JP7386694B2 - ステータコア、ステータ、回転電機、及びステータコアの製造方法 - Google Patents

ステータコア、ステータ、回転電機、及びステータコアの製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、ステータコア、ステータ、回転電機、及びステータコアの製造方法に関する。
特許文献1は、ロータとステータとがロータの軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型の回転電機を開示する。ステータは、ヨーク及び複数のティースを有するステータコアと、ステータコアの各ティースに配置されるコイルとを備える。代表的には、ヨークは、円環板状の部材である。各ティースは、ヨークの軸方向に突出する柱状の部材であり、ヨークの周方向に離間して並ぶ。特許文献1に開示するステータコアは、ヨークとティースとが一体に成形された圧粉磁心で構成されている。以下、圧粉磁心を圧粉成形体と呼ぶ。
特開2017-229191号公報
圧粉成形体で構成されるステータコアは、ヨークから突出する各ティースの高さを揃えることが難しい。アキシャルギャップ型の回転電機において、ステータコアの各ティースの高さがばらつくと、ロータと各ティースの端面との距離がばらつく。その結果、回転電機の騒音や振動が増大する。
そこで、本開示は、圧粉成形体で構成され、ヨークから各ティースの端面までの高さのばらつきが小さいステータコアを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、騒音や振動が小さいステータ、及び回転電機を提供することを目的の一つとする。更に、本開示は、圧粉成形体で構成され、ヨークから各ティースの端面までの高さのばらつきが小さいステータコアを容易に得られるステータコアの製造方法を提供することを目的の一つとする。
本開示のステータコアは、
アキシャルギャップ型回転電機に用いられるステータコアであって、
円環板状のヨークと、
前記ヨークの表面から突出する柱状の複数のティースとを備え、
前記ヨーク及び前記複数のティースの各々は、軟磁性粉末を含む圧粉成形体で構成され、
前記複数のティースの各々は、
突出方向先端に位置する端面と、
前記端面と前記ヨークの表面とをつなぐ側面とを備え、
前記端面は、研削痕を備え、
前記端面におけるビッカース硬度と、前記側面におけるビッカース硬度との差が、前記端面におけるビッカース硬度の15%以下であり、
前記ヨークの裏面から前記複数のティースの各々の前記端面までの高さのばらつきが0.01mm以下である。
本開示のステータは、
本開示のステータコアと、
前記複数のティースの各々に配置されるコイルとを備える。
本開示の回転電機は、
本開示のステータを備える。
本開示のステータコアの製造方法は、
アキシャルギャップ型回転電機に用いられるステータコアの製造方法であって、
軟磁性粉末を加圧成形して成形体を作製する工程と、
前記成形体に研削加工を施す工程と、
前記研削加工を施した成形体に、400℃以上900℃以下の温度で熱処理を施す工程とを備え、
前記成形体は、円環板状のヨークと、前記ヨークの表面から突出する柱状の複数のティースとを備え、
前記研削加工を施す工程では、前記複数のティースの各々における突出方向先端に位置する端面を研削し、前記ヨークの裏面から前記複数のティースの各々の前記端面までの高さのばらつきを0.01mm以下とする。
本開示のステータコアは、圧粉成形体で構成され、ヨークから各ティースの端面までの高さのばらつきが小さい。本開示のステータ、及び本開示の回転電機は、騒音や振動が小さい。本開示のステータコアの製造方法は、圧粉成形体で構成され、ヨークから各ティースの端面までの高さのばらつきが小さいステータコアを容易に得られる。
図1は、実施形態に係るステータコアの一例を示す概略斜視図である。 図2は、図1の(II)-(II)線で切断した概略断面図である。 図3は、実施形態に係るステータコアの端面近傍を模式的に示す概略断面図である。 図4は、実施形態に係るステータコアの製造方法における成形体を作製する工程の一例を説明する説明図である。 図5は、実施形態に係るステータコアの製造方法における研削加工を施す工程の一例を説明する説明図である。 図6は、実施形態に係るステータコアの製造方法における研削加工を施す工程によって得られた加工体の端面近傍を模式的に示す概略断面図である。 図7は、実施形態に係るステータコアの製造方法における熱処理を施す工程の一例を説明する説明図である。 図8は、実施形態に係るステータの一例を示す概略斜視図である。 図9は、実施形態に係る回転電機の一例を示す概略断面図である。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係るステータコアは、
アキシャルギャップ型回転電機に用いられるステータコアであって、
円環板状のヨークと、
前記ヨークの表面から突出する柱状の複数のティースとを備え、
前記ヨーク及び前記複数のティースの各々は、軟磁性粉末を含む圧粉成形体で構成され、
前記複数のティースの各々は、
突出方向先端に位置する端面と、
前記端面と前記ヨークの表面とをつなぐ側面とを備え、
前記端面は、研削痕を備え、
前記端面におけるビッカース硬度と、前記側面におけるビッカース硬度との差が、前記端面におけるビッカース硬度の15%以下であり、
前記ヨークの裏面から前記複数のティースの各々の前記端面までの高さのばらつきが0.01mm以下である。
本開示のステータコアは、ヨークの裏面から複数のティースの各々の端面までの高さのばらつきが非常に小さい。回転電機は、ステータコアの各ティースにコイルが配置されて構成されるステータが、ロータと共にケースに収納されて構築される。このとき、ヨークの裏面がケースの内面に接する。本開示のステータコアは、ヨークの裏面を基準面とした上記高さのばらつきが小さいため、ステータ及びロータをケースに収納すると、各ティースの端面が磁石のいずれの箇所にも実質的に均一な間隔で対向する。よって、本開示のステータコアを用いて構築される回転電機は、組立て性に優れる上に、トルクリップルが小さくなる。上記回転電機におけるトルクリップルが小さいことで、騒音や振動が増加し難い。また、上記回転電機のトルクリップルが小さいことで、ロータの回転軸が振れ難い。つまり、ロータの回転軸と軸受との間の摩擦力が変動し難い。従って、上記回転電機における機械的なエネルギー損失が増加し難いと考えられる。
本開示のステータコアにおける各ティースの端面は、後述するように、研削加工が施されている。よって、各ティースの端面は、研削痕を備える。研削加工が施された加工面であるティースの端面は、研削加工が施されていない非加工面であるティースの側面に比較して、ビッカース硬度が高い。研削加工が施されることで、歪みが生じて加工硬化するからである。しかし、本開示のステータコアは、ティースの端面と側面とのビッカース硬度の差が非常に小さい。このビッカース硬度の差が小さいのは、後述するように、研削加工が施された後に、特定の温度で熱処理が施され、歪みが除去されているからである。つまり、本開示のステータコアは、全体にわたって均一な磁気特性を有する。よって、本開示のステータコアは、後述する試験例で示すように、ヒステリシス損が小さい。
(2)本開示のステータコアの一例として、
前記複数のティースの各々は、前記端面に設けられる酸化膜を備え、
前記酸化膜の平均厚さは、0.5μm以上10μm以下である形態が挙げられる。
本開示のステータコアを構成する圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む。軟磁性粉末は、一般的に軟磁性材料からなる粉末粒子の表面に絶縁被膜を有する被覆粒子を含む。被覆粒子を含むことで、ステータコアにおける渦電流損を低減できるからである。一方で、本開示のステータコアにおける各ティースの端面は、後述するように、研削加工が施されている。研削加工が施されると、上記絶縁被膜が破壊され、隣り合う粉末粒子同士がつながることがある。本開示のステータコアは、各ティースの端面に酸化膜を備える。この酸化膜は、破壊された絶縁被膜の代わりに、隣り合う粉末粒子同士を絶縁する機能を果たすことができる。よって、各ティースの端面に酸化膜を備える本開示のステータコアは、後述する試験例で示すように、渦電流損が小さい。
酸化膜の平均厚さが0.5μm以上であることで、隣り合う粉末粒子同士を絶縁する機能を良好に果たすことができる。しかし、酸化膜が厚過ぎると、磁気特性劣化に伴うヒステリシス損が大きくなる傾向にある。よって、酸化膜の平均厚さが10μm以下であることで、ヒステリシス損の増大を抑制できる。
