送り出された高温高圧の冷媒ガスを、冷房運転時には室外側熱交換器153dに流し、暖房運転時には室内側熱交換器151dに流す。つまり、冷房運転時には、室外側熱交換器153dは図1に示される凝縮器101として、室内側熱交換器151dは図1に示される蒸発器103としてそれぞれ機能する。一方、暖房運転時には、室内側熱交換器151dが凝縮器101として、室外側熱交換器153dが蒸発器103としてそれぞれ機能する。このように、図1に示される冷凍サイクル装置100に四方弁が追加されることによって、空気調和装置150は、冷凍サイクル装置100を備えることができる。
なお、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100は、空気調和装置150以外に、冷蔵庫又は冷凍庫などの他の家電機器に備えられてもよい。
〈実施の形態1の効果〉
以上に説明したように、実施の形態1によれば、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径が1.6μm~12μmであることによって、永久磁石45が図5に示される保磁力H1以上の保磁力を有するため、永久磁石45に不可逆減磁が発生することを防止できる。これにより、永久磁石45を有する回転子4を備えた電動機6の出力及び効率を向上させることができる。
また、実施の形態1によれば、永久磁石45におけるDy含有率及び永久磁石45におけるTr含有率は、0重量%である。これにより、永久磁石45の残留磁束密度を大きくすることができる。また、永久磁石45には高価な元素であるDy及びTrが含有されていないため、永久磁石45のコストを下げることができる。
また、実施の形態1によれば、圧縮機10内において、冷媒20として、吐出温度の上限温度が95℃となるR290が使用されるので、永久磁石45に不可逆減磁が発生することを防止できる。
温度上昇による永久磁石の残留磁束密度の低下を抑制するために、回転子の積厚を増加させることによる永久磁石の体積増加、電動機への供給電圧、電動機の回転数、コイルの巻数、インバータのキャリア周波数、及びコンバータのスイッチング周波数のうちいずれかを増加させることで、電動機の出力及び効率の低下を補うことが考えられる。しかし、圧縮機の密閉容器内を通過する冷媒としてR32が用いられた場合、電動機から密閉容器に流れる漏洩電流が増加するという課題があった。その結果、回転子の積厚、電動機への供給電圧などの上限値が決まってしまい、電動機の出力及び効率の向上に限界があった。実施の形態1によれば、電動機6は、比誘電率の小さいR290の雰囲気中に配置されるため、電動機6から密閉容器30に流れる漏洩電流を抑制することができる。そのため、回転子4の積厚の増加、電動機6への供給電圧、電動機6の回転数、コイル55の巻数、インバータ80のキャリア周波数、及びコンバータ70のスイッチング周波数を従来の電動機よりも増加させることができる。その結果、漏洩電流を抑制しつつ、電動機6の出力及び効率を向上させることができる。
《実施の形態1の変形例》
実施の形態1では、吐出温度の最大値が100℃以下である冷媒20の一例として、R290を挙げ、R290の雰囲気中に配置される電動機6の回転子4を説明した。しかし、100℃以下で使用される冷媒20は、R290の他にも存在する。また、100℃よりもやや高い温度で使用される冷媒20も存在する。そこで、実施の形態1の変形例においては、100℃近傍の他の冷媒の雰囲気中に配置される電動機の回転子を説明する。実施の形態1の変形例においては、電動機6が100℃近傍の他の冷媒の雰囲気中に配置された場合であっても、不可逆減磁が発生しない永久磁石を備えた回転子、この回転子を備えた電動機、及びこの電動機を備えた圧縮機を説明する。実施の形態1の変形例に係る圧縮機は、冷媒の種類の点で、上述の圧縮機10と異なる。
実施の形態1の変形例に係る圧縮機10では、冷媒20は、R1123(つまり、1,1,2-トリフルオロエチレン)、R1234yf(つまり、フルオロオレフィン)、R1132E(つまり、トランス-1,2-ジフルオロエチレン)、R454A及びR454Cのいずれか1つ以上を含む。圧縮機10において、これらの冷媒の吐出温度の最大値は、97℃~103℃である。具体的には、圧縮機10において、R1123は、使用上限温度98℃以下で使用され、R1234yfは、使用上限温度99℃以下で使用される。また、R1132Eは、使用上限温度98℃以下で使用され、R454Aは、使用上限温度103℃以下で使用される。R454Cは、使用上限温度97℃以下で使用される。
