JP7361276B2 - 電解コンデンサ - Google Patents

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Description

本発明は、導電性高分子を含む固体電解質層を備える電解コンデンサに関する。
小型かつ大容量で等価直列抵抗(ESR)の低いコンデンサとして、誘電体層を形成した陽極体と、誘電体層の少なくとも一部を覆うように形成された固体電解質層とを具備する、電解コンデンサが有望視されている。
特許文献1では、上記の電解コンデンサの耐電圧性を高めるために、電解液の溶質として無機酸および有機酸の複合化合物とアンモニウム塩を用いることが開示されている。
特開2015-165550号公報
特許文献1では、電解液の溶質として無機酸および有機酸の複合化合物とアンモニウム塩を電解液に含有させることが提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の電解コンデンサは、電解液が劣化し、電解コンデンサの誘電体層の修復性が保てなくなり、漏れ電流が上昇する惧れがあった。
上記に鑑み、本発明の一局面に係る電解コンデンサは、表面に誘電体層が形成された陽極体と、前記誘電体層と接触しているとともに導電性高分子を含む固体電解質層と、電解液と、を備える。前記電解液は、第1塩基成分と、第1酸成分と、第2酸成分とを含む。前記第1塩基成分は、アミジン化合物を含む。前記第1酸成分は、無機酸および有機酸の複合化合物を含む。前記第2酸成分は、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸およびホスホン酸から選択される少なくとも1を含む。
本発明によれば、信頼性に優れた電解コンデンサを提供することができる。
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。 同実施形態に係るコンデンサ素子の構成を説明するための概略図である。
以下、本発明を実施形態に基づいて、より具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図であり、図2は、同電解コンデンサに係るコンデンサ素子の一部を展開した概略図である。
電解コンデンサは、例えば、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収容する有底ケース11と、有底ケース11の開口を塞ぐ封止部材12と、封止部材12を覆う座板13と、封止部材12から導出され、座板13を貫通するリード線14A、14Bと、リード線とコンデンサ素子10の電極とを接続するリードタブ15A、15Bと、電解液及び固体電解質を含む電解質(図示せず)とを備える。有底ケース11の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封止部材12にかしめるようにカール加工されている。
コンデンサ素子10は、図2に示すような巻回体から作製される。巻回体は、リードタブ15Aと接続された陽極体21と、リードタブ15Bと接続された陰極体22と、セパレータ23とを備える。巻回体は、陽極体21と陰極体22との間に固体電解質層が形成されていない半製品である。
陽極体21および陰極体22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、図2は、巻回体の最外周を止める前の、一部が展開された状態を示している。セパレータ23の材料は、例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、アラミド繊維などを主成分とする不織布を用いることができる。
陽極体21は、表面が凹凸を有するように粗面化された金属箔を具備し、凹凸を有する金属箔上に誘電体層が形成されている。誘電体層の表面の少なくとも一部に、導電性高分子を付着させることにより、固体電解質層が形成される。固体電解質層は、陰極体22の表面および/またはセパレータ23の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。固体電解質層が形成されたコンデンサ素子10は、電解液とともに有底ケース11に収容される。
固体電解質層に含まれる導電性高分子は、π共役系導電性高分子であり、ポリピロール、ポリチオフェンおよびポリアニリンなどが好ましい。なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、その誘導体であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが含まれる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。導電性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000~100000である。固体電解質層は、更にドーパントを含んでもよい。
本実施形態の電解液は、溶媒、第1塩基成分、第1酸成分および第2酸成分を含む。
