JP7372743B2 - 炊飯器 - Google Patents

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Description

本発明は、鍋内に収容した被炊飯物を短時間で炊き上げる高速炊飯を実現した炊飯器に関する。
加熱コイルからの交番磁界により、金属製の鍋を電磁誘導加熱するIH式の炊飯器では、インダクタとなる加熱コイルに所望の高周波電流を供給するために、電源回路やインバータを備えた電磁誘導コントローラが組み込まれる。電源回路は、商用電源からの交流電圧を直流電圧に変換するもので、整流器や平滑コンデンサにより構成される。また、電源回路からの直流電圧が印加されるインバータは、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの大電流・高耐圧用のスイッチ素子や、加熱コイルと共振回路を形成する共振コンデンサなどを含んで構成され、スイッチ素子に供給されるパルス駆動信号の周波数や幅が可変することで、鍋への加熱量に相当するインバータの入力電力が所望の値に調整される。インバータは様々な回路方式が知られているが、一般的には構成が簡単で部品点数の少ないシングルエンド形式の電圧形共振インバータが多用される(例えば、特許文献1を参照)。
一方、炊飯器のような商用電源で動作する電気機器は、世界各国の電源電圧に対応して、どの地域であっても同一の製品に共通化されるのが望ましい。その理由は、使う人からすれば、電源電圧が100V系の地域でも200V系の地域でも、同じ製品で同じ機能が発揮できるからであり、また作る人からすれば、仕向地ごとに製品を作り分ける必要がなく、生産管理やコスト管理が容易になるからである。
こうした要望に対して、電源電圧が100Vと200Vのときに、何れもスイッチ素子の駆動周波数が20~50kHzの範囲で、所定の入力電力がインバータに入れられるように、コイルの巻数が異なる加熱コイルをそれぞれ組み込み、電圧検出回路で検出された電源電圧に応じて、複数の加熱コイルの接続を切替える炊飯器が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
特開2018-37219号公報 特開2014-123539号公報
しかし上記の従来技術では、インダクタンスの異なる複数の加熱コイルと、接続を切替えるリレーなどの切替手段を、炊飯器の本体内部に搭載しなければならず、設置スペースの制約を受ける。また、切替えは段階的にしか行なえないため、炊飯器に印加される電源電圧が第1電圧系となる100V系や、第2電圧系となる200V系以外の中間値である場合には、決められた範囲の周波数でスイッチ素子を駆動させても、所定の入力電力が得られない問題があった。
また別な要望として、鍋に収容される米の量がある程度多くても、限られた時間内にできるだけ美味しくご飯を炊き上げることが可能な炊飯器が求められている。
そこで本発明は、上記課題を解決するために、鍋に収容される米の量がある程度多くても、限られた時間内にできるだけ美味しくご飯を炊き上げることが可能な炊飯器を提供することを目的とする。
本発明は、外部からの電源電圧を受けて、鍋内に収容した米と水を含む被炊飯物を加熱炊飯する炊飯器において、前記加熱炊飯の開始から、ひたし行程と、加熱行程と、沸騰継続行程と、を経て、前記加熱炊飯を終了して保温に切替えるまでの炊飯時間を25分以内に実行する制御手段と、前記電源電圧が100V~240Vの全範囲で、インバータに所望の入力電力を印加できる共通の電磁誘導コントローラと加熱手段と、を備え、前記加熱手段は、前記鍋の底部から側面下部にかけてを加熱し、前記制御手段は、炊飯開始から沸騰までの時間が3~15分となるように、前記被炊飯物への加熱量の最大値を米量に応じて決定し、前記ひたし行程において前記鍋内の圧力を大気圧よりも低い減圧状態とし、前記加熱行程において前記減圧状態を維持し、前記鍋内の水の沸騰を検知すると前記鍋内の圧力を大気圧よりも高い加圧状態とし、前記加圧状態で前記鍋内の水を沸騰させ、前記加圧状態で前記鍋内の水の沸騰を検知すると、前記沸騰継続行程に移行し、前記沸騰継続行程において、前記鍋内の圧力を大気圧と大気圧よりも高い圧力の範囲で繰り返し増減させるものである。
に収容される米の量がある程度多くても、限られた時間内にできるだけ美味しくご飯を炊き上げることが可能になる。
炊飯物の米量が0.54L以下の場合は、加熱量を1500Wとしても鍋内の被炊飯物を短時間で沸騰させることができ、ご飯に炊き上げるまでの炊飯時間を20分以内とすることで、できるだけ美味しくご飯を短時間に炊き上げることが可能になる。
内の水が無くなった後の蒸らしの期間を3分以上確保することで、高速炊飯を実現しつつも、芯まで熱の通った、ふっくらしたご飯に炊き上げることが可能になる。
内の水が沸騰するまでの間に、鍋内の米の吸水を促進させて、美味しいご飯を炊き上げることが可能になる。
使用可能な電源電圧の範囲を100V~240Vに拡げつつも、炊飯時の実効電流値を15Aに抑制することで、電源電圧の低い範囲であっても可聴周波数のノイズを発生させないようにすることができる。
本発明の一実施形態として、電磁誘導コントローラと加熱コイルが組み込まれる炊飯器の使用状態を示す外観斜視図である。 本実施形態の電磁誘導コントローラと加熱コイルを含む要部の回路図である。 本実施形態と従来の炊飯器について、商用電源電圧とインバータ周波数に関する特性を比較した説明図である。 本実施形態と従来の炊飯器について、加熱基板組立と加熱コイルの特性を比較した説明図である。 本実施形態と従来の炊飯器について、回路図の特性を比較した説明図である。 従来の100V系専用機種における炊飯器について、電磁誘導コントローラの一部と加熱コイルを含む要部の回路図である。 本実施形態と従来の炊飯器について、主な仕様、部品、結果の特性を比較した説明図である。 第1試作案の電磁誘導コントローラと加熱コイルの出力特性を示す説明図である。 本実施形態に相当する第2試作案の電磁誘導コントローラと加熱コイルの出力特性を示す説明図である。 本実施形態の高速炊飯を実現した炊飯器において、鍋の底部の検知温度と、蓋体の下面の検知温度と、鍋内の検知圧力(真空度)と、加熱コイルに入力する電圧の推移をあらわしたタイミングチャートである。 本実施形態と従来の炊飯器について、主な部品の特性を比較した説明図である。 従来と本実施形態に相当する第3試作案の炊飯器について、加熱コイルの特性を比較した説明図である。 第3試作案の電磁誘導コントローラと加熱コイルの出力特性を示す説明図である。
以下、本発明における炊飯器の好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態における炊飯器1の使用状態を示している。同図において、2は上面を開口した炊飯器1の本体、3は本体2の上面を開閉自在に覆う蓋体であり、床面などに載置される本体2には、米や水などの被炊飯物Sを入れる有底状の鍋10(図2を参照)が着脱自在に収容される。鍋10の外面には磁性金属材が設けられており、本体2の内部で加熱コイル110(図2を参照)に高周波電流が供給されると、加熱コイル110から発生する交番磁界により磁性金属材が発熱し、鍋10内の被炊飯物Sが加熱される構成となっている。
本体2と共に炊飯器1の外観をなす蓋3には、表示部4や操作部5を含む表示操作パネル6や、蓋体3を自動的に開けるための蓋開ボタン7や、鍋10内の被炊飯物Sから発生する蒸気を外部に排出する蒸気口ユニット8などが設けられる。また9は、商用電源のコンセント11に差し込まれ、必要に応じて本体2に巻取りが可能なプラグ付きの電源コードで、ここから炊飯器1の各部に電力が供給される。
本実施形態では、電源コード9に印加される商用電源電圧が交流100V系の最低電圧である100Vから、交流200V系の最高電圧である240Vまでの全範囲(但し、電圧変動の誤差は含まず)で、同じ炊飯器1が使用できるような共通の電磁誘導コントローラと加熱コイルが組み込まれている。その詳細は後述するが、コンセント11の形状は電源電圧や地域によって様々なタイプがあるため、必要に応じて電源コード9のプラグにアダプタ(図示せず)を装着する必要がある。図1では、世界各地で使用される代表的なコンセント11の形状を並べて示しているが、例えば「Type-A(タイプ-A)」のコンセント11では、電源コード9のプラグをそのままコンセント11に差し込み、「Type-B(タイプ-B)」,「Type-BF(タイプ-BF)」,「Type-C(タイプ-C)」,「Type-S(タイプ-S)」のコンセント11では、それぞれのタイプに適合するアダプタを、電源コード9のプラグに装着してコンセント11に差し込めばよい。その他、図示しないタイプのコンセント11についても、同様にアダプタを交換して電源コード9のプラグに装着すれば、世界中の商用電源で炊飯器1を動作できる。