また、上述した冷媒を他の冷媒と混合させた場合であっても、冷媒20は、使用上限温度100℃周辺の温度で使用される。実施の形態1の変形例では、冷媒20は、2種類以上のエチレン系フッ化炭化水素が混合した冷媒であってもよい。例えば、冷媒20は、R1132とR32とを混合した混合冷媒が使用されてもよい。この混合冷媒におけるR1132の割合は、例えば、40wt%~60wt%とすることが望ましい。また、R1132は、他の冷媒と混合されてもよい。例えば、R1132と混合する冷媒は、例えば、R1141(つまり、フルオロエチレン)、R1132a(つまり、1,1-ジフルオロエチレン)、R1132(E)、R1132(Z)(つまり、シス-1,2-ジフルオロエチレン)を使用することができる。
また、実施の形態1の変形例では、R1123は、R1234ze(E)(つまり、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン)、R1234ze(Z)(つまり、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン)、R134a(つまり、1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、R125(つまり、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン)と混合されてもよい。また、R1123は、R32、R1234yf、R1234ze(E)、R1234ze(Z)、R134a、及びR125のうち、少なくとも2つ以上の冷媒と混合されてもよい。なお、上述したR454A及びR454Cは、R1234yfとR32との混合冷媒である。
冷媒20が、R1123、R1234yf、R1132(E)、R454A及びR454Cのいずれか1つ以上を含む場合であっても、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径が1.6μm~12μmであることによって、永久磁石45は保磁力H1以上の保磁力を有するため、永久磁石45に不可逆減磁が発生することを防止できる。
《実施の形態2》
実施の形態1では、100℃以下の冷媒の雰囲気中に配置される電動機6の回転子4を説明した。実施の形態2においては、120℃以下の冷媒の雰囲気中に配置される電動機の回転子を説明する。具体的には、実施の形態2においては、電動機6が110℃より大きく120℃以下の冷媒の雰囲気中に配置された場合であっても、不可逆減磁が発生しない永久磁石を備えた回転子、この回転子を備えた電動機、及びこの電動機を備えた圧縮機を説明する。実施の形態2に係る回転子及び電動機は、永久磁石の結晶粒の平均結晶粒径に要求される条件の点で、実施の形態1に係る回転子4及び電動機6と異なる。また、実施の形態2に係る圧縮機は、永久磁石の結晶粒の平均結晶粒径に要求される条件と冷媒の種類の点で、実施の形態1に係る圧縮機10と異なる。これらの点以外に関し、実施の形態2は、実施の形態1と同じである。したがって、以下の説明では、図1から図4を参照する。
図2に示されるように、実施の形態2に係る圧縮機10は、密閉容器30と、密閉容器30内を通過する冷媒20と、冷媒20を圧縮する圧縮機構部2と、圧縮機構部2を駆動する電動機6とを有する。実施の形態2に係る圧縮機10では、冷媒20は、R454B、R463A、及びR466Aのいずれか1つ以上を含む。圧縮機10において、これらの冷媒の吐出温度の最大値は、114℃~118℃である。具体的には、圧縮機10において、R454Bは、使用上限温度116℃以下の温度で使用され、R463Aは、使用上限温度114℃以下の温度で使用される。R466Aは、使用上限温度118℃以下の温度で使用される。
図11は、実施の形態2に係る回転子4の永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径と保磁力との関係を示すグラフである。図11において、横軸は、平均結晶粒径[μm]を対数目盛によって示し、縦軸は、保磁力[kA/m]を示す。永久磁石45は、ネオジウム希土類磁石である。図11において、保磁力H2は、電動機6が114℃~118℃の冷媒20の雰囲気中に配置された場合であっても、永久磁石45に不可逆減磁を発生させない保磁力(つまり、減磁耐力)である。保磁力H2は、例えば、実験により求められる。
実施の形態2では、永久磁石45の保磁力を保磁力H2以上にするために、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径を、2.0μm~9.9μmの範囲R2内にしている。言い換えれば、永久磁石45が保磁力H2以上の保磁力を有するために、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径のばらつきは、範囲R2内で許容される。