溶媒としては、グリコール化合物を含むことが好ましい。グリコール化合物としては、例えば、アルキレングリコール、重量平均分子量が300以下のポリアルキレングリコールが挙げられる。より具体的には、グリコール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコールなどが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール(ブタンジオール)およびペンチレングリコール(ペンタンジオール)などは、重量平均分子量300以下グリコール化合物の中でも粘度が低いため、溶質を溶解しやすく、熱伝導性が高く、リプル電流が発生したときの放熱性にも優れているため、耐熱性を向上できる。特に、エチレングリコールは、耐熱性を向上させる効果が大きい。
さらに、溶媒としてスルホン化合物を含んでもよい。スルホン化合物は、分子内にスルホニル基(-SO2-)を有する有機化合物である。スルホン化合物としては、例えば、鎖状スルホン、環状スルホンが挙げられる。鎖状スルホンとしては、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジフェニルスルホンが挙げられる。環状スルホンとしては、例えば、スルホラン、3-メチルスルホラン、3,4-ジメチルスルホラン、3,4-ジフェニメチルスルホランが挙げられる。中でも、溶質の解離性および熱的安定性の観点から、スルホン化合物は、スルホランであることが好ましい。スルホランは、スルホン化合物の中でも粘度が低いため、溶質を溶解し易い。
溶媒の他成分としては、例えば、ラクトン化合物、カーボネート化合物が挙げられる。ラクトン化合物としては、例えば、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトンが挙げられる。カーボネート化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、熱的安定性の観点から、他の成分は、ラクトン化合物であることが好ましく、GBLがより好ましい。
第1塩基成分としては、アミジン化合物を含む。アミジン化合物は、アルキル置換アミジン基を有する化合物であり、例えば、環状アミジン化合物またはその4級化物(アミジニウム化合物)が挙げられる。具体的には、炭素数1~11のアルキル基またはアリールアルキル基で4級化されたイミダゾリン化合物、イミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、脂環式ピリミジン化合物などが挙げられる。さらに具体的には、1-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、1-メチル-1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5、1,2,3-トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2-エチル-イミダゾリニウム、1,3,4-トリメチル-2-エチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2-ヘプチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2-(-3’ヘプチル)イミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2-ドデシルイミダゾリニウム、1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジウム、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジメチルベンゾイミダゾリウムなどが挙げられる。
第1酸成分としては、有機酸および無機酸の複合化合物を含む。有機酸および無機酸の複合化合物としては、耐熱性の高い、ボロジサリチル酸、ボロジシュウ酸、ボロジグリコール酸等が好ましい。
第2酸成分としては、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸およびホスホン酸から選択される少なくとも一つを含有する。尚、第2酸成分は、エステル化したものであってもよい。例えば、第2酸成分のエステル化物としては、第2酸成分のヒドロキシル基の一部がアルコール化合物、グリコール化合物などと縮合した縮合物が挙げられる。
第1酸成分として有機酸および無機酸の複合化合物を含む電解液は、高い酸性度となり易い。しかしながら、本実施形態において、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物などのアミン化合物よりも塩基性度が高いアミジン化合物を含む第1塩基成分として含むので電解液のpHが低くなりすぎない。よって、陽極体の腐食を抑制でき、電解コンデンサの信頼性を高めることができる。
