JP2015049147A - 永久磁石の検査方法および検査装置 - Google Patents

永久磁石の検査方法および検査装置 Download PDF

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Abstract

【課題】着磁工程において、磁化特性を取得することで、永久磁石を減磁させることなく保磁力を判定できる永久磁石の検査方法を提供する。
【解決手段】磁石の一部の結晶が単磁区状態を有する核生成型の永久磁石において、外部から磁界を印加して永久磁石を最大磁化まで着磁する着磁工程S1と、印加する磁界と永久磁石の磁化を測定して初磁化曲線を採取する初磁化曲線採取工程S2と、初磁化曲線から永久磁石の保磁力を推定し判定する保磁力判定工程S3を備える。
【選択図】図9

Description

この発明は、永久磁石の磁気特性を簡便に検査する永久磁石の検査方法および検査装置に関するものである。
永久磁石材料は車載用機器などに広く使用されており、高温での使用環境に耐えるために耐熱性に優れ、高い保磁力を有することが要求されている。しかし、保磁力は、永久磁石内の結晶粒径や組成、熱処理温度など、多くの製造条件に左右されるため、製造バラツキが原因で保磁力が悪化する。
このため、モータに永久磁石を組み込むためには永久磁石の保磁力を検査する必要がある。従来、モータに組み込む時に対象の永久磁石に磁界を印加しBHカーブトレーサで減磁曲線を取得して保磁力を検査していた(例えば、特許文献1、特許文献2)。
特公昭46−37316号公報(2頁カラム3、図3) 特開平6−289112号公報(段落[0015]、図1)
特許文献1および2の開示発明では、検査後の永久磁石は切り刻まれたり、減磁したりする。このために、検査後永久磁石を製品に組み込むことができず、全数検査は不可能で、抜き取り試験となっていた。また検査により永久磁石が減磁した場合、再着磁が必要になるが、消磁状態から着磁するよりもはるかに大きな磁界が必要であり、磁極の管理が必要であった。
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、着磁工程において、磁化特性を取得することで、永久磁石を減磁させることなく保磁力を判定できる永久磁石の検査方法および検査装置を提供することを目的とする。
この発明に係る永久磁石の検査方法は、磁石の一部の結晶が単磁区状態を有する核生成型または磁壁の移動が結晶粒界にピンニングされることで磁化反転が妨げられて保磁力を発現するピンニング型の少なくともいずれか一方の永久磁石において、外部から磁界を印加して永久磁石を最大磁化まで着磁する着磁工程と、印加する磁界と永久磁石の磁化を測定して初磁化曲線を採取する初磁化曲線採取工程と、初磁化曲線から永久磁石の保磁力を推定し判定する保磁力判定工程とを備えるものである。
この発明に係る永久磁石の検査装置は、永久磁石を着磁するために外部から磁界を印加するための着磁電源および着磁用電磁石と、印加する磁界を測定する磁界検出コイルと、永久磁石の磁化を測定する磁化検出コイルと、着磁電源を制御し、永久磁石の保磁力を判定する検査部とを備え、検査部は永久磁石を最大磁化まで着磁するように着磁電源を制御する電源制御部と、磁界検出コイルからの信号と磁化検出コイルからの信号を処理して初磁化曲線を採取する信号処理部と、永久磁石の保磁力を判定する判定部とから構成されるものである。
この発明に係る永久磁石の検査方法は、上記の工程を備えるため、永久磁石を減磁させることなく保磁力を推定することで、着磁と検査の工程を集約でき、全数検査することで、品質の安定化を図ることができる。
この発明に係る永久磁石の検査装置は、上記のように構成されているため、永久磁石を減磁させることなく保磁力を推定することで、着磁と検査の工程を集約でき、全数検査することで、品質の安定化を図ることができる。
この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る検査装置の概略構成図である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る動作説明図(磁化曲線)である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る動作説明図(減磁曲線)である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る動作説明図(初磁化曲線)である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る動作説明図(規格化磁化曲線)である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る動作説明図(初磁化曲線)である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る動作説明図(初磁化曲線)である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る動作説明図(磁化曲線の模式図)である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係るフローチャートである。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る実施例説明図(初磁化曲線)である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る実施例説明図(減磁曲線)である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る実施例説明図(磁化増加率グラフ)である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る実施例説明図(磁化増加量グラフ)である。 この発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に係る実施例説明図(初磁化曲線)である。 この発明の実施の形態2の永久磁石の検査方法に係る回転子の平面図である。 この発明の実施の形態2の永久磁石の検査方法に係る回転子の平面図である。 この発明の実施の形態2の永久磁石の検査方法に係る着磁時の回転子と着磁装置の平面図である。 この発明の実施の形態2の永久磁石の検査装置に係る着磁時の回転子と着磁装置の断面図である。
実施の形態1.
