JP7369339B2 - 個人識別媒体 - Google Patents

Description

本発明は、パスポートやＩＤカードなどの個人情報を提示するための個人識別媒体に関する。
本願は、２０１８年８月８日に出願された日本国特許出願第２０１８－１４９１９６号及び２０１８年８月８日に出願された日本国特許出願第２０１８－１４９１９７号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

近年、パスポートやＩＤカード等の個人識別媒体は、アンテナとＩＣチップ（モジュール）からなる通信部材を組み込んで非接触で通信が可能な媒体が増えてきている。
従来、パスポートやＩＤカード等の個人識別媒体で本人であることを示すための顔写真等のＩＤ情報の上に、この写真の偽造や改変を防ぐためにホログラム箔等を貼り付けるという方法が知られている（特許文献１など参照）。
ホログラムは高度な技術と設備がないと製造ができないため、この方法であればＩＤ情報の上のホログラムを剥離してＩＤ情報を不正なＩＤ情報と入れ替えるという改竄をしたとしても、ホログラムまでの改竄は困難であるため、ＩＤ情報改竄を抑制することが可能となる。
しかし、上記のような構成であると、下側から削っていき、ＩＤ情報を削除し、ＩＤ情報の上部に位置するホログラムをそのままにしてＩＤ情報を改竄する、という偽造を防ぐことができない。

また、最近は顔写真に代えて、レーザーでマーキング可能な材料を用い、レーザーにてＩＤ情報を形成またはマーキングしその上にホログラム箔を設けることも知られている（特許文献２など参照）。
このようにすることでＩＤ情報の入れ替え自体を困難にすることができるが、近年は印刷技術等が発達してきており、元のレーザーでマーキングしたＩＤ情報と見た目が似たようなＩＤ情報を用意して入れ替える、ということも可能になってきている。
そのため、個人識別媒体裏面からの攻撃を防ぐことが可能な技術が求められている。

日本国特許第３２６３７６０号公報 国際公開第２０１２／０５０２２３号公報

本発明では、非接触通信機能を有する、偽造改竄が困難な顔写真などの個人情報をマーキングした個人識別に用いられる個人識別媒体を提供する。具体的には、下層側からの切削による偽造改竄を防ぐことが可能な個人識別媒体を提供する。

本発明の第１態様は、個人識別媒体であって、装飾部を備えた装飾層と、前記装飾層上に個人情報マーキング部がマーキングされているレーザーマーキング層と、を備え、前記レーザーマーキング層に形成された前記個人情報マーキング部が、前記装飾層に形成された前記装飾部の少なくとも一部に重なっており、前記装飾層と前記レーザーマーキング層の間に着色層を備え、前記着色層は着色部と窓部とを備え、前記窓部は前記装飾層に形成された前記装飾部と重なる領域に形成され、前記レーザーマーキング層に形成された前記個人情報マーキング部が、前記窓部を介して前記装飾部に重なっており、前記着色層と前記装飾層との間に光透過性耐エネルギー層を備える。
本発明の第２態様は、上記第１態様に係る個人識別媒体において、アンテナが、パターン状の金属薄膜層であることが好ましい。
本発明の第３態様は、上記第１態様に係る個人識別媒体において、金属の巻線であることが好ましい。

本発明の第４態様は、上記第１態様に係る個人識別媒体において、前記装飾層はアンテナを備え、前記アンテナは、非装飾部と前記非装飾部に接続された前記装飾部とを備える。
本発明の第５態様は、上記第４態様に係る個人識別媒体において、さらにアンテナを備え、アンテナが、パターン状の金属薄膜層であることが好ましい。
本発明の第６態様は、上記第４態様に係る個人識別媒体において、さらにアンテナを備え、金属の巻線であることが好ましい。

本発明の第７態様は、上記第１態様に係る個人識別媒体において、個人情報マーキング部が着色層の窓部と着色部に跨って形成されていることが好ましい。

本発明の第８態様は、上記第１態様に係る個人識別媒体において、窓部には、補填層が形成されていることが好ましい。

本発明の第９態様は、上記第１態様に係る個人識別媒体において、光透過性耐エネルギー層が、赤外吸収・散乱層及び耐熱層の両方またはいずれか一方であることが好ましい。

本発明の第１０態様は、上記第１～第９態様のいずれか一態様に係る個人識別媒体において、個人情報マーキング部がマーキングされたレーザーマーキング層上に光透過性ホログラム層をさらに備え、光透過性ホログラム層は、少なくとも個人情報マーキング部を覆うように形成されていることが好ましい。

本発明によれば、偽造改変が困難である個人情報をマーキングした個人識別媒体を提供することが可能となる。具体的には、下層側からの切削による偽造改竄が行われた際にその痕跡を確認することが可能となる。

本発明の第１実施形態における個人識別媒体の一例を示す上面図である。 本発明の第１実施形態における個人識別媒体の一例を示す概略図である。 本発明の第１実施形態における個人識別媒体の一例を示す断面図である。 本発明の第１実施形態における個人識別媒体の一例を示す断面図である。 本発明の第１実施形態におけるアンテナの一例を示す概略図である。 本発明の第１実施形態におけるアンテナの一例を示す概略図である。 本発明の第１実施形態におけるアンテナの一例を示す概略図である。 本発明の第１実施形態におけるアンテナの一例を示す概略図である。 本発明の個人識別媒体の着色層の一例を示す概略図である。 本発明の個人識別媒体の着色層の一例を示す概略図である。 本発明の個人識別媒体のレーザーマーキング工程の一例を示す概略図である。 本発明の第１実施形態における個人識別媒体の一例を示す断面図である。 本発明の個人識別媒体の一例を示す概略図である。 本発明のヒンジ層の一例を示す概略図である。 本発明の第２実施形態における個人識別媒体の一例を示す概略図である。 本発明の第２実施形態における個人識別媒体の一例を示す断面図である。 本発明の第２実施形態における個人識別媒体の一例を示す断面図である。 本発明の第２実施形態における装飾部の一例を示す概略図である。 本発明の第２実施形態における装飾部の一例を示す概略図である。 本発明の第２実施形態における装飾部の一例を示す概略図である。 本発明の第２実施形態における装飾部の一例を示す概略図である。 本発明の装飾部の変形例を示す概略図である。 本発明の装飾部の変形例を示す断面図である。 本発明の装飾層の変形例を示す概略断面図である。 本発明の個人識別媒体の変形例を示す断面図である。 本発明の個人識別媒体の変形例を示す断面図である。 本発明の多層の透過性耐エネルギー層の例を示す概略図である。 本発明の個人識別媒体の変形例を示す断面図である。 本発明の個人識別媒体の変形例を示す断面図である。