図2は、本実施形態における要部の回路構成を示したものである。同図において、21は本体2の内部に搭載される加熱基板、22は蓋体3の内部に搭載される制御基板で、本実施形態の電磁誘導コントローラ100は、インダクタとなる加熱コイル110を制御対象として、加熱基板21に実装する後述の各回路31~39と、制御基板22に実装するマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)24の後述する加熱制御手段61とにより構成される。加熱基板21は、前述の電源プラグ9や加熱コイル110以外に、回路ショートや回路部品の故障に起因する発熱を感知して溶断する温度ヒューズ26や、蓋体3に設けられる蓋ヒータ27や、本体2に設けられる胴ヒータ28が、電気的に接続される。また制御基板22は、表示部4を構成するLEDやLCDと、操作部5となる各種スイッチが、マイコン24と共に実装される。マイコン24は、図示しないがCPU(中央演算処理装置)や、記憶手段や、入出力インターフェースなどのハードウェア構成を有する。
加熱基板21には、入力フィルタ回路31、保護回路32、整流平滑回路33、インバータ34、ヒータ電源回路35、電圧検出回路36、電流検出回路37、トリガ検出回路38、及びIH駆動回路39が、電磁誘導コントローラ100の主な回路として実装される。入力フィルタ回路31は、電源プラグ9から電磁誘導コントローラ100に印加される電源電圧のノイズ成分を低減させるもので、周知のチョークコイルやコンデンサの組み合わせにより構成される。また保護回路32は、入力フィルタ回路31の入力側にあって、電源コード9につながる電源電圧ラインの一方に挿入接続する過電流保護用の電流ヒューズ41、入力フィルタ回路31の出力側にあって、電源電圧ラインの両端間に接続する過電圧保護用のバリスタ42、及びバリスタ42に並列接続されるコンデンサ43などにより構成される。温度ヒューズ26は、入力フィルタ回路31の出力側で、電源電圧ラインの一方に挿入接続されており、これも炊飯器1の各回路部品を保護する保護回路32の一部として機能する。
整流平滑回路33は、電源電圧を全波整流するダイオードブリッジ45と、ダイオードブリッジ45で整流された電圧を平滑するチョークコイル46および平滑コンデンサ47とにより構成される。電源プラグ9から供給される交流の電源電圧は、入力フィルタ回路31と保護回路32を経て、整流平滑回路33により整流平滑されるため、整流平滑回路33を交流電圧から直流電圧に変換する電源回路とみなすことができる。
インバータ34は、整流平滑回路33からの直流電圧が入力電圧として印加され、加熱コイル110と並列に接続する共振コンデンサ51と、フライホイールダイオード52を内蔵した単独のIGBTからなるスイッチ素子53と、により構成されるシングルエンド形式の電圧形共振インバータである。スイッチ素子53は、加熱コイル110と共振コンデンサ51とによる共振回路と直列に接続され、IH駆動回路39からスイッチ素子53のゲートにパルス駆動信号が与えられると、スイッチ素子53のエミッタ・コレクタ間がオン・オフ動作を繰り返して、整流平滑回路33からの直流入力電圧が共振回路に断続的に印加され、加熱コイル110に高周波電流が供給される構成となっている。このときパルス駆動信号の周期や、一周期に対するオン時間の比率(オン時比率)を変化させることで、インバータ34への入力電力ひいては加熱コイル110から鍋10への加熱量を増減させることができる。
ヒータ電源回路35は、マイクロコンピュータ24からのヒータ制御信号を受けて、入力フィルタ回路31でノイズ成分を低減した電源電圧を、何れも保温用の抵抗線ヒータからなる蓋ヒータ27や胴ヒータ28に供給するものである。本実施形態では、マイクロコンピュータ24からヒータ電源回路35に蓋ヒータ制御信号が送出されると、蓋加熱手段となる蓋ヒータ27に電源電圧が供給されて通電し、鍋10の上面開口に対向する蓋体3の下面部が主に加熱され、マイクロコンピュータ24からヒータ電源回路35に胴ヒータ制御信号が送出されると、側部加熱手段となる胴ヒータ28に電源電圧が供給されて通電し、鍋10の側面部を主に加熱される構成となっている。これにより、鍋10内の被炊飯物Sをご飯に炊き上げた後の保温時に、鍋10の内面への露付きを防止することができる。
電圧検出回路36は、ダイオードブリッジ45で整流された電圧を取り込んで、内部の抵抗素子(図示せず)で積分し、インバータ34の入力電圧に応じた検出信号を送出するものである。マイクロコンピュータ24は、電圧検出回路36からの検出信号を受けて、内部のA/Dコンバータ(図示せず)でインバータ34の入力電圧を監視する構成となっている。また、電圧検出回路36に取り込まれる電圧は、ダイオードブリッジ45で整流される前の電源電圧を反映しているので、マイクロコンピュータ24は電磁誘導コントローラ100に印加される電源電圧を監視できる。
電流検出回路37は、インバータ34に流れる入力電流を電圧に変換して、インバータ34の入力電流と、スイッチ素子53のオフ状態でフライホイールダイオード52を流れる回生電流と、に応じた各検出信号を送出するものである。マイクロコンピュータ24は、電流検出回路37からの各検出信号を受けて、内部のA/Dコンバータで入力電流と回生電流を監視する構成となっている。
トリガ検出回路38は、スイッチ素子53のエミッタ・コレクタ間電圧(コレクタ電圧)を分圧して、そのコレクタ電圧に応じた検出信号を送出するものである。マイクロコンピュータ24は、トリガ検出回路38からの検出信号を受けて、内部のA/Dコンバータでスイッチ素子53のコレクタ電圧がゼロになるタイミングを監視する構成となっている。
IH駆動回路39は、マイクロコンピュータ24からのゲート制御信号を受けて、スイッチ素子53をオン・オフ動作させるに十分なパルス駆動信号を、スイッチ素子53のゲートに送出するものである。
さらに本実施形態の炊飯器1は、加熱基板21に電気的に接続されるソレノイド81~83やモータ84を制御対象として、加熱基板21に実装するソレノイド駆動回路85及びポンプ駆動回路86と、制御基板22に実装するマイコン24の後述する圧力制御手段62とにより、鍋10内の圧力を適切に加減調整する圧力コントローラ102としての機能を組み込んでいる。ソレノイド81は、鍋10内が異常圧力に昇圧すると開弁して、鍋10の内圧を下げる安全弁(図示せず)の動作源として、ソレノイド82は、鍋10内を大気圧よりも高い圧力に加圧する調圧弁(図示せず)の動作源として、ソレノイド83は、鍋10内と真空ポンプ(図示せず)との間の空気吸込み経路(図示せず)中に設けた真空電磁弁(図示せず)の動作源として、何れも蓋体3の内部にそれぞれ配設される。蓋体3の内部には、鍋10内を大気圧よりも低い圧力に減圧するために、前述した真空ポンプや空気吸込み経路や真空電磁弁を含む減圧手段が設けられ、真空ポンプひいては減圧手段の動作源となるモータ84が、当該真空ポンプに組み込まれる。
その他に加熱基板21には、蓋温度検出用のサーミスタ87と、鍋温度検出用のサーミスタ88が、加熱基板21に実装された温度検出回路89とそれぞれ電気的に接続される。サーミスタ87は、蓋閉時に鍋10の上面開口に対向する蓋体3の下面に応じて、その抵抗値が変化するもので、温度検出回路89はサーミスタ87の抵抗値に応じた蓋温度検出信号をマイクロコンピュータ24に送出する。またサーミスタ88は、金属製の鍋10の底部温度に応じて、その抵抗値が変化するもので、温度検出回路89はサーミスタ88の抵抗値に応じた鍋温度検出信号をマイクロコンピュータ24に送出する構成となっている。
ソレノイド81と連動する安全弁は、鍋10の内部と炊飯器の外部との間の経路(図示せず)中に設けられる。この安全弁は経路を塞ぐ方向に常時付勢され、ソレノイド81の非通電状態よりも、ソレノイド81の通電状態で、安全弁に対する付勢力が強く作用する。安全弁は鍋10内の圧力を受ける位置に設けられており、鍋10内の圧力が安全弁の付勢力を上回らない限り、安全弁は経路を塞いでいるが、炊飯中や保温中は、ソレノイド81を通電状態にすることで、鍋10内が通常ではあり得ない異常圧力に昇圧したときにのみ、鍋10内の圧力に抗して安全弁を開弁して、鍋10内を速やかに大気圧に戻す構成となっている。
ソレノイド82と連動する調圧弁は、鍋10の内部と蒸気口ユニット8との間の蒸気排出経路(図示せず)中に設けられる。この調圧弁はボール状で、鍋10内の蒸気を外部へ放出する場合には蒸気排出経路を開放し、鍋10内を加圧状態または減圧状態にする場合には蒸気排出経路49を閉塞するように、ソレノイド82により転動される。そして加圧時には、加熱コイル110への高周波通電により鍋10内の被炊飯物Sが加熱され、鍋10の内圧が所定値に達すると、調圧弁の自重に抗して蒸気排出経路を開放することで、鍋10内の圧力を大気圧以上に維持する構成となっている。