実施の形態1は、外部から磁界を印加して永久磁石を磁化させる着磁工程と、印加する磁界と永久磁石の磁化を測定して初磁化曲線を採取する初磁化曲線採取工程と、初磁化曲線から永久磁石の保磁力を推定し判定する保磁力判定工程を備える永久磁石の検査方法に関するものである。また、この検査方法に使用する検査装置について説明する。
以下、本願発明の実施の形態1に係る永久磁石の検査方法の機能、動作および永久磁石の検査装置の構成、動作について、永久磁石の検査装置の概略構成図である図1、検査方法の動作説明図である図2から図8、検査方法のフローチャートである図9および検査方法の実施例説明図である図10から図14に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1の永久磁石の検査方法に使用する検査装置の概略構成を示している。図1において、本発明に適用する永久磁石の検査装置1は、検査対象の永久磁石2を着磁してその保磁力を判定するために、着磁器3と着磁電源5と検査部10とを備える。
着磁器3は、検査対象の永久磁石2に外部から磁界を印加するための着磁用電磁石4と、着磁用電磁石4により印加される磁界により誘起される電圧を検出する磁界検出コイル7と、着磁対象である永久磁石2の磁化により誘起される電圧を検出する磁化検出コイル
8とを備える。
着磁電源5は、着磁用電磁石4にパルス状の大電流を流すためのコンデンサ6を備える。
検査部10は、永久磁石2を最大磁化まで着磁するように着磁電源5を制御する電源制御部11と、磁界検出コイル7からの信号と磁化検出コイル8からの信号を処理して初磁化曲線を採取する信号処理部12と、永久磁石2の保磁力を判定する判定部13とを備える。
信号処理部12は、積分器15を内蔵する信号処理回路14と信号記憶部16とを備える。
判定部13は、良否判定回路17と磁化特性データ部18とを備える。
ここで、信号処理部12の動作を説明する。着磁対象である永久磁石2に着磁のための磁界が印加されると永久磁石2の磁化の値に応じた磁束の時間微分信号、すなわち誘起電圧が磁化検出コイル8に誘起される。この時間微分信号が信号処理回路14の積分器15で時間積分されることにより磁束の値が算出され、信号記憶部16に保存される。また、着磁のための磁界の時間微分信号が磁界検出コイル7に誘起され、信号処理回路14で時間積分されることにより着磁時の印加磁界の値が算出される。
実施の形態1では、着磁用の磁場を発生するためにパルス状の電流を流す着磁用電磁石を用いているが、着磁用の磁場を発生するために永久磁石や直流電流によって直流の磁界印加手段を用いてもよい。
次に、検査対象である永久磁石2の着磁前、および着磁時に検出する磁化曲線を図2に示す。磁界検出コイル7および磁化検出コイル8によって検出され、永久磁石2の保磁力の検知に用いる磁化曲線は、図2に示すようにX軸を外部磁界、Y軸を磁化としたときの第1象限のみである。なお、以降の説明では、永久磁石を消磁状態から最大磁化まで着磁する際の磁化曲線、すなわち「着磁時の磁化曲線」を一般的に使用されている「初磁化曲線」と記載する。
なお、本実施の形態1において、着磁対象となる永久磁石はネオジム系焼結磁石を例として説明する。
次に、実施の形態1の永久磁石の検査方法、すなわち永久磁石2の着磁と保磁力の検知・判定方法を説明する。
図1において、検査対象である永久磁石2を外部(点線で示す)から永久磁石の検査装置1の着磁器3の着磁用電磁石4内の所定位置(図1では磁化検出コイル8の内部)に配置することで、検査の準備が完了する。
着磁用電磁石4内に永久磁石2を配置し、着磁を施す。着磁により永久磁石2の磁化と外部磁界の関係(磁化曲線)が保存され、磁化曲線から保磁力を推定すると同時に、着磁が完了する。
次に、永久磁石の保磁力検知の原理と検知方法について説明する。
現在広く普及しているネオジム系焼結磁石は、平均粒径が3〜5μm程度の多結晶体であり、完全に消磁された状態では粒子一つ一つの中は多数の磁区が存在し、互いの磁極が打ち消しあうように多磁区構造を有する。このため永久磁石の磁化は平均的にゼロになり、消磁状態となる。
完全に消磁された永久磁石に外部から磁界を印加すると、外部磁界の方向と平行方向の磁区の体積が増加するため、永久磁石に磁化が生まれる。さらに大きな磁界を印加すると、粒子一つの中には外部磁界の方向と平行な方向の磁区が一つだけ存在する単磁区状態になり、磁界を取り去っても磁化を保持することになる。
ネオジム系焼結磁石の保磁力機構は核生成型である。ネオジム系焼結磁石の一度単磁区状態となった粒子は、この単磁区の磁化の方向と反対方向に外部磁界を印加し、磁界を増加させていくと、粒子の表面、すなわち粒子の界面から外部磁界の方向と平行な方向で、かつ粒子内の磁区の方向と反対方向の磁区の核が生成される。そして、そこからわずかな磁界の増加で磁区が成長して永久磁石の磁化が減少する。このとき永久磁石の磁化がゼロになる外部磁界の値を保磁力といい、保磁力の値が大きいほど減磁しにくい。
また、永久磁石の温度が高くなると、保磁力は減少する傾向があり、一般的には−0.4〜0.6%/℃で減少する。すなわち、室温での保磁力が高いものほど高温での保磁力が高い。
例えば、モータのように高温環境で使用し、かつ永久磁石に外部から磁界を印加することで駆動する機器に永久磁石を搭載する場合には、室温での保磁力が高いものほど高温で減磁がしにくい。したがって、保磁力が高い永久磁石ほど、耐熱性が高いことを意味する。
