JP7363937B2 - 重荷重用空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、トラックやバス等の重荷重車両に装着される重荷重用空気入りタイヤに関する。
トラックやバス等の重車両に装着される重荷重用空気入りタイヤは、大きな荷重を支持する必要があるため、特にビード部において損傷が生じやすい。従来、ビード部の耐久性を向上させるために、ビード部に補強層が設けられた重荷重用空気入りタイヤが種々提案されている。
例えば、特許文献1及び特許文献2の重荷重用空気入りタイヤのビード部には、カーカスプライとは別に、ビードコアの周りを断面U字状にのびるスチールコードプライと、前記スチールコードプライのタイヤ軸方向外側でタイヤ半径方向にのびる有機繊維コードプライとが設けられている。このようなビード部の構成によれば、タイヤが荷重を受けて走行する際のビード部の歪が分散され、ひいては、ビード部の耐久性が向上するという効果が期待されている。
特開平11-020421号公報 特開2015-123942号公報
ところで、有機繊維コードプライは、実質的に平行に配列された有機繊維コードと、それを被覆するトッピングゴムとから構成されている。種々の実験の結果、発明者らは、前記有機繊維コードプライの配設密度(いわゆるコードのエンズ)を調整すると、ビード部の耐久性が有意に向上することを知見した。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ビード部の耐久性を向上させ得る重荷重用空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
本発明は、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至る本体部と、前記本体部に連なりかつ前記ビードコアの回りをタイヤ軸方向内側から外側に折返す折返し部とを含むカーカスコードの層からなるカーカスを有する重荷重用空気入りタイヤであって、タイヤ子午線断面において、前記ビード部には、少なくとも一部が前記折返し部のタイヤ半径方向内側からタイヤ半径方向外側に向かって略U字状にのびるスチールコードの層からなる第1補強プライと、少なくとも一部が前記第1補強プライのタイヤ軸方向外側でタイヤ半径方向にのびる少なくとも1枚の有機繊維コードの層からなる第2補強プライとが設けられ、前記第2補強プライは、プライ幅50mmあたりのコード打ち込み本数であるエンズが30~50(本/50mm)とされている。
本発明の他の態様では、前記第2補強プライの前記有機繊維コードは、940/1~1400/1(dtex)のナイロン繊維コードであっても良い。
本発明の他の態様では、前記第2補強プライのエンズが、前記第1補強プライのエンズよりも大きく設定されても良い。
本発明の他の態様では、前記第2補強プライは、前記第1補強プライに隣接する内側第2補強プライと、前記内側第2補強プライのタイヤ軸方向外側に配された外側第2補強プライとを含んでも良い。
本発明の他の態様では、前記内側第2補強プライの前記有機繊維コードは、前記カーカスコードに対して、40~80度の角度(α1)で傾斜しており、前記外側第2補強プライの前記有機繊維コードは、前記カーカスコードに対して、40~80度の角度(α2)で前記内側第2補強プライの前記有機繊維コードとは逆方向に傾斜しても良い。
本発明の他の態様では、前記内側第2補強プライの前記有機繊維コードと前記外側第2補強プライの前記有機繊維コードとの交差角(θ)が80~160度とされても良い。
本発明の他の態様では、前記内側第2補強プライのタイヤ半径方向の外端は、前記外側第2補強プライのタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向内側に位置しても良い。
本発明の他の態様では、前記内側第2補強プライの前記外端と前記外側第2補強プライの前記外端との間のタイヤ半径方向の距離は、8~18mmであっても良い。
本発明の他の態様では、前記内側第2補強プライのタイヤ半径方向の外端は、前記折返し部のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向外側に位置しても良い。
本発明の他の態様では、前記内側第2補強プライの前記外端と前記折返し部の前記外端との間のタイヤ半径方向の距離は、8~18mmであっても良い。
