以下、本発明の異常検出方法、圧電モーターおよびロボットを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧電モーターを示す平面図である。図2は、圧電アクチュエーターを示す平面図である。図3は、図2中のA-A線断面図である。図4は、図2中のB-B線断面図である。図5は、図2中のC-C線断面図である。図6は、図2中のD-D線断面図である。図7は、駆動信号および検出信号を示す図である。図8および図9は、それぞれ、圧電モーターの駆動状態を示す平面図である。図10は、制御装置を示すブロック図である。図11は、駆動信号の周波数と検出信号の電圧値との関係を示すグラフである。図12は、異常検出方法を説明するためのフローチャートである。
なお、以下では、説明の便宜上、図1~図6、図8、図9の各図において、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸を図示する。また、以下では、X軸に沿う方向をX軸方向、Y軸に沿う方向をY軸方向、Z軸に沿う方向をZ軸方向とも言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。また、X軸方向プラス側を「上」または「上側」とも言い、X軸方向マイナス側を「下」または「下側」とも言う。
図1に示す圧電モーター1は、円盤状をなしその中心軸Oまわりに回転可能な被駆動体としてのローター2と、ローター2の外周面21に当接し、ローター2を中心軸Oまわりに回転させる駆動部3と、ローター2の位置を検出する位置検出装置としてのエンコーダー9と、を有する。また、駆動部3は、圧電アクチュエーター4と、圧電アクチュエーター4をローター2に向けて付勢する付勢部材5と、圧電アクチュエーター4の駆動を制御する制御装置7と、を有する。このような圧電モーター1では、圧電アクチュエーター4が屈曲振動すると、その振動がローター2に伝わり、ローター2が中心軸Oまわりに回転する。
なお、圧電モーター1の構成としては、図1の構成に限定されない。例えば、後述する第2実施形態でも説明するように、ローター2の周方向に沿って複数の圧電アクチュエーター4を配置し、複数の圧電アクチュエーター4の駆動によってローター2を回転させてもよい。また、駆動部3は、ローター2の外周面21ではなく、ローター2の主面22に当接していてもよい。また、被駆動体は、ローター2のような回転体に限定されず、例えば、直線移動するスライダーであってもよい。
また、ローター2にはエンコーダー9が設けられており、エンコーダー9によって、ローター2の挙動、特に、回転量および駆動速度(角速度)を検出することができる。エンコーダー9としては、特に限定されず、例えば、ローター2の回転時にその回転量を検出するインクリメンタル型のエンコーダーであってもよいし、ローター2の回転の有無に関わらず、ローター2の原点からの絶対位置を検出するアブソリュート型のエンコーダーであってもよい。
本実施形態のエンコーダー9は、ローター2の上面に固定されたスケール91と、スケール91の上側に設けられた光学素子92と、を有する。また、スケール91は、円板状をなし、その上面に図示しないパターンが設けられている。一方、光学素子92は、スケール91のパターンに向けて光を照射する発光素子921と、スケール91のパターンを撮像する撮像素子922と、を有する。このような構成のエンコーダー9では、撮像素子922により取得されるパターンの画像をテンプレートマッチングすることにより、ローター2の回転量、駆動速度、絶対位置等を検出することができる。ただし、エンコーダー9の構成としては、上記の構成に限定されない。例えば、撮像素子922に代えて、スケール91からの反射光または透過光を受光する受光素子を備えた構成であってもよい。
図2に示すように、圧電アクチュエーター4は、振動体41と、振動体41を支持している支持部42と、振動体41と支持部42とを接続している接続部43と、振動体41に接続され、振動体41の振動をローター2に伝達する凸部44と、を有する。
振動体41は、X軸方向を厚さ方向とし、Y軸およびZ軸を含むY-Z平面に広がる板状をなし、Y軸方向に伸縮しながらZ軸方向に屈曲することによりS字状に屈曲振動する。また、振動体41は、X軸方向からの平面視で、伸縮方向であるY軸方向を長手とする長手形状となっている。ただし、振動体41の形状としては、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。
また、図2に示すように、振動体41は、振動体41を屈曲振動させるための駆動用の圧電素子6A~6Eと、振動体41の振動を検出するための検出用の圧電素子6F、6Gと、を有する。
圧電素子6Cは、振動体41の中央部において、振動体41の長手方向であるY軸方向に沿って配置されている。この圧電素子6Cに対して振動体41のZ軸方向プラス側には圧電素子6A、6Bが振動体41の長手方向に並んで配置され、Z軸方向マイナス側には圧電素子6D、6Eが振動体41の長手方向に並んで配置されている。また、これら圧電素子6A~6Eは、それぞれ、通電によって振動体41の長手方向であるY軸方向に伸縮する。また、圧電素子6A、6Eが互いに電気的に接続されており、圧電素子6B、6Dが互いに電気的に接続されている。
後述するように、圧電素子6Cと、圧電素子6A、6Eと、圧電素子6B、6Dと、にそれぞれ位相の異なる同周波数の駆動信号V1、V2、V3を印加し、これらの伸縮タイミングをずらすことにより、振動体41をその面内においてS字状に屈曲振動させることができる。
圧電素子6Fは、圧電素子6CのY軸方向プラス側に位置し、圧電素子6Gは、圧電素子6CのY軸方向マイナス側に位置している。また、圧電素子6F、6Gは、互いに電気的に接続されている。これら圧電素子6F、6Gは、圧電素子6A~6Eの駆動に伴う振動体41の振動に応じた外力を受け、受けた外力に応じた信号を出力する。そのため、圧電素子6F、6Gから出力される信号に基づいて、振動体41の振動状態を検知することができる。
また、接続部43は、振動体41の屈曲振動の節となる部分、具体的にはY軸方向の中央部と支持部42とを接続している。また、接続部43は、振動体41に対してZ軸方向マイナス側に位置する第1接続部431と、Z軸方向プラス側に位置する第2接続部432と、を有する。ただし、接続部43の構成は、特に限定されない。
