JP7362852B2 - プリプレグの処理方法及び成形品の製造方法 - Google Patents

プリプレグの処理方法及び成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プリプレグの処理方法及び成形品の製造方法に関する。
強化繊維とマトリックス樹脂組成物で形成された繊維強化複合材料からなる成形品は、軽量で優れた機械特性を有するため、航空機や車両等の様々な用途で広く用いられている。このような成形品の製造には、強化繊維基材にマトリックス樹脂組成物を含浸した、中間基材であるシート状のプリプレグが広く用いられている。プリプレグを複数枚積層した後、加熱加圧して成形することにより成形品が得られる。特に、成形品の最外層に強化繊維を織物としたクロスプリプレグを用いると、優れた意匠性を有する繊維強化複合材料を得ることができる。
プリプレグの製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
強化繊維を製織したクロス材等の強化繊維基材の少なくとも一方の面に、離型紙等にマトリックス樹脂を塗布して形成した樹脂膜を積層し、これを加熱しながら押圧ロールで押圧してマトリックス樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させることによりプリプレグを得る。
得られたプリプレグを用いたオートクレーブ成形では、一般に成形型内にプリプレグを複数枚積層して用いる。
しかし、前記方法で得たプリプレグを用いる場合、成形品においてプリプレグの型面側の表面にピンホールが形成されることがある。成形品表面にピンホールが形成されると、意匠性が低下する。また、成形後に塗装を行う場合はピンホールの径が拡大して意匠性の低下の問題がより顕著となる。
成形品表面にピンホールが生じたときには、フィラー等を含むマスキング材によって該ピンホールを埋めることも行われている。しかし、この方法では、プリプレグに形成された各ピンホールを個別に埋める作業を行う必要があるため、作業が煩雑で時間がかかるうえ、コストも高くなる。
こうしたピンホールによる外観低下を抑制するために、特許文献1には、カーボンブラックを含有したマトリックス樹脂からなるクロスプリプレグが開示されている。
特開2014-162858号公報
しかし、カーボンブラックは、発生するピンホールを目立たせなくする効果はあるが、実際にはピンホールの発生自体を抑制することはできない。
本発明は、特別な添加剤を使用しなくても、成形品の表面のピンホール形成を抑制できるプリプレグが得られるプリプレグの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を有する。
[1]強化繊維基材にマトリックス樹脂組成物を含浸したプリプレグが第一のシートと第二のシートで挟まれた積層体を、下記温度Tから10~35℃低い温度で減圧しながら加熱する減圧加熱工程を有する、プリプレグの製造方法。
温度T:前記マトリックス樹脂組成物を25℃から200℃まで昇温速度2℃/分で昇温しながら粘度を連続的に測定する昇温粘度測定において最低粘度(Pa・s)を示す温度。
[2]強化繊維基材にマトリックス樹脂組成物を含浸したプリプレグが第一のシートと第二のシートで挟まれた積層体を、減圧しながら65~85℃で加熱する減圧加熱工程を有する、プリプレグの製造方法。
[3]強化繊維基材にマトリックス樹脂組成物を含浸したプリプレグが第一のシートと第二のシートで挟まれた積層体を、温度T未満で、かつマトリックス樹脂組成物の粘度が下記粘度μPa・sより大きくμ+65Pa・s以下を示す温度で減圧しながら加熱する減圧加熱工程を有する、プリプレグの製造方法。
温度T:前記マトリックス樹脂組成物を25℃から200℃まで昇温速度2℃/分で昇温しながら粘度を連続的に測定する昇温粘度測定において最低粘度(Pa・s)を示す温度。
粘度μ:前記マトリックス樹脂組成物を25℃から200℃まで昇温速度2℃/分で昇温しながら粘度を連続的に測定する昇温粘度測定における最低粘度(Pa・s)。
[4]前記昇温粘度測定において連続的に測定される前記マトリックス樹脂組成物の粘度が、T-35℃からT-10℃までの温度範囲で0.5~65Pa・sの範囲内である、[1]に記載のプリプレグの製造方法。
[5]前記積層体を真空バギングすることにより減圧する、[1]~[4]のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
