JP7372155B2 - 転動部品の疲労度推定方法、転動部品の疲労度推定装置、転動部品の疲労度推定プログラム - Google Patents

転動部品の疲労度推定方法、転動部品の疲労度推定装置、転動部品の疲労度推定プログラム Download PDF

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この発明は、転動部品の疲労度推定方法、転動部品の疲労度推定装置、転動部品の疲労度推定プログラムおよび転動部品の接触応力推定方法に関する。
転がり軸受(以下、軸受とも呼ぶ)の寿命は、荷重や潤滑条件等の運転条件、硬度・組織・残留応力等の材料特性に依存することが知られている。従来より、軸受の寿命は、運転条件や材料特性から計算できる寿命計算式を使って推定されている。この計算式は、軸受をある条件で使用する際にどのくらいの期間使用できるのか、あるいは、要求される使用期間で軸受が破損しないためにどのような条件で軸受を使用すればよいのか、を見積もるために使用されている。一般に、軸受は、その寿命計算式に基づいて設定した使用条件で使用される。したがって、想定した条件で軸受が使用されている場合は、当該軸受の寿命が問題になることはないはずである。
しかしながら、市場では軸受寿命がしばしば問題となる。これは、実際の軸受が想定外の環境や条件で使用されることが原因の1つと考えられる。そのため,転がり軸受では,実際に使用した軸受の調査結果から、その疲労度を推定する方法が提案されている。
たとえば、潤滑が良好な条件で使用される軸受で発生する内部起点型の損傷に対しては、非特許文献1に開示されているX線分析で得られる接触応力の推定方法を用いて軸受の動等価荷重を求め、その動等価荷重から計算した計算寿命とこれまでの使用時間とから疲労度を推定する方法がある(特許文献1参照)。上述した疲労度の推定方法では、転動部品において荷重が作用する転動面に繰り返し印加される応力と、当該応力によって生成した残留応力との間に対応関係があることを利用して、残留応力分布から転動部品の負荷荷重を推定する。その後、推定された負荷荷重に基づき寿命を算出し、当該寿命と転動部品の回転数または使用時間との比から、疲労度を推定している。
また、X線応力測定の分析値と転動疲労度との関係に基づいて、転動部品の内部起点型の損傷に対する疲労度を推定する方法も提案されている(特許文献2参照)。
特開2011-069681号公報 特公昭63-34423号公報
「X線応力測定の軸受破損解析への応用」、対馬全之他、ベアリングエンジニアNo.49、pp.25-34(1984)
一般に、転がり軸受の転動体などに代表される転動部品の転動疲労の進行状況は、残留応力が生成される回転回数10回までの第1段階、残留応力が生成した後転動疲労は発生するが半値幅、残留オーステナイト量および残留応力が変化しなくなる第2段階、転動疲労時に比較的高い応力が作用した領域で起こる組織変化とそれに伴う残留応力の再分布が起こる第3段階に分けられる。そのため、転動部品において上記第3段階より前に生成された残留応力は、転動部品の使用初期に作用した荷重条件を正確に反映している。一方、上記第3段階以降では、転動部品における応力が作用した領域での材料の組織変化の影響により、回転回数が増えるごとに残留応力の再分布が起こる。このことから、第3段階以降まで転動疲労が進行した転動部品では、残留応力による転動部品の荷重推定が不正確になり、上述した特許文献1に開示された方法により推定された疲労度の精度が低下する可能性がある。
また、特許文献2に開示された疲労度の推定方法では、転動部品の内部で疲労が起こりやすい深さにおいて材料の組織変化を検出するためのX線分析(たとえば半価幅および残留オーステナイト量の測定)を行う。その後、当該X線分析により得られたデータの変化と転動部品の回転回数との関係のデータベースを用いて、転動部品の疲労度を推定している。この方法は、転動部品の回転回数によって材料の組織変化が徐々に起こる第3段階以降での疲労度の推定に適用できる。一方、転動部品の回転回数が変わっても転動疲労による組織変化が進まない第2段階では、転動部品の回転回数が変化しても当該組織変化に対応するX線分析による検出データは変化しない。このことから、特許文献2に開示された転動部品の疲労度の推定方法では、第2段階まで進行している転動疲労に関して疲労度を高い精度で推定することは難しかった。
それゆえ、本発明の目的は、転動部品の疲労度を高い精度で推定することが可能な転動部品の疲労度推定方法、転動部品の疲労度推定装置および転動部品の疲労度推定プログラムを提供することである。
また、本発明の目的は、転動部品の疲労度を高い精度で推定するために用いることが可能な、転動部品の接触応力推定方法を提供することである。
本開示に従った転動部品の疲労度推定方法は、回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から転動部品の疲労度を推定するためのデータを取得するステップを備える。当該取得するステップは、転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、転動部品の疲労部にX線を照射することで、転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含む。転動部品の疲労度推定方法は、さらに、取得するステップにおいて得られたデータに基づき、転動部品の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップと、当該判断するステップでの判断結果と取得するステップで得られたデータとに基づき、転動部品の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップと、を備える。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップにおいて、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、転動部品の回転回数と寿命とから転動部品の第1疲労度を算出するステップと、が実施される。また、第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップにおいて、組織変化が起こっていると判断された場合に、予め決定された第2データと第1疲労度との関係に基づき、第2データから第1疲労度を推定するステップが実施される。
本開示に従った疲労度推定プログラムは、転動部品の疲労度推定プログラムであって、コンピュータに、回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から疲労度を推定するためのデータを取得するステップを実行させる。取得するステップは、転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、転動部品の疲労部にX線を照射することで、転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含む。上記疲労度推定プログラムは、コンピュータに、取得するステップにおいて得られたデータに基づき、転動部品の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップと、判断するステップでの判断結果と取得するステップで得られたデータとに基づき、転動部品の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップと、を実行させる。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップにおいて、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、転動部品の回転回数と寿命とから転動部品の第1疲労度を算出するステップと、が実施される。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップにおいて、組織変化が起こっていると判断された場合に、予め決定された第2データと第1疲労度との関係に基づき、第2データから第1疲労度を推定するステップが実施される。
本開示に従った転動部品の疲労度推定装置は、判断部と、荷重推定部と、寿命算出部と、第1疲労度算出部と、第1疲労度推定部とを備える。判断部は、転動部品のミクロ組織に関する第1データと、転動部品の疲労部にX線を照射することで得られる、転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データとの少なくともいずれか一方に基づき、転動部品の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断する。荷重推定部は、判断部において、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定する。寿命算出部は、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出する。第1疲労度算出部は、転動部品の回転回数と寿命とから転動部品の第1疲労度を算出する。第1疲労度推定部は、判断部において、組織変化が起こっていると判断された場合に、予め決定されたX線分析値と第1疲労度との関係に基づき、第2データから第1疲労度を推定する。
本開示に従った転動部品の疲労度推定方法は、回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から転動部品の疲労度を推定するためのデータを取得するステップを備える。当該取得するステップは、転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、転動部品の疲労部にX線を照射することで、転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含む。転動部品の疲労度推定方法は、さらに、取得するステップにおいて得られたデータに基づき、転動部品の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップと、当該判断するステップでの判断結果と取得するステップで得られたデータとに基づき、転動部品の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップと、を備える。第2データは、転動部品に関するX線分析値の深さ方向での分布データを含む。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップにおいて、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、転動部品の回転回数と寿命とから転動部品の第1疲労度を算出するステップと、が実施される。判断するステップにおいて、組織変化が起こっていると判断された場合に、深さ方向での分布データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、転動部品の回転回数と寿命とから転動部品の第1疲労度を算出するステップとが実施される。