また、電解液に上記の第2酸成分を含有させることにより、第1酸成分が分解することを抑制できる。よって、誘電体層に導電性高分子を含む固体電解質層が接触している電解コンデンサにおいて、電解液の劣化を抑制できるので、長時間使用時においても修復性が保たれるので漏れ電流が上昇することを抑制できる。第2酸成分は、第1酸成分が分解することを抑制する観点においてホウ酸が好ましい。尚、電解液中において、第2酸成分はエステル化していてもよい。
電解液中において、第1塩基成分および第1酸成分の総量の含有割合は、5wt%以上35wt%以下が好ましく、5wt%以上30wt%以下がより好ましい。この範囲にすることにより、誘電体層に導電性高分子を含む固体電解質層が接触している電解コンデンサにおいて、十分な電解液の電導度を得ることができ、且つ誘電体層の修復性を高めることができる。
電解液中において、第2酸成分の量は、0.1wt%以上15wt%以下が好ましい。0.1wt%以上にすることにより第1酸成分の分解をより抑制できる。また、15wt%以下にすることにより電解液中において第2酸成分が析出することを抑制できる。
電解液は、さらに第2塩基成分を含んでもよい。第2塩基成分としては、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、第4級アンモニウム化合物が上げられる。1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンなど、2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、ジブチルアミンなど、3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等が挙げられる。4級アンモニウム塩の4級アンモニウムイオンとしてはテトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。電解液に第2塩基成分を含有させることにより、電解液のpHが低くなり過ぎることを抑制できる。
第2塩基成分としては、弱アルカリ性(例えばpHが水溶液中11以下)のものが好ましい。
第2塩基成分としては、ヒドロキシル基を有する第1~3級アミン化合物であってもよい。ヒドロキシル基を有する第1~3級アミン化合物としては脂肪族第1~3級アミン化合物等が挙げられ、特に、脂肪族第1級アミン化合物がより好ましい。ヒドロキシル基を有する脂肪族第1級アミン化合物としては、弱アルカリ性のモノメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジヒドロキシメチルアミノメタン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられる。陽極体の腐食を抑制できる観点で、ヒドロキシル基を2つ以上有する脂肪族第1級アミン化合物が好ましく、さらにはヒドロキシル基を3つ以上有する脂肪族第1級アミン化合物が好ましい。ヒドロキシル基を3つ以上有する脂肪族第1級アミン化合物としては、トリスヒドロキシメチルアミノメタンが好ましい。
本実施形態における電解液のpHは、1.5以上5.5以下が好ましい。pHを、5.5以下にすることにより、導電性高分子にドーパントが含まれる場合、導電性高分子からドーパントが脱ドープすることを抑制し、ドーパントの脱ドープによるESRの増大が抑制される。また、pHを1.5以上にすることにより、陽極体の腐食を抑制できる。
なお、電解液のpHは、第2塩基成分を添加することで調整することもできる。第2塩基成分を添加した電解液のpHは、1.5以上5.5以下が好ましい。電解液に第2塩基成分を含有させることにより、電解液のpHが低くなり過ぎることを抑制できる。また、第2塩基成分として、脂肪族第1級アミン化合物を用いた場合は電解液のpHが高くなり過ぎることを抑制できる。
電解液は、第3酸成分を含んでもよい。第3酸成分としては、ニトロ化合物が好ましい。ニトロ化合物としては、ニトロ基及びカルボキシル基を有する化合物、ニトロ基及びヒドロキシル基を有する化合物、ニトロ基及びヒドロキシアルキル基を有する化合物などが挙げられる。ニトロ基及びカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、ニトロベンゼンジカルボン酸、ジニトロベンゼンカルボン酸、ニトロトルエンカルボン酸、ニトロアニソールカルボン酸などが挙げられる。ニトロ基及びヒドロキシル基を有する化合物としては、o-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、p-ニトロアセトフェノンなどが挙げられる。ニトロ基及びヒドロキシアルキル基を有する化合物としては、o-ニトロベンジルアルコール、m-ニトロベンジルアルコール、p-ニトロベンジルアルコール、ニトロベンゼンエタノールなどが挙げられる。電解液に、第3酸成分を含有させることにより、第1酸成分の分解をより抑制できる。電解液中において、第3酸成分の量は、0.1wt%以上15wt%以下が好ましい。0.1wt%以上にすることにより第1酸成分の分解をより抑制できる。また、15wt%以下にすることにより電解液中において第3酸成分が析出することを抑制できる。中でも、第3酸成分は、o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸及びp-ニトロ安息香酸が、第1酸成分の分解を抑制できる点で好ましい。
