JP2018082040A - R−(Fe,Co)−B系焼結磁石及びその製造方法 - Google Patents

R−(Fe,Co)−B系焼結磁石及びその製造方法 Download PDF

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【課題】室温及び高温で高い保磁力を有する新規なR−(Fe,Co)−B系焼結磁石及びその製造方法を提供する。【解決手段】12〜17%のR(RはNd及びPrを必須),0.1〜3%のM1(Si),0.05〜0.5%のM2(Ti),Bを有し、R2(Fe,Co)14B金属間化合物を主相とし10kOe以上の保磁力を有し、粒界三重点にM2ホウ化物相を含み、R1.1Fe4B4化合物相を含まず、25〜35%のR'(Pr),2〜8%のM1'(Si),8%以下のCo,残部Feからなるアモルファス及び/又は微結晶質のR'−(Fe,Co)−M1'相又は該相とR'が50%以上のアモルファスもしくは微結晶質のR'−M1”相(Si)とからなる粒界相によって主相を被覆されたコア/シェル構造を有し、R'−(Fe,Co)−M1'相の主相に対する被覆率が50%以上、主相二粒子に挟まれた前記粒界相の幅が平均で50nm以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、高温で高保磁力を有するR−(Fe,Co)−B系焼結磁石及びその製造方法に関するものである。
Nd−Fe−B系焼結磁石(以下、Nd磁石という)は、省エネや高機能化に必要不可欠な機能性材料として、その応用範囲と生産量は年々拡大している。これらの用途では、高温環境下で使用されることから、組み込まれるNd磁石には高い残留磁束密度と同時に耐熱性が求められている。一方でNd磁石は温度上昇によって容易に保磁力が低下してしまうため、予め室温での保磁力を十分に高めて使用温度において十分な保磁力が維持されるようにする必要がある。
Nd磁石の保磁力を高める手法として、主相であるNd2Fe14B化合物のNdの一部をDyもしくはTbに置換することが有効だが、これらの元素は、資源埋蔵量が少ないだけでなく、商業的に成立する生産地域が限定され、かつ地政学的要素も含むため価格が不安定で変動が大きいといったリスクがある。このような背景から、DyやTbの添加量を極力抑制した上で、保磁力を増大させる新しい方法又はR−(Fe,Co)−B系磁石の新しい磁石組成の開発が必要である。
このような点から、従来、種々の手法が提案されている。
即ち、特許文献1(特許第3997413号公報)には、原子百分率で12〜17%のR(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも2種以上で、かつNd及びPrを必須とする)、0.1〜3%のSi、5〜5.9%のB、10%以下のCo、及び残部Fe(但し、Feは3原子%以下の置換量でAl,Ti,V,Cr,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,In,Sn,Sb,Hf,Ta,W,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素で置換されていてもよい)の組成を有し、R2(Fe,(Co),Si)14B金属間化合物を主相とする、少なくとも10kOe以上の保磁力を有するR−(Fe,Co)−B系焼結磁石において、Bリッチ相を含まず、かつ原子百分率で25〜35%のR、2〜8%のSi、8%以下のCo、残部FeからなるR−Fe(Co)−Si粒界相を体積率で少なくとも磁石全体の1%以上有するR−(Fe,Co)−B系焼結磁石が開示されている。この場合、この焼結磁石は、焼結時もしくは焼結後の熱処理時における冷却工程において、少なくとも700〜500℃までの間を0.1〜5℃/分の速度に制御して冷却するか、もしくは冷却途中で少なくとも30分以上一定温度を保持する多段冷却により冷却することにより、組織中にR−Fe(Co)−Si粒界相を形成させたものである。
特許文献2(特表2003−510467号公報)には、硼素分の少ないNd−Fe−B合金が開示されており、この合金から永久磁石を製造する方法として、原材料片を焼結後、300℃以下に冷却するが、その際800℃以上で平均冷却速度をΔT1/Δt1<5K/分で冷却することが記載されている。
特許文献3(特許第5572673号公報)には、R2Fe14Bを主として含む主相と、主相よりRを多く含む粒界相とを備え、粒界相が希土類元素濃度の高い粒界相(Rリッチ相)と、希土類元素濃度が低く遷移金属元素濃度が高い粒界相(遷移金属リッチ相)とを含むR−T−B系磁石が記載されており、この場合、焼結を800℃〜1200℃で行った後、400℃〜800℃で熱処理を行うことでR−T−B系希土類焼結磁石を製造することが記載されている。
特許文献4(特開2014−132628号公報)には、粒界相が、希土類元素の合計原子濃度が70原子%以上のRリッチ相と、前記希土類元素の合計原子濃度が25〜35原子%であって強磁性である遷移金属リッチ相とを含み、前記粒界相中の前記遷移金属リッチ相の面積率が40%以上であるR−T−B系希土類焼結磁石が記載され、その製造方法として、R−T−B系希土類焼結磁石用合金材料を成形して800℃〜1200℃で焼結する工程と、前記焼結後に、650℃〜900℃の範囲であるが、遷移金属リッチ相の分解温度以下に加熱する第1熱処理工程と、前記第1熱処理工程後200℃以下まで冷却した後に、450℃〜600℃に加熱する第2熱処理工程とを行うことが記載されている。