以上のような振動体41、支持部42および接続部43は、図3から図6に示すように、2つの圧電素子ユニット60を互いに向かい合わせて貼り合せた構成となっている。各圧電素子ユニット60は、基板61と、基板61上に配置された駆動用の圧電素子60A、60B、60C、60D、60Eおよび検出用の圧電素子60F、60Gと、各圧電素子60A~60Gを覆う保護層63と、を有する。
圧電素子60A~60Gは、それぞれ、基板61上に配置された第1電極601と、第1電極601上に配置された圧電体602と、圧電体602上に配置された第2電極603と、を有する。第1電極601は、圧電素子60A~60Gに共通して設けられている。一方、圧電体602および第2電極603は、それぞれ、圧電素子60A~60Gに個別に設けられている。
2つの圧電素子ユニット60は、圧電素子60A~60Gが配置されている側の面を対向させた状態で接着剤69を介して接合されている。また、各圧電素子ユニット60の第1電極601同士が図示しない配線等を介して電気的に接続されている。また、各圧電素子ユニット60の圧電素子60Aが有する第2電極603同士が図示しない配線等を介して電気的に接続されており、これら2つの圧電素子60Aから圧電素子6Aが構成されている。他の圧電素子60B~60Gについても同様であり、2つの圧電素子60Bから圧電素子6Bが構成され、2つの圧電素子60Cから圧電素子6Cが構成され、2つの圧電素子60Dから圧電素子6Dが構成され、2つの圧電素子60Eから圧電素子6Eが構成され、2つの圧電素子60Fから圧電素子6Fが構成され、2つの圧電素子60Gから圧電素子6Gが構成されている。
圧電体602の構成材料としては、特に限定されず、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)、メタニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電セラミックスを用いることができる。また、圧電体602としては、上述した圧電セラミックスの他にも、ポリフッ化ビニリデン、水晶等を用いてもよい。
また、圧電体602の形成方法としては、特に限定されず、バルク材料から形成してもよいし、ゾル-ゲル法やスパッタリング法を用いて形成してもよい。本実施形態では、圧電体602をゾル-ゲル法を用いて形成している。これにより、例えば、バルク材料から形成する場合と比べて薄い圧電体602が得られ、駆動部3の薄型化を図ることができる。
凸部44は、振動体41の先端部に設けられ、振動体41からY軸方向プラス側へ突出している。そして、凸部44の先端部は、ローター2の外周面21と接触している。そのため、振動体41の振動は、凸部44を介してローター2に伝達される。
例えば、図7に示す駆動信号V1を圧電素子6A、6Eに印加し、駆動信号V2を圧電素子6Cに印加し、駆動信号V3を圧電素子6B、6Dに印加すると、図8に示すように、振動体41がY軸方向に伸縮振動しつつZ軸方向にS字状に屈曲振動し、これらの振動が合成されて、凸部44の先端が矢印A1で示すように反時計回りに楕円軌道を描く楕円運動(回転運動)する。このような凸部44の楕円運動によってローター2が送り出され、ローター2が矢印B1で示すように時計回りに回転する。また、このような振動体41の振動に対応して、圧電素子6F、6Gから検出信号Vpuが出力される。
また、駆動信号V1、V3を切り換えると、すなわち駆動信号V1を圧電素子6B、6Dに印加し、駆動信号V2を圧電素子6Cに印加し、駆動信号V3を圧電素子6A、6Eに印加すると、図9に示すように、振動体41がY軸方向に伸縮振動しつつZ軸方向にS字状に屈曲振動し、これらの振動が合成されて、凸部44が矢印A2で示すように時計回りに楕円運動する。このような凸部44の楕円運動によってローター2が送り出され、ローター2が矢印B2で示すように反時計回りに回転する。また、このような振動体41の振動に対応して、圧電素子6F、6Gから検出信号Vpuが出力される。
上述のように、圧電素子6A、6B、6D、6Eの伸縮によって凸部44がZ軸方向に屈曲振動し、ローター2を矢印B1または矢印B2の方向に送り出す。そのため、圧電素子6A、6B、6D、6Eに印加する駆動信号V1、V3の振幅を制御し、凸部44のZ軸方向への振幅を制御することによりローター2の駆動速度を制御することができる。具体的には、駆動信号V1、V3の振幅を大きくすれば、凸部44のZ軸方向の振幅が大きくなってローター2の駆動速度が増加し、反対に、駆動信号V1、V3の振幅を小さくすれば、凸部44のZ軸方向の振幅が小さくなってローター2の駆動速度が減少する。
なお、本発明では、ローター2を少なくとも一方向に回転させることができれば、圧電素子6A~6Eに印加する駆動信号のパターンは、特に限定されない。また、圧電素子6A~6Eに印加する電圧は、交流電圧の連続信号ではなく、例えば、交流電圧の間欠信号でもよい。
制御装置7は、駆動信号V1、V2、V3を生成し、生成した駆動信号V1、V2、V3を圧電素子6A~6Eに印加することにより、圧電モーター1の駆動を制御する。制御装置7は、図10に示すように、速度指令Maに基づいてPWM信号を生成するPWM信号生成部71と、PWM信号生成部71で生成されたPWM信号に基づいて駆動信号V1、V2、V3を生成する駆動信号生成部72と、圧電素子6F、6Gから出力された検出信号Vpuをデジタル信号に変換するA/Dコンバーター73と、検出信号Vpuの電圧値が目標値に維持されるように駆動信号V1、V2、V3の周波数を制御する周波数追尾制御部74と、駆動信号V2および検出信号Vpuをそれぞれ2値化(High/Low)するコンパレーター75と、2値化された駆動信号V2および検出信号Vpuから、これらの位相差θを検出する位相差演算部76と、エンコーダー9の出力信号Seに基づいてローター2の位置Iを検出する位置検出部77と、圧電モーター1の正常/異常さらには異常の原因を判定する判定部79と、判定部79が異常と判定した場合にその旨をユーザー等に報知する報知部70と、を有する。なお、上記「PWM」は、「Pulse Width Modulation」の略である。
なお、例えば、前記正常とは、圧電モーター1の駆動が制御装置7の指令通りに行われる状態を言い、前記異常とは、圧電モーター1の駆動が制御装置7の指令通りに行われない状態を言う。