[6]前記強化繊維基材がクロス材である、[1]~[5]のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
[7]前記減圧加熱工程の相対圧力が-101.0~-98.0kPaである、[1]~[6]のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
本発明のプリプレグの製造方法によれば、特別な添加剤を使用しなくても、成形品の表面のピンホール形成を抑制できるプリプレグが得られる。
本発明のプリプレグの製造方法の含浸工程を示す断面図である。 本発明のプリプレグの製造方法における真空加熱工程の一例を示した断面図である。 本発明のプリプレグの製造方法における真空加熱工程の一例を示した断面図である。 本発明のプリプレグの製造方法における真空加熱工程の一例を示した斜視図である。 実験例1におけるマトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定の結果を示したグラフである。
本発明のプリプレグの製造方法は、強化繊維基材にマトリックス樹脂組成物を含浸したプリプレグが第一のシートと第二のシートで挟まれた積層体を、減圧しながら特定の温度で加熱する減圧加熱工程を有する方法である。減圧加熱工程を行うことにより、成形品の表面のピンホールの形成を抑制できるプリプレグが得られる。
以下、本発明のプリプレグの製造方法の一例を示して説明する。
本実施形態のプリプレグの製造方法は、下記の含浸工程及び減圧加熱工程を有する。
含浸工程:強化繊維基材に、第一及び/又は第二のシート上に塗工されたマトリックス樹脂組成物のフィルム(樹脂膜)を積層した後に加熱押圧し、前記マトリックス樹脂組成物を前記強化繊維基材に含浸して積層体を形成する。
減圧加熱工程:強化繊維基材にマトリックス樹脂組成物を含浸したプリプレグが第一のシートと第二のシートで挟まれた積層体を、減圧しながら特定の温度で加熱する。
(含浸工程)
例えば、図1(A)に示すように、帯状の長尺の第一のシート10を一方向に搬送しながら、第一のシート10上にマトリックス樹脂組成物を連続的に塗工し、樹脂膜12を形成する。第一のシート10としては、特に限定されず、プリプレグの製造に通常用いられる公知の離型紙やフィルムを使用することができる。フィルムとしては、例えば、耐熱性、延伸特性に優れているポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムが挙げられる。含浸時の加熱において伸びがなく、ロールへの貼付がないことから、離型紙が好ましい。
マトリックス樹脂組成物を塗工する方法は、特に限定されず、公知の塗工方法を採用できる。
マトリックス樹脂組成物は、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもよいが、樹脂の含浸性が優れており、機械物性の発現しやすい熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、プリプレグに用いられる公知の熱硬化性樹脂を使用することができ、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、尿素性樹脂、等が挙げられる。なかでも、熱硬化性樹脂としては、成形品の機械物性の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
マトリックス樹脂組成物には、必要に応じて、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、非繊維状フィラー、導電性フィラー、離型剤、界面活性剤等の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
次いで、図1(B)に示すように、樹脂膜12上に強化繊維基材14を配置する。
強化繊維基材の形態としては、例えば、多数の長尺の強化繊維を一方向に引き揃えたUDシート(一方向シート)、強化繊維を製織して織物としたクロス材、強化繊維からなる不織布等が挙げられる。なかでも、成形品の意匠性の観点では、クロス材が好ましい。クロス材は、必要な方向に強化繊維を配置した一方向性織物、平織、朱子織、綾織などの二方向性織物、三軸織、ノンクリンプ織物、などのいずれの織組織のクロス材であってもよいが、特に、意匠性に優れた平織や、意匠性及び加工性に優れた綾織の使用が好ましい。