ソレノイド83と連動する真空電磁弁は、前述の空気吸込み経路を開閉するために設けられる。ここでは、被炊飯物Sが入れられた鍋10を本体2に収容し、蓋体3を閉じた状態で、炊飯中や保温中に調圧弁が蒸気排出経路を塞いでいれば、モータ84への通電により真空ポンプを起動させると、真空電磁弁が空気吸込み経路を開放して、鍋10内からの空気を炊飯器の外部に排出し、密閉した鍋10内の圧力を低下させる。また、鍋10内の圧力が大気圧よりも一定値以上下がった場合には、モータ84への通電を中断して真空ポンプの動作を停止させると共に、真空電磁弁が空気吸込み経路を閉塞して、鍋10内を減圧状態に保っている。さらに、鍋10内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す場合には、真空ポンプの動作を停止し、真空電磁弁により空気吸込み経路を開放する。つまり、本実施形態の減圧手段は、鍋10内部を減圧状態から大気圧に戻す圧力戻し手段としての構成を兼用している。
ソレノイド駆動回路85は、マイクロコンピュータ24からの制御信号を受けて、ソレノイド81~83の各々に駆動電力を供給するものである。本実施形態では、マイクロコンピュータ24からソレノイド駆動回路85に安全弁制御信号が送出されると、ソレノイド81に駆動電力が供給されて通電状態となり、安全弁に対する付勢力が強くなる。それに対して、マイクロコンピュータ24からソレノイド駆動回路85への安全弁制御信号が送出されなくなると、ソレノイド81への電力供給が遮断されて非通電状態となり、安全弁に対する付勢力が弱くなる。なお、ソレノイド81の通電状態に安全弁の付勢力が弱くなり、ソレノイド81の非通電状態に安全弁の付勢力が強くなるように構成してもよい。
また本実施形態では、マイクロコンピュータ24からソレノイド駆動回路85に調圧弁制御信号が送出されると、ソレノイド82に駆動電力が供給されて通電状態となり、調圧弁がその自重で蒸気排出経路を塞ぐ位置に移動する。それに対して、マイクロコンピュータ24からソレノイド駆動回路85への調圧弁制御信号が送出されなくなると、ソレノイド82への電力供給が遮断されて非通電状態となり、調圧弁が蒸気排出経路から退避する位置に移動して、蒸気排出経路を開放する。なお、ソレノイド82の通電状態に蒸気排出経路を開放し、ソレノイド82の非通電状態に蒸気排出経路を閉塞する構成としてもよい。
さらに本実施形態では、マイクロコンピュータ24からソレノイド駆動回路85に真空電磁弁制御信号が送出されると、ソレノイド83に駆動電力が供給されて通電状態となり、真空電磁弁が開弁するように動いて、鍋10の内部から真空ポンプに至る空気吸込み経路を開放する。それに対して、マイクロコンピュータ24からソレノイド駆動回路85への真空電磁弁制御信号が送出されなくなると、ソレノイド83への電力供給が遮断されて非通電状態となり、真空電磁弁が閉弁するように動いて、空気吸込み経路を閉塞する。なお、ソレノイド83の通電状態に空気吸込み経路を閉塞し、ソレノイド83の非通電状態に空気吸込み経路を開放する構成としてもよい。
ポンプ駆動回路86は、マイクロコンピュータ24からの制御信号を受けて、真空ポンプのモータ84に駆動電力を供給するものである。本実施形態では、マイクロコンピュータ24からポンプ駆動回路86に真空ポンプ制御信号が送出されると、モータ84に駆動電力が供給されて通電し、真空ポンプが動作する。それに対して、マイクロコンピュータ24からポンプ駆動回路86への真空ポンプ制御信号が送出されなくなると、モータ84への電力供給が遮断され、真空ポンプの動作が停止する構成となっている。
一方、制御基板22に実装されるマイクロコンピュータ24は、記憶手段に記憶したプログラムをCPUが実行することで機能するソフトウェア構成として、操作部5への手動操作に伴う操作信号により、炊飯動作の開始が指示されると、電圧検出回路36や、電流検出回路37や、トリガ検出回路38からの各検出信号の他に、温度検出手段となる温度検出回路89からの鍋温度検出信号や蓋温度検出信号を取り込んで、鍋10の底部から側面下部にかけて主に加熱する加熱コイル110と、蓋体3を主に加熱する蓋ヒータ27と、鍋10の側部を主に加熱するコードヒータによる側部ヒータ28を各々制御するとともに、炊飯器1の状況などを視覚的に知らせるために、表示部4のLCDやLEDを各々制御する加熱制御手段61を備える。加熱制御手段61は、操作部5からの炊飯動作の開始の指示を受けて、鍋10に投入した米の吸水を促進させるひたしと、被炊飯物Sの温度を短時間に沸騰まで上昇させる沸騰加熱と、被炊飯物Sの沸騰状態を継続させる沸騰継続と、被炊飯物Sをドライアップ状態のご飯に炊き上げる炊き上げと、ご飯を焦がさない程度の高温に維持する蒸らしの各行程(ステップ)を順に実行して、鍋10内の被炊飯物Sをご飯に仕上げて炊飯動作を完了させた後、引き続き鍋10内のご飯を所定の保温温度(約70~76℃)に保つように、保温動作を行なう構成となっている。
そして、加熱制御手段61による上述した一連の炊飯動作では、各行程で適切な加熱量で鍋10内の被炊飯物Sを加熱できるように、IH駆動回路39へのゲート制御信号によりインバータ34の入力電力が調整される。具体的には、加熱制御手段61は、炊飯動作中に電圧検出回路36からの入力電圧検出信号と、電流検出回路37からの入力電流検出信号をそれぞれ取り込み、入力電圧検出信号から得られる電磁誘導コントローラ100への実際の電源電圧に応じた駆動周波数で、且つ入力電圧検出信号と入力電流検出信号から得られるインバータ34の実際の入力電力が、各行程で予め設定された入力電力となるようなオン時比率で、スイッチ素子53がオン・オフ動作をするようなバルス駆動信号を、スイッチ素子53のゲートに供給できるように、パルス状のゲート制御信号をIH駆動回路39に送出する。
これにより、例えば前述の沸騰加熱で、加熱コイル110から最大の加熱量で鍋10内の被炊飯物Sを強加熱させようとするときに、加熱制御手段61は、実際の電源電圧に応じたスイッチ素子53の駆動周波数を決定し、次に最大の加熱量に見合うインバータ34の入力電力が最大の例えば1200Wとなるようなスイッチ素子53のオン時比率を決定する。そして、決定した駆動周波数とオン時比率でスイッチ素子53がオン・オフ動作されるように、加熱制御手段61からのゲート制御信号を受けて、IH駆動回路39がスイッチ素子53のゲートにパルス駆動信号を供給すれば、実際の電源電圧が交流100V~240Vのどの範囲にあっても、インバータ34の入力電力を最大の1200Wにして、最大の加熱量で鍋10内の被炊飯物Sを強加熱できる。
インバータ34の入力電力Pは、入力電圧をE、加熱コイル110のインダクタンスをL、スイッチ素子53の駆動周波数をf、スイッチ素子53のオン時間をTon、スイッチ素子53のオフ時間をToff、定数をAとしたときに、次の式で表せる。加熱コイル110のインダクタンスLや定数Aを予めマイコン24の記憶手段(図示せず)に予め記憶させておけば、加熱制御手段61は以下の式を利用して、電圧検出回路36からの検出信号に基づき、設定した入力電力Pが得られるようなスイッチ素子53の駆動周波数と、スイッチ素子のオン時比率Ton/(Ton+Toff)の各値を算出できる。
Figure 0007372743000001
加熱制御手段61は、インバータ34の動作モードが準E級となるように、スイッチ素子53をターンオンさせるタイミングを、電流検出回路37からの回生電流検出信号と、トリガ検出回路38からのトリガ検出信号とにより決定してもよい。つまり、パルス駆動信号が「H」(高)レベルになって、スイッチ素子53がターンオンすると、整流平滑回路33からの入力電圧が加熱コイル110に印加され、加熱コイル110を流れる電流と、スイッチ素子53のコレクタからエミッタに流れる電流が、何れも徐々に増加する。この後、パルス駆動信号が「L」(低)レベルに切替わって、スイッチ素子53がターンオフすると、スイッチ素子53のコレクタからエミッタに流れる電流は遮断されるものの、加熱コイル110にそれまで流れていた電流が、共振電流として共振コンデンサ51に流れ込み、やがて共振コンデンサ51から加熱コイル110に逆方向の電流が流れる。この共振回路内のエネルギーの受け渡しで、スイッチ素子53のコレクタ電圧は、最初に上昇した後に減少し、やがてゼロに達する。
この時点で、共振コンデンサ51から加熱コイル110に向けて引き続き電流が流れようとしても、今度はフライホイールダイオード52がオンしてその電流は停止され、代わりにフライホイールダイオード52を介して、平滑コンデンサ47から加熱コイル110に回生電流が流れるようになる。加熱制御手段61は、トリガ検出回路38からのトリガ検出信号を受けて、スイッチ素子53のコレクタ電圧がゼロになるタイミングを取得したら、電流検出回路37からの回生電流検出信号により、加熱コイル110に回生電流が流れている間に、パルス駆動信号を「L」レベルから「H」レベルに切替えて、スイッチ素子53が再びターンオンするようなゲート制御信号をIH駆動回路39に送出できれば、スイッチ素子53のノイズ発生を最小にした準E級動作モードが実現する。
