JP7378916B2 - Al-Si-Mg系アルミニウム合金板 - Google Patents

Al-Si-Mg系アルミニウム合金板 Download PDF

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Description

本発明は、Al-Si-Mg系アルミニウム合金板に係り、更に詳細には、ケイ素(Si)を多く含有するアルミニウムスクラップ材を利用可能な、高強度で成形性に優れるAl-Si-Mg系アルミニウム合金板に関する。
従来から、自動車、船舶、航空機などの輸送機や、機械、電気製品、建築、構造物、光学機器等の部材や部品用として各種アルミニウム合金板が用いられており、それぞれの用途に応じて種々の特性を有するアルミニウム合金の開発が行われている。
自動車業界においては、大気汚染や地球温暖化に対処するため、車体等の軽量化により燃費を向上させ、排出する二酸化炭素量を低減させることが行われており、アルミニウム合金板が多用される。
アルミニウム合金板は、一般的にプレス成形等によって自動車用部品に成形されるため、伸び性がよく高い成形性を有することが要求されると共に、自動車用部品としての高い強度、耐力を有することが要求される。
特許文献1の特許第5423822号公報には、マグネシウム(Mg)含有量を増加させて、微細なサブグレイン組織を形成させることで高温高速成形時に高い伸びが得られるアルミニウム合金板を製造できる旨が開示されている。
特許第5423822号公報
近年においては、資源枯渇、廃棄処分場残存容量等の観点から、資源循環型社会構築の必要性が高まっている。そして、アルミニウムスクラップ材を再生する場合のエネルギー量は、新しく地金を製造する場合のエネルギー量よりも格段に少ないため、アルミニウムスクラップ材の積極的な利用が望まれる。
しかし、アルミニウムのスクラップ材は、アルミナから製錬された新地金とは異なり、砂塵(SiO)由来のケイ素(Si)や、シュレッダーなどのスクラップ処理施設で混入する鉄(Fe)等の不純物を多く含む。
上記Al-Si系合金は、固溶限度を超えるSiを含有し、マトリックス中に薄く硬い板状結晶のSi粒子が析出するため、上記Si粒子に引張応力が集中し切欠き効果によって伸び率が低下する。
そして、上記板状のSi粒子は、圧延により図1に示すように一方向に配列するため、圧延したアルミニウム合金板は、圧延直角方向の伸び率が著しく低下し、伸び異方性が生じてプレス成形性が低下する。つまり、アルミニウム合金板のプレス成形性は、最も伸び難い方向の伸び率の影響を受ける。
図1中、伸び率の大きさを矢印の長さで示した。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、Si含有量が多いアルミニウムスクラップ材を利用しても、伸び異方性が小さくプレス成形性に優れ、自動車用部品に要求される耐力を有するAl-Si-Mg系アルミニウム合金板を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、不可避的に析出・晶出するケイ素(Si)粒子による切欠き効果を低減させると共に、上記Si粒子を均一に微分散させることで、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のAl-Si-Mg系アルミニウム合金板は、アルミニウム(Al)を主成分とし、4質量%以上7質量%以下のケイ素(Si)と、0.3質量%以上0.8質量%以下のマグネシウム(Mg)と、を含有し、残部が、0.6質量%以下の鉄(Fe)と、0.01質量%以上1.2質量%以下の銅(Cu)と、残部が不可避不純物のみから成り、
上記不可避不純物の含有量は、Mnが0.6質量%以下、Tiが0.2質量%以下、Znが0.3質量%以下、Crが0.05質量%以下、Niが0.05質量%以下、Pbが0.05質量%以下、Snが0.05質量%以下である。
