JP6572810B2 - 接合体の製造方法、及び、パワーモジュール用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
風力発電、電気自動車、ハイブリッド自動車等を制御するために用いられる大電力制御用のパワー半導体素子においては、発熱量が多いことから、これを搭載する基板としては、例えばAlN(窒化アルミ)、Al2O3(アルミナ)などからなるセラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に導電性の優れた金属板を接合して形成した回路層と、を備えたパワーモジュール用基板が、従来から広く用いられている。なお、パワージュール用基板としては、セラミックス基板の他方の面に金属板を接合して金属層が形成したものも提供されている。
例えば、特許文献1には、セラミックス基板の一方の面に、アルミニウム板からなる回路層が接合されたパワーモジュール用基板が提案されている。
また、特許文献2には、セラミックス基板の一方の面に銅板からなる回路層が接合されたパワーモジュール用基板が提案されている。
回路層又は金属層を、アルミニウム層と銅層との2層構造とすることにより、ヒートサイクル負荷時に発生する熱歪をアルミニウム層で吸収してセラミックス基板の割れを抑制できるとともに、銅層によって熱を面方向に広げることにより放熱特性を向上させることが可能となる。
さらに、セラミックス基板とアルミニウム板とを、ろう材を用いて接合しているが、セラミックス基板とアルミニウム板との接合界面に多量の液相が生じた場合には、ろう染みやろうこぶが発生するといった問題があった。
また、積層方向への加圧の荷重を0.3MPa以上3MPa以下の範囲内にしているので、前記セラミックス部材と前記アルミニウム部材との接合界面に固液共存領域した場合に、液相を前記セラミックス部材と前記アルミニウム部材との接合界面に均一に存在させることができ、前記セラミックス部材と前記アルミニウム部材とを良好に接合することができる。
この場合、前記ろう材箔を構成する前記アルミニウム合金の固相線温度が490℃以上とされているので、接合工程における接合温度を比較的高く設定することができ、得られた接合体を比較的高い温度領域で使用することができる。
本実施形態において製造対象となる接合体は、セラミックス部材としてセラミックス基板11、アルミニウム部材としてアルミニウム板22A及び銅部材として銅板22Bが接合されてなる回路層12、アルミニウム部材としてアルミニウム板23A及び銅部材として銅板23Bが接合されてなる金属層13を備えたパワーモジュール用基板10とされている。
このパワーモジュール1は、回路層12及び金属層13が配設されたパワーモジュール用基板10と、回路層12の一方の面(図1において上面)にはんだ層2を介して接合された半導体素子3と、金属層13の他方の面(図1において下面)に接合されたヒートシンク40と、を備えている。
ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。なお、本実施形態では、回路層12とはんだ層2との間、Niめっき層(図示なし)が設けられている。
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13との間の電気的接続を防止するものであって、本実施形態では、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
この回路層12には、回路パターンが形成されており、その一方の面(図1において上面)が、半導体素子3が搭載される搭載面されている。
本実施形態においては、アルミニウム層12Aは、純度が99.99mass%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板22Aがセラミックス基板11に接合されることにより形成されている。ここで、接合されるアルミニウム板22Aの厚さは0.1mm以上1mm以下の範囲内に設定されていることが好ましい。
本実施形態においては、銅層12Bは、無酸素銅の圧延板からなる銅板22Bがアルミニウム層12Aに固相拡散接合されることにより形成されている。ここで、接合される銅板22Bの厚さは0.1mm以上1mm以下の範囲内に設定されていることが好ましい。
本実施形態においては、アルミニウム層13Aは、純度が99.99mass%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板23Aがセラミックス基板11に接合されることにより形成されている。ここで、接合されるアルミニウム板23Aの厚さは0.1mm以上1mm以下の範囲内に設定されていることが好ましい。
本実施形態においては、銅層13Bは、無酸素銅の圧延板からなる銅板23Bがアルミニウム層13Aに固相拡散接合されることにより形成されている。ここで、接合される銅板23Bの厚さは0.1mm以上1mm以下の範囲内に設定されていることが好ましい。
本実施形態においては、ヒートシンク40と金属層13の銅層13Bとが、はんだ層32を介して接合されている。このはんだ層32は、例えばSn−Sb系、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材(いわゆる鉛フリーはんだ材)とされている。
まず、図3に示すように、セラミックス基板11の一方の面に、アルミニウム層12Aとなるアルミニウム板22Aを積層し、このアルミニウム板22Aの一方の面にCu層12Bとなる銅板22Bを積層する。さらに、セラミックス基板11の他方の面に、アルミニウム層13Aとなるアルミニウム板23Aを積層し、このアルミニウム板23Aの他方の面にCu層13Bとなる銅板23Bを積層する。