一方、本実施形態では、電源電圧に応じてスイッチ素子53の駆動周波数が決定され、インバータ34の入力電力に応じてスイッチ素子53のオン時比率が決定されるため、所望の入力電力をインバータ34に印加させるには、スイッチ素子53のコレクタ電圧がゼロになる前のタイミングで、スイッチ素子53をターンオンさせざるを得ない場合がある。これが短絡動作モードで、共振回路を通じてスイッチ素子53のコレクタからエミッタに短絡電流が流れ、この短絡電流が大きくなる程、スイッチ素子53のノイズ発生が増大する。また、スイッチ素子53の駆動周波数が高くなれば、スイッチ素子53はその分オン・オフを頻繁に繰り返すので、スイッチ素子53の損失も増大する。したがって本実施形態では、スイッチ素子53の駆動周波数が高くなる交流240Vの電源電圧であっても、スイッチ素子53の駆動周波数が極力下がって、短絡電流も小さくなるように、加熱コイル110のインダクタンスが選定される。
また本実施形態では、加熱制御手段61と連携して、被炊飯物Sを収容した鍋10の内部が適切な圧力となるように、前述した調圧手段の動作源となるソレノイド81~83と、減圧手段の動作源となる真空ポンプのモータ84を各々制御する圧力制御手段62を、マイクロコンピュータ24のソフトウェア構成として備えている。なお、加熱制御手段61や圧力制御手段62の制御内容については、後程詳しく説明する。
図3~図5は、本実施形態における100V系と200V系に共通する炊飯器(図中、「本実施形態 100V系/200V系共通機種」)と、従来の100V系の専用機種となる炊飯器(図中、「従来 100V系専用機種」)と、同じく従来の200V系の専用機種となる炊飯器(図中、「従来 200V系専用機種」)について、主な項目で特性を比較したものである。本実施形態では、従来の100V系と200V系の各専用機種の性能を合わせ持つような、電源電圧が100V~240Vの全範囲で、インバータ34に所望の入力電力を印加できる共通の電磁誘導コントローラ100と加熱コイル110を開発した。開発に際しては、従来の200V系の専用機種を基本仕様のベースモデルにして、そこから設計変更を加えて100V系/200V系の共通機種を試作した。また、耐電流や耐電圧については、100V系/200V系のどちらにも満足する上位コンパチブルの部品を選定した。
先ず第1の項目として、商用電源電圧ACVとインバータ周波数fの特性を、図3に示す。インバータ周波数fは、前述したスイッチ素子53の駆動周波数に相当する。従来の100V系専用機種では、電源電圧が交流100V~110Vの範囲で、インバータ34の入力電力が何れも最大で1200Wとなるように、インバータ周波数fが変動する。また、従来の200V系専用機種では、電源電圧が交流220V~240Vの範囲で、インバータ34の入力電力が何れも最大で1200Wとなるように、インバータ周波数fが変動する。インバータ周波数fの変動範囲は、何れも25kHz~26kHzである。
一方、本実施形態の100V系/200V系共通機種では、電源電圧が100V~240Vの範囲で、インバータ34の入力電力が何れも最大で1200Wとなるように、インバータ周波数fが連続的に変動する。インバータ周波数fの変動範囲は、23kHz~46kHzである。なお、電磁誘導加熱によるインバータ周波数fの範囲は、例えば電波法で20kHz~100kHzと規定されており、20kHz未満では可聴周波数のノイズが出てしまう。そのため、電源電圧が100V~240Vの範囲で、インバータ周波数fの変動範囲は20kHz~100kHzとするのが好ましい。また前述のように、インバータ周波数fが高くなるに従い、スイッチ素子53の損失も増大するので、インバータ周波数fの変動範囲は20kHz~50kHzとするのがさらに好ましい。
次に第2の項目として、加熱基板21に各回路31~39を実装した加熱基板組立71の特性を、また第3の項目として、加熱コイル110を含むコイルベース組立72の特性を、それぞれ図4に示す。従来の100V系専用機種と200V系専用機種は、それぞれ別個の加熱基板組立71で組み立てられている。100V系専用機種の加熱基板組立71は200V系専用機種と比べて部品点数が少なく、その分、加熱基板21の寸法サイズも小さくなっている。それに対して、本実施形態の100V系/200V系共通機種では、200V系専用機種の加熱基板組立71をベースにして、そこから幾つかの部品を変更している。したがって、加熱基板21は200V系専用機種と共通のものを使用できる。
コイルベース組立72は、それぞれの機種に共通して、椀状で樹脂製のコイルベース73の外表面に、内側の巻線110Aと外側の巻線110Bを連続して巻回した加熱コイル110を装着して構成される。コイルベース73は、最終的に本体2の内部で、鍋10を収容する鍋収容部の底部を形成する。したがって、本体2に鍋10を収容すると、鍋10はコイルベース73を挟んで、巻線110A,110Bに対向して配置される。巻線110A,110Bの一端からそれぞれ引き出される一対のリード線110Cは、加熱基板21と電気的に接続される。
従来の100V系専用機種では、直径φが0.3mmの導線を39本撚り合わせたリッツ線を、加熱コイル110の線材として使用し、内側の巻線110Aが9ターン、外側の巻線110Bが10ターンで、全体では19ターンとなるような巻数とした。これにより加熱コイル110のインダクタンスは26μHで、抵抗値は1.0Ωとなった。また、従来の200V系専用機種では、直径φが0.3mmの導線を20本撚り合わせたリッツ線を、加熱コイル110の線材として使用し、内側の巻線110Aが16ターン、外側の巻線110Bが19ターンで、全体では35ターンとなるような巻数とした。これにより加熱コイル110のインダクタンスは98μHで、抵抗値は4.1Ωとなった。
一方、本実施形態の100V系/200V系共通機種では、直径φが0.3mmの導線を20本撚り合わせたリッツ線を、加熱コイル110の線材として使用した。これは、200V系専用機種の加熱コイル110と同じ直径と撚り本数であるが、通電時の温度上昇を抑える場合には、撚り本数をそれ以上に増やすのが好ましい。例えば、前述の沸騰加熱で鍋10を強加熱する際に、リッツ線の温度がすぐに上り、長時間の加熱ができない場合には、撚り本数を2倍の40本撚りにする。また、ここで使用する加熱コイル110は、内側の巻線110Aが11ターン、外側の巻線110Bが10ターンで、全体では21ターンとなるような巻数とした。これにより加熱コイル110のインダクタンスは41μHで、抵抗値は1.5Ωとなった(25kHzにて)。
加熱コイル110のインダクタンスは巻数の二乗に比例するため、直列に接続して巻数を増やし、インダクタンスを大きくすれば、電源電圧が高い場合でも、スイッチ素子53の駆動周波数を上げることなく、インバータ34に最大の入力電力(1200W)を印加できるようになる。但し、インダクタンスをむやみに大きくすると、今度は電源電圧が低い場合に、スイッチ素子53のオン通電率をいくら増加させても、最大の入力電力を得ることができなくなる。したがって、100V系/200V系共通機種で使用する加熱コイル110は、各巻線110A,110Bの巻数を工夫して、電源電圧が100V系から200V系までの間の全範囲で、スイッチ素子53の駆動周波数を好ましくは20kHz~100kHz、さらに好ましくは20kHz~50kHzの範囲で連続的に変化させたときに、インバータ34に同じ入力電力が最大で印加できるようなインダクタンスとするのが重要である。
さらに第4の項目として、回路図での特性を図5に示す。また図6は、従来の100V系専用機種の主要な回路図を示したものである。200V系専用機種と100V系/200V系共通機種は、前述のような耐電流や耐電圧を含めて、個々の部品の特性が異なるものの、部品間の導線の配置は図2に示した通りで共通する。
100V系専用機種に搭載される電磁誘導コントローラ100は、前述の入力フィルタ回路31が省略されているが、それ以外は200V系専用機種や100V系/200V系共通機種の電磁誘導コントローラ100と同等の回路32~39を有する。ここで主要な部品P1~P4として、平滑コンデンサ47と、共振コンデンサ51と、電流ヒューズ41と、加熱コイル110にそれぞれ着目し、これらの部品P1~P4についての諸特性を図7に示す。同図において、部品P1の平滑コンデンサ47と部品P2の共振コンデンサ51は、何れも静電容量/定格電圧の特性を機種毎に示しており、部品P3の電流ヒューズ41は、定格電流と定格電圧の特性を機種毎に示しており、部品P4の加熱コイル110は、インダクタンスと抵抗値の特性を機種毎に示している。またここでは、仕様1として印加される電源電圧の特性を、仕様2としてインバータ34の入力電力の特性を、結果1としてインバータ34の発振周波数(すなわち、スイッチ素子53の駆動周波数)の特性を、機種毎に示している。