特許文献5(特開2014−146788号公報)には、R2Fe14Bからなる主相と、前記主相よりRを多く含む粒界相とを備えた焼結体からなり、前記主相の磁化方向がc軸方向であり、前記主相の結晶粒子がc軸方向と交差する方向に伸長する楕円状又は長円状であり、前記粒界相が、希土類元素の合計原子濃度が70原子%以上のRリッチ相と、前記希土類元素の合計原子濃度が25〜35原子%である遷移金属リッチ相とを含むR−T−B系希土類焼結磁石が示されている。また、焼結を800℃〜1200℃で行うこと、焼結後、アルゴン雰囲気中で400℃〜800℃にて熱処理を行うことが記載されている。
特許文献6(特開2014−209546号公報)には、R214B主相結晶粒子と、隣接する二つのR214B主相結晶粒子間の二粒子粒界相とを含み、該二粒子粒界相の厚みは5nm以上500nm以下であり、かつ強磁性体とは異なる磁性を有する相からなる希土類磁石が開示されている。また、[0031]には、二粒子粒界相としてT元素を含みつつも強磁性とはならない化合物を形成するための元素を含み、この目的のためには、Al、Ge、Si、Sn、GaなどのM元素を添加することが好ましいこと、希土類磁石にCuに加えてこれらの元素を添加することで、二粒子粒界相として結晶性の良いLa6Co11Ga3型結晶構造を有する結晶相を均一に幅広く形成できるとともに、該La6Co11Ga3型二粒子粒界相とR214B主相結晶粒子との界面にR−Cu薄層を形成でき、これによって主相界面の格子歪を抑制し、逆磁区の発生を抑制することができることが記載されている。この場合、この磁石の製造方法として、焼結後、500℃〜900℃の温度範囲で熱処理を行うことが記載されているが、冷却速度が100℃/分以上、特に300℃/分以上が好ましいとされている。
特許文献7(国際公開第2014/157448号)及び特許文献8(国際公開第2014/157451号)には、Nd2Fe14B型化合物を主相とし、前記主相と、二つの主相間に存在する5〜30nm厚の二粒子間粒界と、三つ以上の主相間に存在する粒界三重点とを有するR−T−B系焼結磁石が開示されている。
特許第3997413号公報 特表2003−510467号公報 特許第5572673号公報 特開2014−132628号公報 特開2014−146788号公報 特開2014−209546号公報 国際公開第2014/157448号 国際公開第2014/157451号
しかしながら、DyやTbを含有しなくても、或いはDyやTbの含有量が少なくても、高温で高い保磁力を発揮するR−(Fe,Co)−B系焼結磁石が要望される。
本発明は、上記要望に応えたもので、室温及び高温で高い保磁力を有する新規なR−(Fe,Co)−B系焼結磁石及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる目的を達成するために種々検討した結果、微粉砕された焼結磁石用合金粉末を成形、焼結後、400℃以下の温度まで冷却し、次いで700〜1000℃の範囲であって前記Prを5原子%以上含有し、かつ主相としてのR2(Fe,Co)14B金属間化合物よりPr含量が多いR'−(Fe,Co)−M1'相と同一成分からなる化合物の分解温度(Td℃)以上に加熱し、次いで400℃以下まで5〜100℃/分の速度で冷却する高温熱処理工程と、この高温熱処理工程後に400〜600℃の範囲でかつTd℃以下の温度で1分〜20時間保持することで磁石体に含まれるR'−(Fe,Co)−M1'相の80体積%以上を析出させ、次いで200℃以下まで冷却する低温熱処理工程を行うこと、或いは400℃以下まで5〜100℃/分の速度で冷却し、次いで400〜600℃の範囲でかつTd℃以下の温度で1分〜20時間保持して磁石体に含まれるR'−(Fe,Co)−M1'相の80体積%以上を析出させ、次いで200℃以下まで冷却する低温熱処理工程を行うことにより、R2(Fe,Co)14B金属間化合物を主相とし、粒界三重点にM2ホウ化物相を含み、R1.1Fe44化合物相を含まず、かつ相幅が平均で50nm以上のR'−(Fe,Co)−M'相が主相を50体積%以上被覆したコア/シェル構造を有するR−(Fe,Co)−B系焼結磁石が得られ、この磁石が、10kOe以上の保磁力が得られることを見出すと共に、かかる焼結磁石が高温でも高い保磁力を維持し、耐熱性の優れた焼結磁石であることを知見し、諸条件及び最適組成を確立して本発明を完成させた。
なお、上記特許文献1は、焼結後の冷却速度が遅く、R−(Fe,Co)−Si粒界相が粒界三重点を形成するとしても、実際上、R−(Fe,Co)−Si粒界相が主相を被覆していることはなく、隣接する主相間の二粒子粒界相を形成することはない。また、特許文献2も、同様に冷却速度が遅く、R−(Fe,Co)−M粒界相が主相を被覆する組織を与えない。特許文献3は、焼結後や熱処理後の冷却速度については示されておらず、その組織についての記載からみて、二粒子粒界相は形成されていないものである。特許文献4は、粒界相がRリッチ相と、Rが25〜35原子%で強磁性相の遷移金属リッチ相を含むものであるが、本発明のR−(Fe,Co)−M相は強磁性相ではなく、反強磁性相である。また、特許文献4の第1熱処理はR−(Fe,Co)−M相の分解温度以下で行うのに対し、本発明の高温熱処理はR−(Fe,Co)−M相の分解温度以上で行うものである。