本発明はパスポートやＩＤカード等、身分を証明するためのパスポートなどの冊子体、ＩＤカードとして使用される非接触通信機能を有する個人識別媒体に関する。
（第１実施形態）
図１に本発明の個人識別媒体の一具体例としてＩＤカードとした例の上面図を、図２に図１のＩＤカードの層構成の概略を示す概略図を示す。
図１、２において、個人情報マーキング部としてレーザーマーキングによる顔写真情報氏名、番号等の印字情報と、顔写真情報の下層に重なるように形成されたパターン状金属薄膜層からなる装飾部を有するアンテナを備える。
このような構成とすることで裏面から切削により個人情報マーキング部を削除し別のＩＤ情報を設けることができたとしてもアンテナの装飾部も破壊された状態となるため、目視にてアンテナの装飾部の破壊状態から不正な個人情報の改変があったことを確認できると共に、アンテナが断線することにより、非接触通信が不能になったことによっても不正な個人情報の改変があったことを確認できる。

図３，４に図１，２の例の断面図をそれぞれ示す。
図２～４の例に層構成を詳細に説明する。
図２～４において、下層側から、第二レーザーマーキング層７、パターニングされた金属薄膜層からなり装飾部３ａと非装飾部３ｂを有するアンテナが形成されたアンテナ形成層（装飾層）３と、アンテナ形成層３上に透過性耐エネルギー層５、透過性耐エネルギー層５上に着色層４、着色層４上にレーザーマーキング層２を備え、最上層に光透過性ホログラム層６を備える。
そして、着色層４は着色部４ｂと窓部４ａを有し、窓部４ａはアンテナ形成層３に形成された装飾部３ａが露出するように着色されていない非着色部として形成される。そしてレーザーマーキング層２には、窓部４ａを介して装飾部３ａと重なるようにレーザーで印字された顔画像からなる個人情報マーキング部２ａを有する。また、レーザーマーキング層には氏名や番号などを印字した個人情報マーキング部２ｂも備えている。
なお、図３の例では、光透過性ホログラム層６は個人識別媒体全面を覆うように形成されているが、図４の例では、光透過性ホログラム層６は顔画像からなる個人情報マーキング部を覆うよう部分的に形成される。

アンテナ形成層３は、パターニングされた金属薄膜層からなり、装飾部３ａと非装飾部３ｂを有するアンテナを形成するための層である。
アンテナ形成層３に用いる材料としては、ポリカーボネート系基材、ポリエステル系基材、アクリル系基材、塩化ビニル系基材などをあげることができる。具体的にはポリエチレンテレフタレートを好適に用いることができる。アンテナ形成層の厚みは１０～３００μｍ程度である。

アンテナの装飾部３ａはアンテナ形成層３上に形成されたパターニングされた金属薄膜層からなり、アンテナの装飾部３ａの少なくとも一部は非装飾部３ｂと接続されている。
金属薄膜層の材料としては、アルミニウムや銅などがあげられる。
非装飾部３ｂは装飾部３ａを有するアンテナはアンテナ形成層３の一方の面または両方の面の全面に形成された金属薄膜層をエッチングによりパターニングして形成することができる。レーザー等によりパターン状に金属薄膜層を除去することにより形成してもよい。
金属薄膜層に用いる材料としては特に限定するものではないが、ＡｌやＣｕ等があげられる。

装飾部３ａは金属薄膜層のポジパターンまたはネガパターンからなる微細な線画パターンからなることが好ましい。
線画パターンの線幅は０．１～３ｍｍであることが好ましい。
本発明では装飾部を複製したとしてもアンテナが断線しているため、非接触通信検査により不正が行われたことを検知することができるであるが、見た目だけでもごまかそうとしたとしても、この範囲であれば装飾部の不正な複製が困難とすることができるため好ましい。
線画パターンとしては彩文、細紋、彩紋、文字、数字、記号などの模様があげられる。
なお、装飾部は前述の微細な線画パターンが含まれていれば、他のパターンを組み合わせてもよい。
なお、上記例では、より微細な線画パターンを形成可能なため、装飾部３ａ及び非装飾部３ｂをパターニングされた金属薄膜層とした（いわゆるエッチングアンテナ）。しかし、装飾部３ａ及び非装飾部３ｂは、熱を加えて金属線をアンテナ形成層に接着するように形成された、金属の巻線であってもよい。

アンテナは典型的にはコイル状に形成されたものを示すが、ダイポールアンテナなどのアンテナであってもよい。
非装飾部３ｂはアンテナのうち通信に寄与する大部分を占める。非装飾部３ｂは線状パターンにより形成され、線幅は１０～５０μｍ程度である。
また、非装飾部３ｂは別途アンテナ形成層に設けたＩＣチップまたはＩＣモジュールと接続されている。アンテナとＩＣチップを備えることで非接触通信が可能となる。
また、アンテナには容量成分を調整するためのコンデンサ部を設けてもよい。例えば図５Ａ～５Ｄに示すように１つのコンデンサ部を設けることもできるが、コンデンサ部は複数設けて容量成分を細かく調整できるようにしてもよい。
また、コイル状のアンテナとし、巻き数を複数とする場合、線を跨ぐ箇所を設ける必要がある。その場合はジャンパー部材を貼り付けるか、図５Ａ～５Ｄの３ｅに示すようにアンテナコイルを形成した面とは反対側の面にジャンパー線を設けて接続してもよい。

装飾部３ａはアンテナの一部に形成されており、少なくとも一部は非装飾部３ｂと接続するように形成する。
装飾部３ａはアンテナ形成層３のどちらか一方の面に設けてもよいし、双方の面に設けてもよい。双方の面に設けるとより不正な複製が困難となるため好ましいものとなる。なお双方の面に設ける場合は一方の面に設けた装飾部と他方の面に設けた装飾部のパターンを変えることが好ましい。また、双方の面に設ける場合はどちらか一方の面の装飾部３ａはアンテナに接続するよう形成するが、他方の面に設けた装飾部はアンテナに接続してもよいし、しなくてもよい。このようにすることでより装飾部の構造が複雑になり、不正な複製を困難とすることができる。