そして、最大長が0.5μm以上のSi粒子を抽出したとき、Si粒子の平均最大長が2.0μm以下であり、上記Si粒子を母点としてボロノイ分割したセルの平均面積が26μm以下、かつ上記セルの面積の変動係数が0.9以下である金属組織を有し、耐力が100MPa以上であることを特徴とする。
本発明によれば、Al-Si-Mg系アルミニウム合金板において、Si粒子の平均最大長を2.0μm以下にしてSi粒子による切欠き効果を低減させ、さらに、上記Si粒子が均一に微分散した金属組織を形成したため、伸び異方性が小さくプレス成形性に優れるAl-Si-Mg系アルミニウム合金板を提供することができる。
Si粒子が一方向に配列した圧延したアルミニウム合金板の伸び異方性を説明する図である。 ボロノイ分割したボロノイ図の一例を示す図である。 縦型双ロールキャスト法を説明する図である。
<アルミニウム合金板>
本発明のアルミニウム合金板について詳細に説明する。
上記アルミニウム合金板は、Al-Si-Mg系のアルミニウム合金板であり、アルミニウム(Al)を主成分とし、4質量%以上7質量%以下のケイ素(Si)と、0.3質量%以上0.8質量%以下のマグネシウム(Mg)と、を含有し、残部が、0.6質量%以下の鉄(Fe)と不可避不純物とから成る。
一般に、Al-Si-Mg系のアルミニウム合金板は、薄く硬い板状結晶のSi粒子が析出するため、上記のように、Si粒子による切欠き効果によって伸びが妨げられてプレス成形性が低下する。
本発明のアルミニウム合金板は、その金属組織が、マトリックス相中に含まれるSi粒子の平均最大長が2.0μm以下であり、上記Si粒子を母点としてボロノイ分割したセルの平均面積が26μm以下、かつ上記セルの面積の変動係数が0.9以下である。
マトリックス相中に析出したSi粒子の平均最大長が2.0μm以下であることで、Si粒子による切欠き効果が小さくなってアルミニウム合金板の伸び率が向上する。
さらに、上記Si粒子の平均最大長が1.8μm以下であると、個々のSi粒子による切欠き効果がさらに小さくなって伸び率がより向上する。
加えて、上記Si粒子を母点としてボロノイ分割したセルの面積の変動係数が0.9以下であり、かつその平均面積が26μm以下である金属組織を有する。
ボロノイ分割とは、図2に示すように、隣り合う母点間を結ぶ直線の垂直二等分線を引き、各母点の最近隣領域を分割してボロノイ図を作成する手法である。
また、上記変動係数は、標準偏差(σ)を平均値で割った無次元の値であり、本発明においては、上記セルの大きさが平均値に対してどの程度するバラツキいているかを表わす。
上記アルミニウム合金板の金属組織は、Si粒子間の垂直二等分線で囲まわれたセルの面積が小さく、Si粒子数が多くその粒子径が小さいため、個々のSi粒子による切欠き効果が小さい。
さらに、上記セルの大きさのバラツキが小さく、個々のSi粒子が凝集せずに間隔をあけて均一に分散しているため、多数のSi粒子が配列したり凝集したりして、特定方向の伸びを妨げることがなく、上記切欠き効果の小ささと相俟って、伸び異方性が抑制され、優れたプレス成形性を有する。
上記セルの平均面積は、23.6μm以下であることが好ましく、21μm以下であることがより好ましい。上記セルの面積が小さく、Si粒子数が多くなってその粒子が小さくなると、上記変動係数と相俟って、さらに伸び率が向上し、等方的に伸びるようになる。
また、上記Si粒子のアスペクト比は、1.0~1.6であることが好ましい。本発明においてはSi粒子を微細化しているため、Si粒子の形状が伸びに及ぼす影響は小さいが、アスペクト比が上記範囲内であることで、伸び異方性を低減できる。
上記Si粒子の最大長、Si粒子のアスペクト比、ボロノイ分割したセルの平均面積、および、その変動係数は、アルミニウム合金板の光学顕微鏡写真を画像処理することで算出できる。
本発明においては、光学顕微鏡写真212.8×161.4μmの観察視野を400倍に拡大(2588×1962pixcel)し、解析ソフト(Image J 1.50i)を用い、色閾値をDefaultで二値化して最大長が0.5μm以上のSi粒子を抽出して求めた。