特許文献5には、焼結後アルゴン雰囲気中で400〜800℃にて熱処理を行うことが記載されているが、冷却速度の記載はなく、その組織についての記載からみると、R−(Fe,Co)−M相が主相を被覆する組織を有さないものである。特許文献6は、熱処理後の冷却速度が100℃/分以上、特に300℃/分以上が好ましいとされ、得られる磁石の粒界相はR613M相が結晶性を有し、かつアモルファスもしくは微結晶のR−Cu相で構成される。本発明は、R−(Fe,Co)−M相がアモルファスもしくは微結晶質である。
特許文献7は、第一粒界の厚み(相幅)が小さく、十分な保磁力の向上が得られないという問題がある。特許文献8も、その実施例に記載された焼結磁石の製造方法が特許文献7の磁石の製造方法と実質的に同じであるから、同様に第一粒界の厚み(相幅)が小さいものである。
また、これまで本発明のR−(Fe,Co)−M相におけるPrの含有比率と耐熱性に関する言及はない。
従って、本発明は、下記のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石及びその製造方法を提供する。
〔1〕
12〜17原子%のR(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも2種以上で,かつNd及びPrを必須とする),0.1〜3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素),0.05〜0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wから選ばれる1種以上の元素),4.8+2×m〜5.9+2×m原子%のB(mはM2の原子%),10原子%以下のCo,0.5原子%以下の炭素,1.5原子%以下の酸素,0.5原子%以下の窒素及び残部Feの組成を有し、R2(Fe,Co)14B金属間化合物を主相として、室温で少なくとも10kOe以上の保磁力を有するR−(Fe,Co)−B系焼結磁石であって、粒界三重点にM2ホウ化物相を含み、かつR1.1Fe44化合物相を含まず、更に25〜35原子%のR'(R'の5原子%以上のPrを必須とし、残部はNdと、Yを含む希土類元素であり、更にR'中のPr含量は主相としてのR2(Fe,Co)14B金属間化合物中のPr含量よりも多い),2〜8原子%のM1'(M1'はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素),8原子%以下のCo,残部Feからなるアモルファス及び/又は微結晶質のR'−(Fe,Co)−M1'相,又は該R'−(Fe,Co)−M1'相とR'が50原子%以上のアモルファスもしくは微結晶質のR'−M1”相(M1”はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素)とからなる粒界相によって前記主相を被覆されたコア/シェル構造を有し、前記R'−(Fe,Co)−M1'相の前記主相に対する被覆率が50体積%以上であるとともに、前記主相二粒子に挟まれた前記粒界相の幅が平均で50nm以上であることを特徴とするR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
〔2〕
前記R'−(Fe,Co)−M1'相におけるM1'としてSiが0.5〜50原子%を占め、残部がAl,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする〔1〕記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
〔3〕
前記R'−(Fe,Co)−M1'相におけるM1'としてGaが1.0〜80原子%を占め、残部がSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする〔1〕記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
〔4〕
前記R'−(Fe,Co)−M1'相におけるM1'としてAlが0.5〜50原子%を占め、残部がSi,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする〔1〕記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
〔5〕
前記R'−(Fe,Co)−M1'相におけるM1'としてCuが0.5〜50原子%を占め、残部がSi,Al,Mn,Ni,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする〔1〕記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
〔6〕
Dy及び/又はTbの含有量が0〜5.0原子%であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
〔7〕
