以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係る船舶用操舵装置を備える船舶を示す平面図である。図2は、図1に示された船舶の側面図である。図1及び図2において、船舶1は、船体2と、この船体2の外部に搭載された船外機推進ユニット3とを具備している。
船体2には、船舶1の操船者が船体2の操舵操作を行うためのハンドル4と、操船者が船体2の航行操作を行うためのアクセルレバー5とが搭載されている。ハンドル4及びアクセルレバー5は、船体2の運転室に配置されている。アクセルレバー5は、ニュートラル位置と前進位置と後進位置とフルスロットル位置とを切り換え可能である。アクセルレバー5のフルスロットル位置は、後述の舵角制限の有無を判断するための舵角制限適用位置Dであってもよい。
アクセルレバー5には、中立スイッチ(操作部)60が設けられている。中立スイッチ60は、例えば、アクセルレバー5のノブ部の上面に設けられている。中立スイッチ60の位置は、これに限定されない。中立スイッチ60について詳しくは後述する。
船外機推進ユニット3は、船体2の船尾にブラケット6を介して取り付けられている。船外機推進ユニット3は、船体2の推進力を発生させるプロペラ7と、動力部8と、駆動部9と、操舵部10とを有している。
動力部8は、プロペラ7を回転させる駆動力を発生させるエンジン11を有している。駆動部9は、エンジン11の駆動力をエンジンシャフト及びギア機構(図示省略)を介してプロペラ7に伝達することで、プロペラ7を回転駆動させる。
操舵部10は、動力部8と駆動部9との間に配置されている。操舵部10は、船外機推進ユニット3の操舵を行う船舶用操舵装置100(後述)の一部を構成している。
図3は、一実施形態に係る船舶用操舵装置を例示する概略ブロック図である。図3において、油圧操舵機構12は、船体2に配置されたハンドル4の操作量に応じて供給される作動油で動作して船外機推進ユニット3の操舵を行う。油圧操舵機構12は、例えば、ハンドル4の操作量に応じてヘルムポンプ13より作動油が供給される一対の油圧シリンダ14,15と、油圧シリンダ14,15内のピストン18,22の往復運動を回転運動に変換する変換機構16と、を有している。
ヘルムポンプ13は、船体2に搭載されている。油圧シリンダ14,15及び変換機構16は、船外機推進ユニット3の操舵部10に搭載されている。ヘルムポンプ13は、ハンドル4と連結された第1油圧ポンプである。ヘルムポンプ13は、ハンドル4の操作に応じて駆動される。
油圧シリンダ14は、シリンダチューブ17と、このシリンダチューブ17内に配置されたピストン18とを有している。シリンダチューブ17内におけるピストン18よりもボトム側の領域は、シリンダ室19を形成している。
シリンダチューブ17のボトム近傍には、オイル孔部17aが設けられている。ヘルムポンプ13とオイル孔部17aとは、オイル配管20を介して接続されている。シリンダ室19には、ハンドル4の操作量に応じてヘルムポンプ13より作動油が供給される。そして、シリンダ室19の作動油によってピストン18が油圧シリンダ14内を往復動する。
油圧シリンダ15は、油圧シリンダ14と向き合うように配置されている。油圧シリンダ15は、シリンダチューブ21と、このシリンダチューブ21内に配置されたピストン22とを有している。シリンダチューブ21内におけるピストン22よりもボトム側の領域は、シリンダ室23を形成している。
シリンダチューブ21のボトム近傍には、オイル孔部21aが設けられている。ヘルムポンプ13とオイル孔部21aとは、オイル配管24を介して接続されている。シリンダ室23には、ハンドル4の操作量に応じてヘルムポンプ13より作動油が供給される。そして、シリンダ室23の作動油によってピストン22が油圧シリンダ15内を往復動する。
変換機構16は、油圧シリンダ14,15のピストン18,22の往復運動を回転運動に変換する。変換機構16は、例えば、ピストン18,22同士を連結するラック部材25と、ラック部材25の往復運動を回転運動に変換するピニオン部材26と、ラック部材25又はピニオン部材26に設けられた突起部29と、を含む。ラック部材25は、ピストン18,22同士を連結する細長板状の部材である。ラック部材25の一面には、ラック歯車27が設けられている。
ピニオン部材26は、図4(a)及び図4(b)に示されるように、円筒状の回転部である。ピニオン部材26の外周面には、ラック歯車27と噛み合うピニオン歯車28が設けられている。ピニオン部材26の上面26aには、突起部29が設けられている。ピニオン部材26の上端内周部には、段差加工が施された円環状の段差部30が設けられている。ピニオン部材26の下面26bは、駆動部9に固定されている。なお、ピニオン部材26の上面26a及び下面26bは、ピニオン部材26の互いに対向する面である。
ハンドル4が左操作されると、油圧シリンダ14のシリンダ室19の作動油がオイル配管20、ヘルムポンプ13及びオイル配管24を通って油圧シリンダ15のシリンダ室23に供給される。このため、ピストン18,22がラック部材25と共にシリンダチューブ17のボトム側に移動する。すると、ラック部材25の移動に伴って、ピニオン部材26が左側に回転することで、船外機推進ユニット3が左側に操舵され、船体2が左旋回する。