上記アルミニウム合金板は、圧延方向(RD)と圧延直角方向(TD)の伸び比(RD/TD)が、0.8以上1.2以下であり、伸び率が20%以上であることが好ましい。
アルミニウム合金板が上記範囲の伸びを示し、伸び異方性が小さいことでプレス成形性が優れ、自動車部品に好適に使用できる。
本発明において「伸び率」は、アルミニウム合金板を引っ張り、破断したときの長さ(L+ΔL)と、元の長さ(L)との比(ΔL/L ×100)で表され、単に伸び率というときは、伸びが小さい方向の伸び率を意味する。
上記アルミニウム合金板は、耐力が100MPa以上である。アルミニウム合金板が高い耐力を有することで、自動車用部品に好適に使用できる。
次に、Al-Si-Mg系アルミニウム合金板の金属組成について説明する。
本発明のAl-Si-Mg系アルミニウム合金板は、アルミニウム(Al)を主成分とする。本発明において「主成分」とは80質量%以上含有する成分をいう。
上記アルミニウム合金板は、ケイ素(Si)を4質量%以上7質量%以下含む。
ケイ素は、砂塵の混入や、サッシ屑やロードホイール等のアルミニウムスクラップ材に多く含まれ、ケイ素を含有するアルミニウム合金板とすることでアルミニウムスクラップ材を有効に利用できる。
アルミニウム合金板がケイ素を含有することで、板材鋳造時の湯流れ性が向上し、アルミニウム合金板の耐力及び引張強さが向上する。
ケイ素の含有量が4質量%未満では、マトリックス中に析出するSi粒子が少なく、伸び異方性の問題は生じ難いが、鋳造時の流動性が低下することがあり、7質量%を超えると、20%以上の伸びが得られず成形性が低下することがある。
上記アルミニウム合金板は、マグネシウム(Mg)を0.3質量%以上0.8質量%以下含む。
マグネシウムは固溶強化元素であり、Mgを0.3質量%以上含有し、マトリックス中に固溶させることでアルミニウム合金板の耐力及び引張強さ、伸びを向上させることができる。また、Mgの含有量が0.8質量%を超えるとマトリックス中に析出して、伸びが低下することがある。
上記アルミニウム合金板の鉄(Fe)の含有量は、0.6質量%以下である。
アルミニウム合金板がFeを含有することで鋳造時の焼付き性が向上するが、Feの含有量が0.6質量%を超えると、プレス成形性が低下することがある。
鉄は、ステンレス鋼や鉄粉がスクラップ処理施設で混入し易いため、アルミニウムスクラップ材に多く含まれるものであり、鉄を含有するアルミニウム合金板とすることでアルミニウムスクラップ材を有効に利用できる。
さらに、上記アルミニウム合金板は、銅(Cu)を0.01質量%以上1.2質量%以下含むことが好ましく、さらに0.2質量%以上1.2質量%以下含むことがより好ましい。アルミニウム合金板のマトリックス中に銅をマトリックス中に固溶させることで耐力及び引張強さ、伸びを向上させることができる。
Cuの含有量が1.2質量%を超えると、20%以上の伸びが得られずプレス成形性が低下することがあり、また耐食性が低下することがある。なお、銅は、銅線やダイカスト部品等から混入することが多い。
上記不可避的不純物としては、例えば、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)等が挙げられる。
これらの含有量は少ないことが好ましく、これら不可避的不純物の含有量は、Mnは0.6質量%以下、Tiは0.2質量%以下、Znは0.3質量%以下、その他、Cr、Ni, Pb、Sn等は各0.05質量%以下であることが好ましい。
<製造方法>
本発明のAl-Si-Mg系アルミニウム合金板の製造方法について説明する。
上記アルミニウム合金板は、縦型双ロールキャスト式による連続鋳造法により鋳造板を作製し、該鋳造板を冷間圧延し、焼鈍、急冷することで作製できる。
(鋳造板の作製)
縦型双ロールキャスト式による連続鋳造法は、図3に示すように、回転する一対の冷却された双ロールの間に、耐火物製の給湯ノズルにアルミニウム合金溶湯を注湯し、上記双ロール間で圧下すると共に急冷して、アルミニウム合金の鋳造板を作製する方法である。縦型の双ロールキャストは、ロール間隙において固相率が変化し難くアルミニウム合金溶湯が詰まり難い。