(3)本開示のステータコアの一例として、
前記ヨークの表面から前記複数のティースの各々の前記端面までの高さのばらつきが0.01mm以下である形態が挙げられる。
上記形態のステータコアは、ヨークの表面から複数のティースの各々の端面までの高さのばらつきが非常に小さい。各ティースにはコイルが配置される。上記形態のステータコアは、ヨークの表面を基準面とした上記高さのばらつきが小さいため、各ティースにコイルを配置すると、各ティースに対してコイルが適切に配置され易い。また、ヨークの表面を基準面とした上記高さのばらつきが小さいと、各ティースで構成される磁気回路の長さが均一となり易い。よって、上記形態のステータコアは、組立て性により優れる上に、トルクリップルをより小さくできる。
(4)本開示のステータコアの一例として、
前記圧粉成形体の相対密度が90%以上である形態が挙げられる。
上記形態は、相対密度が90%以上と高く緻密である。このような形態は、飽和磁束密度が高いといった磁気特性に優れるアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。
(5)本開示のステータコアの一例として、
前記軟磁性粉末は、純鉄、Siを含む鉄基合金、又はAlを含む鉄基合金を含む形態が挙げられる。
上記形態において純鉄を含む場合には、飽和磁束密度が高いステータコアにし易い、緻密なステータコアにし易い、ステータコアを成形し易くステータコアの製造性に優れる、といった効果を奏する。上記形態において鉄基合金を含む場合には、低損失なステータコアにできる。
(6)本開示の一態様に係るステータは、
上記(1)から(5)のいずれか一つのステータコアと、
前記複数のティースの各々に配置されるコイルとを備える。
本開示のステータは、本開示のステータコアを備えるため、トルクリップルを小さくでき、騒音や振動が小さいアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。
(7)本開示の一態様に係る回転電機は、
本開示のステータを備える。
本開示の回転電機は、本開示のステータを備えるため、組立て性に優れる。本開示のステータコアは、上述したように、ヨークの裏面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつきが小さい。そのため、ステータ及びロータをケースに収納すると、ステータコア、コイル、及びロータが精度よく配置されるからである。また、本開示の回転電機は、本開示のステータを備えるため、トルクリップルを小さくでき、騒音や振動が小さい。
(8)本開示の一態様に係るステータコアの製造方法は、
アキシャルギャップ型回転電機に用いられるステータコアの製造方法であって、
軟磁性粉末を加圧成形して成形体を作製する工程と、
前記成形体に研削加工を施す工程と、
前記研削加工を施した成形体に、400℃以上900℃以下の温度で熱処理を施す工程とを備え、
前記成形体は、円環板状のヨークと、前記ヨークの表面から突出する柱状の複数のティースとを備え、
前記研削加工を施す工程では、前記複数のティースの各々における突出方向先端に位置する端面を研削し、前記ヨークの裏面から前記複数のティースの各々の前記端面までの高さのばらつきを0.01mm以下とする。
本開示のステータコアの製造方法は、成形体における各ティースの端面に研削加工を施すことで、ヨークの裏面から各ティースの端面までの高さのばらつきを非常に小さくできる。しかし、端面に研削加工を施すと、端面が歪みによって加工硬化する。そこで、本開示のステータコアの製造方法は、研削加工を施した後に、特定の温度で熱処理を施すことで、歪みを除去している。この歪みの除去によって、全体にわたって均一な磁気特性を有するステータコアが得られる。このとき、熱処理の温度を400℃以上とすることで、上記歪みを効果的に除去できる。ここで、軟磁性粉末は、一般的に軟磁性材料からなる粉末粒子の表面に絶縁被膜を有する被覆粒子を含む。熱処理の温度を900℃以下とすることで、上記歪みを十分に除去できつつ、熱処理によって軟磁性粉末の絶縁被膜が破壊されることを抑制でき、渦電流損が増大することを抑制できる。本開示のステータコアの製造方法は、ステータコアを圧粉成形体で構成でき、かつティースの端面に研削加工を施した後に熱処理を施すだけで、ヨークの裏面を基準面とした上記高さのばらつきが小さいステータコアを容易に得られる。
(9)本開示のステータコアの製造方法の一例として、
前記研削加工は、平面研削である形態が挙げられる。
各ティースの端面を平面研削することで、ヨークの裏面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつきが小さいステータコアをより容易に得られる。
(10)ティースの端面に平面研削を行う本開示のステータコアの製造方法の一例として、
前記研削加工を施す工程では、更に前記ヨークの裏面を平面研削する形態が挙げられる。
各ティースの端面を平面研削すると共に、ヨークの裏面を平面研削することで、ヨークの裏面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつきが小さいステータコアをより容易に得られる。
(11)本開示のステータコアの製造方法の一例として、
前記熱処理を施す工程では、酸素濃度が体積割合で500ppm以上10000ppm以下である酸素雰囲気にて行う形態が挙げられる。
軟磁性粉末は、一般的に軟磁性材料からなる粉末粒子の表面に絶縁被膜を有する被覆粒子を含む。被覆粒子を含むことで、ステータコアにおける渦電流損を低減できるからである。一方で、軟磁性粉末を加圧成形した成形体における各ティースの端面は、研削加工を施す。研削加工を施すと、上記絶縁被膜が破壊され、隣り合う粉末粒子同士がつながる。そこで、本開示のステータコアの製造方法は、酸素雰囲気にて熱処理を行う。酸素雰囲気にて熱処理を行うと、研削加工を施した各ティースの表面が酸化されて酸化膜が形成される。この酸化膜は、破壊された絶縁被膜の代わりに、隣り合う粉末粒子同士を絶縁する機能を果たすことができる。
酸素雰囲気中の酸素濃度が500体積ppm以上であることで、隣り合う粉末粒子同士を絶縁する機能を良好に果たすことができる程度の酸化膜を形成することができる。一方、酸素雰囲気中の酸素濃度が10000体積ppm以下であることで、酸化に伴うヒステリシス損の増大を抑制できる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
〔ステータコア〕
図1~図3、及び適宜図8、図9を参照して、実施形態のステータコア1を説明する。ステータコア1は、円環板状のヨーク3と、柱状の複数のティース2とを備える。各ティース2は、ヨーク3の表面31から突出する。ステータコア1は、アキシャルギャップ型回転電機に用いられる。代表的には、ステータコア1は、ステータのコアに利用できる。アキシャルギャップ型回転電機の一例として、後述の図9に示す回転電機9が挙げられる。また、ステータの一例として、後述の図8に示すステータ8が挙げられる。ステータコア1は、各ティース2に図8及び図9に示すコイル80が配置されて、コイル80がつくる磁束や図9に示す磁石95の磁束が通過する磁気回路の構成部材として利用される。
実施形態のステータコア1は、図3に示す軟磁性粉末100を含む圧粉成形体で構成される。実施形態のステータコア1は、ヨーク3の裏面32(図2)を基準面として、この基準面から各ティース2における突出方向先端の端面21までの高さH1のばらつきが小さい点を特徴の一つとする。また、実施形態のステータコア1は、各ティース2の端面21と、端面21とヨーク3の表面31とをつなぐ側面22とのビッカース硬度の差が小さい点を特徴の一つとする。以下、詳細に説明する。
<ヨーク>
ヨーク3は、平面形状が円環状である板部材である。ヨーク3は、表面31と、裏面32と、表面31と裏面32とをつなぐ内周面及び外周面とを備える。表面31は、ティース2が突出して設けられる側に位置する面であり、裏面32は、表面31と反対側の面である。ヨーク3は、その中央部に、表面31及び裏面32を貫通する軸孔39を備える。ヨーク3は、ヨーク3の周方向に並ぶティース2のうち、隣り合うティース2同士を磁気的に結合する。
<ティース>