ハンドル4が右操作されると、油圧シリンダ15のシリンダ室23の作動油がオイル配管24、ヘルムポンプ13及びオイル配管20を通って油圧シリンダ14のシリンダ室19に供給される。このため、ピストン18,22がラック部材25と共にシリンダチューブ21のボトム側に移動する。すると、ラック部材25の移動に伴って、ピニオン部材26が右側に回転することで、船外機推進ユニット3が右側に操舵され、船体2が右旋回する。
また、船舶用操舵装置100は、図5(a)に示されるように、油圧駆動部材31と、2つの回動部材32,33とを更に備えている。油圧駆動部材31及び回動部材32,33は、操舵部10に搭載されている。
油圧駆動部材31は、ピニオン部材26上に配置されている。油圧駆動部材31は、油圧を利用して、回動部材32,33の係合部44,47(後述)を舵角制限無し位置Pと舵角制限有り位置Qとの間で移動させる。
舵角制限無し位置Pは、船外機推進ユニット3の舵角角度範囲が±90度となるような位置である(図8(a)参照)。舵角制限有り位置Qは、船外機推進ユニット3の舵角角度範囲が±α度(<90度)となるような位置である(図8(b)参照)。αは、舵角制限角度である。つまり、舵角制限有り位置Qは、舵角制限無し位置Pよりも船外機推進ユニット3の舵角を制限するような位置である。
油圧駆動部材31は、図5(a)及び図6に示されるように、ピニオン部材26に対して相対的に回転可能な環状壁部34と、この環状壁部34よりも環状壁部34の径方向内側に配置されたストッパ部35と、環状壁部34よりも環状壁部34の径方向内側におけるストッパ部35の両側に配置された2つのストッパ部36とを有している。
ストッパ部35,36は、環状壁部34の内周面に固定されている。ストッパ部35,36は、環状壁部34の周方向に沿って等間隔で配列されている。ストッパ部35,36は、環状壁部34及び回動部材32,33の環状部42,45(後述)と協働して、2つの湾曲状の収容部37を画成している。
環状壁部34には、ストッパ部35側において各収容部37と連通したオイル孔部38と、各ストッパ部36側において各収容部37と連通した2つのオイル孔部39とが設けられている。オイル孔部38は、作動油が流れる第1オイル孔部である。オイル孔部39は、作動油が流れる第2オイル孔部である。
ストッパ部35には、オイル孔部38と各収容部37とを連通させるT字型の連通孔40が設けられている。各ストッパ部36には、オイル孔部39と各収容部37とを連通させるL字型の連通孔41が設けられている。連通孔40は、作動油が流れる第1連通孔である。連通孔41は、作動油が流れる第2連通孔である。
回動部材32,33は、ピニオン部材26に回転可能に取り付けられている。回動部材32は、図5及び図7に示されるように、段差状の環状部42と、この環状部42の外周面42aに固定された当接部43及び係合部44とを有している。
環状部42は、油圧駆動部材31におけるストッパ部35,36よりも環状壁部34の径方向内側に配置されている。当接部43は、ストッパ部35と一方のストッパ部36との間に配置されている。つまり、当接部43は、一方の収容部37に収容されている。当接部43は、ストッパ部35,36に当接する。係合部44は、一方のストッパ部36に対して当接部43の反対側に配置されている。係合部44は、ピニオン部材26の突起部29と係合する。
回動部材33は、段差状の環状部45と、この環状部45の外周面45aに固定された当接部46及び係合部47とを有している。当接部46と係合部47との間隔は、当接部43と係合部44との間隔と等しい。
環状部45は、油圧駆動部材31におけるストッパ部35,36よりも環状壁部34の径方向内側に配置されている。当接部46は、ストッパ部35と他方のストッパ部36との間に配置されている。つまり、当接部46は、他方の収容部37に収容されている。当接部46は、ストッパ部35,36に当接する。係合部47は、他方のストッパ部36に対して当接部46の反対側に配置されている。係合部47は、ピニオン部材26の突起部29と係合する。
環状部45は、ピニオン部材26に対して回転可能となるようにピニオン部材26の段差部30に嵌め込まれている。環状部42は、環状部45に対して回転可能となるように重なっている。つまり、環状部42,45は、独立に回転可能となっている。当接部43,46及び係合部44,47の上端及び下端の高さ位置は、全て等しい。
上記の舵角制限無し位置Pは、図8(a)に示されるように、当接部43がストッパ部35の一端面に当接すると共に、当接部46がストッパ部35の他端面に当接する位置である。舵角制限無し位置Pでは、係合部44が一方のストッパ部36の一端面に当接すると共に、係合部47が他方のストッパ部36の一端面に当接する。舵角制限無し位置Pでは、舵角下限角度が-90度となり、舵角上限角度が+90度となる。