次に、本実施形態の電磁誘導コントローラ100に好適な加熱コイル110の第1設計例を、図8および図9に基づき説明する。ここでは、図2に示す回路構成で、主な部品P1~部品P3については、図7に示す「100V系/200V系共通機種」の特性を有する電磁誘導コントローラ100を用い、部品P4については、第1試作案で「100V系専用機種」の特性を有する加熱コイル110を用いる一方で、第2試作案で「100V系/200V系共通機種」の特性を有する加熱コイル110を用いた。
図8は、第1試作案の電磁誘導コントローラ100と加熱コイル110の出力特性をそれぞれ示したものである。第1試作案では、本来は100V系専用機種に組み込まれる加熱コイル110を電磁誘導コントローラ100に接続して、それらの出力特性を確認した。加熱コイル110は、直径φが0.3mmの導線を39本撚り合わせたリッツ線を線材として使用し、その線材を内側の巻線110Aが9ターン、外側の巻線110Bが10ターンで、全体では19ターンとなるように巻回している。これにより加熱コイル110のインダクタンスは26μHで、抵抗値は1.0Ωとなった。
第1試作案では、電磁誘導コントローラ100に印加する電源電圧が100V~240Vの全範囲で、インバータ34の入力電力が何れも最大で1250Wとなるように、スイッチ素子(IGBT)53の駆動周波数とゲートパルス幅が加熱制御手段61で調整された。図8の左側には、電源電圧が240V,220V,120V、及び100Vのときに、インバータ34の入力電力が1250Wとなるような、スイッチ素子53の駆動周波数とゲートパルス幅が示されている。ここでいうゲートパルス幅は、スイッチ素子53のオン時間に相当するもので、駆動周波数の逆数となる一周期に対するオン時間の割合、すなわちオン時比率は、電源電圧が240Vのときに0.19、電源電圧が220Vのときに0.21、電源電圧が120Vのときに0.44、電源電圧が100Vのときに0.54であった。
また図8の右側には、電源電圧が240Vと100Vのときに、フライホイールダイオード52とスイッチ素子53に流れる電流波形W1と、スイッチ素子53のコレクタ電圧波形W2の観測結果をそれぞれ示している。電源電圧が240Vの場合は、スイッチ素子53の駆動周波数が50kHzよりも高く、その分早いタイミングでスイッチ素子53をターンオンせざるを得なくなるため、スイッチ素子53を流れる高い短絡電流が電流波形W1に観測される。第1試作案の加熱コイル110では、電源電圧が200V以上になると、好ましくない短絡電流が発生していた。
そこで、第1試作案とは特性の異なる第2試作案の加熱コイル110を設計し、これを100V系/200V系共通機種で使用する電磁誘導コントローラ100に接続して、同様に出力特性を確認した。第2試作案の加熱コイル110は、直径φが0.3mmの導線を20本撚り合わせたリッツ線を線材として使用し、その線材を内側の巻線110Aが11ターン、外側の巻線110Bが10ターンで、全体では21ターンとなるように巻回している。これにより加熱コイル110のインダクタンスは26μHから41μHに増加し、抵抗値は1.5Ωから1.0Ωとなった。
図9は、第2試作案の電磁誘導コントローラ100と加熱コイル110の出力特性をそれぞれ示したものである。第2試作案でも、電磁誘導コントローラ100に印加する電源電圧が100V~240Vの全範囲で、インバータ34の入力電力が何れも最大で1250Wとなるように、スイッチ素子(IGBT)53の駆動周波数とゲートパルス幅が加熱制御手段61で調整された。図9の左側には、電源電圧が240Vと100Vのときに、インバータ34の入力電力が1250Wとなるような、スイッチ素子53の駆動周波数とゲートパルス幅が示されている。併せてここには、前述の加熱コイル110の特性(インダクタンス及び抵抗値)と、スイッチ素子53のコレクタ電圧の最大値VCEと、スイッチ素子53を流れる電流のピーク値Ipeakと、フライホイールダイオード52を流れる回生電流の値を、それぞれ示している。スイッチ素子53を流れる電流のピーク値Ipeakは、加熱コイル110と共振コンデンサ51のLC定数を調整して、最大で60A以下とするのが好ましい。スイッチ素子53の駆動周波数とゲートパルス幅から算出されるオン時比率は、電源電圧が240Vのときに0.24、電源電圧が100Vのときに0.64であった。
また図9の右側には、電源電圧が240Vと100Vのときに、フライホイールダイオード52とスイッチ素子53に流れる電流波形W1と、スイッチ素子53のコレクタ電圧波形W2の観測結果をそれぞれ示している。これを図8の観測結果と比較すると、特に電源電圧が240Vの場合に、スイッチ素子53がターンオンする瞬間の短絡電流が77Aから24Aに減少していることが電流波形W1から確認でき、スイッチ素子53からのノイズ発生が低減した。また、加熱コイルのインダクタンスが大きくなった分、同じ入力電力を得るのに必要なスイッチ素子53の駆動周波数が58.6kHzから50kHz以下の44.9kHzに下がったため、スイッチ素子53の損失も低減した。したがって、電波法の規定からすれば、スイッチ素子53の好ましい駆動周波数の範囲は20kHz~100kHzとなるが、スイッチ素子53の損失を考慮すれば、スイッチ素子53のさらに好ましい駆動周波数の範囲は20kHz~50kHzとなる。最終的には、この第2試作案の加熱コイル100が、本実施形態に適合するインダクタとなった。
続いて、本実施形態の電磁誘導コントローラ100に好適な加熱コイル110の第2設計例を、図10~図13に基づき説明する。
第2設計例では、200V系の電源電圧が印加されたときに、従来よりも高い加熱量(インバータ34の入力電力では1200Wから2000W)の炊飯技術を確立することを目的として、炊飯器1の試作が行われた。具体的には、電源電圧が100V系よりも高い200V系の利点を生かし、インバータ34の入力電力を、従来の200V系の炊飯器1では最大値とされた1500Wから2000Wにハイパワー化させ、高速炊飯(炊飯時間:15分)と炊きムラの低減を実現させることを目的とする。
また、高速炊飯を実現するには、第2設計例のように、被炊飯物Sを例えば2000Wのような高い加熱量で、炊飯開始から沸騰まで短い時間(略3~15分)に加熱し、水が沸騰するまでの間に、鍋10内が0.9気圧以下となる減圧期間を設けることで、鍋10内の米の吸水を促進させる。また、炊飯時の圧力を一時的に1.4気圧以下の圧力にすることで、水の沸点を上げ、米の糊化を促進し、炊飯開始から炊飯を終了して保温へ切替えるまでの炊飯時間を、25分以内に実行する制御手段を設ける。この制御手段は、マイクロコンピュータ24に組み込まれた加熱制御手段61と圧力制御手段62とにより構成される。さらに、鍋10内の水が無くなり、鍋10の底部の温度が上昇した後に蒸らしを実施するが、この蒸らし期間は3分以上、望ましくは5分以上確保する。
図10は、こうした炊飯器1において、炊飯を開始した後の、サーミスタ88の検出に基づく鍋10の底部の検知温度Taと、サーミスタ87の検出に基づく蓋体3の下面の検知温度Tbと、鍋10内の検知圧力(真空度)Pと、加熱コイル110に入力する電圧Vの推移を各々あらわしたタイミングチャートである。
本実施形態の炊飯器1で炊飯を行なうには、先ず鍋10内に被炊飯物Sである米および水を入れ、これを本体2にセットした後に、蓋体3を閉じて操作部5の例えば炊飯キーを操作すると、マイクロコンピュータ24に組み込まれた加熱制御手段61による炊飯が開始する。ここで加熱制御手段61は、鍋10内の米に対する吸水を促進させるために、サーミスタ88から温度検出回路89を通して得られる鍋温度検出信号に基づき、加熱コイル110と胴ヒータ28を通断電制御して、鍋10の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋10内の水温を約45~60℃に3分間保持するひたし行程を行なう。