また、ネオジム系焼結磁石の結晶であるNd2Fe14B1は、結晶磁気異方性を有している。このため、理想的な結晶であれば物性値である異方性磁界の大きさまで外部磁界を増加するまで磁化は反転しない。ただし、ネオジム系焼結磁石のように多数の結晶の集合体である場合、結晶の界面である表面は不完全な結晶であるため、見かけの異方性磁界は小さくなり、結晶の界面から結晶内の単一の磁区の方向と反対方向の磁区の核が生成される。
以上説明したように、消磁状態の永久磁石を着磁する際には、多磁区状態の永久磁石が徐々に単磁区構造へ変化する過程を表しており、初磁化曲線は結晶粒が単一の磁区を有しない限りは保磁力とは無関係である。このため、組成や熱処理温度などを調整することでさまざまな強さの保磁力を持つ永久磁石であっても初磁化曲線は一致する。
次に永久磁石の検査方法の動作説明図である図3から図5を用いて、一般的な永久磁石における初磁化曲線と保磁力の関係を説明する。
図3は、一般的なネオジム系焼結磁石の減磁曲線である。縦軸に永久磁石の磁化を、横軸に永久磁石に印加する外部磁界をプロットしたものであり、BHカーブトレーサによって取得されるBHカーブの第2象限を抜き出したものである。ここで、磁化がゼロになるときの外部磁界の値を保磁力(Hcj)といい、外部磁界がゼロになるときの永久磁石の磁化を残留磁化という。図3に示すように保磁力と残留磁化の両方が異なる永久磁石については、図4に示すように初磁化曲線が異なるが、図4において磁化を残留磁化で規格化した図5の磁化曲線を比較すると、保磁力の違いにかかわらず初磁化曲線は一致する。したがって、消磁状態の永久磁石を着磁する際の磁化特性は保磁力や減磁曲線とは無関係であり、保磁力や減磁曲線の良否判定を行うことができない。
永久磁石の保磁力の強さと結晶粒径の関係について説明する。
保磁力の強さは、結晶粒径に依存することが一般的によく知られている。結晶粒が微細になるほど、保磁力は増加する傾向があるが、これには、いくつかの考え方がある。
まず、ネオジム系焼結磁石に代表される核生成型の保磁力機構を有する永久磁石の場合には、結晶粒径が小さいほど結晶粒の界面の逆磁区の発生の核となる欠陥が存在する確率が少なくなることにより、保磁力が増加するとの考え方がある。また、単磁区粒子径と同等の結晶粒径を有する永久磁石の場合には結晶粒の界面に磁壁の移動が妨げられて保磁力が増加する(ピンニング型)との考え方がある。
単磁区粒子径にまで結晶粒径を微細化すると、粒内からは磁壁が消失し、ほぼ全ての磁区は結晶粒界上に存在する。なお、多結晶体での単磁区粒子径は、孤立粒子の単磁区粒子径0.2〜0.3μmに対して大きい値となることが知られている。このような永久磁石に外部磁界を印加すると多磁区状態から単磁区状態へ磁化される過程で得られる急峻な磁化の増加に比べてはるかに緩やかに磁化が増加する現象が得られる。
また、結晶粒が単磁区粒子よりも大きい場合であっても、同様に緩やかに磁化が増加するピンニング型の挙動を示す場合がある。核生成型の保磁力機構を有する永久磁石であっても、外部磁界が逆磁区の発生する磁界までは磁化の増加が妨げられるため、磁化の増加は緩やかになり、ピンニング型であっても単磁区状態を有する核生成型であっても初磁化曲線は見かけ上同様の曲線を示す。
次に永久磁石の検査方法の動作説明図である図6から図8を用いて、結晶粒径が細かいネオジム系焼結磁石の保磁力と初磁化曲線の関係を説明する。
図6は、永久磁石の検査方法の動作説明図であり、結晶粒径が細かいネオジム系焼結磁石の初磁化曲線を示す。
このような永久磁石は、着磁時にも磁壁移動が妨げられるため、保磁力を反映して着磁に必要な磁界が多磁区状態から単磁区状態へ移行する永久磁石に比べて大きくなり、図6に示すように磁化の立ち上がりが緩やかになる。
HDDR(Hydrogenation Decomposition Desorption Recombination)法により作製された永久磁石では、結晶粒径は単磁区粒子径とほぼ同等であるため、ピンニング挙動を示す。また、液体急冷法によってナノ結晶組織を有する粉末を作製し、その後圧粉、熱間押し出し成形により製造された永久磁石も同様のピンニング挙動を示す。
図7は、熱間押し出し成形により得られた永久磁石の初磁化曲線であり、図6と類似の2段階で磁化が増加する曲線を有する。また、結晶がナノサイズのハード相とソフト相により構成されたネオジム系ナノコンポジット磁石においても結晶粒径は単磁区粒子径以下の結晶で構成されるため、同様に初磁化曲線はピンニング挙動を示す。
ネオジム系焼結磁石においても、磁石粉末の粒子径を2μm以下に微細化すると、初磁化曲線は同様なピンニング型の挙動を示し、緩やかに磁化が立ち上がる。
また、粒子径の細かいネオジム系焼結磁石の場合は、外部磁界が小さい時には、比較的急峻に磁化が立ち上がり、外部磁界を大きくしていくと磁化の立ち上がりが緩やかになり、さらに外部磁界を大きくしていくと磁化が急峻に立ち上がり、やがて飽和するという2段階で磁化が立ち上がる挙動を示す。
ネオジム系焼結磁石の場合、磁石合金をジェットミルなどで微粉砕することで磁石粉末を製造するが、粉砕後の磁石粉末の粒径は1μm以下から数μm、または十数μmまで分布を持つため、多磁区状態の粒子と単磁区状態の粒子が混在することに起因すると考えられる。