上記の舵角制限有り位置Qは、図8(b)に示されるように、当接部43が一方のストッパ部36の他端面に当接すると共に、当接部46が他方のストッパ部36の他端面に当接する位置である。舵角制限有り位置Qでは、舵角下限角度が-α度となり、舵角上限角度が+α度となる。
油圧駆動部材31の上部には、図5(a)に示されるように、環状壁部34、ストッパ部35,36、収容部37及び回動部材32,33を覆い塞ぐ円環状の蓋プレート48が配置されている。蓋プレート48は、動力部8の下端部に固定されている。これにより、油圧駆動部材31内に存在する作動油の密封性を確保することができる。
図3に戻り、船舶用操舵装置100は、オイルタンク49と、別装ポンプ50と、方向制御弁51とを更に備えている。オイルタンク49、別装ポンプ50及び方向制御弁51は、操舵部10に搭載されている。
別装ポンプ50は、オイルタンク49に溜められた作動油を油圧駆動部材31に供給する第2油圧ポンプである。方向制御弁51は、別装ポンプ50と油圧駆動部材31との間で作動油が流れる方向を切り換える電磁切換弁である。
オイルタンク49と別装ポンプ50とは、オイル配管52を介して接続されている。オイル配管52は、オイルタンク49から別装ポンプ50に作動油が流れる配管である。別装ポンプ50と方向制御弁51とは、オイル配管53を介して接続されている。オイル配管53は、別装ポンプ50から方向制御弁51に作動油が流れる配管である。方向制御弁51とオイルタンク49とは、オイル配管54を介して接続されている。オイル配管54は、方向制御弁51からオイルタンク49に作動油が流れる配管である。
方向制御弁51と油圧駆動部材31のオイル孔部38とは、オイル配管55を介して接続されている。オイル配管55は、方向制御弁51とオイル孔部38との間で作動油が流れる配管である。方向制御弁51と油圧駆動部材31の各オイル孔部39とは、オイル配管56を介して接続されている。オイル配管56は、方向制御弁51とオイル孔部39との間で作動油が流れる配管である。
方向制御弁51では、閉位置(中立位置)と舵角制限無し用の開位置と舵角制限有り用の開位置とが切り換えられる。閉位置は、別装ポンプ50からオイル孔部38,39への作動油の供給を遮断する位置である。舵角制限無し用の開位置は、別装ポンプ50から各オイル孔部39への作動油の供給を許容すると共に、別装ポンプ50からオイル孔部38への作動油の供給を遮断する位置である。舵角制限有り用の開位置は、別装ポンプ50からオイル孔部38への作動油の供給を許容すると共に、別装ポンプ50から各オイル孔部39への作動油の供給を遮断する位置である。
方向制御弁51の位置が舵角制限無し用の開位置に切り換えられると、別装ポンプ50から吐出された作動油がオイル配管53、方向制御弁51、オイル配管56を流れて油圧駆動部材31の各オイル孔部39に供給される。すると、図8(a)に示されるように、作動油が各連通孔41を流れて各収容部37に供給されることで、回動部材32,33の当接部43,46に油圧がかかり、当接部43,46がストッパ部35まで移動する。そして、各収容部37の作動油は、連通孔40、オイル孔部38、オイル配管55、方向制御弁51及びオイル配管54を流れてオイルタンク49に戻る。これにより、回動部材32,33の係合部44,47の位置が舵角制限無し位置Pとなる。
一方、方向制御弁51の位置が舵角制限有り用の開位置に切り換えられると、別装ポンプ50から吐出された作動油がオイル配管53、方向制御弁51、オイル配管55を流れて油圧駆動部材31のオイル孔部38に供給される。すると、図8(b)に示されるように、作動油が連通孔40を流れて各収容部37に供給されることで、回動部材32,33の当接部43,46に油圧がかかり、当接部43,46が各ストッパ部36まで移動する。そして、各収容部37の作動油は、各連通孔41、各オイル孔部39、各オイル配管56、方向制御弁51及びオイル配管54を流れてオイルタンク49に戻る。これにより、回動部材32,33の係合部44,47の位置が舵角制限有り位置Qとなる。
引き続き、船舶1の直進状態への立て直しの容易化のための構成について説明する。船舶用操舵装置100は、油圧操舵機構12の動作を規制する規制部70を備えている。規制部70は、例えば、上述の別装ポンプ50のほか、油圧駆動部材71、規制ピン72と、中立制御弁73と、オイル配管74と、を含んで構成される。
油圧駆動部材71は、一例として、図5(b)に示されるように、油圧駆動部材31を挟んでピニオン部材26に対して反対側に配置されている。油圧駆動部材71は、本体部71aと、壁部71bと、収容部71cと、を有している。なお、図5(a)、図8、図9(a)、及び図9(b)では、油圧駆動部材71の図示が省略されている。
本体部71aは、例えば、平面視で油圧駆動部材31と同様の外形形状とされ、油圧駆動部材31に取り付けられている。壁部71bは、本体部71aの油圧駆動部材31側の面であり、環状壁部34に当接させられる。壁部71bに対しては、ピニオン部材26が相対的に回転可能である。