本開示に従った疲労度推定プログラムは、転動部品の疲労度推定プログラムであって、コンピュータに、回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から疲労度を推定するためのデータを取得するステップを実行させる。取得するステップは、転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、転動部品の疲労部にX線を照射することで、転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含む。上記疲労度推定プログラムは、コンピュータに、取得するステップにおいて得られたデータに基づき、転動部品の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップと、判断するステップでの判断結果と取得するステップで得られたデータとに基づき、転動部品の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップと、を実行させる。第2データは、転動部品に関するX線分析値の深さ方向での分布データを含む。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップにおいて、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、転動部品の回転回数と寿命とから転動部品の第1疲労度を算出するステップと、が実施される。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップにおいて、組織変化が起こっていると判断された場合に、深さ方向での分布データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、転動部品の回転回数と寿命とから転動部品の第1疲労度を算出するステップとが実施される。
本開示に従った疲労度推定装置は、判断部と、荷重推定部と、寿命算出部と、第1疲労度算出部とを備える。判断部は、転動部品のミクロ組織に関する第1データと、転動部品の疲労部にX線を照射することで得られる、転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データとの少なくともいずれか一方に基づき、転動部品の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断する。荷重推定部は、第2データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定する。寿命算出部は、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出する。第1疲労度算出部は、転動部品の回転回数と寿命とから転動部品の第1疲労度を算出する。第2データは、転動部品に関するX線分析値の深さ方向での分布データを含む。荷重推定部は、判断部において、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定する。荷重推定部は、判断部において、組織変化が起こっていると判断された場合に、深さ方向での分布データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定する。
本開示に従った転動部品の接触応力推定方法は、転動部品の疲労部の表面から内部にかけてX線を照射することで、疲労部にて回折した環状の回折X線の中心角に対する回折強度のばらつきの深さ方向での分布データを得るステップと、深さ方向での分布データに基づき、転動部品の疲労部に繰り返し作用している接触応力を推定するステップとを備える。
上記によれば、転動部品の疲労度を高い精度で推定することが可能な転動部品の疲労度推定方法、転動部品の疲労度推定装置および転動部品の疲労度推定プログラムが得られる。
また、上記によれば、転動部品の疲労度を高い精度で推定するために用いることが可能な、転動部品の接触応力推定方法が得られる。
実施の形態1に係る疲労度推定システムの構成を表す模式図である。 図1に示した疲労度推定装置のハードウエア構成を表す図である。 図1に示した疲労度推定装置の機能構成を表す図である。 疲労度の推定処理の手順を表すフローチャートである。 実施の形態2に係る疲労度推定システムの構成を表す模式図である。 図5に示した疲労度推定装置の機能構成を表す図である。 疲労度の推定処理の手順を表すフローチャートである。 実施の形態3に係る疲労度の推定処理の手順を表すフローチャートである。 残留応力の相当応力の深さ分布を示すグラフである。 周方向入射で得られた回折強度のばらつきと試験時間との関係を示すグラフである。 残留オーステナイトの減少率と試験時間との関係を示すグラフである。 X線測定の際の座標系を説明するための模式図である。 回折X線の模式図である。 測定された環状の回折X線の模式図である。 回折強度のばらつきを説明するための模式図である。 第1試験片のX線測定結果である周方向残留応力の深さ方向分布を示すグラフである。 第1試験片のX線測定結果である回折強度のばらつきの深さ方向分布を示すグラフである。 第2試験片のX線測定結果である周方向残留応力の深さ方向分布を示すグラフである。 第2試験片のX線測定結果である回折強度のばらつきの深さ方向分布を示すグラフである。 第1試験片の接触応力の推定結果を示すグラフである。 第2試験片の接触応力の推定結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
<疲労度推定システムの構成>
図1は、実施の形態1に係る疲労度推定システムの構成を表す模式図である。図1を参照して、疲労度推定システムは、疲労度推定装置14と、照射部11と、X線検出器12と、ミクロ組織観察部23とを備える。
照射部11は、被検査軸受部品である転動部品90に対向させることが可能なように設置されたX線管球を含んでいる。照射部11は、転動部品90に対してX線を照射する。照射されたX線は、転動部品90に対して所定の入射角で入射するように、矢印αに沿って照射される。転動部品90は、転がり軸受の転動体と、診断用または試験用の軸受部品である転がり軸受の軌道輪の一部または全部とを含む。X線は、たとえば、転がり軸受の軌道輪の一部に照射されることとしてもよい。
X線検出器12は、転動部品90において回折した環状のX線(X線回折環)を検出する。具体的には、X線検出器12は、照射部11から照射したX線を通過させる中心部に形成された孔12Bと、転動部品90に対向させることが可能な平面状の検出部12Aを含む。検出部12Aとして、たとえばX線CCD(Charge Coupled Device)を用いることができる。矢印αに沿って転動部品90に入射したX線が、円錐面βを構成するように回折し、検出部12Aに到達する。そして、検出部12A においては、それぞれの画素が出力するX線の強度に相当する強度の信号によりX線回折環が検出される。
ミクロ組織観察部23は、転動部品90を構成する材料のミクロ組織の状態を測定する。ミクロ組織観察部23として、たとえば光学顕微鏡を用いることができる。測定する転動部品90の表面は、たとえば、転がり軸受の軌道輪の一部の断面、および転動体の断面としてもよい。
疲労度推定装置14は、X線検出器12において検出されたX線回折環、およびミクロ組織観察部23で検出された転動部品90のミクロ組織の観察結果に基づいて転動部品90の疲労度を推定する。疲労度推定装置14は、たとえば、小型のコンピュータ装置(パーソナルコンピュータ等)としてもよい。
<疲労度推定装置のハードウエア構成>
図2は、図1に示した疲労度推定装置のハードウエア構成を表す図である。疲労度推定装置14は、入力部17と、CPU(Central Processing Unit)15と、メモリ16と、表示部18とを備える。
入力部17には、ミクロ組織観察部23の測定結果、およびX線検出器12の検出結果が入力される。メモリ16は、疲労度推定プログラムなどを記憶することができる。CPU15は、入力部17に入力されたデータを用いて、メモリ16に記憶された疲労度推定プログラムを実行する。表示部18は、CPU15による疲労度推定結果を表示する。
<疲労度推定装置の機能構成>
図3は、図1に示した疲労度推定装置の機能構成を表す図である。図3に示す疲労度推定装置14は、入力部17と、表示部18と、記憶部61と、制御部60と、データ準備部21と、判断部31と、荷重推定部32と、寿命算出部33と、第1疲労度算出部34と、第1疲労度推定部41と、診断部70とを備える。記憶部61はメモリ16によって実現される。制御部60と、データ準備部21と、判断部31と、荷重推定部32と、寿命算出部33と、第1疲労度算出部34と、第1疲労度推定部41と、診断部70とは、CPU15がメモリ16に記憶された疲労度推定プログラムを実行することによって実現される。
<疲労度推定方法の手順>
図4は、疲労度の推定処理の手順を表すフローチャートである。以下、図3および図4を参照しながら、図1に示した疲労度推定システムにおける疲労度の推定処理を説明する。
まず、データ取得ステップ(S110)が実施される。当該ステップ(S110)において、データ準備部21は、回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品90から当該転動部品90の疲労度を推定するためのデータを取得する。このステップ(S110)では、後述する疲労度の段階の判断ステップ(S120)およびその後の疲労度の推定のための各ステップにおいて用いるデータを準備する。たとえば、図1に示したミクロ組織観察部23から入力部17を介して入力されたデータに基づき、データ準備部21は転動部品90の疲労部におけるミクロ組織に関する第1データを準備する。
また、データ準備部21には、図1に示したX線検出器12からの入力部17を介して転動部品90に関するX線分析値の測定データが入力される。当該X線分析値の測定データが第2データとなる。X線分析値の測定データとしては、たとえば転動部品90の疲労部における残留応力に関するデータ、より具体的には、残留応力の深さ分布の測定データ等が挙げられる。
次に、疲労度の段階の判断ステップ(S120)が実施される。当該ステップ(S120)において、判断部31は、取得するステップ(S110)において得られたデータに基づき、転動部品90の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断する。
上記ステップ(S120)において、組織変化が起こっていないと判断された場合、つまり判断部31が転動部品90の疲労部において疲労が第3段階まで進んでいないと判断した場合、接触応力の推定ステップ(S131)が実施される。このステップ(S131)において、荷重推定部32は、第2データに含まれる転動部品90の疲労部における残留応力の深さ分布の測定データに基づき、転動部品90の疲労部における接触応力を推定する。
次に、荷重の推定ステップ(S132)が実施される。当該ステップ(S132)において、荷重推定部32は、転動部品90の疲労部における残留応力の深さ分布の測定データに基づき、転動部品90の疲労部における荷重を推定する。上記ステップ(S131)およびステップ(S132)において、荷重推定部32は、たとえば特許文献1において開示されている方法を用いて接触応力および荷重を推定してもよい。
ここで、ステップ(S120)において、判断部31により、転動部品90の疲労部に組織変化が起こっていないと判断されている(つまり転動部品90の疲労が第3段階にまで進んでいない)ため、転動部品90の残留応力は当該転動部品90に作用した荷重条件を正確に反映している。従って、当該残留応力のデータに基づき上記のように接触応力および荷重を正確に推定できる。
