JP7363027B2 - 接合体の製造方法、及び、絶縁回路基板の製造方法 - Google Patents
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例えば、風力発電、電気自動車、ハイブリッド自動車等を制御するために用いられる大電力制御用のパワー半導体素子は、動作時の発熱量が多いことから、これを搭載する基板としては、セラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に導電性の優れた金属板を接合して形成した回路層と、を備えた絶縁回路基板が、従来から広く用いられている。なお、絶縁回路基板としては、セラミックス基板の他方の面に金属板を接合して金属層を形成したものも提供されている。
この特許文献1においては、セラミックス基板又は金属板の接合面のうちの少なくとも一方にSi及びCuを固着させ、固着させたSi及びCuを前記金属板側に拡散させることによって前記セラミックス基板と前記金属板との界面に前記溶融金属領域を形成し、前記溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持し、前記溶融金属領域中のSi及びCuをさらに前記金属板側に拡散させ、温度を一定に保持した状態で前記溶融金属領域の凝固を進行させることによって、セラミックス基板と金属板とを接合している。
ここで、特許文献2においては、セラミックス基板と銅板とを、活性金属材とCu-Pろう材等を介在させて積層し、積層したセラミックス基板と銅板を加熱して液相を生じさせ、この液相を凝固させることにより、セラミックス基板と銅板とを接合している。
特許文献4においては、窒化アルミニウム基板又は導体層の、少なくとも一方の表面上に、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群から選択される少なくとも一種を、スパッタリング法又は蒸着法により成膜し、成膜した薄膜層上に、導体層又は窒化アルミニウム基板を圧着させることにより、窒化アルミニウム基板と導体層とを接合している。
なお、金属膜を成膜する代わりに、セラミックス基板と金属板との間に金属箔を配設することも考えられるが、厚さの薄い金属箔を取り扱うことは非常に困難であり、作業効率が悪く、効率良く絶縁回路基板を製造することができなかった。
また、特許文献3に記載されたように、金属ペーストを用いた場合には、接合条件によっては、金属ペーストに含まれる溶剤等の有機物の残渣が残り、界面反応が阻害され、セラミックス基板と金属板とを強固に接合できないおそれがあった。
また、樹脂基材は、熱分解温度が、前記接合工程における加熱温度よりも低く、かつ、熱分解後に残存する残渣の重量比が1.2%以下とされた樹脂で構成されているので、接合工程で確実に熱分解されるとともに熱分解後の残渣が少なく、界面反応が阻害されることはない。
よって、セラミックス部材と金属部材との接合信頼性に優れた接合体を効率良く製造することが可能となる。
一方、前記金属膜の厚さAと前記樹脂基材の厚さBとの比A/Bが0.3以下とされているので、前記樹脂基材の厚さBの割合が確保され、取り扱いが容易となり、前記金属部材と前記セラミックス部材と間に金属膜を、容易にかつ確実に、配設することが可能となる。
また、前記複合シート材とともに接合材を介して前記金属部材と前記セラミックス部材とを積層することにより、接合工程において確実に界面反応を促進させることができ、金属部材とセラミックス部材とを強固に接合することが可能となる。
この場合、前記樹脂基材の厚さが10μm以上とされているので、前記樹脂基材の厚さが確保され、熱によって複合シート材の強度が大きく低下することを抑制できる。
一方、前記樹脂基材の厚さが50μm以下とされているので、熱分解後に残存する残渣量を抑えることができ、界面反応を促進させることが可能となる。
この構成の絶縁回路基板の製造方法によれば、上述の接合体の製造方法によって、前記金属板と前記セラミックス基板とを接合する構成とされているので、比較的容易に、前記金属板と前記セラミックス基板との間に金属膜を配設することが可能となる。また、樹脂基材は、熱分解温度が、前記接合工程における加熱温度よりも低く、かつ、熱分解後に残存する残渣の重量比が1.2%未満とされた樹脂で構成されているので、接合工程で確実に熱分解されるとともに熱分解後の残渣が少なく、界面反応が阻害されることはない。
これにより、比較的容易に、セラミックス基板と金属板との接合信頼性に優れた絶縁回路基板を製造することが可能となる。
図1に、本実施形態である絶縁回路基板10及びこの絶縁回路基板10を用いたパワーモジュール1を示す。
本実施形態では、金属板22は、銅又は銅合金で構成されたものとされている。なお、銅又は銅合金からなる金属板22としては、例えば、無酸素銅、タフピッチ銅、Sn入り銅等の圧延板を用いることができる。本実施形態の金属板22は、無酸素銅の圧延板とされている。
ここで、回路層12(金属板22)の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されている。