収容部71cは、壁部71bに開口しており、規制ピン72を収容するための有底筒状の空間を画成している。収容部71cは、規制ピン72の断面形状と同様の形状で開口し、規制ピン72が摺動可能に構成されている。収容部71cの深さは、規制ピン72の長さよりも大きい。収容部71cは、規制ピン72が壁部71bから突出しないように規制ピン72を収容することができる。
収容部71cの底部側には、収容部71cと連通して作動油が流れるオイル孔部71dが設けられている。オイル孔部71dは、中立制御弁73(図3参照)と接続されている。
規制ピン72は、突起部29と当接することでハンドル中立状態となるように油圧操舵機構12の動作を規制する。ハンドル中立状態とは、船外機推進ユニット3の推進方向が船舶1の前後方向に沿う方向となるハンドル4の操作状態を意味する。ハンドル中立状態は、必ずしもハンドル4の操作位置が完全な中立位置でなくてもよい。ハンドル中立状態は、例えばハンドル4の操作位置が完全な中立位置から所定の舵角範囲内でずれていてもよい。
規制ピン72は、油圧駆動部材71への作動油の供給により突起部29と当接可能な位置に移動させられる。規制ピン72は、突起部29と当接可能な位置に移動させられた状態で、その一部が収容部71cに嵌まっている。そのため、規制ピン72が当該位置に移動した状態で突起部29に当接された場合、突起部29から規制ピン72に加わる力は、収容部71cとの接触箇所を介して本体部71aによって支持される。本体部71a及び規制ピン72は、突起部29から規制ピン72に加わる力に耐えうる強度を有している。
規制ピン72は、舵角角度が0°の位置に設けられている。そのため、規制ピン72に突起部29が当接した状態では、必ずしもハンドル4の操作位置が完全な中立位置にはならない。しかし、規制ピン72は、規制ピン72に突起部29が当接した状態で、船外機推進ユニット3の推進方向が船舶1の前後方向に沿う方向になるように構成されている。よって、突起部29を規制ピン72に当接させることで、ハンドル4の操作位置が完全な中立位置から上記所定の舵角範囲内となり、ハンドル中立状態とすることができる。
規制ピン72には、例えば収容部71cの底部側に付勢する弾性部材(例えばスプリング等、図示省略)が取り付けられている。よって、油圧駆動部材71への作動油の供給が止められると、突起部29と当接しない位置(突起部29の全部が収容部71cに収容される位置)に移動させられる。
別装ポンプ50は、オイルタンク49に溜められた作動油を油圧駆動部材71に供給する。中立制御弁73は、別装ポンプ50から油圧駆動部材31への作動油の供給の有無を切り換える。中立制御弁73は、例えば電磁切換弁である。中立制御弁73は、オイル配管74に設けられている。オイル配管74は、例えば、オイル配管56の途中で分岐すると共に、方向制御弁51とオイル孔部71dとの間で作動油が流れる配管である。
中立制御弁73の位置としては、リリーフ位置とハンドル中立状態用の作動位置とが切り換えられる。リリーフ位置は、別装ポンプ50からオイル孔部71dへの作動油の供給を遮断して収容部71cの油圧をリリーフする位置である。ハンドル中立状態用の作動位置は、別装ポンプ50からオイル孔部71dへの作動油の供給を許容して規制ピン72による規制を作動させる位置である。なお、中立制御弁73の位置とは、中立制御弁73が有する弁体の位置を意味する。なお、収容部71cの油圧のリリーフは、中立制御弁73の図示しない公知の構造によって実現されてもよいし、中立制御弁73よりも油圧駆動部材71側にて作動油の供給がない場合に油圧がリリーフされる構造とされていてもよい。
中立制御弁73の位置がリリーフ位置に切り換えられると、別装ポンプ50から吐出された作動油の油圧駆動部材71のオイル孔部71dへの供給が遮断される。すると、収容部71cの油圧の低下及び弾性部材の付勢力によって、図9(a)に示されるように、規制ピン72が突起部29と当接しない位置(突起部29の全部が収容部71cに収容される位置)に移動する。これにより、ピニオン部材26の回転動作が規制ピン72によって規制されなくなり、図8に示されるような油圧操舵機構12の動作が許容される。
一方、中立制御弁73の位置がハンドル中立状態用の作動位置に切り換えられると、別装ポンプ50から吐出された作動油がオイル配管53、方向制御弁51、オイル配管56、オイル配管74を流れて油圧駆動部材71のオイル孔部71dに供給される。すると、図9(b)に示されるように、作動油が収容部71cに供給されることで、規制ピン72に油圧がかかり、規制ピン72が突起部29と当接可能な位置まで移動する。これにより、規制ピン72と突起部29とが互いに当接するように船舶1の操船者がハンドル4を操作することで、ピニオン部材26の回転動作が規制ピン72によって規制され、油圧操舵機構12の動作が規制される。
船舶用操舵装置100の舵角制御のための構成及び処理について説明する。船舶用操舵装置100は、船速センサ57と、アクセル位置センサ58と、舵角センサ59と、中立スイッチ60と、ディスプレイ61と、コントローラ(制御部)62とを備えている。