本発明の重荷重用空気入りタイヤのビード部には、タイヤ子午線断面において、略U字状にのびるスチールコードの層からなる第1補強プライと、少なくとも一部が前記第1補強プライのタイヤ軸方向外側でタイヤ半径方向にのびる少なくとも1枚の有機繊維コードの層からなる第2補強プライとが設けられている。このようなビード部の補強構造によれば、タイヤ走行時のビード部の歪が分散され、ビード部の耐久性が向上する。
また、第2補強プライは、プライ幅50mmあたりのコード打ち込み本数であるエンズが30~50(本/50mm)に調整されているので、第2補強プライによるビード部の拘束力を最適化され、ひいては、ビード部の耐久性がさらに向上する。
本発明の一実施形態の重荷重用空気入りタイヤの断面図である。 図1のビード部の側面図である。 図1のビード部の要部拡大図である。 図2の要部拡大図である。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態における回転軸を含むタイヤ子午線断面図が示されている。
「正規状態」とは、タイヤが正規リムRにリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、タイヤの各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るトロイド状のカーカス6を有している。カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aから形成されている。
カーカスプライ6Aは、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至っている。折返し部6bは、本体部6aに連なり、ビードコア5の回りをタイヤ軸方向内側から外側に折返されており、タイヤ半径方向外側に外端9を有している。カーカスプライ6Aの本体部6aのビードベースラインBLを基準とした高さH1は、タイヤ赤道C付近で、最大となっている。
図2には、ビード部4の側面図が示されており、そこでは、内部構造が理解できるように、主要なゴム部分が剥がされている。図2に示されるように、カーカスプライ6Aは、好ましくは、カーカスコードc1がタイヤ放射方向(ラジアル方向)に対して0~20度の角度で傾けられており、本実施形態では本質的に0度で配列されている。なお、前記「本質的」とは、タイヤ1が、ゴムの加硫成形品であること、及び、スチールコードが完全な直線でないことに鑑み、多少の誤差が生じることを考慮したものである。
また、カーカスコードc1は、タイヤ強度を確保するために、スチールコードで構成されている。さらに、タイヤの基本的な強度を得るために、カーカスプライ6Aにおいて、カーカスコードc1の配設密度、即ち、プライ幅50mmあたりのコード打ち込み本数であるエンズは、26~40(本/50mm)程度が望ましい。このようなカーカスプライ6Aを有するタイヤ1は、転がり抵抗が小さく、車両の低燃費に貢献し得る。
図1に示されるように、カーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部には、ベルト層7が配されている。ベルト層7は、例えば、スチールコードを用いた複数のベルトプライを重ねて構成されている。本実施形態のベルト層7は、例えば、第1~第4のベルトプライ7A~7Dで形成されているが、このような態様に限定されるものではない。
ビード部4には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側に向かって先細状にのびるビードエーペックスゴム8と、ビード部4を補強するためのスチールコードの層からなる第1補強プライ10と、ビード部4を補強するための有機繊維コードの層からなる第2補強プライ11と、正規リムRのリムシート面R1に接するチェーファーゴム12とが設けられている。
図3には、図1のビード部4の拡大図が示されている。図3に示されるように、ビードコア5は、例えば、スチール製のビードワイヤを多列多段に巻回した多角形状の断面形状を有している。本実施形態のビードコア5は、例えば、略六角形状の断面形状を有している。ビードコア5は、タイヤ半径方向外側でタイヤ軸方向にのびる外側面5aと、タイヤ半径方向内側でタイヤ軸方向にのびる内側面5bとを含んでいる。
正規状態と、この正規状態に正規荷重を負荷してキャンバー角0度で接地させた規格荷重負荷状態とにおいて、ビードコア5の内側面5bと正規リムRのリムシート面R1とのなす角度βは、0度±3度であるのが望ましい。このようなビードコア5を有するタイヤ1は、走行中のビードコア5のローテーションが抑制され、ビード部4でのカーカスプライ6Aの引張力が小さくなり、その結果、ビード耐久性が向上する。