本実施形態における電解コンデンサは、使用時に例えばリプル電流などにより自己発熱が生じた場合においても、第1酸成分および第2酸成分を含有するため、第1酸成分の分解をより抑制でき、さらに第1塩基成分により電解液のpHが低くなりすぎない。よって、本実施形態の電解コンデンサは熱による電解液の劣化を抑制できるので、誘電体層の修復性を維持でき、漏れ電流の上昇を抑制できる。
以下、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について、工程ごとに説明する。
(i)誘電体層を有する陽極体21を準備する工程
まず、陽極体21の原料である金属箔を準備する。金属の種類は特に限定されないが、誘電体層の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
次に、金属箔の表面を粗面化する。粗面化により、金属箔の表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、金属箔をエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば直流電解法や交流電解法により行えばよい。
次に、粗面化された金属箔の表面に誘電体層を形成する。形成方法は特に限定されないが、金属箔を化成処理することにより形成することができる。化成処理では、例えば、金属箔をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬し、熱処理する。また、金属箔を化成液に浸漬し、電圧を印加してもよい。
通常、量産性の観点から、大判の弁作用金属などの箔(金属箔)に対して、粗面化処理および化成処理が行われる。その場合、処理後の箔を所望の大きさに裁断することによって、陽極体21が準備される。
(ii)陰極体22を準備する工程
陰極体22には、陽極体と同様、金属箔を用いることができる。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。必要に応じて、陰極体22の表面を粗面化してもよい。また、陰極体22の表面に、2V程度の化成皮膜や、チタン、ニッケルなどの金属皮膜やカーボン膜が形成されていてもよい。
(iii)巻回体作製する工程
次に、陽極体21および陰極体22を用いて巻回体を作製する。
まず、陽極体21と陰極体22とを、セパレータ23を介して巻回する。このとき、リードタブ15A、15Bを巻き込みながら巻回することにより、図2に示すように、リードタブ15A、15Bを巻回体から植立させることができる。
セパレータ23の材料は、例えば、天然セルロース、合成セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、アラミド繊維などを主成分とする不織布を用いることができる。
リードタブ15A、15Bの材料も特に限定されず、導電性材料であればよい。リードタブ15A、15Bの各々に接続されるリード線14A、14Bの材料についても、特に限定されず、導電性材料であればよい。
次に、陽極体21、陰極体22およびセパレータ23が巻回された巻回体の最外層に位置する陰極体22の外側表面に、巻止めテープ24を配置し、陰極体22の端部を巻止めテープ24で固定する。なお、陽極体21を大判の金属箔を裁断することによって準備した場合には、陽極体21の裁断面に誘電体層を設けるために、巻回体に対し、更に化成処理を行ってもよい。
(iv)コンデンサ素子10を形成する工程
次に、例えば、高分子分散体や高分子溶液を、誘電体層に含浸させ、誘電体層の少なくとも一部を覆う導電性高分子を含む膜を形成する。高分子分散体は、液状成分と、液状成分に分散する導電性高分子とを含む。高分子溶液は、液状成分に導電性高分子が溶解した溶液である。次に、乾燥により、形成された膜から液状成分を揮発させることにより、誘電体層の少なくとも一部を覆う緻密な固体電解質層が形成される。高分子分散体は、導電性高分子が液状成分中に均一に分布しているため、均一な固体電解質層を形成しやすい。これにより、コンデンサ素子10が得られる。
高分子分散体は、例えば、液状成分に導電性高分子を分散させる方法、液状成分中で前駆体モノマーを重合させ、導電性高分子の粒子を生成させる方法などにより得ることができる。好ましい高分子分散体としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)がドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、すなわちPEDOT/PSSが挙げられる。