次に、10%寿命(L10)の推定ステップ(S133)が実施される。当該ステップ(S133)において、寿命算出部33は、上記荷重と転動部品90の使用条件とに基づき10%寿命(L10)を算出する。転動部品90の使用条件としては、たとえば転動部品90の回転速度、転動部品90の使用時の温度、転動部品90の使用時に供給される潤滑油の油種情報、および転動部品90の使用時に供給される潤滑油の汚染度の情報を含む。10%寿命の算出方法としては任意の方法を用いることができる。また、任意の破損確率に対する寿命Lは、たとえば10%寿命(L10)に信頼度係数a1をかけることにより算出することができる。具体的には、下記のように10%寿命から寿命Lnを算出することができる。
Figure 0007372155000001
次に、第1疲労度の算出ステップ(S134)が実施される。当該ステップ(S134)において、第1疲労度算出部34は、転動部品90の回転回数Nと上記10%寿命(L10)とから転動部品90の第1疲労度(N/L10)を算出する。なお、回転回数Nの代わりに転動部品90の使用時間を用いてもよい。
一方、ステップ(S120)において、組織変化が起こっていると判断された場合、つまり判断部31が転動部品90の疲労部において疲労が第3段階まで進んでいると判断した場合、X線分析値と第1疲労度の関係を用いた第1疲労度の推定ステップ(S141)が実施される。当該ステップ(S141)において、第1疲労度推定部41は、予め決定された第2データとしてのX線分析値(X線応力測定結果)と第1疲労度との関係に基づき、X線分析値から第1疲労度(N/L10)を推定する。上記関係は、たとえば転動部品90に対して転動疲労寿命試験を行い、当該試験から得られる疲労度と当該疲労度まで転動させた試験片のX線応力測定結果との関係であってもよい。当該関係を示すデータは、記憶部61に記憶される。
ここで、ステップ(S120)において転動部品90の疲労部に組織変化が起きている(つまり転動部品90の疲労が第3段階にまで進んでいる)と判断されているため、転動部品90では回転回数が増えるにつれて残留応力の再分布が起きていると考えられる。このため、転動部品90の材料組織の変化と疲労度との間に相関があることから、ステップ(S141)に示すように組織変化を反映したX線分析値と疲労度との関係に基づき第1疲労度を推定することにより、より正確な第1疲労度の推定が可能となっている。
次に、診断ステップ(S161)が実施される。当該ステップ(S161)において、診断部70は、上述のようにして得られた第1疲労度の値が、予め決定されていた基準値を超えているか否かを判断する。得られた第1疲労度の値が基準値を超えている場合、診断部70から制御部60へ、第1疲労度の値が基準値を超えたことを示す信号が送信される。当該信号を受信した制御部60は、たとえば表示部18に転動部品90の交換が必要であることを示すメッセージを表示する。得られた第1疲労度の値が基準値を超えていない場合、診断部70から制御部60へ、第1疲労度の値が基準値を超えていないことを示す信号が送信される。当該信号を受信した制御部60は、たとえば表示部18に転動部品90の交換が不要であることを示すメッセージを表示する。なお、上述した第1疲労度に関する基準値によっては、第1疲労度の値が基準値を超えた場合に表示部18に表示されるメッセージとして、転動部品90の交換時期を示すメッセージを用いてもよい。
<作用効果>
本開示に従った転動部品の疲労度推定方法は、回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から転動部品の疲労度を推定するためのデータを取得するステップ(ステップ(S110))を備える。当該取得するステップ(ステップ(S110))は、転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、転動部品の疲労部にX線を照射することで、転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含む。転動部品の疲労度推定方法は、さらに、取得するステップ(ステップ(S110))において得られたデータに基づき、転動部品の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップ(ステップ(S120))と、当該判断するステップ(ステップ(S120))での判断結果と上記取得するステップ(ステップ(S110))で得られたデータとに基づき、転動部品の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップ(ステップ(S131)~ステップ(S134)およびステップ(S141))と、を備える。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップ(ステップ(S120))において、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定するステップ(ステップ(S132))と、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップ(ステップ(S133))と、転動部品の回転回数と上記寿命とから転動部品の第1疲労度を算出するステップ(ステップ(S134))と、が実施される。また、第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップ(ステップ(S120))において、組織変化が起こっていると判断された場合に、予め決定された第2データと第1疲労度との関係に基づき、第2データから第1疲労度を推定するステップ(ステップ(S141))が実施される。
このように、上述した転動部品の疲労度推定方法は、疲労部において組織変化が起こっているか否かを判断するステップ(ステップ(S120))を備えているので、転動部材の疲労部において組織変化が起こっているか否か、つまり転動疲労の進行が第3段階にまで達しているか否かに応じて、それぞれの状態に対応した疲労度の推定方法を使い分けることができる。したがって、転動部品の疲労度を高い精度で推定できる。
上記転動部品の疲労度推定方法において、転動部品の使用条件は、転動部品90の回転速度、転動部品90の使用時の温度、転動部品90の使用時に供給される潤滑油の油種情報、および転動部品90の使用時に供給される潤滑油の汚染度の情報を含んでいてもよい。
この場合、転動部品90の疲労部において組織変化が起こっていない場合(つまり転動疲労が第3段階まで進んでいない場合)に、10%寿命の推定ステップ(ステップ(S133))において10%寿命を精度良く推定でき、結果的に転動部品90の寿命を高い精度で算出することができる。
上記転動部品の疲労度推定方法において、第2データは、転動部品90の疲労部における6成分の残留応力のデータ、転動部品90の疲労部における残留オーステナイト量のデータ、転動部品90の疲労部にて回折した環状の回折X線の中心角に対する回折強度のばらつきを示すデータ、回折強度のピークの半価幅のデータ、回折強度の平均値のデータ、および回折強度の最小値と最大値との差のデータからなる群から選択される少なくとも1つのデータを含んでいてもよい。
この場合、上述したデータは転動部品90の疲労状態と強い相関があるため、上述したデータを第2データとして用いることで転動部品90の疲労度を高い精度で推定できる。
上記転動部品の疲労度推定方法は、第1疲労度に基づき、転動部品90が交換を要するか否か、または交換時期を通知するステップ(ステップ(S161))をさらに備えていてもよい。この場合、正確に推定された第1疲労度に基づき、転動部品90のメンテナンスを適切に行うことができる。
本開示に従った疲労度推定プログラムは、転動部品の疲労度推定プログラムであって、コンピュータに、回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から疲労度を推定するためのデータを取得するステップ(ステップ(S110))を実行させる。取得するステップ(ステップ(S110))は、転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、転動部品の疲労部にX線を照射することで、転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含む。上記疲労度推定プログラムは、コンピュータに、取得するステップ(ステップ(S110))において得られたデータに基づき、転動部品90の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップ(ステップ(S120))と、判断するステップ(ステップ(S120))での判断結果と取得するステップ(ステップ(S110))で得られたデータとに基づき、転動部品90の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップと、を実行させる。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップ(ステップ(S120))において、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品90に作用していた荷重を推定するステップ(ステップ(S132))と、荷重と転動部品90の使用条件とに基づき寿命を算出するステップ(ステップ(S133))と、転動部品90の回転回数と寿命とから転動部品90の第1疲労度を算出するステップ(ステップ(S134))と、が実施される。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップ(ステップ(S120))において、組織変化が起こっていると判断された場合に、予め決定された第2データと第1疲労度との関係に基づき、第2データから第1疲労度を推定するステップ(ステップ(S141))が実施される。
このように、上述した転動部品90の疲労度推定プログラムは、疲労部において組織変化が起こっているか否かを判断するステップ(ステップ(S120))をコンピュータに実施させるので、転動部品90の疲労部において組織変化が起こっているか否か、つまり転動疲労の進行が第3段階にまで達しているか否かに応じて、それぞれの状態に対応した推定方法を使い分けて第1疲労度を推定できる。したがって、転動部品90の疲労度を高い精度で推定できる。
上記疲労度推定プログラムは、コンピュータに、第1疲労度に基づき、転動部品が交換を要するか否か、または転動部品の交換時期を通知するステップ(ステップ(S161))をさらに実行させてもよい。この場合、正確に推定された第1疲労度に基づき、転動部品90のメンテナンスに用いる情報を通知することができる。
本開示に従った転動部品の疲労度推定装置14は、判断部31と、荷重推定部32と、寿命算出部33と、第1疲労度算出部34と、第1疲労度推定部41とを備える。判断部31は、転動部品90のミクロ組織に関する第1データと、転動部品90の疲労部にX線を照射することで得られる、転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データとの少なくともいずれか一方に基づき、転動部品90の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断する。荷重推定部32は、判断部31において、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品90に作用していた荷重を推定する。寿命算出部33は、荷重と転動部品90の使用条件とに基づき寿命を算出する。第1疲労度算出部34は、転動部品90の回転回数と上記寿命とから転動部品90の第1疲労度を算出する。第1疲労度推定部41は、判断部31において、組織変化が起こっていると判断された場合に、予め決定されたX線分析値と第1疲労度との関係に基づき、第2データから第1疲労度を推定する。