また、装飾部３ａを双方の面に設ける場合、アンテナ層３の表面に第１パターンを配置し、表面とは反対側の面に第２パターンが第１パターンの少なくとも一部と重なるような配置してもよい。２つのパターンを設けることで、光学効果によりモアレ模様を出すことができる。装飾部の不正な改変があったとしても、一度改変したモアレ模様まで復元することは困難であるため、偽造防止効果を高めることができる。

例えばアンテナ形成層３の一方の面に形成されたアンテナコイルにより装飾部３ａを形成してもよい。具体的には、図５Ａの上面図及び側面図に示すように、装飾部３ａにおいて、平行する２巻のアンテナコイルを左右対称の蝶々形状に形成することができる。そして、アンテナコイルの主となる非装飾部３ｂにはコンデンサ３ｄを設け、コンデンサ３ｄから裏面のジャンパー線３ｅを経由してアンテナコイルを跨ぎ接続部を介してＩＣチップに接続することができる。
また、アンテナ形成層３の一方の面に形成されたアンテナコイルと独立したパターンにより装飾部３ａを形成してもよい。具体的には図５Ｂの上面図及び側面図に示すように、平行する２巻のアンテナコイルを左右対称となるような円弧上の曲線とし、このアンテナコイルの間に２重に楕円を形成し、アンテナコイルの外側にアンテナコイルの形状と相似形状の円弧を形成することができる。そして、アンテナコイルの主となる非装飾部３ｂにはコンデンサ３ｄを設け、コンデンサ３ｄから裏面のジャンパー線３ｅを経由してアンテナコイルを跨ぎ接続部を介してＩＣチップに接続することができる。
また、アンテナ形成層３の一方の面にアンテナコイルが形成されており、装飾部３ａを形成する線状パターンのうちの一部が非装飾部に接続され、他方の面に独立した線状のパターンを有する形状とすることができる。具体的には、図５Ｃの上面図及び側面図の例では、装飾部３ａにおいて、平行する２巻のアンテナコイルを左右対称となるようにくの字に曲げて略ひし形になるようにし、アンテナ形成層３の他方の面にこのひし形形状に重なるように四角形を、四角形状のパターンの内側に円形のパターン（図５Ｃの上面図の点線部参照）を形成することができる。そして、アンテナコイルの主となる非装飾部３ｂにはコンデンサ３ｄを設け、コンデンサ３ｄから裏面のジャンパー線３ｅを経由してアンテナコイルを跨ぎ接続部を介してＩＣチップに接続することができる。
また、アンテナ形成層３の表裏に設けたコンデンサ部に装飾部３ａを形成してもよい。具体的には、図５Ｄの上面図及び側面図に示すようにアンテナ形成層の表裏に一定の面積を有する金属薄膜層からなるコンデンサ部を設け、表裏のコンデンサ部にネガパターンで文字や細紋等の模様を設けることができる。そして、コンデンサ３ｄの裏面からジャンパー線３ｅを経由してアンテナコイルを跨ぎ接続部を介してＩＣチップに接続することができる。
表裏のパターンは同じ文字、模様を形成し、かつ位置が合わせることができる。また、表裏で異なるパターンを設け、抜きパターンの重なる部分と重ならない部分による複雑な模様を形成してもよい。
また、ジャンパー線３ｅを装飾部の一部として用いてもよい。

さらに装飾部３ａの部分に微細な凹凸を設け、光学的な効果を持たせることもできる。具体的には予めアンテナ形成層３に光学効果を発現するための微細な凹凸構造を形成し、その上にパターン状の金属薄膜層からなる装飾部を形成することができる。また、アンテナ形成層３上にパターン状の金属薄膜層からなる装飾部を形成した後にエンボス加工などで光学効果を発現する微細な凹凸構造を形成することができる。

装飾部３ａ及び非装飾部３ｂをアルミニウムなどの金属薄膜層で形成する場合、金属薄膜を圧延する際に、アルミニウム表面に複数の凸状または凹状の線状すじが形成される。これらの線状すじは、指向性を有し光の散乱に影響を与えるため、偽造改竄が行われた際に光の散乱状態からその痕跡を視認で確認することに寄与する。そのため、線状すじは、例えば幅１～１００μｍの範囲内、ピッチ１～１００μｍの範囲内、深さまたは高さ０．０１～０．５μｍの範囲内であることが好ましい。

レーザーマーキング層２は、レーザーにより個人情報（ＩＤ情報）等がマーキングされた層である。
レーザーマーキング層２に用いる材料はレーザーによりマーキングでき、下層の装飾部を視認可能とするための光透過性があるものであれば特に限定はしないが、例えば、レーザー光を照射することにより炭化させ黒く発色する材料や、レーザー光を照射することにより化学構造を変化させ光の吸収反射状態を変えることで発色する材料や、レーザー光を照射することにより表面、界面の状態を変化（切削や発泡等）させることでマーキングすることのできる材料を用いることができる。
生産性や品質等の点で好ましくはレーザー光を吸収し発生した熱により発色（黒く炭化）する材料を用いることが好ましい。このような材料は公知のものを適用できるが、使用するレーザーの波長に吸収特性を有する樹脂材料を用いることができる。
発色に用いるレーザーとしては、紫外域、可視域、赤外域などの様々なレーザーを用いることができる。なお赤外域のレーザーは比較的エネルギーが低く、また赤外域のみを吸収する材料は可視光域の光透過性に影響を与えないため好適に用いることができる。
赤外域のレーザーを用いる場合、レーザーマーキング層２に用いる材料としては、用いるレーザー波長（赤外域波長：７００～１３００ｎｍ程度）の光を吸収し、可視光を透過する材料を用いることができる。例えば、赤外域（波長７００～１３００ｎｍ程度）に対し吸収特性を有するポリカーボネート系材料などがあげられる。
なお、レーザーマーキング層２の可視光の透過率は波長４２０～７８０ｎｍの範囲内で８０％以上あればよい。