各ティース2は、柱状の部材であり、ヨーク3の表面31に直交するように突出する。また、各ティース2は、ヨーク3の周方向に所定の間隔をあけて配置される。代表的には、図1に例示するように、各ティース2は、ヨーク3の周方向に等間隔に配置される。ヨーク3の表面31に直交する方向は、ヨーク3の軸孔39の軸方向に平行な方向に相当する。また、各ティース2の突出方向は、ヨーク3の軸孔39の軸方向に平行な方向に相当する。本例のステータコア1は、ヨーク3と複数のティース2の各々とが一体の圧粉成形体で構成される。
代表的には、各ティース2の形状、大きさは同一である。ティース2の外形は、代表的には、ティース2の軸方向に直交する平面で切断した断面形状がティース2の軸方向に一様な形状である角柱状等が挙げられる。本例のティース2は、上記断面形状が台形状である四角柱体である。また、本例のティース2は、ティース2の軸方向の全長にわたって一様な断面形状を有する。上記断面形状が台形状であるティース2は、断面積を大きく確保し易い。また、ステータコア1のデッドスペースを低減し易く、占積率が高いステータ8を構築し易い。その他の外形として、上記断面形状が二等辺三角形等の三角形状である角柱体等が挙げられる。また、別の外形として、上記断面形状が長方形である直方体、上記断面形状が円形である円柱等が挙げられる。各ティース2は、先端に向かうに従って先細るテーパー状に構成されていてもよい。
ここでの「台形状」、「三角形状」とは、幾何学上の台形、三角形だけでなく、本例のように角部に丸みを有する形状を含めて、実質的に台形、三角形とみなされる範囲を含む。例えば、断面の輪郭が直線を含む場合、この直線の延長線の交点が多角形の頂点をなす形状を含む。又は、例えば、断面の輪郭が曲線及び直線を含む場合、この曲線の接線と直線又は直線の延長線との交点が多角形の頂点をなす形状を含む。
ティース2の個数は、2個以上であればよく、適宜選択できる。上記個数は、例えば3個以上、更に6個以上でもよい。ステータコア1を三相交流回転機器に利用する場合、ティース2の数は3の倍数が好ましい。図1は、上記個数が6個である形態を例示する。
≪ヨークの裏面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつき≫
ヨーク3の裏面32を基準面として、この基準面から複数のティース2の端面21までの高さH1(図2)のばらつきは、0.01mm以下である。回転電機9は、図9に示すように、ステータコア1の各ティース2にコイル80が配置されて構成されるステータ8が、ロータ90と共にケース92に収納されて構築される。このとき、ヨーク3の裏面32(図2)は、ケース92の内面に接する。ヨーク3の裏面32を基準面とした上記高さのばらつきが0.01mm以下であれば、ステータ8及びロータ90をケース92に収納すると、各ティース2の端面21が磁石95のいずれの箇所にも実質的に均一な間隔で対向する。よって、回転電機9におけるトルクリップルが小さくなる。
ヨーク3の裏面32を基準面とした上記高さのばらつきは、以下のように求められる。まず、各ティース2において、ヨーク3の裏面32からティース2の端面21までの高さH1(図2)を測定する。測定は、0級の定盤を備えたハイトゲージを用い、定盤上にティース2の端面21が上方を向くようにステータコア1を載置して行う。各ティース2の端面21上に、複数の測定点を選択する。測定点は、ティース2の重心とヨーク3の中心とを通るように引いた直線上に設定することが挙げられる。測定点は、上記直線上に3点以上選択することが好ましい。特に、測定点は、上記直線上において、ティース2の重心と、ヨーク3の中心側に位置するティース2の縁部と、ヨーク3の中心と遠い側に位置するティース2の縁部とを含むことが好ましい。各ティース2におけるヨーク3の裏面32から端面21までの高さH1は、定盤から各測定点までの高さを測定し、測定で得られた高さの平均値とする。次に、複数のティース2における上記高さH1のうち、最大高さと最小高さとを選択する。ヨーク3の裏面32を基準面とした上記高さH1のばらつきは、最大高さと最小高さの差を算出することで求められる。ヨーク3の裏面32を基準面とした上記高さH1のばらつきは、小さい方が好ましい。ヨーク3の裏面32を基準面とした上記高さH1のばらつきは、更に0.008mm以下、特に0.005mm以下が好ましい。
≪ヨークの表面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつき≫
ヨーク3の表面31を基準面として、この基準面から複数のティース2の端面21までの高さH2(図2)のばらつきは、0.01mm以下であることが好ましい。各ティース2にはコイル80(図8)が配置される。ヨーク3の表面31を基準面とした上記高さのばらつきが0.01mm以下であれば、各ティース2にコイル80を配置すると、各ティース2に対してコイル80が適切に配置され易い。また、ヨーク3の表面31を基準面とした上記高さのばらつきが0.01mm以下であれば、各ティース2で構成される磁気回路の長さが均一となり易い。
ヨーク3の表面31を基準面とした上記高さのばらつきは、以下のように求められる。まず、各ティース2において、ヨーク3の表面31からティース2の端面21までの高さH2(図2)を測定する。測定は、隣り合うティース2の重心同士を結ぶ直線の中央を含むヨーク3の表面31を基準面として、ハイトゲージを用いて行う。測定点は、ティース2の端面21における重心とする。一つのティース2に着目すると、ヨーク3の周方向に沿ってティース2の両側にそれぞれ表面を有する。このティース2の両側に位置する二つの表面をそれぞれ一つのティース2に対する基準面として採用する。測定は、上記二つの基準面の各々からティース2の端面21までの高さをハイトゲージで測ることにより行う。各ティース2におけるヨーク3の表面31を基準面とした上記高さH2は、測定で得られた二つの高さの平均値とする。次に、複数のティース2における上記高さH2のうち、最大高さと最小高さとを選択する。ヨーク3の表面31を基準面とした上記高さH2のばらつきは、最大高さと最小高さの差を算出することで求められる。ヨーク3の表面31を基準面とした上記高さH2のばらつきは、小さい方が好ましい。ヨーク3の表面31を基準面とした上記高さH2のばらつきは、更に0.008mm以下、0.005mm以下が好ましい。
ヨーク3の裏面32を基準面とした各ティース2の端面21までの高さH1は、ヨーク3と複数のティース2とが一体の圧粉成形体を成形後、各ティース2の端面21に研削加工を施すことで調整できる。上記高さH1の調整については、後述する製造方法にて詳述する。各ティース2の端面21に研削加工が施されるため、各ティース2の端面21は、図1に示すように、研削痕210を備える。図1では、説明の便宜上、一つのティース2のみに研削痕210を誇張して図示しており、他のティース2の研削痕は省略している。研削痕210は、研削加工時に生じる筋状の凹凸である。研削痕210の筋は、研削加工時におけるティース2と図5に示す研削盤400との相対的な移動方向に沿って形成される。
≪ビッカース硬度≫
各ティース2の端面21は、ヨーク3と複数のティース2とが一体の圧粉成形体を成形後、研削加工が施されている。研削加工は、ティース2の側面22には施されていない。ティース2の側面22は、ティース2の端面21とヨーク3の表面31とをつなぐ面である。研削加工が施された加工面であるティース2の端面21は、研削加工が施されていない非加工面であるティース2の側面22に比較して、ビッカース硬度が高い。研削加工が施されることで、歪みが生じて加工硬化するからである。しかし、本実施形態のステータコア1は、ティース2の端面21と側面22とのビッカース硬度の差が非常に小さい。本実施形態のステータコア1において、ビッカース硬度の差が小さいのは、ティース2の端面21に研削加工が施された後に、特定の温度で熱処理が施され、歪みが除去されているからである。歪みの除去については、後述する製造方法にて詳述する。
研削加工の後に熱処理が施されることで、ステータコア1は、全体にわたって均一的なビッカース硬度を備える。具体的には、ティース2の端面21におけるビッカース硬度と、側面22におけるビッカース硬度との差が、端面21におけるビッカース硬度の15%以下である。ティース2の端面21におけるビッカース硬度を硬度A、側面22におけるビッカース硬度を硬度Bとする。本実施形態のステータコア1は、(硬度A-硬度B)/硬度Aで示される硬度差が15%以下を満たす。上記硬度差は、以下のように求められる。端面21について、任意の測定点を10箇所選択し、ビッカース硬度計を用いて、各測定点の硬度を測定する。このとき、端面21の中央部、及び周縁部近傍を測定点として含むことが好ましい。また、同様に、側面22について、任意の測定点を10箇所選択し、ビッカース硬度計を用いて、各測定点の硬度を測定する。このとき、側面22の周方向に沿った複数箇所、及び側面22の軸方向に沿った複数箇所を測定点として含むことが好ましい。測定した端面21及び側面22の各硬度の平均値を算出し、端面21の硬度の平均値を硬度Aとし、側面22の硬度の平均値を硬度Bとして、(硬度A-硬度B)/硬度Aを算出する。上記硬度差は小さい方が好ましい。上記硬度差は、更に12%以下、特に10%以下が好ましい。
