JP7359983B1 - 食肉加工品の製造方法及び食肉加工品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記課題を解決するために、スパイスを微粉砕処理する微粉砕スパイス調製工程と、特定の条件下で微粉砕スパイスを封入する微粉砕スパイス封入工程と、特定の条件下で微粉砕スパイスと食肉原料を配合する微粉砕スパイス配合工程と、を含み、微粉砕スパイス配合工程を経て作製された製品のpHが5.8以下となる食肉加工品の製造方法及び食肉加工品を提供する。
本発明によれば、スパイスの香気成分が低下することを抑制し、香味に優れた食肉加工品の製造方法及び食肉加工品を提供することができる。
【選択図】図3
Description
本発明の課題は、挽きたて時のスパイスの新鮮な香味を有し、咀嚼時に感じる香味の強度、嚥下後に残る香味の強度、焼きさまし後に食したときの香味の強度に優れ、かつ、口に入れたときに香味を感じるまでの時間が早く、香味が口の中に残る香味の持続時間が長く、畜肉臭が矯臭されるなど、香味に優れた食肉加工品の製造方法及び食肉加工品を提供することである。
すなわち、本発明は、以下の食肉加工品の製造方法及び食肉加工品である。
本発明の食肉加工品の製造方法によれば、1種又は2種以上のスパイスを選択・混合して微粉砕を行った後、特定条件下で封入・保管されたスパイスを所定期間以内に開封・使用するとともに、製品(食肉加工品)のpH調整を行うことで、スパイスの香気成分が低下することを抑制することができる。また、これにより、挽きたて時のスパイスの新鮮な香味を有し、咀嚼時に感じる香味の強度、嚥下後に残る香味の強度、焼きさまし後に食したときの香味の強度に優れ、かつ、口に入れたときに香味を感じるまでの時間が早く、香味が口の中に残る香味の持続時間が長く、畜肉臭が矯臭されるなど、香味に優れた食肉加工品の製造を行うことが可能となる。
通常、食肉原料にスパイスを添加して作製される製品(食肉加工品)においては、製品として含有する脂肪量が増加することで、咀嚼時に感じる香味の強度、嚥下後に残る香味の強度、焼きさまし後に食したときの香味の強度などといった各種香味強度の低下、いわゆる香り立ちが弱くなるという現象が生じることが知られている。
一方、この特徴によれば、一定程度以上の脂肪量を含む製品であっても、挽きたて時のスパイスの新鮮な香味を有し、かつ香り立ちを維持した製品(食肉加工品)の製造を行うことが可能となる。
この特徴によれば、食肉加工品に添加するスパイスとして、肉の味に適合し、十分な香味強度を示すことに加え、口に入れたときに香味を感じるまでの時間をより早め、口の中に残る香味の持続時間をより長くし、畜肉臭がより矯臭されるなど、より風味及び香味に優れた食肉加工品の製造を行うことが可能となる。
この特徴によれば、酸素非透過性能が高く、遮光機能を備えた素材からなる包装体を用いることで、封入・保管時において微粉砕スパイスの香気成分が低下することをより一層抑制することが可能となる。
本発明の食肉加工品によれば、1種又は2種以上のスパイスを選択・混合して微粉砕を行った後、特定条件下で封入・保管されたスパイスを所定期間以内に開封・使用するとともに、pH調整を行うことで、スパイスの香気成分が低下することを抑制することができる。また、これにより、挽きたて時のスパイスの新鮮な香味を有し、咀嚼時に感じる香味の強度、嚥下後に残る香味の強度、焼きさまし後に食したときの香味の強度に優れ、かつ、口に入れたときに香味を感じるまでの時間が早く、香味が口の中に残る香味の持続時間が長く、畜肉臭が矯臭されるなど、香味に優れた食肉加工品を提供することが可能となる。
図1の「冷凍密閉保管」と「25℃密封保管」との比較から、アルミ包材での密封保管においては、保管温度の差異による香気成分濃度の経時変化にはほとんど差がないことがわかった。また、図1の「25℃密封保管」と「25℃開放保管」との比較から、密封保管では経時的に香気成分濃度の減少は余り見られないが、開放保管では2日目以降に香気成分が有意に低下することや、ピークの高い香気成分の減少率が特に大きいことがわかった。この結果から、スパイスを微粉砕した後、24時間以内に密封包装、特に酸素非存在下に保管することがスパイスの挽きたての香気を有効利用する上で好ましいことがわかった。また、粉砕後17日以内に微粉砕スパイスを使用することが好ましいことがわかった。
図2より、微粉砕後一週間経過後のスパイスを用いたソーセージの香気成分は、微粉砕後12時間以内のスパイスを用いたソーセージの香気成分に比べて少ないことがわかった。