ここで、金属層13(金属板23)の厚さは 0.1mm以上3.0mm以下の範囲内に設定されている。
なお、ヒートシンク31としては、A1050、A1100、A3003、A6061等のアルミニウムを用いることもできる。
まず、樹脂基材の表面に金属膜を成膜した複合シート材を準備する。本実施形態では、図3及び図4に示すように、2つの複合シート材(第1複合シート材40及び第2複合シート材50)を準備する。
なお、熱分解温度は、以下のようにして求めた。示差熱分析(DTA)における吸熱ピーク温度を、昇温速度を変化しながら取得し、横軸に昇温温度、縦軸に吸熱ピーク温度としてプロットし、これらの比例関係式から求められる0℃/minの外挿値を、熱分解温度とした。
ここで、第1金属膜42の厚さA1と第1樹脂基材41の厚さB1との比A1/B1が0.01以上0.3以下の範囲内とされている。
なお、第1金属膜42の厚さA1と第1樹脂基材41の厚さB1との比A1/B1の下限は、0.03以上であることが好ましく、0.07以上であることがさらに好ましい。一方、第1金属膜42の厚さA1と第1樹脂基材41の厚さB1との比A1/B1の上限は、0.15以下であることが好ましく、0.10以下であることがさらに好ましい。
なお、第1金属膜42の厚さA1の下限は、0.15μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましい。一方、第1金属膜42の厚さA1の上限は、0.85μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがさらに好ましい。
また、第1樹脂基材41の厚さB1の下限は、12μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。一方、第1樹脂基材41の厚さB1の上限は、35μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。
ここで、第2金属膜52の厚さA2と第2樹脂基材51の厚さB2との比A2/B2が0.01以上0.3以下の範囲内とされている。
なお、第2金属膜52の厚さA2と第2樹脂基材51の厚さB2との比A2/B2の下限は、0.03以上であることが好ましく、0.07以上であることがさらに好ましい。一方、第2金属膜52の厚さA2と第2樹脂基材51の厚さB2との比A2/B2の上限は、0.15以下であることが好ましく、0.10以下であることがさらに好ましい。
なお、第2金属膜52の厚さA2の下限は、0.15μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましい。一方、第2金属膜52の厚さA2の上限は、6μm以下であることが好ましく、4.5μm以下であることがさらに好ましい。
また、第2樹脂基材51の厚さB2の下限は、12μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。一方、第2樹脂基材51の厚さB2の上限は、35μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。
ここで、第1樹脂基材41及び第2樹脂基材51は、コイル状に巻き取ることが可能であることから、連続成膜装置を用いて、第1金属膜42及び第2金属膜52をそれぞれ成膜することが好ましい。
次に、セラミックス基板11の一方の面(図3において上面)に、溶加材25及び第1複合シート材40を介して、金属板22を積層する。なお、このとき、金属板22と第1金属膜42とが直接接触するように、第1複合シート材40を配置する。
また、セラミックス基板11の他方の面(図3において下面)に、第2複合シート材50を介して、金属板23を積層する。なお、このとき、金属板23と第2金属膜52とが直接接触するように、第2複合シート材50を配置する。
次に、金属板22、第1複合シート材40、溶加材25、セラミックス基板11、第2複合シート材50、金属板23を、積層方向に加圧(圧力0.1MPa以上3.5MPa以下)した状態で、真空加熱炉内に装入して加熱し、金属板22とセラミックス基板11、及び、セラミックス基板11と金属板23を接合する。
ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10-6Pa以上10-3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上650℃以下の範囲内に、加熱時間は30分以上360分以下の範囲内に設定している。
また、加熱温度の下限は、615℃以上とすることが好ましく、625℃以上とすることがさらに好ましい。一方、加熱温度の上限は、645℃以下とすることが好ましく、640℃以下とすることがさらに好ましい。
さらに、加熱温度での保持時間の下限は、60分以上とすることが好ましく、90分以上とすることがさらに好ましい。一方、加熱温度での保持時間の上限は、240分以下とすることが好ましく、180分以下とすることがさらに好ましい。