12〜17原子%のR(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも2種以上で、かつNd及びPrを必須とする),0.1〜3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素),0.05〜0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wから選ばれる1種以上の元素),4.8+2×m〜5.9+2×m原子%のB(mはM2の原子%),10原子%以下のCo,及び残部Feの組成を有し、平均微粉粒径が5.0μm以下に微粉砕された焼結磁石用合金粉末を成形し、1000〜1150℃の温度で焼結後、400℃以下の温度まで冷却し、次いで700〜1000℃の範囲であって前記R'−(Fe,Co)−M1'相と同一成分からなる化合物の分解温度(Td℃)以上に加熱し、次いで400℃以下まで5〜100℃/分の速度で冷却する高温熱処理工程と、この高温熱処理工程後に400〜600℃の範囲でかつTd℃以下の温度で1分〜20時間保持することで磁石体に含まれるR'−(Fe,Co)−M1'相の80体積%以上を析出させ、次いで200℃以下まで冷却する低温熱処理工程を行うことを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石の製造方法。
〔8〕
12〜17原子%のR(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも2種以上で、かつNd及びPrを必須とする),0.1〜3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素),0.05〜0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wから選ばれる1種以上の元素),4.8+2×m〜5.9+2×m原子%のB(mはM2の原子%),10原子%以下のCo,及び残部Feの組成を有し、平均微粉粒径が5.0μm以下に微粉砕された焼結磁石用合金粉末を成形し、1000〜1150℃の温度で焼結後、400℃以下まで5〜100℃/分の速度で冷却し、次いで400〜600℃の範囲でかつTd℃以下の温度で1分〜20時間保持して磁石体に含まれるR'−(Fe,Co)−M1'相の80体積%以上を析出させ、次いで200℃以下まで冷却する低温熱処理工程を行うことを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石の製造方法。
〔9〕
前記焼結磁石用合金におけるDy及び/又はTbの含有量が0〜5.0原子%であることを特徴とする〔7〕又は〔8〕記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石の製造方法。
本発明のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石は、Dy及びTbを含まなくても、或いはDy及びTbの含有量が少なくても、10kOe以上の保磁力を与える。
実施例1で作製した焼結磁石の断面を電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)にて観察した図(倍率3000倍)である。 実施例1で作製した焼結磁石の粒界相を透過電子顕微鏡で観察した図である。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
まず、本発明の磁石組成について説明すると、原子百分率で12〜17原子%のR、好ましくは13〜16原子%のR、0.1〜3原子%のM1、好ましくは0.5〜2.5原子%のM1、0.05〜0.5原子%のM2、好ましくは0.07〜0.4原子%のM2、4.8+2×m〜5.9+2×m原子%のB、好ましくは4.9+2×m〜5.7+2×m原子%のB(mはM2の原子%である。)、10原子%以下のCo、及び残部Feからなる組成を有する。
ここで、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも2種以上で、かつNd及びPrを必須とする。Nd及びPrの比率はその合計が80〜100原子%であることが好ましい。Rは原子百分率で12原子%未満では、磁石の保磁力が極端に低下し、17原子%を超えると残留磁束密度Brが低下する。なお、RとしてDy、Tbは含有しなくてもよく、含有する場合はDyとTbの合計量として5.0原子%以下(0〜5.0原子%)、好ましくは2.0原子%以下(0〜2.0原子%)、特に1.5原子%以下(0〜1.5原子%)である。
1は、Si,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素で構成され、R'−(Fe,Co)−M1'相及びR'−M1''相を構成する元素として添加する。M1が0.1原子%未満では、焼結体中にR'−(Fe,Co)−M1'相の生成量が少なく主相のR2(Fe,Co)14B相を十分に被覆することができないため角形性が悪化する。更に当該粒界相の幅が縮小し、期待する保磁力の向上効果が得られず好ましくない。またM1が3原子%を超える場合、残留磁束密度Brが低下するため好ましくない。
2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wから選ばれる1種以上の元素で構成され、焼結磁石中で主相のR2(Fe,Co)14B相より熱力学的に安定なホウ化物(例えばTiB2,ZrB2,NbB2など)を形成する元素として添加する。このホウ化物は焼結磁石中の粒界三重点に生成し、焼結時において主相結晶粒の異常粒成長を抑制する効果がある。異常粒成長が発生することで悪化する角形性の抑制効果が期待できる。更に、本系組成のB量では,原料合金中に初晶のα−Feが過剰に残存しやすく、その結果、焼結磁石の角形性が悪化する。M2の添加によりα−Fe相の析出を抑制した結果、焼結磁石の角形性を改善する効果がある。M2が0.05原子%未満では、磁石中に形成するホウ化物の量が少なく角形性を改善する効果が小さいため好ましくない。0.5原子%を超えると、残留磁束密度Brが低下するため好ましくない。