ここで、前記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" とする。
タイヤ1が正規リムR(15度テーパリム)に装着されるチューブレスタイプの場合、上述のようなタイヤ1は、例えば、特定形状のビードコアを用いることで製造できる。このようなビードコアとしては、例えば、タイヤに組み込む前の状態において、内側面5bが、タイヤ軸方向外側に向かって内径が大となる向きの傾斜で、かつ、タイヤ軸方向に対して約20度の角度を有する。なお、15度テーパリムとは、リムシート面R1がタイヤ軸方向内側から外側に向かってタイヤ半径方向外側に略15度の角度で傾斜するリムである。
ビードコア5は、例えば、ビードワイヤで構成されたコア本体5Aを有する。コア本体5Aの周囲には、例えば、コア本体5Aを覆うラッピング層5Bが設けられるのが望ましい。ラッピング層5Bは、例えば、ナイロン等の有機繊維のキャンパス布で構成され、ビードワイヤを束ねて固定している。
本実施形態のビードエーペックスゴム8は、例えば、内エーペックス8Aと、内エーペックス8Aのタイヤ半径方向外側に配された外エーペックス8Bとを含んでいる。
内エーペックス8Aは、例えば、カーカスプライ6Aの本体部6aと折返し部6bとの間をビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびる略三角形状の断面形状を有している。内エーペックス8Aのタイヤ半径方向の外端13は、例えば、カーカスプライ6Aの本体部6aのタイヤ軸方向外側面上に位置している。内エーペックス8Aの外端13は、例えば、折返し部6bの外端9よりもタイヤ半径方向外側に位置しているのが望ましい。内エーペックス8Aの複素弾性率E*1は、好ましくは、40~65MPaに設定される。
本明細書において、タイヤを構成するゴム材料の複素弾性率は、粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%及び動歪2%の条件下で測定された値である。
外エーペックス8Bは、例えば、内エーペックス8Aの外端13から折返し部6bに向かって半径方向内方にのびる境界面14を介して、内エーペックス8Aに連なっている。外エーペックス8Bの複素弾性率E*2は、好ましくは、内エーペックス8Aの複素弾性率E*1よりも小さいことが望ましい。とりわけ、外エーペックス8Bの複素弾性率E*2は、例えば、3~5MPaであるのが望ましい。
以上のように構成されたビードエーペックスゴム8は、ビード部4の変形に際して十分な曲げ剛性を確保しつつ、低弾性の外エーペックス8Bにおいて、カーカスプライ6Aの折返し部6bに作用する剪断応力を緩和でき、セパレーション等の損傷を効果的に防止することができる。
第1補強プライ10は、少なくとも1枚、本実施形態では1枚で形成されている。第1補強プライ10は、ビード部4の曲げ剛性を高め、ひいてはビードコア5を支点としたビード部4のタイヤ軸方向外側への大きな曲げ変形を効果的に抑制することができる。これは、ビード部の歪を低減するのに役立つ。
第1補強プライ10は、タイヤ子午線断面において、少なくとも一部が折返し部6bのタイヤ半径方向内側からタイヤ半径方向外側に向かって略U字状にのびている。本実施形態の第1補強プライ10は、例えば、少なくとも一部が本体部6a及び折返し部6bと接している。このような第1補強プライ10は、ビード部4のタイヤ軸方向外側の剛性を過度に高めず、乗り心地を高めるのに効果的である。但し、第1補強プライ10の配置は、このような態様に限定されるものではない。
第1補強プライ10のタイヤ軸方向の外端15は、例えば、折返し部6bの外端9よりも、距離L1だけタイヤ半径方向内側に位置している。これにより、第1補強プライ10の外端15付近に歪みが集中することが抑制される。従って、この外端15を起点としたセパレーション等の損傷が抑制され得る。
上述の距離L1は、例えば、8~18mmであるのが望ましい。前記距離L1が8mmよりも小さい場合、第1補強プライ10の外端15での剛性差が大きくなり、その外端15を起点としたセパレーション等の損傷が生じるおそれがある。前記距離L1が18mmよりも大きい場合、ビード部4の曲げ剛性を効果的に高めることができないおそれがある。
第1補強プライ10のタイヤ軸方向の内端16は、例えば、内エーペックス8Aの外端13よりもタイヤ半径方向内側に位置している。さらに望ましい態様として、第1補強プライ10の内端16は、第1補強プライ10の外端15よりもタイヤ半径方向内側に位置している。このような態様では、第1補強プライ10の形状に沿って測定される長さを、比較的小さくすることができ、タイヤの軽量化とビード部4の補強効果との両立が可能である。