レーザーマーキング層にはレーザーによりユーザーの個人情報マーキング部を２ａ、２ｂをマーキングされてなる。マーキングする個人情報（ＩＤ情報）としては顔写真情報、氏名、生年月日、ＩＤ番号等があげられる。
また、少なくとも１つの個人情報マーキング部２ａは下層に形成されている装飾部３ａと重なるように形成される。
個人識別媒体を用いた個人の識別において、多くの場合は利用者に個人識別媒体を提示してもらい、目視で判断をする。目視で判断する場合、ＩＤ番号や生年月日などは予めその情報を持っていないとできないため、顔写真情報と本人を見比べて判断する。そのため、顔写真情報を偽造されることが多く、顔写真情報の偽造改変を防ぐことが求められている。そのため、装飾部３ａと重なるように形成することで偽造改変を抑制することが可能な個人情報マーキング部２ａは顔写真情報であることが好ましい。
なお、装飾部３ａと重ねて形成される個人情報マーキング部２ａは、個人情報を構成する個々の線や点などではなく、顔写真全体や一連のＩＤ、氏名など全体で１つの意味を成すものを示す。
また、装飾部３ａと重ならない位置にも個人情報マーキング部２ｂを形成することが可能である。個人情報マーキング部２ｂは、氏名や生年月日、番号情報等の文字情報を設けることができる。
また、レーザーマーキング層には、個人情報ではない情報もマーキングすることができる。

個人情報（ＩＤ情報）のマーキングは図８に示すように、個人識別媒体の上部からレーザーを照射することにより行われる。
用いるレーザーとして前述の通り、紫外域、可視域、赤外域などの様々なレーザーを用いることができるが、赤外域のレーザーを好適に用いることができる。赤外域のレーザーとしては、波長７００～１３００ｎｍ程度ＣＯ_２レーザーやＹＡＧレーザーなどがあげられる。

また、着色層４をレーザーマーキング層２とアンテナ形成層３の間に設けることができる。
着色層４は、券面のデザインを形成する層として用いることができる。また、下層のアンテナ形成層３のアンテナ部分を隠蔽することができる。
着色層４は、着色部４ｂと窓部４ａを備える。
着色層４は、透明や白色の樹脂基材の一方の面または両方の面に印刷された絵柄等の印刷層や、着色フィルム自体を用いることができる。透明の樹脂基材に印刷を施したものを着色層４とする場合、透明樹脂基材として後述する光透過性耐エネルギー層を用いることができる。
着色層４として、透明や白色の樹脂基材に印刷を施す場合、樹脂基材の上にパターン状の絵柄を印刷してもよいし、全面ベタの印刷を施してもよい。
また透明な樹脂基材を用いる場合、白色などの下地印刷層上にパターン状の絵柄を印刷してもよい。下層のアンテナを隠蔽したい場合はベタの印刷層や下地印刷層を設けた上に絵柄パターンを印刷することが好ましい。
透明や白色の樹脂基材としては、ポリカーボネート系基材、ポリエチレンテレフタレートやポリエステル系の基材、塩化ビニル系の基材、ポリオレフィン系の基材等を用いることができる。

着色層４には、装飾部３ａと重なる領域は装飾部３ａを視認可能にするための窓部４ａを有する。窓部４ａを用いることでアンテナ形成層に形成された装飾部３ａとレーザーマーキング層に形成された個人情報マーキング部２ａが層の厚み方向に窓部４ａを介して重なるため、窓部４ａを介して個人情報マーキング部２ａと装飾部３ａの少なくとも一部に重なって視認できるように表示ができる。そのため、裏面からの改変を困難とすることができる。
着色層４の基材として透明樹脂基材を用いる場合は、透明樹脂基材上に設けた着色部４ｂ（印刷層）のうち、非印刷部を設け、この非印刷部を窓部４ａとすることができる。また、着色された基材やフィルムを着色層４として用いる場合は、着色された基材やフィルムに開口を設けてこれを窓部４ａとし非開口部を着色部４ｂすることができる。この場合開口に透明な材料からなる嵌め込み部材をはめ込むことができる。このようにすることで窓部の光透過性を維持しながら段差のない構成とすることができる。
なお、開口（窓部）にはめ込む部材は下層の装飾部３ａを視認が可能な範囲で着色されていてもよい。具体的には着色透明フィルムを用いることができる。このようにすることで、不正な改竄をされた場合に、着色透明フィルムの色味からも偽造品を判別しやすくすることができる。

窓部４ａは典型的には無色透明または着色透明であることが好ましい。
また、窓部４ａは無色透明または着色透明でなくとも、装飾部３ａを視認可能にすることができればよく、例えば図６に示すように彩文などの模様からなるパターン等を設けてもよい。
窓部４ａに模様からなるパターン等を設ける場合ことにより、個人情報マーキング部２ａ、窓部４ａの模様からなるパターン、装飾部３ａが重なって表示されるためより複雑な構成となり偽造が困難となる。なお、窓部４ａに設ける模様からなるパターンなどはレーザーマーキング層のマーキングに用いるレーザー光を吸収しない材料であることが好ましい。レーザー光を吸収する材料であるとレーザーマーキング層を通過したレーザー光により模様からなるパターンが変色や消失してしまうためである。レーザーマーキング層のマーキングには赤外域のレーザーを用いる場合は、窓部４ａの模様からなるパターンは赤外域の波長を透過するインキにより形成することが好ましい。

また、レーザーマーキング層２に設ける個人情報マーキング部２ａは部分的に着色層４の着色部４ｂとも重なるように形成されてもよい。
具体的には図７に一例を示すように、個人情報マーキング部２ａの大部分が窓部４ａの上に位置するように印字し、個人情報マーキング部２ａの一部が窓部４ａからはみ出して着色層４の着色部４ｂに重なるように印字することができる。
このようにすることで、裏面から改変として、個人情報マーキング部２ａを削って不正な個人情報マーキング部２ａをはめ込み、さらに装飾部３ａを偽造してはめ込むような偽造をしたとしても、不正な個人情報マーキング部２ａと着色層４の着色部４ｂ上に残っている個人情報マーキング部２ａとの不連続性（違和感）から偽造がなされたことを判断可能とできる。
なお、個人情報マーキング部２ａの窓部４ａからはみ出して着色層４の着色部４ｂに重なる部分は、個人情報マーキング部の５％～３０％程度であることが好ましい。

また、着色層４と装飾部３ａの間に光透過性耐エネルギー層５を備えることができる。
前述のように個人識別媒体の上部からレーザーを照射することにより個人情報マーキング部２ａマーキングする。
レーザーマーキング層の下層にパターン状の金属薄膜層か存在する場合、レーザーを照射した際にレーザーマーキング層の発色濃度や下層の金属薄膜層に悪影響を起こす場合がある。
例えば薄い接着層８を挟んでいるもののレーザーマーキング層２のすぐ下層に装飾層形成層３がある場合、以下に示すような不具合が生じることがある。