このように、上述した転動部品の疲労度推定装置14は、疲労部において組織変化が起こっているか否かを判断する判断部31を備えているので、転動部品90の疲労部において組織変化が起こっているか否か、つまり転動疲労の進行が第3段階にまで達しているか否かに応じて、それぞれの状態に対応した疲労度の推定方法を使い第1疲労度を推定できる。したがって、転動部品90の第1疲労度を高い精度で推定できる。
(実施の形態2)
<疲労度推定システムの構成>
図5は、実施の形態2に係る疲労度推定システムの構成を表す模式図である。図5を参照して、疲労度推定システムは、基本的には図1に示した疲労度推定システムと同様の構成を備えるが、表面形状測定器13を備える点が図1に示した疲労度推定システムと異なっている。
表面形状測定器13は、転動部品90の表面形状を測定する。表面形状測定器13として、たとえばレーザ顕微鏡を用いることができる。測定する表面は、たとえば、転動部品90としての転がり軸受の軌道輪の一部の表面、および転動部品90としての転動体の全表面としてもよい。
図5に示した疲労度推定装置14は、X線検出器12において検出されたX線回折環、およびミクロ組織観察部23で検出された転動部品90のミクロ組織の観察結果に加えて、上述した表面形状測定器13により測定された転動部品90の表面形状のデータに基づいて転動部品90の疲労度を推定する。なお、図5に示した疲労度推定装置14のハードウエア構成は、基本的に図2に示した実施の形態1に係る疲労度推定装置14のハードウエア構成と同様である。
<疲労度推定装置の機能構成>
図6は、図5に示した疲労度推定装置の機能構成を表す図である。図6に示す疲労度推定装置14は、基本的に図3に示した疲労度推定装置14と同様の機能構成を備えるが、図3に示した疲労度推定装置14の構成に加えて、接触応力推定部51、寿命推定部53、第2疲労度推定部54、疲労度決定部55を備える点が図3に示した疲労度推定装置14と異なっている。制御部60と、データ準備部21と、判断部31と、荷重推定部32と、寿命算出部33と、第1疲労度算出部34と、第1疲労度推定部41と、診断部70と、接触応力推定部51と、寿命推定部53と、第2疲労度推定部54と、疲労度決定部55とは、CPU15がメモリ16に記憶された疲労度推定プログラムを実行することによって実現される。
<疲労度推定方法の手順>
図7は、疲労度の推定処理の手順を表すフローチャートである。以下、図6および図7を参照しながら、図5に示した疲労度推定システムにおける疲労度の推定処理を説明する。図7に示した疲労度の推定処理は、基本的には図4に示した疲労度の推定処理と同様の構成を備えるが、データ取得ステップ(S110)において取得されるデータの種類が増えている点、および表面起点型の損傷についての第2疲労度を推定するためのステップ(S151)~ステップ(S154)を備える点、および第1疲労度および第2疲労度のうち大きい方を転動部品の疲労度として決定するステップ(S155)を備える点が図4に示した疲労度の推定処理と異なっている。以下、具体的に説明する。
データ取得ステップ(S110)において、データ準備部21は、図3において説明した転動部品90の疲労部におけるミクロ組織に関する第1データと、転動部品90に関するX線分析値の測定データである第2データとに加え、転動部品90の疲労部の表面形状に関する第3データを準備する。当該第3データは、たとえば表面形状測定器13により転動部品90の表面が測定された測定形状のデータである。当該表面形状のデータは入力部17を介してデータ準備部21に入力される。また、第2データは、転動部品90の疲労部の表面における3軸の残留応力のデータおよびX線による残留応力の深さ分布データを含む。
次に、図4に示した疲労度の推定処理と同様に、ステップ(S120)が実施される。当該ステップ(S120)の判断結果に応じて、図4に示した疲労度の推定処理と同様に、ステップ(S131)~ステップ(S134)またはステップ(S141)が実施される。この結果、内部起点型の損傷に関する第1疲労度が得られる。
一方、表面起点型の損傷に関する第2疲労度を得るため、真実接触部の接触応力の計算ステップ(S151)が実施される。ステップ(S151)において、接触応力推定部51は、上記第2データと第3データとに基づき、真実接触部の接触応力を算出する。当該接触応力の計算には、転動部品90の回転速度、使用温度、潤滑油の油種、加重などのデータを用いてもよい。ここで、表面形状のデータ(たとえば表面荒さのデータ)から真実接触部の応力を求める場合、接触荷重の値が必要である。当該接触荷重は、X線応力測定の深さ分析から求めた推定荷重を用いてもよいし、予め転動部品90の使用荷重が想定できる場合は当該使用荷重の値を用いてもよい。
次に、転動面の繰り返し応力の推定ステップ(S152)が実施される。ステップ(S152)において、接触応力推定部51は、上記ステップ(S151)により算出された真実接触部の接触応力に基づき、転動部品90の疲労部に繰り返し作用している接触応力を推定する。
次に、SN線図から10%寿命を推定するステップ(S153)を実施する。このステップ(S153)において、寿命推定部53は、予め求めておいた接触応力と寿命との関係、いわゆるSN線図を用いて10%寿命(L10)を推定する。SN線図は記憶部61に記憶されている。
次に、表面疲労度(第2疲労度)の推定ステップ(S154)を実施する。このステップ(S154)において、第2疲労度推定部54は、転動部品90の回転回数Nと上記10%寿命(L10)とから転動部品90の第2疲労度(N/L10)を算出する。なお、回転回数Nの代わりに転動部品90の使用時間を用いてもよい。
次に、第1疲労度と第2疲労度とのうち値の大きい方を転動部品の疲労度として決定するステップ(S155)を実施する。ステップ(S155)において、疲労度決定部55は、ステップ(S134)またはステップ(S141)において得られた内部起点型の損傷に関する第1疲労度と、ステップ(S154)において得られた表面起点型の損傷に関する第2疲労度とのうち、値の大きい方を転動部品90の疲労度として決定する。
次に、図4に示した疲労度の推定処理と同様に、診断ステップ(S161)が実施される。当該ステップ(S161)において、診断部70は、上述のようにして決定された疲労度の値が、予め決定されていた基準値を超えているか否かを判断する。決定された疲労度の値が基準値を超えている場合、診断部70から制御部60へ、疲労度の値が基準値を超えたことを示す信号が送信される。当該信号を受信した制御部60は、たとえば表示部18に転動部品90の交換が必要であることを示すメッセージを表示する。決定された疲労度の値が基準値を超えていない場合、診断部70から制御部60へ、疲労度の値が基準値を超えていないことを示す信号が送信される。当該信号を受信した制御部60は、たとえば表示部18に転動部品90の交換が不要であることを示すメッセージを表示する。
<作用効果>
上記転動部品の疲労度推定方法において、取得するステップ(ステップ(S110))は、転動部品90の疲労部を測定して表面形状に関する第3データを得るステップを含んでいてもよい。上記転動部品の疲労度推定方法は、取得するステップ(ステップ(S110))で得られたデータに基づき、転動部品90の表面起点型の損傷に関する第2疲労度を推定するステップ(ステップ(S151)~ステップ(S154)を備えていてもよい。第2疲労度を推定するステップは、第2データと第3データとに基づき、転動部品90の疲労部に繰り返し作用している接触応力を推定するステップ(ステップ(S152))と、予め決定された接触応力と寿命との関係(SN線図)に基づき、接触応力から、寿命を推定するステップ(ステップ(S153))と、転動部品90の回転回数と寿命とから転動部品90の第2疲労度を推定するステップ(ステップ(S154))とを含んでいてもよい。上記転動部品の疲労度推定方法は、第1疲労度と第2疲労度とのうち値の大きい方を転動部品90の疲労度として決定するステップ(ステップ(S155))を備えていてもよい。
この場合、内部起点型の損傷に関する第1疲労度と、表面起点型の損傷に関する第2疲労度との両方を考慮することで、より正確に転動部品90の疲労度を推定できる。
上記転動部品の疲労度推定方法は、疲労度に基づき、転動部品90が交換を要するか否か、または転動部品90の交換時期を通知するステップをさらに備えていてもよい。この場合、正確に推定された疲労度に基づき、転動部品90のメンテナンスを適切に行うことができる。
上記疲労度推定プログラムにおいて、取得するステップ(ステップ(S110))は、転動部品90の疲労部を測定して表面形状に関する第3データを得るステップを含んでいてもよい。上記疲労度推定プログラムは、コンピュータに、取得するステップ(ステップ(S110))で得られたデータに基づき、転動部品90の表面起点型の損傷に関する第2疲労度を推定するステップ(ステップ(S151)~ステップ(S154))を実行させてもよい。第2疲労度を推定するステップは、第2データと第3データとに基づき、転動部品90の疲労部に繰り返し作用している接触応力を推定するステップ(ステップ(S152))と、予め決定された接触応力と寿命との関係に基づき、接触応力から、寿命を推定するステップ(ステップ(S153))と、転動部品90の回転回数と寿命とから転動部品90の第2疲労度を推定するステップ(ステップ(S154))とを含んでいてもよい。さらに、上記疲労度推定プログラムは、コンピュータに、第1疲労度と第2疲労度とのうち値の大きい方を転動部品の疲労度として決定するステップ(ステップ(S155))を実行させてもよい。
この場合、内部起点型の損傷に関する第1疲労度と、表面起点型の損傷に関する第2疲労度との両方を考慮することで、より正確に転動部品90の疲労度を推定できる。
上記疲労度推定プログラムは、コンピュータに、上記疲労度に基づき、転動部品90が交換を要するか否か、または転動部品90の交換時期を通知するステップ(ステップS161)をさらに実行させてもよい。この場合、正確に推定された疲労度に基づき、転動部品90のメンテナンスに用いる情報を通知することができる。
上記転動部品の疲労度推定装置14は、接触応力推定部51と、寿命推定部53と、第2疲労度推定部54と、疲労度決定部55とを備えてもよい。接触応力推定部51は、第2データと、転動部品90の疲労部を測定して得られる表面形状に関する第3データとに基づき、転動部品90の疲労部に繰り返し作用している接触応力を推定する。寿命推定部53は、予め決定された接触応力と任意の破損確率に対する寿命との関係(SN線図)に基づき、接触応力から、寿命を推定する。第2疲労度推定部54は、転動部品90の回転回数と寿命とから転動部品90の第2疲労度を推定する。疲労度決定部55は、第1疲労度と第2疲労度とのうち値の大きい方を転動部品90の疲労度として決定する。
この場合、内部起点型の損傷に関する第1疲労度と、表面起点型の損傷に関する第2疲労度との両方を考慮することで、より正確に転動部品90の疲労度を推定できる。
(実施の形態3)
<疲労度推定の手順>
図8は、疲労度の推定処理の手順を表すフローチャートである。なお、図8に示した疲労度の推定処理を実施する、実施の形態3に係る疲労度推定装置を含む疲労度推定システムは、基本的には実施の形態2に係る疲労度推定システムと同様の構成を備える。以下、図8を参照しながら、本実施の形態に係る疲労度推定システムにおける疲労度の推定処理を説明する。