図2に示されるように、第1補強プライ10は、好ましくは、複数のスチールコードc2がカーカスコードc1に対して傾けて配されている。タイヤ走行中に生じるビード部4の曲げ変形時、第1補強プライ10は、スチールコードc2の角度γが大きくなるように弾性変形し、ビード部4の曲げ変形を抑制する。好ましい態様では、第1補強プライ10のスチールコードc2は、カーカスコードc1に対して、30~70度の角度γで傾斜配列される。
好ましい態様では、第1補強プライ10のスチールコードc2の配設密度、即ち、プライ幅50mmあたりのコード打ち込み本数であるエンズが20~40(本/50mm)とされる。特に好ましくは、第1補強プライ10のエンズは、カーカスプライ6Aのエンズよりも小さいのが望ましい。なお、エンズを特定する際のプライ幅は、コードの長手方向と直交する方向に測定される。
図2及び図3に示されるように、第2補強プライ11は、第1補強プライ10のタイヤ軸方向外側でタイヤ半径方向にのびている。本実施形態の第2補強プライ11は、例えば、第1補強プライ10に隣接する内側第2補強プライ11Aと、内側第2補強プライ11Aのタイヤ軸方向外側に配された外側第2補強プライ11Bとの2枚を含んでいる。内側第2補強プライ11A及び外側第2補強プライ11Bは、互いに重ねられている。本発明の他の態様では、第2補強プライ11は、1枚で構成されても良い。
内側第2補強プライ11A及び外側第2補強プライ11Bのそれぞれは、図2に示されるように、平行に配列された有機繊維コードc3、c4と、それを被覆するトッピングゴムgとで構成されている。本実施形態において、内側第2補強プライ11A及び外側第2補強プライ11Bのそれぞれは、プライ幅50mmあたりのコード打ち込み本数であるエンズが30~50(本/50mm)とされている。
発明者らの種々の実験の結果、内側第2補強プライ11A及び外側第2補強プライ11Bのそれぞれのエンズを30~50(本/50mm)に設定した場合、ビード部4の耐久性が有意に向上することが判明している。即ち、前記エンズが30(本/50mm)未満の場合、第2補強プライ11によるビード部4の拘束力が著しく低下するため、タイヤ走行時のビード部4の歪を十分に分散乃至低減することは困難である。一方、前記エンズが50(本/50mm)を超える場合、第2補強プライ11によるビード部の拘束力は高められる。しかしながら、第2補強プライ11のエンズを大きくした場合、意外にも、タイヤ走行時に第2補強プライ11のタイヤ半径方向の外端(即ち、本実施形態では、内側第2補強プライ11A及び外側第2補強プライ11Bの各外端17及び19)に歪が集中する傾向があり、ひいては、前記外端17又は19が新たな損傷の起点になる傾向がある。特に好ましい態様では、前記エンズは、40~50(本/50mm)とされる。
第2補強プライ11の有機繊維コードc3、c4は、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロン繊維コード、ポリエステル繊維コード、芳香族ポリアミド繊維コード、又は、高張力ビニロン繊維コード等が好適に用いられる。このような有機繊維コードプライは、スチールコードプライよりも柔軟性が高く、かつ、ゴム部材との密着性にも優れる。
本実施形態では、第2補強プライ11の有機繊維コードc3、c4として、ナイロン繊維コードが好適に用いられている。とりわけ、第2補強プライ11のエンズが30~50(本/50mm)とされる場合、ナイロン繊維コードは、例えば、940/1~1400/1(dtex)の繊度を有するのが好ましい。ナイロン繊維コードが940/1(dtex)よりも細くなると、ビード部4の歪を分散させる効果が十分に得られないおそれがある。逆に、ナイロン繊維コードが1400/1(dtex)よりも太くなると、第2補強プライ11の外端付近において、新たな損傷の起点が生成されるおそれがある。
以上のように構成された本実施形態の第2補強プライ11は、ビード部4に新たな損傷の起点を生成することなく、ビード部4の歪を効果的に低減乃至分散させ、ひいては、ビード部4の耐久性を大幅に向上させる。このような作用効果をさらに高めるために、第2補強プライ11のエンズは、第1補強プライ10のエンズよりも大きいことが望ましい。
また、第2補強プライ11は、例えば、正規リムRのリムフランジ近傍のビード部4の温度が高くなったとしても、リムシート面R1に接するチェーファーゴム12が、熱の影響等により軟化してリムフランジ上に流れ、その後、硬化するのを抑制するのに役立つ。このため、ビード部4は、ゴムの硬化を起因とする損傷が低減され得る。