強化繊維基材としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
強化繊維基材を構成する強化繊維としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、タングステンカーバイド繊維、ガラス繊維等が挙げられる。なかでも、強化繊維としては、比強度、比弾性率に優れる点から、炭素繊維が好ましい。強化繊維としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
強化繊維基材の目付は、70~800g/mが好ましく、150~250g/mがより好ましい。強化繊維基材の目付が前記範囲内であれば、マトリックス樹脂組成物の含浸性が良好である。70g/m以上であれば、より外観良好な成形品が得られる。150g/m以上であれば、安価に表面平滑な成形品を得ることができる。800g/m以下であれば、強化繊維基材の加工が容易になる。
さらに、第二のシート16上にマトリックス樹脂組成物を塗工して樹脂膜12を形成し、図1(C)に示すように、強化繊維基材14上に第二のシート16及び樹脂膜12を積層し、第一のシート10、樹脂膜12、強化繊維基材14、樹脂膜12及び第二のシート16の前駆積層体1Aを得る。第二のシート16としては、プリプレグの製造に通常用いられる公知の離型紙やフィルムを使用できる。フィルムとしては、例えば、耐熱性、延伸特性に優れているポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムが挙げられる。
次いで、押圧ロールを通過させる等によって前駆積層体1Aを厚さ方向に押圧し、樹脂膜12を形成するマトリックス樹脂組成物を強化繊維基材14に含浸させる。これにより、図1(D)に示すように、プリプレグ18が第一のシート10と第二のシート16に挟まれた積層体1が得られる。
プリプレグの製造に用いた第一のシート及び第二のシートは、続く減圧加熱工程に先立ち、必要に応じて別のシート(図示せず)に貼り替えてもよい。当該別のシートとしては、プリプレグの製造に通常用いられる公知の離型紙やフィルムを使用できる。フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
減圧加熱工程の前に、第一及び/又は第二のシートを貼り替えた場合には、以降の工程において、プリプレグの両面に貼付されているシートを、各々第一及び第二のシートとして扱う。
(減圧加熱工程)
例えば、成形品に応じたサイズに積層体1を切断し、切断後の積層体1に対して、相対圧力で-101.0~-98.0kPaで減圧しながら、昇温速度1~10℃/分で65℃~85℃まで加熱し、5~30分保持する。これにより、成形品の表面のピンホールの形成を抑制できるプリプレグが得られる。
積層体1の減圧は、真空バギングにより行うことが好ましい。具体的には、例えば、図2に示すように、積層体1を真空バッグ50(バグフィルム)で覆い、シールテープでシールしてバギングしてから、減圧用バルブ52を通じて内部の空気を抜き出して減圧し、真空バギングを行う。なお、積層体1は2枚以上を積層して用いてもよい。
この状態で、積層体1を収容した真空バッグ50を加熱炉等の加熱設備で加熱することで、積層体1を加熱することができる。
なお、積層体を減圧する方法は、図2に例示した形態には限定されない。例えば、図3及び図4に例示した真空バギング装置100を用いて真空バギングを行う方法であってもよい。真空バギング装置100は、矩形状の一対の第1の枠体102及び第2の枠体104を備えている。第1の枠体102の第2の枠体104側には、開口部を覆うように可撓性、伸縮性があるゴムシート106が取り付けられており、第1の枠体102とゴムシート106は接着一体化されている。第2の枠体104の第1の枠体102側には、開口部を覆うように可撓性、伸縮性があるゴムシート108が取り付けられており、第2の枠体104とゴムシート108は接着一体化されている。
真空バギング装置100では、第1の枠体102と第2の枠体104を近接させ、一対のゴムシート106,108で積層体1を挟んだ状態で、減圧用バルブ110を通じて互いのゴムシート106,108の間の空気を抜き出して減圧することで、真空バギングできるようになっている。この状態の真空バギング装置100を加熱炉等の加熱設備で加熱することで、積層体1を加熱することができる。