船速センサ57は、船体2の航行速度(船速)を検出するセンサである。アクセル位置センサ58は、アクセルレバー5の位置を検出するセンサである。具体的には、アクセル位置センサ58は、アクセルレバー5の位置がフルスロットル位置(前述)にあるかどうかを検出する。アクセルレバー5の位置がフルスロットル位置にあるときは、船体2の速度及び加速度が上昇する。従って、船速センサ57及びアクセル位置センサ58は、船体2の状態として、船体2の速度及び加速度に関する状態を検知する検知部を構成している。
舵角センサ59は、船外機推進ユニット3の舵角量(舵角角度)を検出する舵角検出部を構成している。
中立スイッチ60は、船舶1の操船者が船外機推進ユニット3の推進方向を船舶1の前後方向に沿う方向に戻したい場合に、船舶1の操船者によって操作されるスイッチである。中立スイッチ60は、例えばモーメンタリ動作のスイッチである。
ディスプレイ61は、船外機推進ユニット3の舵角制限状況(舵角制限の有無)及び舵角量等の情報を画面表示する。ディスプレイ61は、ハンドル中立状態とするために油圧操舵機構12の動作が規制されるか否かの状況(規制の有無)の情報を画面表示してもよい。なお、ディスプレイ61は、画面表示による通知に加えて、ランプ、ブザーまたは音声等による通知を行ってもよい。
コントローラ62は、船体2の後側に配置されている(図1参照)。コントローラ62は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び入出力インターフェース等を含むコンピュータにより構成されている。コントローラ62は、図10に示されるように、船速センサ57、アクセル位置センサ58、舵角センサ59、及び中立スイッチ60からの信号が入力され、所定の処理を実行し、方向制御弁51、中立制御弁73及びディスプレイ61を制御する。
コントローラ62は、中立スイッチ60の操作信号に基づいて規制部70の動作を制御する。コントローラ62は、機能的構成として、判断部63と、舵角制限制御部64と、舵角中立制御部65と、通知制御部66とを有している。
判断部63は、船速センサ57及びアクセル位置センサ58により検知された船体2の状態に基づいて、船体2の安定性の低下が予想される状況であるか否かを判断する。
舵角制限制御部64は、判断部63により船体2の安定性の低下が予想される状況でないと判断されたときは、別装ポンプ50から油圧駆動部材31の各オイル孔部39に作動油が供給されることで、回動部材32,33の係合部44,47の位置を舵角制限無し位置Pに設定するように方向制御弁51を制御する。舵角制限制御部64は、判断部63により船体2の安定性の低下が予想される状況であると判断されたときは、別装ポンプ50から油圧駆動部材31のオイル孔部38に作動油が供給されることで、係合部44,47の位置を舵角制限有り位置Qに設定するように方向制御弁51を制御する。なお、舵角制限制御部64は、方向制御弁51を制御する制御部を構成している。
また、舵角制限制御部64は、係合部44,47の位置が舵角制限無し位置Pから舵角制限有り位置Qに切り換えられた後、別装ポンプ50から油圧駆動部材31への作動油の供給を停止させるように方向制御弁51を制御する。舵角制限制御部64は、係合部44,47の位置が舵角制限有り位置Qから舵角制限無し位置Pに切り換えられた後、別装ポンプ50から油圧駆動部材31への作動油の供給を停止させるように方向制御弁51を制御する。
舵角中立制御部65は、中立スイッチ60の操作信号の有無に基づいて、中立スイッチ60の押下状態を取得する。舵角中立制御部65は、中立スイッチ60が操作されている旨の操作信号をコントローラ62が受信している場合、中立スイッチ60が押下状態であると認識する。舵角中立制御部65は、中立スイッチ60が操作されている旨の操作信号をコントローラ62が受信していない場合、中立スイッチ60が押下状態ではないと認識する。
舵角中立制御部65は、中立スイッチ60の押下状態に基づいてハンドル中立状態とするか否かを判断する。ここでの舵角中立制御部65は、例えば、中立スイッチ60が押下状態であると認識した場合、ハンドル中立状態とすると判断する。舵角中立制御部65は、中立スイッチ60が押下状態ではないと認識した場合、ハンドル中立状態としないと判断する。
舵角中立制御部65は、中立スイッチ60の操作信号に基づいてハンドル中立状態とすると判断した場合、ハンドル中立状態となるように規制部70に油圧操舵機構12の動作を規制させる。舵角中立制御部65は、例えば、ハンドル中立状態とすると判断した場合、別装ポンプ50から油圧駆動部材71へ作動油を供給(収容部71cでの油圧の発生)する作動位置となるように、中立制御弁73の位置を制御する。舵角中立制御部65は、ハンドル中立状態としないと判断した場合、別装ポンプ50から油圧駆動部材71への作動油の供給を遮断(収容部71cの油圧のリリーフ)するリリーフ位置となるように、中立制御弁73の位置を制御する。
通知制御部66は、舵角センサ59により検出された船外機推進ユニット3の舵角量が舵角制限有り位置Qに対応する角度範囲内でないときに、その旨の通知を行うようにディスプレイ61を制御する。舵角制限有り位置Qに対応する角度範囲は、上述したように-α度から+α度である。なお、通知制御部66及びディスプレイ61が、通知を行う通知部を構成している。