第2補強プライ11は、第1補強プライ10の外端15をタイヤ軸方向外側から覆っている。本実施形態のように2枚の第2補強プライ11A及び11Bは、第1補強プライ10よりも伸びやすくかつゴムに対する優れた接着強度を有している。従って、第1補強プライ10の外端15での応力は緩和され、そこでのセパレーションが長期にわたって抑制され得る。
本実施形態において、内側第2補強プライ11Aのタイヤ半径方向の外端17は、折返し部6bの外端9よりも、距離L2だけタイヤ半径方向外側に位置している。これにより、内側第2補強プライ11Aは、折返し部6bの外端9を覆っている。従って、第2補強プライ11は、カーカスプライ6Aの折返し部6bに作用する剪断応力を緩和でき、剪断応力に伴う歪みを低減させることができる。また、第2補強プライ11は、折返し部6bの外端9を起点としたセパレーションをも効果的に抑制し得る。
前記距離L2は、例えば、8~18mmであるのが望ましい。前記距離L2が8mmよりも小さい場合、カーカスプライ6Aの外端9での剛性差が大きくなり、外端9を起点としたセパレーション等の損傷が起こるおそれがある。距離L2が18mmよりも大きいと、タイヤ走行時に、内側第2補強プライ11Aが動き易くなり、内側第2補強プライ11Aの外端17を起点としたセパレーション等の損傷が生じるおそれがある。
内側第2補強プライ11Aの外端17と折返し部6bの外端9との距離L2は、折返し部6bの外端9と第1補強プライ10の外端15との距離L1に略等しいことが望ましい。これにより、ビード部4は、応力が一様に分散され、耐久性がさらに向上する。
内側第2補強プライ11Aのタイヤ半径方向の内端18は、第1補強プライ10の外端15及び内端16よりもタイヤ半径方向内側に位置している。内側第2補強プライ11Aの内端18は、後述する外側第2補強プライ11Bの内端20よりもタイヤ軸方向内側に位置しているのが望ましい。これにより、内側第2補強プライ11Aの内端18付近に歪みが集中することが抑制される。従って、内側第2補強プライ11Aの内端18を起点としたセパレーション等の損傷が抑制され得る。
外側第2補強プライ11Bのタイヤ半径方向の外端19は、例えば、内側第2補強プライ11Aの外端17よりも、距離L3だけタイヤ半径方向外側に位置している。これにより、外側第2補強プライ11Bは、カーカスプライ6Aの引張力の影響を受け易い内側第2補強プライ11Aの外端17を覆っている。従って、内側第2補強プライ11Aの外端17を起点としたセパレーションが効果的に抑制される。
前記距離L3は、例えば、8~18mmであるのが望ましい。前記距離L3が8mmよりも小さい場合、内側第2補強プライ11Aの外端17での剛性差が大きくなり、内側第2補強プライ11Aの外端17を起点としたセパレーション等の損傷が生じるおそれがある。距離L3が18mmよりも大きい場合、タイヤ走行時、外側第2補強プライ11Bが動き易くなり、外側第2補強プライ11Bの外端19を起点としたセパレーション等の損傷が生じるおそれがある。
外側第2補強プライ11Bの外端19と内側第2補強プライ11Aの外端17との距離L3は、内側第2補強プライ11Aの外端17と折返し部6bの外端9との距離L2に略等しいことが望ましい。このようなビード部4は、応力が一様に分散され、耐久性がさらに向上する。
ビードベースラインBLから外側第2補強プライ11Bの外端19までのタイヤ半径方向の高さH2は、例えば、ビードベースラインBLを基準としたカーカスプライ6Aの最大の高さH1の25%~40%であるのが望ましい。前記外端19の高さH2がカーカスプライ6Aの最大の高さH1の25%よりも小さい場合、チェーファーゴム12が正規リムRのリムフランジ上に流れ、硬化するのを抑制する効果が小さくなるおそれがある。外端19の高さH2がカーカスプライ6Aの最大の高さH1の40%よりも大きいと、外側第2補強プライ11Bが動き易くなり、外側第2補強プライ11Bの外端19を起点としたセパレーション等の損傷が生じるおそれがある。
本実施形態の外側第2補強プライ11Bのタイヤ半径方向の内端20は、ビードコア5のタイヤ半径方向内側の内側領域S1内に位置している。このような外側第2補強プライ11Bは、カーカスプライ6Aに引張力が生じた場合でも、大きく動くことなく、カーカスプライ6Aの引張力を効果的に抑制し得る。このため、タイヤ1は、カーカスプライ6Aの引張力に伴う歪みが抑制され、歪みが原因の割れ等の損傷が抑制される。その結果、ビード部4の耐久性はさらに向上する。