また、本発明においては、真空バギング以外に、箱体中に積層体を設置した状態で、該箱体内の空気を抜き出して減圧することで減圧を行ってもよい。
加熱温度は、温度T(℃)から10~35℃低い温度である。すなわち、減圧加熱工程の加熱温度をT(℃)とすると、T-35≦T≦T-10である。加熱温度Tは、T-30≦T≦T-10が好ましく、T-25≦T≦T-10がより好ましい。
温度T:マトリックス樹脂組成物を25℃から200℃まで昇温速度2℃/分で昇温しながら粘度を連続的に測定する昇温粘度測定において最低粘度(Pa・s)を示す温度。
前記下限値以上であれば、処理時間が長くなり過ぎず、生産性が良好になる。加熱温度が前記上限値以下であれば、プリプレグのゲル化反応が過度に進行することを抑制できるため、後工程における曲げ加工不良や成形型への、或いはプリプレグ相互の貼り付け不良といった不具合が生じることを抑制できる。加熱温度がT-25≦T≦T-10の範囲内であれば、短時間で外観品位が特に良好な成形品が得られる。
また、加熱温度の上限値は、前記T未満で、かつマトリックス樹脂組成物の粘度が下記粘度μPa・sより大きい値を示す温度が好ましく、μ+1Pa・sを示す温度がより好ましく、μ+2Pa・sを示す温度が更に好ましい。
加熱温度の下限値は、前記T未満で、かつマトリックス樹脂組成物の粘度が下記粘度μ+65Pa・sを示す温度が好ましく、μ+50Pa・sを示す温度がより好ましく、μ+30Pa・sを示す温度が更に好ましく、μ+20Pa・sを示す温度が特に好ましい。
粘度μ:マトリックス樹脂組成物を25℃から200℃まで昇温速度2℃/分で昇温しながら粘度を連続的に測定する昇温粘度測定における最低粘度(Pa・s)。
前記範囲内であれば、マトリックス樹脂組成物の流動性が良いため、短時間で外観品位が良好な成形品が得られる。
加熱温度は、130℃で硬化する熱硬化性樹脂の場合、65~85℃が好ましく、70~85℃がより好ましく、75~85℃がさらに好ましい。加熱温度が65℃以上であれば、処理時間が長くなり過ぎず、生産性が良好になる。加熱温度が85℃以下であれば、プリプレグのゲル化反応が過度に進行することを抑制できるため、後工程における曲げ加工不良や成形型への、或いはプリプレグ相互の貼り付け不良といった不具合が生じることを抑制できる。加熱温度が75℃以上85℃以下であれば、短時間で外観品位が特に良好な成形品が得られる。
昇温粘度測定において連続的に測定されるマトリックス樹脂組成物の粘度は、T-35℃からT-10℃までの温度範囲で0.5~65Pa・s、T-30℃からT-10℃までの温度範囲で0.5~50Pa・s、T-25℃からT-10℃までの温度範囲で0.5~20Pa・sの範囲内であることが好ましい。
前記範囲内であれば、マトリックス樹脂組成物の硬化反応が開始せず、かつマトリックス樹脂組成物が適度な流動性を示すため、短時間で外観品位が特に良好な成形品が得られる。
昇温粘度測定において連続的に測定されるマトリックス樹脂組成物の粘度は、65~85℃の温度範囲で粘度μとの差が0Pa・sより大きく50Pa・s以下であることが好ましく、70~85℃の温度範囲で粘度μとの差が0Pa・sより大きく30Pa・s以下であることがより好ましく、75~85℃の温度範囲で粘度μとの差が0Pa・sより大きく15Pa・s以下であることがさらに好ましい。
昇温粘度測定において連続的に測定されるマトリックス樹脂組成物の粘度は、T-35℃からT-10℃までの温度範囲で粘度μとの差が0Pa・sより大きく65Pa・s以下であることが好ましく、T-30℃からT-10℃までの温度範囲で粘度μとの差が0Pa・sより大きく30Pa・s以下であることがより好ましく、T-25℃からT-10℃までの温度範囲で粘度μとの差が0Pa・sより大きく15Pa・s以下であることがさらに好ましい。
マトリックス樹脂組成物の粘度が前記温度範囲で前記粘度範囲であることで、マトリックス樹脂組成物の硬化が開始せず、かつ、マトリックス樹脂組成物が適度な流動性を示すため、本発明の効果が最も得られやすい。
加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定すればよく、5~30分が好ましく、10~20分がより好ましい。加熱時間が前記下限値以上であれば、安定した品質のプリプレグを得ることができ、前記上限値以下であれば、生産性が良好になる。
減圧加熱工程における加熱と減圧は、同時に開始してもよく、いずれか一方を先に開始してもよい。操作が簡便である点から、積層体に対して減圧を行った状態で、加熱を開始する方法が好ましい。