≪酸化膜≫
ステータコア1を構成する圧粉成形体は、図3に示す軟磁性粉末100を含む。軟磁性粉末100は、一般的に軟磁性材料からなる粉末粒子111の表面に絶縁被膜112を有する被覆粒子110を含む。各ティース2の端面21は、各ティース2の突出高さを調整するために、ヨーク3と複数のティース2とが一体の圧粉成形体を成形後、研削加工が施されている。研削加工が施されると、上記絶縁被膜112が破壊され、隣り合う粉末粒子111同士がつながることがある。そこで、端面21に酸化膜25を備えることが好ましい。この酸化膜25は、ティース2の端面21に研削加工が施された後に、酸素雰囲気中で熱処理が施されることで形成される。酸化膜25の形成については、後述する製造方法にて詳述する。酸化膜25は、図3に示すように、研削加工によって露出された粉末粒子111、及び絶縁被膜112のうち研削加工によって破壊された領域近傍が酸化されて構成される。酸化膜25は、研削加工によって破壊された絶縁被膜112の代わりに、隣り合う粉末粒子111同士を絶縁する機能を果たす。
酸化膜25の平均厚さは、0.5μm以上10μm以下が好ましい。酸化膜25の平均厚さが0.5μm以上であることで、隣り合う粉末粒子111同士を絶縁する機能を良好に果たすことができる。しかし、酸化膜25が厚過ぎると、磁気特性劣化に伴うヒステリシス損が大きくなる傾向にある。よって、酸化膜25の平均厚さが10μm以下であることで、ヒステリシス損の増大を抑制できる。また、酸化膜25の平均厚さが10μm以下であることで、酸化膜25の厚肉化を抑制できる。酸化膜25の平均厚さは、更に1μm以上8μm以下、特に1.5μm以上7μm以下が好ましい。
<大きさ>
ヨーク3の大きさ、及びティース2の大きさは、回転電機9に応じて適宜選択できる。ヨーク3の大きさは、内径、外径、厚さ等である。ティース2の大きさは、断面積、突出高さ等である。例えば、ヨーク3の内径は5mm以上150mm以下、ヨーク3の外径は30mm以上300mm以下、ヨーク3の厚さは1.0mm以上10mm以下、更に1.5mm以上7.0mm以下が挙げられる。ヨーク3の内径は、軸孔39の直径である。また、例えば、ティース2の断面積は5mm以上800mm以下、ティース2の突出高さは3mm以上50mm以下が挙げられる。ここでのティース2の断面積とは、ティース2の軸方向に直交する平面で切断した断面の面積である。
<構成材料>
ステータコア1は、図3に示す軟磁性粉末100を含む圧粉成形体で構成される。軟磁性粉末100は、例えば、純鉄、又は鉄基合金を含むことが挙げられる。
ここでの純鉄とは、純度が99%以上、即ち鉄(Fe)の含有量が99質量%以上のものである。純鉄は、飽和磁束密度が高い、成形性に優れる、圧縮成形によって緻密化し易い、といった効果を奏する。そのため、純鉄を含むと、飽和磁束密度が高いステータコア1、相対密度が高く緻密なステータコア1、製造過程では成形し易く、製造性に優れるステータコア1にできる。また、緻密であることで、飽和磁束密度をより高め易い上に、強度等の機械的特性にも優れるステータコア1にできる。
ここでの鉄基合金は、添加元素を含み、残部がFe及び不可避不純物からなるものである。鉄基合金は、一種又は二種以上の添加元素を含む。添加元素は、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)等が挙げられる。鉄基合金の具体例として、Siを含む鉄基合金であるFe-Si系合金、Alを含む鉄基合金であるFe-Al系合金、Si又はAlに加えてCrを含む鉄基合金等が挙げられる。鉄基合金の電気抵抗は、純鉄よりも大きい。そのため、鉄基合金を含むと、渦電流損等の鉄損を低減でき、低損失なステータコア1にできる。純鉄と鉄基合金との双方を含むステータコア1としてもよい。
軟磁性粉末100は、図3に示すように、一般的に軟磁性材料からなる粉末粒子111の表面に絶縁被膜112を有する被覆粒子110を含む。被覆粒子110を含むと、渦電流損等の鉄損を低減でき、低損失なステータコア1にできる。特に、純鉄からなる粉末粒子111と絶縁被膜112とを有する被覆粒子110を含むと、飽和磁束密度が高く、磁気特性に優れる上に、低損失なステータコア1にできる。絶縁被膜112の構成材料は、例えばリン酸塩、シリカ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムといった酸化物等が挙げられる。リン酸塩は、鉄又は鉄基合金からなる粉末粒子111との密着性に優れる上に、変形性にも優れる。そのため、リン酸塩からなる絶縁被膜112は、成形時、上述の鉄系の粉末粒子111の変形に追従して変形し易く、損傷し難い。従って、健全な絶縁被膜112を備える圧粉成形体を製造できる。このような圧粉成形体を備えることで、低損失なステータコア1にできる。
<相対密度>
ステータコア1の相対密度が高く、緻密であると、飽和磁束密度等の磁気特性、強度等の機械的特性に優れて好ましい。定量的には、ステータコア1の相対密度は、90%以上であることが好ましい。相対密度が90%以上であれば、飽和磁束密度が高く、強度にも優れるステータコア1にできる。磁気特性の向上、機械的特性の向上等を望む場合、上記相対密度は93%以上、更に95%以上が好ましい。
ここでの相対密度とは、ステータコア1を構成する圧粉成形体の理論密度に対する実際に測定した圧粉成形体の実測密度の比率(%)である。上記理論密度は、圧粉成形体を構成する軟磁性粉末の真密度を等価な値として利用できる。
〔ステータコアの製造方法〕
実施形態に係るステータコアの製造方法は、下記工程を備える。
工程A:成形体を作製する工程。
工程B:成形体に研削加工を施す工程。
工程C:研削加工を施した成形体に熱処理を施す工程。
以下、各工程を詳細に説明する。
<工程A:成形体を作製する工程>
成形体を作製する工程では、軟磁性粉末を含む原料粉末を所定の形状に加圧成形して、図4に示す成形体200を作製する。成形体200は、円環板状のヨーク3と、ヨーク3の表面31から突出する柱状の複数のティース2とを備える。加圧成形は、給粉機を用いて金型内に原料粉末を充填して行う。加圧成形には、プレス成形機等を利用できる。軟磁性粉末は、軟磁性材料からなる粉末粒子の表面に絶縁被膜を有する被覆粒子を含む。原料段階での被覆粒子は、粉末粒子のほぼ全表面に絶縁被膜を有する。原料粉末は、軟磁性粉末に加えて、バインダや潤滑剤を含んでもよい。金型に潤滑剤を塗布してもよい。
軟磁性粉末の平均粒径は、例えば20μm以上350μm以下が挙げられる。軟磁性粉末の平均粒径が上記の範囲であると、軟磁性粉末を取り扱い易い上に、加圧成形し易い。軟磁性粉末の平均粒径を40μm以上300μm以下、更に40μm以上250μm以下としてもよい。ここでの軟磁性粉末の平均粒径とは、レーザ回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置を用いて測定し、積算質量が全粒子の質量の50%となる粒径とする。
加圧成形時の圧力は、例えば500MPa以上2000MPa以下が挙げられる。加圧成形時の圧力が500MPa以上であることで、緻密化し易く、相対密度が高いステータコア1を製造できる。一方、加圧成形時の圧力が2000MPa以下であることで、被覆粒子における絶縁被膜の損傷を抑制し易い。加圧成形時の圧力は、更に700MPa以上1800MPa以下、特に800MPa以上1500MPa以下が挙げられる。
加圧成形は、上述したように、給粉機を用いて金型内に原料粉末を充填して行う。一般的な給粉機は、金型上を直線的に往復して金型内に給粉する。そのため、金型における給粉開始側の箇所の方が、給粉機の折り返し側の箇所よりも原料粉末が多く充填され易い傾向にある。よって、給粉機を用いて得られる成形体200は、ヨーク3の裏面32を基準面とすると、給粉開始側に位置したティース2の端面21までの高さが、給粉機の折り返し側に位置したティース2の端面21までの高さに比較して高くなり易い。例えば、図4では、ヨーク3の裏面32を基準面とすると、右側のティース2の端面21までの高さが、左側のティース2の端面21までの高さよりも高い。よって、加圧成形では、図4に示すように、ヨーク3の裏面32を基準面とした各ティース2の端面21までの高さに大きな差aが生じ易い。