外側第2補強プライ11Bの内端20と内側第2補強プライ11Aの内端18との距離L4は、外側第2補強プライ11Bの外端19と内側第2補強プライ11Aの外端17との距離L3に略等しいことが望ましい。すなわち、外側第2補強プライ11Bと内側第2補強プライ11Aとは、その形状に沿って測定される長さが略同一であるのが望ましい。これにより、外側第2補強プライ11Bと内側第2補強プライ11Aとは、例えば、同一のプライを用いることができる。これは、部品の共用化を促進し、製造コストを削減するのに役立つ。
図2に示されるように、内側第2補強プライ11Aの各有機繊維コードc3は、カーカスコードc1に対して40~80度、より好ましくは50~70度の角度α1で第1方向に傾斜しているのが望ましい。このような内側第2補強プライ11Aは、カーカスプライ6Aの引張力を効果的に抑制し得る。
外側第2補強プライ11Bの各有機繊維コードc4も、カーカスコードc1に対して40~80度、より好ましくは50~70度の角度α2で傾斜配列されているのが望ましい。特に好ましい態様では、外側第2補強プライ11Bの有機繊維コードc4は、内側第2補強プライ11Aの有機繊維コードc3とは逆方向に傾斜している。このような外側第2補強プライ11Bは、カーカスプライ6Aの引張力を効果的に抑制し得る。
内側第2補強プライ11Aの有機繊維コードc3の角度α1と外側第2補強プライ11Bの有機繊維コードc4の角度α2とは、実質的に等しいのが望ましい。このような内側第2補強プライ11A及び外側第2補強プライ11Bは、ビード部4の曲げ変形時の歪をより効果的に分散させてビード部の耐久性を向上させる。
特に好ましい態様では、図4に拡大して示されるように、内側第2補強プライ11Aの有機繊維コードc3と、外側第2補強プライ11Bの有機繊維コードc4との交差角θは、80~160度が望ましい。前記交差角θが160度を超える場合、カーカスプライ6Aに対して、第2補強プライ11の曲げ剛性が著しく低くなり、ひいては、カーカスプライ6Aの折返し部6bの外端9に歪が集中しやすく、プライターンナップルースといった損傷を招きやすくなる。
上述の内側第2補強プライ11A及び外側第2補強プライ11Bは、例えば、製造時に同一のプライの表裏を反転させて用いることで容易に行い得る。これにより、内側第2補強プライ11Aと外側第2補強プライ11Bとは、部品を共用化することができ、タイヤ1の製造コストを削減することができる。
チェーファーゴム12は、第2補強プライ11のタイヤ軸方向外側に位置し、ビードコア5のタイヤ半径方向内側で正規リムRのリムシート面R1に接している。チェーファーゴム12のタイヤ半径方向の外端21は、例えば、外側第2補強プライ11Bの外端19よりもタイヤ半径方向外側に位置している。
チェーファーゴム12のビードコア5のタイヤ軸方向外側位置での最小厚さt1は、好ましくは、2.5~6.0mmである。最小厚さt1が2.5mmよりも小さいと、チェーファーゴム12が硬化し、割れ等の損傷が起きるおそれがある。最小厚さt1が6.0mmよりも大きいと、チェーファーゴム12が正規リムRのリムフランジ上に流れ、タイヤ表面に歪みが生じるおそれがある。
チェーファーゴム12の複素弾性率E*3は、好ましくは、7~14MPa、より好ましくは、9~13MPaに設定される。複素弾性率E*3が7MPaよりも小さいと、チェーファーゴム12が正規リムRのリムフランジ上に流れ、タイヤ表面に歪みが生じるおそれがある。複素弾性率E*3が14MPaよりも大きいと、チェーファーゴム12が硬化し、割れ等の損傷が起きるおそれがある。
以上、本発明の一実施形態の重荷重用空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得るのは言うまでもない。
図1の基本構造を有するサイズ295/80R22.5の重荷重用空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、それらのビード耐久性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様及びテスト方法は、以下の通りである。
<カーカス>
カーカスコードの仕様:スチールコード
カーカスコードの角度:0度(タイヤ放射方向に対して)
カーカスコードのエンズ:20(本/50mm)
<第1補強プライ>
プライ数:1
第1補強プライの仕様:スチールコード
第1補強プライのスチールコードの角度:65度(カーカスコードに対して)
第1補強プライのスチールコードのエンズ:28(本/50mm)
距離L1:13mm
<第2補強プライ>
プライ数:2