昇温速度は、1℃/分~10℃/分が好ましい。1℃/分以上であれば、良好な生産性で成形品を得られる。10℃/分以下であれば、ヒーターの能力が過大にならないことにより、設備投資が過大にならず、電力消費量が多くなり過ぎないため、経済性に優れる。
減圧加熱工程においては、必要に応じて真空バギングした積層体1を加熱炉に投入して、室温から昇温を開始しても、必要に応じて真空バギングした積層体1を加熱保持温度に設定した加熱炉に投入してもよい。
減圧は、相対圧力で-101.0~-98.0kPaとなるよう行うことが好ましい。
-98.0kPa以下であれば、良好な外観の成形品を得ることができる。
図2及び図3に例示した真空バギングにおける積層体1の数は1枚であったが、2枚以上を積層した状態で減圧処理してもよい。真空バギングにおいて積層される積層体の数が多くなるほど、その厚み方向の中央部に配置された積層体のプリプレグによる、成形品のピンホール形成を抑制する効果が小さくなる。そのため、複数の積層体を積層して真空バギングを行う場合の積層体の数は、積層体の面積にもよるが、2~8が好ましく、2~4が特に好ましい。
2枚以上であれば生産性が良好となり、8枚以下であれば伝熱が良好になるため、安定した品質のプリプレグを得ることができる。
本発明の製造方法で得られたプリプレグは、成形品の製造に使用できる。成形品の製造方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、オートクレーブ成形、真空バッグ成形、プレス成形等が挙げられる。本発明のプリプレグの製造方法は、オートクレーブ成形によって成形品を製造する場合に特に有用である。
オートクレーブ成形では、例えば、減圧加熱工程後に真空バッグ50から取り出した積層体1を成形品の形状に応じて切断する。次いで、積層体1から第一のシート10及び第二のシート16を取り除いたプリプレグ18を、成形型に貼り付ける。さらに所定の枚数のプリプレグ18を積層し、樹脂フィルム等でバギングして減圧し、オートクレーブに入れて加熱及び加圧を行うことで、成形品を得る。
以上説明したように、本発明のプリプレグの製造方法は、プリプレグが第一のシートと第二のシートで挟まれた積層体を特定の温度で加熱しながら減圧する減圧加熱工程を有する。減圧加熱工程を行うことで、成形品表面のピンホール形成を抑制できるプリプレグが得られる。
強化繊維基材にクロス材を用いると、UDシートに比べてマトリックス樹脂組成物が含浸されにくく、プリプレグにボイドやピンホールが発生しやすいため、成形品表面にもピンホールが形成されやすくなる傾向がある。しかし、本発明の製造方法では、強化繊維基材にクロス材を用いた場合でも、成形品の表面のピンホール形成を抑制できるプリプレグが得られる。
減圧加熱工程を行って得たプリプレグを用いることで、成形品表面のピンホール形成が抑制される要因としては、必ずしも明らかではないが、以下のことが考えられる。
マトリックス樹脂組成物を強化繊維基材に含浸して得たプリプレグは、減圧加熱工程においてマトリックス樹脂組成物が流動し、プリプレグ表面のピンホールやボイドが低減される。このことが、該プリプレグを用いて製造される成形品表面にピンホールが生じることが抑制される要因の一つであると考えられる。
また、減圧加熱工程においてマトリックス樹脂組成物が軟化することで、プリプレグの形状が変化し、プリプレグ表面の凹み、特にクリンプ部が浅くなると考えられる。これにより、プリプレグにおける成形型と接する面の凹みに抱き込まれた空気が、成形時の減圧によって吸引除去されやすくなることも、成形品表面のピンホール形成が抑制される要因であると考えられる。
なお、本発明のプリプレグの製造方法は、前記した方法には限定されない。例えば、含浸工程においては、強化繊維基材の片面側からマトリックス樹脂組成物を含浸させてもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定]
以下のようにマトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定を行った。得られた測定結果の30℃における粘度をマトリックス樹脂組成物の「30℃時の粘度」とした。さらに得られた測定結果において25℃から200℃までの温度範囲で最低粘度を示す温度を「温度T」とした。
装置:AR-G2(ティー・エー・インスツルメント社製)
使用プレート:35mmΦパラレルプレート