このような制御装置7では、ローター2が各時刻において目標位置となるように、ローター2の駆動速度を制御する。前述したように、ローター2の駆動速度は、駆動信号V1、V3の電圧値(振幅)に依存し、駆動信号V2の電圧値(振幅)には実質的に依存しない。すなわち、駆動信号V2は、駆動信号V1、V3よりも依存の傾向が小さい。そこで、制御装置7は、駆動信号V1、V2、V3の周波数と、駆動信号V1、V3の電圧値と、を制御することによりローター2の駆動速度を制御する。なお、駆動信号V2の電圧値は、一定に保たれる。ただし、これに限定されず、駆動信号V1、V3と共に駆動信号V2の電圧値を変化させてもよい。この場合、駆動信号V2の電圧値を、駆動信号V1、V3の電圧値とは独立して変更できることが好ましい。
速度指令Maは、例えば、所定時刻でのローター2の目標位置を示す位置指令Mに基づいて生成され、所定時刻においてローター2を目標位置とするために必要なローター2の目標駆動速度を示した指令である。なお、位置指令Mは、例えば、図示しないホストコンピューターから出力される。
PWM信号生成部71は、速度指令Maに応じたDutyを有し、かつ、周波数追尾制御部74で生成された周波数指令Mgに基づく周波数となるパルス信号を生成する。PWM信号生成部71は、パルス信号として、駆動信号V1用のパルス信号Pd1と、駆動信号V2用のパルス信号Pd2と、駆動信号V3用のパルス信号Pd3と、をそれぞれ生成する。PWM信号生成部71で生成されたパルス信号Pd1、Pd2、Pd3は、それぞれ、駆動信号生成部72に入力される。
駆動信号生成部72は、PWM信号生成部71から入力されたパルス信号Pd1、Pd2、Pd3から略正弦波である駆動信号V1、V2、V3を生成する。そして、駆動信号生成部72で生成された駆動信号V1、V2、V3は、それぞれ、対応する圧電素子6A、6B、6C、6D、6Eに印加される。これにより、圧電アクチュエーター4が上述のように振動し、ローター2が駆動する。
なお、パルス信号のDutyとは、パルス幅のLowとHighの比であり、0%~50%の範囲で変更することができる。パルス信号Pd1、Pd2、Pd3のDutyが0%に近い程、駆動信号V1、V2、V3の電圧値が小さくなり、反対に、パルス信号Pd1、Pd2、Pd3のDutyが50%に近い程、駆動信号V1、V2、V3の電圧値が大きくなる。したがって、パルス信号Pd1、Pd3のDutyを0%に近づける程、ローター2の駆動速度aが遅くなり、反対に、パルス信号Pd1、Pd3のDutyを50%に近づける程、ローター2の駆動速度aが速くなる。なお、パルス信号Pd2については、電圧値を一定に保つために、例えば、Dutyを50%に固定する。
圧電素子6A、6B、6C、6D、6Eに駆動信号V1、V2、V3を印加して圧電アクチュエーター4が振動すると、その振動に応じた略正弦波の検出信号Vpuが圧電素子6F、6Gから出力される。圧電素子6F、6Gから出力された検出信号Vpuは、図示しないアンプによって増幅された後、A/Dコンバーター73に入力される。A/Dコンバーター73は、入力された検出信号Vpuをデジタル信号に変換し、検出デジタル信号Vpudを生成する。A/Dコンバーター73で生成された検出デジタル信号Vpudは、周波数追尾制御部74に入力される。
また、周波数追尾制御部74は、A/Dコンバーター73から入力された検出デジタル信号Vpudに基づいて検出信号Vpuの電圧値を検出し、検出信号Vpuの電圧値が目標値となるように、駆動信号V1、V2、V3の周波数fを制御するための周波数指令Mgを生成する。そして、周波数追尾制御部74で生成された周波数指令Mgは、PWM信号生成部71に入力される。PWM信号生成部71は、駆動信号生成部72で生成される駆動信号V1、V2、V3が周波数指令Mgに応じた周波数fとなるようなパルス信号Pd1、Pd2、Pd3を生成する。
このように、制御装置7は、検出信号Vpuをフィードバックして、検出信号Vpuの電圧値が目標値を維持するように駆動信号V1、V2、V3の周波数fを制御する。検出信号Vpuの電圧値を目標値に維持することにより、振動体41をY軸方向に安定して伸縮させることができるため、圧電モーター1の安定した駆動が可能となる。
ここで、図11に基づいて、駆動信号V1、V2、V3の周波数fと検出信号Vpuの電圧値との関係について説明する。なお、検出信号Vpuの電圧値は、ローター2の駆動速度と比例するため、検出信号Vpuを駆動速度aと言い換えることもできる。同図に示すように、駆動信号V1、V2、V3の周波数fを圧電アクチュエーター4の共振周波数f0に近づけることにより、駆動速度aを早くすることができ、共振周波数f0から遠ざけることにより、駆動速度aを遅くすることができる。また、共振周波数f0をピークとして、共振周波数f0よりも高周波数側では、なだらかに駆動速度aが減少し、反対に、共振周波数f0よりも低周波数側では、急激に駆動速度aが減少する。そのため、周波数fは、共振周波数f0よりも高く設定される。これにより、周波数fが共振周波数f0よりも低い場合と比較して、周波数fの変化に対する駆動速度aの変化割合が小さくなり、駆動速度aをより精度よく制御することができる。ただし、周波数fは、共振周波数f0より低くてもよい。
また、例えば、圧電アクチュエーター4の使用に伴って凸部44やローター2の外周面21が摩耗すると、鎖線で示すように、周波数fと検出信号Vpuとの関係がシフトする場合もある。そこで、検出信号Vpuが目標値となるように、共振周波数f0よりも高い範囲において周波数fを変化させる必要があり、これを実現するための指令が周波数指令Mgである。
制御装置7の説明に戻って、図10に示すように、駆動信号生成部72で生成された駆動信号V2は、圧電素子6Cに入力されると共にコンパレーター75にも入力される。また、圧電素子6F、6Gから出力された検出信号Vpuは、A/Dコンバーター73に入力されると共にコンパレーター75にも入力される。すなわち、コンパレーター75には、駆動信号V2と検出信号Vpuとが入力される。コンパレーター75は、駆動信号V2を2値化して2値化駆動信号V2’を生成し、検出信号Vpuを2値化して2値化検出信号Vpu’を生成する。そして、コンパレーター75で生成された2値化駆動信号V2’および2値化検出信号Vpu’は、それぞれ、位相差演算部76に入力される。また、2値化検出信号Vpu’は、判定部79にも入力される。
なお、2値化の方法は、特に限定されない。前述したように、検出信号Vpuの電圧値は、目標値に維持される。そのため、例えば、目標値の半値に閾値SH1を設定し、閾値SH1以上でHighとし、閾値SH1未満でLowとすることにより、検出信号Vpuを2値化することができる。駆動信号V2の2値化についても同様である。