図8に示した疲労度の推定処理は、基本的には図7に示した疲労度の推定処理と同様の構成を備えるが、ステップ(S120)において組織変化が起こっていると判断された場合の処理が図7に示した疲労度の推定処理と異なっている。すなわち、図8に示した疲労度の推定処理では、上記ステップ(S120)において組織変化が起こっていると判断された場合、接触応力の推定ステップ(S171)が実施される。このステップ(S171)において、荷重推定部32(図6参照)は、第2データに含まれる転動部品90の疲労部における環状の回折X線の中心角に対する回折強度のばらつきの、深さ分布の測定データに基づき、転動部品90の疲労部における接触応力を推定する。たとえば、荷重推定部32は、後述するように上記環状の回折X線の中心角に対する回折強度のばらつきの深さ方向での分布データである深さ分布の測定データに基づき、回折強度のばらつきの値が最大となる第1深さを求めてもよい。荷重推定部32は、当該第1深さを用いて疲労部における他の部材との接触部である接触楕円における短軸半径を推定してもよい。
なお、上述した深さ分布の測定データは、ステップ(S110)において、2次元検出器を用いて環状の回折X線の全体を測定することで得ても良いし、環状の回折X線の一部を検出する検出器を走査することで、環状の回折X線の全体を測定することで得ても良い。また、上記ステップ(S110)では、転動部品90の疲労部の表面に対して垂直方向または当該表面に対して傾斜した方向からX線を照射してもよい。
次に、荷重の推定ステップ(S172)が実施される。当該ステップ(S172)において、荷重推定部32は、転動部品90の疲労部における環状の回折X線の中心角に対する回折強度のばらつきの、深さ分布の測定データに基づき、転動部品90の疲労部における荷重を推定する。上記ステップ(S171)およびステップ(S172)において、荷重推定部32は、図8のステップ(S131)およびステップ(S132)における推定方法と異なる方法であって、上述のように組織変化が起こっている状態に適した方法により接触応力および荷重を推定する。なお、詳細は後述する実施例において説明する。
次に、10%寿命(L10)の推定ステップ(S173)が実施される。当該ステップ(S173)において、寿命算出部33は、上記荷重と転動部品90の使用条件とに基づき10%寿命(L10)を算出する。ステップ(S173)における処理は、基本的にステップ(S133)における処理と同様である。
次に、内部疲労度(第1疲労度)の算出ステップ(S174)が実施される。当該ステップ(S174)において、第1疲労度算出部34は、転動部品90の回転回数Nと上記10%寿命(L10)とから転動部品90の第1疲労度(N/L10)を算出する。なお、回転回数Nの代わりに転動部品90の使用時間を用いてもよい。
図8に示した疲労度の推定処理では、ステップ(S120)での判断結果に応じて、ステップ(S131)~ステップ(S134)または上述したステップ(S171)~ステップ(S174)のいずれかが実施されることにより、内部起点型の損傷に関する第1疲労度が得られる。
また、図7に示した疲労度の推定処理と同様に、図8に示したステップ(S151)~ステップ(S155)およびステップ(S161)を実施することにより、転動部品90の疲労度の推定および当該疲労度に基づいた診断を行うことができる。
<作用効果>
本開示に従った転動部品の疲労度推定方法は、回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から転動部品の疲労度を推定するためのデータを取得するステップ(ステップ(S110))を備える。当該取得するステップ(ステップ(S110))は、転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、転動部品の疲労部にX線を照射することで、転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含む。転動部品の疲労度推定方法は、さらに、取得するステップ(ステップ(S110))において得られたデータに基づき、転動部品の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップ(ステップ(S120))と、当該判断するステップ(ステップ(S120))での判断結果と取得するステップ(ステップ(S110))で得られたデータとに基づき、転動部品の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップ(ステップ(S131)~ステップ(S134)およびステップ(S171)~ステップ(S174))と、を備える。第2データは、転動部品に関するX線分析値の深さ方向での分布データを含む。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップ(ステップ(S120))において、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定するステップ(ステップ(S131、S132))と、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップ(ステップ(S133))と、転動部品の回転回数と寿命とから転動部品の第1疲労度を算出するステップと、が実施される。判断するステップ(ステップ(S120))において、組織変化が起こっていると判断された場合に、深さ方向での分布データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定するステップ(ステップ(S171、S172))と、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップ(ステップ(S173))と、転動部品の回転回数と寿命とから転動部品の第1疲労度を算出するステップ(ステップ(S174))とが実施される。
このように、上述した転動部品の疲労度推定方法は、本発明の実施の形態1における疲労度推定方法と同様に、転動疲労の進行が第3段階にまで達しているか否かに応じて、それぞれの状態に対応した疲労度の推定方法を使い分けることができる。したがって、転動部品の疲労度を高い精度で推定できる。
上記転動部品の疲労度推定方法において、深さ方向での分布データは、転動部品の疲労部にて回折した環状の回折X線の中心角に対する回折強度のばらつきを示すデータの深さ方向での分布データである。この場合、上記深さ方向での分布データが、疲労部での疲労が第3段階に入った状態において転動部品に作用していた荷重と一定の関係を有しているため、当該分布データに基づき上記荷重を推定できる。この結果、疲労の進行が第3段階に達した状態においても当該荷重に基づき第1疲労度を算出できる。
以下、上述した転動部品の疲労度推定方法の作用効果についてより詳しく説明する。すでに述べたように、疲労が第3段階に達した場合には転動部品の疲労部において組織変化が生じる。この組織変化が生じた部分では結晶が特定の方向に配向する。このため、環状の回折X線の中心角に対する回折強度のばらつき(以下、回折強度のばらつき)が増加する。回折強度のばらつきは転動接触部の深さ方向に分布を有する。発明者は、回折強度のばらつきにおける上記分布のピーク値を示す深さが、接触楕円の短軸半径と対応関係を有するという知見を得た。この知見に基づき、非特許文献1における残留応力分布から接触応力を推定する方法と同様に、回折強度のばらつきの分布から接触応力と荷重とが推定できる。その後、推定した荷重と軸受の使用条件(たとえば回転速度、使用温度、潤滑油種、潤滑油汚染度)に基づいて10%寿命を求めることができる。さらに、軸受の回転回数あるいは使用時間と上記10%寿命との比から疲労度を求めることができる。
本開示に従った疲労度推定プログラムは、本発明の実施の形態2における疲労度推定装置14のCPU15において実行される転動部品の疲労度推定プログラムであって、コンピュータに、回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から疲労度を推定するためのデータを取得するステップ(ステップ(S110))を実行させる。取得するステップ(ステップ(S110))は、転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、転動部品の疲労部にX線を照射することで、転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含む。上記疲労度推定プログラムは、コンピュータに、取得するステップ(ステップ(S110))において得られたデータに基づき、転動部品90の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップ(ステップ(S120))と、判断するステップ(ステップ(S120))での判断結果と取得するステップ(ステップ(S110))で得られたデータとに基づき、転動部品90の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップと、を実行させる。第2データは、転動部品90に関するX線分析値の深さ方向での分布データを含む。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップ(ステップ(S120))において、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品に作用していた荷重を推定するステップ(ステップ(S131、S132))と、荷重と転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップ(ステップ(S133))と、転動部品90の回転回数と寿命とから転動部品90の第1疲労度を算出するステップ(ステップ(S134))と、が実施される。第1疲労度を推定するステップでは、判断するステップ(ステップ(S120))において、組織変化が起こっていると判断された場合に、深さ方向での分布データに基づき転動部品90に作用していた荷重を推定するステップ(ステップ(S171、S172))と、荷重と転動部品90の使用条件とに基づき寿命を算出するステップ(ステップ(S173))と、転動部品90の回転回数と寿命とから転動部品90の第1疲労度を算出するステップ(ステップ(S174))とが実施される。この場合、本発明の実施の形態2における疲労度推定プログラムと同様の効果を得ることができる。
本開示に従った疲労度推定装置14は、判断部31と、荷重推定部32と、寿命算出部33と、第1疲労度算出部34とを備える。判断部31は、転動部品90のミクロ組織に関する第1データと、転動部品90の疲労部にX線を照射することで得られる、転動部品90に関するX線分析値の測定データである第2データとの少なくともいずれか一方に基づき、転動部品90の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断する。荷重推定部32は、第2データに基づき転動部品90に作用していた荷重を推定する。寿命算出部33は、荷重と転動部品90の使用条件とに基づき寿命を算出する。第1疲労度算出部34は、転動部品90の回転回数と寿命とから転動部品90の第1疲労度を算出する。第2データは、転動部品90に関するX線分析値の深さ方向での分布データを含む。荷重推定部32は、判断部31において、組織変化が起こっていないと判断された場合に、第2データに基づき転動部品90に作用していた荷重を推定する。荷重推定部32は、判断部31において、組織変化が起こっていると判断された場合に、深さ方向での分布データに基づき転動部品90に作用していた荷重を推定する。この場合、本発明の実施の形態2における疲労度推定装置14と同様の効果を得ることができる。