B量は4.8+2×m〜5.9+2×m原子%の範囲であり、B量が5.9+2×m原子%より多いと、R'−(Fe,Co)−M1'相が生成しないため保磁力が低下する。4.8+2×m原子%より少ないと、残留磁束密度Brが大きく低下するため好ましくない。
Coは含有しなくてもよいが、キュリー温度及び耐食性の向上を目的として、10原子%以下、好ましくは5原子%以下を添加してもよいが、10原子%を超えるCo置換は、保磁力の大幅な低下を招くので好ましくない。
また、本発明の磁石は、酸素、炭素、窒素の含有量が少ないほうが望ましいが、製造工程上、混入が不可避であり、酸素含有量が1.5原子%以下、特に1.2原子%以下、炭素含有量が0.5原子%以下、特に0.4原子%以下、窒素含有量が0.5原子%以下、特に0.3原子%以下まで許容し得る。その他、不純物としては、H,F,Mg,P,S,Cl,Ca等の元素を0.1質量%以下含むことを許容するが、これらの元素も少ないほうが好ましい。
なお、Feの量は残部であるが、好ましくは70〜80原子%、特に75〜80原子%が好ましい。
本発明の磁石の組織は、R2(Fe,Co)14B相を主相とし、また粒界相は、25〜35原子%のR'(R'の5原子%以上のPrを必須とし、残部はNdと、Yを含む希土類元素であり、更にR'中のPr含量は主相としてのR2(Fe,Co)14B金属間化合物中のPr含量よりも多い),2〜8原子%のM1'(M1'はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素),8原子%以下のCo,残部Feからなるアモルファス及び/又は微結晶質のR'−(Fe,Co)−M1'相,及びR'が50原子%以上のアモルファスもしくは微結晶質のR'−M1''相(M1''はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素)とからなる。粒界三重点には、高融点化合物のR酸化物相,又はR炭化物相,R窒化物相,R酸フッ化物相及びこれらの混合相,ならびにM2ホウ化物相(例えばTiB2,ZrB2,NbB2など)が形成される。一方で、R2(Fe,Co)17相及びR1.1Fe44化合物相は存在しない。
このR'−(Fe,Co)−M1'粒界相は、Fe又はFeとCoを含有する化合物で、I4/mcmなる結晶構造をもつ金属間化合物相であると考えられ、例えばR6Fe13Ga1などが挙げられる。電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)などの分析手法を用いて定量分析すると、測定誤差を含めて25〜35原子%のR'、2〜8原子%のM1'、0〜8原子%のCo、残部Feなる範囲にある。なお、磁石組成としてCoを含まない場合もあるが、このとき当然ながら、主相及びR'−(Fe,Co)−M1'粒界相にはCoが含まれない。同相が二粒子粒界相などの粒界相に主相を被覆するように分布することで、隣接する主相を磁気的に分断した結果、保磁力を向上させることができる。
R'−(Fe,Co)−M1'粒界相は、主相であるR2(Fe,Co)14B相と高温で液相となるR'−M1''との包晶反応による生成すると考えられる。つまりR'−(Fe,Co)−M1'は、この包晶点以下で安定相を形成する。R'−(Fe,Co)−M1'の包晶点は添加元素M1'の種類によって異なる。例えばR'=100%Ndの場合、M1'=Cuのとき640℃、M1'=Alのとき750〜820℃、M1'=Gaのとき850℃、M1'=Siのとき890℃、M1'=Snのとき1080℃である。
R'−(Fe,Co)−M1'粒界相を構成するR'のうち、5原子%以上のPrを含むのが好ましい。一般に主相のR2Fe14B化合物の異方性磁場を向上させるため、保磁力向上の観点からPrが添加されるが、保磁力の温度係数(β[%/℃])が低下するため、高温で保磁力が低下してしまう。一方、本系磁石において形成するR'−(Fe,Co)−M1'相はNdよりもPrの方が安定な相を形成するため、R'−(Fe,Co)−M1'中のPr量は主相のPr量よりも濃度が高く、主相のR2(Fe,Co)14B相のPr含有量が相対的に低下する。このPrの組成分布により室温での保磁力を高めると同時に、高温でも高い保磁力を維持することを見出した。更にR'−(Fe,Co)−M1'中のPr量が高くなることで、R'−(Fe,Co)−M1'相の包晶点が低下し、後述の主相を被覆するためのR'−(Fe,Co)−M1'相の析出条件を緩和できる。例えばR'=78原子%Nd+22原子%Prの場合、M1'=Gaのとき810℃となる。
R'−(Fe,Co)−M1'相が二粒子間粒界に分布したときの相幅は平均値で50nm以上であることが好ましい。より好ましくは平均値で50〜500nm、更に好ましくは平均値で100〜500nmである。相幅が平均値で50nmより狭いと磁気分断による十分な保磁力向上効果が得られない。
R'−(Fe,Co)−M1'相は、上記のように隣接する主相間に二粒子粒界相として介在し、主相を被覆するように存在して、主相とでいわばコア/シェル構造を形成する。R'−(Fe,Co)−M1'粒界相による主相に対する被覆率は50体積%以上であり、好ましくは60体積%以上、更に好ましくは70体積%以上で、主相全体を被覆してもよい。なお、主相を被覆する二粒子粒界相の残部はR'が50原子%以上のR'−M1''相である。