位相差演算部76は、コンパレーター75から入力された2値化駆動信号V2’と2値化検出信号Vpu’との位相差θを求める。位相差θの求め方としては、特に限定されないが、本実施形態では、2値化駆動信号V2’および2値化検出信号Vpu’の立ち上がり同士の時間差から位相差θを求めている。ただし、これに限定されず、2値化駆動信号V2’および2値化検出信号Vpu’の立ち下がり同士の時間差に基づいて位相差θを演算してもよい。位相差演算部76で求められた位相差θは、判定部79に入力される。
なお、位相差θとしては、特に限定されず、駆動信号V1と検出信号Vpuとの位相差であってもよいし、駆動信号V3と検出信号Vpuとの位相差であってもよい。また、例えば、圧電素子6F、6Gの異常によって検出信号Vpuが閾値SH1を上回らないほどに微弱となっている場合には、2値化検出信号Vpu’は、Lowを維持する信号となる。この場合、位相差演算部76は、位相差θを求めることができない。
また、エンコーダー9は、ローター2の回転量(位置)を示す出力信号Seを周期的に出力する。エンコーダー9から周期的に出力される出力信号Seは、位置検出部77に入力される。位置検出部77は、出力信号Seに基づいてローター2の位置Iを検出し、検出した位置Iを位置指令Mにより設定されている目標位置と比較し、これらの位置ずれ量ΔIを求める。すなわち、位置ずれ量ΔIは、位置Iに基づいて求められる。そして、位置検出部77は、位置ずれ量ΔIが所定範囲内であるか否かを判断し、その結果を位置信号Viとして出力する。そして、位置検出部77から出力された位置信号Viは、判定部79に入力される。位置ずれ量ΔIの所定範囲は、駆動信号V1、V2、V3の基となる位置指令Mに基づいて定められる。「所定範囲」としては、例えば、位置ずれ量ΔIの所定範囲は位置指令Mにより設定されている目標位置の±30%の範囲内である。
判定部79は、コンパレーター75からの2値化検出信号Vpu’と、位相差演算部76からの位相差θと、位置検出部77からの位置信号Viと、に基づいて、圧電モーター1の駆動状態が正常であるか異常であるかを判定し、さらには、異常である場合には、その原因を判定する。例えば、圧電アクチュエーター4の損傷、各部配線の劣化、断線等によって圧電モーター1の正常な駆動が困難となると、それが2値化検出信号Vpu’、位相差θおよび位置信号Viの変化として現れる。また、異常の原因によって、2値化検出信号Vpu’、位相差θおよび位置信号Viの変化の度合いや状態も違ってくる。そこで、判定部79は、2値化検出信号Vpu’、位相差θおよび位置信号Viに基づいて圧電モーター1の駆動状態が正常であるか異常であるかを判定し、さらには、異常の場合にはその原因についても判定する。このように、正常/異常の判定に留まらず、異常の原因または異常の箇所をも判定することができ、異常発生時において取り得る対策の幅が増える。
圧電モーター1の異常には、主に、駆動系3Dの異常と、検出系3Sの異常と、が存在する。そのため、本実施形態では、判定部79は、圧電モーター1の駆動状態が異常であると判定した場合には、その原因が駆動系3Dにあるのか、あるいは、検出系3Sにあるのかを判定する。言い換えると、異常の箇所が、駆動系3Dにあるのか、あるいは検出系3Sにあるのかを判定する。
駆動系3Dは、振動体41、PWM信号生成部71、駆動信号生成部72およびこれらを電気的に接続している各配線を含んでいる。これらが損傷して駆動系3Dに異常が生じると、振動体41が正常に振動しなくなり、ローター2を速度指令Maで支持された目標速度で駆動させることができなくなる。一方、検出系3Sは、検出用の圧電素子6F、6G、コンパレーター75、位相差演算部76およびこれらを電気的に接続している各配線を含んでいる。これらが損傷して検出系3Sに異常が生じても検出信号Vpuが正常に検出されないだけで、駆動系3Dが正常である限り圧電モーター1の駆動をそのまま継続することができる。
そのため、制御装置7は、判定部79によって異常の原因が駆動系3Dにあると判定された場合は、速やかに圧電モーター1の駆動を停止し、異常の原因が検出系3Sにあると判定された場合には、圧電モーター1の駆動をそのまま継続する。なお、駆動系3Dに異常が生じている状態を以下では「駆動系異常状態」とも言い、検出系3Sに異常が生じている状態を以下では「検出系異常状態」とも言う。
以下、判定部79の判定方法について、図12に示すフローチャートに基づいて説明する。判定部79は、ステップS11として、コンパレーター75から入力される2値化検出信号Vpu’にエッジが含まれているか否かを検出する。なお、エッジが含まれているとは、駆動信号V1、V2、V3の周波数fと同じ周期で、LowとHighとが切り替わっていることを意味する。つまり、周波数fの周期よりも十分に長い期間内において、2値化検出信号Vpu’の値が変化しない場合には、2値化検出信号Vpu’にエッジが含まれていないと判断することができる。
2値化検出信号Vpu’にエッジが含まれていることは、検出信号Vpuが正常に出力および処理されていることを意味する。そのため、判定部79は、少なくとも圧電モーター1が検出系異常状態ではないことを判定することができる。反対に、2値化検出信号Vpu’にエッジが含まれていないことは、検出信号Vpuが正常に出力および処理されていないことを意味する。そのため、判定部79は、少なくとも圧電モーター1が検出系異常状態であることを判定することができる。このように、2値化検出信号Vpu’に基づくことにより、圧電モーター1の異常を容易に検出することができる。
判定部79は、2値化検出信号Vpu’にエッジが含まれている場合には、ステップS12として、位相差演算部76から入力される位相差θをその目標値と比較し、これらの差Δθが所定範囲内であるか否かを判断する。なお、特に限定されないが、位相差θの目標値として、例えば、30°とすることができ、前記「所定範囲」として、位相差θの目標値±10°とすることができる。差Δθが所定範囲内である場合、判定部79は、圧電モーター1が正常な状態であると判定する。この場合は、再びステップS11に戻り、圧電モーター1の駆動をそのまま継続する。これは、圧電モーター1が正常に駆動している以上、圧電モーター1の駆動を停止する必要がないためである。