縦型双ロールキャスト法の冷却速度は、従来のDC鋳造法やベルト式連続鋳造法に比して1~3桁大きい。このため、得られるアルミニウム合金板の金属組織が微細になり、プレス成形性などの加工性に優れたアルミニウム合金板を得ることができる。
本発明においては銅又は銅合金のロールを用いる。熱伝導率が高いロールを用いることで冷却性能がさらに向上する。具体的には300℃未満に冷却されて、粗大なSi粒子が析出し難く、晶出物が微細分散するため、不純物による伸び率低下を防止できる。
なお、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を行う通常の製造方法では、鋳造の際の鋳塊にSi、Mg、Fe等が偏析するため、通常の熱間圧延では、Al-Si-Mg系アルミニウム合金の延性が著しく低下して割れが発生するため、加工すること自体が困難である。
上記双ロールの表面は潤滑されていないことが好ましい。酸化物粉末(アルミナ粉、酸化亜鉛粉等)、SiC粉末、グラファイト粉末、油、溶融ガラスなどの潤滑剤を双ロール表面に供給すると冷却速度が遅くなり、結晶粒が粗大化してアルミニウム合金板の成形性が低下することがある。また、潤滑剤の濃度や厚みの不均一による冷却のムラが防止され、均一かつ充分な冷却速度が得られ、偏析が防止されて成形性を均一にすることができる。
上記双ロールに注湯するアルミニウム合金溶湯の注湯温度は、液相線温度+5℃以上とすることが好ましい。液相線温度+5℃未満では成形時の固相率が高くなり、空気の巻き込み、または板厚中心相などのSi濃度が高くなり、冷間圧延性や成形性の低下が生じることがある。また、冷却速度が900℃/秒以上であれば、注湯温度が高くても構わないが、液相線温度+30℃以下であることが好ましい。
冷却速度が低下すると、金属間化合物等が粗大化したり、多量に晶出したりすることがあり、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下することがある。
また、双ロールの圧下効果が小さくなって中心欠陥が多くなり、アルミニウム合金板の基本的な機械的性質が低下することがある。
上記双ロールを回転させるときの周速は、0.9m/sec以上とすることが好ましい。
ロールの周速が0.9m/sec未満では、アルミニウム合金溶湯とロールとの接触時間が長くなり、鋳造板の表面品質が低下することがある。また、周速が速すぎると、充分凝固できず表面や内部に欠陥が生じやすくなり、実用板材として充分な品質が確保できない可能性がある。
本発明では、必要に応じて、前記双ロールに注湯後に、双ロール間で凝固しつつある板状鋳塊に対して、双ロールによって、300kN/m以下の圧下荷重を負荷しつつ鋳造してもよい。
上記圧下荷重の負荷によって、注湯時や凝固中に発生したガスが、板状鋳片内から外部に放出されやすくなり、空隙の発生が抑制される。そして、後述する冷間圧延と相俟って空隙等の鋳造欠陥の量を、成形特性に影響を及ぼすことがない範囲にまで抑制することができる。
縦型双ロールキャスト式による連続鋳造法により、1~9mmの鋳造板を作製することが好ましい。鋳造板の板厚を1~9mmとすることで熱間粗圧延、熱間仕上げ圧延等の工程を省略することができ、生産性を向上させることができる。
(冷間圧延)
本発明においては、上記双ロールキャスト式による連続鋳造法で作製された鋳造板に対して冷間圧延を行う。冷間圧延することで鋳造板中の結晶粒を微細化することができる。
冷間圧延の圧下率((冷間圧延前の板厚-冷間圧延後の板厚)/冷間圧延前の板厚×100)は、冷間圧延を1回で行う場合は75%以上90%以下であることが好ましい。
また、後述する焼鈍を挟んで冷間圧延を複数回行う場合は、合計の圧下率が60%以上90%以下であることが好ましい。