R'−(Fe,Co)−M1'相はアモルファスもしくは微結晶、又はアモルファスを含んだ微結晶質であり、R'−M1''相はアモルファスもしくは微結晶質である。本発明において、微結晶質とは、透過電子顕微鏡観察による電子照射径範囲内において複数の方向に配向した結晶集団で、結晶のサイズはおよそ10nm以下であり、結晶質とは、電子照射径範囲内において一方向に配向した単結晶体で、結晶のサイズはおよそ10nmを超えるものと定義する。
本発明の磁石の平均結晶粒径は保磁力向上の観点から6μm以下、好ましくは1.5〜5.5μm、より好ましくは2.0〜5.0μmであり、主相のC軸配向度が98%以上であることが好ましい。平均結晶粒径の測定方法は、次の手順で行う。まず焼結磁石の断面を鏡面になるまで研磨したあと、例えばビレラ液(グリセリン:硝酸:塩酸混合比が3:1:2の混合液)等を用いて粒界を選択的にエッチングした面をレーザー顕微鏡にて観察する。得られた観察像をもとに、画像解析にて個々の粒子の断面積を測定し、等価な円としての直径を算出する。各粒度の占める面積分率のデータを基に平均粒径を求める。
焼結体の平均結晶粒径の制御は、微粉砕時の焼結磁石合金粉末の平均粒度を下げることで行う。
本発明の焼結磁石の着磁率は96%以上、特に97%以上である。着磁率の定義は、熱消磁状態から磁化配向方向に平行に640kA/mの磁場を印加した時のPc=1における磁気分極を、熱消磁状態から磁化配向方向に平行に1590kA/mの磁場を印加した時のPc=1における磁気分極で規格化し算出する。
本発明の上記組織を有するR−(Fe,Co)−B系焼結磁石を得る場合は、まず常法に従い、母合金を粗粉砕、微粉砕、成形、焼結させる。
母合金は原料金属又は合金を真空又は不活性ガス、好ましくはAr雰囲気中で溶解したのち、平型やブックモールドに鋳込む、又はストリップキャストにより鋳造することで得ることができる。また、主相であるR2−(Fe,Co)14−B1相の組成に近い母合金と、焼結温度において液相としてRリッチな組成を有する焼結助剤合金とを別々に作製し、粗粉砕後に秤量混合する、いわゆる2合金法も本発明には適用可能である。この場合、鋳造合金は、鋳造時の冷却速度に依存してα−Feが残存し易いため、R2−(Fe,Co)14−B1相の量を増やす目的で、必要に応じて、真空又はAr雰囲気中で700〜1200℃で1時間以上熱処理する均質化処理を施す。焼結助剤合金については鋳造法の他に、いわゆる液体急冷法も適用できる。
上記合金は、通常0.05〜3mm、特に0.05〜1.5mmに粗粉砕される。粗粉砕工程にはブラウンミル、水素粉砕などが用いられ、ストリップキャストにより作製された合金の場合は水素粉砕が好ましい。粗粉は、例えば高圧窒素を用いたジェットミルなどにより、通常5μm以下に微粉砕される。また、酸素濃度は微粉砕時における酸素濃度と水分量を下げて制御する。なお、合金の粗粉砕、混合、微粉砕のいずれかの工程において、必要に応じて、潤滑剤等の添加剤を添加することができる。
この場合、合金組成は、12〜17原子%のR(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも2種以上で、かつNd及びPrを必須とする),0.1〜3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素),0.05〜0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wから選ばれる1種以上の元素),4.8+2×m〜5.9+2×m原子%のB(mはM2の原子%),10原子%以下のCo,及び残部Feの組成である。
上記微粉砕されたR−(Fe,Co)−B系焼結磁石用合金は、磁界中圧縮成形機で成形され、焼結される。焼結は真空又は不活性ガス雰囲気中、通常900〜1250℃、特に1000〜1150℃で、0.5〜5時間行うことが好ましい。
本発明において、上記組織形態の焼結磁石を得る第一の方法は、成形体を以上のように焼結した後、400℃以下、特に300℃以下(通常、室温)まで冷却する。この場合の冷却速度は特に制限されない。次に、700〜1000℃の範囲であって、R'−(Fe,Co)−M1'相と同一成分からなる化合物の分解温度(Td℃)以上に加熱する。この場合の昇温速度も特に限定されないが、1〜20℃/分、特に2〜10℃/分が好ましい。上記の通り分解温度は添加元素Mの種類によって異なる。なお、上記温度での保持時間は1時間以上が好ましく、より好ましくは1〜10時間、更に好ましくは1〜5時間である。なお、熱処理雰囲気は、真空又はArガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
上記の高温熱処理後、400℃以下、特に300℃以下に冷却する。この場合、少なくとも400℃までの冷却速度は5〜100℃/分、好ましくは5〜80℃/分、より好ましくは5〜50℃/分の速度で冷却する。冷却後の組織には、R'−(Fe,Co)−M1'相が1体積%以下に消失し、主にR2(Fe,Co)14B相、R'−M1''相,R酸化物相,及びM2ホウ化物相で構成され、R炭化物相,R窒化物相,R酸フッ化物相又はこれらの混合相を同時に含む可能性がある。冷却速度が5℃/分未満の場合、R'−(Fe,Co)−M1'相が過剰に析出して粒界三重点に大きく偏析してしまい、結果的に磁気特性を大きく低下させてしまう。一方、100℃/分を超える冷却速度は冷却過程においてR'−(Fe,Co)−M1'相の析出を抑制することができるが、冷却後にR'−M1''相が粒界三重点に偏析してしまうため、その後の低温熱処理でR'−(Fe,Co)−M1'相及びR'−M1''相を二粒子間粒界相に連続かつ均一に析出,分布させることができない。