反対に、差Δθが所定範囲外である場合、判定部79は、ステップS13として、圧電モーター1が駆動系異常状態であると判定する。駆動系異常状態では、振動体41が正常に振動しておらず、ローター2が速度指令Maに対応する速度で駆動していないと推察することができる。そのため、この場合、制御装置7は、圧電モーター1の駆動を速やかに停止する。これにより、圧電モーター1の更なる損傷や、信頼性のない状態での駆動を抑制することができる。
ステップS11において、2値化検出信号Vpu’にエッジが含まれていない場合には、判定部79は、ステップS14として、位置信号Viに基づいて、位置ずれ量ΔIが所定範囲内にあるか否かを判断する。位置ずれ量ΔIが所定範囲内である場合は、位置指令Mと実際のローター2の位置Iとがほぼ等しい。そのため、ローター2が指令通りに駆動している、すなわち、駆動系3Dが正常に駆動していると推察できる。したがって、この場合、判定部79は、ステップS15として、圧電モーター1が検出系異常状態であると判定する。この場合は、検出系3Sに異常が生じているだけで、駆動系3Dについては正常に駆動していると推察される。つまり、検出信号Vpuが正常に出力および処理されないだけで、ローター2を目標の駆動速度で回転させること自体は可能である。したがって、制御装置7は、判定部79によって検出系異常状態であると判定された後も、圧電モーター1の駆動をそのまま継続する。
ただし、制御装置7は、判定部79によって検出系異常状態であると判定された後においては駆動信号V1、V2、V3の周波数fを変化させずに一定とする。つまり、周波数指令Mgを異常が検出される直前の値に固定する。検出系異常状態で、検出信号Vpuが目標値となるように周波数fを変化させてしまうと、例えば、周波数fが共振周波数f0よりも低くなってしまったり、調整許容範囲から外れてしまったりし、圧電モーター1の駆動が不安定となるおそれがある。そこで、検出系異常状態であると判定された後は、駆動信号V1、V2、V3の周波数fを一定とすることにより、圧電モーター1の安定した駆動を維持することができる。
反対に、位置ずれ量ΔIが所定範囲外である場合は、位置指令Mと実際のローター2の位置Iとが乖離している。そのため、ローター2が指令通りに駆動しておらず、駆動系3Dが正常に駆動していないと推察できる。したがって、この場合、判定部79は、ステップS16として、圧電モーター1が駆動系異常状態であると判定する。駆動系異常状態では、振動体41が正常に振動しておらず、ローター2が速度指令Maに対応する速度で駆動していないと推察されるため、この場合、制御装置7は、圧電モーター1の駆動を速やかに停止する。これにより、圧電モーター1の更なる損傷や、信頼性のない状態での駆動を抑制することができる。
以上のように、圧電モーター1の正常/異常の判定に留まらず、異常の原因または異常の箇所をも判定することができる。これにより、異常発生時において取り得る対策の幅が増え、圧電モーター1に異常が生じていても、その異常の原因次第では、そのまま圧電モーター1の駆動を継続することもできる。そのため、異常が生じた場合には画一的に圧電モーター1の駆動を停止する従来構成と比較して、圧電モーター1を緊急停止する確率が減り、その分、圧電モーター1の安定した駆動が可能となる。さらには、異常の原因を明らかにすることにより、異常原因の解析に要する時間が短縮され、その分、圧電モーター1のメンテナンス性が向上する。
報知部70は、判定部79による判定結果、つまり、圧電モーター1が正常な状態であるか異常な状態であるか、さらには、異常な状態である場合には、検出系異常状態であるのか駆動系異常状態であるのかをユーザー等に報知する。これにより、ユーザーに圧電モーター1の状態を簡単かつ容易に知らせることができ、その情報を圧電モーター1の駆動やメンテナンスに利用することができる。報知部70は、例えば、表示画面、ライト、スピーカー等を有し、画像、音、光等によって判定部79による上記判定結果をユーザー等に報知する。ただし、報知部70の構成は、その目的を達成できる限り、特に限定されない。また、報知部70は、省略してもよい。
以上、圧電モーター1について説明した。このような圧電モーター1は、前述したように、駆動用圧電素子としての圧電素子6A、6B、6C、6D、6Eおよび検出用圧電素子としての圧電素子6F、6Gを備え、駆動信号V1、V2、V3を印加して圧電素子6A~6Eを伸縮させることにより振動し、この振動に基づいた検出信号Vpuが圧電素子6F、6Gから出力される振動体41と、振動体41によって駆動される被駆動体としてのローター2と、振動体41の駆動を制御すると共に、振動体41の異常を検出する制御装置7と、ローター2の位置を検出する位置検出装置としてのエンコーダー9と、を有する。また、制御装置7は、検出信号Vpuに基づいて振動体41の異常を検出した場合に、ローター2の位置Iを検出し、位置Iに基づいた値が所定範囲外の場合は、振動体41を含む駆動系3Dに異常がある駆動系異常状態であると判定し、位置Iに基づいた値が所定範囲内の場合は、圧電素子6F、6Gを含む検出系3Sに異常がある検出系異常状態であると判定する。
このように、正常/異常の判定に留まらず、異常の原因をも判定することができる。これにより、異常発生時において取り得る対策の幅が増え、圧電モーター1に異常が生じていても、その異常の原因次第では、そのまま圧電モーター1の駆動を継続することもできる。そのため、異常が生じた場合には画一的に圧電モーター1の駆動を停止する従来構成と比較して、圧電モーター1を緊急停止する確率が減り、その分、圧電モーター1の安定した駆動が可能となる。さらには、異常の原因を明らかにすることにより、異常原因の解析に要する時間が短縮され、その分、圧電モーター1のメンテナンス性が向上する。
また、前述したように、圧電素子6A~6Eおよび圧電素子6F、6Gを備え、駆動信号V1、V2、V3を印加して圧電素子6A~6Eを伸縮させることにより振動し、この振動に基づいた検出信号Vpuが圧電素子6F、6Gから出力される振動体41と、振動体41によって駆動されるローター2と、を有する圧電モーター1の異常を検出する異常検出方法では、検出信号Vpuに基づいて圧電モーター1の異常を検出した場合に、ローター2の位置Iを検出し、位置Iに基づいた値が所定範囲外の場合は、振動体41を含む駆動系3Dに異常がある駆動系異常状態であると判定し、位置Iに基づいた値が所定範囲内の場合は、圧電素子6F、6Gを含む検出系3Sに異常がある検出系異常状態であると判定する。