そして、これらのろう材箔26,27は、Cuの含有量が3mass%以上10mass%以下、Mgの含有量が1mass%以上5mass%以下、残部がAlと不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金で構成されている。なお、このろう材箔26,27を構成するアルミニウム合金の固相線温度は490℃以上であることが好ましい。
以下に、ろう材箔26,27を構成するアルミニウム合金の組成を上述のように規定した理由について説明する。
また、Cuの含有量が10mass%を超える場合には、硬くなりすぎて、圧延によってろう材箔を形成することが困難となるおそれがある。さらに、Mgの含有量が5mass%を超える場合には、液相線温度が低く、後述する接合工程S02において液相が多量に生成し、ろう染みやろうこぶが発生するおそれがある。
なお、Cuの含有量の下限は3.5mass%以上とすることが好ましく、4mass%以上とすることがさらに好ましい。また、Cuの含有量の上限は、8mass%以下とすることが好ましく、6mass%以下とすることがさらに好ましい。
さらに、Mgの含有量の下限は1.5mass%以上とすることが好ましく、2mass%以上とすることがさらに好ましい。また、Mgの含有量の上限は、4mass%以下とすることが好ましく、3mass%以下とすることがさらに好ましい。
特に、上述の不可避不純物の中でも、Si,Ge,Fe,Cr,Mnといった元素については、それぞれ0.05mass%未満に制限することが好ましい。
次に、積層された銅板22B、アルミニウム板22A、セラミックス基板11、アルミニウム板23A、銅板23Bを、積層方向に加圧した状態で真空加熱炉(真空度10−3Pa以上10−5Pa以下)内に配置して加熱し、セラミックス基板11とアルミニウム板22A,23Aとの接合界面に固液共存領域を形成し、セラミックス基板11とアルミニウム板22A,23Bとを接合するとともに、アルミニウム板22Aと銅板22B、及び、アルミニウム板23Aと銅板23Bをそれぞれ固相拡散接合する。
また、接合工程S02における接合温度は、ろう材箔26,27を構成するアルミニウム合金の固相線温度以上548℃未満の範囲内に設定している。なお、上述の接合温度での保持時間は10min以上240min以下の範囲内とすることが好ましい。
以下に、接合工程S02における加圧荷重及び接合温度を上述のように規定した理由について説明する。
一方、接合工程S02における積層方向への加圧荷重が3MPaを超える場合には、セラミックス基板11とアルミニウム板22A、23Aとの接合界面から液相が外部へと排出されてしまい、接合が不十分となるおそれがある。また、加熱時において、アルミニウム板22A、23Aの形状が維持できないおそれがある。
なお、セラミックス基板11とアルミニウム板22A、23A、アルミニウム板22Aと銅板22B、アルミニウム板23Aと銅板23Bを確実に接合するためには、積層方向への加圧荷重の下限値を0.5MPa以上とすることが好ましく、0.7MPa以上とすることがさらに好ましい。
また、加熱時において、アルミニウム板22A、23Aの形状を確実に維持するためには、積層方向への加圧荷重の上限値を2.5MPa以下とすることが好ましく、2MPa以下とすることがさらに好ましい。
一方、接合工程S02における接合温度が548℃以上の場合には、アルミニウムと銅の共晶温度以上となり、アルミニウム板22Aと銅板22B、アルミニウム板23Aと銅板23Bの界面に液相が生じ、これらを固相拡散接合することができない。
なお、セラミックス基板11とアルミニウム板22A、23A、アルミニウム板22Aと銅板22B、アルミニウム板23Aと銅板23B、を確実に接合するためには、接合温度の下限値を、固相線温度+20℃以上とすることが好ましく、固相線温度+30℃以上とすることがさらに好ましい。
また、アルミニウム板22Aと銅板22B、アルミニウム板23Aと銅板23Bの界面に液相が生じることを確実に抑制するためには、接合温度の上限値を、545℃以下とすることが好ましく、540℃以下とすることがさらに好ましい。
次に、図4に示すように、パワーモジュール用基板10の他方側(図4において下側)に、はんだ材32を介してヒートシンク40を積層し、還元炉内において、パワーモジュール用基板10とヒートシンク40とを接合する。
次に、図4に示すように、パワーモジュール用基板10の回路層12(銅層12B)の一方の面に、はんだ材2を介して半導体素子3を積層し、還元炉内において、パワーモジュール用基板10の回路層12(銅層12B)と半導体素子3とを接合する。
以上のようにして、図1に示すパワーモジュール1が製造される。
よって、セラミックス基板11とアルミニウム板22A,23Aとの接合と、アルミニウム板22A、23Aと銅板22B、23Bとの固相拡散接合とを、一括で行うことが可能となり、パワーモジュール用基板10の製造効率を大幅に向上させることができる。
例えば、本実施形態では、パワーモジュール用基板を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、セラミックス部材と、Al又はAl合金からなるアルミニウム部材と、Cu又はCu合金からなる銅部材とを接合した構造の接合体であればよい。
また、ヒートシンクは、本実施形態で例示してものに限定されることはなく、ヒートシンクの構造に特に限定はない。
表1に示すセラミックス基板(50mm×60mm×厚さ0.635mm)と、表1に示す組成のアルミニウムの圧延板(46mm×56mm×厚さ0.4mm)、表1に示す組成の銅の圧延板(46mm×56mm×厚さ0.4mm)を準備した。