次に、上記高温熱処理工程後に400〜600℃の範囲のR'−(Fe,Co)−M1'相の分解温度以下の温度に保持してR'−(Fe,Co)−M1'相を析出させ、次いで200℃以下まで冷却する低温熱処理工程を行う。この場合、上記400〜600℃の温度範囲への昇温速度は特に制限されない。この低温熱処理は400〜600℃、より好ましくは400〜550℃、更に好ましくは450〜550℃において1〜50時間、より好ましくは1〜20時間で、真空もしくは不活性ガス雰囲気中で行うのが望ましい。先に述べたR'−(Fe,Co)−M1'粒界相の分解温度以下で、低温からR'−(Fe,Co)−M1'粒界相を析出させることで、主相をR'−(Fe,Co)−M1'粒界相で被覆した組織が得られる。400℃未満は反応速度が遅く実用的ではない。一方、600℃を超えると反応速度が速く、R'−(Fe,Co)−M1'粒界相が過剰に析出して粒界三重点に大きく偏析してしまい、結果的に磁気特性を大きく低下させてしまう。
また、上記組織形態の焼結磁石を得る第二の方法は、上記のように焼結した後、400℃以下、特に300℃以下に冷却するものであるが、この場合はその冷却速度が重要で、少なくとも400℃までの冷却速度は5〜100℃/分、好ましくは5〜80℃/分、より好ましくは5〜50℃/分の速度で冷却する。なお、冷却速度が遅すぎる場合及び早すぎる場合の問題は第一の方法の高温熱処理後の冷却速度の場合と同じである。このように400℃以下に冷却することでR'−(Fe,Co)−M1'相の体積分率が1体積%以下の組織が得られる。
次に、上記のように冷却した後、上記第一の方法における低温熱処理と同様の熱処理を行う。即ち、400〜600℃の範囲のR'−(Fe,Co)−M1'相の分解温度以下の温度に保持してR'−(Fe,Co)−M1'相を析出させる。なお、その方法、条件等は第一の方法の低温熱処理の場合と同様であるので、その説明を省略する。
以下、本発明に対する実施例及び比較例を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜4,比較例1〜3]
所定の組成となるように秤量されたRメタル(RはNd及びPr,又はジジム),電解鉄,Co,その他メタル及びフェロボロンを使用し、Ar雰囲気中で高周波溶解後、ストリップキャスト法により0.2〜0.3mm厚の合金薄帯を作製した。次に、作製した合金薄帯を常温で水素吸蔵処理を行った後、真空中600℃で加熱し脱水素化を行った。得られた合金粉末に潤滑剤としてステアリン酸を0.07質量%加えて混合した。次に得られた粗粉末を窒素気流中のジェットミルで微粉砕して平均粒径3μm程度の微粉末を作製した。その後、不活性ガス雰囲気中でこれらの微粉末を成形装置の金型に充填し、15kOeの磁界中で配向させながら、磁界に対して垂直方向に加圧成形した。この成形体を真空中において1050〜1100℃で3時間焼結した。得られた焼結体は、400℃以下まで冷却した後、900℃で1時間保持の高温熱処理後、200℃まで冷却し、更に2時間の低温熱処理後、200℃以下に冷却した。表1に磁石の組成を、表2に900℃の高温熱処理後、200℃までの冷却速度、低温熱処理温度、低温熱処理後の磁気特性及び組織形態等を示す。
実施例1で作製した焼結磁石の断面を電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)にて観察したところ、図1に示すように、実施例1の組織は、主相よりPrリッチな粒界相が主相を被覆する組織が観察された(なお、図1において、TREは全希土類量を示す)。また、Pr/(全希土類量)を示す図において、黒い方にPrが濃い。実施例1の組織を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察したところ、図2に示すように粒界相の厚みは約50〜130nmであった。表3に実施例1〜4及び比較例1〜3のR'−M1''相とR'−(Fe,Co)−M1'相及び主相のEDXによる半定量値を示す。その結果、実施例1〜4においてR'−M1''相及びR'−(Fe,Co)−M1'相のPrの含有率は主相のそれより高かった。

Claims (9)

  1. 12〜17原子%のR(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも2種以上で,かつNd及びPrを必須とする),0.1〜3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素),0.05〜0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wから選ばれる1種以上の元素),4.8+2×m〜5.9+2×m原子%のB(mはM2の原子%),10原子%以下のCo,0.5原子%以下の炭素,1.5原子%以下の酸素,0.5原子%以下の窒素及び残部Feの組成を有し、R2(Fe,Co)14B金属間化合物を主相として、室温で少なくとも10kOe以上の保磁力を有するR−(Fe,Co)−B系焼結磁石であって、粒界三重点にM2ホウ化物相を含み、かつR1.1Fe44化合物相を含まず、更に25〜35原子%のR'(R'の5原子%以上のPrを必須とし、残部はNdと、Yを含む希土類元素であり、更にR'中のPr含量は主相としてのR2(Fe,Co)14B金属間化合物中のPr含量よりも多い),2〜8原子%のM1'(