例えば図８Ａに示すように、レーザーマーキング層２で吸収しきれなかったレーザーが透過し、装飾部３ａで反射して再度レーザーマーキング層２に入射し、再入射したレーザーによる発色が生じることがある。具体的には、装飾部３ａはパターン状に形成されているため、金属薄膜層が存在する位置においては前述のようなレーザー再入射によるレーザーマーキング層２の発色が生じることがある。しかし、金属薄膜層が存在しない位置においてはレーザーが下層に透過し、レーザー最入射によるレーザーマーキング層２の発色が生じることはない。そのため、レーザーマーキング層のうち装飾部３ａの金属薄膜層が存在する位置と存在しない位置において濃度差が生じることがある。

また、レーザーの出力条件によっては同様の構成で図８Ｂに示すように、レーザーマーキング層２で吸収しきれなかったレーザーが透過し、装飾部３ａの金属薄膜層を除去（除去部３ｃ参照）してしまうこともある。

さらに、図８Ｃに示すように、レーザーマーキング層で発生した熱が下層に伝わり、熱伝導率の高い装飾部３ａを伝って周囲を発色させ、意図しない発色部２ｃが生じることがある。

また、図８Ｄに示すように、レーザーマーキング層２で吸収しきれなかったレーザーが透過し、装飾部３ａで吸収され熱が発生し、装飾部３ａの周囲を発色させ、意図しない発色部２ｃが生じることがある。

そこで、本発明では図８Ｅに示す通り、着色層４と装飾層形成層３の間に光透過性耐エネルギー層５を設けることで、レーザー光に起因するエネルギーが装飾部３ａに到達する前に減衰・消失するか、若しくは装飾部３ａの金属薄膜層が存在する位置で反射したレーザーマーキング層２に到達するまでに減衰するため、上述のような濃度斑や意図しない発色を防ぐことができる。

光透過性耐エネルギー層５は、レーザーマーキング層２を通過した光エネルギーを減衰・消失させるもの、またはレーザーマーキング層で発生した熱の伝搬を防ぐもの、または光エネルギーを減衰・消失させると共にレーザーマーキング層で発生した熱の伝搬を防ぐものを用いる。光エネルギーを減衰・消失させる場合は、光透過性耐エネルギー層５を使用するレーザーの波長を吸収・散乱させる材料を用いて形成することができる。赤外域のレーザーを使用する場合は赤外吸収・散乱層を用いることができる。レーザーマーキング層で発生した熱の伝搬を防ぐ場合は耐熱層を用いることができる。
また、光透過性耐エネルギー層は可視光域で透明であり、上部から視認した時に装飾部３ａが見えるようにするため、可視光での透過性を有しているものであればよい。可視光の透過率は波長４２０～７８０ｎｍの範囲内で８０％以上あればよい。
なお、光透過性耐エネルギー層は、典型的には無色透明であるが、下層の装飾部３ａを視認が可能な範囲で着色されていてもよい。具体的には着色透明フィルムを用いることができる。このようにすることで、不正な改竄をされた場合に、着色透明フィルムの色味からも偽造品を判別しやすくすることができる。

光透過性耐エネルギー層は、使用するレーザーの波長を吸収または反射する材料を用いた樹脂材料及び耐熱性の両方またはいずれか一方の材料を用いることができる。
なお、使用するレーザー光の吸収率や耐熱性が低くても一定の厚みとすることで上記のような不具合が出ないようにすることができればよい。
具体的にはポリカーボネート樹脂材料や、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）等のポリエステル系樹脂材料を用いることができる。
厚みとしては２５～５００μｍ程度のものを用いることができる。

また、上述したように、着色層４を透明樹脂基材上に形成する場合、光透過性耐エネルギー層５を着色層４の透明樹脂基材として用いることができる、
また、光透過性耐エネルギー層５は装飾層形成層３と兼ねていてもよい。
具体的には図９に示すように、図３の層構成において、装飾層形成層３を光透過性耐エネルギー層５に用いる材料と同じ材料層で形成し、装飾部３ａを下層側に設けた構成としてもよい。なおこの時、アンテナ３ｂは光透過性耐エネルギー層５兼装飾層形成層３の上面に形成しても下面に形成しても両方に形成してもよい。

個人情報マーキング部２ａを設けたレーザーマーキング層２上に光透過性セキュリティ機能層６を設けることができる。
光透過性セキュリティ機能層６を設けることで上部からの個人情報マーキング部２ａの不正な改変を防ぐことができ、偽造防止効果を高めることができる。
光透過性セキュリティ機能層６は少なくとも個人情報マーキング部２ａを覆うように形成する。
例えば図３に示すようにレーザーマーキング層２全面を覆うように形成してもよいし、図４に示すようにレーザーマーキング層２に形成された個人情報マーキング部２ａ近傍のみを覆うように形成してもよい。
光透過性セキュリティ機能層６は、典型的には光透過性ホログラムを用いることができる。光透過性ホログラムは光透過性の樹脂からなる光透過性ホログラム形成層と光透過性の反射層から形成される。
光透過性ホログラム形成層としてはレリーフ型ホログラムや堆積位相型ホログラムを用いることができる。光透過性ホログラム形成の材料としてはアクリル系樹脂などの樹脂組成物を用いることができる。
光透過性反射層としては、酸化亜鉛、酸化チタンや硫化亜鉛などの金属化合物を用いることができる。
光透過性ホログラム層は粘着層を設け、転写箔やシールとしてレーザーマーキング層上に貼付される。なお、転写箔とした場合は図示しないが転写後に剥離保護層が最上層に配置されるように転写することができ、シールとした場合、シール基材が最上層に配置されるように貼付することができる。また、図４に示すように部分的に光透過性ホログラム層６を設ける場合、前述の剥離保護層、レーザーマーキング層２全体を覆うようにシール基材を形成し、保護層として用いることができる。
また、光透過性ホログラム層は樹脂基材（シート）に直接光透過性ホログラムが形成されたシートを用いて積層してもよい。

なお、光透過性セキュリティ機能層６を設ける場合、レーザーマーキング層２に個人情報マーキング部２ａをマーキングする際に、光透過性ホログラムのうちホログラム構造のある部分とない部分、または構造の異なる部分において、レーザー光の透過、反射、拡散等の状態が変わるため、結果としてレーザーマーキング層２に設けた個人情報マーキング部２ａの濃度が部分的に変化する可能性がある。
しかし、レーザーマーキング層２の個人情報マーキング部２ａを視認する際、この光透過性セキュリティ機能層６を介して視認するため、光透過性セキュリティ機能層６の構造の影響を受けることになる。そのため、前述のレーザーマーキング層２の個人情報マーキング部２ａの濃度差は気にならない。