多磁区状態の結晶粒を着磁した時の磁化曲線と単磁区状態の結晶粒を磁区の方向と反対方向に着磁したときの磁化曲線の模式図、および多数の多磁区状態の結晶粒と少数の単磁区状態の結晶粒が混在した永久磁石の磁化曲線の模式図を図8に示す。
多磁区状態の結晶粒は外部磁界が小さいうちに急峻に磁化が増加し、飽和する。しかし、単磁区状態の結晶粒は外部磁界が小さいうちは磁化が変化せず一定である。さらに、外部磁界を増加させ、単磁区状態の結晶粒の保磁力以上の外部磁界が印加されると、結晶の欠陥(多くの場合結晶粒界)から逆向きの磁区が発生し、多磁区状態となる。さらに外部磁界を増加させると逆向きの磁区の領域が増加し、平行でかつ向きが互いに逆方向の磁区(+の磁化の方向と−の磁化の方向を持つ磁区)の領域(体積)が等しくなったところで、磁化がゼロになり、多磁区状態になる。その後さらに外部磁界を増加させていくと逆向きの磁区が増加し、最後には外部磁界と同じ方向の単一の磁区に変化する。
永久磁石内部のほとんどが多磁区状態の結晶粒であり、一部が単磁区状態の結晶粒である場合には、一部の単磁区状態の結晶粒が磁化反転するため初磁化曲線に屈曲点が生じる。 単磁区状態の結晶粒の保磁力が大きい場合には、磁化反転するときの外部磁界の値が大きくなるため、屈曲点が生じる外部磁界の値が大きい方へシフトしていき、逆に保磁力が小さい場合には、屈曲点が生じる外部磁界の値が小さい方へシフトすることになる。
本発明では、この単磁区状態である永久磁石に磁界を印加した際の磁化の増加現象がピンニング型の挙動を示すことに着目し、初磁化曲線において磁化の立ち上がりに必要な外部磁界の値、もしくは複数の値の外部磁界に対する磁化の大きさと保磁力の相関曲線を、予め取得しておくことで、初磁化曲線から保磁力を推定する。
これまで説明した本発明の永久磁石の検査方法を図9のフローチャートを用いて説明する。
検査対象である永久磁石2を永久磁石の検査装置1の着磁器3内の着磁用電磁石4の所定位置に配置する。
検査がスタートすると、ステップ1(S1)において、着磁用電磁石4を用いて外部から磁界を印加して永久磁石2を最大磁化まで着磁する(着磁工程)。
次に、ステップ2(S2)において、磁界検出コイル7、磁化検出コイル8の信号を信号処理部12で処理することで印加する磁界と永久磁石2の磁化を測定して、初磁化曲線を採取する(初磁化曲線採取工程)。
次に、ステップ3(S3)において、基準となる永久磁石の初磁化曲線を参照して、採取した初磁化曲線から永久磁石2の保磁力を判定する(保磁力判定工程)。
次に本発明の永久磁石の検査方法を適用した実施例について動作説明図である図10から図14を用いて説明する。
平均粒径が2μm以下であり、かつ2種類の粒径の異なるネオジム系焼結磁石に本発明の永久磁石の検査方法を適用した具体的実施例ついて以下に説明する。
実施例1は、各製造工程において品質管理基準を満たした粉砕(平均)粒径1.1μmの永久磁石である。実施例2は、微粉砕工程において粉砕(平均)粒径が1.9μmとなった永久磁石である。
実施例1と実施例2の永久磁石を、例えば、図1の着磁器3内の着磁用電磁石4の所定位置に装着し、磁化容易軸方向に平行に着磁磁界40kOeを印加した。図10は、着磁時の着磁磁界と永久磁石の磁化を磁界検出コイルおよび磁化検出コイルでそれぞれ検出し、横軸に着磁磁界を、縦軸に磁化をとり、両者をプロットしたグラフである。すなわち、図10は初磁化曲線である。
また、実施例1と実施例2の永久磁石を機械加工により直方体に加工し、BHカーブトレーサにより減磁曲線を測定した。実施例1と実施例2の減磁曲線を図11に示す。図11の減磁曲線の測定の結果、実施例1は保磁力が19.1kOeであり、実施例2は保磁力が16.6kOeであった。
磁界検出コイルおよび磁化検出コイルで検出できる誘起電圧Vは、V=dφ/dt(φは磁束量)である。φ=B・S(Bは磁束密度、Sは検出コイルの断面積)であり、B=μoH+Mである(μoは真空の透磁率、Hは外部磁界、Mは磁石の磁化)。
図10、図11の横軸が印加した着磁磁界(図10、図11では外部磁界と記載)であり、磁界検出コイルによって誘起電圧Vhを計測し、計測時間で積分した値である。上記の式から外部磁界の場合はM=0であるため、誘起電圧はVh=S・μo・dH/dtとなり、磁界検出コイルの誘起電圧Vhを積分することで外部磁界Hが求められる。
また、縦軸は永久磁石の磁化である。上記の式から磁化検出コイルによって計測される誘起電圧Vbは、Vb=S・dB/dtであり、磁化検出コイルの誘起電圧Vbを時間積分することで磁束密度Bが求められる。図10では磁化の飽和をわかりやすくするために、M=B−μoHとして磁束密度Bから外部磁界(着磁磁界)Hを引くことで磁化Mとして縦軸にプロットしている。
図10からわかるように、どちらの永久磁石も外部磁界が小さい領域では急峻に磁化が立ち上がり、外部磁界を大きくしていくと一度磁化の立ち上がりが緩やかになっている。さらに外部磁界を大きくしていくと、外部磁界が小さい領域の磁化の立ち上がりほどではないが、磁化の立ち上がりが急峻に(傾きが大きく)なり、やがて磁化の立ち上がりが緩やかになり飽和することがわかる。
また、2種類の永久磁石の初磁化曲線を比較すると、外部磁界が小さいうちはほぼ同様の磁化の立ち上がりを示すが、外部磁界が高い領域において、2段階目の磁化の立ち上がりが生じる時の外部磁界の値が異なっていることがわかる。図10と図11より、高い保磁力を有する実施例1の永久磁石は2段階目の磁化の立ち上がる時の外部磁界の値が大きい。