本開示に従った転動部品の接触応力推定方法は、転動部品90の疲労部の表面から内部にかけてX線を照射することで、疲労部にて回折した環状の回折X線の中心角に対する回折強度のばらつきの深さ方向での分布データを得るステップ(ステップ(S110))と、深さ方向での分布データに基づき、転動部品90の疲労部に繰り返し作用している接触応力を推定するステップ(ステップ(S171))とを備える。このようにすれば、上記深さ方向での分布データが、疲労部での疲労が第3段階に入った状態において転動部品に作用していた接触応力と一定の関係を有しているため、当該分布データに基づき上記接触応力を推定できる。
上記接触応力推定方法において、接触応力を推定するステップ(ステップ(S171))は、深さ方向での分布データに基づき、回折強度のばらつきの値が最大となる第1深さを求め、当該第1深さを用いて疲労部における他の部材との接触部の短軸半径を推定するステップと、短軸半径に基づき接触応力を推定するステップとを含んでもよい。
上記接触応力推定方法において、深さ方向での分布データを得るステップ(ステップ(S110))では、2次元検出器を用いて環状の回折X線の全体を測定してもよい。上記接触応力推定方法において、深さ方向での分布データを得るステップ(ステップ(S110))では、環状の回折X線の一部を検出する検出器を走査することで、環状の回折X線の全体を測定してもよい。
上記接触応力推定方法において、深さ方向での分布データを得るステップ(ステップ(S110))では、転動部品90の疲労部の表面に対して垂直方向からX線を照射してもよい。上記接触応力推定方法において、深さ方向での分布データを得るステップ(ステップ(S110))では、転動部品90の疲労部の表面に対して傾斜した方向からX線を照射してもよい。
(実施例1)
線接触試験機による寿命試験後の試験片に対して、本開示に従った疲労度推定を行った。試験条件を表1に示す。
Figure 0007372155000002
以下に結果を説明する。
<疲労の進行が第3段階に至っていない場合の疲労度推定>
(1)残留応力のピーク位置の決定
疲労の進行が第3段階に至っていない場合、残留応力の深さ分布の測定結果から接触応力と荷重の推定を行う。以下の例では残留応力の相当応力を用いるが、周方向の残留応力および軸方向の残留応力を用いても荷重推定は可能である。
図9は、残留応力の相当応力の深さ分布を示すグラフである。図9の横軸は試料の表面からの深さを示し、単位はμmである。図9のグラフの縦軸は残留応力の相当応力を示し、単位はMPaである。なお、図9に示したデータを得た試料の線接触試験機での試験時間は148分であった。図9に示すように、ここでは残留応力分布を2次関数で近似している。当該近似曲線がピークを示す位置を相当応力のピーク位置(最大値を示す深さ)Zσeqとする。図9では、ピーク位置Zσeqは210μmである。
(2)接触応力と荷重の推定
残留応力が最大を示す位置と転動体内部に生じる最大せん断応力τmaxの最大値が生じる位置Z45がほぼ一致する(Zσeq≒Z45)ことが知られている。また、線接触の場合、接触楕円の短軸半径bとZ45との間には下記の式(2)の関係がある。なお、ほとんどの軸受は接触楕円の長軸と短軸の比が10以上になるので、転動体の形状に関わらず式(2)を用いても問題ない。
Figure 0007372155000003
接触する2つの転動体が平行二円筒である場合、短軸半径bと荷重Pとの間には下記の式(3)の関係がある。
Figure 0007372155000004
ここで、lは円筒である2つの転動体1および転動体2の接触長さを示す。R、Rはそれぞれ転動体1、2の曲率半径を示す。υはそれぞれ転動体1、2のポアソン比を示す。E、Eはそれぞれ転動体1、2のヤング率を示す。
ここで、転動体1、2が同一の材質なら、上記式(3)は下記の式(4)に変形できる。
Figure 0007372155000005
上記式(2)および式(4)より、下記の式(5)が導かれる。
Figure 0007372155000006
したがって、接触応力Pmaxは下記の式(6)で与えられる。
Figure 0007372155000007
上記式(5)に下記の表2に示す試験片の諸元と、前節で求めたZ45の値とを代入すると、P=18.84kNという値が得られる。また、上記式(6)を用いれば、接触応力Pmax=4.02GPaという値が得られる。
Figure 0007372155000008
(3)疲労度の計算
ここで、接触応力と寿命とは下記の式(7)の関係を有するものとする。
Figure 0007372155000009
発明者が行った過去の試験では、Pmax=4.2GPaの線接触試験の場合はL10=2400分というデータが得られている。このデータと上記式(7)の関係とを用いて推定寿命L10est.と推定疲労度t/L10est.とを求める。なお、ここでtは試験時間を示す。その結果は、L10est.=3452.5分、t/L10est.=148/3452.5=0.0429となった。
<疲労の進行が第3段階に至っている場合の疲労度推定>
あらかじめ実施しておいた転動疲労寿命試験で得られる疲労度とその疲労度まで転動させた試験片のX線応力測定結果のデータベースを用いて、X線応力測定結果から疲労度を推定する。ここでは、Pmax=4.2GPaの線接触試験で得られたデータを用いる。なお、当該試験における試験片の個数は22個である。
図10は、周方向入射で得られた回折強度のばらつきと試験時間との関係を示すグラフである。図10の横軸は試験時間であり、単位は分である。図10の縦軸は回折強度のばらつきを示している。回折強度の測定深さは試験片の表面から600μmの位置である。図10におけるプロットは測定値を示し、実線は回帰曲線である。図10の回帰曲線を用いると、例えば回折強度のばらつきの値が15000のとき、その試験片の試験時間は約1500分~2400分であるということが推定できる。図10の破線は測定値から推定される試験時間の下限である。この破線を用いればデータのばらつきを考慮した安全側の疲労度推定が可能となる。
図10に基づいて、たとえば回折強度のばらつきの値が15000の時の疲労度t/L10を推定すると、t/L10=1500/2400~2400/2400=0.625~1となる。
次に、残留オーステナイトを疲労度の指標として用いる場合を検討する。図11は、残留オーステナイトの減少率と試験時間との関係を示すグラフである。図11の横軸は試験時間を示し、単位は分である。図11の縦軸は残留オーステナイトの減少率を示し、単位は%である。図11では、深さ210μmでのデータを菱形の凡例で示し、深さ600μmでのデータを四角形の凡例で示している。それぞれのデータについて、回帰直線が示されている。ここで、残留オーステナイトの減少率は以下のように定義した。
Figure 0007372155000010
残留オーステナイトの減少率を疲労度の指標として用いる場合、図11からも分かるように、疲労が最も進行しやすい深さ(たとえばZ45=210μm)より内部(たとえば深さ600μm)での測定値を用いたほうが線図の傾きが大きく、試験時間に対する残留オーステナイトの減少率の感度が高いことがわかる。これは、以下のような理由が考えら得る。すなわち、疲労が第3段階に入った時点でZ45付近の残留オーステナイト量はほぼ0%になっており、当該深さでの残留オーステナイト量はその後変化しない。一方、深さが600μmの領域では、上述したZ45と比較して接触応力が小さいため組織変化が緩やかに進行する。そのため、図11に示すように深さが600μmの領域でのデータの方が試験時間に対する感度が高い。
図11に示された回帰直線を用いると、例えば残留オーステナイトの減少率が30%のとき、その試験片の試験時間は約1400分~2400分であるということが推定できる。ここで、図11に示す破線は測定値から推定される試験時間の下限である。この破線を用いればデータのばらつきを考慮した安全側の疲労度推定が可能である。
図11に基づいて、たとえば残留オーステナイトの減少率が30%の時の疲労度t/L10を推定すると、t/L10=1400/2400~2400/2400=0.583~1となる。
以上のように、疲労の進行が早いZ45での測定値ではなく、疲労が緩やかに進行する深さでの測定値を用いた方が正確な疲労度評価をできる場合があることがわかった。半価幅や残留応力など、他のX線分析値についても同様である。
(実施例2)
上述した実施の形態3に係る疲労度推定方法に関連して、以下のような実験を行った。
(1)接触応力(Pmax)の推定
<試験片の準備>
線接触型疲労試験機または軸受寿命試験機で寿命試験を行った試験片に対して、X線分析を実施した。線接触型疲労試験機を用いた寿命試験の試験条件を表3に、軸受寿命試験機を用いた寿命試験の試験条件を表4にそれぞれ示す。以下では、前者の試験片を「第1試験片」、後者の試験片を「第2試験片」と呼称する。
Figure 0007372155000011
Figure 0007372155000012
X線測定には2次元検出器方式のX線応力測定装置であるμ-X360(パルステック工業(株)製)を使用した。X線測定条件を表5に示す。
Figure 0007372155000013
X線測定の際は座標系を図12に示すように定義した。ここで、図12はX線測定の際の座標系を説明するための模式図である。図12では、試料としての転動部品90を矢印81に示す方向に回転させながら、当該転動部品90の外周にX線を照射する場合を示している。転動部品90を回転させることにより、当該転動部品90の外周において疲労が発生している疲労部82にX線を照射している。以下では、図12の矢印αで示されるX線の照射方向(ψ,φ)が(0,0)である場合を垂直入射、X線の照射方向(ψ,φ)が(30,0)である場合を周方向入射、X線の照射方向(ψ,φ)が(30,90)である場合を軸方向入射と呼称する。また、回折X線は図13に示すようにX線照射部を頂点とした円錐面βを構成するように発生する。ここで、図13は回折X線の模式図である。図13に示すように、回折X線は、平面状の検出部を含むX線検出器12により検出できる。また、当該回折X線の一部を検出する検出器83を走査することで、回折X線を検出してもよい。
図13に示した平面状の検出部を含むX線検出器12(2次元検出器)を用いる場合、図14に示すような円環状の回折X線が得られる。これを「環状の回折X線」と称する。ここで、図14は測定された環状の回折X線の模式図である。また、図15は、回折強度のばらつきを説明するための模式図である。図15の左側のグラフの横軸は図14に示した回折X線の中心角αを示し、縦軸は回折X線の回折強度を示している。図15の右側のグラフの縦軸は回折X線の回折強度を示しており、横軸は回折強度のデータ数を示している。図15の右側のグラフは回折強度の度数分布を示している。
図14および図15を参照して、後述するパラメータ「回折強度のばらつき」とは「環状の回折X線の中心角αに対する回折強度の標準偏差(図15の右側のグラフに示される標準偏差S)」として定義する。なお、上述した回折強度のばらつきは、環状の回折X線の一部を検出する、図13に示した0次元または1次元検出器である検出器83を用いても求めることができる。
<線接触型疲労試験機を用いた寿命試験の第1試験片に関する測定結果>
第1試験片に関する測定結果を、図16および図17を参照しながら説明する。図16は、第1試験片のX線測定結果である周方向残留応力の深さ方向分布を示すグラフである。図17は、第1試験片のX線測定結果である回折強度のばらつきの深さ方向分布を示すグラフである。なお、図16および図17に示した測定結果を得た第1試験片については、線接触型疲労試験機を用いた寿命試験の試験時間が1700分であった。また、第1試験片についてX線測定後に組織観察を行った結果、第1試験片は第3段階の疲労に達していることを確認した。