次に、絶縁回路基板10の金属層13の他方の面側にヒートシンク31を接合する。
絶縁回路基板10とヒートシンク31とを、Al-Si系ろう材を介して積層して加熱炉に装入し、絶縁回路基板10とヒートシンク31とを接合する。
次に、絶縁回路基板10の回路層12の一方の面に、半導体素子3をはんだ付けにより接合する。
以上の工程により、図1に示すパワーモジュール1が製出される。
一方、第1複合シート材40の第1金属膜42の厚さA1と第1樹脂基材41の厚さB1との比A1/B1が0.3以下とされ、第2複合シート材50の第2金属膜52の厚さA2と第2樹脂基材51の厚さB2との比A2/B2が0.3以下とされている場合には、第1樹脂基材41及び第2樹脂基材51の厚さ割合が確保され、第1複合シート材40及び第2複合シート材50を容易に取り扱うことができ、金属板22とセラミックス基板11の間に第1複合シート材40を、また、セラミックス基板11と金属板23の間に第2複合シート材50を、それぞれ容易に配設することができる。
一方、第1樹脂基材41の厚さが50μm以下とされ、第2樹脂基材51の厚さが50μm以下とされている場合には、熱分解後に残存する残渣量を抑えることができ、界面反応を促進させることが可能となる。
また、セラミックス基板11への熱負荷を低減することができ、セラミックス基板11の割れ等の発生を抑制することができる。
例えば、本実施形態においては、回路層を銅又は銅合金で構成し、金属層をアルミニウム又はアルミニウム合金で構成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、回路層及び金属層をともに銅又は銅合金で構成してもよいし、回路層及び金属層をともにアルミニウム又はアルミニウム合金で構成してもよい。あるいは、回路層と金属層の一方又は両方が、銅とアルミニウムの積層体で構成されていてもよい。
なお、表1に示すように、本発明例3,6,7,9,10及び比較例4においては、金属膜として、2種類の金属膜を積層した。ここで、表1においては、金属膜の膜厚Aは、1層構造の場合には、A=A1、2層構造の場合には、A=A1+A2となる。
そして、表2に示す条件で、これらセラミックス基板と金属板とを接合した。なお、表3においては、過渡液相接合法を用いたものを「TLP」と表記し、溶加材(Cu-6.3mass%P-9.3mass%Sn-7mass%Ni)を用いて接合したものを「溶加材」と表記し、Agと活性金属を用いて接合したものを「AMB」と表記した。
具体的には、絶縁回路基板において、回路層とセラミックス基板との界面の接合率について超音波探傷装置(株式会社日立パワーソリューションズ製FineSAT200)を用いて評価し、以下の式から算出した。ここで、初期接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわち回路層の面積とした。超音波探傷像を二値化処理した画像において剥離は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を剥離面積とした。
(接合率)={(初期接合面積)-(非接合部面積)}/(初期接合面積)×100
接合時に残渣が多く存在し、界面反応が阻害されたことにより、接合率が低下したと推測される。
11 セラミックス基板(セラミックス部材)
12 回路層
13 金属層
22 金属板(金属部材)
23 金属板(金属部材)
Claims (3)
- 金属部材と、セラミックス部材とが接合されてなる接合体の製造方法であって、
樹脂基材の表面に金属膜が成膜された複合シート材を準備する複合シート材準備工程と、
前記金属部材と前記セラミックス部材とを、少なくとも前記複合シート材を介して積層する積層工程と、
前記複合シート材を介して積層された前記金属部材と前記セラミックス部材とを加熱して前記金属部材と前記セラミックス部材とを接合する接合工程と、
を備えており、
前記積層工程では、前記複合シート材とともに溶加材を介して、前記金属部材と前記セラミックス部材とを積層しており、
前記樹脂基材は、熱分解温度が、前記接合工程における加熱温度よりも低く、かつ、熱分解後に残存する残渣の重量比が1.2%以下とされた樹脂で構成されており、
前記複合シート材は、前記金属膜の厚さAと前記樹脂基材の厚さBとの比A/Bが0.01以上0.3以下の範囲内とされていることを特徴とする接合体の製造方法。 - 前記樹脂基材の厚さが10μm以上50μm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の接合体の製造方法。
- 金属板と、セラミックス基板とが接合されてなる絶縁回路基板の製造方法であって、
請求項1または請求項2に記載の接合体の製造方法によって、前記金属板と前記セラミックス基板とを接合することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
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