次に永久磁石の保磁力を判定する方法について、実施例で説明する。
実施例1は磁化が0から急峻に増加し、着磁磁界が約6kOe付近で磁化の立ち上がりが緩やかになる。さらに着磁磁界が大きくなると着磁磁界が14〜25kOeにかけて磁化の立ち上がりが再び大きくなり、さらに着磁磁界が大きくなると徐々に飽和していることがわかる。
また、実施例2においても同様であり、磁化が0から急峻に立ち上がり、着磁磁界が約6kOe付近で磁化の立ち上がりが徐々に緩やかになる。さらに着磁磁界を増加すると14〜25kOeまで再び磁化が増加し始め、やがて飽和していることがわかる。
また、図12は、実施例1と実施例2の着磁磁界に対する磁化の増加量を算出した時の着磁磁界と磁化の増加率のグラフ(2段階目の磁化の立ち上がりが明確にわかるように着磁磁界4kOe〜40kOeまでの磁化の増加率のグラフ)である。
図12において、実施例1は2つ目のピークが着磁磁界21.6kOe付近にあり、実施例2は2つ目のピーク着磁磁界が18.9kOe付近にあることがわかる。ここで、実施例1が永久磁石を製品に搭載した際に耐熱性の仕様を満足する永久磁石であり、実施例2が永久磁石を製品に搭載した際に耐熱性の仕様を満足しない永久磁石である。
耐熱性の仕様を満足しない永久磁石は、製品使用時に製品に搭載した永久磁石が外部から磁界を印加されたり、熱を加えられたりして永久磁石が大きく減磁してしまう。
実施例1を基準永久磁石として、実施例2の永久磁石の耐熱性が仕様を満足するかどうかを検査する場合、2段階目の磁化の増加量がピークとなるときの実施例1の着磁磁界の値21.6kOeに比べて、実施例2では18.9kOeと小さいため、実施例2の保磁力は仕様を満足しないと判定することができる。
ここで、図10において、複数の着磁磁界10kOe、15kOe、20kOe、25kOeの時の磁化を読み取ると、実施例1では磁化がそれぞれ11.1kG、11.4kG、12.1kG、12.8kGである。実施例2では、磁化がそれぞれ11.2kG、11.7kOe、12.5kOe、13.1kOeと着磁磁界が小さいうちに磁化が立ち上がり、磁化反転していることがわかる。したがって、実施例2の永久磁石は保磁力が実施例1に比べて劣っており、耐熱性の仕様を満足しないと判定することができる。
また、磁化の増加量は磁化されやすさを表すため、透磁率と等価である。図12は着磁磁界4kOe〜40kOeまでの磁化の増加率のグラフであるが、実施例1における着磁磁界0kOe〜40kOeまでの磁化の増加量のグラフを図13に示す。
図13に示すように、磁化の増加量は外部磁界の低い領域と高い領域においてそれぞれピークを示し、外部磁界が低い領域のピークに比べて、外部磁界が高い領域のピークは小さい。外部磁界が小さい領域のピークは、図10の初磁化曲線において熱消磁状態から急峻に磁化が立ち上がる部分を表しており、粒子が多磁区状態から単磁区状態へ移行する様子を表していることになる。この多磁区から単磁区状態への挙動を示す粒子は結晶粒径が大きい粒子が担っていると言える。
図13において外部磁界が高い領域のピークは、図10の初磁化曲線において2段階目の磁化の立ち上がる部分を表しており、単磁区状態の粒子が結晶粒界の結晶磁気異方性が小さい部分である核生成領域から逆磁区が発生して外部磁界の方向へ磁化反転するか、または結晶粒界にピンニングされて移動が妨げられていた磁壁がピンニング領域から外れて磁化反転する様子を表している。
上記のように結晶粒径が細かく磁区が一つしか存在しない単磁区状態の場合には、初磁化曲線はあたかもピンニング的挙動を示す。ここで、図12では、実施例1の外部磁界が高い領域の磁化の増加率のピークについて、磁化の増加率がピークとなる時の外部磁界(2段階目のピークの時の外部磁界)は、実施例2のそれに比べて高い。
すなわち、初磁化曲線において磁化される機構と減磁曲線(一旦完全に磁化されてから磁化方向と反対方向に外部磁界を印加した時の外部磁界と磁化の関係)において磁化反転による減磁される機構は同じ核生成機構(結晶粒界などの結晶磁気異方性が小さいところから逆磁区が発生して磁化反転する)である。さらに単磁区粒子の粒界のピンニング領域にピン止めされていた磁壁が外れるピンニング機構が加わるため、磁化反転して磁化が急激に減少する時の外部磁界の値が大きいほど、初磁化曲線において2段階目に磁化が立ち上がるためには大きい外部磁界を必要とすることになる。
なお、磁化が減少した後に磁化がゼロになる時の外部磁界の値を保磁力という。逆磁区の発生による磁化反転による磁化の増加していく、および/またはピンニング領域に留まっていた磁壁がピン止めから外れて磁化の強さが増加していく(初磁化曲線の2段階目の急峻な磁化の立ち上がり生じる)時の外部磁界の値と、逆磁区の発生、および/または磁壁がピン止めから外れて磁化の強さが減少していき、やがて磁化がゼロになる時の外部磁界の値(すなわち保磁力)は相関を持つことになる。
また、モータの駆動中などに発生する減磁現象は必ずしも保磁力のみで決定するものではなく、磁化反転が始まることは磁化が減少する、すなわち減磁することを意味するため、磁化反転が始まる外部磁界の値も減磁されやすさを表す。
従って、モータなどに用いる永久磁石においては、減磁が始まる外部磁界の値が重要になる場合があり、初磁化曲線の2段階目の磁化の立ち上がる時の外部磁界の値と、減磁曲線において磁化が急激に減少する時の外部磁界の値は相関を持つ。