冷間圧延の圧下率を上記範囲にすることで、マトリックス中に析出したSi粒子を粉砕して微細化すると共に、マトリックス中の微細なSi粒子同士を引き離してSi粒子の間隔を広げ、Si粒子を母点としてボロノイ分割したセルの平均面積を小さくし、かつその面積の変動係数を小さくできる。
(焼鈍)
焼鈍は、500℃以上液相線温度以下の温度範囲で行う。具体的には、520℃~550℃で1時間以上焼鈍を行うことが好ましい。
上記の条件で焼鈍することで、上記冷間圧延で粉砕された微細なSi粒子が部分的にマトリックス中に溶け込み、その外形が小さくなると共に、丸くなってSi粒子の間隔が広がる。さらに、マトリックス中に溶け込んでない他の元素が、マトリックス中に固溶して、耐力を向上させることができる。焼鈍は、バッチ式の空気炉や連続式の処理炉で行うことができる。
(急冷)
本発明のアルミニウム合金板は、上記焼鈍した後、直ちに急冷を行う。焼鈍によって得られた固溶状態を急速に冷却して過飽和固溶体とすることで、室温においても、高温と同じような結晶状態を保つことができ、耐力が向上する。
急冷の冷却速度はできるだけ速いことが好ましく、具体的には、板材を水に入れる水冷法により行い、100℃/sec以上で冷却することが好ましい。冷却温度が遅いと、良好な過飽和固溶体が形成されずに耐力が低下する。
<自動車部品>
本発明のAl-Si-Mg系アルミニウム合金板は、耐力が100MPa以上、伸びが20%以上であり、自動車用部品に要求される高い伸び性と高い耐性とを有し、さらに、伸び異方性が小さくプレス加工に優れるため、自動車の外装部品等に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<鋳造板の作製>
縦型の双ロール式連続鋳造装置を用いて、およそ1000℃/秒の冷却速度で溶湯を凝固させ、最終板厚が約1mmになるように圧下率に応じて厚さ1~9mmの下記表1に示す金属組成の鋳造板を得た。
具体的には、成分組成が調節された、液相線温度+20℃のアルミニウム合金溶湯を1m/秒で回転する一対の銅製の双ロール間に、耐火性の給湯ノズルを用いて注湯し、冷却速度1000℃/秒で凝固させて鋳造板を作製した。
[鋳造板A~K]の組成及び板厚を表1に示す。
Figure 0007378916000001
[実施例1]
[鋳造板A]を、圧下率75%で冷間圧延し、520℃で1時間焼鈍した後、水中で急冷して[合金板1]を作製した。
[実施例2]
[鋳造板B]を、圧下率81%で冷間圧延する他は実施例1と同様にして[合金板2]を作製した。
[実施例3]
[鋳造板C]を、圧下率50%で冷間圧延し、530℃で1時間焼鈍した後、水中で急冷し、さらに、合計圧下率61%で冷間圧延する他は実施例1と同様にして[合金板3]を作製した。
[実施例4]
[鋳造板D]を、圧下率53%で冷間圧延し、530℃で1時間焼鈍した後、放冷し、さらに、合計圧下率75%で冷間圧延する他は実施例1と同様にして[合金板4]を作製した。
[実施例5]
[鋳造板E]を、圧下率48%で冷間圧延し、535℃で1時間焼鈍した後、放冷し、さらに、合計圧下率62%で冷間圧延する他は実施例1と同様にして[合金板5]を作製した。
[実施例6]
[鋳造板F]を、圧下率58%で冷間圧延し、535℃で1時間焼鈍した後、放冷し、さらに、合計圧下率85%で冷間圧延する他は実施例1と同様にして[合金板6]を作製した。
[実施例7]
[鋳造板G]を、圧下率89%で冷間圧延する他は実施例1と同様にして[合金板7]を作製した。
[比較例1]
[鋳造板A]を、圧下率50%で冷間圧延し、500℃で1時間焼鈍した後、水中で急冷して[合金板8]を作製した。
[比較例2]
[鋳造板A]を、圧下率30%で冷間圧延し、500℃で1時間焼鈍した後、水中で急冷して[合金板9]を作製した。
[比較例3]
[鋳造板A]を、圧下率12%で冷間圧延し、500℃で1時間焼鈍した後、水中で急冷して[合金板10]を作製した。
[比較例4]
[鋳造板A]を、圧延せずに、500℃で1時間焼鈍した後、水中で急冷して[合金板11]を作製した。
[比較例5]