そして、積層されたセラミックス基板、アルミニウム板、銅板を、真空炉(10−4Pa)内に装入し、表2に示す荷重で積層方向に加圧し、表2に示す接合温度及び保持時間で加熱して、セラミックス基板、アルミニウム板、銅板を接合し、接合体(評価用試料)を作成した。
得られた接合体(評価用試料)を用いて、セラミックス基板とアルミニウム板、アルミニウム板と銅板との接合率をそれぞれ評価した。なお、接合率は、セラミックス基板の一方の面側と他方の面側の両方で行い、その平均値を算出した。
具体的には、超音波探傷装置(日立パワーソリューションズ社製FINESAT)を用いて評価し、以下の式から算出した。ここで、初期接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわち回路層の面積(46mm×56mm)とした。超音波探傷像を二値化処理した画像において剥離は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を剥離面積とした。評価結果を表2に示す。
(接合率)={(初期接合面積)−(非接合部面積)}/(初期接合面積)×100
ろう染み面積率の測定は、上述の接合体(評価用試料)を回路層側(一方の面側)から平面視して撮影して画像を取得し、該画像を2値化処理してろう染みに相当する範囲の面積を画像上にて測定することによって行った。なお、ろうしみ面積にはろうこぶも含まれている。
接合温度を固相線温度未満とした比較例4では、液相が生成せず、セラミックス基板とアルミニウム板を接合することができず、接合体(評価用試料)を形成することができなかった。このため、アルミニウム板と銅板との接合率についても評価しなかった。
ろう材箔のCu濃度が10massを超えた比較例5では、ろう材箔を製造することができなかった。
接合温度が548℃以上とされた比較例8では、アルミニウム板と銅板の間に液相が生じ、アルミニウム板と銅板とを固相拡散接合することができず、接合体(評価用試料)を形成することができなかった。このため、セラミックス基板とアルミニウム板との接合率についても評価しなかった。
11 セラミックス基板(セラミックス部材)
12 回路層
13 金属層
22A アルミニウム板(アルミニウム部材)
23A アルミニウム板(アルミニウム部材)
22B 銅板(銅部材)
23B 銅板(銅部材)
Claims (5)
- セラミックス部材と、このセラミックス部材に接合されたAl又はAl合金からなるアルミニウム部材と、前記アルミニウム部材に接合されたCu又はCu合金からなる銅部材と、を備えた接合体の製造方法であって、
前記セラミックス部材と前記アルミニウム部材とを、ろう材箔を介して積層するとともに、前記アルミニウム部材と前記銅部材とを直接積層する積層工程と、
積層された前記セラミックス部材、前記アルミニウム部材及び前記銅部材を積層方向に加圧した状態で加熱し、前記セラミックス部材と前記アルミニウム部材、及び、前記アルミニウム部材と前記銅部材を接合する接合工程と、を有し、
前記ろう材箔は、Cuの含有量が3mass%以上10mass%以下、Mgの含有量が1mass%以上5mass%以下、残部がAlと不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金からなり、
前記接合工程では、積層方向への加圧の荷重を0.3MPa以上3MPa以下の範囲内、接合温度を前記ろう材箔を構成する前記アルミニウム合金の固相線温度以上548℃未満の範囲内とし、前記セラミックス部材と前記アルミニウム部材との接合界面に固液共存領域を形成し、前記セラミックス部材と前記アルミニウム部材とを接合するとともに、前記アルミニウム部材と前記銅部材とを固相拡散接合することを特徴とする接合体の製造方法。 - 前記ろう材箔を構成する前記アルミニウム合金は、固相線温度が490℃以上とされていることを特徴とする請求項1に記載の接合体の製造方法。
- セラミックス基板の一方の面に、Al又はAl合金からなるアルミニウム層とCu又はCu合金からなる銅層とが積層されてなる回路層が形成されたパワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記セラミックス基板と前記アルミニウム層、前記アルミニウム層と銅層とを、請求項1又は請求項2に記載の接合体の製造方法によって接合することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。 - セラミックス基板の一方の面に回路層が配設され、前記セラミックス基板の他方の面に、Al又はAl合金からなるアルミニウム層とCu又はCu合金からなる銅層とが積層されてなる金属層が形成されたパワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記セラミックス基板と前記アルミニウム層、前記アルミニウム層と銅層とを、請求項1又は請求項2に記載の接合体の製造方法によって接合することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。 - セラミックス基板の一方の面に、Al又はAl合金からなるアルミニウム層とCu又はCu合金からなる銅層とが積層されてなる回路層が形成され、前記セラミックス基板の他方の面に、Al又はAl合金からなるアルミニウム層とCu又はCu合金からなる銅層とが積層されてなる金属層が形成されたパワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記セラミックス基板と前記アルミニウム層、前記アルミニウム層と銅層とを、請求項1又は請求項2に記載の接合体の製造方法によって接合することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
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