M1'はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素),8原子%以下のCo,残部Feからなるアモルファス及び/又は微結晶質のR'−(Fe,Co)−M1'相,又は該R'−(Fe,Co)−M1'相とR'が50原子%以上のアモルファスもしくは微結晶質のR'−M1”相(M1”はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素)とからなる粒界相によって前記主相を被覆されたコア/シェル構造を有し、前記R'−(Fe,Co)−M1'相の前記主相に対する被覆率が50体積%以上であるとともに、前記主相二粒子に挟まれた前記粒界相の幅が平均で50nm以上であることを特徴とするR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
  2. 前記R'−(Fe,Co)−M1'相におけるM1'としてSiが0.5〜50原子%を占め、残部がAl,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項1記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
  3. 前記R'−(Fe,Co)−M1'相におけるM1'としてGaが1.0〜80原子%を占め、残部がSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項1記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
  4. 前記R'−(Fe,Co)−M1'相におけるM1'としてAlが0.5〜50原子%を占め、残部がSi,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項1記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
  5. 前記R'−(Fe,Co)−M1'相におけるM1'としてCuが0.5〜50原子%を占め、残部がSi,Al,Mn,Ni,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項1記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
  6. Dy及び/又はTbの含有量が0〜5.0原子%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石。
  7. 12〜17原子%のR(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも2種以上で、かつNd及びPrを必須とする),0.1〜3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素),0.05〜0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wから選ばれる1種以上の元素),4.8+2×m〜5.9+2×m原子%のB(mはM2の原子%),10原子%以下のCo,及び残部Feの組成を有し、平均微粉粒径が5.0μm以下に微粉砕された焼結磁石用合金粉末を成形し、1000〜1150℃の温度で焼結後、400℃以下の温度まで冷却し、次いで700〜1000℃の範囲であって前記R'−(Fe,Co)−M1'相と同一成分からなる化合物の分解温度(Td℃)以上に加熱し、次いで400℃以下まで5〜100℃/分の速度で冷却する高温熱処理工程と、この高温熱処理工程後に400〜600℃の範囲でかつTd℃以下の温度で1分〜20時間保持することで磁石体に含まれるR'−(Fe,Co)−M1'相の80体積%以上を析出させ、次いで200℃以下まで冷却する低温熱処理工程を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石の製造方法。
  8. 12〜17原子%のR(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも2種以上で、かつNd及びPrを必須とする),0.1〜3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素),0.05〜0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wから選ばれる1種以上の元素),4.8+2×m〜5.9+2×m原子%のB(mはM2の原子%),10原子%以下のCo,及び残部Feの組成を有し、平均微粉粒径が5.0μm以下に微粉砕された焼結磁石用合金粉末を成形し、1000〜1150℃の温度で焼結後、400℃以下まで5〜100℃/分の速度で冷却し、次いで400〜600℃の範囲でかつTd℃以下の温度で1分〜20時間保持して磁石体に含まれるR'−(Fe,Co)−M1'相の80体積%以上を析出させ、次いで200℃以下まで冷却する低温熱処理工程を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石の製造方法。
  9. 前記焼結磁石用合金におけるDy及び/又はTbの含有量が0〜5.0原子%であることを特徴とする請求項7又は8記載のR−(Fe,Co)−B系焼結磁石の製造方法。
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