また、初磁化曲線において結晶粒径が大きくなるほど、熱消磁状態において多磁区粒子が多く存在する。このため、外部磁界が低い領域の磁化の立ち上がりによって磁化される体積が多くなり、磁化の立ち上がりが緩やかになったときの磁化は大きくなり、外部磁界の高い領域において磁化が立ち上がる磁石体積が少ない。
さらに結晶粒径が大きくなると熱消磁状態において単磁区状態である粒子の体積がほとんどなくなり、磁化の立ち上がりは2段階でなく単一になり、従来から良く知られる初磁化曲線を示す。
単一の磁化の立ち上がりを有する永久磁石は、多磁区から単磁区状態の変化であるので保磁力によらず磁化の立ち上がりはほぼ一定になり、初磁化曲線と保磁力の相関が見られず、着磁時の磁化特性から保磁力を推定することができない。したがって、本発明の永久磁石の検査方法によって検査できるネオジム系焼結磁石の結晶粒径は、体積平均粒径は3μm以下が望ましく、より好ましくは2μm以下である。
体積平均粒径が2μm以上の場合、結晶粒径の細かいものがほとんど存在せず、熱消磁状態において単磁区状態の粒子がほとんど存在しない場合など、ピンニング型の保磁力機構を有しない場合も保磁力と初磁化曲線の相関が得られない。さらに、結晶粒径が大きくなるほど多磁区粒子が多く存在し、外部磁界が低い領域の多磁区から単磁区へ変化することによる磁化の増加量が多くなるため、外部磁界の低い領域での磁化の増加量(一回目の飽和した時の磁化の値)を計測することも保磁力、または減磁曲線の良否を検査するために重要な耐熱性の指標となる。
すなわち、減磁曲線の良し悪しを評価することで耐熱性を調べることができる。外部磁界の低い領域で磁化の増加が大きいもの、または磁化が一回目に飽和したときの外部磁界の値が小さい永久磁石ほど角型性が悪く減磁しやすい、すなわち耐熱性が低いと判断できる。
なお、以上の説明では結晶粒径が細かいネオジム系焼結磁石について述べているが、保磁力と初磁化曲線の相関は結晶粒界の状態などにも影響する。このため、結晶粒界の状態がネオジム系焼結磁石とは異なるようなHDDR法によって作製された永久磁石や液体急冷粉を圧粉し熱間押し出し成形した永久磁石や結晶がナノサイズのハード相とソフト相により構成されたナノコンポジット磁石の場合は、保磁力と初磁化曲線の関係が異なる。
すなわち、図12および図13において、2段階目の急峻な磁化の立ち上がりが生じる外部磁界の値や、1段階目の磁化の急峻な立ち上がりの有無、1段階目の磁化の立ち上がりが緩やかになるときの磁化の値は異なる。
図14は、比較のために具体例として結晶粒径が2μm以下のネオジム系焼結磁石と液体急冷粉を圧粉し熱間押し出し成形で作製された永久磁石の初磁化曲線である。液体急冷粉を圧粉し熱間押し出し成形で作製された永久磁石は、ネオジム系焼結磁石の場合と同様に、ピンニング挙動を示しているが、ネオジム系焼結磁石に比べて、磁化の立ち上がりが緩慢である。したがって、それぞれの製造方法、磁石組織の種類ごとに、所望の保磁力を有する永久磁石の保磁力と初磁化曲線の相関を取得し、保磁力を推定する必要がある。
例えば、HDDR法で作製した永久磁石であり、保磁力の仕様を満たしている永久磁石を標準サンプルとし、初磁化曲線と保磁力を測定しておき、別ロットの永久磁石の保磁力を検査するために着磁と同時に初磁化曲線を採取し、採取した初磁化曲線と標準サンプルの初磁化曲線とを比較すれば、標準サンプルに比べて保磁力が高い(耐熱性の仕様を満たす)か、保磁力が低い(耐熱性の仕様を満たさない)かどうかを判定することができ、保磁力の全数検査を行うことができる。
また、初磁化曲線と保磁力が既知である永久磁石の標準サンプルを複数準備し、検査対象の永久磁石の着磁と同時に初磁化曲線を採取し、採取した初磁化曲線と標準サンプルの初磁化曲線および保磁力と用いて、検査対象の永久磁石の保磁力の絶対値を外挿して推定することができる。
以上のように、永久磁石の一部が少なくとも単磁区状態である場合、外部磁界を印加することにより、永久磁石を多磁区から単磁区状態へ変化させるとともに、予め単磁区である永久磁石の一部については予め磁化された方向と反対方向の磁区へ磁化反転することにより、生じる磁化曲線の屈曲点の位置を検出することで保磁力の違いを検知できる。また、予め保磁力と屈曲点が生じる印加磁界の関係を取得しておくことで、屈曲点が生じる印加磁界から保磁力を推定することができる。

以上実施の形態1の説明では、本発明の永久磁石の検査方法を適用できる永久磁石として、ネオジム系焼結磁石を中心に説明した。初磁化曲線にピンニング挙動、すなわち変曲点が生じるSm−Fe系磁石、Sm−Co系磁石、およびフェライト磁石に対しても本発明の永久磁石の検査方法を適用できる。
以上説明したように、実施の形態1の永久磁石の検査方法は、外部から磁界を印加して永久磁石を最大磁化まで着磁する着磁工程と、印加する磁界と永久磁石の磁化を測定して初磁化曲線を採取する初磁化曲線採取工程と、初磁化曲線から永久磁石の保磁力を推定し判定する保磁力判定工程を備える。このため、着磁工程において、初磁化曲線を採取することで、永久磁石を減磁させることなく保磁力を判定できる。
さらに、実施の形態1の永久磁石の検査方法は、永久磁石を減磁させることなく保磁力の検査を行うことができるため、検査装置の小型化、さらに生産工程(検査工程)の省力化の効果がある。
実施の形態2.