通知制御部66は、舵角中立制御部65によって中立スイッチ60が押下状態であると認識された場合、ハンドル中立状態とするために油圧操舵機構12の動作が規制される(規制の有無)の情報を画面表示するように、ディスプレイ61を制御してもよい。
図11は、コントローラによる舵角制御処理を示すフローチャートである。舵角制御処理は、エンジン11が始動されると実行される。なお、舵角制御処理の実行前は、舵角制限フラグは0に設定され、舵角制限超えフラグは0に設定され、舵角制限変更動作時間は0に設定されている。
舵角制限フラグは、係合部44,47の位置が舵角制限無し位置Pであるか舵角制限有り位置Qであるか否かを表すフラグである。係合部44,47の位置が舵角制限無し位置Pであるときは、舵角制限フラグは0にセットされる。係合部44,47の位置が舵角制限有り位置Qであるときは、舵角制限フラグは1にセットされる。
舵角制限超えフラグは、船外機推進ユニット3の舵角角度の絶対値が舵角制限角度αを超えているかどうかを表すフラグである。船外機推進ユニット3の舵角角度の絶対値が舵角制限角度αを超えていないときは、舵角制限超えフラグは0にセットされる。船外機推進ユニット3の舵角角度の絶対値が舵角制限角度αを超えているときは、舵角制限超えフラグは1にセットされる。
舵角制限変更動作時間は、係合部44,47が舵角制限無し位置Pから舵角制限有り位置Qに向けて移動するときの経過時間と、係合部44,47が舵角制限有り位置Qから舵角制限無し位置Pに向けて移動するときの経過時間とを表している。
図11において、コントローラ62は、まず船速センサ57、アクセル位置センサ58及び舵角センサ59の検出値を取得する(手順S101)。コントローラ62は、中立スイッチ60の操作信号の有無に基づいて、中立スイッチ60の押下状態を取得する(手順S102)。
そして、コントローラ62は、船速センサ57の検出値に基づいて、船体2の船速が舵角制限適用速度V以上であるか否かを判断する(手順S103)。舵角制限適用速度Vは、例えば船体2が急旋回したときに船体2の安定性が低下する可能性がある速度である。
コントローラ62は、船体2の船速が舵角制限適用速度V以上であると判断したときは、舵角制限有り処理を実行する(手順S104)。舵角制限有り処理については、後で詳述する。
コントローラ62は、船体2の船速が舵角制限適用速度V以上でないと判断したときは、アクセル位置センサ58の検出値に基づいて、アクセルレバー5の位置が舵角制限適用位置Dであるか否かを判断する(手順S105)。
コントローラ62は、アクセルレバー5の位置が舵角制限適用位置Dであると判断したときは、舵角制限有り処理を実行する(手順S104)。コントローラ62は、アクセルレバー5の位置が舵角制限適用位置Dでないと判断したときは、舵角制限無し処理を実行する(手順S106)。舵角制限無し処理については、後で詳述する。
コントローラ62は、手順S104または手順S106を実行した後、現在の船外機推進ユニット3の舵角制限状況及び舵角量をディスプレイ61に画面表示させる(手順S107)。手順S107では、コントローラ62は、ハンドル中立状態とするために油圧操舵機構12の動作が規制されるか否かの状況(規制の有無)の情報をディスプレイ61に画面表示させてもよい。その後、コントローラ62は、今回の舵角制御処理を終了する。コントローラ62は、例えば所定の時間周期ごとに、上記の手順S101を再度実行してもよい。
図12は、コントローラ62により実行される舵角制限有り処理の手順S104の詳細を示すフローチャートである。図12において、コントローラ62は、まず舵角制限フラグが0または舵角制限超えフラグが1であるか否かを判断する(手順S111)。
コントローラ62は、舵角制限フラグが0または舵角制限超えフラグが1であると判断したときは、舵角制限変更動作時間を0に設定する(手順S112)。コントローラ62は、手順S112を実行した後、または手順S111で舵角制限フラグが0でなく且つ舵角制限超えフラグが1でないと判断したときは、舵角制限フラグを1に設定する(手順S113)。
続いて、コントローラ62は、舵角センサ59の検出値に基づいて、船外機推進ユニット3の舵角角度の絶対値が舵角制限角度αよりも大きいかどうかを判断する(手順S114)。コントローラ62は、船外機推進ユニット3の舵角角度の絶対値が舵角制限角度αよりも大きいと判断したときは、舵角制限超えフラグを1に設定する(手順S115)。
続いて、コントローラ62は、舵角角度の絶対値が舵角制限角度αよりも大きい旨をディスプレイ61に警告表示させる(手順S116)。続いて、コントローラ62は、方向制御弁51の位置を舵角制限有り用の開位置とするように制御する(手順S117)。
コントローラ62は、手順S114で船外機推進ユニット3の舵角角度の絶対値が舵角制限角度α以下であると判断したときは、舵角制限超えフラグを0に設定する(手順S118)。そして、コントローラ62は、舵角制限変更動作時間に時間Δtを加算する(手順S119)。