液状成分は、水でもよく、水と非水溶媒との混合物でもよく、非水溶媒でもよい。非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒を用いることができる。プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、ホルムアルデヒド、1,4-ジオキサンなどのエーテル類などが例示できる。非プロトン性溶媒としては、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類や、酢酸メチルなどのエステル類、メチルエチルケトンなどのケトン類などが例示できる。
高分子分散体を誘電体層の表面に付与する工程と、巻回体を乾燥させる工程とは、2回以上繰り返してもよい。これらの工程を複数回行うことにより、誘電体層に対する固体電解質層の被覆率を高めることができる。このとき、誘電体層の表面だけでなく、陰極体22およびセパレータ23の表面にも固体電解質層が形成されてもよい。
以上により、陽極体21と陰極体22との間に固体電解質層が形成され、コンデンサ素子10が作製される。なお、誘電体層の表面に形成された固体電解質層は、事実上の陰極材料として機能する。
(v)電解液を調製し、コンデンサ素子10に電解液を含浸させる工程
次に、上述の溶質(酸成分および塩基成分)を溶媒に溶解させて、電解液を調した後、コンデンサ素子10に、電解液を含浸させる。コンデンサ素子10に電解液を含浸させる方法は特に限定されない。例えば、容器に収容された電解液にコンデンサ素子10を浸漬させる方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、コンデンサ素子10のサイズにもよるが、例えば1秒間~5分間である。含浸は、減圧下、例えば10~100kPa、好ましくは40~100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。
(vi)コンデンサ素子を封止する工程
次に、コンデンサ素子10を封止する。具体的には、まず、リード線14A、14Bが有底ケース11の開口する上面に位置するように、コンデンサ素子10を有底ケース11に収納する。有底ケース11の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。
次に、リード線14A、14Bが貫通するように形成された封止部材12を、コンデンサ素子10の上方に配置し、コンデンサ素子10を有底ケース11内に封止する。次に、有底ケース11の開口端近傍に、横絞り加工を施し、開口端を封止部材12に加締めてカール加工する。そして、カール部分に座板13を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサが完成する。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
上記の実施形態では、巻回型の電解コンデンサについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、他の電解コンデンサ、例えば、陽極体として金属の焼結体を用いるチップ型の電解コンデンサや、金属板を陽極体として用いる積層型の電解コンデンサにも適用することができる。
[実施例]
実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
下記実施例では、定格電圧25V、定格静電容量330μFの巻回型の電解コンデンサ(Φ(直径)10mm×L(長さ)10mm)を作製した。以下に、電解コンデンサの具体的な製造方法について説明する。
(陽極体の準備)
厚さ100μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔の表面に化成処理により誘電体層を形成した。化成処理は、アジピン酸アンモニウム溶液にアルミニウム箔を浸漬し、これに50Vの電圧を印加することにより行った。その後、アルミニウム箔を裁断して、陽極体を準備した。
(陰極体の準備)
厚さ50μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔を裁断して、陰極体を準備した。
(巻回体の作製)
陽極体および陰極体に陽極リードタブおよび陰極リードタブを接続し、陽極体と陰極体とをリードタブを巻き込みながらセルロースのセパレータを介して巻回した。巻回体から突出する各リードタブの端部には、陽極リード線および陰極リード線をそれぞれ接続した。作製された巻回体に対して、再度化成処理を行い、陽極体の切断された端部に誘電体層を形成した。次に、巻回体の外側表面の端部を巻止めテープで固定して巻回体を作製した。
(高分子分散体の調製)
3,4-エチレンジオキシチオフェンと、高分子ドーパントであるポリスチレンスルホン酸(PSS、重量平均分子量10万)とを、イオン交換水に溶かし、混合溶液を調製した。混合溶液を撹拌しながらイオン交換水に溶かした硫酸鉄(III)(酸化剤)を添加し、重合反応を行った。反応後、得られた反応液を透析し、未反応モノマーおよび過剰な酸化剤を除去し、約5質量%のPSSがドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT/PSS)を含む高分子分散体を得た。