また、このひたし行程中は、鍋10内の圧力が大気圧よりも低い減圧状態となるように、マイクロコンピュータ24に組み込まれた圧力制御手段62が、ソレノイド81~83と真空ポンプのモータ84の動作を各々制御する。具体的には、圧力制御手段62はひたし行程を開始すると、ソレノイド81を非通電状態から通電状態に切替える安全弁制御信号をソレノイド駆動回路85に送出して、少なくとも後述する炊飯中は安全弁に強い付勢力を与え続ける。また、ソレノイド82を非通電状態から通電状態に切替える調圧弁制御信号を、圧力制御手段62からソレノイド駆動回路85に送出して、調圧弁の自重により蒸気排出経路を閉塞する。そして、この状態で圧力制御手段62は、ひたし行程の全期間(この例では3分間)にわたり、密閉した鍋10の内部から減圧手段を通して空気を排出するために、ソレノイド83を非通電状態から通電状態に切替える真空電磁弁制御信号をソレノイド駆動回路85に送出して、空気吸込み経路を開放すると共に、真空ポンプ制御信号をポンプ駆動回路86に送出して、真空ポンプのモータ84を連続動作させ、鍋10内部の空気を抜き取る真空引きを行なう。
こうして、ひたし行程の期間中は、圧力制御手段62により鍋10の内部が減圧状態に維持される。そのため、ひたし時に鍋10の内部で米に水を十分に吸水させることが可能になる。
その後、所定時間のひたし行程が終了し、次の沸騰加熱に相当する加熱行程に移行すると、加熱制御手段61は加熱コイル110や胴ヒータ28を連続通電することにより、ひたし行程よりも鍋10内部の被炊飯物Sを強く加熱し、被炊飯物Sの温度を短時間に沸騰まで上昇させる。ここで圧力制御手段62は、ひたし行程から引き続いて鍋10の内部を大気圧よりも低い減圧状態に維持するように、加熱行程に移行すると、ポンプ駆動回路86への真空ポンプ制御信号の送出と、ソレノイド駆動回路85への真空電磁弁制御信号の送出を何れも停止して、真空ポンプの駆動を停止させると共に、空気吸込み経路を閉塞する。そのため加熱行程に移行した後も、鍋10への加熱やスローリークにより、鍋10の内部は次第に圧力が上昇するものの、暫くの間は消費電力の多い加圧工程で、真空ポンプを動作させることなく減圧状態を維持できる。
こうして、ひたし行程の後も鍋10内部の被炊飯物Sが減圧状態に保持されることで、加熱行程中は100℃以下の温度で水が沸騰する。真空ポンプの能力にも依るが、鍋10内の圧力が0.2気圧であると水は約60℃で沸騰し、鍋10内の圧力が0.4気圧であると水は約80℃で沸騰し、鍋10内の圧力が0.6気圧であると水は約88℃で沸騰するため、米の糊化温度とされる60℃~100℃で被炊飯物Sを減圧状態で沸騰させることで、沸騰時の泡で米を舞わせて加熱ムラがなくなり、併せて被炊飯物Sを減圧状態にして、米の芯まで短時間に吸水させることができる。
圧力制御手段62は、加熱行程中に温度検出回路89からの鍋温度検出信号を取り込んで、鍋10の底部の検出温度が所定温度となる例えば100℃に達したら、鍋10内部の被炊飯物Sが減圧状態で沸騰したと判断として、鍋10内部から真空ポンプに至る空気吸込み経路を閉じ、真空ポンプのモータ84を動作させないまま、ソレノイド82を一時的に非通電状態するために、ソレノイド駆動回路85への調圧弁制御信号の送出を一旦停止して、調圧弁を蒸気排出経路から退避させる。これにより、鍋10の内外が連通した開放状態となり、鍋10は直ちに外気と同じ常圧に戻る。その後、圧力制御手段62がソレノイド駆動回路85に調圧弁制御信号を再び送出し、ソレノイド82を短時間で通電状態に切替えて、鍋10の内部を再び密閉した状態にすると、引き続き鍋10内部の被炊飯物Sへの強い加熱により、鍋10の内部の被炊飯物Sが大気圧以上の例えば1.2気圧に達するまで加圧され、その加圧状態で被炊飯物Sを沸騰させることができる。
本実施形態では、炊飯時の加熱行程中における鍋10内の圧力を、一時的に最大で1.4気圧以下の圧力にするために、蒸気排出経路を塞いだ状態で、鍋10内の圧力が1.2気圧を超えると、鍋10内からの蒸気圧で蒸気排出経路から離れるような重量の調圧弁を使用しているが、それよりも高い圧力で、鍋10内の圧力が1.4気圧を超えると、鍋10内からの蒸気圧で蒸気排出経路から離れるような重量の調圧弁を使用してもよい。ここでの鍋10内の最大圧力は、主に調圧弁の重量によって決められるが、炊飯時の圧力を一時的に大気圧よりも高く1.4気圧以下の圧力にする調圧弁を炊飯器1に組み込むことで、水の沸点を上げ、米の糊化を促進させることができる。
こうして圧力制御手段62は、加熱行程中に鍋10内部の被炊飯物Sが減圧状態で沸騰したと判断したら、鍋10内部を減圧状態から大気圧よりも高い加圧状態へ一気に切替えて、被炊飯物Sに圧力ショックを加えるために、ソレノイド82を短時間だけ非通電状態に切替えて、蒸気排出経路を一時的に開放する。これにより、加圧状態では米の糊化最適温度である105℃(1.2気圧の場合)に被炊飯物Sを沸騰させることで、米の硬さと粘りのバランスを確保し、芯まで均一に米を糊化させることが可能になる。
その後の加熱行程で、加熱制御手段61は、温度検出回路89からの鍋温度検出信号による鍋10の底部の検出温度が、所定温度となる例えば90℃以上になり、それに加えて温度検出回路89からの蓋温度検出信号による蓋体3の下面の検出温度も、所定温度となる例えば90℃以上になると、被炊飯物Sの加圧状態での沸騰を検知する沸騰検知工程に移行する。沸騰検知行程では、引き続き加熱コイル110や胴ヒータ28を連続通電して、鍋10内部の被炊飯物Sを強く加熱する一方で、蓋体3の下面の検出温度の傾き(所定の時間に検出温度がどの程度上昇するのか)を算出する。そして、この傾きが一定値以下になって安定したら、鍋10内の被炊飯物Sが加圧状態で沸騰したと判断して、沸騰継続行程に移行する。
沸騰継続行程に移行すると、加熱制御手段61は蓋ヒータ27による蓋体3の下面への加熱(蓋加熱)を開始させる。ここでの蓋加熱は、鍋10内の密閉空間を形成する蓋体3の下面の温度が100℃になるように、温度検出回路89からの蓋温度検出信号により管理される。また沸騰継続行程に移行したら、圧力制御手段62はソレノイド82を周期的に通電状態と非通電状態に切替え、鍋10内の圧力を大気圧と大気圧よりも高い圧力の範囲で繰り返し増減させる。
そして加熱制御手段61は、鍋10の底部の検出温度が所定の温度上昇を生じたら、沸騰継続行程から炊き上げ行程に移行し、ここで鍋10の底部の検出温度が所定のドライアップ温度に達すると、鍋10内部の被炊飯物Sの炊き上がりを検知して、蒸らし行程に移行する。蒸らし中は蓋体3の下面の検出温度による温度管理によって蓋ヒータ27を通断電し、蓋体3の下面への露付きを防止すると共に、鍋10内部のご飯が焦げない程度に高温(98~100℃)が保持されるように、鍋10の底部の温度を管理する。蒸らしは所定時間続けられ、その所定時間が経過したら炊飯動作を終了して、ご飯を所定温度に維持する保温に移行する。
図10のタイミングチャートに示すように、上述した加熱制御手段61による炊飯加熱では、電磁誘導コントローラ100に印加される電源電圧が200V系で定格200V以上の場合に、鍋10に入れられた米の量が1.0L以下であれば、鍋10内の被炊飯物Sを強加熱する加熱行程や沸騰検知行程において、被炊飯物Sを定格1800W以上、好ましくは定格2000W以上の加熱量で、鍋10内の被炊飯物Sを連続して加熱できるように、加熱制御手段61が主に加熱コイル110を制御している。これにより、美味しいご飯を炊き上げるのに必要十分な加熱量を、加熱行程や沸騰検知行程で被炊飯物Sに与えつつ、従来の200V系の炊飯器1よりも沸騰までの加熱量を、電磁誘導コントローラ100と加熱コイル110との組み合わせにより増加させることで、炊飯開始から沸騰を検知するまでの時間T1を略3分~15分(図10に示す例では、時間T1=11分)に短縮できる。なお、加熱制御手段61が沸騰を検知する条件は、上述したものに限定されない。
また、本実施形態の炊飯器1は、前述の時間T1が短縮することに伴い、炊飯開始から炊飯を終了して保温に切替えるまでの炊飯時間T2も25分以内(図10に示す例では、時間T2=25分)に実行するように、加熱制御手段61が主に加熱コイル110を制御している。なお、その炊飯器1で炊飯できる最大の米量(最大炊飯容量)が0.54L以下の場合は、前述の加熱行程や沸騰検知行程における被炊飯物Sへの加熱量を2000W以上ではなく、1500W以上に減らしても、鍋10内の被炊飯物Sを短時間で沸騰させることができるので、炊飯開始から炊飯を終了して保温に切替えるまでの炊飯時間T2を20分以内に実行する。但し、何れの場合も、鍋10内で米粒内の水分を均等にするために、蒸らしの期間T3は少なくとも3分以上、好ましくは5分以上(図10に示す例では、時間T3=7分)確保する。