図16および図17の横軸は試験片の表面からの深さを示し、単位はmmである。図16の縦軸は周方向残留応力の値を示し、単位はMPaである。図17の縦軸は回折強度のばらつきを示している。図16より、周方向残留応力が最大値を示す深さは約0.4mmであり、Z45より深い位置であることがわかる。また、図17より、垂直入射で得られる回折強度のばらつきはZ付近で最大値を示し、軸方向入射で得られる回折強度のばらつきはZとZ45との間で最大値を示している。一方、周方向入射で得られる回折強度のばらつきは他の2方向からの入射で得られる回折強度のばらつきのデータと比較して変化が小さく、明確な極大値を示していない。なお、例示した試験片以外の21個の他の第1試験片に対して同様の測定を行ったところ、図17に示した第1試験片と同様にZ付近で垂直入射および軸方向入射で得られる回折強度のばらつきが最大となる分布が得られた。
<軸受寿命試験機を用いた寿命試験の第2試験片に関する測定結果>
第2試験片に関する測定結果を、図18および図19を参照しながら説明する。図18は、第2試験片のX線測定結果である周方向残留応力の深さ方向分布を示すグラフである。図19は、第2試験片のX線測定結果である回折強度のばらつきの深さ方向分布を示すグラフである。なお、図18および図19に示した測定結果を得た第2試験片については、軸受寿命試験機を用いた寿命試験の試験時間が1196.3時間であった。また、第2試験片についてX線測定後に組織観察を行った結果、第2試験片は第3段階の疲労に達していることを確認した。
図18および図19の縦軸および横軸は、図16および図17の縦軸及び横軸と同様である。図18より、周方向残留応力が最大値を示す深さは約0.2mmであり、Z45より深い位置であることがわかる。図19より、回折強度のばらつきはいずれの入射方向でもZ付近で最大値を示していることがわかる。なお、例示した試験片以外の20個の第2試験片に対して同様の測定を行ったところ、図19に示した第2試験片と同様にZ付近で回折強度のばらつきが最大となる分布が得られた。
以上の結果より、回折強度のばらつきはZ付近で最大となる分布となることがわかった。図17および図19から分かるように、第1試験片と第2試験片とで同様の傾向となっている。この性質を利用することで、疲労が第3段階に進んでいる場合でも軸受の負荷である接触応力(Pmax)を推定することが可能となる。なお、回折強度のばらつきに変化が見られる場合に、試料における疲労が第3段階に進んでいると判断する。
<接触応力(Pmax)の計算>
以下に接触応力(Pmax)を求める計算式を示す。線接触の場合、接触楕円の短軸半径bとZとの間には下記の式(9)に示す関係がある。なお、ほとんどの軸受は接触楕円の長軸と短軸との比が10以上になるので、転動体の形状に関わらず下記式(9)を用いることができる。
Figure 0007372155000014
接触する2つの転動体1、2が平行二円筒である場合、短軸半径bと荷重Pとの間には下記の式(10)の関係がある。なお、下記の式(10)は実施例1で説明した式(3)と同様である。
Figure 0007372155000015
転動体1、2が同一の材質なら、上記式(10)は下記の式(11)に変形できる。
Figure 0007372155000016
上記式(9)および式(11)より、下記式(12)が導かれる。
Figure 0007372155000017
したがって、接触応力Pmaxは下記の式(13)で与えられる。
Figure 0007372155000018
一方、実施例1でも述べたように、短軸半径bと荷重Pとの間には下記の式(14)の関係がある。
Figure 0007372155000019
上記式(11)および式(14)より、下記の式(15)が導かれる。
Figure 0007372155000020
したがって、接触応力Pmaxは下記の式(16)で与えられる。
Figure 0007372155000021
としては、回折強度のばらつきが最大値を示す深さを用い、Z45としては残留応力が最大値を示す深さを用いる。疲労が第1段階または第2段階にある場合、たとえば図7および図8のステップ(S131)においては、接触応力Pmaxの推定に上記式(16)を用いる。一方、疲労が第3段階にある場合、たとえば図8のステップ(S171)においては、接触応力Pmaxの推定に上記式(13)を用いる。以下にPmaxの推定結果を示す。
<第1試験片のPmax推定結果>
下記の表6に示した条件で試験後の第1試験片の測定結果から、式(13)を用いて接触応力Pmaxを推定した結果を図20に示す。
Figure 0007372155000022
図20は、第1試験片の接触応力の推定結果を示すグラフである。図20の横軸は各試験片での試験時間を示し、単位は分である。図20の縦軸は推定した接触応力Pmax(推定面圧)を示し、単位はGPaである。第1試験片に関する試験面圧(接触応力)の公称値は4.2GPaであったのに対し、図20に示すように推定されたPmaxの平均値は4.31GPaであり、標準偏差は0.12GPaであった。
<第2試験片のPmax推定結果>
下記の表7に示した条件で試験後の第2試験片の測定結果から、式(13)を用いて接触応力Pmaxを推定した結果を図21に示す。
Figure 0007372155000023
図21は、第2試験片の接触応力の推定結果を示すグラフである。図21の横軸は各試験片での試験時間を示し、単位は時間である。図21の縦軸は推定した接触応力Pmax(推定面圧)を示し、単位はGPaである。第2試験片に関する試験面圧(接触応力)の公称値は3.2GPaであったのに対し、図21に示すように推定されたPmaxの平均値は3.44GPaであり、標準偏差は0.27GPaであった。
<疲労度の計算>
前節で推定した第1試験片および第2試験片に関する接触応力を基に疲労度を計算する。接触応力と寿命とは下記の式(17)の関係を有するものとする。
Figure 0007372155000024
発明者が行った過去の試験では、Pmax=4.2GPaの線接触型疲労試験機を用いた寿命試験の場合はL10=2400分というデータが得られている。また、Pmax=3.2GPaの軸受寿命試験機を用いた寿命試験の場合はL10=1622時間というデータが得られている。これらのデータと上記式(17)の関係とを用いて、各試料について推定寿命L10est.と推定疲労度t/L10est.とを求める。なお、ここでtは試験時間を示す。その結果を表6および表7に示す。以上のように、回折強度のばらつきから推定した接触応力Pmaxを用いて疲労度を計算することができる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
11 照射部、12 X線検出器、12A 検出部、12B 孔、13 表面形状測定器、14 疲労度推定装置、16 メモリ、17 入力部、18 表示部、21 データ準備部、23 ミクロ組織観察部、31 判断部、32 荷重推定部、33 寿命算出部、34 第1疲労度算出部、41 第1疲労度推定部、51 接触応力推定部、53 寿命推定部、54 第2疲労度推定部、55 疲労度決定部、60 制御部、61 記憶部、70 診断部、81 矢印、 82 疲労部、 83 検出器、90 転動部品。

Claims (16)

  1. 回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から前記転動部品の疲労度を推定するためのデータを取得するステップを備え、
    前記取得するステップは、
    前記転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、
    前記転動部品の疲労部にX線を照射することで、前記転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含み、さらに、
    前記取得するステップにおいて得られた前記データに基づき、前記転動部品の前記疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップと、
    前記判断するステップでの判断結果と前記取得するステップで得られた前記データとに基づき、前記転動部品の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップと、を備え、
    前記第1疲労度を推定するステップでは、
    前記判断するステップにおいて、前記組織変化が起こっていないと判断された場合に、前記第2データに基づき前記転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、前記荷重と前記転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、前記転動部品の回転回数と前記寿命とから前記転動部品の前記第1疲労度を算出するステップと、が実施され、
    前記判断するステップにおいて、前記組織変化が起こっていると判断された場合に、予め決定された前記第2データと前記第1疲労度との関係に基づき、前記第2データから前記第1疲労度を推定するステップが実施される、転動部品の疲労度推定方法。
  2. 前記第2データは、前記転動部品の前記疲労部における6成分の残留応力のデータ、前記転動部品の前記疲労部における残留オーステナイト量のデータ、前記転動部品の前記疲労部にて回折した環状の回折X線の中心角に対する回折強度のばらつきを示すデータ、前記回折強度のピークの半価幅のデータ、前記回折強度の平均値のデータ、および前記回折強度の最小値と最大値との差のデータからなる群から選択される少なくとも1つのデータを含む、請求項1に記載の転動部品の疲労度推定方法。
  3. 回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から前記転動部品の疲労度を推定するためのデータを取得するステップを備え、
    前記取得するステップは、
    前記転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、
    前記転動部品の疲労部にX線を照射することで、前記転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含み、さらに、
    前記取得するステップにおいて得られた前記データに基づき、前記転動部品の前記疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップと、
    前記判断するステップでの判断結果と前記取得するステップで得られた前記データとに基づき、前記転動部品の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップと、を備え、
    前記第2データは、前記転動部品に関する前記X線分析値の深さ方向での分布データを含み、
    前記第1疲労度を推定するステップでは、
    前記判断するステップにおいて、前記組織変化が起こっていないと判断された場合に、前記第2データに基づき前記転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、前記荷重と前記転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、前記転動部品の回転回数と前記寿命とから前記転動部品の前記第1疲労度を算出するステップと、が実施され、