また、裏面にも光透過性セキュリティ機能層を設けることができる。この場合、レーザーマーキング層２の個人情報マーキング部２ａ、装飾部３ａと重なるように設けることができ、このようにすることで下層からの改変に対するセキュリティが向上する。
裏面に設ける光透過性セキュリティ機能層は、典型的には光透過性セキュリティ機能層６で説明した光透過性ホログラムを用いることができる。

また、本発明では個人識別媒体の裏面に第二レーザーマーキング層７を設けることができる。第二レーザーマーキング層７を設けることで裏面にも個人情報などの印字ができる。
また、表面、裏面の最外層に保護層を設けてもよい。

また、本発明の個人識別媒体１は最表面（最上層及び最下層の両方またはいずれか一方）に保護層を設けることができる。
さらに、本発明では上記説明した以外に、層間や層上に機能層や印刷層を設けてもよい（詳細は後述）。

本発明の個人識別媒体１は各層を積層した後、レーザーマーキング層２に個人情報マーキング部２ａ（及び２ｂ）をレーザーにより印字する。第二レーザーマーキング層７を設ける場合は合わせて第二レーザーマーキング層７に印字を行う。

本発明の個人識別媒体１はＩＤカードやパスポート等、身分証明書に用いることができる。
パスポート等の冊子体として用いる場合、データページ（身分事項ページ）に組み込むことができる。具体的には図１０に示すように個人識別媒体１の層上に、個人識別媒体１よりサイズが大きいヒンジ層（例えば、用紙）１０を配置して個人識別媒体１と一体化し、挿入したヒンジ層１０の個人識別媒体からはみ出た部分において冊子体に糸綴じを行って糸綴じ部１１を形成することで、個人識別媒体１を冊子体に取り付けることができる。

ヒンジ層１０の配置は上記に限定されるものではなく、上記個人識別媒体１の特性を損なわない限り、図１１（ａ）に示すように個人識別媒体１の層間に配置したり、図１１（ｂ）に示すようにヒンジ層１０の一部を個人識別媒体１の層間に配置してもよい。また、図１１（ｃ）に示すように、ヒンジ層１０の一部をインレット層１２または補填層１２で形成し、個人識別媒体１の層間に配置してもよい。図１１（ｄ）に示すように、ヒンジ層１０を個人識別媒体１の外側に超音波や熱を加えるなどにより溶接してもよい。
ヒンジ層の材料としては、ポリエステル樹脂フィルム、熱可塑性ウレタン樹脂フィルム、ナイロン樹脂フィルムなどの樹脂、または、ポリエステルクロス、ナイロンクロスなどがある。
一体化後の厚みの増加を抑えるため、ヒンジ層１０の厚みは２０～２５０μｍであることが好ましい。
（第２実施形態）

図１２に第２実施形態におけるＩＤカードの層構成の概略を示す概略図を示す。本発明の個人識別媒体の一具体例として、図１と同様のＩＤカードとする。
図１２において、個人情報マーキング部としてレーザーマーキングによる顔写真情報氏名、番号等の印字情報と、顔写真情報の下層に重なるように形成されたパターン状金属薄膜層からなる装飾部を備える。
このような構成とすることで裏面から切削により個人情報マーキング部を削除し別の個人情報を設けることができたとしても装飾部も破壊された状態となり、不正な個人情報の改変があったことを確認できる。

図１３，１４に図１２の例の断面図を示す。ここで、第１実施形態と同様の構成については、詳細を省略する。
図１２～１４において、下層側から、第二レーザーマーキング層７、パターニングされた金属薄膜層からなる装飾部１３ａとアンテナ部１３ｂを備えた装飾部形成層（装飾層）１３と、装飾部形成層１３上に透過性耐エネルギー層５、透過性耐エネルギー層５上に着色層４、着色層４上にレーザーマーキング層２を備え、最上層に光透過性ホログラム層６を備える。
そして、着色層４は着色部４ｂと窓部４ａを有し、窓部４ａは装飾部形成層１３に形成された装飾部１３ａが露出するように着色されていない非着色領域として形成される。そしてレーザーマーキング層２には、窓部４ａを介して装飾部１３ａと重なるようにレーザーで印字された顔画像からなる個人情報マーキング部２ａを有する。また、レーザーマーキング層には氏名や番号などを印字した個人情報マーキング部２ｂも備えている。
なお、図１３の例では、光透過性ホログラム層６は個人識別媒体全面を覆うように形成されているが、図１４の例では、光透過性ホログラム層６は顔画像からなる個人情報マーキング部を覆うよう部分的に形成される。

装飾部形成層１３は、パターニングされた金属薄膜層からなる装飾部を形成するための層である。
装飾部形成層１３に用いられる材料としては、ポリカーボネート系基材、ポリエステル系基材、アクリル系基材、塩化ビニル系基材などをあげることができる。具体的にはポリエチレンテレフタレートを好適に用いることができる。装飾部形成層の厚みは１０～３００μｍ程度である。

装飾部１３ａは装飾部形成層１３上に形成されたパターニングされた金属薄膜層からなる（いわゆるエッチングアンテナ。なお、第１実施形態で述べたような金属の巻線であってもよい）。
金属薄膜層の材料としては、アルミニウムや銅などがあげられる。
装飾部１３ａは金属薄膜層のポジパターンまたはネガパターンからなる微細な線画パターンからなることが好ましい。
線画パターンの線幅は０．１～３ｍｍであることが好ましい。
この範囲であれば装飾部を削り取り不正に複製しようとしても複製が困難とすることができる。
線画パターンとしては彩文、細紋、彩紋、文字、数字、記号などの模様があげられる。
なお、装飾部は前述の微細な線画パターンが含まれていれば、他のパターンを組み合わせてもよい。
装飾部１３ａは装飾部形成層１３の一方の面に設けてもよいし、双方の面に設けてもよい。
双方の面に設けるとより不正な複製が困難となるため好ましいものとなる。なお双方の面に設ける場合は一方の面に設けた装飾部と他方の面に設けた装飾部のパターンを変えることが好ましい。このようにすることでより装飾部の構造が複雑になり、不正な複製を困難とすることができる。