このように、正常/異常の判定に留まらず、異常の原因をも判定することができる。これにより、異常発生時において取り得る対策の幅が増え、圧電モーター1に異常が生じていても、その異常の原因次第では、そのまま圧電モーター1の駆動を継続することもできる。そのため、異常が生じた場合には画一的に圧電モーター1の駆動を停止する従来構成と比較して、圧電モーター1を緊急停止する確率が減り、その分、圧電モーター1の安定した駆動が可能となる。さらには、異常の原因を明らかにすることにより、異常原因の解析に要する時間が短縮され、その分、圧電モーター1のメンテナンス性が向上する。
また、前述したように、異常検出方法では、位置Iの所定範囲は、駆動信号V1、V2、V3の基となる位置指令Mに基づいて定められる。これにより、目標位置に対する位置Iの位置ずれ量ΔIを駆動系異常状態/検出系異常状態の判定に用いることができる。そのため、駆動系異常状態/検出系異常状態の判定をより精度よく行うことができる。
また、前述したように、異常検出方法では、検出信号Vpuを2値化し、所定期間内に値の変化を検出できないときに圧電モーター1の異常を検出する。具体的には、2値化検出信号Vpu’にエッジが含まれているか否かを検出し、エッジが含まれていない場合には、少なくとも検出系異常状態であると判定する。このように、2値化検出信号Vpu’に基づけば、圧電モーター1の異常を容易に検出することができる。
また、前述したように、異常検出方法では、駆動信号V2と検出信号Vpuとの位相差θが所定範囲外であるときに圧電モーター1の異常を検出する。具体的には、位相差θをその目標値と比較し、これらの差Δθが所定範囲内であるか否かを判断し、差Δθが所定範囲外のときに異常を検出する。このように、位相差θに基づけば、圧電モーター1の異常を容易に検出することができる。
また、前述したように、異常検出方法では、駆動系異常状態であると判定した場合、駆動系異常状態であることを報知し、検出系異常状態であると判定した場合、検出系異常状態であることを報知する。これにより、ユーザーに圧電モーター1の状態を簡単かつ容易に知らせることができ、その情報を圧電モーター1の駆動やメンテナンスに利用することができる。
また、前述したように、異常検出方法では、検出系異常状態と判定した場合には、駆動信号V1、V2、V3の周波数fを一定にする。これにより、圧電モーター1の安定した駆動を維持することができる。
<第2実施形態>
図13は、第2実施形態に係る圧電モーターが有する制御装置を示すブロック図である。図14は、異常検出方法を説明するためのフローチャートである。
本実施形態は、制御装置7の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図13および図14において、前述した第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
図13に示すように、本実施形態の制御装置7は、位置検出部77に替えて駆動速度検出部78を有する。駆動速度検出部78は、周期的に入力されるエンコーダー9の出力信号Seに基づいてローター2の駆動速度a(角速度)を求める。駆動速度aは、例えば、n回目に入力された出力信号Seに基づいてローター2の位置Iを検出し、n+1回目に入力された出力信号Seに基づいてローター2の位置Iを検出し、n回目の位置Iとn+1回目の位置Iとの差と、出力信号Seの周期と、に基づいて求めることができる。つまり、駆動速度aは、位置Iに基づく値である。そして、駆動速度検出部78は、求めた駆動速度aを速度指令Maにより設定されている目標速度と比較し、これらの差Δaを求める。すなわち、差Δaは、位置Iに基づいて求められる。そして、駆動速度検出部78は、差Δaが所定範囲内であるか否かを判断し、その結果を速度信号Vaとして判定部79へ出力する。なお、「所定範囲」としては、特に限定されないが、例えば、速度指令Maにより設定されている目標速度の±30%の範囲内とすることができる。
以下、判定部79の判定方法について、図14に示すフローチャートに基づいて説明する。判定部79は、ステップS21として、コンパレーター75から入力される2値化検出信号Vpu’にエッジが含まれているか否かを検出する。
判定部79は、2値化検出信号Vpu’にエッジが含まれている場合には、ステップS22として、位相差演算部76から入力される位相差θをその目標値と比較し、これらの差Δθが所定範囲内であるか否かを判断する。差Δθが所定範囲内である場合、判定部79は、圧電モーター1が正常な状態であると判定する。この場合は、再びステップS21に戻り、圧電モーター1の駆動をそのまま継続する。反対に、差Δθが所定範囲外である場合、判定部79は、ステップS23として、圧電モーター1が駆動系異常状態であると判定する。この場合、制御装置7は、圧電モーター1の駆動を速やかに停止する。これにより、圧電モーター1の更なる損傷や、信頼性のない状態での駆動を抑制することができる。
ステップS21において、2値化検出信号Vpu’にエッジが含まれていない場合には、判定部79は、ステップS24として、速度信号Vaに基づいて、差Δaが所定範囲内であるか否かを判断する。差Δaが所定範囲内である場合は、速度指令Maと実際のローター2の駆動速度aとがほぼ等しい。そのため、ローター2が指令通りに駆動している、すなわち、駆動系3Dが正常に駆動していると推察できる。したがって、この場合、判定部79は、ステップS25として、圧電モーター1が検出系異常状態であると判定する。この場合は、検出系3Sに異常が生じているだけで、駆動系3Dについては正常に駆動していると推察される。したがって、制御装置7は、判定部79によって検出系異常状態であると判定された後も、圧電モーター1の駆動をそのまま継続する。
ただし、制御装置7は、判定部79によって検出系異常状態であると判定された後においては駆動信号V1、V2、V3の周波数fを変化させずに一定とする。つまり、周波数指令Mgを異常が検出される直前の値に固定する。検出系異常状態で、検出信号Vpuが目標値となるように周波数fを変化させてしまうと、例えば、周波数fが共振周波数f0よりも低くなってしまったり、調整許容範囲から外れてしまったりし、圧電モーター1の駆動が不安定となるおそれがある。そこで、検出系異常状態であると判定された後は、駆動信号V1、V2、V3の周波数fを一定とすることにより、圧電モーター1の安定した駆動を維持することができる。