ここでも、100V系/200V系共通機種の電磁誘導コントローラ100で作った回路を、そのまま使用した。また、部品P4については、87μHのインダクタンスを有する加熱コイル110を新たに巻いて、インバータ周波数が30kHz未満で、インバータ34の入力電力が最大で2000Wとなるような設計を実現させた。回路方式は、これまで説明したシングルエンド形式の準E級電圧形共振インバータとし、200V系の電源電圧でインバータ34の入力電力を300W~2000Wに可変できるようにする。これは、入力電力を1200W~2000Wとする場合には、前述のようにスイッチ素子53の駆動周波数とオン時比率を可変させたパルス駆動信号群を、スイッチ素子53のゲートに連続して供給する一方で、入力電力を1200W未満とする場合には、スイッチ素子53へのパルス駆動信号群をPWM制御して、スイッチ素子53のゲートに間欠的に供給することで実現する。例えば入力電力を300Wとする場合には、1200Wに相当する連続のパルス駆動信号群を、加熱制御手段61のPWM制御により、25%の割合でスイッチ素子53のゲートに供給すれよく、パルス駆動信号群のオン/オフ比率を変えることで調整可能となる。
図11は、ベースモデルとなる前述した200V系の専用機種と、第2設計例の試作案(第3試作案)について、電磁誘導コントローラ100に搭載される主な部品P1~P4の特性を示したものである。部品P1の平滑コンデンサ47と、部品P2の共振コンデンサ51は、何れもベースモデルよりも静電容量が大きなものに取り替えた。また、部品P3の電流ヒューズ41も、インバータ34の高入力電力化に伴い、ベースモデルの200V系専用機種よりも定格電流が大きなものに取り替えた。加熱基板21は、前述の200V系専用機種や、第1試作案及び第2試作案と同じものを使用する。
図12は、従来のベースモデルで組み込まれる加熱コイル110と、本実施形態に対応して、第2設計例の第3試作案で組み込まれる加熱コイル110の特性を比較して示したものである。前述したように、ベースモデルとなる200V系専用機種の炊飯器1では、直径φが0.3mmの導線を20本撚り合わせたリッツ線を、加熱コイル110の線材として使用し、内側の巻線110Aが16ターン、外側の巻線110Bが19ターンで、全体では35ターンとなるような巻数とした。これにより加熱コイル110のインダクタンスは98μHで、抵抗値は4.1Ωとなった。
一方、第3試作案の炊飯器1では、直径φが0.3mmの導線を20本撚り合わせたリッツ線を、加熱コイル110の線材として使用し、内側の巻線110Aが16ターン、外側の巻線110Bが17ターンで、全体では33ターンとなるような巻数とした。これにより加熱コイル110のインダクタンスは87μHで、抵抗値は3.5Ωとなった。コイルベース73の外表面に加熱コイル110を装着したコイルベース組立72の構成については、前述した通りである。
図13は、第3試作案の電磁誘導コントローラ100と加熱コイル110の出力特性をそれぞれ示したものである。第3試作案では、電磁誘導コントローラ100に印加する電源電圧が200V系の最大値である240Vで、インバータ34に最大で2000Wまで入力電力を入れられるように、またインバータ34の入力電力が、スイッチ素子53のゲートに連続したパルス駆動信号群を供給できる下限値の1200Wで、スイッチ素子53の駆動周波数が30kHz未満となるように、スイッチ素子53の駆動周波数とゲートパルス幅が加熱制御手段61で調整された。
前述のように、スイッチ素子53の駆動周波数は、20kHz~50kHzであることがより好ましいが、その上限値が30kHzを超えると、電磁誘導コントローラ100に搭載される部品は高周波特性のグレードが要求される。上限値が30kHz未満であれば、従来の200V系専用機種をベースとして電磁誘導コントローラ100を組み立てたときに、そうした高周波特性のグレードに部品を取り替える必要がなく、従来部品をそのまま利用できるので、コストアップを避けることができる。
図13の左側には、電源電圧が240Vで、インバータ34の入力電力が2000Wと1200Wとなるような、スイッチ素子53の駆動周波数とゲートパルス幅が示されている。併せてここには、スイッチ素子53のコレクタ電圧の最大値VCEと、スイッチ素子53を流れる電流のピーク値Ipeakと、フライホイールダイオード52を流れる回生電流の値を、それぞれ示している。ここでも、スイッチ素子53を流れる電流のピーク値Ipeakを60A以下とするために、加熱コイル110と共振コンデンサ51のLC定数を調整している。また、スイッチ素子53のコレクタ電圧の最大値VCEを抑えるために、スイッチ素子53として高耐圧のIGBTを採用し、共振コンデンサ51の切換回路を追加している。スイッチ素子53のオン時比率は、インバータ34の入力電力が2000Wのときに0.51、インバータ34の入力電力が1200Wのときに0.40であった。
図13の右側には、インバータ34の入力電力が2000Wと1200Wのときに、フライホイールダイオード52とスイッチ素子53に流れる電流波形W1と、スイッチ素子53のコレクタ電圧波形W2の観測結果をそれぞれ示している。第3試作案では、87μHのインダクタンスとなる新たな加熱コイル110を、前述の100V系/200V系共通機種で使用した電磁誘導コントローラ100に接続することで、電磁誘導コントローラ100に200V系の電源電圧を印加した場合に、より好ましいスイッチ素子53の駆動周波数の範囲内とされる20kHz~50kHzで、インバータ34に第2試作案で達成された上限の入力電力である1250Wよりも高い2000Wの入力電力を最大で印加できた。また、スイッチ素子53に連続してパルス駆動信号を供給して、インバータ34の入力電力を最大の2000Wから1200Wまでの範囲とする場合に、スイッチ素子53の駆動周波数を20kHz~30kHz未満とすることができた。これにより、100V系/200V系共通機種で使用した電磁誘導コントローラ100の回路に、従来部品をそのまま利用することが可能となり、コストアップなしに炊飯器1のハイパワー化を実現できた。
以上のように本実施形態では、外部から電磁誘導コントローラ100に印加される電源電圧を受けて、電磁誘導コントローラ100に組み込まれた加熱制御手段61が加熱手段である加熱コイル110を制御して、鍋10内に収容した米と水を含む被炊飯物Sを加熱炊飯する炊飯器1において、この炊飯器1は電磁誘導コントローラ100や加熱コイル110の他に、鍋10内を大気圧(外気圧)よりも高い圧力に加圧する調圧手段と、鍋10内を大気圧(外気圧)よりも低い圧力に減圧する減圧手段と、こうした調圧手段や減圧手段を制御して、加熱炊飯時に鍋10内の圧力を加減調整する圧力制御手段62を組み込んだ圧力コントローラ102と、を備えている。そして、前述の第2設計例では、電源電圧が定格200V以上にて、鍋10に入れられた被炊飯物Sを定格1800W以上、好ましくは定格2000W以上の加熱量で、米の量が1.0L(1L=10-3)以下の被炊飯物Sに対して、炊飯時における鍋10内の圧力が、一時的に大気圧となる1気圧(1気圧=101325Pa)よりも大きく、1.4気圧以下にする圧力環境を設けて炊飯を行ない、それにより炊飯開始から沸騰までの時間を3~15分とし、炊飯開始から炊飯を終了して、炊上がったご飯を所定温度に維持する保温に切替えるまでの炊飯時間を25分以内に実行する制御手段を、加熱制御手段61や圧力制御手段62として備えている。ここでいう調圧手段は、上述したソレノイド82や、調圧弁などを含んで構成され、減圧手段は、空気吸込み経路や、ソレノイド83や、真空電磁弁や、モータ84で動作する真空ポンプなどを含んで構成される。
この場合、電源電圧が100V系よりも高い200V系の利点を生かし、米量が1.0L以下の被炊飯物Sを収容した鍋10に対して、2000W以上の高い加熱量で炊飯開始から沸騰まで短い時間に強加熱し、炊飯時における鍋10内の圧力を一時的に1.4気圧以下の圧力にして、沸点を上げて米の糊化を促進し、炊飯開始から保温に切替えるまでの炊飯時間を25分以内とすることで、高速炊飯と炊きムラの低減を実現する。これにより、鍋10に収容される米の量がある程度多くても、限られた時間内にできるだけ美味しくご飯を炊き上げることが可能になる。
また本実施形態では、米量が0.54L以下の被炊飯物Sに対しては加熱量を1500W以上にし、前記炊飯時間を20分以内に実行するように、前記制御手段を構成するのが好ましい。
これは例えば、鍋10に入れられた米量を検知する米量検知手段として、被炊飯物Sを含む鍋10の重量を計測する重量センサや、鍋10の内部の画像を取得する撮像手段を組み込み、炊飯開始時に米量検知手段からの検知結果を取込んで、米量が0.54Lよりも多く1L以下と判断した場合には、最大の加熱量が1800W以上、好ましくは2000W以上となるように、また米量が0.54L以下であると判断した場合には、最大の加熱量が好ましくは1500W以上となるように、加熱コイル110を制御する加熱制御手段61が、被炊飯物Sへの加熱量の最大値をその都度設定する。代わりに、炊飯器1の仕様に合わせて、その炊飯器1の最大炊飯容量が3合すなわち0.54Lの場合は、被炊飯物Sへの加熱量の最大値が1500Wとなるような加熱コントローラ100と加熱コイル110を組み込み、最大炊飯容量が5.5合すなわち1Lの場合は、被炊飯物Sへの加熱量の最大値が1800W、好ましくは2000Wとなるような別の加熱コントローラ100と加熱コイル110を組み込んでもよい。何れの場合も、被炊飯物Sの米量が0.54L以下の場合は、加熱量を1500Wとしても鍋10内の被炊飯物Sを短時間で沸騰させることができ、ご飯に炊き上げるまでの炊飯時間を20分以内とすることで、できるだけ美味しくご飯を短時間に炊き上げることが可能になる。