(固体電解質層の形成)
減圧雰囲気(40kPa)中で、所定容器に収容された高分子分散体に巻回体を5分間浸漬し、その後、高分子分散体から巻回体を引き上げた。次に、高分子分散体を含浸した巻回体を、150℃の乾燥炉内で20分間乾燥させ、誘電体層の少なくとも一部を被覆する導電性高分子層からなる固体電解質層を形成した。
(電解液の含浸)
第1酸成分、第1塩基成分、第2酸成分および第2塩基成分および各種溶媒を、表1に示す組成で含む電解液を調製し、減圧雰囲気(40kPa)中で電解液に巻回体を5分間浸漬した。なお、表1中の数値は、電解液中の各成分の含有割合(単位:wt%)を示す。
(コンデンサ素子の封止)
電解液を含浸させたコンデンサ素子を封止して、図1に示すような電解コンデンサ(実施例1~9、比較例1および2)を完成させた。その後、定格電圧を印加しながら、130℃で2時間エージング処理を行った。
[評価]
得られた電解コンデンサについて、初期漏れ電流X0(LC)および初期等価直列抵抗Y0(ESR)を測定した。
次に、長期信頼性を評価するために、定格電圧を印加しながら145℃で4000時間保持し、漏れ電流の変化率(ΔLC)およびESRの変化率(ΔESR)を確認した。
ΔLCは、初期値(X0)に対する145℃保持後のLC(X)の比(X/X0)で示した。なお、漏れ電流は電解コンデンサの陽極体と陰極体との間に25Vの電圧を印加し、室温の環境下で、120秒後の漏れ電流を測定した。
ΔESRは、初期値(Y0)に対する145℃保持後のESR(Y)の比(Y/Y0)で示した。なお、ESRは、室温の環境下で、LCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数100kHzにおける値を測定した。
評価結果を表2に示す。

実施例1~9は比較例1および2と比べて電解コンデンサの信頼性を高めることができた。
本発明は、誘電体層の少なくとも一部を被覆する固体電解質層と、電解液とを具備する、電解コンデンサに利用することができる。
10:コンデンサ素子、11:有底ケース、12:封止部材、13:座板、14A,14B:リード線、15A,15B:リードタブ、21:陽極体、22:陰極体、23:セパレータ、24:巻止めテープ

Claims (10)

  1. 表面に誘電体層が形成された陽極体と、前記誘電体層と接触しているとともに導電性高分子を含む固体電解質層と、電解液と、を備え、
    前記電解液は、第1塩基成分と、第1酸成分と、第2酸成分とを含み、
    前記第1塩基成分は、アミジン化合物を含み、
    前記第1酸成分は、無機酸および有機酸の複合化合物を含み、
    前記第2酸成分は、ホウ酸であり、
    前記電解液における、前記ホウ酸の含有割合は、15wt%以下の範囲である(ただし、前記ホウ酸の含有割合が3wt%以下の場合を除く)、電解コンデンサ。
  2. 前記第1酸成分は、ボロジサリチル酸、ボロジグリコール酸およびボロジシュウ酸から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電解コンデンサ。
  3. 前記電解液は、第2塩基成分をさらに含み、
    前記第2塩基成分は、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物および第4級アンモニウム化合物から選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
  4. 前記電解液は、溶媒を含み、
    前記溶媒は、グリコール化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  5. 前記グリコール化合物の重量平均分子量は300以下である、請求項4に記載の電解コンデンサ。
  6. 前記電解液における、前記第1塩基成分及び前記第1酸成分の総量の含有割合は、5wt%以上30wt%以下の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電解コンデ
    ンサ。
  7. 前記電解液のpHは、1.5以上5.5以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  8. 前記電解液は、第3酸成分をさらに含み、
    前記第3酸成分は、ニトロ化合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  9. 前記第2塩基成分は、前記第1級アミン化合物であり、
    前記第1級アミン化合物は、ヒドロキシル基を有する脂肪族第1級アミン化合物である、請求項3に記載の電解コンデンサ。
  10. 前記ヒドロキシル基を有する脂肪族第1級アミン化合物は、3つ以上のヒドロキシル基を有する、請求項に記載の電解コンデンサ。
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