実施の形態2の永久磁石の検査方法は、複数の永久磁石を回転子に装着した状態で永久磁石を着磁し、保磁力を検査する方法に関するものである。
以下、実施の形態2の永久磁石の検査方法の機能、動作について、本検査方法を適用する回転子の平面図である図15、図16、検査方法を適用する回転子と着磁装置の平面図である図17、回転子と着磁装置の断面図である図18に基づいて説明する。
実際に生産ラインにおいて本発明の永久磁石の検査方法を適用する場合について説明する。
永久磁石単体を着磁する場合、実施の形態1で説明したように、対象の永久磁石を着磁用電磁石内の所定位置に配置し、着磁用電磁石にパルス状の電流を流してパルス状の磁界を永久磁石に印加することにより着磁を行う。このとき、永久磁石内の結晶粒は、多磁区粒子は単磁区粒子へ全て変化し、着磁前から単磁区状態にある粒子は着磁磁界の方向に磁化し、磁化が飽和していること必要である。
多磁区状態の結晶粒が残っていると、印加磁界を取り去った後に永久磁石が外部に発生する磁束が小さくなる。回転電機などに永久磁石を用いる場合には、トルクの低下や固定子の界磁により減磁しやすくなるため、完全に磁化させる必要がある。
永久磁石を着磁する場合、実施の形態1のように永久磁石単体を一つ一つ着磁する方法以外に、回転子の鉄心に永久磁石を装着した状態で複数の永久磁石を一度に着磁する方法が取られる。回転子の鉄心に永久磁石を装着した状態で複数の永久磁石を一度に着磁する方法では、複数の永久磁石を一度に着磁するため、着磁に要する作業時間を短縮できる。
回転子の鉄心に複数の永久磁石を装着した回転子の平面図を図15に示す。図15において永久磁石21は回転子20の回転子鉄心22の外周部に周方向に等間隔で装着されている。図中、SおよびNは、回転子外周側の永久磁石の磁極24を示している。
なお、図15では永久磁石21は回転子鉄心22の外周に装着されているが、図16のように回転子30の回転子鉄心32に空孔を設けて、永久磁石31を鉄心の内部に周方向に等間隔に装着してもよい。
実施の形態2の複数の永久磁石を回転子に装着した状態で永久磁石を着磁し、保磁力を検査する方法について、図17、図18を用いて説明する。図17は着磁時の回転子と着磁装置の平面図であり、図18は対応する断面図である。図15で説明した複数の永久磁石21を装着した回転子20が対象であり、着磁装置40内に設置されている。
着磁時に永久磁石21の磁化の変化を検出するため、磁化検出コイル43を設けている。なお、磁化検出コイル43は回転子20に装着された複数の永久磁石21の一つ一つに対応して設けている。
磁界検出コイル42は、図18に示すように、永久磁石21の磁化の変化の影響を受けにくい位置(例えば、回転子20の軸方向の下端)に設けている。磁界検出コイルは、図17の磁化検出コイルと同じ位置に設けてもよいが、図18に示すように、永久磁石21の磁化の変化の影響を受けにくい位置に設けることが望ましい。
複数の永久磁石21を一度に着磁するために、回転子20に装着した永久磁石21に対向するように回転子20の外周に着磁用電磁石41を設けている。着磁用電磁石41でパルス磁界を永久磁石21に印加することで、複数の永久磁石21を一度に着磁する。このとき、回転子20に装着された永久磁石21は、周方向に交互に磁極の向きが変るように(外周に向かってN極とS極が交互に変るように)着磁される。
着磁時に永久磁石21の磁化を磁化検出コイル43で検出し、着磁用電磁石41により永久磁石21に印加される着磁磁界を磁界検出コイル42で検出し、磁化と着磁磁界の関係を取得することで初磁化曲線を知ることができる。
実施の形態2の永久磁石の検査方法のフローチャート(図示なし)を説明する。実施の形態1で説明した図9のフローチャートに、回転子に複数の永久磁石を装着する永久磁石装着工程を、着磁工程の前に追加するフローとなる。すなわち、「永久磁石装着工程」→「着磁工程」→「初磁化曲線採取工程」→「保磁力判定」と進むフローチャートとなる。
本実施の形態2では、永久磁石を回転子へ装着した後に複数個の永久磁石を同時に着磁し、これに合わせて初磁化曲線を採取して保磁力を検査している。しかし、複数個の永久磁石を同時に着磁し、保磁力を検査する必要はなく、各永久磁石を順次着磁し、保磁力を検査することもできる。回転子に装着された複数の永久磁石を順次に検査する場合は、同時に検査する場合に比較して、着磁用電源の小型化、信号処理回路等の検査部の簡素化を図ることができる。
なお、本実施の形態2では、永久磁石を回転子へ装着した後に複数個の永久磁石を同時または順次着磁するとともに初磁化曲線を採取して保磁力を検査しているが、あらかじめ、実施の形態1で説明した方法で、永久磁石の保磁力を検査し、その後保磁力の仕様を満足する永久磁石のみ回転子に装着してもよい。