プレートギャップ:0.5mm
測定周波数:10rad/秒
昇温速度:2℃/分
ストレス:3000dynes/cm
[成形外観評価]
各実施例及び比較例にて得られた成形品の成形型側表面を目視で評価した。
(評価基準)
塗装前の成形外観評価は以下の基準に従って行った。
◎:ピンホールが殆どない。
○:ピンホールが少ない。
×:ピンホールがかなり多い。
[使用材料]
TR3523:三菱レイヨン株式会社製クロスプリプレグ 商品名:TR3523 320GMP。
TR3110:三菱レイヨン株式会社製クロスプリプレグ 商品名:TR3110 320GMP。
TRK510:三菱レイヨン株式会社製クロスプリプレグ 商品名:TRK510 321GMP。
[実施例1]
クロス材にエポキシ樹脂組成物を含浸したプリプレグ(三菱レイヨン株式会社製、商品名:TR3523 320GMP)の離型紙とポリエチレンフィルムを剥離せずに2枚積層し、ブリーザークロス(オー・エス・イー株式会社製、商品名:OSE-135)を配置してから、ポリプロピレンバッグ(東レフィルム加工株式会社製、商品名:RAYFAN NO、品番50 TYPE1600RT 1524mm)で覆った。次に、シールテープ(日本シーカ株式会社製、商品名:VG635)でポリプロピレンバッグをシールしてバギングした。前述のシールテープでシールしたポリプロピレンバッグを真空ポンプ(株式会社大阪空気機械製作所製、油回転式KV-2S)で減圧した状態でオートクレーブ(芦田製作所製、オートクレーブ ACA)内に入れ、加熱した。オートクレーブ処理中は、真空ポンプ(株式会社大阪空気機械製作所製、油回転式KV-3S)で-101.0~98.0kPaの範囲内で減圧を継続した。減圧度は真空度測定機器(株式会社キーエンス社製、デジタル圧力センサ AP-31A)にて測定した。この減圧加熱工程における加熱は、25℃から3.3℃/分で70℃まで昇温させた後、70℃で30分保持し、2℃/分で降温させることで行った。
次いで、得られたプリプレグを300mm×300mmのサイズに切断した後、離型紙とポリエチレンフィルムを剥離してから1枚を成形型に積層し、さらに、300mm×300mmのサイズに切断したプリプレグ(三菱レイヨン株式会社製、商品名:TRK510 321GMP)の離型紙とポリエチレンフィルムを剥離してから1枚積層した後、同様のポリプロピレンフィルムでバギングして減圧し、オートクレーブに入れて加熱及び加圧を行って成形品を得た。加熱は25℃から1.4℃/分で80℃まで昇温させた後、80℃で30分保持してから1.4℃/分で130℃まで昇温し、70分保持してから2.0℃/分で降温させることで行った。加圧は昇温開始とともに開始し、20kPa/分で昇圧させた後、600kPaで185分保持してから3分間で-100kPaの減圧速度で減圧して大気圧に戻すことで行った。
得られた成形品について、成形外観評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2~4、比較例4]
プリプレグの減圧加熱工程の条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを減圧加熱処理し、実施例1と同様に積層して成形品を得た。得られた成形品について、実施例1と同様に、成形外観評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
プリプレグの減圧加熱工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にプリプレグを積層して成形品を得た。得られた成形品について、実施例1と同様に、成形外観評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
バギングを行わず、減圧処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを加熱処理し、実施例1と同様に積層して成形品を得た。得られた成形品について、実施例1と同様に、成形外観評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