パターン状の金属薄膜層は装飾部形成層１３の一方の面または両方の面の全面に形成された金属薄膜層をエッチングによりパターニングして形成することができる。レーザー等によりパターン状に金属薄膜層を除去することにより形成してもよい。
金属薄膜層に用いる材料としては特に限定するものではないが、ＡｌやＣｕ等があげられる。
さらに装飾部１３ａの部分に微細な凹凸を設け、光学的な効果を持たせることもできる。具体的には予め装飾部形成層１３に光学効果を発現するための微細な凹凸構造を形成し、その上にパターン状の金属薄膜層からなる装飾部を形成することができる。また、装飾部形成層１３上にパターン状の金属薄膜層からなる装飾部を形成した後にエンボス加工などで光学効果を発現する微細な凹凸構造を形成することができる。

また、非接触通信機能を有する積層体とする場合は同時にアンテナ１３ｂを形成することができる。この場合アンテナは別途装飾部形成層に設けたＩＣチップまたはＩＣモジュールと接続されている。アンテナとＩＣチップを備えることで非接触通信が可能となる。アンテナは典型的にはコイル状に形成されたされたものを示すが、ダイポールアンテナなどのアンテナであってもよい。
また、アンテナには容量成分を調整するためのコンデンサ部を設けてもよい。また、コンデンサ部は複数設けて容量成分を細かく調整できるようにしてもよい。
また、コイル状のアンテナとし、巻き数を複数とする場合、線を跨ぐ箇所を設ける必要がある。その場合はジャンパー部材を貼り付けるか、アンテナコイルを形成した面とは反対側の面にジャンパー線を設けて接続してもよい。
アンテナ１３ｂを設ける場合、装飾部１３ａはアンテナ１３ｂと同一の面に設けるが、前述のようにアンテナコイルを形成した面とは反対側の面にジャンパー線を設ける場合はアンテナ１３ｂを設けた面とは反対側の面に装飾部１３ａを設けることができる。

図１５Ａに本実施形態の装飾部１３ａの一例を示す。
図１５Ａの上面図及び側面図の例では、装飾部形成層の一方の面に線状のポジパターンで形成された装飾部１３ａとアンテナコイル１３ｂが形成されている。そして、アンテナコイル１３ｂにはコンデンサ１３ｄが設けられており、コンデンサ１３ｄから裏面のジャンパー線１３ｅを経由してアンテナコイルを跨ぎ接続部を介してＩＣチップに接続されている。
図１５Ｂの上面図及び側面図の例では、装飾部形成層の一方の面に面状のパターンに線状のネガパターンで文字や細線が形成された装飾部１３ａとアンテナコイル１３ｂが形成されている。そして、アンテナコイル１３ｂにはコンデンサ１３ｄが設けられており、コンデンサ１３ｄから裏面のジャンパー線１３ｅを経由してアンテナコイルを跨ぎ接続部を介してＩＣチップに接続されている。
図１５Ｃの上面図及び側面図の例では、装飾部形成層の一方の面にアンテナコイル１３ｂが形成されており、他方の面（裏面）に線状のポジパターンで形成された装飾部１３ａが形成されている。そして、アンテナコイル１３ｂにはコンデンサ１３ｄが設けられており、コンデンサ１３ｄから裏面のジャンパー線１３ｅを経由してアンテナコイルを跨ぎ接続部を介してＩＣチップに接続されている。
図１５Ｄの上面図及び側面図の例では、装飾部形成層の一方の面に線状のポジパターンで形成された装飾部１３ａの一部とアンテナコイル１３ｂが形成されており、他方の面（裏面）に線状のポジパターンで形成された装飾部１３ａの一部が形成されており、表裏のパターンを合わせて装飾部１３ａが形成されている。そして、アンテナコイル１３ｂにはコンデンサ１３ｄが設けられており、コンデンサ１３ｄから裏面のジャンパー線１３ｅを経由してアンテナコイルを跨ぎ接続部を介してＩＣチップに接続されている。

第１実施形態と同様に、着色層４をレーザーマーキング層２と装飾部形成層１３の間に設けることができる。
着色層４は、券面のデザインを形成する層として用いることができる。また、下層にアンテナを設ける場合はアンテナを隠蔽することができる。

着色層４には、第１実施形態と同様に、装飾部１３ａと重なる領域は装飾部１３ａを視認可能にするための窓部４ａを有する。窓部４ａを用いることで装飾部形成層に形成された装飾部１３ａとレーザーマーキング層に形成された個人情報マーキング部２ａが層の厚み方向に窓部４ａを介して重なるため、窓部４ａを介して個人情報マーキング部２ａと装飾部１３ａの少なくとも一部に重なって視認できるように表示ができる。そのため、裏面からの改変を困難とすることができる。

また、本実施形態の個人識別媒体においても、第１実施形態と同様のヒンジ層１０を設けることができる。
以上様々な個人識別媒体の構成を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。各層の配置構成及び形態について、これらの組み合わせ及びさらなる変形例が可能である。
以下に、本願の個人識別媒体の変形例を述べる。

（変形例１）
第２実施形態においては、図１２等に示すように、装飾部１３ａとアンテナ部１３ｂは重ならないよう形成されている。
しかし、装飾部３ａとアンテナ部１３ｂの一部が重なるように形成されてもよい。従って、個人情報マーキング部２ａは、窓部４ａを介して装飾部１３ａ及びアンテナ部１３ｂと重なる。
この場合、パターニングされた金属薄膜層では、同一面に装飾部３ａとアンテナ部１３ｂを形成するとショートする場合もあるため、装飾部３ａとアンテナ部１３ｂはそれぞれ異なる面に形成する（図１６参照）。巻線では、装飾部３ａとアンテナ部１３ｂを同様に異なる面か、または同一面に形成することができる（図１７参照）。
このような構成において、裏面から切削により個人情報マーキング部を削除し別のＩＤ情報を設けることができたとしても、装飾部とアンテナ部とも破壊された状態となる。そのため、目視にてアンテナの装飾部とアンテナ部の破壊状態から不正な個人情報の改変があったことを確認できると共に、アンテナ部が断線することにより、非接触通信が不能になったことによっても不正な個人情報の改変があったことを確認できる。そのため、裏面からの改変を困難とすることができる。