永久磁石を回転子へ装着した後に複数個の永久磁石を着磁し、初磁化曲線を採取して保磁力を検査する場合は、検査のために工程を増やすことなく着磁とともに保磁力を推定できるため、生産性を落とすことがない。
また、個別の永久磁石の保磁力を検査し、その後保磁力の仕様を満足する永久磁石のみ回転子に装着する場合は、あらかじめ検査するため保磁力が仕様を満たさない永久磁石が混入していた場合にロータごと廃棄する必要がなく、永久磁石を無駄にすることがない。
以上説明したように、実施の形態2の永久磁石の検査方法は、まず回転子に装着した永久磁石を着磁し、着磁時の着磁磁界を磁界検出コイルで検出し、永久磁石の磁化を磁化検出コイルにより検出する。検出した着磁磁界と永久磁石の磁化から、初磁化曲線を採取する。さらに、初磁化曲線に生じる屈曲点の位置や初磁化曲線の着磁磁界ごとの磁化を基準永久磁石の磁化曲線と比較することにより、回転子に装着した永久磁石の保磁力を推定することができる。
実施の形態2の発明によれば、回転子に装着した永久磁石を着磁と同時に保磁力を推定することで、検査工程を新たに設けることがないため、工数が増加することがなく、省力化を図ることができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
1 永久磁石の検査装置、2,21,31 永久磁石、3 着磁器、
4,41 着磁用電磁石、5 着磁電源、6 コンデンサ、
7,42 磁界検出コイル、8,43 磁化検出コイル、10 検査部、
11 電源制御部、12 信号処理部、13 判定部、14 信号処理回路、
15 積分器、16 信号記憶部、17良否判定回路、18 磁化特性データ部、
20,30 回転子、22,32 回転子鉄心、23,33 回転軸、
24 永久磁石の磁極、40 着磁装置。

Claims (12)

  1. 磁石の一部の結晶が単磁区状態を有する核生成型または磁壁の移動が結晶粒界にピンニングされることで磁化反転が妨げられて保磁力を発現するピンニング型の少なくともいずれか一方の永久磁石において、
    外部から磁界を印加して前記永久磁石を最大磁化まで着磁する着磁工程と、
    印加する前記磁界と前記永久磁石の磁化を測定して初磁化曲線を採取する初磁化曲線採取工程と、
    前記初磁化曲線から前記永久磁石の保磁力を推定し判定する保磁力判定工程とを備える永久磁石の検査方法。
  2. 前記永久磁石の磁性材料が、結晶の体積平均粒径が2μm以下のネオジム系焼結磁石である請求項1に記載の永久磁石の検査方法。
  3. 前記永久磁石の磁性材料が、HDDR法により作製されたネオジム系磁石である請求項1に記載の永久磁石の検査方法。
  4. 前記永久磁石の磁性材料が、結晶がナノサイズのハード相とソフト相により構成されたネオジム系ナノコンポジット磁石である請求項1に記載の永久磁石の検査方法。
  5. 前記永久磁石の磁性材料が、液体急冷法により作製された粉末を圧粉して熱間押し出し成形したネオジム系磁石である請求項1に記載の永久磁石の検査方法。
  6. 前記永久磁石の磁性材料が、Sm−Fe系磁石である請求項1に記載の永久磁石の検査方法。
  7. 前記永久磁石の磁性材料が、Sm−Co系磁石である請求項1に記載の永久磁石の検査方法。
  8. 前記永久磁石の磁性材料が、フェライト磁石である請求項1に記載の永久磁石の検査方法。
  9. 前記保磁力判定工程は、前記採取した初磁化曲線と基準永久磁石の初磁化曲線と比較して、前記永久磁石の良否判定を行う請求項1に記載の永久磁石の検査方法。
  10. 前記保磁力判定工程は、前記採取した初磁化曲線と複数の基準永久磁石の初磁化曲線とから前記永久磁石の保磁力の絶対値を算出して、良否判定を行う請求項1に記載の永久磁石の検査方法。
  11. 回転子に複数の永久磁石を装着する磁石装着工程を、前記着磁工程の前に追加して、前記回転子に装着した前記複数の永久磁石を順次、あるいは同時に検査を行う請求項1に記載の永久磁石の検査方法。
  12. 永久磁石を着磁するために外部から磁界を印加するための着磁電源および着磁用電磁石と、
    印加する前記磁界を測定する磁界検出コイルと、
    前記永久磁石の磁化を測定する磁化検出コイルと、
    前記着磁電源を制御し、前記永久磁石の保磁力を判定する検査部とを備え、
    前記検査部は、前記永久磁石を最大磁化まで着磁するように前記着磁電源を制御する電源制御部と、前記磁界検出コイルからの信号と前記磁化検出コイルからの信号を処理して初磁化曲線を採取する信号処理部と、前記永久磁石の保磁力を判定する判定部とを備える永久磁石の検査装置。
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