すなわち、本発明の香味に優れた食肉加工品の製造方法は、1種又は2種以上のスパイスを選択・混合した後、微粉砕処理を施して微粉砕スパイスを調製する微粉砕スパイス調製工程と、得られた微粉砕スパイスを、24時間以内に不活性ガスとともに酸素非透過性若しくは酸素難透過性の包装体に充填・封入し、酸素非存在下で貯蔵する微粉砕スパイス封入工程と、微粉砕スパイスが封入された包装体を、封入から15日以内に開封し、かつ開封後所定時間以内の微粉砕スパイスを、塩処理により塩溶性タンパク質を溶出した食肉原料に添加及び/又は接触させる微粉砕スパイス配合工程とを含み、かつ、微粉砕スパイス配合工程を経て作製された製品(食肉加工品)のpHが5.8以下となる方法であればよく、具体的な内容については特に限定されない。なお、微粉砕スパイス調製工程及び微粉砕スパイス封入工程を経た後、微粉砕スパイス配合工程において包装体開封後、所定時間以内の微粉砕スパイスについては、以下、「挽きたてスパイス」と呼ぶものとする。
同様に、本発明の食肉加工品は、塩処理により塩溶性タンパク質を溶出した食肉原料と、上記挽きたてスパイスと、を含有し、pHが5.8以下となる食肉加工品であればよく、その他の含有物については特に限定されない。
なお、本発明においては、整形処理や塩処理等の各種処理を行う前の可食性肉を「原料肉」と呼び、処理済みのものを「食肉原料」と呼ぶものとする。
また、ハム、ソーセージの包装材料としては、通常これらの製造において使用されるものを用いることができ、例えば牛腸、豚腸、羊腸、コラーゲンフィルム、セルロースフィルムなどのほか、合成樹脂フィルム、例えば、塩化ビニリデン系樹脂(例えば、塩化ビニル-塩化ビニリデン系共重合体、アルキル(メタ)アクリレート-塩化ビニリデン系共重合体) 、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体、環状オレフィン系樹脂)、ポリアミド樹脂(脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)などからなるフィルム及びこれらからなる各種多層フィルムであってもよい。
特に、本発明におけるスパイスとしては、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、グリーンペッパー、セージ、メース、カルダモン、ガーリック、コリアンダー、バジル、キャラウエー、オールスパイス、シナモン、オレガノ、マジョラム、ナツメグ、オニオン、タイムからなる群から、1種又は2種以上のスパイスを選択して用いることが好ましい。これにより、食肉加工品に添加するスパイスとして、肉の味に適合し、十分な香味強度を示すことに加え、口に入れたときに香味を感じるまでの時間をより早め、口の中に残る香味の持続時間をより長くし、畜肉臭がより矯臭されるなど、より風味及び香味に優れた食肉加工品の製造を行うことが可能となる。
ここで、微粉砕処理に用いられる粉砕機としては、バッチ式粉砕機と連続式粉砕機に大別することができ、微粉砕の程度としては、10~40メッシュ、中でも20~40メッシュが好ましい。
微粉砕スパイスを入れる包装体の材料としては、酸素非透過性若しくは酸素難透過性のものであればよく、例えば、アルミ箔を貼り合わせる、若しくはアルミニウムを蒸着したポリエチレンフィルムを補強用のナイロンフィルムを挟んで接着した積層フィルムや、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)等の樹脂層を少なくとも一層有するフィルム、若しくはPVDC等をコーティングしたフィルムなどを用いることができる。
本発明における包装体としては、アルミニウムラミネートフィルムやアルミニウム蒸着フィルム等の遮光機能を備えたフィルム素材からなる包装体が好ましく、アルミニウム蒸着包材製の包装体とすることが特に好ましい。
このとき、微粉砕スパイスを充填包装するまでの時間は、24時間以内、好ましくは12時間以内、より好ましくは6時間以内、とりわけ3時間以内が望ましい。また、包装体の容量は、開封する度に使い切れるように、使用ロットに合わせて小袋包装とすることが好ましい。
なお、微粉砕スパイス封入工程として、微粉砕スパイスを充填包装する前に、粒度の均一化と異物除去のシフター処理を行うものとしてもよい。
ここで、添加・接触方法や添加・接触時期は、食肉加工品の種類によって異なるが、以下、ソーセージ、ハム・ベーコン類、フライドチキンを例にとって、挽きたてスパイスの添加・接触方法や添加・接触時期について説明する。
図3から、特に、挽きたてスパイスを用いた場合、食肉加工品(製品)のpHが、香気成分量に大きく影響することがわかった。一方、従来製法のスパイスを用いた場合については、食肉加工品(製品)のpHによる香気成分量への影響は、挽きたてスパイスを用いた場合と比べ、小さいことがわかった。
図3の結果から、挽きたてスパイスを用いた製品のpHとしては、pH5.8以下とすることが好ましく、pH5.6以下とすることがより好ましい。これにより、微粉砕スパイス(挽きたてスパイス)の香気成分量を高め、より香味に優れた製品(食肉加工品)を提供することが可能となる。
通常、食肉原料にスパイスを添加して作製される製品(食肉加工品)においては、製品として含有する脂肪量が増加することで、スパイスに関する香り立ちが弱くなることから、食肉加工品としての香味とジューシー感の両立には課題があった。