<工程B:研削加工を施す工程>
研削加工を施す工程では、図5に示すように、上記工程Aで得られた成形体200に研削加工を施す。研削加工は、各ティース2における突出方向先端に位置する端面21に対して行う。この研削加工によって、ヨーク3の裏面32を基準面とした各ティース2の端面21までの高さのばらつきを0.01mm以下とする。研削加工は、各ティース2の側面22には行わない。研削加工は、研削盤400で行う。研削加工は、平面研削であることが挙げられる。
研削加工を施す際、各ティース2における突出方向先端の端部を固定することが好ましい。各ティース2の端部の固定は、例えば、図5に示すように、各ティース2の端部が挿入可能な貫通孔310を備える板状部材300を用いて行うことが挙げられる。板状部材300は、ティース2の個数に対応した複数の貫通孔310を備える。貫通孔310の孔形状は、ティース2の外形と相似である。貫通孔310の大きさは、ティース2の端部が挿入可能であり、かつティース2の端部が挿入された状態において、ティース2の側面22との間の隙間が微小である程度に適宜選択できる。各貫通孔310の孔形状、大きさは同一である。
研削加工は、上記板状部材300の各貫通孔310に各ティース2を挿入し、貫通孔310の内周面でティース2の端面21近傍の側面22を保持した状態で行う。このとき、研削加工によって得られる加工体500において、ヨーク3の裏面32を基準面とした各ティース2の端面21までの高さが所望の高さとなると共に、上記高さのばらつきが0.01mm以下となるように、板状部材300を固定する。加工体500は、図6に示す。なお、図5では、分かり易いように、各ティース2における板状部材300からの露出領域を誇張して示す。各ティース2の端面21近傍を板状部材300で固定することで、研削加工によって各ティース2の端面21と側面22との稜線近傍が欠けたりすることを防止できる。
成形体200におけるヨーク3の裏面32を基準面とした各ティース2の端面21までの高さは、上述したように、給粉開始側に位置したティース2が最も高く、給粉機の折り返し側に位置したティース2に向かうに従って低くなる。例えば、図5では、右側のティース2の上記高さが最も高く、左側のティース2に向かうに従って上記高さが漸次低くなっている。このような高さのばらつきによって、給粉開始側に位置したティース2の加工量が最も多くなり、給粉機の折り返し側に位置したティース2に向かうに従って少なくなる。研削加工では、板状部材300も一緒に研削してもよい。
研削加工が施された成形体には、ティース2の端面21に図1に示す研削痕210が形成される。以下、研削加工が施された成形体を、加工体500と呼ぶ。加工体500は、ティース2の端面21のビッカース硬度が、ティース2の側面22のビッカース硬度に比較して高くなる。研削加工が施されることで、端面21に歪みが生じて加工硬化するからである。
また、加工体500は、図6に示すように、各ティース2の端面21近傍の被覆粒子110が塑性変形し、絶縁被膜112が破壊されて、隣り合う粉末粒子111同士がつながることがある。隣り合う粉末粒子111同士がつながると、渦電流損が増大するおそれがある。
研削加工を施す工程では、更にヨーク3の裏面32も研削加工することもできる。ヨーク3の裏面32を研削加工することで、ヨーク3の裏面32を基準面とした各ティース2の端面21までの高さのばらつきが小さいステータコア1を得易い。ヨーク3の裏面32を研削加工すると、その裏面32にも図示しない研削痕が形成される。
<工程C:熱処理を施す工程>
熱処理を施す工程では、図7に示すように、加工体500に、400℃以上900℃以下の温度で熱処理を施す。この熱処理によって、上記工程Bにおける研削加工によってティース2の端面21に生じた歪みを除去できる。熱処理の温度を400℃以上とすることで、上記歪みを効果的に除去できる。一方、熱処理の温度を900℃以下とすることで、上記歪みを十分に除去できつつ、熱処理によって軟磁性粉末の絶縁被膜が破壊されることを抑制でき、渦電流損が増大することを抑制できる。熱処理の温度は、更に450℃以上850℃以下、特に500℃以上800℃以下が挙げられる。熱処理の保持時間は、5分以上60分以下とすることが挙げられる。熱処理の保持時間を5分以上とすることで、上記歪みを効果的に除去できる。一方、熱処理の保持時間を60分以下とすることで、上記歪みを十分に除去できつつ、熱処理によって軟磁性粉末の絶縁被膜が破壊されることを抑制でき、渦電流損が増大することを抑制できる。熱処理の保持時間は、更に10分以上45分以下、特に15分以上30分以下が挙げられる。
熱処理を施す工程では、酸素濃度が体積割合で500ppm以上10000ppm以下である酸素雰囲気にて行うことが好ましい。上述したように、研削加工が施された加工体500は、図6に示すように、各ティース2の端面21近傍の被覆粒子110が塑性変形し、絶縁被膜112が破壊されて、隣り合う粉末粒子111同士がつながることがある。酸素雰囲気にて熱処理を行うと、研削加工を施した各ティース2の表面が酸化される。よって、酸素雰囲気にて熱処理を行うと、図3に示すように、各ティース2の端面21に酸化膜25が形成される。酸化膜25は、研削加工によって露出された粉末粒子111、及び絶縁被膜112のうち研削加工によって破壊された領域近傍が酸化されて構成される。
酸素雰囲気中の酸素濃度が500体積ppm以上であることで、隣り合う粉末粒子111同士を絶縁する機能を良好に果たすことができる程度の酸化膜25を形成することができる。一方、酸素雰囲気中の酸素濃度が10000体積ppm以下であることで、酸化に伴うヒステリシス損の増大を抑制できる。酸素雰囲気中の酸素濃度は、体積割合で更に700ppm以上8000ppm以下、1000ppm以上7500ppm以下、特に2000ppm以上5000ppm以下が挙げられる。
<実施形態の主な作用・効果>
実施形態のステータコア1は、ヨーク3の裏面32から複数のティース2の各々の端面21までの高さのばらつきが0.01mm以下と非常に小さい。回転電機9は、図9に示すように、ステータコア1の各ティース2にコイル80が配置されて構成されるステータ8が、ロータ90と共にケース92に収納されて構築される。このとき、ヨーク3の裏面32(図2)は、ケース92の内面に接する。ヨーク3の裏面32を基準面とした上記高さのばらつきが0.01mm以下であることで、ステータ8及びロータ90をケース92に収納すると、各ティース2の端面21が磁石95のいずれの箇所にも実質的に均一な間隔で対向する。よって、上記回転電機9におけるトルクリップルが小さくなる。
また、実施形態のステータコア1は、ティース2の端面21と側面22とのビッカース硬度の差が非常に小さい。実施形態のステータコア1において、ビッカース硬度の差が小さいのは、ヨーク3の裏面32から複数のティース2の各々の端面21までの高さを調整するために端面21に研削加工が施された後に、特定の温度で熱処理が施され、歪みが除去されているからである。そのため、上記ステータコア1は、全体にわたって均一な磁気特性を有する。よって、上記ステータコア1は、ヒステリシス損が小さい。
更に、実施形態のステータコア1は、各ティース2の端面21に酸化膜25を備える。この酸化膜25は、軟磁性粉末100中の被覆粒子110における絶縁被膜112の機能を有する。つまり、被覆粒子110同士が絶縁されている。そのため、上記ステータコア1は、渦電流損が小さい。
実施形態のステータコアの製造方法は、軟磁性粉末を加圧成形して得られた成形体200おける各ティース2の端面21に研削加工を施すことで、ヨーク3の裏面32から各ティース2の端面21までの高さのばらつきを非常に小さくできる。研削加工を施すと、その加工面である端面21が歪みによって加工硬化する。上記ステータコアの製造方法は、研削加工を施した後に、特定の温度で熱処理を施すことで、歪みを除去している。この歪みの除去によって、全体にわたって均一な磁気特性を有するステータコア1が得られ、ヒステリシス損を小さくできる。以上より、上記ステータコアの製造方法は、ステータコア1を圧粉成形体で構成でき、かつティース2の端面21に研削加工を施した後に熱処理を施すだけで、ヨーク3の裏面32から各ティース2の端面21までの高さのばらつきが小さいステータコア1を容易に得られる。