反対に、差Δaが所定範囲外である場合は、速度指令Maと実際のローター2の駆動速度aとが乖離している。そのため、ローター2が指令通りに駆動しておらず、駆動系3Dが正常に駆動していないと推察できる。したがって、この場合、判定部79は、ステップS26として、圧電モーター1が駆動系異常状態であると判定する。駆動系異常状態では、振動体41が正常に振動しておらず、ローター2が速度指令Maに対応する速度で駆動していないと推察されるため、この場合、制御装置7は、圧電モーター1の駆動を速やかに停止する。これにより、圧電モーター1の更なる損傷や、信頼性のない状態での駆動を抑制することができる。
以上のように、圧電モーター1の正常/異常の判定に留まらず、異常の原因をも判定することができる。これにより、異常発生時において取り得る対策の幅が増え、圧電モーター1に異常が生じていても、その異常の原因次第では、そのまま圧電モーター1の駆動を継続することもできる。そのため、異常が生じた場合には画一的に圧電モーター1の駆動を停止する従来構成と比較して、圧電モーター1を緊急停止する確率が減り、その分、圧電モーター1の安定した駆動が可能となる。さらには、異常の原因を明らかにすることにより、異常原因の解析に要する時間が短縮され、その分、圧電モーター1のメンテナンス性が向上する。
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
<第3実施形態>
図15は、第3実施形態に係る圧電モーターが有する制御装置を示すブロック図である。図16は、異常検出方法を説明するためのフローチャートである。
本実施形態は、制御装置7の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図15および図16において、前述した第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
図15に示すように、本実施形態の制御装置7は、前述した第1実施形態の構成から位相差演算部76および位置検出部77が省略された構成となっている。そして、このような制御装置7は、A/Dコンバーター73で生成された検出デジタル信号Vpudに基づいて、圧電モーター1の正常/異常、さらに、異常の場合にはその原因を判定する。
なお、本実施形態においても、駆動信号V2および検出信号Vpuがコンパレーター75に入力され、コンパレーター75で2値化駆動信号V2’および2値化検出信号Vpu’が生成されている。しかしながら、前述した第1実施形態とは異なって、2値化駆動信号V2’および2値化検出信号Vpu’は、正常/異常を判定する用には供されず、その他、必要な制御に用いられる。
以下、判定部79の判定方法について、図16に示すフローチャートに基づいて説明する。判定部79は、ステップS31として、A/Dコンバーター73から入力される検出デジタル信号Vpudに基づいて検出信号Vpuの電圧値を検出し、検出した電圧値を目標値と比較し、これらの差ΔVpuが所定範囲内であるか否かを判断する。なお、「所定範囲」としては、特に限定されないが、例えば、目標値の70%以上の範囲とすることができる。
差ΔVpuが所定範囲内である場合、判定部79は、圧電モーター1が正常な状態であると判定する。この場合は、ステップS31を繰り返し、圧電モーター1の駆動をそのまま継続する。反対に、差ΔVpuが所定範囲外である場合、判定部79は、ステップS32として、位置信号Viに基づいて、位置ずれ量ΔIが所定範囲内にあるか否かを判断する。位置ずれ量ΔIが所定範囲内である場合、判定部79は、ステップS33として、圧電モーター1が検出系異常状態であると判定する。この場合は、検出系3Sに異常が生じているだけで、駆動系3Dについては正常に駆動していると推察される。つまり、検出信号Vpuが正常に出力および処理されないだけで、ローター2を目標の駆動速度で回転させること自体は可能である。したがって、制御装置7は、判定部79によって検出系異常状態であると判定された後も、圧電モーター1の駆動をそのまま継続する。
ただし、制御装置7は、判定部79によって検出系異常状態であると判定された後においては駆動信号V1、V2、V3の周波数fを変化さずに一定とする。つまり、周波数指令Mgを異常が検出される直前の値に固定する。検出系異常状態で、検出信号Vpuが目標値となるように周波数fを変化させてしまうと、例えば、周波数fが共振周波数f0よりも低くなってしまったり、調整許容範囲から外れてしまったりし、圧電モーター1の駆動が不安定となるおそれがある。そこで、検出系異常状態であると判定された後は、駆動信号V1、V2、V3の周波数fを一定とすることにより、圧電モーター1の安定した駆動を維持することができる。
反対に、位置ずれ量ΔIが所定範囲外である場合は、位置指令Mと実際のローター2の位置Iとが乖離している。そのため、ローター2が指令通りに駆動しておらず、駆動系3Dが正常に駆動していないと推察できる。したがって、この場合、判定部79は、ステップS34として、圧電モーター1が駆動系異常状態であると判定する。駆動系異常状態では、振動体41が正常に振動しておらず、ローター2が速度指令Maに対応する速度で駆動していないと推察されるため、この場合、制御装置7は、圧電モーター1の駆動を速やかに停止する。これにより、圧電モーター1の更なる損傷や、信頼性のない状態での駆動を抑制することができる。
このように、圧電モーター1の正常/異常の判定に留まらず、異常の原因をも判定することができる。これにより、異常発生時において取り得る対策の幅が増え、圧電モーター1に異常が生じていても、その異常の原因次第では、そのまま圧電モーター1の駆動を継続することもできる。そのため、異常が生じた場合には画一的に圧電モーター1の駆動を停止する従来構成と比較して、圧電モーター1を緊急停止する確率が減り、その分、圧電モーター1の安定した駆動が可能となる。さらには、異常の原因を明らかにすることにより、異常原因の解析に要する時間が短縮され、その分、圧電モーター1のメンテナンス性が向上する。
以上のように、本実施形態の異常検出方法では、検出信号Vpuの電圧値が所定範囲外であるときに圧電モーター1の異常を検出する。具体的には、検出信号Vpuの電圧値をその目標値と比較し、これらの差ΔVpuが所定範囲内であるか否かを判断し、差ΔVpuが所定範囲外のときに異常を検出する。このように、検出信号Vpuの電圧値に基づけば、圧電モーター1の異常を容易に検出することができる。
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
<第4実施形態>
図17は、第4実施形態に係る圧電モーターの構成を示すブロック図である。図18は、図17に示す構成の変形例を示すブロック図である。