（変形例２）
上記実施形態に限らず、パターン状の金属薄膜層は装飾層の両方の面に形成されていてもよい。
例として、図１８（ａ）に、装飾層３の両方の面にパターン状の金属薄膜層を形成する例を示す。装飾層３の表面２３に第１パターン２５、表面とは反対側の裏面２４に第２パターン２６が第１パターンの少なくとも一部と重なるような配置されている（図１８（ｂ）も参照）。
２つのパターンを設けることで、光学効果によりモアレ模様を出すことができる。装飾部の不正な改変があったとしても、一度改変したモアレ模様まで復元することは困難であるため、偽造防止効果を高めることができる。
なお、巻線を用いて装飾層３の両方の面にそれぞれ第１パターン２５、第２パターン２６を配置し、光学効果によりモアレ模様を出してもよい。

（変形例３）
個人識別媒体において、上記実施形態の層構成の他に、同じ層構成を装飾層の表面及び裏面上に複数重ねた構成を有していてもよい。
例えば、図１９に示すように、装飾層３の表面上及び裏面上双方にレーザーマーキング層２、窓部を有する着色層４、及び光透過性ホログラム層６をそれぞれ備えていてもよい。

（変形例４）
各層の形成順は上記実施形態に限定されない。
例えば、図２０に示すように、レーザーマーキング層２と着色層４との間に透過性耐エネルギー層５を設けてもよい。この場合、着色層４は、厚みが大きいと窓部の段差の影響が特性に影響するが、厚みが小さいと装飾部の隠蔽性が劣る。そのため、着色層４の厚みは２０～７５μｍが好ましく、３０～５０μｍがより好ましい。

なお、透過性耐エネルギー層５を、レーザーマーキング層２と着色層４との間に複数設けてもよい。透過性耐エネルギー層５を多層にすることで、上下の基材に接する領域が増え、上下の各層間の密着性が向上させることができる。
また、透過性耐エネルギー層５にも印刷を施すことが可能である。上記のように透過性耐エネルギー層５が多層の場合、印刷領域の一部を各透過性耐エネルギー層に分散させることで層間剥離を抑えることが可能である。すなわち、図２１に示すように、各々の層に印刷デザインの一部を形成し、その領域が重なるようにして基材層３５に積層し、一つの印刷デザイン３６を形成する。

（変形例５）
図２２に示すように、上記層構成において、着色層４の窓部４ａには、窓部４ａによって生じた段差を埋める補填層２８を設けてもよい。補填層２８は、透明または装飾部３ａの視認が可能な範囲で着色されていてもよい。補填層の厚みは、層間の段差を緩和するために、着色層４の厚みの７５％～１２５％程度であることが好ましい。

（変形例６）
図２３に示すように、変形例３，４において、着色層４上に段差吸収層２９を設け、さらに他の着色層３４を配置する構成としてもよい。着色層どうしの間に段差吸収層を挟む構成にすることで、窓部の段差を吸収して着色層を複数形成することができる。
段差吸収層２９は、透明または装飾部３ａの視認が可能な範囲で着色されていてもよい。また、着色層と同様に、段差吸収層２９の厚みは２０～７５μｍが好ましく、３０～５０μｍがより好ましい。

また、段差吸収層２９の段差吸収機能の向上や強度を維持するために、着色層４の窓部の窓径は、着色層３４の窓部の窓径よりも大きいことが好ましい。
本例の場合でも、透過性耐エネルギー層５を、レーザーマーキング層２と着色層３４との間に複数設けてもよい。変形例４で述べたように、透過性耐エネルギー層５に印刷も可能であり多層にすることで、上下の基材に接する領域が増え、各層間の密着性が向上させることができる。

（変形例７）
図示しないが、装飾部は断線検知パターンを兼ねていてもよい。アンテナ用の端子とは別に断線検知用の端子を有するＩＣチップを用いる場合、ＩＣチップの断線検知用端子と接続した断線検知用配線または断線検知用配線の一部を装飾部として用いてもよい。この場合第１実施形態とは異なり、裏面から改変があった際、アンテナは断線しないため通信は可能となるが、断線検知用配線が断線するため、断線したことを非接触通信で確認することができる。

１・・個人識別媒体
２・・・・レーザーマーキング層
２ａ・・・個人情報マーキング部（顔写真情報）
２ｂ・・・個人情報マーキング部（氏名、番号等）
２ｃ・・・意図しない発色部
３・・・・アンテナ形成層（装飾層）
３ａ，１３ａ・・・装飾部
３ｂ・・・非装飾部
３ｄ，１３ｄ・・・コンデンサ部
３ｅ，１３ｅ・・・ジャンパー線
４，３４・・・・着色層
４ａ・・・非着色部（窓部）
４ｂ・・・着色部
５・・・・光透過性耐エネルギー層
６・・・・光透過性セキュリティ機能層
７・・・・第二レーザーマーキング層
８・・・・接着層（中間層）
９・・・・中間層
１０・・・ヒンジ層
１１・・・糸綴じ部
１３・・・装飾部形成層（装飾層）
１３ｂ・・・アンテナ部
２８・・・補填層
２９・・・段差吸収層

Claims (6)

1. 装飾部を備えた装飾層と、
   前記装飾層上に個人情報マーキング部がマーキングされているレーザーマーキング層と、を備え、
   前記レーザーマーキング層に形成された前記個人情報マーキング部が、前記装飾層に形成された前記装飾部の少なくとも一部に重なっており、
   前記装飾層と前記レーザーマーキング層の間に着色層を備え、
   前記着色層は着色部と窓部とを備え、
   前記窓部は前記装飾層に形成された前記装飾部と重なる領域に形成され、
   前記レーザーマーキング層に形成された前記個人情報マーキング部が、前記窓部を介して前記装飾部に重なっており、
   前記着色層と前記装飾層との間に光透過性耐エネルギー層を備える、
   個人識別媒体。
2. 前記装飾層はアンテナを備え、
   前記アンテナは、非装飾部と前記非装飾部に接続された前記装飾部とを備える、
   請求項１に記載の個人識別媒体。
3. 前記個人情報マーキング部が前記着色層の前記窓部と前記着色部に跨って形成されている、請求項１に記載の個人識別媒体。
4. 前記窓部には、補填層が形成されている、請求項１に記載の個人識別媒体。
5. 前記光透過性耐エネルギー層が、赤外吸収・散乱層及び耐熱層の両方またはいずれか一方である、
   請求項１に記載の個人識別媒体。
6. 前記個人情報マーキング部がマーキングされた前記レーザーマーキング層上に光透過性ホログラム層をさらに備え、
   前記光透過性ホログラム層は、少なくとも個人情報マーキング部を覆うように形成されている、請求項１～５のいずれか一項に記載の個人識別媒体。