第2補強プライの仕様:ナイロン繊維コード1400/1(dtex)
距離L2:13mm
距離L3:13mm
H2/H1=30%
<ビード耐久性テスト>
上記テストタイヤを22.5×9.00のリムに装着し、内圧850kPa及び規格荷重の200%の条件下で、ドラム試験機上を速度20km/hで走行させ、ビード部に損傷が発生するまでの走行時間が測定された。結果は、比較例1の値を100とする指数で表示されており、数値が大きい程、ビード部の耐久性が優れていることを示す。
テスト結果が表1に示される。
Figure 0007363937000001
テストの結果、実施例のタイヤは、ビード部の耐久性が有意に向上していることが確認できた。
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
6A カーカスプライ
6a 本体部
6b 折返し部
10 第1補強プライ
11 第2補強プライ
11A 内側第2補強プライ
11B 外側第2補強プライ
c1 カーカスコード
c2 スチールコード
c3、c4 有機繊維コード

Claims (5)

  1. トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至る本体部と、前記本体部に連なりかつ前記ビードコアの回りをタイヤ軸方向内側から外側に折返す折返し部とを含むカーカスコードの層からなるカーカスを有する重荷重用空気入りタイヤであって、
    タイヤ子午線断面において、前記ビード部には、
    少なくとも一部が前記折返し部のタイヤ半径方向内側からタイヤ半径方向外側に向かって略U字状にのびるスチールコードの層からなる第1補強プライと、
    少なくとも一部が前記第1補強プライのタイヤ軸方向外側でタイヤ半径方向にのびる少なくとも1枚の有機繊維コードの層からなる第2補強プライとが設けられ、
    前記第2補強プライは、プライ幅50mmあたりのコード打ち込み本数であるエンズが30~50(本/50mm)であり、
    前記第2補強プライの前記有機繊維コードは、940/1~1400/1(dtex)のナイロン繊維コードであり、
    前記第2補強プライは、前記第1補強プライに隣接する内側第2補強プライと、前記内側第2補強プライのタイヤ軸方向外側に配された外側第2補強プライとを含み、
    前記内側第2補強プライの前記有機繊維コードは、前記カーカスコードに対して、40~80度の角度(α1)で傾斜しており、
    前記外側第2補強プライの前記有機繊維コードは、前記カーカスコードに対して、40~80度の角度(α2)で前記内側第2補強プライの前記有機繊維コードとは逆方向に傾斜しており、
    前記内側第2補強プライのタイヤ半径方向の外端は、前記外側第2補強プライのタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向内側に位置し、
    前記内側第2補強プライの前記外端と前記外側第2補強プライの前記外端との間のタイヤ半径方向の距離は、8~18mmであり、
    前記ビードコアは、タイヤ半径方向内側でタイヤ軸方向にのびる内側面を含み、
    タイヤが正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である正規状態と、この正規状態に正規荷重を負荷してキャンバー角0度で接地させた規格荷重負荷状態とにおいて、前記ビードコアの前記内側面と前記正規リムのリムシート面とのなす角度は、0度±3度である、
    重荷重用空気入りタイヤ。
  2. 前記第2補強プライのエンズが、前記第1補強プライのエンズよりも大きい請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
  3. 前記内側第2補強プライの前記有機繊維コードと前記外側第2補強プライの前記有機繊維コードとの交差角(θ)が80~160度である請求項1又は2記載の重荷重用空気入りタイヤ。
  4. 前記内側第2補強プライのタイヤ半径方向の外端は、前記折返し部のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向外側に位置する請求項1ないし3のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
  5. 前記内側第2補強プライの前記外端と前記折返し部の前記外端との間のタイヤ半径方向の距離は、8~18mmである請求項4記載の重荷重用空気入りタイヤ。
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