特に、実施形態のステータコアの製造方法は、酸素雰囲気にて熱処理を行っている。熱処理の雰囲気を酸素雰囲気とするだけで、研削加工を施した各ティース2の端面21に容易に酸化膜25を形成できる。
〔ステータ〕
図8を参照して、実施形態のステータ8を説明する。ステータ8は、ステータコア1と、ステータコア1に備えられる各ティース2に配置されるコイル80とを備える。このステータ8は、アキシャルギャップ型回転電機に用いられる。アキシャルギャップ型回転電機は、例えば、図9に示す回転電機9である。図8では、図1に示すステータコア1を備える場合を例示する。
各コイル80は、巻線を螺旋状に巻回してなる筒状部を備える。この例のコイル80は、巻線を被覆平角線とする四角筒状のエッジワイズ巻きコイルである。なお、図8では、筒状部のみを示し、巻線の両端部は図示を省略している。
実施形態のステータ8は、実施形態のステータコア1を備えるため、トルクリップルを小さくでき、騒音や振動が小さいアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。
〔回転電機〕
図9を参照して、実施形態の回転電機9を説明する。図9は、回転電機9の回転軸91に平行な平面で切断した断面図である。
実施形態の回転電機9は、実施形態のステータ8を備える。詳しくは、回転電機9は、ロータ90と、ステータ8とを備え、ロータ90とステータ8とが軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型のものである。このような回転電機9は、モータ又は発電機に利用できる。図9では、一つのロータ90が二つのステータ8で挟まれるように組み付けられるシングルロータ、ダブルステータ型のものを例示する。その他、一つのロータ90と一つのステータ8とを備える形態、一つのステータ8が二つのロータ90で挟まれるように組み付けられる形態等が挙げられる。
ステータ8及びロータ90は、円柱状の内部空間を有するケース92に収納される。ケース92は、円筒部と、二つのプレート部とを備える。円筒部は、ステータ8及びロータ90の外周を囲む。円筒部の両側にそれぞれプレート部が配置される。ステータ8及びロータ90は、二つのプレート部に挟まれるようにケース92に収納される。ステータ8は、ステータコア1のヨーク3の外周面がケース92のプレート部に嵌め込まれることで、ケース92に固定される。両プレート部は、その中心部に貫通孔を備える。貫通孔には軸受け93が設けられ、軸受け93を介して回転軸91が挿通される。また、ヨーク3の軸孔39にも図示しない軸受けが設けられ、この軸受けを介して、回転軸91が挿通される。回転軸91は、ケース92内を貫通する。
ロータ90は、複数の磁石95と、磁石95を支持するロータ本体とを備える平板状の部材である。各磁石95は、例えば、図1に示すティース2の端面21の平面形状に対応した平面形状を有する平板状である。ロータ本体は、円環状の部材であり、回転軸91によって回転可能に支持される。各磁石95は、ロータ本体の周方向に等間隔に配置される。また、各磁石95は、回転軸91の軸方向に着磁される。ロータ本体の周方向に隣り合う磁石95の磁化方向は互いに逆である。ロータ本体が回転すると、磁石95もロータ本体と共に回転する。
ステータ8は、図2に示すティース2の端面21がロータ90の磁石95に対向するように配置される。ステータ8のコイル80を励磁して回転磁界を発生させ、回転磁界に起因する吸引力又は反発力によって、ステータ8に対してロータ90が回転する。ロータ90が回転すると、ティース2の端面21は、回転する磁石95からの磁束を受ける。
実施形態の回転電機9は、実施形態のステータ8を備えるため、トルクリップルを小さくでき、騒音や振動が小さい。
[試験例]
円環板状のヨークと複数のティースとを備える圧粉成形体からなるステータコアを作製し、得られたステータコアについて、ヨークから各ティースの端面までの高さのばらつき、ビッカース硬度、及びコアロスを調べた。
〔試験例1〕
試験例1では、ヨークから各ティースの端面までの高さのばらつきを小さくするために、各ティースの端面に研削加工を施したステータコアを作製した。
<試料の説明>
・試料No.1-1~試料No.1-5
試料No.1-1~試料No.1-5は、成形⇒研削加工⇒熱処理の順に処理を施したものをステータコアとして用いた。具体的には、まず、軟磁性粉末を含む原料粉末を所定の形状に加圧成形して成形体を作製した。軟磁性粉末には、軟磁性材料からなる粉末粒子の表面に絶縁被膜を有する被覆粒子を用いた。成形体は、円環板状のヨークと9個のティースとが一体の圧粉成形体である。次に、作製した成形体に対して、各ティースの端面及びヨークの裏面に研削加工を施した。ここでは、平面研削加工を施した。最後に、研削加工を施した成形体に、窒素雰囲気中で、表1に示す熱処理温度で熱処理を施した。熱処理の保持時間は、いずれも15分とした。
・試料No.1-10
試料No.1-10は、試料No.1-1と同様に作製した成形体をステータコアとして用いた。つまり、試料No.1-10は、成形後、研削加工及び熱処理の双方を施していない成形体をステータコアとして用いた。
・試料No.1-11
試料No.1-11は、成形⇒熱処理⇒研削加工の順に処理を施したものをステータコアとして用いた。具体的には、試料No.1-1と同様に成形体を作製し、その作製した成形体に、窒素雰囲気中で、表1に示す熱処理温度で熱処理を施した。熱処理の保持時間は、15分とした。次に、熱処理を施した成形体に対して、各ティースの端面及びヨークの裏面に研削加工を施した。ここでは、平面研削加工を施した。試料No.1-11は、試料No.1-1に対して、熱処理と研削加工の処理順序が逆である。試料No.1-11における熱処理及び研削加工の各条件は、試料No.1-1と同様である。
<ヨークの裏面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつき>
得られた各試料のステータコアについて、以下のようにして、ヨークの裏面を基準面として、この基準面から複数のティースの端面までの高さのばらつきを調べた。まず、各ティースにおいて、ヨークの裏面からティースの端面までの高さH1(図2)を測定した。測定は、0級の定盤を備えたハイトゲージを用い、定盤上にティースの端面が上方を向くようにステータコアを載置して行った。各ティースの端面上に、3点以上の測定点を選択した。本例では、ティースの重心とヨークの中心とを通るように引いた直線上において、ティースの重心と、ヨークの中心側に位置するティースの縁部と、ヨークの中心と遠い側に位置するティースの縁部とを含んで測定点を選択した。定盤から各測定点までの高さを測定し、測定で得られた高さの平均値を、各ティースにおけるヨークの裏面から端面までの高さH1とした。次に、複数のティースにおける上記高さH1のうち、最大高さと最小高さとを選択し、最大高さと最小高さの差を算出した。この差をヨークの裏面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつきとした。その結果を表1に示す。表1では、ヨークの裏面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつきを、裏面基準の高さのばらつきと表記する。
<ヨークの表面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつき>
得られた各試料のステータコアについて、以下のようにして、ヨークの表面を基準面として、この基準面から複数のティースの端面までの高さのばらつきを調べた。まず、各ティースにおいて、ヨークの表面からティース2の端面までの高さを測定した。測定は、隣り合うティースの重心同士を結ぶ直線の中央を含むヨークの表面を基準面として、ハイトゲージを用いて行った。測定点は、ティースの端面における重心とした。本例では、各ティースにおいて、ヨークの周方向に沿ってティースの両側に位置する二つの表面をそれぞれ基準面としてそれぞれティースの端面までの高さをハイトゲージで測定する。測定で得られた二つの高さの平均値を、上記高さとした。次に、複数のティースにおける上記高さのうち、最大高さと最小高さを選択し、最大高さと最小高さの差を算出した。この差をヨークの表面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつきとした。その結果を表1に示す。表1では、ヨークの表面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつきを、表面基準の高さのばらつきと表記する。