実施の形態2によれば、永久磁石45の結晶粒45aの平均結晶粒径が2.0μm~9.9μmであることによって、永久磁石45は保磁力H2以上の保磁力を有しているため、電動機6が114℃~118℃以下の冷媒20の雰囲気中に配置されても、永久磁石45に不可逆減磁が発生することを防止できる。これにより、実施の形態2に係る回転子4を備えた電動機6の出力及び効率を向上させることができる。
4 回転子、 5 固定子、 6 電動機、 10 圧縮機、 18 冷凍機油(潤滑油)、 20 冷媒、 30 密閉容器(容器)、 40 回転子鉄心、 41 磁石挿入孔、 45 永久磁石、 45a 結晶粒、 100 冷凍サイクル装置、 101 凝縮器、 102 膨張弁(減圧装置)、 103 蒸発器、 150 空気調和装置、 L 回転子鉄心の軸方向長さ、 D 容器の内部空間の幅寸法。

Claims (14)

  1. 冷媒を圧縮する圧縮機構部を駆動する電動機において、前記冷媒の雰囲気中に配置される回転子であって、
    複数の結晶粒を含む、ネオジウム希土類磁石である永久磁石を有し、
    前記複数の結晶粒の平均結晶粒径は、1.6μm~12μmであり、
    前記冷媒は、R454A及びR454Cのいずれか1つ以上を含み、
    前記永久磁石におけるジスプロシウムの含有率及び前記永久磁石におけるテレビウムの含有率は、0重量%である
    回転子。
  2. 冷媒を圧縮する圧縮機構部を駆動する電動機において、前記冷媒の雰囲気中に配置される回転子であって、
    複数の結晶粒を含む、ネオジウム希土類磁石である永久磁石を有し、
    前記複数の結晶粒の平均結晶粒径は、2.0μm~9.9μmであり、
    前記冷媒は、R454B、R466A及びR463Aのいずれか1つ以上を含み、
    前記永久磁石におけるジスプロシウムの含有率及び前記永久磁石におけるテレビウムの含有率は、0重量%である
    回転子。
  3. 前記永久磁石が取り付けられた回転子鉄心を更に有する
    請求項1又は2に記載の回転子。
  4. 前記回転子鉄心は、磁石挿入孔を有し、
    前記永久磁石は、前記磁石挿入孔に挿入されている
    請求項3に記載の回転子。
  5. 請求項1からのいずれか1項に記載の回転子と、
    固定子と
    を有する電動機。
  6. 請求項に記載の電動機と、
    前記電動機によって駆動される前記圧縮機構部と、
    前記電動機及び前記圧縮機構部を収容する容器と
    を有する圧縮機。
  7. 冷媒を圧縮する圧縮機構部を駆動する電動機において、前記冷媒の雰囲気中に配置される回転子を備える圧縮機であって、
    複数の結晶粒を含む、ネオジウム希土類磁石である永久磁石を有し、
    前記複数の結晶粒の平均結晶粒径は、1.6μm~12μmであり、
    前記冷媒は、R290を含み、
    前記永久磁石におけるジスプロシウムの含有率及び前記永久磁石におけるテレビウムの含有率は、0重量%である回転子と、
    固定子とを有する電動機と、
    前記電動機によって駆動される前記圧縮機構部と、
    前記電動機及び前記圧縮機構部を収容する容器と、
    前記容器内を通過する前記冷媒と、
    前記容器内に貯留された潤滑油と、を有し、
    前記冷媒の比誘電率は、前記潤滑油の比誘電率よりも小さい
    圧縮機。
  8. 前記冷媒の前記比誘電率は、1.6~1.9である
    請求項に記載の圧縮機。
  9. 前記潤滑油は、ポリアルキレングリコール油である
    請求項又はに記載の圧縮機。
  10. 前記回転子の回転子鉄心の軸方向の長さをLrとし、
    前記容器の内部空間の前記軸方向に直交する幅方向の寸法をDcとしたときに、
    0.2≦Lr/Dc≦1.1
    である
    請求項からのいずれか1項に記載の圧縮機。
  11. 前記電動機は、前記容器内において、前記冷媒の雰囲気中に配置されている
    請求項から10のいずれか1項に記載の圧縮機。
  12. 前記電動機は、前記冷媒が流れる方向において前記圧縮機構部よりも下流側に配置されている
    請求項から11のいずれか1項に記載の圧縮機。
  13. 請求項から12のいずれか1項に記載の圧縮機と、
    前記圧縮機から送り出された冷媒を凝縮する凝縮器と、
    前記凝縮器により凝縮した冷媒を減圧する減圧装置と、
    前記減圧装置で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と
    を有する冷凍サイクル装置。
  14. 請求項13に記載の冷凍サイクル装置を有する空気調和装置。
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