また本実施形態では、炊飯加熱に伴い鍋10内の水が無くなり、鍋温度検出手段で検出された鍋10の底部の温度が上昇した後に、鍋10内で炊き上がったご飯への蒸らしを実施し、この蒸らしの期間を3分以上確保するように、前記制御手段を構成するのが好ましい。鍋10の底部の温度を検出する鍋温度検出手段は、図2に示すサーミスタ88と温度検出回路89で構成される。
この場合、鍋10内の水が無くなった後の蒸らしの期間を3分以上確保することで、高速炊飯を実現しつつも、芯まで熱の通った、ふっくらしたご飯に炊き上げることが可能になる。
また本実施形態では、炊飯を開始した後、鍋10内の水が沸騰するまでの間に、鍋10内の圧力を0.9気圧以下にする減圧期間を設けるように、調圧手段や減圧手段を制御する制御手段としての圧力制御手段62を構成するのが好ましい。
これにより、鍋10内の水が沸騰するまでの間に、鍋10内の米の吸水を促進させて、美味しいご飯を炊き上げることが可能になる。
また本実施形態では、電源電圧が100V~240Vの範囲で使用可能とし、炊飯時の実効電流値を15A以下に抑制するように、炊飯器1の中で電力消費の最も大きな加熱コイル110と、その加熱コイル110を制御する加熱コントローラ100とを構成するのが好ましい。
この場合、使用可能な電源電圧の範囲を100V~240Vに拡げつつも、炊飯時の実効電流値を15Aに抑制することで、電源電圧の低い範囲であっても、加熱コントローラ100に組み込まれたインバータ34の周波数を20kHz以上にして、可聴周波数のノイズを発生させないようにすることができる。
その他、本実施形態の電磁誘導コントローラ100は、交流の電源電圧を直流の入力電圧に変換する電源回路としての整流平滑回路33と、整流平滑回路33に印加する電源電圧を検出する電圧検出回路36と、整流平滑回路33からの入力電圧が印加され、インダクタとなる加熱コイル110に高周波電流を供給するために、IH駆動回路39からのパルス駆動信号によりオン・オフ動作されるスイッチ素子53を含んで構成されるインバータ34と、電圧検出回路36からの検出結果を受けて、スイッチ素子53のオン・オフ動作を制御する制御手段となる加熱制御手段61と、を備え、電源電圧が上昇するに従い、スイッチ素子53の駆動周波数を連続的に上げ、さらにはインバータ34に印加する入力電力が上昇するに従い、スイッチ素子53のオン時比率を連続的に増加させることで、電源電圧が第1電圧系となる100V系と第2電圧系となる200V系との間の全範囲で、インバータ34に同じ最大の第1入力電力(1250W)が印加されるように、加熱制御手段61を構成している。
そのため、整流平滑回路33に加わる電源電圧が100V系と200V系の間のどの電圧値であっても、加熱制御手段61がスイッチ素子53の駆動周波数とオン時比率を連続的に可変させることで、従来のように複数の加熱コイルの接続をわざわざ切替えることなく、単独の加熱コイル110でインバータ34に同じ最大の第1入力電力を印加できる。したがって、設置スペースの制約を受けることなく、電源電圧が100V系や200V系以外の中間値であっても、インバータ34が所定の入力電力を得ることが可能な電磁誘導コントローラ100を、電源電圧に依存することなく共通に提供できる。
また本実施形態では、上記構成の電磁コントローラ100に加熱コイル110を接続して、電源電圧が第1電圧系である100V系と第2電圧系である200V系との間の全範囲で、スイッチ素子53の駆動周波数を20kHz~50kHzの範囲で連続的に変化させたときに、インバータ34に同じ最大の第1入力電力となる1250Wが印加されるように、加熱コイル110のインダクタンスが選定される。
そのため、電磁誘導コントローラ100に適切なインダクタとなる加熱コイル110を接続することで、電磁誘導コントローラ100に印加される電源電圧が100V系や200V系以外の中間値であっても、好ましいスイッチ素子53の駆動周波数の範囲内で、インバータ34に所定の入力電力を最大で印加できる。
また本実施形態では、上記構成の電磁コントローラ100に加熱コイル110を接続して、電源電圧が第2電圧系である200V系のときに、スイッチ素子の駆動周波数を20~50kHzの範囲で連続的に変化させたときに、インバータ34に前記第1入力電力となる1250Wよりも大きな第2入力電力となる2000Wが最大で印加されるように、加熱コイル110のインダクタンスが選定される。
そのため、電磁誘導コントローラ100に適切なインダクタとなる加熱コイル110を接続することで、整流平滑回路33に200V系の電源電圧を印加した場合には、好ましいスイッチ素子の駆動周波数の範囲内で、インバータ34に第1入力電力よりも高い第2入力電力を最大で印加できる。
なお、本実施形態では電磁誘導コントローラ100と加熱コイル110を炊飯器1に組み込んだ一例を説明したが、炊飯器1以外の商用電源で動作する電気機器に適用してもよい。例えば、電気機器としてオーブンレンジに組み込む場合には、加熱コイル110に代わるインダクタとして、昇圧トランスの一次巻線を電磁誘導コントローラ100に接続する。昇圧トランスの一次巻線と二次巻線との間の電磁誘導作用により、二次巻線に誘起された高電圧をマグネトロンに印加することで、オーブンレンジの調理庫内に入れた被炊飯物Sを高周波加熱することができる。この場合も、昇圧トランスの一次巻線のインダクタンスを適宜調整すれば、本実施形態と同様の作用・効果が得られる。また、特許文献1のような定着装置の他に、インダクタに交流電流を供給して電磁誘導作用を生じさせるあらゆる電気機器に、本発明を適用できる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。上記実施形態中の調圧手段や減圧手段の構成はあくまでも一例であり、炊飯器の仕様に応じて適宜変更してよい。
1 炊飯器
10 鍋
34 インバータ
61 加熱制御手段(制御手段)
62 圧力制御手段(制御手段)
100 電磁誘導コントローラ
110 加熱コイル(加熱手段)
S 被炊飯物

Claims (5)

  1. 外部からの電源電圧を受けて、鍋内に収容した米と水を含む被炊飯物を加熱炊飯する炊飯器において、
    前記加熱炊飯の開始から、ひたし行程と、加熱行程と、沸騰継続行程と、を経て、前記加熱炊飯を終了して保温に切替えるまでの炊飯時間を25分以内に実行する制御手段と、
    前記電源電圧が100V~240Vの全範囲で、インバータに所望の入力電力を印加できる共通の電磁誘導コントローラと加熱手段と、を備え、
    前記加熱手段は、前記鍋の底部から側面下部にかけてを加熱し、
    前記制御手段は、
    炊飯開始から沸騰までの時間が3~15分となるように、前記被炊飯物への加熱量の最大値を米量に応じて決定し、
    前記ひたし行程において前記鍋内の圧力を大気圧よりも低い減圧状態とし、
    前記加熱行程において前記減圧状態を維持し、
    前記鍋内の水の沸騰を検知すると前記鍋内の圧力を大気圧よりも高い加圧状態とし、前記加圧状態で前記鍋内の水を沸騰させ、
    前記加圧状態で前記鍋内の水の沸騰を検知すると、前記沸騰継続行程に移行し、
    前記沸騰継続行程において、前記鍋内の圧力を大気圧と大気圧よりも高い圧力の範囲で繰り返し増減させることを特徴とする炊飯器。
  2. 前記電源電圧が定格200V以上にて、最大炊飯容量が1.0Lの場合に、前記加熱量の最大値が定格1800W以上であることを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
  3. 米量が0.54L以下の前記被炊飯物に対しては前記加熱量の最大値を1500W以上にし、前記炊飯時間を20分以内に実行するように、前記制御手段を構成したことを特徴とする請求項2記載の炊飯器。
  4. 前記鍋内の水が無くなり、前記鍋の底部の温度が上昇した後に蒸らしを実施し、この蒸らしの期間を3分以上確保するように、前記制御手段を構成したことを特徴とする請求項1または2記載の炊飯器。
  5. 飯時の実効電流値を15A以下に抑制する構成としたことを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の炊飯器。
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