<ビッカース硬度の差>
得られた各試料のステータコアについて、以下のようにして、ティースの端面と側面とのビッカース硬度の差を調べた。まず、各ティースの端面について、任意の測定点を10箇所選択し、ビッカース硬度計を用いて、各測定点の硬度を測定する。このとき、端面の中央部、及び周縁部近傍を測定点として含んだ。また、同様に、各ティースの側面について、任意の測定点を10箇所選択し、ビッカース硬度計を用いて、各測定点の硬度を測定する。このとき、側面の周方向に沿った複数箇所、及び側面の軸方向に沿った複数箇所を測定点として含んだ。測定した端面及び側面の各硬度の平均値を算出し、端面の硬度の平均値を硬度Aとし、側面の硬度の平均値を硬度Bとして、(硬度A-硬度B)/硬度Aを算出し、各ティースにおける上記ビッカース硬度の差とした。複数のティースのうち、最大のビッカース硬度の差を表1に示す。
<コアロス>
得られた各試料のステータコアについて、以下のようにして、コアロスを調べた。まず、同条件で作製した二つのステータコアを準備し、この二つのステータコアを、互いのティースの端面同士が接するように上下にセットした。二つのステータコアを上下にセットした状態で、ティースの端面同士が接した二つのティースの対をボビンと呼ぶ。複数のボビンのうち任意の二つのボビンを選択し、各ボビンに、60ターンの一次巻きコイルと、30ターンの二次巻きコイルとを配置した試験部品を作製した。作製した試験部品において、構成される閉磁路にてコアロス測定を行った。その結果を表1に示す。表1では、ヒステリシス損、渦電流損、及び鉄損をそれぞれ示す。鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損との合計である。表1では、ヒステリシス損をヒス損、渦電流損を渦損と表記する。
<トルクリップル>
得られた試料No.1-1、試料No.1-10、及び試料No.1-11の各ステータコアについて、以下のようにして、トルクリップルを調べた。8極9スロットのモータにおいて、モータの回転速度を2000rpm、平均トルクを0.2Nm、線電流を2.3Armsとし、電磁界解析ソフトによってトルクを解析した。トルクリップルは、平均トルクに対するトルクの最大振幅と最小振幅との差の比率で求めた。その結果を表1に示す。
Figure 0007386694000001
表1から以下のことがわかる。まず、試料No.1-10のステータコアは、裏面基準の高さのばらつきが0.18と大きい。また、試料No.1-10のステータコアは、表面基準の高さのばらつきが0.15mmと大きい。試料No.1-10では、加圧成形によって得られた成形体をステータコアとして用いており、研削加工を施していないからである。一方で、試料No.1-10のステータコアは、ビッカース硬度の差が5%と小さい。試料No.1-10では、上述したように研削加工を施していないため、歪みが生じていないからと考えられる。試料No.1-10のステータコアは、ビッカース硬度の差が5%と小さいことで、ヒステリシス損が25Wと小さい。また、試料No.1-10のステータコアは、渦電流損が18Wと小さい。渦電流損が小さい理由は、試料No.1-10では、上述したように研削加工を施していないため、被覆粒子における絶縁被膜が破壊されておらず、隣り合う粉末粒子同士が良好に絶縁されているからと考えられる。
試料No.1-1~試料No.1-5、及び試料No.1-11のステータコアは、裏面基準の高さのばらつきが0.01と小さい。また、試料No.1-1~試料No.1-5、及び試料No.1-11のステータコアは、表面基準の高さのばらつきが0.01mmと小さい。試料No.1-1~試料No.1-5、及び試料No.1-11では、加圧成形によって得られた成形体に対して、ティースの端面に研削加工を施しているからである。試料No.1-1及び試料No.1-11のステータコアは、裏面基準の高さのばらつき及び表面基準の高さのばらつきが小さいことで、トルクリップルが小さくなっている。なお、試料No.1-2~試料No.1-5のステータコアも、裏面基準の高さのばらつき及び表面基準の高さのばらつきが小さいことから、トルクリップルが小さいと思われる。
これらの試料のステータコアのうち、試料No.1-1~試料No.1-4のステータコアは、ビッカース硬度の差が15%以下と小さい。試料No.1-1~試料No.1-4では、研削加工を施した後に、所定の熱処理温度で熱処理を施しているからである。研削加工を施すと、歪みが生じて加工硬化する。よって、ティースの端面のみに研削加工を施すと、ティースの端面におけるビッカース硬度が大きくなり、ティースの端面と側面とでビッカース硬度に差が生じる。試料No.1-1~試料No.1-4では、特定の熱処理温度で熱処理を施しているため、ティースの端面に生じた歪みが除去されたと考えられる。試料No.1-1~試料No.1-4のステータコアは、ティースの端面の歪みが除去され、ビッカース硬度の差が15%以下と小さいことで、ヒステリシス損が30W以下と小さくなっている。
試料No.1-5のステータコアは、試料No.1-1~試料No.1-4のステータコアに比較して、ビッカース硬度の差が大きくなっている。試料No.1-5では、研削加工を施した後に、熱処理を施している。しかし、試料No.1-5では、熱処理温度が350℃と低く、ティースの端面に生じた歪みを効果的に除去できなかったと考えられる。試料No.1-5のステータコアは、ビッカース硬度の差が17%と大きいことで、ヒステリシス損が30W超と大きくなっている。
試料No.1-11のステータコアも、試料No.1-1~試料No.1-4のステータコアに比較して、ビッカース硬度の差が大きくなっている。試料No.1-11では、熱処理を施した後に、研削加工を施している。つまり、試料No.1-11では、研削加工を施した後に、熱処理を施していない。よって、試料No.1-11のステータコアは、ティースの端面に歪が生じた状態である。試料No.1-11のステータコアは、ビッカース硬度の差が19%と大きいことで、ヒステリシス損が30W超と大きくなっている。
以上より、ティースの端面に研削加工を施すことで、裏面基準の高さのばらつき及び表面基準の高さのばらつきを0.01mm以下と小さくできることがわかる。しかし、ティースの端面に研削加工を施すと、ティースの端面に歪みが生じることにより、ティースの端面のビッカース硬度が大きくなる。そこで、研削加工を施した後に、特定の熱処理温度で熱処理を施すことで、ティースの端面に生じた歪みを除去でき、ビッカース硬度の差を小さくできることがわかる。ティースの端面に生じた歪みを除去できることで、ヒステリシス損を30W以下と小さくできる。
なお、試料No.1-1~試料No.1-5、及び試料No.1-11のステータコアは、渦電流損が20W超と大きくなっている。試料No.1-1~1-5、及び試料No.1-11では、研削加工を施しているため、被覆粒子における絶縁被膜が破壊され、隣り合う粉末粒子同士がつながっているからと考えられる。
〔試験例2〕
試験例2では、試験例1における試料No.1-1に対して、更に渦電流損を小さくするために、酸素雰囲気にて熱処理を施したステータコアを作製した。
<試料の説明>
・試料No.2-1~2-8
試料No.2-1~2-8では、成形⇒研削加工⇒酸素雰囲気にて熱処理の順に処理を施したものをステータコアとして用いた。具体的には、試料No.1-1と同様に成形体を作製し、その作製した成形体に対して、各ティースの端面及びヨークの裏面に平面研削加工を施した。その後、研削加工を施した成形体に、表1に示す酸素濃度での酸素雰囲気中で、熱処理を施した。熱処理の温度は、いずれも650℃とした。また、熱処理の保持時間は、いずれも15分とした。試料No.2-1~試料No.2-8は、試料No.1-1に対して、熱処理の雰囲気が異なる。
<酸化膜の厚さ>
得られた各試料のステータコアについて、各ティースを軸方向に沿って切断し、その切断面を光学顕微鏡により500倍の倍率で観察した。本例では、上記切断面において、10視野の観察画像を採取した。その結果、試料No.2-1~2-8のステータコアはいずれも、各ティースの端面に酸化膜が形成されていることが確認された。1視野あたり5点の測定点を選択し、酸化膜の厚さを測定した。測定点は、各ティースの端面と側面とで構成される角部近傍を含む。5点×10視野で測定した酸化膜の厚さの平均値を、各ティースにおける酸化膜の平均厚さとした。そして、複数のティースの平均値を算出し、その平均値を各試料のステータコアにおける酸化膜の平均厚さとした。その結果を表2に示す。