続いて、コントローラ62は、舵角制限変更動作時間が舵角制限変更動作完了時間Tに達したかどうかを判断する(手順S120)。ここでの舵角制限変更動作完了時間Tは、回動部材32,33の係合部44,47の位置が舵角制限無し位置Pから舵角制限有り位置Qに変更されるまでの時間である。
コントローラ62は、舵角制限変更動作時間が舵角制限変更動作完了時間Tに達していないと判断したときは、方向制御弁51の位置を舵角制限有り用の開位置とするように制御する(手順S117)。
コントローラ62は、舵角制限変更動作時間が舵角制限変更動作完了時間Tに達したと判断したときは、方向制御弁51の位置を中立位置とするように制御する(手順S121)。そして、コントローラ62は、舵角制限変更動作時間を0に設定する(手順S122)。
図13は、コントローラ62により実行される舵角制限無し処理の手順S106の詳細を示すフローチャートである。図13において、コントローラ62は、まず舵角制限フラグが1であるか否かを判断する(手順S131)。
コントローラ62は、舵角制限フラグが1であると判断したときは、舵角制限変更動作時間を0に設定する(手順S132)。コントローラ62は、手順S132を実行した後、または手順S131で舵角制限フラグが1でないと判断したときは、舵角制限フラグを0に設定する(手順S133)。
続いて、コントローラ62は、中立スイッチ60が押下状態であるか否かを判断する(手順S134)。コントローラ62は、中立スイッチ60が押下状態であると判断したときは、中立制御弁73の位置を作動位置とする(手順S135)。コントローラ62は、中立スイッチ60が押下状態ではないと判断したときは、中立制御弁73の位置をリリーフ位置とする(手順S136)。このように、コントローラ62は、中立スイッチ60が押されている間だけ、ハンドル中立状態となるように規制部70に油圧操舵機構12の動作を規制させる。
続いて、コントローラ62は、舵角制限変更動作時間が舵角制限変更動作完了時間Tに達したかどうかを判断する(手順S137)。ここでの舵角制限変更動作完了時間Tは、回動部材32,33の係合部44,47の位置が舵角制限有り位置Qから舵角制限無し位置Pに変更されるまでの時間である。
コントローラ62は、舵角制限変更動作時間が舵角制限変更動作完了時間Tに達していないと判断したときは、方向制御弁51の位置を舵角制限無し用の開位置とするように制御する(手順S138)。そして、コントローラ62は、舵角制限変更動作時間に時間Δtを加算する(手順S139)。
コントローラ62は、手順S137で舵角制限変更動作時間が舵角制限変更動作完了時間Tに達したと判断したときは、方向制御弁51の位置を中立位置とするように制御する(手順S140)。そして、コントローラ62は、舵角制限変更動作時間を0に設定する(手順S141)。
以上において、判断部63は、図11における手順S101,S103,S105を実行する。舵角制限制御部64は、図11における手順S104のうち、図12における手順S111~S114,S117~S122と、図11における手順S106とを実行する。舵角中立制御部65は、図11における手順S102と、図11における手順S104のうち、図13における手順S134~S136とを実行する。通知制御部66は、図11における手順S101,S107と、図11における手順S104のうち、図12における手順S114~S116とを実行する。
以上説明したように、船舶用操舵装置100では、ハンドル4が操作されると、ハンドル4の操作量に応じて油圧操舵機構12が動作して船外機推進ユニット3の操舵が行われる。ここで、コントローラ62は、中立スイッチ60の操作信号に基づいてハンドル中立状態とすると判断した場合、ハンドル中立状態となるように規制部70に油圧操舵機構12の動作を規制させる。これにより、例えばハンドル4の操作状態の把握が難しくなったとしても、規制部70に油圧操舵機構12の動作を規制されるまでハンドル4を操作することで、ハンドル中立状態とすることができる。よって、船外機推進ユニット3の推進方向を船舶1の前後方向に沿う方向に容易に戻すことができる。したがって、船舶用操舵装置100によれば、船舶1の直進状態への立て直しの容易化を図ることが可能となる。
特に本実施形態では、船外機推進ユニット3の舵角角度の大きさの上限が90度である場合には、船外機推進ユニット3の舵角角度の大きさの上限がα度である場合と比べてハンドル4の操作量が増加するため、ハンドル4の操作状態の把握が難しくなる可能性が高くなる。この場合、例えば離着岸時などの状況で、船舶1の進行方向の立て直しに時間を要する可能性が高くなる。船舶用操舵装置100によれば、ハンドル中立状態となるように油圧操舵機構12の動作が規制されるため、ハンドル4の操作量が増加する状況でもハンドル4の操作状態を容易に把握することができる。その結果、船舶1の進行方向の早期の立て直しが容易となり、安定した操船の実現が可能となる。