三菱レイヨン株式会社製クロスプリプレグ(商品名:TR3523 320GMP)の代わりに三菱レイヨン株式会社製クロスプリプレグ(商品名:TR3110 320GMP)を用い、プリプレグの減圧加熱工程で真空バッグを用いず、加熱処理にホットプレス(高木金属工業株式会社製、型式XS-E)を用いて加圧し、85℃で10分間加熱した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを加熱処理し、実施例1と同様に積層して成形品を得た。得られた成形品について、実施例1と同様に、成形外観評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1における「VH」とは、減圧加熱工程を行う工法であることを意味する。
Figure 0007362852000001
表1に示すように、減圧加熱工程を行って得たプリプレグを用いた実施例1~4では、減圧加熱工程を行っていないプリプレグを用いた比較例1~3に比べて、成形品表面のピンホールが抑制されていた。また、比較例4では、減圧加熱工程の温度が低かったため、成形外観が良くなかった。
[実験例1]
実施例1で用いたTR3523 320GMPのマトリックス樹脂組成物であるエポキシ樹脂組成物について、25℃から130℃まで昇温速度2℃/分で昇温しながら粘度を連続的に測定する昇温粘度測定を行った。その結果を図5に示す。
粘度μは2.3Pa・s、温度Tは98.4℃、温度T-35℃の粘度は62.8Pa・s、温度T-10℃の粘度は3.5Pa・s、65℃の粘度は50.1Pa・s、85℃の粘度は5.2Pa・sであった。
1 積層体
1A 前駆積層体
10 第一のシート
12 樹脂膜
14 強化繊維基材
16 第二のシート
18 プリプレグ
50 真空バッグ
52 減圧用バルブ
100 真空バギング装置
102 第1の枠体
104 第2の枠体
106 ゴムシート
108 ゴムシート
110 減圧用バルブ

Claims (9)

  1. 強化繊維基材にマトリックス樹脂組成物を含浸したプリプレグがそれぞれ剥離紙又はフィルムから選ばれる第一のシートと第二のシートで挟まれた積層体を、相対圧力で-101.0~-98.0kPaに減圧し、65~85℃まで加熱して5~30分保持する減圧加熱工程を有する、プリプレグの処理方法。
  2. 強化繊維基材にマトリックス樹脂組成物を含浸したプリプレグがそれぞれ剥離紙又はフィルムから選ばれる第一のシートと第二のシートで挟まれた積層体を、相対圧力で-101.0~-98.0kPaに減圧し、下記温度Tから10~35℃低い温度まで加熱して5~30分保持する減圧加熱工程を有する、プリプレグの処理方法。
    温度T:前記マトリックス樹脂組成物を25℃から200℃まで昇温速度2℃/分で昇温しながら粘度を連続的に測定する昇温粘度測定において最低粘度(Pa・s)を示す温度。
  3. 前記積層体を加熱する温度Tが、T -25≦T≦T -10を充たす、請求項2に記載の処理方法。
  4. 強化繊維基材にマトリックス樹脂組成物を含浸したプリプレグがそれぞれ剥離紙又はフィルムから選ばれる第一のシートと第二のシートで挟まれた積層体を、相対圧力で-101.0~-98.0kPaに減圧し、温度T未満で、かつマトリックス樹脂組成物の粘度が下記 粘度μPa・sより大きくμ+65Pa・s以下を示す温度まで加熱して5~30分保持する減圧加熱工程を有する、プリプレグの処理方法。
    温度T:前記マトリックス樹脂組成物を25℃から200℃まで昇温速度2℃/分で昇温しながら粘度を連続的に測定する昇温粘度測定において最低粘度(Pa・s)を示す温度。
    粘度μ:前記マトリックス樹脂組成物を25℃から200℃まで昇温速度2℃/分で昇温しながら粘度を連続的に測定する昇温粘度測定における最低粘度(Pa・s)。
  5. 前記昇温粘度測定において連続的に測定される前記マトリックス樹脂組成物の粘度が、T-35℃からT-10℃までの温度範囲で0.5~65Pa・sの範囲内である、請求項2~4のいずれか一項に記載の処理方法。
  6. 前記積層体を加熱するときの昇温速度が1~10℃/分である、請求項1~5のいずれか一項に記載の処理方法。
  7. 前記積層体を真空バギングすることにより減圧する、請求項1~のいずれか一項に記載の処理方法。
  8. 前記強化繊維基材がクロス材である、請求項1~のいずれか一項に記載の処理方法。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の処理方法でプリプレグを減圧加熱処理し、処理後のプリプレグを用いて成形品の製造を行うことを特徴とする成形品の製造方法。
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