    前記判断するステップにおいて、前記組織変化が起こっていると判断された場合に、前記深さ方向での分布データに基づき前記転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、前記荷重と前記転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、前記転動部品の回転回数と前記寿命とから前記転動部品の前記第1疲労度を算出するステップとが実施される、転動部品の疲労度推定方法。
  4. 前記深さ方向での分布データは、前記転動部品の前記疲労部にて回折した環状の回折X線の中心角に対する回折強度のばらつきを示すデータの深さ方向での分布データである、請求項3に記載の転動部品の疲労度推定方法。
  5. 前記転動部品の前記使用条件は、前記転動部品の回転速度、前記転動部品の使用時の温度、前記転動部品の使用時に供給される潤滑油の油種情報、および前記転動部品の使用時に供給される前記潤滑油の汚染度の情報を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の転動部品の疲労度推定方法。
  6. 前記第1疲労度に基づき、前記転動部品が交換を要するか否か、または交換時期を通知するステップをさらに備える、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の転動部品の疲労度推定方法。
  7. 前記取得するステップは、前記転動部品の前記疲労部を測定して表面形状に関する第3データを得るステップを含み、
    前記取得するステップで得られた前記データに基づき、前記転動部品の表面起点型の損傷に関する第2疲労度を推定するステップを備え、
    前記第2疲労度を推定するステップは、
    前記第2データと前記第3データとに基づき、前記転動部品の前記疲労部に繰り返し作用している接触応力を推定するステップと、
    予め決定された前記接触応力と寿命との関係に基づき、前記接触応力から、前記寿命を推定するステップと、
    前記転動部品の前記回転回数と前記寿命とから前記転動部品の前記第2疲労度を推定するステップとを含み、さらに、
    前記第1疲労度と前記第2疲労度とのうち値の大きい方を前記転動部品の疲労度として決定するステップを備える、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の転動部品の疲労度推定方法。
  8. 前記疲労度に基づき、前記転動部品が交換を要するか否か、または前記転動部品の交換時期を通知するステップをさらに備える、請求項7に記載の転動部品の疲労度推定方法。
  9. 転動部品の疲労度推定プログラムであって、
    コンピュータに、
    回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から疲労度を推定するためのデータを取得するステップを実行させ、
    前記取得するステップは、
    前記転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、
    前記転動部品の疲労部にX線を照射することで、前記転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含み、さらに、
    前記コンピュータに、
    前記取得するステップにおいて得られた前記データに基づき、前記転動部品の前記疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップと、
    前記判断するステップでの判断結果と前記取得するステップで得られた前記データとに基づき、前記転動部品の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップと、を実行させ、
    前記第1疲労度を推定するステップでは、
    前記判断するステップにおいて、前記組織変化が起こっていないと判断された場合に、前記第2データに基づき前記転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、前記荷重と前記転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、前記転動部品の回転回数と前記寿命とから前記転動部品の前記第1疲労度を算出するステップと、が実施され、
    前記判断するステップにおいて、前記組織変化が起こっていると判断された場合に、予め決定された前記第2データと前記第1疲労度との関係に基づき、前記第2データから前記第1疲労度を推定するステップが実施される、転動部品の疲労度推定プログラム。
  10. 転動部品の疲労度推定プログラムであって、
    コンピュータに、
    回転による繰り返し負荷が加えられる転動部品から疲労度を推定するためのデータを取得するステップを実行させ、
    前記取得するステップは、
    前記転動部品のミクロ組織に関する第1データを得るステップと、
    前記転動部品の疲労部にX線を照射することで、前記転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データを得るステップと、を含み、さらに、
    前記コンピュータに、
    前記取得するステップにおいて得られた前記データに基づき、前記転動部品の前記疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断するステップと、
    前記判断するステップでの判断結果と前記取得するステップで得られた前記データとに基づき、前記転動部品の内部起点型の損傷に関する第1疲労度を推定するステップと、を実行させ、
    前記第2データは、前記転動部品に関する前記X線分析値の深さ方向での分布データを含み、
    前記第1疲労度を推定するステップでは、
    前記判断するステップにおいて、前記組織変化が起こっていないと判断された場合に、前記第2データに基づき前記転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、前記荷重と前記転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、前記転動部品の回転回数と前記寿命とから前記転動部品の前記第1疲労度を算出するステップと、が実施され、
    前記判断するステップにおいて、前記組織変化が起こっていると判断された場合に、前記深さ方向での分布データに基づき前記転動部品に作用していた荷重を推定するステップと、前記荷重と前記転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出するステップと、前記転動部品の回転回数と前記寿命とから前記転動部品の前記第1疲労度を算出するステップとが実施される、転動部品の疲労度推定プログラム。
  11. 前記コンピュータに、
    前記第1疲労度に基づき、前記転動部品が交換を要するか否か、または前記転動部品の交換時期を通知するステップをさらに実行させる、請求項9または請求項10に記載の転動部品の疲労度推定プログラム。
  12. 前記取得するステップは、前記転動部品の前記疲労部を測定して表面形状に関する第3データを得るステップを含み、
    前記コンピュータに、
    前記取得するステップで得られた前記データに基づき、前記転動部品の表面起点型の損傷に関する第2疲労度を推定するステップを実行させ、
    前記第2疲労度を推定するステップは、
    前記第2データと前記第3データとに基づき、前記転動部品の前記疲労部に繰り返し作用している接触応力を推定するステップと、
    予め決定された前記接触応力と寿命との関係に基づき、前記接触応力から、前記寿命を推定するステップと、
    前記転動部品の回転回数と前記寿命とから前記転動部品の前記第2疲労度を推定するステップとを含み、さらに、
    前記コンピュータに、
    前記第1疲労度と前記第2疲労度とのうち値の大きい方を前記転動部品の疲労度として決定するステップを実行させる、請求項9または請求項10に記載の転動部品の疲労度推定プログラム。
  13. 前記コンピュータに、
    前記疲労度に基づき、前記転動部品が交換を要するか否か、または前記転動部品の交換時期を通知するステップをさらに実行させる、請求項12に記載の転動部品の疲労度推定プログラム。
  14. 転動部品のミクロ組織に関する第1データと、前記転動部品の疲労部にX線を照射することで得られる、前記転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データとの少なくともいずれか一方に基づき、前記転動部品の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断する判断部と、
    前記判断部において、前記組織変化が起こっていないと判断された場合に、前記第2データに基づき前記転動部品に作用していた荷重を推定する荷重推定部と、
    前記荷重と前記転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出する寿命算出部と、
    前記転動部品の回転回数と前記寿命とから前記転動部品の第1疲労度を算出する第1疲労度算出部と、
    前記判断部において、前記組織変化が起こっていると判断された場合に、予め決定された前記X線分析値と前記第1疲労度との関係に基づき、前記第2データから前記第1疲労度を推定する第1疲労度推定部とを備える、転動部品の疲労度推定装置。
  15. 転動部品のミクロ組織に関する第1データと、前記転動部品の疲労部にX線を照射することで得られる、前記転動部品に関するX線分析値の測定データである第2データとの少なくともいずれか一方に基づき、前記転動部品の疲労部において、組織変化が起こっているか否かを判断する判断部と、
    前記第2データに基づき前記転動部品に作用していた荷重を推定する荷重推定部と、
    前記荷重と前記転動部品の使用条件とに基づき寿命を算出する寿命算出部と、
    前記転動部品の回転回数と前記寿命とから前記転動部品の第1疲労度を算出する第1疲労度算出部と、を備え、
    前記第2データは、前記転動部品に関する前記X線分析値の深さ方向での分布データを含み、
    前記荷重推定部は、
    前記判断部において、前記組織変化が起こっていないと判断された場合に、前記第2データに基づき前記転動部品に作用していた荷重を推定し、
    前記判断部において、前記組織変化が起こっていると判断された場合に、前記深さ方向での分布データに基づき前記転動部品に作用していた荷重を推定する、転動部品の疲労度推定装置。
  16. 前記第2データと、前記転動部品の前記疲労部を測定して得られる表面形状に関する第3データとに基づき、前記転動部品の前記疲労部に繰り返し作用している接触応力を推定する接触応力推定部と、
    予め決定された前記接触応力と寿命との関係に基づき、前記接触応力から、前記寿命を推定する寿命推定部と、
    前記転動部品の前記回転回数と前記寿命とから前記転動部品の第2疲労度を推定する第2疲労度推定部と、
    前記第1疲労度と前記第2疲労度とのうち値の大きい方を前記転動部品の疲労度として決定する疲労度決定部とを備える、請求項14または請求項15に記載の転動部品の疲労度推定装置。
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