本実施形態は、圧電アクチュエーター4を複数有すること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図17および図18において、前述した第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
図17に示すように、本実施形態の圧電モーター1は、3つ圧電アクチュエーター4を有している。以下では、これらを圧電アクチュエーター4A、4B、4Cとも言う。ただし、圧電アクチュエーター4の数としては、特に限定されず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
また、これら圧電アクチュエーター4A、4B、4Cは、それぞれ、同じ制御装置7に接続されている。つまり、本実施形態では、全ての圧電アクチュエーター4A、4B、4Cの駆動が共通の制御装置7によって制御される。また、制御装置7は、スイッチ素子SWを介して圧電アクチュエーター4A、4B、4Cの圧電素子6F、6Gと接続されており、スイッチ素子SWの駆動によって、圧電アクチュエーター4A、4B、4Cから任意に選択された1つの圧電アクチュエーター4から検出信号Vpuを受け取ることができる構成となっている。このような構成によれば、1つの制御装置7で全ての圧電アクチュエーター4A、4B、4Cの駆動を制御できるため、圧電モーター1の装置構成が簡単なものとなる。
なお、本実施形態では、全ての圧電アクチュエーター4A、4B、4Cの駆動が1つの制御装置7によって制御されているが、これに限定されない。例えば、図18に示すように、圧電アクチュエーター4A、4B、4Cがそれぞれ異なる制御装置7に接続されていてもよい。このような構成によれば、各圧電アクチュエーター4A、4B、4Cの駆動をそれぞれ独立して制御することができる。そのため、圧電モーター1の駆動をより緻密に制御することができる。
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
<第5実施形態>
図19は、第5実施形態に係るロボットを示す斜視図である。
図19に示すロボット1000は、精密機器やこれを構成する部品の給材、除材、搬送および組立等の作業を行うことができる。ロボット1000は、6軸ロボットであり、床や天井に固定されるベース1010と、ベース1010に回動自在に連結されたアーム1020と、アーム1020に回動自在に連結されたアーム1030と、アーム1030に回動自在に連結されたアーム1040と、アーム1040に回動自在に連結されたアーム1050と、アーム1050に回動自在に連結されたアーム1060と、アーム1060に回動自在に連結されたアーム1070と、これらアーム1020、1030、1040、1050、1060、1070の駆動を制御するロボット制御装置1080と、を有する。
なお、ベース1010およびアーム1020、1030、1040、1050、1060、1070のうちのいずれか1つを本実施形態の「第1部材」とすることができ、残りのいずれか1つを本実施形態の「第2部材」とすることができる。以下では、説明の便宜上、ベース1010を第1部材とし、アーム1020を第2部材として説明する。
また、アーム1070にはハンド接続部が設けられており、ハンド接続部にはロボット1000に実行させる作業に応じたエンドエフェクター1090が装着される。また、各関節部のうちの全部または一部には圧電モーター1が搭載されており、この圧電モーター1の駆動によって各アーム1020、1030、1040、1050、1060、1070が回動する。なお、圧電モーター1は、エンドエフェクター1090に搭載され、エンドエフェクター1090の駆動に用いられてもよい。
ロボット制御装置1080は、コンピューターで構成され、例えば、プロセッサ(CPU)、メモリ、I/F(インターフェース)等を有する。そして、プロセッサが、メモリに格納されている所定のプログラム(コード列)を実行することで、ロボット1000の各部の駆動を制御する。なお、前記プログラムは、I/Fを介して外部のサーバーからダウンロードしてもよい。また、ロボット制御装置1080の構成の全部または一部は、ロボット1000の外部に設けられ、LAN(ローカルエリアネットワーク)等の通信網を介して接続された構成となっていてもよい。
このようなロボット1000は、前述したように、ロボット1000は、第1部材としてのベース1010と、ベース1010に対して回動する第2部材としてのアーム1020と、ベース1010に対してアーム1020を回動させる圧電モーター1と、を有する。また、圧電モーター1は、前述した第1実施形態と同様の構成であり、駆動用圧電素子としての圧電素子6A、6B、6C、6D、6Eおよび検出用圧電素子としての圧電素子6F、6Gを備え、駆動信号V1、V2、V3を印加して圧電素子6A~6Eを伸縮させることにより振動し、この振動に基づいた検出信号Vpuが圧電素子6F、6Gから出力される振動体41と、振動体41によって駆動される被駆動体としてのローター2と、振動体41の駆動を制御すると共に、振動体41の異常を検出する制御装置7と、ローター2の位置を検出する位置検出装置としてのエンコーダー9と、を有する。また、制御装置7は、検出信号Vpuに基づいて圧電モーター1の異常を検出した場合に、ローター2の位置Iを検出し、位置Iに基づいた値が所定範囲外の場合は、振動体41を含む駆動系3Dに異常がある駆動系異常状態であると判定し、位置Iに基づいた値が所定範囲内の場合は、圧電素子6F、6Gを含む検出系3Sに異常がある検出系異常状態であると判定する。
このように、正常/異常の判定に留まらず、異常の原因をも判定することができる。これにより、異常発生時において取り得る対策の幅が増え、圧電モーター1に異常が生じていても、その異常の原因次第では、そのまま圧電モーター1の駆動を継続することもできる。そのため、異常が生じた場合には画一的に圧電モーター1の駆動を停止する従来構成と比較して、圧電モーター1を緊急停止する確率が減り、その分、圧電モーター1の安定した駆動が可能となる。さらには、異常の原因を明らかにすることにより、異常原因の解析に要する時間が短縮され、その分、圧電モーター1のメンテナンス性が向上する。
以上、本発明の異常検出方法、圧電モーターおよびロボットを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。