油圧操舵機構12は、ハンドル4の操作量に応じてヘルムポンプ13より作動油が供給される一対の油圧シリンダ14,15と、油圧シリンダ14,15内のピストン18,22の往復運動を回転運動に変換する変換機構16と、を有する。変換機構16は、ピストン18,22同士を連結するラック部材25と、ラック部材25の往復運動を回転運動に変換するピニオン部材26と、ラック部材25又はピニオン部材26に設けられた突起部29と、を含む。規制部70は、突起部29と当接することでハンドル中立状態となるように油圧操舵機構12の動作を規制する規制ピン72と、作動油の供給により突起部29と当接可能な位置に規制ピン72を移動させる油圧駆動部材71と、油圧駆動部材71に作動油を供給する別装ポンプ50と、別装ポンプ50から油圧駆動部材71への作動油の供給の有無を切り換える中立制御弁73と、を有する。コントローラ62は、ハンドル中立状態とすると判断した場合、別装ポンプ50から油圧駆動部材71へ作動油を供給するように中立制御弁73を制御する。
このような構成により、ハンドル4が操作されると、ハンドル4の操作量に応じてヘルムポンプ13より作動油が一方の油圧シリンダ14又は15に供給されることで、各油圧シリンダ14,15のピストン18,22が一方の油圧シリンダ14又は15側から他方の油圧シリンダ15又は14側に移動する。そして、変換機構16によってピストン18,22の往復運動が回転運動に変換されて、ピニオン部材26が回転することで、船外機推進ユニット3の操舵が行われる。コントローラ62は、ハンドル中立状態とすると判断した場合、別装ポンプ50から油圧駆動部材71へ作動油を供給するように中立制御弁73を制御する。これにより、突起部29と当接可能な位置に規制ピン72が移動させられて、規制ピン72と突起部29とが当接することでハンドル中立状態となるように油圧操舵機構12の動作が規制される。このような規制部70の油圧動作によって、油圧操舵機構12の動作の規制を行うことができる。
中立スイッチ60は、モーメンタリ動作のスイッチとされている。このような構成によれば、例えば中立スイッチ60を押している間だけ油圧操舵機構12の動作が規制される。よって、操船者は、自身のスイッチ操作の有無に応じて、油圧操舵機構12の動作の規制の有無を直感的に把握することができる。
本発明は、上記実施形態には限定されない。
上記実施形態では、中立スイッチ60は、アクセルレバー5に設けられていたが、これに限定されない。例えば、中立スイッチ60は、ハンドル4に設けられていてもよい。このような構成では、例えば船舶1の操船者がハンドル4の操作中であっても、周囲の状況確認から目を離さずに中立スイッチ60を操作することができる。ちなみに、ハンドル中立状態とするために油圧操舵機構12の動作が規制されるか否かの状況(規制の有無)の情報を、ディスプレイ61に画面表示させなくてもよい。例えば舵角計などの表示器による表示も不要となる。この場合、周囲の状況確認から目を離さずに、ハンドル中立状態をハンドル4の中立スイッチ60の操作で把握することができるため、より安全な操船性を提供できる。なお、中立スイッチ60は、アクセルレバー5及びハンドル4とは別の場所に独立して設けられていてもよい。
上記実施形態では、コントローラ62は、中立スイッチ60が押下状態であると判断したときは、中立制御弁73の位置を作動位置としたが(手順S135)、例えば、更なる条件として、船速センサ57の検出値に基づいて、船体2の船速がハンドル中立状態適用速度VL以下である場合に、中立制御弁73の位置を作動位置としてもよい。この場合、船体2の船速がハンドル中立状態適用速度VLを超えた場合に、中立制御弁73の位置がリリーフ位置とされるため、油圧操舵機構12の動作の規制を、例えば離着岸時などの低船速で船舶1の進行方向の立て直しが行われ易い状況に限って実施することができる。
上記実施形態では、舵角角度の上限の制限用としての突起部29を利用して油圧操舵機構12の動作の規制を行う構成としたが、突起部29とは異なる別の突起部を設けて油圧操舵機構12の動作の規制を行う構成としてもよい。例えば、ラック歯車27が設けられた一面とは反対側のラック部材25の裏面に突起部を設け、この裏面の突起部に当接可能に移動させられる規制ピン等の規制部材を設けてもよい。
上記実施形態では、規制部70は油圧駆動部材71を用いた油圧式にて動作したが、例えば電磁石等を利用して規制ピン72を移動させるような電気式に構成されていてもよい。
上記実施形態では、中立スイッチ60は、モーメンタリ動作のスイッチとされていたが、オルタネート動作のスイッチであってもよい。
上記実施形態では、油圧駆動部材31、ストッパ部35、及びストッパ部36等を備えて舵角角度の上限を2段階に可変としていたが、このような可変機構を備えていなくてもよい。この場合、コントローラ62における判断部63、舵角制限制御部64、及び通知制御部66など、可変機構に対応する構成を省いてもよい。
上記実施形態では、油圧駆動部材71において、収容部71cに直接連通するようにオイル孔部71dが本体部71aに設けられていたが、特にそのような形態には限られない。
また、上記実施形態では、船外機推進ユニット3の舵角量の最大角度は±90度であるが、舵角量の最大角度としては、特に±90度でなくてもよい。