[鋳造板B]を、圧下率81%で冷間圧延し、520℃で1時間焼鈍した後、炉内で徐冷して[合金板12]を作製した。
[比較例6]
[鋳造板H]を、圧下率51%で冷間圧延し、520℃で1時間焼鈍した後、放冷し、さらに、合計圧下率74%で冷間圧延した後、炉内で徐冷して[合金板13]を作製した。
[比較例7]
[鋳造板I]を、圧下率30%で冷間圧延し、520℃で1時間焼鈍した後、放冷し、さらに、合計圧下率62%で冷間圧延した後、水中で急冷して[合金板14]を作製した。
[比較例8]
[鋳造板J]を、圧下率73%で冷間圧延し、520℃で1時間焼鈍した後、水中で急冷して[合金板15]を作製した。
<評価>
上記合金板1~15を評価した。
室温での引張試験により、合金板の圧延方向と圧延直交方向の0.2%耐力、伸びを測定した。評価結果を表2に示す。
Figure 0007378916000002
表2から、縦型双ロールキャスト式による連続鋳造法により製造された微細な金属組織を有する鋳造板を、高い圧下率で冷間圧延して本発明の金属組織としたAl-Si-Mg系アルミニウム合金板は、圧延方向(RD)と圧延直角方向(TD)の伸び比(RD/TD)が、0.8以上1.2以下であり、かつ伸び率が20%以上であることがわかる。
実施例1と比較例8の比較から、圧下率75%以上で圧延することで、伸び異方性が低減され高い伸び率を示すことがわかる。
また、比較例8と実施例3,5の比較から、合計圧下率が小さくても中間焼鈍を行うことでSi粒子が丸くなってその外形が小さく、粒子間距離が拡がってセル面積の変動係数が小さくなり、等方性の伸びを示すことがわかる。
比較例5、6は、焼鈍後に徐冷したため、過飽和固溶体が形成されずに耐力が低下した。
1 Al-Si-Mg系アルミニウム合金板
2 Si粒子
3 鋳造板
4 アルミニウム合金溶湯

Claims (5)

  1. アルミニウム(Al)を主成分とし、
    4質量%以上7質量%以下のケイ素(Si)と、
    0.3質量%以上0.8質量%以下のマグネシウム(Mg)と、
    0.6質量%以下の鉄(Fe)と、
    0.01質量%以上1.2質量%以下の銅(Cu)と、残部が不可避不純物のみから成り、
    上記不可避不純物の含有量は、Mnが0.6質量%以下、Tiが0.2質量%以下、Znが0.3質量%以下、Crが0.05質量%以下、Niが0.05質量%以下、Pbが0.05質量%以下、Snが0.05質量%以下であり、
    最大長が0.5μm以上のSi粒子を抽出したとき、
    Si粒子の平均最大長が2.0μm以下であり、
    上記Si粒子を母点としてボロノイ分割したセルの平均面積が26μm以下、かつ上記セルの面積の変動係数が0.9以下である金属組織を有し、
    耐力が100MPa以上であることを特徴とするAl-Si-Mg系アルミニウム合金板。
  2. 上記セルの平均面積が23.6μm以下である金属組織を有することを特徴とする請求項1に記載のAl-Si-Mg系アルミニウム合金板。
  3. 上記セルの平均面積が21μm以下である金属組織を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のAl-Si-Mg系アルミニウム合金板。
  4. 圧延方向(RD)と圧延直角方向(TD)の伸び比(RD/TD)が、0.8以上1.2以下であり、かつ伸び率が20%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つの項に記載のAl-Si-Mg系アルミニウム合金板。
  5. 上記Si粒子の平均最大長が1.7μmであり、このSi粒子を母点としてボロノイ分割したセルの平均面積が20.1μm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つの項に記載のAl-Si-Mg系アルミニウム合金板。
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