ここで、本発明者らは、調製工程が異なる2種類のスパイスを用い、食肉加工品(製品)の脂肪量と、スパイスの香味に係る関係について、評価を行った。具体的には、挽きたてスパイスを用いるソーセージ製品(pH5.6)と、粉砕後のスパイスを混合し、25℃開放保管したスパイス(従来製法のスパイス)を用いるソーセージ製品(pH5.6)について、各製品の脂肪量を変えたものを作製し、官能検査を行った。なお、本官能検査では、製品の脂肪量が30重量%以内のものを「低脂肪」、30重量%以上のものを「高脂肪」と呼ぶ。
評価に係る項目としては、咀嚼時の香味の強度について、各製品同士をブラインドで比較し、最も強く香味を感じるものを評点4、以下、香味を感じる順に評点3、評点2、評点1とし、同程度の香味を感じる製品同士には同評点を付したものについて、パネリスト5名の平均値で表した結果を表1に示す。
表1の結果から、挽きたてスパイスを用いた製品の脂肪量としては、25質量%以上とすることが好ましく、28質量%以上とすることがより好ましい。これにより、挽きたて時のスパイスの新鮮な香味を有し、かつ香り立ちを維持しつつ、十分なジューシー感を得ることができる食肉加工品の製造が可能となる。また、特に高脂肪(30質量%以上)の範囲において、本発明による効果が顕著に発揮されるものとなる。
以下の各実施例における挽きたてスパイスの調製について説明する。
スパイスの微粉砕には、冷却ジャケットを備えた三井鉱山株式会社製「高速刃粉砕機Q型MH20」をバッチ式粉砕機として用い、冷却下に刃の速度1700rpmで微粉砕した。なお、原料スパイスには蒸気殺菌法により殺菌処理を施している。そして、2種以上のスパイスを選択した場合、あらかじめ混合したものを微粉砕した。微粉砕後2時間で、窒素ガス置換下に容量150gのアルミニウム蒸着包材の包装体に充填・密封し、以後、常温で流通・保管させたものを封入15日目に使用した。
ブラックペッパー、グリーンペッパー、セージ、メース、ガーリック、オールスパイス、バジル、オレガノ、マジョラム、オニオン、タイムをあらかじめ混合し、微粉砕処理を施し、平均粒径約40メッシュの粗挽きソーセージ用挽きたてスパイスを調製した。
評価項目は、咀嚼時に感じる香味の強度、嚥下後に残る香味の強度、口に入れたときに香味を感じるまでの時間、香味が口の中に残る香味の持続時間、旨味の5項目とした。そして、各項目とも対照品を基準(評点3)とし、実施例について「優れている」を評点5、「やや優れている」を評点4、「普通(同程度)」を評点3、「やや劣る」を評点2、「劣る」を評点1とし、10名の平均値で表した。結果を表2に示す。
また、ハンバーグ、ロースハム、フライドチキン等、その他の食肉加工品においても同様の結果が得られた。
Claims (5)
- 1種又は2種以上のスパイスを選択・混合した後、微粉砕処理を施して微粉砕スパイスを調製する微粉砕スパイス調製工程と、
前記微粉砕スパイス調製工程で得られた微粉砕スパイスを、24時間以内に不活性ガスとともに酸素非透過性若しくは酸素難透過性の包装体に充填・封入し、酸素非存在下で貯蔵する微粉砕スパイス封入工程と、
前記微粉砕スパイス封入工程の後、微粉砕スパイスが封入された包装体を、封入から15日以内に開封し、かつ開封後所定時間以内の微粉砕スパイスを、塩処理により塩溶性タンパク質を溶出した食肉原料に添加及び/又は接触させる微粉砕スパイス配合工程と、を含み、
前記微粉砕スパイス配合工程を経て作製された製品のpHが5.8以下となることを特徴とする、食肉加工品の製造方法。 - 前記製品の脂肪量が、25重量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の食肉加工品の製造方法。
- 前記微粉砕スパイス調製工程は、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、グリーンペッパー、セージ、メース、カルダモン、ガーリック、コリアンダー、バジル、キャラウエー、オールスパイス、シナモン、オレガノ、マジョラム、ナツメグ、オニオン、タイムからなる群のうち、1種又は2種以上のスパイスを選択・混合し、微粉砕することを特徴とする、請求項1又は2に記載の食肉加工品の製造方法。
- 前記微粉砕スパイス封入工程における酸素非透過性若しくは酸素難透過性の包装体が、アルミニウム蒸着包材製の包装体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の食肉加工品の製造方法。
- 塩処理により塩溶性タンパク質を溶出した食肉原料と、微粉砕スパイスと、を含有し、pHが5.8以下となる食肉加工品であって、
前記微粉砕スパイスは、
1種又は2種以上のスパイスを選択・混合した後、微粉砕処理を施し、24時間以内に不活性ガスとともに酸素非透過性若しくは酸素難透過性の包装体に充填・封入し、酸素非存在下で貯蔵された包装体を、封入から15日以内に開封し、かつ開封後所定時間以内に使用されるものであることを特徴とする、食肉加工品。
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