<ヨークの裏面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつき>
得られた各試料のステータコアについて、試験例1と同様に、ヨークの裏面を基準面として、この基準面から複数のティースの端面までの高さのばらつきを調べた。その結果、試料No.2-1~2-8のステータコアはいずれも、裏面基準の高さのばらつきが0.01mmであった。
<ヨークの表面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつき>
得られた各試料のステータコアについて、試験例1と同様に、ヨークの表面を基準面として、この基準面から複数のティースの端面までの高さのばらつきを調べた。その結果、試料No.2-1~2-8のステータコアはいずれも、表面基準の高さのばらつきが0.01mmであった。
<ビッカース硬度の差>
得られた各試料のステータコアについて、試験例1と同様に、ティースの端面と側面とのビッカース硬度の差を調べた。その結果、試料No.2-1~2-8のステータコアはいずれも、ビッカース硬度の差が7%であった。
<コアロス>
得られた各試料のステータコアについて、試験例1と同様に、コアロスを調べた。その結果を表2に示す。
Figure 0007386694000002
表2から、研削加工を施した成形体に施す熱処理を、500体積ppm以上の酸素濃度を有する酸素雰囲気中で行うことで、渦電流損を低減できることがわかる。特に、酸素濃度が高くなるほど、渦電流損をより低減できることがわかる。上述したように、研削加工を施すと、被覆粒子における絶縁被膜が破壊され、隣り合う粉末粒子同士がつながることがある。酸素雰囲気中で熱処理を施すと、研削加工を施した各ティースの表面が酸化されて酸化膜が形成される。酸化膜は、研削加工によって破壊された絶縁被膜の代わりに、隣り合う粉末粒子同士を絶縁する機能を果たしていると考えられる。隣り合う粉末粒子同士が酸化膜によって絶縁されることで、渦電流損が低減したと考えられる。表2を見ると、酸素濃度が5000体積ppm以上において、渦電流損は一定となっている。つまり、酸素濃度を5000体積ppmとすることで、隣り合う粉末粒子同士を十分に絶縁できることがわかる。また、表2を見ると、酸素濃度が高くなるに従って、ヒステリシス損が大きくなることがわかる。よって、酸素濃度は10000体積ppm以下とすることが好ましいことがわかる。
〔試験例3〕
試験例3では、試験例2における試料No.2-4と同様のステータコアを複数作製した。ここで作製した試料は、試料No.3-1~試料No.3-5とする。
試験例3では、試料No.3-10として、試料No.3-1と同様に作製した成形体に対して、各ティースの端面のみに平面研削加工を施したものを作製した。つまり、試料No.3-10では、ヨークの裏面に平面研削加工を施していない。研削加工を施した成形体への熱処理の条件は、試料No.3-1と同様である。
<ヨークの裏面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつき>
得られた各試料のステータコアについて、試験例1と同様に、ヨークの裏面を基準面として、この基準面から複数のティースの端面までの高さのばらつきを調べた。その結果を表3に示す。
<ヨークの表面を基準面とした各ティースの端面までの高さのばらつき>
得られた各試料のステータコアについて、試験例1と同様に、ヨークの表面を基準面として、この基準面から複数のティースの端面までの高さのばらつきを調べた。その結果を表3に示す。
<ビッカース硬度の差>
得られた各試料のステータコアについて、試験例1と同様に、ティースの端面と側面とのビッカース硬度の差を調べた。その結果、試料No.3-1~3-5のステータコアはいずれも、ビッカース硬度の差が7%であった。
<コアロス>
得られた各試料のステータコアについて、試験例1と同様に、コアロスを調べた。その結果、試料No.3-1~3-5のステータコアはいずれも、ヒステリシス損が27W、渦電流損が15W、鉄損が42Wであった。
<トルクリップル>
得られた各試料のステータコアについて、試験例1と同様に、トルクリップルを調べた。その結果を表3に示す。
Figure 0007386694000003
裏面基準の高さのばらつきが0.01mm以下であり、かつ表面基準の高さのばらつきが0.01mm以下である試料No.3-1~試料No.3-5のステータコアは、トルクリップルが3%以下と小さい。そして、裏面基準の高さのばらつきが小さくなるほど、かつ表面基準の高さのばらつきが小さくなるほど、トルクリップルが小さくなることがわかる。また、試料No.3-5と試料No.3-3を比較すると、裏面基準の高さのばらつきを小さくすることで、トルクリップルを効果的に小さくできることがわかる。
1 ステータコア
2 ティース
21 端面、22 側面
210 研削痕
25 酸化膜
3 ヨーク
31 表面、32 裏面
39 軸孔
8 ステータ、80 コイル
9 回転電機、90 ロータ、91 回転軸、92 ケース
93 軸受け、95 磁石
100 軟磁性粉末、110 被覆粒子、111 粉末粒子、112 絶縁被膜
200 成形体
300 板状部材、310 貫通孔
400 研削盤
500 加工体
H1,H2 高さ、a 差

Claims (11)

  1. アキシャルギャップ型回転電機に用いられるステータコアであって、
    円環板状のヨークと、
    前記ヨークの表面から突出する柱状の複数のティースとを備え、
    前記ヨーク及び前記複数のティースの各々は、軟磁性粉末を含む圧粉成形体で構成され、
    前記複数のティースの各々は、
    突出方向先端に位置する端面と、
    前記端面と前記ヨークの表面とをつなぐ側面とを備え、
    前記端面は、研削痕を備え、
    前記端面におけるビッカース硬度と、前記側面におけるビッカース硬度との差が、前記端面におけるビッカース硬度の15%以下であり、
    前記ヨークの裏面から前記複数のティースの各々の前記端面までの高さのばらつきが0.01mm以下である、
    ステータコア。
  2. 前記複数のティースの各々は、前記端面に設けられる酸化膜を備え、
    前記酸化膜の平均厚さは、0.5μm以上10μm以下である請求項1に記載のステータコア。
  3. 前記ヨークの表面から前記複数のティースの各々の前記端面までの高さのばらつきが0.01mm以下である請求項1又は請求項2に記載のステータコア。
  4. 前記圧粉成形体の相対密度が90%以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のステータコア。
  5. 前記軟磁性粉末は、純鉄、Siを含む鉄基合金、又はAlを含む鉄基合金を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のステータコア。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のステータコアと、
    前記複数のティースの各々に配置されるコイルとを備える、
    ステータ。
  7. 請求項6に記載のステータを備える、
    回転電機。
  8. アキシャルギャップ型回転電機に用いられるステータコアの製造方法であって、
    軟磁性粉末を加圧成形して成形体を作製する工程と、
    前記成形体に研削加工を施す工程と、
    前記研削加工を施した成形体に、400℃以上900℃以下の温度で熱処理を施す工程とを備え、
    前記成形体は、円環板状のヨークと、前記ヨークの表面から突出する柱状の複数のティースとを備え、
    前記研削加工を施す工程では、前記複数のティースの各々における突出方向先端に位置する端面を研削し、前記ヨークの裏面から前記複数のティースの各々の前記端面までの高さのばらつきを0.01mm以下とする、
    ステータコアの製造方法。
  9. 前記研削加工は、平面研削である請求項8に記載のステータコアの製造方法。
  10. 前記研削加工を施す工程では、更に前記ヨークの裏面を平面研削する請求項9に記載のステータコアの製造方法。
  11. 前記熱処理を施す工程では、酸素濃度が体積割合で500ppm以上10000ppm以下である酸素雰囲気にて行う請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のステータコアの製造方法。
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